JP2004115393A - 4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法 - Google Patents

4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法 Download PDF

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Fumio Oi
大井 册雄
Norio Yanase
柳瀬 典男
Takayuki Kitahara
北原 隆行
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Abstract

【課題】4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを工業的に有利に、高純度かつ高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを溶媒中で脱水反応させることによって得た含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、アルキルハライドとアルカリの存在下で反応させる。含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、懸濁液または湿潤固体であることがより好ましい。アルキルハライドは、イソプロピルハライドであることがより好ましい。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとアルキルハライドとをアルカリの存在下で反応させる4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの原料である4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを有機溶媒中で脱水反応させることによって製造されている。
【0003】
そして、例えば特許第2500532号公報(1996年3月13日登録)や特許第3161015号公報(2001年2月23日登録)等には、得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを濾過等によって単離し、乾燥させて粉末とした後、アルキルハライドと所定の条件下で反応させることによって、目的物である4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法が開示されている。
【0004】
また、例えば特公平7−91261号公報(1995年10月4日公告)、特公平8−2861号公報(1996年1月17日公告)、特公平8−2863号公報(1996年1月17日公告)等には、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを工業的に容易に、高純度かつ高収率で製造する方法が開示されている。これらの方法によって得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、乾燥させて粉末とした後、アルキルハライドとの反応に供されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの乾燥粉末を取り扱う上記従来の工業的な方法では、該4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの乾燥工程が必要であるので製造コストが嵩むと共に、得られる粉体の取り扱いが面倒であり、しかも、粉塵対策や静電気対策を講じなければならないという問題点を有している。また、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは加熱等によって着色し易く、従って、乾燥させて粉末とする際には、着色防止対策を講じなければならない。それゆえ、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを工業的に製造するに際し、これら問題点を改善する方法が切望されている。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その主たる目的は、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを工業的に有利に、高純度かつ高収率で製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを溶媒中で脱水反応させることによって得た4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを乾燥粉末とすることなく、含液状態で用いてアルキルハライドとアルカリの存在下で反応させることにより、工業的に有利に、高純度かつ高収率で4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを製造できることを見い出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法は、上記の課題を解決するために、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを溶媒中で脱水反応させることによって得た含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、アルキルハライドとアルカリの存在下で反応させることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法は、上記の課題を解決するために、上記構成に加えて、上記含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが、懸濁液または湿潤固体であることがより好ましく、アルキルハライドがイソプロピルハライドであることがより好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを乾燥粉末とすることなく、含液状態で用いてアルキルハライドとアルカリの存在下で反応させる。このため、該4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの乾燥工程や粉体での取り扱いが不要となり、しかも、粉塵対策や静電気対策、着色防止対策を講じる必要も無くなる。これにより、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを工業的に有利に、高純度かつ高収率で製造する方法を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。
【0012】
