JP4132190B2 - ポリウレタン製ベルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリウレタン製ベルトに係り、詳しくはポリウレタン製ベルトの音の発生を防ぎ、耐光性を改善するものに係る。
【0002】
【従来の技術】
従来より動力を伝える動力伝動ベルトやカード等の紙葉類を搬送する搬送用ベルトの素材としては、ゴムやポリウレタンが使用されてきた。ゴムは外観性に劣るという問題があった。それに対してポリウレタン製のベルトはゴムに比べて外観性に優れ、ゴムベルトのときのゴム落ちのような周囲に摩耗屑を落としてしまうという欠点が無いという理由で、その範囲は広範囲に渡っている。
【0003】
ところが、ポリウレタンの欠点として紫外線による変色が挙げられる。ポリウレタンは紫外線に長期に渡ってさらされると変色してしまい、外観的な質が落ちてしまう。そのためにポリウレタン製のベルトは、屋外は勿論屋内において保管した場合も、窓からの採光及び蛍光灯などの照明中の紫外線によって変色してしまい、使用している間に変色してしまうということがあったり、ベルトとして製造した後に長期間保管することができないという問題があった。そこで、ポリウレタンにベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤を添加することにより耐光性を向上させたウレタンベルトが提案されていた。
【0004】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤を添加したポリウレタンを用いたポリウレタン製ベルトは紫外線にさらされたときの変色が若干少なくなったものの、未だ十分といえるものではなく、更なる改良が望まれていた。
【0005】
そこで、ポリウレタンにベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤を添加することによって、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤の相乗効果が大きく、紫外線による変色を大きく抑えることができ、ベルトの外観の経時変化を極力少なくすることができた。(特公平8‐16504号公報に開示)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
NC旋盤等に使用されるポリウレタン製Vベルトについては、ベルトとプーリとの係合時にベルトがプーリから離れる場合、ベルトの摩擦係数が高すぎる場合は、ベルトがプーリに粘着するような形となり離れにくくなる為「ピチピチ」という音が発生していた。又、プーリのアライメント(平行度)が少しでも狂っていた場合でも、ポリウレタンの摩擦係数が高い為に同様に「ピチピチ」という音が発生していた。
【0007】
ポリウレタン製Vリブドベルトは按摩機の揉み機を上下に移動する為のベルトとして使用されるが、按摩機を使用時に揉み機を移動中「ピチピチ」音が発生することがあり、使用者にとって耳障りとなっていた。この現象もやはり上記ポリウレタン製Vベルトの時と同様にベルトがプーリから離れるとき、或いはプーリのアライメントが狂って いるときに発生するものであった。
【0008】
さらに滑剤として二硫化モリブデンを添加してテストを行ったが、二硫化モリブデンは固体である為、ベルトに成形した場合ベルト表面への移行がなく、さらに二硫化モリブデンは比重が大きい為に摩擦伝動ベルトにおいては二硫化モリブデンをベルトのV形状部表面或いはVリブ部表面に露出させるのは至難の技であった。
【0009】
ここで本発明の目的とするところはポリウレタン製ベルトにおいて、紫外線にさらされた状況下において使用又は保管しても変色が極めて少なく抑えられ、外観的に経時変化の少なく、プーリとの係合時において発音を抑えるポリウレタン製ベルトを提供するところにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために請求項1としてはベルトがベルト周方向に伸びる少なくともひとつのV形状突部或いはVリブを本体と一体に形成した摩擦伝動ベルトであって、ベルト本体内に心線を長手方向に沿って埋設したポリウレタン弾性体からなるベルトにおいて、上記ポリウレタン弾性体中にラードをポリウレタン100質量部に対して0.5〜7質量部添加するポリウレタン製ベルトにある。ラードを使用することにより、ベルト表面にラードが析出することによってベルト表面の摩擦係数が下がり、ベルトとプーリとの係合時或いはプーリアライメントが狂った場合でもより音の発生を抑えることができる。