JP2004111713A - 露光用マスク、露光方法、半導体装置の製造方法および露光用マスクの製造方法 - Google Patents
露光用マスク、露光方法、半導体装置の製造方法および露光用マスクの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】マスク母体にパターンを形成する際に発生する応力による歪を低減することのできるマスクおよびその製造方法を提供するとともに、このマスクを用いた露光方法およびこの露光方法を適用して半導体装置を製造する方法を提供する。
【解決手段】基材上に転写するパターン2が複数の矩形状のサブフィールド6に分割して形成されたマスク母体を有する露光用マスク1であって、マスク母体には、サブフィールド6内にパターンを形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域8が形成されており、この応力調整領域8は各サブフィールド6の周囲にそれぞれ額縁状に設けられていることを特徴とする露光用マスクを用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】基材上に転写するパターン2が複数の矩形状のサブフィールド6に分割して形成されたマスク母体を有する露光用マスク1であって、マスク母体には、サブフィールド6内にパターンを形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域8が形成されており、この応力調整領域8は各サブフィールド6の周囲にそれぞれ額縁状に設けられていることを特徴とする露光用マスクを用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光用マスク、露光方法、半導体装置の製造方法および露光用マスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路の微細化が著しい。半導体集積回路の微細化のためには、パターン転写工程での解像性能を向上させるとともに、転写位置精度を向上させることが必要となる。
【0003】
パターン転写工程における転写位置精度の向上には、露光装置の転写位置精度の向上および転写に用いる原版(以下、マスクと称す。)上に形成するパターンの位置精度の向上が必要である。
【0004】
従来の半導体集積回路製造技術においては、光露光技術が主流であった。これは、光による転写のスループットが非常に高く、量産性に富んでいることによるものである。したがって、デザイン・ルールが0.10μm程度までの半導体集積回路の製造に対しては主に光露光技術が適用されている。光露光技術における解像性能の向上には、露光波長を短波長側にシフトすることによって結像光学系の開口係数を大きくすることが必要となる。しかし、露光波長の短波長化および大開口係数化は焦点深度の低下を招くことから、光露光において実用上の限界解像度をさらに向上させることは困難であった。
【0005】
そこで、デザイン・ルールが0.07μm程度である半導体集積回路の製造に対しては電子ビーム露光技術の適用が検討されており、電子ビーム露光装置、マスクおよびレジストなどの研究開発が進められている。
【0006】
図5に、従来の転写型電子ビーム露光装置の概略図の一例を示す。図示しない電子銃から放射された電子ビーム51は、照明光学系52によりマスク53上に照射される。電子レンズの場合においては、光学レンズの場合と異なり、例えば20mm角以上の大きな露光面積の全面に亘って収差を小さくさせることは困難である。このため電子ビーム露光においては、マスクのある範囲に電子ビームを照射し、この照射範囲内のパターン像を投影レンズにより縮小転写することが行われる。例えば、1つの露光単位領域に対応したパターン領域(以下、サブフィールドと称す。)がマスク上で1mm角の大きさを有する場合、ウェハ上に縮小投影される投影像の大きさは、縮小率1/4で250μm角となる。この場合、電子ビーム51は、マスク53上で断面が1mm角となるように成形される。成形された電子ビーム51は、照明偏光器54により図のX方向に順次走査されてマスク53の各サブフィールドを照射する。
【0007】
また、マスク53はXY方向に移動可能なマスクステージ55上に載置されている。一方、ウェハ56もXY方向に移動可能なウェハステージ57上に載置されている。マスクステージ55およびウェハステージ57を、互いに逆となるY方向に同期走査することによって、Y方向に多数配列されたサブフィールドが順次露光される。
【0008】
マスク53の下方には、投影光学系58および投影偏光器59が配設されている。マスク53を透過した電子ビーム51は、投影光学系58で縮小された後、投影偏光器59により偏向されてウェハ56上の所定位置に結像する。投影光学系58の投影偏光器59は、照明光学系52の照明偏光器54とは逆となるX方向に同期走査され、マスク53上のパターンの縮小パターンがウェハ56上に順次転写される。
【0009】
以上により、マスク53上の各サブフィールドが電子ビーム51により順次照射され、各サブフィールドの像がウェハ56上の所定位置に投影される。そして、投影された各サブフィールドの縮小像が正確に繋ぎ合わされることによって、1チップに対応する配線パターン全体の縮小像がウェハ56上に転写されることになる。
【0010】
次に、従来の電子ビーム露光に用いられるマスクについて説明する。図6(a)〜(c)に、パターンに対応して透過孔を設けたステンシルマスクの一例を示す。
【0011】
図6(a)は、ステンシルマスクの平面図である。ステンシルマスクの製造には、SOI(Silicon on Insulator)基板が用いられる。SOI基板は、例えば、シリコン基板上に酸化シリコン膜を介してシリコン膜が積層された構造を有している。
【0012】
図6(a)において、基材に転写されるパターン60は、シリコン膜61に形成される。ここで、シリコン膜61は、SOI基板を裏面よりエッチングすることによって自立化した構造を有している。また、マスクの機械的強度を確保するために、パターン60はさらに小さなパターン領域、すなわちサブフィールドに分割される。尚、図でパターン60間のバルクシリコン部62はメジャーストラットと呼ばれる。
【0013】
図6(b)は、ステンシルマスクの拡大平面図である。図中、多数の正方形で示されている領域がサブフィールド63である。すなわち、基材に転写される大パターンは、サブフィールド毎に小パターンに分割されて形成される。また、サブフィールド63は、1つの露光単位領域に対応している。サブフィールド63間に設けられた梁構造はマイナーストラット64であり、マスクの機械的強度を確保するためのものである。マイナーストラット64を挟んで、各サブフィールド63は、例えば1.3mmピッチで配置される。
【0014】
図6(c)は、図6(b)のB−B′線で切断した部分の断面図である。図に示すように、マイナーストラット65がサブフィールド66を支持する構造となっている。この構造は、SOI基板を裏面からエッチングすることによって、支持枠としてのマイナーストラット65を形成し、サブフィールド66領域を含むシリコン膜を自立化させることにより得られる。
【0015】
尚、各サブフィールドの周縁部には、マスク上の寸法で例えば20μm〜40μm程度の図示しないオーバーラップ領域(ファジーバウンダリー)が設けられている。そして、この領域を重ね合わせることによって、各小パターンがウェハ上で繋ぎ合わされて大パターンが再生される。