本発明にかかる4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン「HO−C−SO−C−OR(但し、Rはアルキル基)」の製造方法は、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを溶媒中で脱水反応させることによって得た含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン「HO−C−SO−C−OH(4,4’−ビスフェノールS)」を、アルキルハライドとアルカリの存在下で置換反応させる構成である。
【0013】
スルホン化剤としては、具体的には、例えば、濃硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸等が挙げられる。フェノールスルホン酸としては、p−フェノールスルホン酸、o−フェノールスルホン酸が好適である。
【0014】
フェノールと、スルホン化剤またはフェノールスルホン酸との割合は、特に限定されるものではないが、化学量論的割合若しくはその近傍、或いはフェノールが過剰となる割合がより好ましい。つまり、スルホン化剤またはフェノールスルホン酸が過剰とならない割合がより好ましい。より具体的には、スルホン化剤1モルに対するフェノールの割合は、1.9〜3.0モルの範囲内であることがより好ましく、フェノールスルホン酸1モルに対するフェノールの割合は、0.9〜1.5モルの範囲内であることがより好ましい。
【0015】
溶媒としては、具体的には、例えば、メシチレン、フェノール等の芳香族炭化水素、o−ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、直鎖状または枝分かれ状の脂肪族炭化水素、脂肪族ハロゲン化炭化水素等の有機溶媒、並びに、これらの混合溶媒が挙げられる。これら有機溶媒のうち、メシチレンおよびo−ジクロロベンゼンがより好ましい。これら溶媒は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、溶液または懸濁液の状態で反応が円滑に進行する量以上であればよく、特に限定されるものではないが、経済性等の面から、フェノールに対して5重量倍程度、より好ましくは2重量倍程度までの量にすることが望ましい。但し、フェノールを溶媒として使用する場合における使用量は、溶媒として使用するフェノールの量に、脱水反応に使用されるフェノールの量を合わせた量を用いることが望ましい。
【0016】
フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを溶媒中で脱水反応させる際の反応温度や反応時間等の反応条件は、脱水反応が完結するように、例えば用いる溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、反応温度は120〜220℃の範囲内がより好ましく、140〜185℃の範囲内がさらに好ましい。脱水反応によって生成した水は、例えば溶媒と共沸させて反応系外に留去することが望ましい。また、水と共沸して反応系外に留去された溶媒は、水と分離した後、反応系に還流させることが望ましい。
【0017】
脱水反応を行うことにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと、副生成物である2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとの混合物が得られる。脱水反応を行った後、晶析・濾過を行うことにより、或いは、120℃以上、より好ましくは140〜185℃の温度で溶媒と未反応のフェノールとを留去しながら異性化反応を行うことにより、該混合物における4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの割合(含有量)を増加させることができる。得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに、必要に応じて、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を用いた精製操作を行うこともできる。これにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを高純度かつ高収率で安価に得ることができる。
【0018】
上記脱水反応によって得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、粉体とすることなく、含液状態でアルキルハライドとの置換反応に供する。即ち、上記脱水反応によって得られた含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、アルキルハライドとアルカリの存在下で置換反応させる。
【0019】
本発明において「含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、」とは、脱水反応によって得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、(1) 晶析・濾過等の分離操作を行うことなく、溶媒や水に懸濁された懸濁液(いわゆるスラリー)の状態で4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いること、並びに、(2) 晶析・濾過等の分離操作を行って得られた、溶媒や水を含む湿潤固体(いわゆるケーキ)の状態で4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いること、を示す。
【0020】
含液状態における4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの固形分は、10〜95重量%の範囲内であることが好ましい。ここで、「固形分」とは、アルキルハライドと置換反応させる時点での、即ち、該反応を行う反応装置に4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを仕込むときの値を指す。固形分の割合に応じて、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンは、懸濁液か湿潤固体の何れかの状態となる。懸濁液の状態で4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いる場合における該4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの濃度(固形分)は、10〜70重量%であることがより好ましい。湿潤固体の状態で4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いる場合における該4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの固形分は、70〜95重量%であることがより好ましい。脱水反応や必要に応じて異性化反応を行った後の反応液における4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの濃度(固形分)が10重量%未満である場合には、該濃度(固形分)が上記範囲内となるように、溶媒や水を適宜除去して濃縮すればよい。
