JP2004115404A - 臭気の少ない水溶性ポリオールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、以下の[1]〜[4]等を提供する。
[1] 粗水溶性ポリオールを水ならびにケトンおよび炭化水素から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒と混合し、水層と有機層に相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る工程を含む水溶性ポリオールの製造方法。
[2] 水溶性ポリオールを含む水層を蒸留に付す工程を含む[1]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
[3] 水溶性ポリオールがプロピレングリコールである[1]または[2]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
[4] 水溶性ポリオールが3−メチル−1,3−ブタンジオールである[1]または[2]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、臭気の少ない水溶性ポリオールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水溶性ポリオール、例えば、プロピレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール等は、非揮発性、低毒性、吸湿性等の性質を有し、合成樹脂の原料、界面活性剤の原料、溶剤、不凍液、化粧品等の用途に有用である。しかしながら、従来の製造方法により得られる水溶性ポリオールは、臭気があり、例えば、化粧品等の用途において、実用上、満足されるものではない。
【0003】
水溶性ポリオールを製造する方法として、例えば、プロピレングリコールまたはジプロピレングリコールにおいては、陰イオン交換樹脂の存在下にプロピレンオキサイドと水とを反応させてプロピレングリコールまたはジプロピレングリコールを含む反応液を得る製造方法が知られている(特許文献1参照。)。3−メチル−1,3−ブタンジオールにおいては、酸触媒の存在下にホルムアルデヒドとイソブテンとをプリンス反応に付すと同時に加水分解させて3−メチル−1,3−ブタンジオールを含む反応液を得る製造方法が知られている(特許文献2参照。)。1,2,6−ヘキサントリオールにおいては、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルバルデヒド(アクロレインの2量体)を塩酸存在下イソプロピルアルコールと混合し、次いで水と混合して反応させ、さらに水素化して1,2,6−ヘキサントリオールを含む反応液を得る製造方法が知られている(特許文献3参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−12206号公報
【0005】
【特許文献2】
特公昭59−14011号公報
【0006】
【特許文献3】
仏国特許発明第1559112号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、臭気の少ない水溶性ポリオールの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の[1]〜[7]を提供する。
[1] 粗水溶性ポリオールを水ならびにケトンおよび炭化水素から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒と混合し、水層と有機層に相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る工程を含む水溶性ポリオールの製造方法。
[2] 水溶性ポリオールを含む水層を蒸留に付す工程を含む[1]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
[3] 水溶性ポリオールがプロピレングリコールである[1]または[2]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
[4] 水溶性ポリオールが3−メチル−1,3−ブタンジオールである[1]または[2]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
[5] 水溶性ポリオールがジプロピレングリコールである[1]または[2]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
[6] 水溶性ポリオールが1,2,6−ヘキサントリオールである[1]または[2]記載の水溶性ポリオールの製造方法。
[7] 水溶性ポリオールを水ならびにケトンおよび炭化水素から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒と混合し、水層と有機層に相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る工程を含む該水溶性ポリオールの精製方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における水溶性ポリオールとしては、水よりも沸点が高く、かつ5〜80℃の間で選ばれる温度において任意の割合で水に溶解するものが好ましく、例えば、炭素数が3〜6のアルカンジオールまたはアルカントリオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。炭素数が3〜6のアルカンジオールまたはアルカントリオールとしては、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等があげられる。ポリエチレングリコールとしては、例えば、平均分子量が200〜600であるポリエチレングリコール等があげられる。
【0010】
本発明の製造方法の原料として使用される粗水溶性ポリオールとしては、例えば、臭気を有する水溶性ポリオール等があげられる。粗水溶性ポリオールは、公知の方法により製造することができる。また、粗水溶性ポリオールは、市販品として入手することも可能である。