【0016】
次に、従来の露光用マスクの製造方法について説明する。図7(a)〜(e)は、従来の電子ビーム露光用ステンシルマスクの製造方法を示す工程図の一例である。
【0017】
まず、図7(a)に示すように、シリコン基板67上に酸化シリコン膜68とシリコン膜69が積層されたSOI基板70を準備する。
【0018】
次に、図7(b)に示すように、SOI基板70の全面に窒化シリコン膜71を形成する。窒化シリコン膜71は、後のエッチング工程においてエッチング保護膜としての役割を果たす。次に、図示しないレジストパターンをマスクとして窒化シリコン膜71をエッチングすることにより窒化シリコン膜パターン72を形成した後、窒化シリコン膜パターン72をマスクとしてシリコン基板67をエッチングし、図7(c)の構造とする。
【0019】
続いて、窒化シリコン膜パターン72および窒化シリコン膜71を剥離した後、露出している酸化シリコン膜68を除去する(図7(d))。
【0020】
その後、シリコン膜69上に図示しないレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてシリコン膜69をエッチングする。最後にレジストパターンを剥離することにより、図7(e)に示すステンシルマスク73が完成する。
【0021】
このようなステンシルマスクの製造工程で用いられるSOI基板には、シリコンと酸化シリコン膜との熱膨張係数の差によって酸化シリコン膜に生じる圧縮応力を原因として反りが生じるという問題があった。この問題を解決するべく、ステンシルマスクに基板反り防止膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0022】
また、マスクの熱変形やパターン形成時の内部応力の増減を起因とするマスクの歪に着目し、所定の測定マークを設けることによりマスク品質を監視する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0023】
【特許文献1】
特開2002−151385号公報
【特許文献2】
特開2000−114168号公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ステンシルマスクを構成するシリコン膜は、前述したように自立構造を有する。そこで、この自立構造に弛みが生じないように、シリコン膜には5MPa〜10MPa程度の引張応力が付与されている。このシリコン膜に各サブフィールドに対応するパターンを形成すると、パターン開口部において応力が開放される。このため、パターン形成後において、各サブフィールドに歪が生じるという問題があった。ここで、発生する歪の量および歪の方向は、各サブフィールドに形成されるパターンのレイアウトに依存する。この場合、歪の1次成分である倍率および直行度については、電子光学系に補正レンズを設けることによって補正可能である。しかしながら、台形状の歪および非線形歪については電子光学系で補正することができないという問題があった。
【0025】
また、ステンシルマスクの各サブフィールド間に設けられているマイナーストラットは、例えば幅100μm程度、厚さ750μm程度の板状の形状を有しており、マスク面内方向に比較的容易に変形し易い。このため、応力開放により生じたサブフィールド内の歪によってマイナーストラットの変形が引き起こされ、これによって隣接するサブフィールドの歪に影響が与えられることにより、マスク全体の位置精度が低下するという問題もあった。この点について、図8を用いてさらに詳細に説明する。
【0026】
図8は、3種類のパターン74,75,76が形成された従来のステンシルマスクの平面図である。図において、中心に大開口部を有するパターン74が形成されたサブフィールド77では、等方的に引張応力が開放されるために、周囲のマイナーストラット78に対して図のaで示す方向に位置ずれを生じさせる。これにより、サブフィールド77に隣接するサブフィールド79,80が位置ずれし、サブフィールド79,80に形成されたパターン75の位置精度が低下する。一方、複数のラインパターン76aが1方向に並列するパターン76が形成されたサブフィールド81では、ラインパターンの長手方向に垂直な方向に応力が開放されることによって、図のbで示す方向にマイナーストラット78が変形する。これにより、隣接するサブフィールド80が位置ずれし、上記と同様にサブフィールド80に形成されたパターン75の位置精度が低下する。
【0027】
図8の例で示すように、応力開放により発生する歪は、1つのサブフィールド内のみで補正することはできない。したがって、予めマスクの歪を予測し、マスクパターンの位置を補正することによって、マスクの位置精度の向上を図ることが困難であるという問題があった。特に、大きな開口パターンを有するサブフィールドに隣接するサブフィールドの位置精度の低下が大きいことから、この点の改善を図ることが急務となっていた。
【0028】
また、転写型の電子ビーム露光用マスクとしては、ステンシルタイプの他に、窒化シリコンなどの軽元素の薄膜上にタンタルなどの重金属でパターンを形成した連続メンブレン方式のマスクも提案されている。しかしながら、このようなメンブレンマスクにおいても、ステンシルマスクの場合と同様に、重金属と軽元素薄膜と間の応力差によってパターンに依存する歪が発生し、マスクパターンの位置精度が低下するという問題があった。
【0029】
さらに、大きな開口パターンの周辺部においては、開口パターン形成による応力の開放によってサブフィールド内部の図形にも非線形な歪が発生する。このようなサブフィールド内部の歪の発生を抑制するためには、シリコン膜にかかる引張応力を十分に小さくする必要がある。しかしながら、SOI基板の製造工程やSOI基板を構成するシリコン膜などの形成工程において、シリコン膜にかかる応力を十分に小さくする一方で圧縮応力が生じないようにすることは極めて困難であるという問題もあった。
【0030】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、マスク母体にパターンを形成する際に発生する応力による歪を低減することのできるマスクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0031】
また、本発明は、マスク母体にパターンを形成する際に発生する応力による歪を低減することのできるマスクを用いた露光方法およびこの露光方法を適用して半導体装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【0032】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材上に転写するパターンが複数の矩形状のサブフィールドに分割して形成されたマスク母体を有する露光用マスクであって、このマスク母体にはサブフィールド内にパターンを形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域が形成されており、この応力調整領域は各サブフィールドの周囲にそれぞれ額縁状に設けられていることを特徴とする。このような応力調整領域を設けることによって、マイナーストラットにかかる応力がマスク面内で略一様になるように応力を調整することができ、マイナーストラットの歪を低減してマスクに形成するパターンの位置精度を向上させることが可能となる。
