JP2015212369A - 樹脂組成物、樹脂組成物溶液、コーティング膜および塗料 - Google Patents

樹脂組成物、樹脂組成物溶液、コーティング膜および塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】生体安全性に優れ、かつ炭素数が6又は8のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルポリマー材料と同等又はそれ以上の撥水撥油性を基材に付与することのできる樹脂組成物およびコーティング膜を提供する。
【解決手段】式[1]で表される繰り返し単位を1質量%以上含むポリスチレン誘導体と、熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物は、ポリスチレン誘導体と熱可塑性樹脂との総質量に対してポリスチレン誘導体を0.01質量%以上99.0質量%以下含み、かつ、基材に塗布して形成されるコーティング膜の表面の、水の接触角が100°以上またはヘキサデカンの接触角が50°以上、もしくは水の接触角が100°以上かつヘキサデカンの接触角が50°以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物溶液、コーティング膜および塗料に関する。
フッ素系材料は撥水撥油性、高耐熱性を有することからコーティング分野等において広く使用されている。このような分野においては撥水撥油性が優れるという観点から、有効成分として、炭素数が8以上のフルオロアルキル基を有するフッ素系重合体を用いることが多かった(例えば特許文献1を参照)。
特に工業的な撥水・撥油剤としては、主に炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が使用されてきた。しかしながら、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が分解されるとパーフルオロオクタン酸(以下、PFOA)を生成することがある。PFOAは、生体への蓄積性が懸念されるため、近年では、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系重合体に代わる製品、材料、プロセスなどが検討されている。
近年、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体に代わる撥水撥油剤として、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が提案されている。しかしながら、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する公知のフッ素系材料をコーティング分野で用いた場合、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系重合体を用いた場合と比べて、基材に付与される撥水・撥油性が劣っている。又、上記のような炭素数が6あるいは8以上の長鎖のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、耐熱性、耐湿性あるいは耐候性のような安定性が不十分であるという問題点も抱えている。そのため、従来の炭素数が6あるいは8以上の長鎖のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体の上記の問題点を抜本的に解決した新材料の開発が望まれていた。
これまで、長鎖のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体とは異なる構造を有し、分解してもPFOAを発生しない撥水・撥油性剤として以下のような重合体が報告されている。
特許文献2には、パーフルオロポリエーテル基含有アルコール鎖がエステル結合を介して(メタ)アクリル酸ポリマー骨格に連結しているポリマーからなる撥水撥油剤が開示されている。しかしながら、当該ポリマーはエステル結合を有するため、耐熱性、耐湿性あるいは耐候性のような安定性が不十分であるという問題点があった。
特許文献3には、パーフルオロポリエーテル鎖がポリスチレンの芳香核に直接結合している改質ポリスチレン樹脂が開示されている。しかしながら、当該ポリマーの合成には、導入しようとするパーフルオロポリエーテル鎖と同じモル数のパーフルオロポリエーテル基含有パーオキシドを使用するので、安全性と経済性の懸念より工業的な量産製造は困難である。
特許文献4には、パーフルオロポリエーテル鎖がポリスチレンの芳香核にエーテル結合(−CHFCFOPh−)を介して結合している改質ポリスチレン樹脂が開示されている。しかしながら、当該ポリマーはガラス転移温度が室温あるいはそれ以下であるため、その塗膜は粘着性があるのでコーティング膜材料としての使用は困難である。また、特許文献4には、当該ポリマーがどのような撥水・撥油性を示すのかについては何も示されていない。
特開2006−299016号公報 特開昭63−42954号公報 特開平5−78419号公報 特開平2−103210号公報
炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体は人体に有害なパーフルオロオクタン酸(PFOA)を発生するおそれがあるので、それに替わる撥水撥油剤として炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体が提案されている。しかしながら、当該代替材料は撥水・撥油性が十分ではない上に、炭素数が8以上の長鎖のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と同様に、耐熱性、耐湿性あるいは耐候性のような安定性が不十分であるという本質的な問題点も抱えている。
そのため、コーティング分野等においては、炭素数が6あるいは8以上の長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体が抱えている上記の問題点を抜本的に解決した新材料の開発が望まれていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コーティング分野などに用いたときに長期間安定して充分な撥水・撥油性を基材に付与することができ、これにより、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を含むフッ素系重合体に代えて用いることができる樹脂組成物、樹脂組成物溶液、コーティング膜および塗料を提供することを目的とする。
本発明者は、特許文献4に開示されているパーフルオロポリエーテル基含有ポリスチレン系樹脂の特性を精査し、その問題点を解決することにより、従来の長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体に代わる実用的な撥水撥油剤を開発すべく鋭意検討を続けた。その結果、本発明者はパーフルオロポリエーテル鎖を含む特定構造のポリスチレン系樹脂を利用した以下に示すような有用材料を開発し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は従来の撥水撥油剤の課題を解決する以下の発明に関するものである。
<1> 下記式[1]で表される繰り返し単位を1質量%以上含むポリスチレン誘導体と、熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物であって、前記ポリスチレン誘導体と前記熱可塑性樹脂との総質量に対して前記ポリスチレン誘導体を0.01質量%以上99.0質量%以下含み、かつ、当該樹脂組成物を基材に塗布して形成されるコーティング膜の表面の、水の接触角が100°以上またはヘキサデカンの接触角が50°以上、もしくは水の接触角が100°以上かつヘキサデカンの接触角が50°以上である樹脂組成物。
Figure 2015212369
(式[1]中、Yは水素原子または炭素数が6以下のアルキル基を表し、Qは少なくとも1個のエーテル結合を含有し炭素原子の合計数が5個以下の2価の基を表し、Rfは少なくとも1個のエーテル基を含有する炭素原子の合計数が25個以下の1個の水素原子を含んでも良い1価のパーフルオロエーテル基である。zは1〜3から選ばれる整数である。Qの芳香核への結合位置は、芳香核とポリマー主鎖の結合位置に対してオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれでもよい。式[1]中の芳香核に結合している水素原子の一部又はすべてはフッ素原子で置換されていてもよい。)
<2> 前記式[1]で表される繰り返し単位が以下の式[1−1]で表される繰り返し単位である前記<1>に記載の樹脂組成物。
Figure 2015212369
(式[1−1]中、Yは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素原子数が3以下であるエーテル結合を含有する2価基である。Rf01はRfa−O−[CF(CF)CFO]n1−[CFCFCFO]n2−[CFCFO]n3−[CFO]n4−Rfc−であって、Rfaは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、n1、n2、n3、n4はそれぞれ0または1〜6から選ばれる整数であるとともに、n1+n2+n3+n4は0〜6であり、Rfcは炭素原子数が2以下の1個の水素原子を含んでも良いパーフルオロアルキレン基である。)
<3> 前記式[1]で表される繰り返し単位が以下の式[1−2]で表される繰り返し単位である前記<1>に記載の樹脂組成物。
Figure 2015212369
(式[1−2]中、Yは水素原子またはメチル基、Lは0または1〜4から選ばれる整数、Rfaは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。)
<4> 前記樹脂組成物の溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜の基材に対する密着性評価試験で残存枡の数が、25枡中24枡以上であることを特徴とする前記<1>ないし前記<3>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<5> 前記樹脂組成物の溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜を大気中250℃の温度条件で3時間加熱した後の水の接触角が加熱前の接触角の90%以上であることを特徴とする前記<1>ないし前記<4>のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