例えば、粗水溶性ポリオールの1つである粗3−メチル−1,3−ブタンジオールの製造方法は、特に限定されないが、公知の方法、例えば特公昭59−14011号公報等に記載された方法により、粗3−メチル−1,3−ブタンジオールを製造することができる。具体的な一例として、酸触媒の存在下にホルムアルデヒドとイソブテンとをプリンス反応に付すと同時に加水分解させて3−メチル−1,3−ブタンジオールを含む反応液を得、次いで、蒸留等により精製して得た3−メチル−1,3−ブタンジオールがあげられる。また、粗3−メチル−1,3−ブタンジオールは、市販品として入手することも可能である。
【0011】
粗プロピレングリコールまたは粗ジプロピレングリコールの製造方法も、特に限定されないが、公知の方法、例えば特開平11−12206号公報等に記載された方法により、粗プロピレングリコールまたは粗ジプロピレングリコールを製造することができる。具体的な一例として、陰イオン交換樹脂の存在下にプロピレンオキサイドと水とを反応させてプロピレングリコールまたはジプロピレングリコールを含む反応液を得、次いで、蒸留等により精製して得たプロピレングリコールまたはジプロピレングリコールがあげられる。また、粗プロピレングリコールまたは粗ジプロピレングリコールは、市販品として入手することも可能である。
【0012】
粗1,2,6−ヘキサントリオールの製造方法も、特に限定されないが、公知の方法、例えば仏国特許発明第1559112号明細書等に記載された方法により、粗1,2,6−ヘキサントリオールを製造することができる。具体的な一例として、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルバルデヒド(アクロレインの2量体)を塩酸存在下イソプロピルアルコールと混合した後、水と混合して反応させ、さらに水素化して1,2,6−ヘキサントリオールを含む反応液を得、次いで、蒸留等により精製して得た1,2,6−ヘキサントリオールがあげられる。また、粗1,2,6−ヘキサントリオールは、市販品として入手することも可能である。
【0013】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、粗水溶性ポリオールを水ならびにケトンおよび炭化水素から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒と混合し、水層と有機層に相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る工程を含む水溶性ポリオールの製造方法である。ケトンとしては炭素数6〜12のケトンが好ましく、さらには、メチルイソブチルケトン、またはジイソブチルケトンがより好ましい。炭化水素としては炭素数6〜12の炭化水素が好ましく、さらには、ヘキサン、2−メチルペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン、ノナン、またはデカンがより好ましい。前記の有機溶媒は単独で用いてもよく、ケトンおよび炭化水素の中から2つ以上を選択して任意の比で混合して用いてもよい。また、前記の有機溶媒は、種々の異性体を含む混合物であってもよい。
【0014】
有機溶媒の使用量は、粗水溶性ポリオール100重量部に対して10〜300重量部であるのが好ましく、さらには、20〜200重量部であるのがより好ましい。
また、水の使用量は、粗水溶性ポリオール100重量部に対して20〜400重量部であるのが好ましく、さらには、40〜200重量部であるのがより好ましい。
【0015】
粗水溶性ポリオールと水および有機溶媒とを混合する順序については、特に限定されない。
粗水溶性ポリオールを水および有機溶媒と混合する際の温度は、特に限定されないが、5〜80℃の間の温度であるのが好ましく、さらには、10〜60℃の間の温度であるのがより好ましい。
【0016】
粗水溶性ポリオールと水および有機溶媒との混合は、回分式、連続式等で実施することができる。
回分式の実施の形態としては、例えば、混合槽に粗水溶性ポリオールと水および有機溶媒とを入れ、好ましくは10秒間〜2時間攪拌する形態があげられ、その後、5分間〜2時間静置して相分離させ、水溶性ポリオールを含む水層を得るのが好ましい。得られた水溶性ポリオールを含む水層に対して、さらに有機溶媒を加え、相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る操作を繰り返してもよく、繰り返す回数としては、1〜3回が好ましい。この場合、添加する有機溶媒の使用量は、1回当たり、粗水溶性ポリオール100重量部に対して、10〜300重量部であるのが好ましい。
【0017】
連続式の場合に用いる装置としては、一般に連続抽出等に用いられる装置、例えば、ミキサーとセトラーの組み合わせ、スプレー塔、充填塔、棚段塔等があげられ、理論段数が3段以上の充填塔または棚段塔を使用するのが好ましい。
水層と有機層を相分離させた後に得られる水溶性ポリオールを含む水層から蒸留等により水を除去して水溶性ポリオールを得ることができる。
【0018】
本発明の製造方法は、粗水溶性ポリオールを水ならびにケトンおよび炭化水素から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒と混合し、水層と有機層に相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る工程および該水層を蒸留に付す工程を含んでいるのが好ましい。該水層を蒸留に付す際には蒸留塔等を用いることができ、該蒸留塔としては、例えば、多孔板塔、泡鐘塔、充填塔等があげられ、理論段数が7〜40段の充填塔が好ましい。蒸留塔は、1塔でもよいし、2塔以上用いてもよい。蒸留塔を用いる場合の蒸留の条件としては、蒸留塔の塔頂部の圧力が5〜20kPaであるのが好ましく、蒸留塔の塔底部の温度が120〜160℃であるのが好ましい。実施の形態の具体的な一例としては、水溶性ポリオールを含む水層を蒸留塔の塔頂より連続的に供給し、塔頂より水を多く含む留分を連続的に抜き出すと同時に、塔底より水溶性ポリオールを連続的に抜き出す方法があげられる。塔底より得られた水溶性ポリオールは、必要に応じて、さらに、蒸留等の精製方法により処理をしてもよい。
【0019】
本発明の精製方法における各条件等は、上記本発明の製造方法の説明で記載した各条件等に準じる。