【0034】
応力調整領域には、複数の開口部を形成することができる。開口部の形状、大きさおよび数を調整することによってマイナーストラットにかかる応力を細かく制御することが可能となり、マイナーストラットの歪を低減してマスクに形成するパターンの位置精度を向上させることが可能となる。
【0035】
また、開口部は、例えばスリット状開口部の如き矩形状開口部とすることができる。そして、複数の矩形状開口部がその長手方向と平行な方向に所定の間隔をおいて配置するように形成することができる。マスクにパターンを設けることによって開放される応力の大きさは、応力調整領域に形成する開口部の長さ方向の寸法に大きく依存し、幅方向の寸法への依存性は小さい。すなわち、応力は、開口部の長さ方向に垂直な方向に開放される。したがって、スリット状開口部の如き矩形状開口部を設けることによって、応力調整領域の幅方向の寸法を最小限に留めることができる。
【0036】
応力調整領域に複数の矩形状開口部を形成する場合、サブフィールドに対して配置する位置によってその長手方向の寸法を変えることが好ましい。例えば、サブフィールドのコーナー部近くになるにしたがって前記矩形状開口部の長手方向の寸法が大きくなるようにして形成することができる。
【0037】
また、複数のライン状パターンが1方向に並列するパターンに対応するサブフィールドについては、このライン状パターンが並列する方向(すなわち各ライン状パターンの長手方向に垂直な方向)と平行な方向にのみ矩形状開口部を配置することが好ましい。ライン状パターンについては、パターンの長手方向に垂直な方向の応力が開放される。したがって、矩形状開口部をこのように配置することによって、長手方向に垂直な方向の応力を開放させることができるので、ライン状パターンが並列する方向と平行な方向のマスクの位置ずれを防止することが可能となる。
【0038】
また、本発明は、上記いずれかの露光用マスクを露光エネルギービームで照射した後、前記露光用マスクを透過した前記露光エネルギービームを基材上に投影結像させる露光方法であって、露光エネルギービームが露光用マスクの実質的にサブフィールドのみを照射することを特徴とする。応力調整領域に露光エネルギービームが照射されないので、応力調整領域に形成した開口部パターンが基材に転写されることがない。また、この開口部パターンを設けることによる回路配置の制限および回路の集積度の低下を防止することができる。
【0039】
露光エネルギービームは荷電粒子ビームであってもよい。荷電粒子ビームのド・ブロイ波長は同一のエネルギーの電磁波と比較して短いので回折が小さい。したがって、マスクを透過した露光エネルギーの空間的な広がりを抑制して、高い解像度でパターンの転写を行うことができる。
【0040】
また、荷電粒子ビームは電子ビームであってもよい。電子は質量が小さいので容易に偏向することができる。また、被照射物に与える損傷も小さい。したがって、偏向による位置制御が容易となるとともに、マスクや基材へ与える損傷を低減させることが可能となる。
【0041】
また、基材は半導体基材であってもよい。例えば、本発明にかかる露光方法を用いて半導体基板上に形成されたレジスト膜上に露光エネルギービームを照射し、所望のレジストパターンを形成することによって、下地の薄膜に微細パターンを形成することができる。したがって、本発明にかかる露光方法を用いて半導体装置を製造することができる。
【0042】
さらに、本発明は、基材上に転写するパターンが複数の矩形状のサブフィールドに分割された露光用マスクの製造方法であって、各サブフィールドに対応するパターンをマスク母体に形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域をサブフィールドの周囲にそれぞれ額縁状に形成した後、サブフィールドに対応するパターンをマスク母体に形成することを特徴とする。これにより、自立化したマスク母体にかかる応力をサブフィールド内にパターンを形成する前に十分に小さな値として、パターンの位置精度を向上させることができる。また、サブフィールド内にパターンを形成した後に応力調整領域を形成する方法と比較すると、応力調整領域を形成することによって生じるサブフィールドの歪によるパターンの位置精度低下の問題を解消することができる。
【0043】
応力調整領域には複数の開口部を形成することができ、この開口部の数を変えることによって、各サブフィールドに対応するパターンをマスク母体に形成する際に開放される応力の大きさを制御することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に詳細に述べる。
【0045】
実施の形態1.
図1および図2を用い、本発明による露光マスクについて説明する。
【0046】
図1(a)は、本発明による電子ビーム露光用ステンシルマスクの平面図の一例である。ステンシル構造を透過した電子ビームは散乱を受けないので、基材上に結像したパターンのボケ量が小さくなり、高い解像度でパターンを転写することができる。
【0047】
ステンシルマスクは、例えばSOI基板で構成することができる。SOI基板は、例えば、支持基板と、支持基板上に形成した中間膜と、中間膜上に形成したマスク母体とから構成される。支持基板としては、例えばシリコン基板を用いることができる。また、中間膜としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。さらにマスク母体としては、例えばシリコン膜を用いることができる。また、SOI基板の大きさは、例えば200mmφとすることができる。
【0048】
図1(a)に示すように、マスク1には基材上に転写されるべきパターン2が形成されており、さらにパターン2間にはメジャーストラット3が形成されている。パターン2が形成されている部分は、SOI基板の裏面からエッチングされることにより形成されたマスク母体4の自立構造を有する。一方、メジャーストラット3は、マスク1全体の機械的強度を確保するために設けられたバルクシリコン部である。
【0049】
図1(b)は、図1(a)に示すステンシルマスクにおけるパターン部分の拡大平面図である。図1(b)に示すように、パターンエリア5は、サブフィールド6およびマイナーストラット7を有する。図において、複数の矩形状の領域で示されるサブフィールド6は、1つの露光単位領域に対応したパターン領域である。例えば、ウェハ上に250μm角のパターンを投影する場合、縮小率が1/4であるとするとマスク上に形成するサブフィールド6の大きさは1mm角となる。この場合、マイナーストラットの幅、すなわち各サブフィールドの間隔は、例えば1.3mm程度とすることができる。
【0050】
本発明においては、パターンエリア5は、さらに応力調整領域8を有することを特徴とする。応力調整領域8は、各サブフィールド6の周辺部外側に設けられた額縁状の領域である。また、本発明においては、応力調整領域に所定の形状を有する複数の図示しない開口部を設けることができる。サブフィールドの周辺にこのような応力調整領域を設けることによって、サブフィールド内にパターンを形成する際に発生する応力を小さくすることができるとともに、マイナーストラットに加わる応力がマスク面内で概ね一様になるようにすることができる。
【0051】