さらにラードの量を制限することによってポリウレタン弾性体の物性を低下させることなしに、十分音の発生を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によると、ポリウレタン100質量部に対して少なくともベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を0.08〜1.6質量部、ヒンダードアミン系紫外線安定剤を0.08〜1.6質量部、及びヒンダードフェノール系の酸化防止剤を0.04〜0.8質量部ブレンドした耐光安定剤を添加した請求項1に記載のポリウレタン製ベルトにある。請求項2に記載の発明によると、音の発生を抑えることができる上に、上記量の耐光安定剤を添加することで、紫外線による変色を大きく抑えることができ、ベルトの外観の経時変化を極力少なくすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明のポリウレタン製Vベルトの斜視図であり、図2は本発明のポリウレタン製Vリブドベルトの斜視図であり、図3は本発明のポリウレタン製トランケート形状Vリブドベルトの斜視図である。本発明の摩擦伝動ベルトは、ベルト本体内にベルト長手方向にポリエステル、アラミド ( 商品名ケプラー ) 、ナイロン、グラスファイバー等をもって構成される抗張体ロープ3が螺旋状に埋設され、又ベルト本体1の内周面には、ベルト周方向に延びる少なくとも一つのV形状突部がベルト本体1と一体に形成されている。
【0013】
ここで、ベルト本体を構成するポリウレタン弾性体はイソシアネートとして、トルエンジイソシアネート及びメチレンジイソシアネート等が、ポリオールとしてはポリテトラメチレングリコール、アジペート系等で構成されている。
【0014】
又、このポリウレタン弾性体は耐光安定性を改善した組成物であり、耐光安定剤がポリウレタン100質量部に対して0.2〜4.0質量部の割合で添加されている。そして、本発明で使用される耐光安定剤は、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤及び、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤の三つの成分からなり、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては例えばメチル‐3− [ 3− t −ブチル−5− ( 2H−ベンゾトリアゾール−2−イル ) −4−ヒドロキシフェニル ] プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物が挙げられる。又ヒンダードアミン系の紫外線安定剤としては例えばヒンダードアミン系の紫外線安定剤としては例えばビス ( 1、2、2、6、6−ペンチメタル−4−ピペリジル ) セバケートが挙げられる。更にヒンダードフェノール系の酸化防止剤系としては例えばトリエチレングリコールビス [ 3− ( 3− t −ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル ) プロピオネートが挙げられる。
【0014】
又、三つの成分の夫々の添加量はポリウレタン100質量部に対してベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が0.08〜1.6質量部であり、ヒンダードアミン系の 紫外線安定剤が0.08〜1.6質量部でありヒンダードフェノール系の酸化防止剤が0.04〜0.8質量部の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤のうちのベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の添加量が0.08質量部未満であると変色に対する効果が無くなり、1.6質量部を越えるとウレタンの物性が低下する。
【0015】
またヒンダードアミン系の紫外線安定剤の添加量が0.08質量部未満であると変色に対する効果が無くなり、1.6質量部を越えるとウレタンの物性が低下するので好ましくない。更にヒンダードフェノール系の酸化防止剤の添加量が0.04質量部未満であると日光暴露後、ウレタンの物性の維持ができないという問題があり、0.8質量部を越えるとやはりウレタンの物性が低下するので好ましくない。
【0016】
さらにこのポリウレタン弾性体はラードを添加した組成物であり、ベルト表面に滲み出しベルト表面の摩擦係数を下げる。特にラード ( 飽和脂肪酸を多く含むトリグリセリド ) は分子量が800程度であり、ウレタンの軟質のセグメント中を適度な速度で通過し、ポリウレタン表面に析出することより、持続性のある滑剤として好ましい。さらに、配合コスト、作業性の面から考慮してもラードが最も好ましい。
【0017】