【0021】
アルキルハライドとしては、炭素数2〜4の化合物が好適であり、具体的には、例えば、エチルクロライド、n−プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、n−ブチルクロライド、エチルブロマイド、n−プロピルブロマイド、イソプロピルブロマイド、n−ブチルブロマイド等が挙げられる。これらアルキルハライドのうち、イソプロピルクロライド、イソプロピルブロマイド等のイソプロピルハライドがより好ましい。
【0022】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとアルキルハライドとの割合は、特に限定されるものではないが、化学量論的割合よりもアルキルハライドが過剰となる割合がより好ましい。より具体的には、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン1モルに対するアルキルハライドの割合は、1.0〜2.0モルの範囲内であることがより好ましい。
【0023】
アルカリとしては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらアルカリのうち、水酸化カリウムと炭酸カリウムとを併用することがより好ましい。4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに対するアルカリの割合は、特に限定されるものではないが、化学量論的割合よりもアルカリが過剰となる割合がより好ましい。より具体的には、例えば水酸化カリウムと炭酸カリウムとを併用する場合における、両者の合計使用量は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン1.0モルに対して、0.8〜3.0モルの範囲内であることがより好ましく、1.0〜2.0モルの範囲内であることがさらに好ましい。また、水酸化カリウムと炭酸カリウムとの使用割合(モル比)は、炭酸カリウム/水酸化カリウム=0.01〜2.0の範囲内であることがより好ましく、0.1〜1.7の範囲内であることがさらに好ましく、0.2〜1.5の範囲内であることが特に好ましい。これにより、副生成物であるハロゲン化水素を中和することができる。
【0024】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンをアルキルハライドとアルカリの存在下で置換反応させる際の溶媒としては、具体的には、例えば、メシチレン等の芳香族炭化水素、o−ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、直鎖状または枝分かれ状の脂肪族炭化水素、脂肪族ハロゲン化炭化水素等の有機溶媒、水、並びに、これらの混合溶媒が挙げられる。これら溶媒のうち、o−ジクロロベンゼンと水とを併用することがより好ましい。溶媒の使用量は、溶液または懸濁液の状態で反応が円滑に進行する量以上であればよく、特に限定されるものではないが、経済性等の面から、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに対して10重量倍程度、より好ましくは5重量倍程度までの量にすることが望ましい。
【0025】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとアルキルハライドとを溶媒中で置換反応させる際の反応温度や反応時間等の反応条件は、反応が完結するように、例えば用いる溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、反応温度は100℃以下であることがより好ましい。
【0026】
上記置換反応を行うことにより、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンが得られる。得られた4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンには副生成物である4,4’−ジアルコキシジフェニルスルホンと未反応の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとが含まれているので、必要に応じてさらに溶剤(抽出)処理、晶析、濾過、脱色、再結晶等の通常の各種精製操作を適宜行うことにより、該4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを単離すればよい。
【0027】
本発明にかかる製造方法によれば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを乾燥粉末とすることなく、含液状態で用いてアルキルハライドとアルカリの存在下で反応させる。このため、該4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの乾燥工程や粉体での取り扱いが不要となり、しかも、粉塵対策や静電気対策、着色防止対策を講じる必要も無くなる等の種々の効果を奏することができる。
【0028】
即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの乾燥工程を省略することができるので、省エネルギーに伴う経済的効果が期待でき、また、粉塵対策や静電気対策を講じる必要も無くなるので、作業環境を改善することができる。さらに、乾燥工程の前に行う濾過工程等も省略することができるので、不純物が混入する可能性を著しく低減することができる。また、乾燥工程を省略することができるので、加熱等によって着色するおそれが無くなる。従って、目的物である4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの品質を向上させることができる。その上、含液状態で取り扱うので、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの輸送や移送が容易であり、例えば懸濁液の状態で取り扱う場合には、パイプラインを用いた輸送や移送も可能となる。
【0029】
また、反応装置に連続的に4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを仕込むことができるので、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの連続生産も可能となる。