図1(c)は、図1(b)のA−A′線で切断した部分の断面図である。図1(c)に示すように、各サブフィールド9は、マイナーストラット10の部分を残してSOI基板を裏面からエッチングすることにより形成した、マスク母体11による自立構造を有している。そして、各自立構造に弛みを生じさせないように、マスク母体11には適当な大きさの引張応力が付与されている。引張応力の大きさは、例えば、5MPa〜10MPa程度とすることができる。図1(b)に示すサブフィールド6および応力調整領域8は、このマスク母体11に形成される。
【0052】
本発明における応力調整領域の一例について、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2(a)は、図1(b)に示す1のサブフィールドおよびその周辺部の拡大平面図である。本実施の形態における応力調整領域12は、マイナーストラット13とサブフィールド14の間にサブフィールド14を囲むようにして設けられる。
【0053】
マスク母体に電子ビーム透過孔を設けることによって開放される応力の大きさと、応力調整領域に形成する開口部の形状との間には次のような関係がある。すなわち、サブフィールドの各辺に平行な方向に対して開口部の長さが変化すると、開放される応力の大きさは大きく変化する。一方、サブフィールドの各辺に垂直な方向に対して開口部の長さが変化した場合には、開放される応力の大きさの変化量は上記の場合に比較すると小さなものとなる。
【0054】
したがって、応力調整領域には、例えばサブフィールドの各辺に平行な方向に長辺を有する矩形状の開口部を形成することが好ましい。これによりサブフィールドの各辺に垂直な方向の開口部の長さを小さくすることができるので、応力調整領域の幅を小さくすることが可能となる。
【0055】
本実施の形態においては、応力調整領域12に、図2(a)に示すような複数のスリット15を形成する。スリット15はサブフィールドの各辺に平行な方向に長辺を有する矩形状の開口部であって、開口部の長手方向と平行な方向に所定の間隔を置いて配置される。
【0056】
サブフィールド14の周辺部にこのような複数のスリット15を設けることによって、マスク母体にかかっている引張応力が開放され、サブフィールド14には中心付近に向かって縮もうとする力が働く。この際、開放される応力の大きさはスリット15の長手方向の寸法L1に大きく依存し、幅方向の寸法W1に対する依存性は小さい。そこで、サブフィールドが等方的に縮むように、スリットの大きさ、数および間隔などを適当な値に設定する。具体的には、スリットを形成するサブフィールド内の場所や、サブフィールド内に形成するパターンの種類およびレイアウトなどに応じてこれらの値を設定することが好ましい。
【0057】
例えば、図2(a)に示すように、矩形状のサブフィールド14では、サブフィールド14の各コーナー部14aに応力が集中する。したがって、サブフィールドの各辺の中央部14bからコーナー部14aへ行くにしたがってスリット15の長手方向の寸法L1が長くなるようにすることが好ましい。このようにすることによって、マイナーストラット13に加わる応力の分布がマスク面内で概ね一様になるように制御することが可能となる。
【0058】
サブフィールド内に形成するパターンの種類に応じたスリットの例について以下に述べる。
【0059】
図2(b)は、サブフィールド内に3種類の異なるパターン16,17,18が形成されたマスクの拡大平面図である。
【0060】
まず、大きな矩形状開口パターン16を有するサブフィールド19を例にとり説明する。サブフィールド内にこのような大きな開口パターンを形成する際には等方的に大きな応力開放が生じる。したがって、サブフィールド19の周囲に形成した応力調整領域20には、スリット間の間隔を大きくとることによりスリットの総数が比較的少なくなるようにして各スリット21を配置する。このようにすることにより、サブフィールド19内に生じる過度の応力の開放を抑制することができる。
【0061】
次に、複数の小さな矩形状の開口部22からなるパターン17を有するサブフィールド23を例にとり説明する。このようなパターンでは、前述の大開口パターンを形成する場合と比較すると、サブフィールド内に発生する応力開放は小さなものとなる。したがって、サブフィールド23の周囲の応力調整領域24には、スリット間の間隔を小さくとることによりスリットの総数が比較的多くなるようにして各スリット25を配置する。
【0062】
次に、複数のラインパターン26が1方向に並列したパターン18を有するサブフィールド27を例にとり説明する。サブフィールド27内にこのようなパターンを形成する場合、ラインパターン26の長手方向に垂直な方向(X′方向)の応力はほとんど開放される。したがって、ラインパターン26の長手方向と平行な方向(Y′方向)の応力調整領域28aにはスリットを設けず、ラインパターン26の長手方向と垂直な方向(X′方向)の応力調整領域28bにのみスリットを設ける。このようにすることにより、サブフィールド27内におけるラインパターン26に垂直な方向(X′方向)と平行な方向(Y′方向)との非等方性倍率歪を修正することが可能となる。
【0063】
また、図2(a)において、応力調整領域12の幅方向の寸法W2は、形成するスリット15の寸法に応じて適当な値に設定する。寸法W2が大きすぎるとマイナーストラット13の幅が狭くなる結果、マスクの機械的強度が低下し好ましくない。一方、寸法W2が小さすぎるとスリット15がサブフィールド14内に重なって形成されるおそれがあり好ましくない。
【0064】
本実施の形態において、応力調整領域に形成する開口部パターンの形状および配置についての最適化は、例えば、各サブフィールドに対してマイナーストラット部を固定境界として扱う有限要素法による応力解析によって行うことができる。
【0065】
本実施の形態においては、露光用マスクがステンシルマスクである場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。本発明にかかる露光用マスクはメンブレンマスクであってもよい。この場合、高散乱体のないメンブレン部が、ステンシルマスクのサブフィールドに形成される開口部に相当する。
【0066】
本実施の形態においては、電子ビーム露光用のマスクについて述べたが、本発明はこれに限られるものではない。本発明のマスクを用いてパターンを転写することができるものであればイオンビームなどの他の荷電粒子ビームであってもよい。また、荷電粒子ビームに限らず他の露光エネルギービームであってもよい。
【0067】
本実施の形態によれば、サブフィールドの周辺部に応力調整領域を設けることによって、サブフィールド内パターンを形成する際に発生する応力による歪を低減させることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、各サブフィールド内に形成するパターンの種類に応じて応力調整領域に形成するスリットの数や間隔などを変えることによって、マイナーストラットに加わる応力がマスク面内で略一様になるようにすることができる。したがって、マイナーストラットの変形を低減させることができるので、パターンの位置精度の低下を防止することが可能となる。
【0069】
さらに、本実施の形態によれば、応力調整領域に形成する各スリットの長さを形成する場所に応じて調整することによって、サブフィールド内の場所の相違による応力の大きさの相違に対応した制御が可能となる。したがって、マイナーストラットに加わる応力がマスク面内で均一な分布を持つようにすることができる。
【0070】
実施の形態2.