ラードをウレタンプレポリマーに添加する方法としては、例えばラードは融点が30〜38°Cであり、それ以上の温度をラードにかけ液体状にした上で、ウレタンプレポリマーに添加し攪拌した後さらに硬化剤を混合し攪拌するとすぐに注型を行い一定時間所定の温度で架橋後脱型してベルトスリーブとし、その後、所定幅にカットしてポリウレタン製摩擦伝動ベルトを得る。
【0018】
上記の成形方法としては特に限定されず、通常の注型法、或いは内型と外型を所定の回転数で回転させ、上記混合液を注型後、遠心力にて内型と外型の間のキャビティ内に液体を充填して所定の温度で架橋を行う、遠心成形法であっても良い。そして上記ポリウレタン製摩擦伝動ベルトに使用される金型は、少なくとも外型と内型を使用し、外型の内周面には製品となったときにV形状或いはVトランケート形状となる溝を刻設したものか或いは内周面がフラットであるものを用いる。また内型は、外周面がフラットである円筒あるいは円柱状のものか、又は外周面に矩形状の突起が長手方向に複数個均等に列設された円筒或いは円柱状の内型を使用しても良い。
【0019】
内周面がフラットである外型を使用した場合は、架橋を行いスリーブを成形後研磨あるいはVリブ部を形成する。
【0020】
ポリウレタン製摩擦伝動ベルトにあっては、ポリウレタン100質量部に対して0.5〜7質量部ラードを添加するのが好ましい。ここで、ラードの添加量が0.5質量部未満であるとラードの効果が少なく、発音を抑制することができにくく、又ラードの添加量が7質量部を越えると高伝達力を要求される摩擦伝動ベルトにあっては、スリップが発生し所定の動力を伝達できない。
【0021】
【実施例】
実施例1としてポリエーテル系ウレタンプレポリマー100質量部に硬化剤として3.3´−ジクロロ−4,4´ジアミノジフェニルメタンと耐光安定剤としてポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤のブレンド比が2:2:1の割合で混ぜたものを耐光安定剤として2質量部添加しさらにラードを7質量部添加したものからなるポリウレタン製のVリブドベルトを使用した。このとき、ポリウレタン製のVリブドベルトとしてはベルトサイズとして200‐J‐4のベルトを用いた。このベルトは、ベルト長さが20インチ、ベルト形がJ形、リブ数が4リブのベルトであった。ベルト形のJ形とは図1に示すように、断面寸法としてリブピッチPが2.34mm、リブ角度θが40度、厚さHが2.3mm、リブ底厚みTが1.7mm、総厚H+Tが4.0mmの寸法をしたベルトである。実施例2として実施例1のプレポリマー100質量部に実施例1の硬化剤と耐光安定剤としてポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤のブレンド比が2:2:1の割合で混ぜたものを耐光安定剤として0.2質量部添加しさらにラードを0.5質量部添加した。
【0022】
比較例1としては耐光安定剤及びラードを添加していないポリウレタンのみからなる図1の断面形状をしたポリウレタン製のVリブドベルト200‐J‐4のベルトを用いた。比較例2としてポリウレタン100質量部に実施例の硬化剤と耐光安定剤としてポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤のブレンド比が2:2:1の割合で混ぜたものを耐光安定剤として2質量部添加したものを用いた。このときラードを添加しなかった。参考例1としてはポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤をブレンド比が1:1で混ぜたものを耐光安定剤として2質量部添加したものからなるポリウレタン製のVリブドベルト200‐J‐4を用いた。このとき、ラードをポリウレタン100質量部に対して7質量部添加した。参考例2としてポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤のブレンド比が2:2:1の割合で混ぜたものを耐光安定剤として0.1質量部添加したものからなるポリウレタン製のVリブドベルト200‐J‐4のベルトを用いた。このときラードをポリウレタン100質量部に対して7質量部添加した。
【0023】
以上の実施例1及び2と、比較例1及び2、参考例1及び2のベルトで、加速変色テスト ( サンシャインテスト ) をいった。加速変色テスト ( サンシャインテスト ) はサンシャインカーボンウェザーメーターを使用し、温度条件は63±3°Cとした。変色判定方法は、ハンター色差式を使用し測定値は、L、a、b、ΔL、Δa、Δb、ΔE(H)で基準値としてサンシャインテスト前のサンプルのL、a、bを用い、色差ΔE(H)の値をグラフにした。その結果を図2に示す。
【0024】