【0030】
これにより、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを工業的に有利に、高純度かつ高収率で製造する方法を提供することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0032】
〔実施例1〕
先ず、以下の方法によって4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造した。即ち、フェノール104g(1.1モル)とメシチレン90gとを反応器に入れ、該内容物を攪拌しながら98%硫酸55g(0.55モル)を滴下し、滴下終了後に昇温した。すると、脱水反応が進行し、145℃付近で内容物が沸騰して、メシチレンと共に水(反応生成水)が留出し始めた。留出液をコンデンサーで凝縮し、トラップで二相に分離した後、上相であるメシチレン相を連続的に反応器(反応系内)に戻した。昇温開始から約3時間後に反応液(内容物)の温度は165℃に達し、水の生成は停止した。水の生成が停止した後、異性化反応を進行させるために、165℃で、減圧度が約1330Pa(10mmHg)に達するまで減圧しながらメシチレンと未反応のフェノールとを留去した。留去後、165℃でさらに3時間保持することにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの粗製品を得た。
【0033】
該粗製品と、水200gと、水酸化ナトリウム3gとをオートクレーブに入れ、内温が120℃になるまで加熱し、粗製品を溶解させた。その後、内温が40℃になるまで冷却し、内容物を同温度で濾別した後、水洗した。これにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン120g(0.48モル)と水とを含むケーキ145gを得た。そして、この含水状態のケーキを脱水することなく、イソプロピルブロマイドとの反応に用いた。
【0034】
上記のケーキ145g、水150g、o−ジクロロベンゼン380g、水酸化カリウム27.0g(0.48モル)、および炭酸カリウム33.3g(0.24モル)を反応器に入れ、該内容物を攪拌しながら90℃まで昇温した。次に、内容物を同温度で攪拌しながらイソプロピルブロマイド88.6g(0.72モル)を加えた後、反応液(内容物)を90〜100℃(還流温度)で15時間、攪拌し、置換反応を進行させた。
【0035】
得られた反応液をHPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホン(不純物)は、重量比で86.4:11.6:2.0であった。次いで、精製操作を行った。
【0036】
上記の反応液に水300gと水酸化カリウム27.0gとを加え、充分に攪拌した後、分液操作を行ってo−ジクロロベンゼン層を除去し、水層を取り出した。この水層にさらに水酸化カリウム27.0gを加え、充分に攪拌することによって4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩を析出させた。このカリウム塩を濾別した後、洗浄した。洗浄後のカリウム塩を水800gに溶解させた後、硫酸を用いて水溶液のpHを7に調節し、析出した結晶を濾別、洗浄して乾燥した。
【0037】
これにより、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン112.3g(0.38モル)を得た。HPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホンは、重量比で99.9:0.1:0であった。従って、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの収率は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに対して80%であった。
【0038】
〔実施例2〕
先ず、以下の方法によって4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造した。即ち、フェノール216g(2.3モル)とo−ジクロロベンゼン975gとを反応器に入れ、該内容物を攪拌しながら98%硫酸100g(1.0モル)を滴下し、滴下終了後に昇温した。すると、脱水反応が進行し、150℃付近で内容物が沸騰して、o−ジクロロベンゼンと共に水が留出し始めた。留出液をコンデンサーで凝縮し、トラップで二相に分離した後、下相であるo−ジクロロベンゼン相を連続的に反応器に戻した。昇温開始から約5時間後に反応液の温度は180℃に達し、水の生成は停止した。その後、反応液を120℃になるまで冷却し、析出した結晶を同温度で濾別した後、洗浄した。これにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン95.0g(0.38モル)とo−ジクロロベンゼンとを含むケーキ110gを得た。そして、この含液状態のケーキを脱液することなく、イソプロピルブロマイドとの反応に用いた。
【0039】
上記のケーキ110g、水139g、o−ジクロロベンゼン275g、水酸化カリウム21.4g(0.38モル)、および炭酸カリウム26.4g(0.19モル)を反応器に入れ、該内容物を攪拌しながら90℃まで昇温した。次に、内容物を同温度で攪拌しながらイソプロピルブロマイド70.1g(0.57モル)を加えた後、反応液を90〜100℃(還流温度)で15時間、攪拌し、置換反応を進行させた。
【0040】
得られた反応液をHPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホンは、重量比で86.0:12.0:2.0であった。次いで、実施例1の精製操作と同様の精製操作を行った。
【0041】
これにより、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン88.0g(0.30モル)を得た。HPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホンは、重量比で99.9:0.1:0であった。従って、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの収率は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに対して79%であった。
【0042】
〔実施例3〕
実施例1と同様にして、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン120g(0.48モル)と水とを含むケーキ145gを得た。そして、この含水状態のケーキを脱水することなく、イソプロピルブロマイドとの反応に用いた。