図3を用いて、本発明による電子ビーム露光方法について説明する。
【0071】
図3(a)は、本発明による電子ビーム露光方法を実施することのできる電子ビーム露光装置の一例である。
【0072】
図3(a)において、図示しない電子銃から放射された電子ビーム29は、照明光学系30を介し、マスク31に形成されたパターンエリア32を照射する。パターンエリア32は、全体として1個の半導体デバイスチップをなすパターンが形成されているエリアに相当する。また、本実施の形態においては、マスクとして、実施の形態1で説明した本発明にかかる露光用マスクを用いる。
【0073】
パターンエリア32には、図示しない複数のサブフィールドが形成されており、電子ビーム29は1つのサブフィールドのみを照射するように成形される。具体的には、電子ビーム29は、図示しない成形光学系および照明光学系30によって、例えば1mm角程度の断面形状に成形される。
【0074】
照明偏光器33は、電子ビームを図のX方向に順次走査する。これによって、照明光学系30の視野内にあるマスク31の各サブフィールドが照射される。
【0075】
マスク31は、図のX方向およびY方向に移動可能なマスクステージ34上に載置されている。また、ウェハ35もX方向およびY方向に移動可能なウェハステージ36上に載置されている。マスクステージ34およびウェハステージ36を互いに逆のY方向に同期走査することによって、チップパターン内でY方向に多数配列されたサブフィールドが順次露光されてウェハ35上に転写される。
【0076】
図3(b)は、本発明にかかる露光用マスクに形成されたサブフィールドの1つを電子ビームが照射する様子を示す図である。図に示すように、矩形状のサブフィールド37の周囲にはその各辺を囲むように額縁状に応力調整領域38が形成されている。ここで、応力調整領域には、例えば、実施の形態1で説明した複数のスリット(図示せず)が設けられている。
【0077】
本実施の形態においては、電子ビームは、サブフィールドのみを照射することを特徴とする。すなわち、図3(b)に示すように、矩形状に成形された電子ビーム39は、サブフィールド37のみを透過し、応力調整領域38に設けられたスリットを透過することはない。したがって、応力調整領域38に形成されたスリットがパターンとしてウェハ上に転写されることはない。
【0078】
図3(a)において、マスク31を透過した電子ビーム29は、投影光学系40によってウェハ35上に結像する。例えば、電子ビームの断面が1mm角程度である場合、結像光学系40の縮小率が1/4であるとすると、各サブフィールドはウェハ35上に250μm角程度の大きさで投影される。
【0079】
マスク31の下方には、また、投影偏光器41が設けられている。マスク31のサブフィールドに照射された電子ビーム29は、投影光学系40によって縮小結像されるとともに、投影偏光器41によって、照明偏光器33により偏向される方向とは逆のX方向に走査される。
【0080】
尚、マスクがステンシルマスクの場合には、電子ビームはサブフィールドに形成された開口部を透過する。一方、マスクがメンブレンマスクである場合には、電子ビームは高散乱体のないメンブレン部を透過する。
【0081】
図3(a)において、マスク31上のX方向には多数の図示しないサブフィールドが一列に並んでいる。一方、Y方向にはこのようなサブフィールドの列が多数並んでいて1つのストライプ32aを形成するとともに、複数のストライプがX方向に並列している。
【0082】
1つのストライプ内において、X方向に並んだ各サブフィールドは、電子線偏向により順次露光される。一方、Y方向についてはステージが連続的に走査されることにより順次露光される。そして、隣接するストライプについては、ステージがX方向に間欠的に移動することによって順次露光される。
【0083】
尚、ウェハ上には、例えばレジスト膜が形成されていて、このレジスト膜に電子ビームが照射されることによってマスク上のパターンの縮小パターンがレジスト膜上に転写される。その後、現像液を用いてレジスト膜をパターニングし、このレジストパターンをマスクとして下地のウェハまたは絶縁膜などの薄膜をエッチングすることによりチップパターンがウェハ上に転写される。ウェハとしては、例えばシリコンウェハを用いることができる。
【0084】
本実施の形態においては、電子ビームがサブフィールドのみを照射する場合について示したが、本発明はこれに限られるものではない。本発明における露光方法は、応力調整領域に設けられた開口部を電子ビームが透過することによって、開口部パターンが基材に転写されるものでなければよい。すなわち、電子ビームによって応力調整領域が照射されたとしても、応力調整領域に設けられた開口部を電子ビームが透過しなければよい。換言すると、本発明における露光方法は、実質的にサブフィールドのみを照射することによって、サブフィールドに形成されたパターンのみを転写するものである。
【0085】
本実施の形態においては、電子ビーム露光方法およびこの方法を実施することのできる電子ビーム露光装置について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。実質的にサブフィールドのみを照射するものであれば、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームによる露光方法および露光装置であってもよい。また、荷電粒子ビームに限らず他の露光エネルギービームによる露光方法および露光装置であってもよい。
【0086】
以上述べたように、本実施の形態によれば、実質的にサブフィールド領域のみを電子ビームで照射するので、応力調整領域に設けられた開口部パターンが基材に転写されることはない。したがって、マスクレイアウト設計時において、基材に転写するパターンとして応力調整領域に設ける開口部パターンを考慮する必要がない。例えば、基材として半導体基材を用いた場合には、開口部パターンを設けることによって回路配置が制限を受けることはなく、開口部パターンが半導体基材に転写されて半導体装置の集積度の低下が生じることもない。
【0087】
実施の形態3.
図4を用いて、本発明による露光用マスクの製造方法について説明する。
【0088】
図4(a)〜(f)は、本発明による露光用マスクの製造方法を説明する工程図の一例である。まず、図4(a)に示すように、SOI基板42を準備する。SOI基板42は、例えば、支持基板43と、中間膜44と、マスク母体45とから構成される。支持基板43としては、例えばシリコン基板を用いることができる。また、中間膜44としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。さらに、マスク母体45としては、例えばシリコン膜を用いることができる。また、SOI基板42の大きさは、例えば200mmφとすることができる。
【0089】
具体的には、SOI基板は、貼合せ法やSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法などによって製造することができる。貼合せ法によれば、SOI基板は、例えば、表面に酸化シリコン膜が形成されたシリコン基板を二つ用意し、これらのシリコン基板の酸化シリコン膜を熱融着によって互いに貼合せることにより製造することができる。また、SIMOX法によれば、SOI基板は、例えば、シリコン基板中に高濃度の酸素をイオン注入し、シリコン基板内に酸化膜を形成することによって製造することができる。
【0090】
また、後の工程でマスク母体45を自立構造としたときに弛みが生じないように、マスク母体45には所定の大きさを有する引張応力を付与する。引張応力の大きさは、例えば5MPa〜10MPaとするのが好ましい。
【0091】
マスク母体に引張応力を付与する方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、マスク母体であるシリコン膜中に、ホウ素やリンなどのシリコンより小さい原子をドープすることによって、マスク母体の内部応力を引張応力とすることができる。