<6> 前記樹脂組成物の溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜を1000時間の耐侯性試験に晒した後の水の接触角が試験前の接触角の90%以上であることを特徴とする前記<1>ないし前記<5>のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
<7> 前記<1>ないし前記<6>のいずれか一つ項に記載の樹脂組成物を溶剤に溶解してなる樹脂組成物溶液。
<8> 前記<7>に記載の樹脂組成物溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜。
<9> 屋外用途向けである前記<8>に記載のコーティング膜。
<10> 前記<7>に記載の樹脂組成物溶液からなる塗料。
<11> 屋外用途向けである前記<10>に記載の塗料。
本発明者は上記のパーフルオロポリエーテル鎖を含有するポリスチレン誘導体の特性を詳細に検討した結果、当該ポリスチレン誘導体を利用することにより、下記に示すような様々な優れた特性を有する樹脂組成物やコーティング材料が実現された。
当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂は、炭素数が8のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と同等、あるいはそれ以上の撥水・撥油性を示すことが確認された。従来、長鎖パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の優れた撥水・撥油性は、剛直な長鎖パーフルオロアルキル鎖が配向・凝集することによって低表面エネルギーの表面が形成されるためと解釈されていた。したがって、上記のようにフレキシブルなパーフルオロポリエーテル鎖を含有するポリスチレン系樹脂が、炭素数が8の剛直なパーフルオロアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体と同等、あるいはそれ以上の撥水・撥油性を示すことは従来の知見からは全く予期できない発見であった。
当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂は、極めて多様な溶媒に可溶であることが見いだされた。すなわち、当該ポリマーは様々な含フッ素有機溶媒に可溶であるだけでなく、様々な非フッ素系有機溶媒にも良好な溶解性を示すことが分った。その結果、当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種の樹脂材料との共通溶媒を使用することにより「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を溶解した均一樹脂組成物溶液」の形成が可能になり、更に当該樹脂組成物溶液より「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含む樹脂組成物」あるいは「当該樹脂組成物の溶液を基材に塗布することにより形成されるコーティング膜」の作製が可能となった。一方、従来の炭素数が8以上の長鎖で剛直なパーフルオロアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の場合には、高い撥水・撥油性を示す高フッ素含有率ポリマーはフッ素系有機溶媒にしか良好な溶解性を示さないため、各種の樹脂材料と組み合わせた樹脂組成物の均一溶液の形成、あるいは当該樹脂組成物のコーティング膜の作製は困難である。以上のように、「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含む組成物、及び、当該樹脂組成物の溶液を基材に塗布することにより形成されるコーティング膜」は、従来の撥水撥油剤の知見からは予測困難であり、本発明者らの検討により初めて実現されたものである。
当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含む樹脂組成物の溶液を基材に塗布することにより形成されるコーティング膜においては、当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂の含有量が極めて低い場合でも優れた撥水・撥油性が発現することが確認された。この理由は明確ではないが、ひとつの可能性として、当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)からなるコーティング膜においては、当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂は効果的に表面濃縮されるためと推察される。
当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と熱可塑性樹脂からなるコーティング膜は、上記の優れた撥水・撥油性に加えて極めて優れた耐熱性や耐候性を示すことが確認され、実用性に優れた高耐久性の撥水・撥油性コーティング膜を提供することが可能となった。当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂の骨格であるポリスチレン構造では、光反応、酸素酸化反応、あるいは光照射下での酸素酸化反応に活性なベンジル水素を有する。したがって、一般にポリスチレンは酸化反応を受けやすい樹脂と見なされ、特に光酸化反応を受けやすいので屋外用途での使用は避けられている。それに対して、ポリスチレンと同様にベンジル水素を有する当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂を含むコーティング膜が優れた耐酸化性および優れた耐候性(光照射下での耐酸化性)を示すことは、従来の知見からは全く予期できず、本発明者らの検討により初めて発見された実用的に極めて重要な特性である。
従来から使用されていた長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系ポリマーからなる撥水撥油性コーティング膜は、無機材料製基材および有機材料製基材のいずれに対しても密着性が不十分であり、特に有機材料製基材に対しては密着性が極めて不良であるという問題を抱えていた。それに対して、「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含むコーティング膜」は、無機材料製基材に対しては勿論のこと各種の有機材料製基材に対しても極めて優れた密着性を示すことが確認された。この結果、各種の基材(特に有機材料製基材)の表面に優れた撥水撥油性と安定性に加えて強固な密着性をも併せ持つ高性能コーティング膜の形成が可能となった。
当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂単独のコーティング膜ではフレキシブルなパーフルオロポリエーテル鎖に起因してガラス転移温度が低いために表面が粘着性となり単独での使用は困難である。一方、上記の「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含むコーティング膜」では室温付近では全くコーティング膜表面の粘着性は無くタックフリーであり、様々な用途での使用が可能である。
本発明によれば、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を含むフッ素系重合体に代えて用いることができる樹脂組成物、前記樹脂組成物を含む樹脂組成物溶液、前記樹脂組成物溶液より得られるコーティング膜、及び前記樹脂組成物溶液からなる塗料を提供することができる。
つまり本発明によれば、優れた環境適合性(PFOA発生のおそれが無い)、優れた撥水・撥油性、優れた安定性(耐熱性、耐湿性・耐加水分解性、耐候性等)、各種基材に対する優れた密着性及び優れた表面特性(タックフリー)を併せ持つ実用的な撥水撥油性組成物とそのコーティング膜等を提供することができる。
本発明は、特定の構造の含フッ素ポリスチレン誘導体と、熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物、及びその関連材料に関するものである。
以下に、詳しく本発明について説明する。
(ポリスチレン誘導体)
本発明のポリスチレン誘導体としては、ポリスチレン誘導体の全質量に対して式[1]で表される繰り返し単位を1質量%以上含むものが使用される。
Figure 2015212369
(式[1]中、Yは水素原子または炭素数が6以下のアルキル基を表し、Qは少なくとも1個のエーテル結合を含有し炭素原子の合計数が5個以下の2価の基を表し、Rfは少なくとも1個のエーテル基を含有する炭素原子の合計数が25個以下の1個の水素原子を含んでも良い1価のパーフルオロエーテル基である。zは1〜3から選ばれる整数である。Qの芳香核への結合位置は、芳香核とポリマー主鎖の結合位置に対してオルト位、メタ位、あるいはパラ位のいずれでもよい。式[1]中の芳香核に結合している水素原子の一部又はすべてはフッ素原子で置換されていてもよい。)
式[1]中のYは、水素原子または炭素数が6以下のアルキル基である。炭素数が6以下のアルキル基としては、直鎖アルキル基および分岐アルキル基のいずれであってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。Yとしては、水素原子および炭素数が4以下のアルキル基が好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
式[1]中のQとしては、少なくとも1個のエーテル結合を含有し炭素原子の合計数が5個以下の2価の基であって、例えば、下記式[2]で表される2価の基が挙げられる。
Figure 2015212369
(式[2]中、aは0または1であり、bは0または1〜3から選ばれる整数である。式[2]の右側の結合の手はRfと結合する手である。)
Qとしては、例えば、−O−、−OCH−、−OCHCH−、−OCHCHCH−、−OCHCHCHCH−、−OCH(CH)CH−、−OCHCH(CH)−、−OCHCH(OH)CH−、−OCHCH(OH)CHOCH−、−CHO−、−CHOCH−、−CHOCHCH−、−CHOCHCHCH−、−CHOCHCHCHCH−、−CHOCHCH(CH)OCH−、−OCHCHOCH−、−OCHCHOCHCH−、−CHOCHCHOCH−、−CHOCHCHOCHCH−等があげられる(各基の右側の結合の手はRfと結合する手である)。