何も添加しなかった比較例1は、耐光安定剤を2質量部添加した実施例1よりも12倍以上の速度で変色を起こしている。さらに、変色の収束点で、変速程度が比較例1は実施例1と比べて倍になっている。又、参考例1及び参考例2と比べても実施例1、実施例2はかなり変色の度合いは小さくなっている。よって、変色を十分に防止するには耐光安定剤をポリウレタン100質量部に対して0.2質量部は添加する必要があり、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤及びヒンダードフェノール系の紫外線吸収剤の三つの成分からなり、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の三成分を添加することが必須である。
【0025】
次に、実施例3としてポリウレタン製Vベルトの配合として、ポリエーテル系ウレタンプレポリマー100質量部に硬化剤として3,3´−ジクロロ−4,4´−ジアミノジフェニルメタンと耐光安定剤としてポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の紫外線吸収剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤のブレンド比が2:2:1の割合で混ぜたものを耐光安定剤として2質量部添加しさらにラードを7質量部添加したものからなるポリウレタン製のVベルトを使用した。このときポリウレタン製のVベルトとしてはポリマックスベルト5M‐900を用いた。このベルトは、ベルト長さが900mm、ベルト形が5Mのポリマックスベルトであった。ポリマックスベルト5Mとは図3に示すように、断面寸法としてベルト幅aが5mm、ベルト厚みbが3mmの寸法をしたベルトである。実施例4として実施例3のプレポリマー100質量部に実施例2の硬化剤と耐光安定剤としてポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾート系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤のブレンド比が2:2:1の割合で混ぜたものを耐光安定剤として0.2質量部添加しさらにラードを0.5質量部添加した。
【0026】
比較例3としては耐光安定剤及びラードを添加していないポリウレタンのみからなるポリマックスベルト5M‐900を用いた。比較例4としてポリウレタン100質量部に実施例の硬化剤と耐光安定剤としてポリウレタン100質量部にベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤とヒンダードアミン系の紫外線安定剤とヒンダードフェノール系の酸化防止剤のブレンド比が2:2:1の割合で混ぜたものを耐光安定剤として2質量部添加したものを用いた。このときラードは添加しなかった。
【0027】
そして、台上試験機にて発音テストを行った。試験条件として、プーリが5M形のV溝が形成されたプーリで、駆動側プーリ径25.6mm、従動側プーリ径128mm、ベルトに掛かる負荷170W、ベルト初期張力25ポンドで行った。駆動側プーリの回転数は1797rpmであった。そして、駆動プーリからの距離を20mm離して普通騒音計にて発音の測定を行った。その結果を表1及び図4に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1及び図4からも明らかなように、ラードをポリウレタン100質量部に対して7質量部添加したベルトは比較例4に比べると9dB、比較例3に比べると13dB程度下がっており、人間の耳では音の強さの変化の判別は音圧レベルが70dB以上の場合には音圧が10%変化すると変化が認められる。実施例3は比較例4及び比較例3に比べると9dB以上低くなる為明確にその差が認識される。従って、実施例3は比較例と比べて十分静粛になると考えられる。ラードがポリウレタン100質量部に対して0.5質量部添加した実施例4のベルトは、比較例3及び比較例4に比べて音圧は低くなっているが、実施例3と比べると、比較例3及び比較例4に近づいており、これよりラードの添加量を少なくするとほぼラードを添加しない状態と変わらなくなることがわかる。
【0030】
さらに同じ試験機で音圧を測定したのと同じ条件で耐摩耗性のテストを行った。その結果を図5に示す。これによると、100時間走行後で、実施例3のベルトは摩耗量が0.4%に対し耐光安定剤とラードのどちらも添加していない比較例3のベルトは0.7%となっており、耐摩耗性に関してもラードを添加すると向上することがわかる。
【0031】