【0043】
上記のケーキ145g、水430g、水酸化ナトリウム30.7g(0.77モル)、およびトルエン350gを反応器に入れ、該内容物を攪拌しながら加温溶解した。次に、内容物を攪拌しながらイソプロピルブロマイド94.6g(0.75モル)を滴下した後、反応液(内容物)を80℃で6時間、攪拌し、置換反応を進行させた。
【0044】
次いで、上記の反応液を攪拌しながら10%水酸化ナトリウム水溶液38gとイソプロピルブロマイド11.8g(0.10モル)とを滴下した後、80℃で8時間、攪拌した。続いて、10%水酸化ナトリウム水溶液14gとイソプロピルブロマイド14.4g(0.12モル)とを滴下した後、80℃で10時間、攪拌した。
【0045】
得られた反応液をHPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホン(不純物)は、重量比で78.0:17.0:5.0であった。次いで、精製操作を行った。
【0046】
上記の反応液にトルエン200gと10%水酸化ナトリウム水溶液とを加えて充分に攪拌し、80℃でpH8.5に調整した後、分液操作を行って水層を除去し、トルエン層を取り出した。このトルエン層に、さらにトルエン300gと水とを加えて攪拌洗浄し、分液することにより、トルエン層を取り出した。得られたトルエン層を冷却、晶析して、析出した結晶を濾別、洗浄して乾燥した。
【0047】
これにより、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン102.0g(0.35モル)を得た。HPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホンは、重量比で99.9:0.1:0であった。従って、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの収率は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに対して73%であった。
【0048】
〔実施例4〕
実施例1と同様にして、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン120g(0.48モル)と水とを含むケーキ145gを得た。そして、この含水状態のケーキを脱水することなく、イソプロピルブロマイドとの反応に用いた。
【0049】
上記のケーキ145g、水100g、水酸化ナトリウム38.4g(0.96モル)、および臭化ナトリウム24.5g(0.24モル)を反応器に入れ、該内容物を攪拌しながら加温溶解した。次に、内容物を攪拌しながらイソプロピルブロマイド59.0g(0.48モル)を徐々に滴下した後、反応液(内容物)を65〜72℃で15時間、攪拌し、置換反応を進行させた。
【0050】
得られた反応液をHPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホン(不純物)は、重量比で78.0:20.0:2.0であった。
【0051】
次いで、実施例3と同様にして精製操作を行い、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン103.0g(0.35モル)を得た。HPLCを用いて分析した結果、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン:4,4’−ジイソプロピルオキシジフェニルスルホンは、重量比で99.9:0.1:0であった。従って、4−イソプロピルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの収率は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンに対して73%であった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法は、以上のように、フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを溶媒中で脱水反応させることによって得た含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、アルキルハライドとアルカリの存在下で反応させる構成である。
【0053】
また、本発明の4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法は、以上のように、上記構成に加えて、上記含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが、懸濁液または湿潤固体であることがより好ましく、アルキルハライドがイソプロピルハライドであることがより好ましい。
【0054】
上記の構成によれば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを乾燥粉末とすることなく、含液状態で用いてアルキルハライドとアルカリの存在下で反応させる。このため、該4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの乾燥工程や粉体での取り扱いが不要となり、しかも、粉塵対策や静電気対策、着色防止対策を講じる必要も無くなる。これにより、4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンを工業的に有利に、高純度かつ高収率で製造する方法を提供することができるという種々の効果を奏する。

Claims (3)

  1. フェノールとスルホン化剤またはフェノールスルホン酸とを溶媒中で脱水反応させることによって得た含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、アルキルハライドとアルカリの存在下で反応させることを特徴とする4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  2. 上記含液状態の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが、懸濁液または湿潤固体であることを特徴とする請求項1に記載の4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  3. アルキルハライドがイソプロピルハライドであることを特徴とする請求項1または2に記載の4−アルコキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
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