これらのうち、−O−、−OCH−、−OCHCH−、−CHOCH−および−CHOCHCH−は、ポリマーが合成しやすいため好ましく、−O−、−OCH−、−CHOCH−がより好ましく、化学的安定性が特に優れているという点で−O−が特に好ましい。
式[1]中のRfは少なくとも1個のエーテル結合を含有しかつ1個の水素原子を含んでも良い1価のパーフルオロエーテル基であり、Rf中の炭素原子数は25個以下である。Rf中の[炭素原子の数/エーテル結合の数]の比は、通常は2.0以上9.0以下であり好ましくは2.2以上8.0以下であり、より好ましくは3.3以上6.0以下、特に好ましくは3.5以上5.0以下である。
Rfの例としては、例えば、下記の式[3]で表される基が挙げられる。
Figure 2015212369
式[3]中、Rfは炭素数が7以下のパーフルオロアルキル基であり、Rfは炭素数4以下の直鎖または分岐構造のパーフルオロアルキレン基から選ばれる1種又は複数種のパーフルオロアルキレン基であり、Rfは炭素数3以下のパーフルオロアルキレン基、または当該パーフルオロアルキレン基の1個のフッ素原子が水素原子で置換された構造のポリフルオロアルキレン基であり、Lは0または1〜10から選ばれる整数である。
Rfとしては、炭素数が7以下の直鎖または分岐構造のパーフルオロアルキル基があげられ、好ましくは炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは炭素数が3以下のパーフルオロアルキル基である。
Rfの具体例としては、CF−、CFCF−、CFCFCF−、(CFCF−、CFCFCFCF−、CFCFCFCFCF−、CFCFCFCFCFCF−、CFCFCFCFCFCFCF−があげられる。これらのうちCFCFCF−、CFCFCFCF−、CFCFCFCFCFCF−が好ましく、合成が容易でありかつ良好な撥水撥油性を示すという観点から特にCFCFCF−が好ましい。
Rfとしては、炭素数が4以下の直鎖又は分岐構造のパーフルオロアルキレン基から選ばれる1種または複数種のパーフルオロアルキレン基である。Rf中の炭素原子数は通常は1乃至4であり、好ましくは1乃至3であり、特に好ましくは3である。
Rfの具体例としては、−CF(CF)CF−、−CF(CF)−、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−、−CFCFCFCF−、−CFCF(CF)CF−があげられる。これらのうち−CF(CF)CF−、−CF(CF)−、−CF−、−CFCF−、−CFCFCF−が好ましく、合成が容易でありかつ良好な撥水撥油性を示すという観点から特に−CF(CF)CF−又は−CFCFCF−が好ましい。(Rfの具体例の各基の右側の結合の手は、式[3]中の(RfO)単位において酸素原子と結合する手である。)
式[3]中のLは、0または1〜10から選ばれる整数であり、好ましくは0または1〜6から選ばれる整数であり、より好ましくは0または1〜3から選ばれる整数であり、さらに好ましくは0または1〜2から選ばれる整数であり、特に好ましくは0または1である。
式[3]中の(RfO)セグメントにおいて、Rfが複数種のパーフルオロアルキレン基から構成される場合には、−CF(CF)CFO−CFCFCFO−CF(CF)CFO−・・・のように、相違する種類のRfがランダムに混在して並んでいてもよいし、同じ種類のRfが複数個ずつ並んでいてもよい。
Rfが複数種のパーフルオロアルキレン基からなる場合の(RfO)の具体例としては、例えば下記式[4]で表される基があげられる。
−[CF(CF)CFO]n1−[CFCFCFO]n2−[CFCFO]n3−[CFO]n4− [4]
(式[4]中、n1、n2、n3、n4はそれぞれ0または1〜6から選ばれる整数である。n1+n2+n3+n4の和は、式[3]中のLと同じである。)
Rfとしては、炭素数3以下のパーフルオロアルキレン基、または当該パーフルオロアルキレン基の1個のフッ素原子が水素原子で置換された構造のポリフルオロアルキレン基があげられる。
Rfの具体例としては、−CF−、−CFCF−、−CF(CF)−、−CFCFCF−、−CF(CF)CF−、−CFCF(CF)−、−CHFCF−、−CFCHFCF−等があげられる。これらのうち、−CFCF−、−CF(CF)−、−CHFCF−が好ましく、合成が容易でありかつ良好な撥水撥油性を示すという観点から特に−CHFCF−が好ましい(Rfの具体例の各基の右側の結合の手はQと結合する手である。)。
Rfの具体例としては、例えば、下記の式[R−1]、式[R−2]、式[R−3]、式[R−4]で表される基が挙げられる。
Figure 2015212369
Figure 2015212369
Figure 2015212369
Figure 2015212369
式[R−1]で表される基の具体例としては、CFCFCFOCHFCF−、CFCFCFOCF(CF)CFOCHFCF−、CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHFCF−、CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCF(CF)CFOCHFCF−が挙げられる。
また、式[R−2]、式[R−3]あるいは式[R−4]で表される基の具体例としては、上記の式[R−1]で表される基の具体例として挙げられた各構造の末端CHFCF基が、それぞれCF(CF)基、CFCF基あるいはCFCHFCFに置き替わった構造の基が挙げられる。
またRfとしては式[R−1]、式[R−2]、式[R−3]、式[R−4]のそれぞれの基における末端基CFCFCF基を炭素数が1〜7、好ましくは1〜6の直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基に置き換えた構造であってもよい。当該パーフルオロアルキル基の例としては、CF−、CFCF−、(CFCF−、CFCFCFCF−、CFCFCFCFCF−、CFCFCFCFCFCF−があげられる。
式[1]中のzは1〜3から選ばれる整数であるが、合成が容易である点からはzが1の場合がより好ましい。
式[1]におけるQの芳香核への結合位置は、芳香核とポリマー主鎖の結合位置に対してオルト位、メタ位、あるいはパラ位のいずれでもよいが、合成が容易である点や原料が入手しやすい点からはパラ位がより好ましい。
式[1]中の芳香核に結合している水素原子の一部又はすべてはフッ素原子で置換されていてもよいが、合成が容易である点からはフッ素原子で置換されていないものがより好ましい。
式[1]で表される繰り返し単位としては、下記式[1−1]で表される繰り返し単位がより好ましく、下記式[1−2]で表される繰り返し単位が特に好ましい。
Figure 2015212369
(式[1−1]中、Yは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素原子数が3以下であるエーテル結合を含有する2価基である。Rf01はRfa−O−[CF(CF)CFO]m1−[CFCFCFO]m2−[CFCFO]m3−[CFO]m4−Rfc−であって、Rfaは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、m1、m2、m3、m4はそれぞれ0または1〜6から選ばれる整数であるとともに、m1+m2+m3+m4の和は0〜6であり、Rfcは炭素原子数が2以下の1個の水素原子を含んでも良いパーフルオロアルキレン基である。)
は炭素原子数が3以下であるエーテル結合を含有する2価基であり、その例としては、例えば、−O−、−OCH−、−CHO−、−OCHCH−、−CHOCH−、または−CHOCHCH−等が挙げられる。Qとしては、−O−、−CHOCH−または−OCH−がより好ましく、−O−が特に好ましい。(Qの具体例の各基の右側の結合の手は、式[1−1]中のRf01と結合する手である。)
m1+m2+m3+m4の和は、0または1〜6から選ばれる整数であり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が特に好ましい。Rfcは炭素原子数が2以下の1個の水素原子を含んでも良いパーフルオロアルキレン基であり、その具体例としては、例えば、−CFCF−、−CF(CF)−、−CF−または−CHFCF−が挙げられる。Rfcとしては、−CF(CF)−または−CHFCF−がより好ましく、−CHFCF−が特に好ましい。(Rfcの具体例の各基の右側の結合の手は、式[1−1]中のQと結合する手である。)
式[1−1]におけるQの芳香核への結合位置は、芳香核とポリマー主鎖の結合位置に対してオルト位、メタ位、あるいはパラ位のいずれでもよいが、合成が容易である点や原料が入手しやすい点からはパラ位がより好ましい。
Figure 2015212369
(式[1−2]中、Yは水素原子またはメチル基、Lは0または1〜4から選ばれる整数、Rfaは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である)。
は0または1〜4から選ばれる整数であり、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が特に好ましい。また、Rfaは通常は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、好ましくは炭素数2〜4のパーフルオロアルキル基であり、特に好ましくはCFCFCF−である。
本発明のポリスチレン誘導体としては、ポリスチレン誘導体の全質量に対して式[1]で表される繰り返し単位を1質量%以上含むものが使用される。
本発明において使用される式[1]で表される繰り返しのみから構成されるポリスチレン誘導体は、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)やポリ(p−クロロメチルスチレン)等の反応性基含有ポリスチレン誘導体と活性末端基含有のパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物との反応により製造することができる。例えば、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)とCF=CF−[OCFCF(CF)]L1−ORfa型モノマー(L1,Rfaは式[1−2]と同じ)の付加反応により式[1−2]の繰り返し単位のみからなるポリスチレン誘導体を製造することができる。