【0092】
次に、SOI基板42の裏面、すなわち支持基板43の表面43aに、図示しないエッチングマスクを形成する。エッチングマスクとしては、例えば、窒化シリコン膜を用いることができる。そして、このエッチングマスクを用いて支持基板43および中間膜44をエッチングし、図4(b)の構造とする。図4(b)において、エッチング後の支持基板43および中間膜44は、マイナーストラット46を構成する。すなわち、このエッチングによって、マイナーストラット46で支持された自立構造を有するマスク母体45が形成される。
【0093】
次に、マスク母体45のマイナーストラット46で囲まれた領域内において、サブフィールドの周辺部に実施の形態1で説明した開口部パターンを形成する。すなわり、この開口部パターンを形成する領域が応力調整領域に相当する。
【0094】
まず、図4(b)のマスク母体45上にレジスト組成物を塗布して図示しないレジスト膜を形成する。続いて、応力調整領域に形成する開口部パターンをレジスト膜に転写した後、レジスト膜を現像することにより図4(c)に示すレジストパターン47を形成する。実施の形態1で説明したように、開口部パターンは、例えばスリットパターンとすることができる。そして、サブフィールド内に形成するパターンの種類やレイアウトに応じて、スリットの大きさ、間隔および数などを変える。
【0095】
レジスト膜にスリットパターンを転写した場合、サブフィールド内にパターンを形成する際にマスク母体から開放される応力の大きさは、各スリットの長手方向の寸法に大きく依存し、幅方向の寸法に対する依存性は小さい。したがって、各スリットにおいて、寸法の小さい幅方向に対して高い寸法精度が要求されることはない。すなわち、スリットパターンは高解像度のパターンである必要はないので、レジストパターンの形成には光露光技術を適用することができる。
【0096】
次に、レジストパターン47をマスクとしてマスク母体45をエッチングすることにより、マスク母体45に開口部パターン48を形成することができる(図4(d))。そして、この開口部パターン48の形成によって、マスク母体45にかけられた引張応力の値が略ゼロになるまで応力を開放することが可能となる。
【0097】
次に、形成した開口部パターン48によって囲まれたサブフィールド領域内に、各サブフィールドに対応する所望のパターンを形成する。図4(d)において、サブフィールドは、開口部48aと開口部48bによって挟まれた領域45aや、開口部48cと開口部48dによって挟まれた領域45bにある。また、ここで所望のパターンとは、半導体集積回路において、1チップに対応する配線パターンを複数のサブフィールドに分割したときの個々のサブフィールドに形成するパターンをいう。
【0098】
まず、図4(d)のマスク母体45に上にレジスト組成物を塗布して図示しないレジスト膜を形成する。この際、レジスト組成物の粘度および開口部48a,48b,…の大きさを最適化することによって、開口部48a,48b,…の内部へのレジストの侵入を防ぐことができる。
【0099】
続いて、サブフィールド内に形成する所定のパターンをレジスト膜に転写した後、レジスト膜を現像することにより図4(e)に示すレジストパターン49を形成する。この際、レジストパターン49の形成には高い解像度が要求されることから、電子ビーム露光技術を適用して所定のパターンをレジスト膜に転写する。その後、レジストパターン49をマスクとしてマスク母体45をエッチングし、所望のパターンに対応する電子ビーム開口孔50を形成する。次いで、レジストパターン49を剥離することにより、本発明にかかる露光用マスクを製造することができる(図4(f))。
【0100】
本実施の形態における露光用マスクは、例えば、電子ビーム露光用マスクとして用いることができる。また、電子ビームに限らず、露光エネルギービームであればイオンビームなどの他の荷電粒子ビーム露光用マスクであってもよい。
【0101】
本実施の形態によれば、マスクパターンを形成する前に応力調整領域に開口部パターンを形成する。この開口部パターンの形成によって、マスク母体にかかっている引張応力の殆どを開放することができる。したがって、サブフィールドに所望のパターンを形成する際に、マスク母体の歪によるパターンの位置ずれの問題を解消することができる。
【0102】
また、本実施の形態により製造された露光用マスクを用いて半導体装置を製造することにより、半導体基材に転写する回路パターンの位置精度を向上させることができる。パターンの位置精度が向上すれば重ね合わせ精度も向上させることができるので、重ね合わせのマージンを小さくして集積度を向上させることが可能となる。また、重ね合わせ精度の向上により、パターンの重ね合わせ不良を減少させて、製品の歩留まりを向上させることもできる。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、サブフィールドの周辺部に応力調整領域を設けるので、サブフィールド内にパターンを形成する際に発生する応力による歪を低減させることができる。
【0104】
また、本発明によれば、実質的にサブフィールド領域のみを電子ビームで照射するので、応力調整領域に設けられた開口部パターンが基材に転写されることはない。
【0105】
さらに、本発明によれば、各サブフィールドに対応するパターンを形成する前に応力調整領域に開口部を形成するので、パターン形成前にマスク母体にかかっている引張応力を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1において、図1(a)は露光用マスクの平面図、図1(b)は露光用マスクのパターンエリアの拡大平面図、図1(c)は図1(b)のA−A′線で示す部分の断面図である。
【図2】実施の形態1において、図2(a)はサブフィールドの拡大平面図、図2(b)はマスクパターンの拡大平面図である。
【図3】実施の形態2において、図3(a)は電子ビーム露光装置の概略図、図3(b)は電子ビームの照射の様子を示す図である。
【図4】実施の形態3において、露光用マスクの製造方法を説明する工程図である。
【図5】従来の電子ビーム露光装置の概略図である。
【図6】図6(a)は従来の露光用マスクの平面図、図6(b)はその拡大平面図、図6(c)は図6(b)のB−B′線で示す部分の断面図である。
【図7】従来の露光用マスクの製造方法を説明する工程図である。
【図8】従来の露光用マスクにおけるマスクパターンの平面図である。
【符号の説明】
1 マスク、 2 パターン、 3 メジャーストラット、 4 マスク母体、5 パターンエリア、 6,9 サブフィールド、 7,10 マイナーストラット、 8 応力調整領域、 15 スリット。
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光用マスク、露光方法、半導体装置の製造方法および露光用マスクの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路の微細化が著しい。半導体集積回路の微細化のためには、パターン転写工程での解像性能を向上させるとともに、転写位置精度を向上させることが必要となる。
【0003】
パターン転写工程における転写位置精度の向上には、露光装置の転写位置精度の向上および転写に用いる原版(以下、マスクと称す。)上に形成するパターンの位置精度の向上が必要である。
【0004】
従来の半導体集積回路製造技術においては、光露光技術が主流であった。これは、光による転写のスループットが非常に高く、量産性に富んでいることによるものである。したがって、デザイン・ルールが0.10μm程度までの半導体集積回路の製造に対しては主に光露光技術が適用されている。光露光技術における解像性能の向上には、露光波長を短波長側にシフトすることによって結像光学系の開口係数を大きくすることが必要となる。しかし、露光波長の短波長化および大開口係数化は焦点深度の低下を招くことから、光露光において実用上の限界解像度をさらに向上させることは困難であった。
