JP2004115622A - 含フッ素樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂と、極性を有する官能基を備え、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物とを含むことを特徴とする含フッ素樹脂組成物である。含フッ素樹脂は、含フッ素環構造含を有することにより非晶性となるので、透明性に優れ、フッ素系溶剤に可溶となる。そして、含フッ素化合物がフッ素系溶剤に可溶であることにより、この含フッ素化合物を含フッ素樹脂とともにフッ素系溶剤に溶解させて、対象物上に容易に薄膜コーティングすることができる。そして、この含フッ素化合物が極性を有する官能基を備えることにより、対象物と薄膜との密着性を向上させることができる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性を有することから、撥水撥油処理剤、油脂這い上がり防止剤などとして広く利用されてきた。しかし、従来の含フッ素樹脂は結晶性を有し、各種溶剤への溶解性が低いため、対象物上に薄膜コーティングすることが困難であった。
【0003】
近年開発された非晶性の含フッ素樹脂は、透明性に優れ、パーフルオロカーボンなどのフッ素系溶剤に可溶であるため、溶剤に溶解させた後、塗布することによって容易に薄膜コーティングすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この非晶性の含フッ素樹脂は、樹脂構造中に対象物と強固に結合するような官能基を持たず、また、分子間力も小さいため、対象物との密着性に劣るという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭63−238111号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、対象物上に容易に薄膜コーティングすることができ、かつ密着性に優れた含フッ素樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段、及び作用・効果】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、含フッ素樹脂組成物において、含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂と、極性を有する官能基を備え、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物とを含むことを特徴とする。
【0008】
含フッ素樹脂は、含フッ素環構造を有することにより非晶性となるので、透明性に優れ、フッ素系溶剤に可溶となる。そして、含フッ素化合物についてもフッ素系溶剤に可溶なものを用いることにより、含フッ素樹脂と含フッ素化合物とをフッ素系溶剤に溶解させて、対象物上に塗布することにより容易に薄膜コーティングすることができる。そして、含フッ素化合物が極性を有する官能基を備えることにより、対象物と薄膜との密着性を向上させることができる。
【0009】
含フッ素樹脂組成物全体に対する含フッ素樹脂の割合が、20重量%未満であると、樹脂成分が不足するため、対象物上に均一なコーティング被膜を形成できないので好ましくない。含フッ素樹脂の割合が98重量%を超えると、対象物との密着性が不足するので好ましくない。以上より、含フッ素樹脂組成物全体に対する含フッ素樹脂の割合は、20重量%以上98重量%以下が好ましい。特に、30重量%以上70重量%以下が好ましい。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の含フッ素樹脂組成物において、前記含フッ素樹脂が、繰り返し単位(a)−CF2CF2−と、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(b)とを含むことを特徴とする。
【0011】
【化2】
(式中、X1及びX2はそれぞれ独立に−F又は−CF3であり、Yは−F、−ORfであり、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。)
【0012】
繰り返し単位(a)は、優れた耐熱性、耐薬品性を備えるポリテトラフルオロエチレンの繰り返し単位と同じものである。また、繰り返し単位(b)は含フッ素5員環構造を有している。このため、繰り返し単位(b)を含む含フッ素樹脂は非晶性となり、透明性に優れ、フッ素系溶剤に可溶となる。したがって、含フッ素樹脂が、繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)とを含むことにより、優れた耐熱性、耐薬品性を持ち、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素樹脂を得ることができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に含フッ素樹脂組成物において、前記含フッ素化合物が炭素数4〜21のポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を含む化合物であることを特徴とする。
【0014】
含フッ素化合物は、炭素数4〜21のポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を含むことにより、ポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を含むフッ素系溶剤との溶解性が向上する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の含フッ素樹脂組成物において、前記官能基が水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、リン酸基、アルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0016】
水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、リン酸基、アルコキシシリル基は強い極性を有しているので、これらからなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を含むことにより、対象物と薄膜との密着性を効果的に向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂としては、繰り返し単位(a)−CF2CF2−と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)とを含むものを用いることができる。