また、CH=CY−Ph−[Q−Rfo]構造を有するモノマー(Y,Q,Rfo及びzは式[1]と同じ)の重合によっても式[1]で表される繰り返し単位のみからなるポリスチレン誘導体を製造することができる。
本発明のポリスチレン誘導体には、式[1]で表される繰り返し単位以外に、様々な構造の繰り返し単位を含んでいても良い。例えば、式[1]で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、ラジカル重合性、カチオン重合性、あるいはアニオン重合性の各種のモノマー単位を含んでいても良い。当該重合性モノマーの具体例としては、例えば、αメチルスチレン、p−アルコキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン(脱保護基反応を利用して合成される)等の各種置換スチレン、無置換スチレン、ビニルナフタレン、アセナフチレン、無水マレイン酸あるいはその誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリロニトリル、各種(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、各種カルボン酸ビニルあるいは各種ビニルエーテル等の様々な重合性モノマーが挙げられる。
上記の式[1]で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むポリスチレン誘導体の製造方法としては、例えば、1)p−ヒドロキシスチレン単位と各種モノマー単位からなる共重合体とCF=CF−[OCFCF(CF)]L1−ORfaのような活性末端基含有パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(L1,Rfaは式[1−2]と同じ)との反応による製造方法、あるいは、2)CH=CY−Ph−[Q−Rfo]構造を有するモノマー(Y,Q,Rfo及びzは式[1]と同じ)と各種コモノマーとの共重合による製造方法が挙げられる。
本発明のポリスチレン誘導体中の式[1]で表される繰り返し単位の含有量は通常は1質量%以上であるが、その用途や期待効果に応じて様々な式[1]で表される繰り返し単位の含有量のポリスチレン誘導体が使用可能である。すなわち、本発明のポリスチレン誘導体中の式[1]で表される繰り返し単位の含有量は、通常は1質量%以上100質量%以下の範囲から適宜選択される。
例えば、本発明のポリスチレン誘導体中の式[1]で表される繰り返し単位の含有量が1重量%以上10質量%未満の低含有量のポリスチレン誘導体、当該含有量が10質量%以上70質量%未満の中含有量のポリスチレン誘導体、又は当該含有量が70質量%以上90質量%未満あるいは当該含有量が90質量%以上の高含有量のポリスチレン誘導体が使用可能であり、100質量%含有量のポリスチレン誘導体も有用である。
(熱可塑性樹脂)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性があり、かつ本発明のポリスチレン誘導体と共通の溶媒に可溶であれば、特にそれ以上の制約は無く各種の構造の熱可塑性樹脂が使用可能である。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、通常は30℃以上400℃未満であり、好ましくは40℃以上400℃未満であり、より好ましくは60℃以上350℃未満であり、さらに好ましくは80℃以上300℃未満であり、特に好ましくは90℃以上270℃未満である。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂の例としては、例えば、ポリスチレン(ガラス転移温度(Tg):100℃)、ポリ−α−メチルスチレン(Tg:175℃)、ポリビニルナフタレン、ポリ−p−アルコキシキシスチレン、ポリ−p−アセトキシスチレン、ポリ−p−ヒドロキシスチレン等のポリスチレン類及びその共重合体、各種ポリアクリル酸エステルあるいはポリメタクリル酸メチル(Tg:90℃)で代表される各種ポリメタクリル酸エステル等のアクリル樹脂類及びその共重合体、ポリビニルエーテル類及びその共重合体、ポリウレタン、ウレタンアクリル樹脂類、エポキシ樹脂類、ニトロセルロース等の熱可塑性セルロース誘導体、ポリ塩化ビニル(Tg:82℃)、ポリビニルブチラール(Tg:60〜110℃)、各種シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)(Tg:69℃)やポリブチレンテレフタレート(PBT)(Tg:50℃)等のポリエステル類、各種ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリフェニレンエーテル(Tg:210〜220℃)や変性ポリフェニレンエーテル等の各種の溶剤可溶性エンジニアリングプラスチック、ABS樹脂(Tg:82〜125℃)、アルキド樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリ弗化ビニリデン及びその共重合体あるいは各種の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル等で代表される各種含フッ素ポリマー等の熱可塑性樹脂をあげることができる。
更には、本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、アクリルラッカー塗料のような各種の添加剤を含むラッカー塗料の固形分成分であっても良い。また、本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂を一種類のみ使用しても良いし複数の熱可塑性樹脂を組み合わせて使用しても良い。
(樹脂組成物)
本発明のポリスチレン誘導体は、優れた撥水撥油性を示す含フッ素ポリマーであるにもかかわらず含フッ素有機溶媒だけでなく様々な非フッ素系有機溶媒にも良好な溶解性を示すことが分った。その結果、当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種の樹脂材料との共通溶媒を使用することにより「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を溶解した均一樹脂組成物溶液」の形成が可能になり、更に当該樹脂組成物溶液より「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含む樹脂組成物」あるいは「当該樹脂組成物の溶液を基材に塗布・乾燥することにより形成されるコーティング膜」の作製が可能となった。
一方、従来の炭素数8以上の長鎖で剛直なパーフルオロアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の場合には、フッ素含有率が高い場合には優れた撥水・撥油性を示すが、そのような高フッ素含有率ポリマーはフッ素系有機溶媒にしか良好な溶解性を示さないため、各種の非フッ素系樹脂材料と組み合わせた樹脂組成物の均一溶液の形成、あるいは当該樹脂組成物のコーティング膜の作製は困難である。したがって、「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン系樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含む組成物、及び、当該樹脂組成物の溶液を基材に塗布することにより形成されるコーティング膜」は、従来の撥水撥油剤の知見からは予測困難であり、本発明者らの検討により初めて実現されたものである。
本発明のポリスチレン誘導体と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物(以下に、「本発明の樹脂組成物」と略記することがある)におけるポリスチレン誘導体の含有量は、ポリスチレン誘導体と熱可塑性樹脂との総質量に対して、0.01質量%以上99.0質量%以下であり、好ましく0.05質量%以上99.0質量%以下あるいは0.05質量%以上95.0質量%以下であるが、その用途や期待効果に応じて様々なポリスチレン誘導体含有量の組成物が使用可能である。
例えば、ポリスチレン誘導体含有量が0.01質量%以上30質量%未満あるいは0.05質量%以上30質量%未満等である低含有量組成物、ポリスチレン誘導体含有量が30質量%以上80質量%未満程度である中含有量組成物、更にはポリスチレン誘導体含有量が80質量%以上95.0質量%未満あるいは95.0質量%以上99.0質量%未満である高含有量組成物がそれぞれ使用可能である。
本発明のポリスチレン誘導体と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は、低いポリスチレン誘導体含有量でも効果的に当該組成物あるいはそのコーティング膜で優れた撥水撥油性を発現できるのが特徴である。
本発明のポリスチレン誘導体(すなわち、式[1]、式[1−1]あるいは式[1−2]式で表される繰り返し単位を1質量%以上含むポリスチレン誘導体)と熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物は各種の溶媒に溶解して均一溶液を形成することが可能であり、本発明のポリスチレン誘導体と熱可塑性樹脂を溶媒に溶解してなる樹脂組成物溶液も本発明に含まれる。
本発明の樹脂組成物溶液の作製に使用される溶剤としては、非ハロゲン系溶剤やハロゲン系溶剤等の各種の溶剤が使用可能である。非ハロゲン系溶剤としては、例えば、アセトンやメチルエチルケトン(MEK)などのケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサンやn−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、アニソール、ジメチルアニリンやピリジンのようなヘテロ原子含有芳香族系溶媒、トリエチルアミンやジエチルアミンのような窒素原子含有溶媒、ジメチルホルミアミドやジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒、ジメチルスルホキシドのようなイオウ原子含有溶媒、ジオキサンやテトラヒドロフラン(THF)等の環状エーテル系溶剤、ジ−n−ブチルエーテルやメチル-t-ブチルエーテル等のエーテル系溶剤、モノグライムやジグライムのようなグライム系溶媒、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブやセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコールやn−ブチルアルコールなどのアルコール系溶剤があげられる。