【0005】
そこで、デザイン・ルールが0.07μm程度である半導体集積回路の製造に対しては電子ビーム露光技術の適用が検討されており、電子ビーム露光装置、マスクおよびレジストなどの研究開発が進められている。
【0006】
図5に、従来の転写型電子ビーム露光装置の概略図の一例を示す。図示しない電子銃から放射された電子ビーム51は、照明光学系52によりマスク53上に照射される。電子レンズの場合においては、光学レンズの場合と異なり、例えば20mm角以上の大きな露光面積の全面に亘って収差を小さくさせることは困難である。このため電子ビーム露光においては、マスクのある範囲に電子ビームを照射し、この照射範囲内のパターン像を投影レンズにより縮小転写することが行われる。例えば、1つの露光単位領域に対応したパターン領域(以下、サブフィールドと称す。)がマスク上で1mm角の大きさを有する場合、ウェハ上に縮小投影される投影像の大きさは、縮小率1/4で250μm角となる。この場合、電子ビーム51は、マスク53上で断面が1mm角となるように成形される。成形された電子ビーム51は、照明偏光器54により図のX方向に順次走査されてマスク53の各サブフィールドを照射する。
【0007】
また、マスク53はXY方向に移動可能なマスクステージ55上に載置されている。一方、ウェハ56もXY方向に移動可能なウェハステージ57上に載置されている。マスクステージ55およびウェハステージ57を、互いに逆となるY方向に同期走査することによって、Y方向に多数配列されたサブフィールドが順次露光される。
【0008】
マスク53の下方には、投影光学系58および投影偏光器59が配設されている。マスク53を透過した電子ビーム51は、投影光学系58で縮小された後、投影偏光器59により偏向されてウェハ56上の所定位置に結像する。投影光学系58の投影偏光器59は、照明光学系52の照明偏光器54とは逆となるX方向に同期走査され、マスク53上のパターンの縮小パターンがウェハ56上に順次転写される。
【0009】
以上により、マスク53上の各サブフィールドが電子ビーム51により順次照射され、各サブフィールドの像がウェハ56上の所定位置に投影される。そして、投影された各サブフィールドの縮小像が正確に繋ぎ合わされることによって、1チップに対応する配線パターン全体の縮小像がウェハ56上に転写されることになる。
【0010】
次に、従来の電子ビーム露光に用いられるマスクについて説明する。図6(a)〜(c)に、パターンに対応して透過孔を設けたステンシルマスクの一例を示す。
【0011】
図6(a)は、ステンシルマスクの平面図である。ステンシルマスクの製造には、SOI(Silicon on Insulator)基板が用いられる。SOI基板は、例えば、シリコン基板上に酸化シリコン膜を介してシリコン膜が積層された構造を有している。
【0012】
図6(a)において、基材に転写されるパターン60は、シリコン膜61に形成される。ここで、シリコン膜61は、SOI基板を裏面よりエッチングすることによって自立化した構造を有している。また、マスクの機械的強度を確保するために、パターン60はさらに小さなパターン領域、すなわちサブフィールドに分割される。尚、図でパターン60間のバルクシリコン部62はメジャーストラットと呼ばれる。
【0013】
図6(b)は、ステンシルマスクの拡大平面図である。図中、多数の正方形で示されている領域がサブフィールド63である。すなわち、基材に転写される大パターンは、サブフィールド毎に小パターンに分割されて形成される。また、サブフィールド63は、1つの露光単位領域に対応している。サブフィールド63間に設けられた梁構造はマイナーストラット64であり、マスクの機械的強度を確保するためのものである。マイナーストラット64を挟んで、各サブフィールド63は、例えば1.3mmピッチで配置される。
【0014】
図6(c)は、図6(b)のB−B′線で切断した部分の断面図である。図に示すように、マイナーストラット65がサブフィールド66を支持する構造となっている。この構造は、SOI基板を裏面からエッチングすることによって、支持枠としてのマイナーストラット65を形成し、サブフィールド66領域を含むシリコン膜を自立化させることにより得られる。
【0015】
尚、各サブフィールドの周縁部には、マスク上の寸法で例えば20μm〜40μm程度の図示しないオーバーラップ領域(ファジーバウンダリー)が設けられている。そして、この領域を重ね合わせることによって、各小パターンがウェハ上で繋ぎ合わされて大パターンが再生される。
【0016】
次に、従来の露光用マスクの製造方法について説明する。図7(a)〜(e)は、従来の電子ビーム露光用ステンシルマスクの製造方法を示す工程図の一例である。
【0017】
まず、図7(a)に示すように、シリコン基板67上に酸化シリコン膜68とシリコン膜69が積層されたSOI基板70を準備する。
【0018】
次に、図7(b)に示すように、SOI基板70の全面に窒化シリコン膜71を形成する。窒化シリコン膜71は、後のエッチング工程においてエッチング保護膜としての役割を果たす。次に、図示しないレジストパターンをマスクとして窒化シリコン膜71をエッチングすることにより窒化シリコン膜パターン72を形成した後、窒化シリコン膜パターン72をマスクとしてシリコン基板67をエッチングし、図7(c)の構造とする。
【0019】
続いて、窒化シリコン膜パターン72および窒化シリコン膜71を剥離した後、露出している酸化シリコン膜68を除去する(図7(d))。
【0020】
その後、シリコン膜69上に図示しないレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてシリコン膜69をエッチングする。最後にレジストパターンを剥離することにより、図7(e)に示すステンシルマスク73が完成する。
【0021】
このようなステンシルマスクの製造工程で用いられるSOI基板には、シリコンと酸化シリコン膜との熱膨張係数の差によって酸化シリコン膜に生じる圧縮応力を原因として反りが生じるという問題があった。この問題を解決するべく、ステンシルマスクに基板反り防止膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0022】
また、マスクの熱変形やパターン形成時の内部応力の増減を起因とするマスクの歪に着目し、所定の測定マークを設けることによりマスク品質を監視する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0023】
【特許文献1】
特開2002−151385号公報
【特許文献2】
特開2000−114168号公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ステンシルマスクを構成するシリコン膜は、前述したように自立構造を有する。そこで、この自立構造に弛みが生じないように、シリコン膜には5MPa〜10MPa程度の引張応力が付与されている。このシリコン膜に各サブフィールドに対応するパターンを形成すると、パターン開口部において応力が開放される。このため、パターン形成後において、各サブフィールドに歪が生じるという問題があった。ここで、発生する歪の量および歪の方向は、各サブフィールドに形成されるパターンのレイアウトに依存する。この場合、歪の1次成分である倍率および直行度については、電子光学系に補正レンズを設けることによって補正可能である。しかしながら、台形状の歪および非線形歪については電子光学系で補正することができないという問題があった。
【0025】