本発明の製造方法または精製方法で得られる水溶性ポリオールは、臭気が少なく、また、経時的に臭気がほとんど増加せず、合成樹脂の原料、界面活性剤の原料、溶剤、不凍液、化粧品等の用途に有用である。
【0020】
【実施例】
実施例1
和光純薬工業(株)製プロピレングリコール50g(グレード:和光一級)、水50g、およびシクロヘキサン50gを500mlセパラブルフラスコに仕込み、回転数400rpmで50℃、10分間攪拌後、5分間、静置して水層と有機層に相分離させた。その際のセパラブルフラスコの内温は50℃であった。分離した水層に、さらにシクロヘキサン50gを加え、同様の操作を2回繰り返した。得られた水層をオイルバス温度130℃、6.7kPaで30分間脱水濃縮してプロピレングリコール45gを得た。
【0021】
以下の方法により、臭気の評価を行った。
標準臭気サンプルの作成:和光純薬工業(株)製プロピレングリコール(グレード:和光一級)の10重量%水溶液(以下の表1にて原液と表現する)を基準にして、臭気の強さが異なる5つの標準臭気サンプルを表1に従って各40g調製し、100mlの広口ガラス瓶に入れてふたを閉めた。
【0022】
【表1】
【0023】
臭気の評価方法:試料の10重量%水溶液40gを100mlの広口ガラス瓶に入れてふたを閉め、1分間激しく攪拌した後、ふたを開けて鼻で臭いをとらえた。各標準臭気サンプルについて1分間激しく攪拌した後、ふたを開けて鼻で臭いをとらえた結果と比較して、試料の臭気レベルを決定した。
臭気の評価結果:本発明の製造方法で得られるプロピレングリコールは、臭気レベル5であり、臭気がほとんどないことがわかった。
実施例2
和光純薬工業(株)製プロピレングリコールの代わりに東京化成工業(株)製3−メチル−1,3−ブタンジオールを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、3−メチル−1,3−ブタンジオール46gを得た。
【0024】
実施例1と同様の方法により、臭気の評価を行った。
標準臭気サンプルの作成:東京化成工業(株)製3−メチル−1,3−ブタンジオールの10重量%水溶液(以下の表2にて原液と表現する)を基準にして、臭気の強さが異なる5つの標準臭気サンプルを表2に従って各40g調製し、100mlの広口ガラス瓶に入れてふたを閉めた。
【0025】
【表2】
【0026】
臭気の評価結果:本発明の製造方法で得られる3−メチル−1,3−ブタンジオールは、臭気レベル5であり、臭気がほとんどないことがわかった。
実施例3
和光純薬工業(株)製プロピレングリコールの代わりに和光純薬工業(株)製ジプロピレングリコール(異性体混合物、グレード:化学用)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ジプロピレングリコール44gを得た。
【0027】
実施例1と同様の方法により、臭気の評価を行った。
標準臭気サンプルの作成:和光純薬工業(株)製ジプロピレングリコール(異性体混合物、グレード:化学用)の10重量%水溶液(以下の表3にて原液と表現する)を基準にして、臭気の強さが異なる5つの標準臭気サンプルを表3に従って各40g調製し、100mlの広口ガラス瓶に入れてふたを閉めた。
【0028】
【表3】
【0029】
臭気の評価結果:本発明の製造方法で得られるジプロピレングリコールは、臭気レベル5であり、臭気がほとんどないことがわかった。
実施例4
和光純薬工業(株)製プロピレングリコールの代わりに東京化成工業(株)製1,2,6−ヘキサントリオールを用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、1,2,6−ヘキサントリオール48gを得た。
【0030】
実施例1と同様の方法により、臭気の評価を行った。
標準臭気サンプルの作成:東京化成工業(株)製1,2,6−ヘキサントリオールの10重量%水溶液(以下の表4にて原液と表現する)を基準にして、臭気の強さが異なる5つの標準臭気サンプルを表4に従って各40g調製し、100mlの広口ガラス瓶に入れてふたを閉めた。
【0031】
【表4】
【0032】
臭気の評価結果:本発明の製造方法で得られる1,2,6−ヘキサントリオールは、臭気レベル5であり、臭気がほとんどないことがわかった。
実施例5
シクロヘキサンの代わりにメチルイソブチルケトンを用いた以外は実施例4と同様の操作を行い、1,2,6−ヘキサントリオール46gを得た。
【0033】
実施例1と同様の方法により、臭気の評価を行った。
標準臭気サンプルの作成:実施例4と同じ。
臭気の評価結果:本発明の製造方法で得られる1,2,6−ヘキサントリオールは、臭気レベル5であり、臭気がほとんどないことがわかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、臭気の少ない水溶性ポリオールの製造方法が提供される。
Claims (7)
- 粗水溶性ポリオールを水ならびにケトンおよび炭化水素から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒と混合し、水層と有機層に相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る工程を含む水溶性ポリオールの製造方法。
- 水溶性ポリオールを含む水層を蒸留に付す工程を含む請求項1記載の水溶性ポリオールの製造方法。
- 水溶性ポリオールがプロピレングリコールである請求項1または請求項2記載の水溶性ポリオールの製造方法。
- 水溶性ポリオールが3−メチル−1,3−ブタンジオールである請求項1または請求項2記載の水溶性ポリオールの製造方法。
- 水溶性ポリオールがジプロピレングリコールである請求項1または請求項2記載の水溶性ポリオールの製造方法。
- 水溶性ポリオールが1,2,6−ヘキサントリオールである請求項1または請求項2記載の水溶性ポリオールの製造方法。
- 水溶性ポリオールを水ならびにケトンおよび炭化水素から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒と混合し、水層と有機層に相分離させた後、水溶性ポリオールを含む水層を得る工程を含む該水溶性ポリオールの精製方法。
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