ハロゲン系溶剤としては、パーフルオロヘキサンやパーフルオロシクロヘキサンのようなパーフルオロカーボン(PFC)系溶媒、CFCFCHFCHFCFやc−Cのようなハイドロフルオロカーボン(HFC)系溶媒、CClFCFCHClFやCFCFCHClのようなハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)系溶媒、COCHやCOCのようなハイドロフルオロエーテル(HFE)系溶媒、パーフルオロポリエーテル(PFPE)系溶媒、ハイドロフルオロポリエーテル(HFPE)系溶媒、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼンやヘキサフルオロベンゼン等の含フッ素芳香族系溶媒などの各種のフッ素系溶剤、あるいはジクロロメタン、トリクロロエチレンやクロロベンゼン等の塩素系溶剤を用いることができる。
上記の溶剤は本発明で使用されるポリスチレン誘導体および熱可塑性樹脂の種類および用途に対応して適宜選択され、単独で使用される場合もあるし二種類以上の混合溶媒として使用されることもある。
本発明の樹脂組成物溶液に使用する溶剤の量は、樹脂組成物溶液の全質量(樹脂組成物と溶剤の合計質量)に対して通常は10質量%〜99.9質量%の範囲内であり、40質量%〜99.9質量%がより好ましく、50質量%〜99質量%がさらに好ましく、60質量%〜99質量%が特に好ましい。
上記の本発明の樹脂組成物溶液における溶剤の量は、当該樹脂組成物溶液から形成されるコーティング膜の用途やその要求特性に応じて適宜選択される。例えば、そのコーティング膜の膜厚は要求される耐久性や経済性に応じて適宜決定されるが、その膜厚は本発明の樹脂組成物溶液における溶剤の量(言い方を変えれば固形分濃度)によって制御することが可能である。
本発明の樹脂組成物溶液およびその樹脂組成物溶液には、用途に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、フィラー、着色剤等各種添加剤を添加することも可能である。
本発明の樹脂組成物を溶解した樹脂組成物溶液を各種基材上に塗布・乾燥することにより撥水撥油性に優れたコーティング膜を形成することができる。本発明の樹脂組成物溶液を基材に塗布してコーティング剤や塗料等として用いる場合の基材への塗布方法は、特に限定されず、ディップ(Dip)法、刷毛塗り法、スプレー法、ディスペンス法等、周知の塗布方法を用いることができる。
本発明の樹脂組成物およびその樹脂組成物溶液、あるいはその樹脂組成物溶液より形成される後述の特性を有するコーティング膜は、幅広い用途で使用可能である。その具体例としては、例えば、電子基板の防湿コーティング剤や、塩水・電解液・腐食性ガス等から基材を保護する耐薬品保護コーティング剤、マイクロモーターの軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤、HDDモーターの流体軸受けに用いる潤滑オイルの拡散を防止するオイルバリア剤、サインペン・ボールペン等のインクの漏れを防止する漏れ防止剤、コネクタ・電子部品等の汚れ防止剤、絶縁樹脂の這い上がり防止剤、MFコンデンサのリード封止樹脂の付着防止剤、金属部品の防錆剤、DVD・CD等のガイドレール用のドライ潤滑剤、表面反射防止コート剤、防水スプレー原液等に有用である。更に、本発明の樹脂組成物溶液を用いてキャスト法により撥水撥油性と安定性に優れたフイルム材料を製造することも可能である。
また、本発明の樹脂組成物溶液は、その優れた安定性(耐熱性、耐湿性、耐加水分解性、耐候性等:後述のコーティング膜に関する記載部分で説明する)を活かして各種の撥水撥油性塗料分野に使用可能である。その例としては、例えば、防錆塗料、外装塗料、住宅用塗料、家具・内装用塗料、自動車用塗料、補修用塗料、電子機器筐体塗料、玩具塗料、農業関連建造物用塗料、船舶用塗料、港湾関連建造物用塗料、温泉地関連建造物用塗料、橋梁用塗料、各種インフラ用塗料、各種屋外構造物・土木構造物用塗料等が挙げられる。また、本発明の樹脂組成物の使用形態としては、本発明の樹脂組成物以外に必要に応じて各種の添加剤を添加した溶液からなるラッカー型塗料としての用途が有用である。
以上に挙げた各種用途の中でも、本発明の樹脂組成物やコーティング膜の優れた耐候性を活かせる屋外用途向け撥水撥油性塗料(例えば、防錆塗料、外装塗料、住宅用塗料、自動車用塗料、補修用塗料、農業関連建造物用塗料、船舶用塗料、港湾関連建造物用塗料、温泉地関連建造物用塗料、橋梁用塗料、各種インフラ用塗料、各種屋外構造物・土木構造物用塗料等)が特に有用である。
(コーティング膜)
本発明の樹脂組成物を溶解した樹脂組成物溶液を各種基材上に塗布・乾燥することにより得られるコーティング膜(以下では「本発明のコーティング膜」と略記することがある)は、優れた撥水・撥油性を示すだけでなく、各種の基材に対する優れた密着性、優れた耐熱性、優れた耐候性や耐湿性等を示す。したがって、本発明のコーティング膜は、従来の長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系の撥水・撥油剤では困難であった様々な過酷な環境下でも長期間安定して使用できる高安定性の撥水・撥油性コーティング膜を初めて実現したものと言える。
以下に、本発明のコーティング膜の特性とその評価方法を詳しく説明する。
<撥水・撥油性(接触角)>
本発明のコーティング膜は、撥水・撥油性に優れているので以下の特性を有する。すなわち、本発明のコーティング膜の表面における水の接触角は、100°以上、またはヘキサデカンの接触角が50°以上、もしくは水の接触角が100°以上かつヘキサデカンの接触角が50°以上である。また、本発明のコーティング膜の表面における水の接触角は、好ましくは105°以上、より好ましくは110°以上、特に好ましくは115°以上である。また、更に、本発明のコーティング膜は、条件を選べば更に高い水の接触角を実現することも可能であり、例えば120°、130°あるいは140°程度の接触角を実現することも可能である。また、本発明のコーティング膜の表面におけるヘキサデカンの接触角は、好ましくは60°以上、より好ましくは70°以上であり、コーティング膜作製の条件を選べば80°あるいは90°程度の接触角を実現することも可能である。
本発明における「水及びヘキサデカンに対する接触角」の測定方法を以下に示す。対象となる樹脂組成物あるいは樹脂の溶液(固形分濃度:約5〜15wt%程度)に、ステンレス板(長さ75mm×幅25mm、厚さ1mm)を一回ディップして溶液を塗布し、100℃で1時間乾燥して接触角測定用のサンプルを得る。このサンプルについて、接触角測定装置DM−300(協和界面科学製)を用いて、液滴法で純水の静的接触角及びヘキサデカンの静的接触角を計測する。
塗布対象基材としては、種々の材料からなる基材を用いることができる。例えば、
(i)金属製基材:SUS304、SUS430などのステンレス製の基材、鉄製の基材あるいは銅製の基材等
(ii)有機材料製基材:ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル製基材、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂製基材、ポリスチレン製基材やポリカーボネート(PC)製基材等の各種有機樹脂製基材、あるいはエポキシ樹脂やウレタン樹脂等の各種の有機樹脂製の塗料・コーティング剤を各種材料に塗布して形成された有機材料被覆基材等
(iii)セラミックス製基材:シリカ、シリカ・アルミナ、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、酸化亜鉛、チタン酸バリウムあるいはフェライト等
等の各種基材が挙げられる。
<密着性>
従来から使用されていた長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系ポリ
マーからなる撥水撥油性コーティング膜は、無機材料製基材および有機材料製基材のいずれに対しても密着性が不十分であり、特に有機材料製基材に対しては密着性が極めて不良であるという問題を抱えていた。
それに対して、「当該パーフルオロポリエーテル鎖含有ポリスチレン樹脂と各種樹脂(特に熱可塑性樹脂)を含むコーティング膜」は、無機材料製基材に対しては勿論のこと各種の有機材料製基材に対しても極めて優れた密着性を示すことが確認された。この結果、本発明のコーティング膜を使用することにより、各種の基材(特に有機材料製基材)の表面に高度の撥水撥油性、安定性、及び密着性を併せ持つ高性能コーティング膜の形成が可能となった。
本発明のコーティング膜の各種材料製基材に対する密着性の測定方法を以下に示す。対象となる樹脂組成物あるいは樹脂の溶液に、長さ75mm×幅25mm、厚さ1mmの板状の各種材料製基材を一回ディップして溶液を塗布し、無機材料製基材は100℃で1時間乾燥し、有機材料製基材は70℃で3時間乾燥して試験片とした。
試験片に、JIS K 5600用の25枡治具を使用し、クラフトナイフで碁盤目状に切れ込みを入れ、セロハンテープ(ニチバン製24mm幅)を貼り付けた。次に、消しゴムでセロハンテープを基材に押し付けて密着させた後、セロハンテープを基材に対し直角上方へ引き剥がし、その後、塗膜を観察し、塗膜の剥がれ・浮き・割れが無い枡を数え、その個数で密着性を評価した。
本発明のコーティング膜は、上記の密着性評価法で、無機材料製基材(SUS304製基材、鉄製基材、銅製基材)と有機材料製基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製基材及びアクリル樹脂(PMMA)製基材)のいずれに対しても少なくとも25枡中24枡以上(95%以上)の優れた密着性を示し、大部分の場合には25枡中25枡の密着性(100%)を示す。
一方、パーフルオロオクチル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜の無機材料製基材に対する密着性は25枡中16枡(SUS304製基材)、25枡中20枡(鉄製基材)及び25枡中21枡(銅製基材)と不十分であり、更に有機材料製基材に対する密着性は25枡中4枡(PET樹脂製基材)及び25枡中19枡(アクリル樹脂製基材)と極めて不十分であった。なお、高フッ素含有量のパーフルアルキル基含有(メタ)アクリレート系ポリマーは、各種の非フッ素系ポリマーと組み合わせた均一樹脂組成物溶液を形成することは困難であるので、非フッ素系ポリマーとの組成物形成による密着性の改善は期待できない。