【0018】
【化3】
(式中、X1及びX2はそれぞれ独立に−F又は−CF3であり、Yは−F、−ORfであり、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。)
【0019】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位のうち、下記式(3)、(4)で表されるものが好ましい。
【0020】
【化4】
【0021】
【化5】
【0022】
本発明に用いられる含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂の分子量は、5,000以上1,000,000以下が好ましい。5,000未満であると、被膜形成能力が劣るため、コーティング膜として使用できないので好ましくない。1,000,000を超えると、フッ素系溶剤への溶解性が低下し、薄膜コーティングが困難となるので好ましくない。
【0023】
本発明に用いられる含フッ素樹脂は、対応する単量体を、有機溶媒中もしくは水中の懸濁重合法、又は水性乳化重合法にて、適当なラジカル重合開始剤の存在下、公知の方法に従って製造することができる。
【0024】
単量体としては、繰り返し単位(a)に対応するテトラフルオロエチレン、及び繰り返し単位(b)に対応する一般式(5)で表される化合物を用いることができる。
【0025】
【化6】
(式中、X1及びX2はそれぞれ独立に−F又は−CF3であり、Yは−F、−ORfであり、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。)
【0026】
有機溶媒としては、CCl2F2、CCl3F、CCl2FCClF2、CClF2CClF2などのクロロフルオロカーボンや、フルオロポリエーテルなどを用いることができる。
ラジカル重合開始剤としては、ビストリクロロアセチル過酸化物、ビスジクロロフルオロアセチル過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどを用いることができる。
【0027】
本発明において、極性を有する官能基を備え、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物としては、炭素数4〜21のポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を含む化合物を用いることができる。また、極性を有する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、リン酸基、アルコキシシリル基などを用いることができる。
【0028】
上記含フッ素化合物としては、一般式CnF2n+1RX3(但し、4≦n≦21、Rはアルキル基、X3は極性を有する官能基を示す。)で表される化合物が挙げられる。このうち、C6F13C2H4COOH、C7F15C2H4COOH、C8F17C2H4COOH、C9F19C2H4COOH、C10F21C2H4COOH、C11F23C2H4COOH、C12F25C2H4COOH、C13F27C2H4COOH、C14F29C2H4COOH、C15F31C2H4COOH、C16F33C2H4COOH、C17F35C2H4COOH、C18F37C2H4COOH、C19F39C2H4COOH、C20F41C2H4COOH、C21F43C2H4COOHなどのパーフルオロアルキルエチルカルボン酸類、C6F13C2H4Si(OCH3)3、C7F15C2H4Si(OCH3)3、C8F17C2H4Si(OCH3)3、C9F19C2H4Si(OCH3)3、C10F21C2H4Si(OCH3)3、C11F23C2H4Si(OCH3)3、C12F25C2H4Si(OCH3)3、C13F27C2H4Si(OCH3)3、C14F29C2H4Si(OCH3)3、C15F31C2H4Si(OCH3)3、C16F33C2H4Si(OCH3)3、C17F35C2H4Si(OCH3)3、C18F37C2H4Si(OCH3)3、C19F39C2H4Si(OCH3)3、C20F41C2H4Si(OCH3)3、C21F43C2H4Si(OCH3)3などのパーフルオロアルキルエチルトリメトキシシラン類が好ましい。
【0029】
また、上記含フッ素化合物としては、炭素数4〜21のポリフルオリアルキル基又はポリフルオロエーテル基を有する不飽和化合物と、極性を有する官能基を備えた不飽和化合物との共重合物を用いることもできる。共重合比は、極性を有する官能基を備えた不飽和化合物が、共重合物全体に対して50重量%以下であることが好ましい。50重量%を超えると、フッ素系溶剤に対する共重合物の溶解性が低下するので好ましくない。特に、10重量%以下が好ましい。
【0030】
上記共重合物としては、一般式CmF2m+1SO2N(CH3)C2H4OCOCH=CH2(但し、4≦m≦21)と、HOC4H8OCOCH=CH2との共重合物を挙げることができる。また、(CF3)2C6F12C2H4OCOC(CH3)=CH2と、(OH)3SiC2H4OCOCH=CH2との共重合物なども挙げることができる。
【0031】
本発明に用いられる共重合物は、対応する単量体を適当な有機溶媒に溶解させ、重合開始剤(使用する有機溶媒に可溶な過酸化物、アゾ化合物など)、又は電離性放射線の作用などにより、溶液重合することによって得ることができる。溶液重合に好適な溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、メチルクロロホルムなどを用いることができる。
【0032】
上記した、極性を有する官能基を備え、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