また実施例5として実施例3と同じ配合でポリマックスベルト11M−800を作製した。このベルトは、ベルト長さが800mm、ベルト形が11Mのポリマックスベルトであった。ポリマックスベルト11Mは5Mよりも断面寸法が大きく、図3に示すベルト幅aが11mm、ベルト厚みbが7mmの寸法をしたベルトで5Mに比べると伝動容量が大きいベルトである。さらに比較例5としてポリウレタン100質量部に耐光安定剤は入れずにラードを10質量部添加したポリマックスベルト11M−800を作製した。又、比較例6として比較例4と同じ配合で、ポリマックスベルト11M−800を作製した。
【0032】
上記ベルトを用いて台上試験機で走行時間とベルトのスリップ率の関係を測定した。試験条件としては、3軸の試験機で直径が67mmのプーリを3個用いた。そして上記プーリを1分間に5000回転で回転させ負荷として5.8馬力加えた。このときベルトの初張力は56ポンドであった。その結果を図5に示す。
【0033】
ポリウレタン100質量部に対してラードを7質量部添加した実施例5のベルトとラードを全く添加しなかった比較例6のベルトは走行時間が100時間を過ぎてもスリップ率が減少傾向にありベルトの機能が落ちていないことがわかるが、ポリウレタン100質量部に対してラードを10質量部添加したベルトは走行時間70時間程度でスリップ率は既に4%を越えており、さらにスリップ率は増加傾向にあり、これ以上走行すると所定の伝達力を伝えることができなくなることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によると、ベルトがベルト周方向に伸びる少なくともひとつのV形状突部或いはVリブを本体と一体に形成した摩擦伝動ベルトであって、ベルト本体内に心線を長手方向に沿って埋設したポリウレタン弾性体からなるベルトにおいて、上記ポリウレタン弾性体中にラードをポリウレタン100質量部 に対して0.5〜7質量部添加するポリウレタン製ベルトとしたことから、ベルト表面にラードが析出することによってベルト表面の摩擦係数が下がり、ベルトとプーリの係合時或いはプーリアライメントが狂った場合でもより音の発生を抑えることができる。さらに、ラードを適量適用使用することから、ポリウレタン弾性体の物性を低下させること無しに十分な動力を伝達することができる。
【0035】
請求項2に記載の発明によると、ポリウレタン100質量部に対して少なくともベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を0.08〜1.6質量部、ヒンダードアミン系紫外線安定剤を0.08〜1.6質量部、及びヒンダードフェノール系の酸化防止剤を0.04〜0.8質量部ブレンドした耐光安定剤を添加した請求項1に記載のポリウレタン製ベルトであることから、各成分の量を限定した耐光安定剤を使用し、ポリウレタンにラードを添加することによって変色防止の効果が十分に得られ、さらに音の発生を抑える効果が有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリウレタン製Vベルトの斜視図である。
【図2】本発明のポリウレタン製Vリブドベルトの斜視図である。
【図3】本発明のポリウレタン製トランケート状Vリブドベルトの斜視図である。
【図4】本発明のポリウレタン製Vリブドベルトの断面図である。
【図5】本発明のポリウレタン製Vベルトの断面図である。
【図6】本発明のVリブドベルトにおいて、サンシャイン時間に対し色差 ( ΔE ) をプロットしたグラフである。
【図7】台上試験機でポリマックスベルトの発音試験を行ったときの実施例と比較例の発音状況のグラフである。
【図8】台上試験機でのポリマックスベルトの耐摩耗性テストのグラフである。
【図9】台上試験機でのポリマックスベルトの走行時間とスリップ率との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
1 ポリウレタン製Vベルト
2 V形状突部
3 背面コグ
4 ポリウレタン製Vリブドベルト
5 ポリウレタン製トランケート状Vリブドベルト
Claims (2)
- ベルトがベルト周方向に伸びる少なくともひとつのV形状突部或いはVリブを本体と一体に形成した摩擦伝動ベルトであって、ベルト本体内に心線を長手方向に沿って埋設したポリウレタン弾性体からなるベルトにおいて、上記ポリウレタン弾性体中にラードをポリウレタン100質量部に対して0.5〜7質量部添加することを特徴とするポリウレタン製ベルト。
- ポリウレタン100質量部に対して少なくともベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を0.08〜1.6質量部、ヒンダードアミン系紫外線安定剤を0.08〜1.6質量部、及びヒンダードフェノール系の酸化防止剤を0.04〜0.8質量部ブレンドした耐光安定剤を添加した請求項1に記載のポリウレタン製ベルト。
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