したがって、優れた撥水・撥油性と各種基材に対する優れた密着性(特に有機材料製基材に対する優れた密着性)とを併せ持つコーティング膜は本発明により初めて実現されたと言える。その代表例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製基材に対する密着性はパーフルオロオクチル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜の場合には25枡中4枡(16%)であるのに対して本発明のコーティング膜の密着性法化では25枡中25枡(100%)であり飛躍的な密着性の改善が実現されたことが挙げられる。
<耐熱性>
本発明のコーティング膜は優れた耐熱性有するので以下のような耐熱特性を示す。すなわち、本発明のコーティング膜を大気中250℃の温度条件で3時間加熱した後のコーティング膜(加熱コーティング膜)の水の接触角は加熱前の接触角の90%以上を示す。更に好ましくは、当該加熱コーティング膜の水の接触角が加熱前の接触角の95%以上を示し、特に好ましくは97%以上あるいは100%を示す。
<耐候性>
本発明のコーティング膜は極めて優れた耐候性を示す。すなわち、本発明の樹脂組成物を基材に塗布して形成されるコーティング膜を下記の1000時間の耐侯性試験に晒した後の、水の接触角の保持率は試験前の接触角に対して90%以上であり、更には95%以上あるいは97%以上や98%以上の保持率も容易に実現可能である。
一方、従来の長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系撥水・撥油剤のコーティング膜の耐候性試験後の水の接触角の保持率は40%以下であり極めて不十分であった。このように、本発明のコーティング膜は従来の長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系撥水・撥油剤に比べて極めて優れた耐候性を示すことが確認された。
本発明のコーティング膜と比較コーティング膜の耐候性の評価方法を以下に示す。JIS B 7754の「キセノンアークランプ式耐光性及び耐候性試験機」の規格に対応した「スガ試験機株式会社製 スーパーキセノンウェザーメーター SX75」を用い、JIS K 7350−2:2008の「プラスチック−実験室光源による暴露試験方法第2部「キセノンアークランプ」表3、サイクルNo.10」に準じて暴露サイクル条件「照射102分、照射降雨18分、500サイクル(照射:180w/m,ブラックパネル温度63℃,槽内湿度50%、照射降雨:180w/m)」の暴露サイクル条件(合計試験時間:1000時間)にて各種コーティング膜の耐候性試験を実施した。耐候性試験後のコーティング膜の水の接触角を測定し、耐候性試験前のコーティング膜の水の接触角と比較し、その保持率で耐候性を評価した。
以上のように、本発明のコーティング膜は優れた撥水撥油性に加えて各種基材への優れた密着性、抜群の耐熱性、優れた耐候性を有する。したがって、本発明のコーティング膜は本発明の樹脂組成物に関する説明部分で記載してあるように様々な分野で使用可能な高性能撥水撥油性コーティング膜として有用である。その中でも、高耐久性(密着性、耐熱性、耐候性)と高撥水撥油性を併せ持つ撥水撥油性コーティング膜が有用であり、特にその優れた耐候性を活かした屋外用途向けの撥水撥油性コーティング膜としての用途(例えば、防錆コーティング膜、外装コーティング膜、住宅用コーティング膜、自動車用コーティング膜、補修用コーティング膜、農業関連建造物用コーティング膜、船舶用コーティング膜、港湾関連建造物用コーティング膜、温泉地関連建造物用コーティング膜、橋梁用コーティング膜、各種インフラ用コーティング膜塗、各種屋外構造物・土木構造物用コーティング膜等)が特に有用である。
本発明のコーティング膜の形成に用いられる本発明の樹脂組成物溶液中の本発明の樹脂組成物の濃度は、当該樹脂組成物溶液から形成されるコーティング膜の用途やその要求特性に応じて適宜選択されるが、通常は90質量%〜0.1質量%の範囲内であり、60質量%〜0.1質量%がより好ましく、50質量%〜1質量%がさらに好ましく、40質量%〜1質量%が特に好ましい。
本発明のコーティング膜の膜厚は、その使用形態や耐久性等や経済性に応じて適宜決定されるが、通常は1nm〜5mmの範囲内であり、10nm〜3mmがより好ましく、0.1μm〜3mmがさらに好ましく、0.1μm〜1mmが特に好ましい。上記の本発明のコーティング膜の膜厚は、そのコーティング方法及び本発明の樹脂組成物溶液における本発明の樹脂組成物の濃度によって制御することが出来る。
<実施例>
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
〔(1)ポリスチレン誘導体の合成〕
(合成例1)
下記式[S−1]に示される重合体Aを、以下に示される方法で作製した。
Figure 2015212369
1Lのセパラブルフラスコ、3つ口フタ、撹拌機、撹拌翼、温調付きウォーターバスを用意した。フラスコに4−[1,1,2−トリフルオロ−2−(1,1,2,2,3,33−ヘプタフルオロプロポキシ)エトキシ]スチレンを50質量部、ヘキサフルオロメタキシレン100質量部、アゾビスイソブチロニトリル1質量部に加え、60℃で加熱撹拌して溶解し、75℃に保ちつつ8時間撹拌した。次に15℃に冷却し、ノルマルヘキサン250質量部を加え良く攪拌した後に一晩静置した。沈殿物をろ別回収し60℃で24時間真空乾燥して略収率100%でポリスチレン誘導体(重合体A)を得た。
(合成例2)
下記式[S−2]に示される重合体Bを、以下に示される方法で作製した。
Figure 2015212369
4−[1,1,2−トリフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)エトキシ]スチレンを、4−[1,1,2−トリフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ]−エトキシ]スチレンに変更したこと以外は、合成例1と同様に実施し、略収率100%でポリスチレン誘導体(重合体B)を得た。
(合成例3)
下記式[S−3]に示される重合体Cを、以下に示される方法で作製した。
Figure 2015212369
1Lのセパラブルフラスコ、3つ口フタ、撹拌機、撹拌翼、温調付きウォーターバスを用意した。フラスコにスチレンを50質量部、4−[1,1,2−トリフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ]−エトキシ]スチレンを50質量部、ヘキサフルオロメタキシレン200質量部、アゾビスイソブチロニトリル1質量部に加え、60℃で加熱撹拌して溶解し、75℃に保ちつつ8時間撹拌した。次に15℃に冷却し、ノルマルヘキサン500質量部を加え良く攪拌した後に一晩静置した。沈殿物をろ別回収し60℃で24時間真空乾燥して略収率100%でポリスチレン誘導体(重合体C)を得た。
(合成例4)
スチレンの添加量を90質量部、4−[1,1,2−トリフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ]−エトキシ]スチレンの添加量を10質量部に代えたこと以外は、合成例3と同様に実施し、略収率100%でポリスチレン誘導体(重合体D)を得た。
(合成例5)
スチレンの添加量を95質量部、4−[1,1,2−トリフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ]−エトキシ]スチレンの添加量を5質量部に代えたこと以外は、合成例3と同様に実施し、略収率100%でポリスチレン誘導体(重合体E)を得た。
(合成例6)
スチレンの添加量を99質量部、4−[1,1,2−トリフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ]−エトキシ]スチレンの添加量を1質量部に代えたこと以外は、合成例3と同様に実施し、略収率100%でポリスチレン誘導体(重合体F)を得た。
(参考合成例7)
スチレンの添加量を99.9質量部、4−[1,1,2−トリフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロポキシ)プロポキシ]−エトキシ]スチレンの添加量を0.1質量部に代えたこと以外は、合成例3と同様に実施し、略収率100%でポリスチレン誘導体(重合体G)を得た。
(合成例8)
下記式[S−8]に示される重合体Hを、以下に示される方法で作製した。
Figure 2015212369
1Lのセパラブルフラスコ、3つ口フタ、撹拌機、撹拌翼、滴下ロート、温調付きウォーターバスを用意した。ポリヒドロキシスチレン(商品名「マルカリンカーM」、丸善石油化学株式会社製、Mw=4,000)を36質量部、ジメチルスルホキシド(DMSO)を300質量部に加え、60℃で加熱撹拌して溶解し、60℃に保ちつつ50%のKOH水溶液5.0mlを加えて5時間撹拌した。次に15℃に冷却し、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(FVE)を170質量部加えて24時間撹拌した。反応液を多量の水へあけ沈殿した樹脂をバットへ移し、60℃で24時間真空乾燥してポリスチレン誘導体(重合体H)を、90%の収率で得た。FT−IR[(株)島津製作所製、品番IR Prestige21]により、前記ポリスチレン誘導体(重合体H)が合成例1で得られた重合体Aと同一の重合単位からなることを確認した。
(合成例9)
下記式[S−9]に示される重合体Iを、以下に示される方法で作製した。
Figure 2015212369
FVE170質量部をパーフルオロ(5メチル−3,6−ジオキサノン−1エン)155部に置き換えたこと以外は、合成例1と同様に実施してポリスチレン誘導体(重合体I)を90%の収率で得た。FT−IR[(株)島津製作所製、品番IR Prestige21]により前記ポリスチレン誘導体(重合体I)が合成例2で得られた重合体Bと同一の重合単位からなることを確認した。
(参考合成例10)
1Lのセパラブルフラスコ、3つ口フタ、撹拌機、撹拌翼、温調付きウォーターバスを用意した。フラスコにパーフルオロオクチルエチルメタクリレート100質量部、ヘキサフルオロメタキシレン200質量部、アゾビスイソブチロニトリル2質量部に加え、60℃で加熱撹拌して溶解し、75℃に保ちつつ8時間撹拌した。次に15℃に冷却し、ノルマルヘキサン350質量部を加え良く攪拌した後に一晩静置した。沈殿物をろ別回収し60℃で24時間真空乾燥して略収率100%でフッ素化アクリル樹脂(重合体J)を得た。