含フッ素樹脂及び含フッ素化合物を溶解させるフッ素系溶剤としては、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナンなどのパーフルオロカーボン類、一般式CF3[(OCF(CF3)CF2)p(OCF2)q]OCF3(但し、0≦p≦14、0≦q≦14)で表されるパーフルオロポリエーテル類、一般式HCF2[OCF(CF3)CF2)r(OCF2)s]OCF2H(但し、0≦r≦14、0≦s≦14)で表されるハイドロフルオロポリエーテル類、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテルなどのハイドロフルオロエーテル類、2,3−ジハイドロパーフルオロペンタンなどのハイドロフルオロカーボン類、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンなどのハイドロクロロフルオロカーボン類などを用いることができる。上記フッ素系溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の含フッ素樹脂組成物は、含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂と、極性を有する官能基を備え、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物とをフッ素系溶剤に溶解させた後、これを乾燥させ、フッ素系溶剤を蒸発させることにより得ることができる。このとき、含フッ素樹脂と、含フッ素化合物とをそれぞれ異なったフッ素系溶剤に溶解させて、含フッ素樹脂溶液及び含フッ素化合物溶液を調製した後、両者を混合し、これを乾燥させてもよい。
【0035】
含フッ素樹脂と含フッ素化合物とを含んだ溶液を対象物上に塗布し、これを乾燥させ、フッ素系溶剤を蒸発させることにより、対象物上に含フッ素樹脂組成物を析出させると同時に、薄膜コーティングを行ってもよい。
【0036】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂として、繰り返し単位−CF2CF2−と、下式(6)に示す繰り返し単位とを含む、アウジモント株式会社製 ALGOFLON AD60(商品名) 1gを、アウジモント株式会社製 GALDEN SV−90(商品名)(沸点90℃)99gに溶解させ、含フッ素樹脂溶液を調製した。
【0037】
【化7】
【0038】
C12F25C2H4Si(OCH3)31gを、上記の含フッ素樹脂溶液に加えることにより、含フッ素樹脂組成物溶液を調製した。
【0039】
上記のように調製した含フッ素樹脂組成物溶液を、アセトンにより脱脂洗浄したガラス板上に刷毛で塗布し、常温乾燥後、熱風乾燥炉で80℃、60分間加熱することにより、ガラス板上に含フッ素樹脂組成物の薄膜を得た。
【0040】
<実施例2>
ALGOFLON AD60(商品名) 1gを、GALDEN SV−90(商品名)(沸点90℃)99gに溶解させ、含フッ素樹脂溶液を調製した。
【0041】
C10F21C2H4OCOCH=CH298gと、HOOCCH=CH22gと共重合させることにより、極性を有する官能基を備え、フッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物を得た。この含フッ素化合物1gを、スリーエム社製 ノベック HFE−7100(商品名) 99gに溶解させ、含フッ素化合物溶液を調製した。
【0042】
上記のように調製した、含フッ素樹脂溶液50重量部と、含フッ素化合物溶液50重量部とを混合し、含フッ素樹脂組成物溶液を調製した。
【0043】
上記のように調製した含フッ素樹脂組成物溶液を、アセトンにより脱脂洗浄したガラス板上に刷毛で塗布し、常温乾燥後、熱風乾燥炉で80℃、60分間加熱することにより、ガラス板上に含フッ素樹脂組成物の薄膜を得た。
【0044】
<実施例3>
C10F21SO2N(CH3)C2H4OCOCH=CH290gと、HOC4H8OCOCH=CH210gとを共重合させることにより、極性を有する官能基を備え、フッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物を得た。実施例2における、C10F21C2H4OCOCH=CH2とHOOCCH=CH2との共重合物に代えて、この含フッ素化合物を用いた以外は、実施例2と同様にして含フッ素樹脂組成物の薄膜を得た。
【0045】
<実施例4>
(CF3)2C6F12C2H4OCOC(CH3)=CH290gと、(OH)3SiC2H4OCOCH=CH210gとを共重合させることにより、極性を有する官能基を備え、フッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物を得た。実施例2における、C10F21C2H4OCOCH=CH2とHOOCCH=CH2との共重合物に代えて、この含フッ素化合物を用いた以外は、実施例2と同様にして含フッ素樹脂組成物の薄膜を得た。
【0046】
<比較例1>
ALGOFLON AD60(商品名) 1gを、GALDEN SV−90(商品名)(沸点90℃)99gに溶解させ、含フッ素樹脂溶液を調製した。この含フッ素樹脂溶液を、アセトンにより脱脂洗浄したガラス板上に刷毛で塗布し、常温乾燥後、熱風乾燥炉で80℃、60分間加熱することにより、ガラス板上に含フッ素樹脂の薄膜を得た。
【0047】
<密着性能評価>
薄膜が形成されたガラス板を、80℃の熱水中に30分間浸漬した。このときの薄膜の状態を観察し、結果を表1にまとめた。この結果から、本発明の含フッ素樹脂組成物は対象物との密着性に優れていることが確認された。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、対象物上に容易に薄膜コーティングすることができ、かつ密着性の向上した含フッ素樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
このような本発明の含フッ素樹脂組成物は透明性に優れるので、光ファイバ、光ファイバの接続部分の接着剤、半導体絶縁膜、乱反射防止剤などに好適に用いることができる。
Claims (4)
- 含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂と、極性を有する官能基を備え、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物とを含むことを特徴とする含フッ素樹脂組成物。
- 前記含フッ素化合物が炭素数4〜21のポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を含む化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の含フッ素樹脂組成物。
- 前記官能基が水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、リン酸基、アルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の含フッ素樹脂組成物。
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