(参考合成例11)
パーフルオロオクチルエチルメタクリレートをパーフルオロヘキシルエチルメタクリレートに代えたこと以外は、参考合成例10と同様に実施し、略収率100%でフッ素化アクリル樹脂(重合体K)を得た。
(参考合成例12)
パーフルオロオクチルエチルメタクリレート70質量部とメチルメタクリレート30質量部としたこと以外は、参考合成例10と同様に実施し、略収率100%でフッ素化アクリル樹脂(重合体L)を得た。
(参考合成例13)
パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート70質量部とメチルメタクリレート30質量部としたこと以外は、参考合成例10と同様に実施し、略収率100%でフッ素化アクリル樹脂(重合体M)を得た。
〔(2)ポリスチレン誘導体と関連重合体の溶解性試験〕
サンプル瓶に重合体A〜Mをそれぞれ1.0gずつ計り取り、各種溶剤を9.0gずつ加え、蓋をして良く振った後、室温(20〜25℃)で24時間静置した。その後、目視により溶解性を観察して評価した。評価結果は表1に示した。
評価基準は以下の通りである。
○:完全に溶解した。
△:大部分は溶解しているが溶け残りが見られる。
×:ほとんど溶解しない。
用いた溶剤は以下の通りである。
HFE:住友3M製ノベック(登録商標)7100(メチルノナフルオロイソブチルエーテルとメチルノナフルオロブチルエーテルの混合物)
HFC:三井デュポン製ヴァートレル(登録商標)XF(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン)
HCFC:旭硝子製アサヒクリン(登録商標)AK−225 (3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの混合物)
MEK:メチルエチルケトン
酢酸ブチル
Figure 2015212369
(結果と考察)
重合体J,K,L,Mのような長鎖パーフルオロアルキル基含有メタクリレート系ポリマーは、HFE、HFCあるいはHCFCのような各種のフッ素系溶媒に良好な溶解性を示すが、MEKや酢酸ブチルのような非ハロゲン系溶剤にはほとんど溶解しないことが確かめられた。
それに対して、本発明のポリスチレン誘導体である重合体A,B,C,H及びIは、HFE、HFCあるいはHCFCのような各種のフッ素系溶媒に良好な溶解性を示すだけでなく、MEKや酢酸ブチルのような非ハロゲン系溶剤にも溶解性を示すことが確かめられた。また、フッ素含有量が少ない本発明のポリスチレン誘導体である重合体D,E及びFは、HFE、HFCあるいはHCFCのような各種のフッ素系溶媒には溶解性は乏しいが、MEKや酢酸ブチルのような非フッ素系溶媒に良好な溶解性を示すことが確かめられた。
〔(3)樹脂組成物溶液の作製〕
上述したように、本発明のポリスチレン誘導体は、フッ素系溶媒に対してはそのポリマー構造に対応して様々な溶解性を示すが、MEKや酢酸ブチルのような非フッ素系溶媒に対してはそのポリマー構造に関わらずいずれの場合も溶解性を示す。したがって、非フッ素系溶媒に可溶な各種の熱可塑性樹脂と本発明のポリスチレン誘導体は、そのいずれをも溶解する共通溶媒を使用して均一溶液を形成することが可能である。
このような本発明のポリスチレン誘導体と各種の熱可塑性を含む樹脂組成物を溶解した均一溶液(本発明の樹脂組成物溶液)は、各種基材に塗布・乾燥することにより様々な優れた特性を有するコーティング膜(「本発明のコーティング膜」)を形成することができるので有用である。
以下に、上述した各種の本発明のポリスチレン誘導体(重合体A〜F,H,I)と熱可塑性樹脂の代表例であるポリαメチルスチレン(MS)を溶解した溶液(「本発明の樹脂組成物溶液」)の作製例を示す。
(実施例1)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Aを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液A−MS)。
(実施例2)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Bを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液B−MS)。
(実施例3)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Cを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液C−MS)。
(実施例4)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Dを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液D−MS)。
(実施例5)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Eを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液E−MS)。
(実施例6)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Fを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液F−MS)。
(比較例7)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Gを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液G−MS)。
(実施例8)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Hを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液H−MS)。
(実施例9)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Iを1質量部、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た(溶液I−MS)。
(比較例1)
ポリαメチルスチレン10質量部をMEK90質量部に溶解し、均一溶液を得た(溶液MS)。
(比較例2)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Lを1質量部、MEK89質量部に添加・撹拌したが重合体Lは溶解せず、均一溶液が得られなかった。
(比較例3)
ポリαメチルスチレン10質量部と重合体Mを1質量部、MEK89質量部添加・撹拌したが重合体Mは溶解せず、均一溶液が得られなかった。
(比較例4)
重合体Lを2質量部、HCFC(旭硝子製アサヒクリン(登録商標)AK−225)98質量部に溶解し、均一溶液を得た(溶液L)。
(比較例5)
重合体Mを2質量部、HCFC(旭硝子製アサヒクリン(登録商標)AK−225)98質量部に溶解し、均一溶液を得た(溶液M)。
〔(4)コーティング膜の特性評価〕
(4−1)接触角
<コーティング膜の接触角の測定方法>
上述した各種の樹脂組成物溶液に、ステンレス板(長さ75mm×幅25mm、厚さ1mm)を一回ディップして溶液を塗布し、100℃で1時間乾燥してコーティング膜(「本発明のコーティング膜」)のサンプルを得た。このサンプルについて、協和界面科学製DM−300を用いて、液滴法で純水の静的接触角及びヘキサデカン(n−ヘキサデカン)の静的接触角を計測した。
<評価結果>
表2に、本発明のコーティング膜および比較コーティング膜の静的接触角の測定結果を示した。本発明のコーティング膜においてはいずれも、「純水の接触角が100°以上であるか、またはヘキサデカンの接触角が50°以上」であるか、もしくは「水の接触角が100°以上であり、かつヘキサデカンの接触角が50°以上」であった。
(4−2)密着性
<コーティング膜の各種材料製基材に対する密着性の測定方法>
上述した各種の樹脂組成物溶液に、長さ75mm×幅25mm、厚さ1mmの板状の各種材料からなる基材をそれぞれ一回ディップして溶液を付与した。なお、無機材料製基材については100℃で1時間乾燥し、有機材料製基材については70℃で3時間乾燥してそれらを試験片とした。
なお、評価に用いた無機材料製基材は、SUS304製基材、鉄製基材、銅製基材であり、有機材料製基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製基材、アクリル樹脂(PMMA樹脂)製基材である。
上記試験片に、JIS K 5600用の25枡治具を使用し、クラフトナイフで碁盤目状に切れ込みを入れ、セロハンテープ(ニチバン製、24mm幅)を貼り付けた。次に、消しゴムでセロハンテープを基材に押し付けて密着させた後、セロハンテープを基材に対し直角上方へ引き剥がし、その後、塗膜を観察し、塗膜の剥がれ・浮き・割れが無い枡(残存枡)を数え、25枡中の残存枡の数の割合で密着性を評価した。
<評価結果>
表2に、本発明のコーティング膜および比較コーティング膜の各種基材に対する密着性の評価結果(残存枡の数)を示した。
本発明のコーティング膜は、上記の密着性評価法で、無機材料製基材(SUS304製基材、鉄製基材、銅製基材)と有機材料製基材(PET製基材及びアクリル樹脂製基材)のいずれに対しても残存枡数が25枡中25枡という極めて高い密着性を示すことが確かめられた。
一方、優れた撥水・撥油性を示すパーフルオロオクチル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜(比較例4)の無機材料製基材に対する密着性は、残存枡数が25枡中16枡(SUS304製基材)、25枡中20枡(鉄製基材)及び25枡中21枡(銅製基材)と不十分であり、更に有機材料製基材に対する密着性は残存枡数が25枡中4枡(PET樹脂製基材)及び25枡中19枡(アクリル樹脂製基材)と極めて不良であった。
また、パーフルオロオクチル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜よりも撥水・撥油性が劣るパーフルオロヘキシル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜(比較例5)も有機材料製基材に対する密着性は不良であった。
以上のように、本発明のコーティング膜は各種基材上に高密着性の撥水・撥油表面を形成することが可能であり、特に有機材料基材表面への高密着性の撥水・撥油表面コーティングは本発明のコーティング膜で初めて実現されたと言える。
Figure 2015212369
(4−3)耐熱性試験
<コーティング膜の耐熱性試験方法>
アドバンテック社製の送風定温乾燥機FC−610を用いて、各種の樹脂組成物溶液から形成されたコーティング膜サンプルを大気中250℃で24時間晒した後、室温に冷却して、加熱処理前後の純水の接触角の変化を測定した。
<評価結果>
各種の樹脂組成物溶液から形成されたコーティング膜の耐熱性試験結果を表3に示した。本発明のコーティング膜(溶液A−MSおよび溶液B−MSから形成されたコーティング膜)は、いずれの場合も、耐熱試験後の純水接触角は耐熱試験前の純水接触角と同じであり、コーティング膜表面の変性はほとんど認められなかった。
一方、溶液Lから形成されたパーフルオロオクチル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜及び溶液Mから形成されたパーフルオロヘキシル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜では、耐熱試験後の純水接触角は耐熱試験前の純水接触角に対してそれぞれ86%及び87%まで低下しており、いずれの場合もコーティング膜表面が顕著に変性(撥水性が低下)していることが確認された。
以上の結果より、従来の長鎖パーフルアルキル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜は熱変性しやすいのに対し、本発明のコーティング膜は極めて優れた耐熱性を示すことが確認された。したがって本発明のコーティング膜により、高い温度領域でも安定して優れた撥水・撥油性を発現する高性能コーティング膜を提供することが可能となった。
Figure 2015212369
(4−4)耐候性試験
<耐候性試験方法>
スガ試験機株式会社製、スーパーキセノンウェザーメーター SX75(JIS B 7754の「キセノンアークランプ式耐光性及び耐候性試験機」の規格に対応)を用い、JIS K 7350−2:2008の「プラスチック−実験室光源による暴露試験方法第2部「キセノンアークランプ」表3、サイクルNo10」に準じた暴露サイクル条件(照射102分、照射降雨18分、500サイクル(照射:180w/m、ブラックパネル温度63℃、槽内湿度50%、照射降雨:180w/m)で各種コーティング膜の耐候性試験(合計試験時間:1000時間)を実施した。
耐候性試験後のコーティング膜の水の接触角を測定し、耐候性試験前のコーティング膜の水の接触角と比較し、その保持率で耐候性を評価した。
<耐候性の評価結果>
本発明のコーティング膜と比較コーティング膜の耐候性の評価結果を表4に示した。本発明のコーティング膜(溶液A−MSおよび溶液B−MSから形成されたコーティング膜)の耐侯性試験後の水の接触角の保持率は、試験前の接触角に対して98%及び99%であり極めて優れた耐候性を示した。
一方、溶液Lから形成されたパーフルオロオクチル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜および溶液Mから形成されたパーフルオロヘキシル基含有メタクリレートポリマーのコーティング膜では、耐熱試験後の純水接触角は耐熱試験前の純水接触角に対してそれぞれ39%及び33%まで低下しており、コーティング膜表面が顕著に変性(撥水性が低下)していることが確認された。
以上の耐候性試験により、従来の長鎖パーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレート系撥水・撥油剤のコーティング膜の耐候性は極めて不十分であるのに対し、本発明のコーティング膜は極めて優れた耐候性を示すことが確認された。
Figure 2015212369
〔(5)本発明の樹脂組成物及び本発明のコーティング膜の組成〕
以下の試験で、本発明の樹脂組成物及び本発明のコーティング膜におけるポリスチレン誘導体と熱可塑性樹脂の組成割合と撥水・撥油性の関係を確認した。当該試験では、熱可塑性樹脂としては、非極性熱可塑性樹脂の代表としてポリαメチルスチレンを採用し、極性基含有熱可塑性樹脂の代表としてポリメタクリル酸メチルを採用して評価した。
(5−1)熱可塑性樹脂としてポリαメチルスチレンを用いた場合の組成と接触角の関係
<試験方法>
ポリαメチルスチレンとポリスチレン誘導体(重合体B)との合計質量に対し重合体Bの割合を、表5に記載のそれぞれの割合とした混合物11質量部を、MEK89質量部に溶解して均一溶液を得た。
各溶液にステンレス板(長さ75mm×幅25mm、厚さ1mm)を一回ディップして溶液を塗布し、100℃で1時間乾燥してサンプルを得た。このサンプルについて、協和界面科学(株)製DM−300を用いて、液滴法で純水の静的接触角及びn−ヘキサデカンの静的接触角を計測した。結果は表5に示した。
<試験結果>
ポリαメチルスチレンとポリスチレン誘導体(重合体B)からなる樹脂組成物から形成されるコーティング膜において、ポリスチレン誘導体(重合体B)の割合が0.01質量%以上であると、良好な撥水・撥油性を示すことが確認された。すなわち、この組成よりポリスチレン誘導体(重合体B)の割合が多くなると、純水接触角は100°以上となり、ヘキサデカン接触角は50°以上となる。
ただし、ポリスチレン誘導体(重合体B)の割合が100%で熱可塑性樹脂(ポリαメチルスチレン)を含まない組成のコーティング膜は、表面に粘着性が認められるので実用性が低いと考えられる。
Figure 2015212369
(5−2)熱可塑性樹脂としてポリメタクリル酸メチルを用いた場合の組成と接触角の関係
ポリαメチルスチレンの替りにポリメタクリル酸メチルを用いる以外は(5−1)記載の試験方法と同様の方法で、ポリメタクリル酸メチルとポリスチレン誘導体(重合体B)からなる樹脂組成物から形成されるコーティング膜の組成と接触角の関係を調べた。当該コーティング膜において、ポリスチレン誘導体(重合体B)の割合が0.1質量%の場合には、純水接触角は107°であり、ヘキサデカン接触角は57°であった。また、当該コーティング膜において、ポリスチレン誘導体(重合体B)の割合が1質量%の場合には、純水接触角は116°であり、ヘキサデカン接触角は70°であった。

Claims (11)

  1. 下記式[1]で表される繰り返し単位を1質量%以上含むポリスチレン誘導体と、熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物であって、
    前記ポリスチレン誘導体と前記熱可塑性樹脂との総質量に対して前記ポリスチレン誘導体を0.01質量%以上99.0質量%以下含み、かつ、
    当該樹脂組成物を基材に塗布して形成されるコーティング膜の表面の、水の接触角が100°以上またはヘキサデカンの接触角が50°以上、もしくは水の接触角が100°以上かつヘキサデカンの接触角が50°以上である樹脂組成物。
    Figure 2015212369
    (式[1]中、Yは水素原子または炭素数が6以下のアルキル基を表し、Qは少なくとも1個のエーテル結合を含有し炭素原子の合計数が5個以下の2価の基を表し、Rfは少なくとも1個のエーテル基を含有する炭素原子の合計数が25個以下の1個の水素原子を含んでも良い1価のパーフルオロエーテル基である。zは1〜3から選ばれる整数である。Qの芳香核への結合位置は、芳香核とポリマー主鎖の結合位置に対してオルト位、メタ位、又はパラ位のいずれでもよい。式[1]中の芳香核に結合している水素原子の一部又はすべてはフッ素原子で置換されていてもよい。)
  2. 前記式[1]で表される繰り返し単位が以下の式[1−1]で表される繰り返し単位である請求項1に記載の樹脂組成物。
    Figure 2015212369
    (式[1−1]中、Yは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素原子数が3以下であるエーテル結合を含有する2価基である。Rf01はRfa−O−[CF(CF)CFO]n1−[CFCFCFO]n2−[CFCFO]n3−[CFO]n4−Rfc−であって、Rfaは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、n1、n2、n3、n4はそれぞれ0または1〜6から選ばれる整数であるとともに、n1+n2+n3+n4は0〜6であり、Rfcは炭素原子数が2以下の1個の水素原子を含んでも良いパーフルオロアルキレン基である。)
  3. 前記式[1]で表される繰り返し単位が以下の式[1−2]で表される繰り返し単位である請求項1に記載の樹脂組成物。
    Figure 2015212369
    (式[1−2]中、Yは水素原子またはメチル基、Lは0または1〜4から選ばれる整数、Rfaは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。)
  4. 前記樹脂組成物の溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜の基材に対する密着性評価試験で残存枡の数が、25枡中24枡以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記樹脂組成物の溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜を大気中250℃の温度条件で3時間加熱した後の水の接触角が加熱前の接触角の90%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記樹脂組成物の溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜を1000時間の耐侯性試験に晒した後の水の接触角が試験前の接触角の90%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の樹脂組成物を溶剤に溶解してなる樹脂組成物溶液。
  8. 請求項7に記載の樹脂組成物溶液を基材に塗布して形成されるコーティング膜。
  9. 屋外用途向けである請求項8に記載のコーティング膜。
  10. 請求項7に記載の樹脂組成物溶液からなる塗料。
  11. 屋外用途向けである請求項10に記載の塗料。
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