また、ステンシルマスクの各サブフィールド間に設けられているマイナーストラットは、例えば幅100μm程度、厚さ750μm程度の板状の形状を有しており、マスク面内方向に比較的容易に変形し易い。このため、応力開放により生じたサブフィールド内の歪によってマイナーストラットの変形が引き起こされ、これによって隣接するサブフィールドの歪に影響が与えられることにより、マスク全体の位置精度が低下するという問題もあった。この点について、図8を用いてさらに詳細に説明する。
【0026】
図8は、3種類のパターン74,75,76が形成された従来のステンシルマスクの平面図である。図において、中心に大開口部を有するパターン74が形成されたサブフィールド77では、等方的に引張応力が開放されるために、周囲のマイナーストラット78に対して図のaで示す方向に位置ずれを生じさせる。これにより、サブフィールド77に隣接するサブフィールド79,80が位置ずれし、サブフィールド79,80に形成されたパターン75の位置精度が低下する。一方、複数のラインパターン76aが1方向に並列するパターン76が形成されたサブフィールド81では、ラインパターンの長手方向に垂直な方向に応力が開放されることによって、図のbで示す方向にマイナーストラット78が変形する。これにより、隣接するサブフィールド80が位置ずれし、上記と同様にサブフィールド80に形成されたパターン75の位置精度が低下する。
【0027】
図8の例で示すように、応力開放により発生する歪は、1つのサブフィールド内のみで補正することはできない。したがって、予めマスクの歪を予測し、マスクパターンの位置を補正することによって、マスクの位置精度の向上を図ることが困難であるという問題があった。特に、大きな開口パターンを有するサブフィールドに隣接するサブフィールドの位置精度の低下が大きいことから、この点の改善を図ることが急務となっていた。
【0028】
また、転写型の電子ビーム露光用マスクとしては、ステンシルタイプの他に、窒化シリコンなどの軽元素の薄膜上にタンタルなどの重金属でパターンを形成した連続メンブレン方式のマスクも提案されている。しかしながら、このようなメンブレンマスクにおいても、ステンシルマスクの場合と同様に、重金属と軽元素薄膜と間の応力差によってパターンに依存する歪が発生し、マスクパターンの位置精度が低下するという問題があった。
【0029】
さらに、大きな開口パターンの周辺部においては、開口パターン形成による応力の開放によってサブフィールド内部の図形にも非線形な歪が発生する。このようなサブフィールド内部の歪の発生を抑制するためには、シリコン膜にかかる引張応力を十分に小さくする必要がある。しかしながら、SOI基板の製造工程やSOI基板を構成するシリコン膜などの形成工程において、シリコン膜にかかる応力を十分に小さくする一方で圧縮応力が生じないようにすることは極めて困難であるという問題もあった。
【0030】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、マスク母体にパターンを形成する際に発生する応力による歪を低減することのできるマスクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0031】
また、本発明は、マスク母体にパターンを形成する際に発生する応力による歪を低減することのできるマスクを用いた露光方法およびこの露光方法を適用して半導体装置を製造する方法を提供することを目的とする。
【0032】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材上に転写するパターンが複数の矩形状のサブフィールドに分割して形成されたマスク母体を有する露光用マスクであって、このマスク母体にはサブフィールド内にパターンを形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域が形成されており、この応力調整領域は各サブフィールドの周囲にそれぞれ額縁状に設けられていることを特徴とする。このような応力調整領域を設けることによって、マイナーストラットにかかる応力がマスク面内で略一様になるように応力を調整することができ、マイナーストラットの歪を低減してマスクに形成するパターンの位置精度を向上させることが可能となる。
【0034】
応力調整領域には、複数の開口部を形成することができる。開口部の形状、大きさおよび数を調整することによってマイナーストラットにかかる応力を細かく制御することが可能となり、マイナーストラットの歪を低減してマスクに形成するパターンの位置精度を向上させることが可能となる。
【0035】
また、開口部は、例えばスリット状開口部の如き矩形状開口部とすることができる。そして、複数の矩形状開口部がその長手方向と平行な方向に所定の間隔をおいて配置するように形成することができる。マスクにパターンを設けることによって開放される応力の大きさは、応力調整領域に形成する開口部の長さ方向の寸法に大きく依存し、幅方向の寸法への依存性は小さい。すなわち、応力は、開口部の長さ方向に垂直な方向に開放される。したがって、スリット状開口部の如き矩形状開口部を設けることによって、応力調整領域の幅方向の寸法を最小限に留めることができる。
【0036】
応力調整領域に複数の矩形状開口部を形成する場合、サブフィールドに対して配置する位置によってその長手方向の寸法を変えることが好ましい。例えば、サブフィールドのコーナー部近くになるにしたがって前記矩形状開口部の長手方向の寸法が大きくなるようにして形成することができる。
【0037】
また、複数のライン状パターンが1方向に並列するパターンに対応するサブフィールドについては、このライン状パターンが並列する方向(すなわち各ライン状パターンの長手方向に垂直な方向)と平行な方向にのみ矩形状開口部を配置することが好ましい。ライン状パターンについては、パターンの長手方向に垂直な方向の応力が開放される。したがって、矩形状開口部をこのように配置することによって、長手方向に垂直な方向の応力を開放させることができるので、ライン状パターンが並列する方向と平行な方向のマスクの位置ずれを防止することが可能となる。
【0038】
また、本発明は、上記いずれかの露光用マスクを露光エネルギービームで照射した後、前記露光用マスクを透過した前記露光エネルギービームを基材上に投影結像させる露光方法であって、露光エネルギービームが露光用マスクの実質的にサブフィールドのみを照射することを特徴とする。応力調整領域に露光エネルギービームが照射されないので、応力調整領域に形成した開口部パターンが基材に転写されることがない。また、この開口部パターンを設けることによる回路配置の制限および回路の集積度の低下を防止することができる。
【0039】
露光エネルギービームは荷電粒子ビームであってもよい。荷電粒子ビームのド・ブロイ波長は同一のエネルギーの電磁波と比較して短いので回折が小さい。したがって、マスクを透過した露光エネルギーの空間的な広がりを抑制して、高い解像度でパターンの転写を行うことができる。
【0040】
また、荷電粒子ビームは電子ビームであってもよい。電子は質量が小さいので容易に偏向することができる。また、被照射物に与える損傷も小さい。したがって、偏向による位置制御が容易となるとともに、マスクや基材へ与える損傷を低減させることが可能となる。
【0041】
また、基材は半導体基材であってもよい。例えば、本発明にかかる露光方法を用いて半導体基板上に形成されたレジスト膜上に露光エネルギービームを照射し、所望のレジストパターンを形成することによって、下地の薄膜に微細パターンを形成することができる。したがって、本発明にかかる露光方法を用いて半導体装置を製造することができる。
【0042】
さらに、本発明は、基材上に転写するパターンが複数の矩形状のサブフィールドに分割された露光用マスクの製造方法であって、各サブフィールドに対応するパターンをマスク母体に形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域をサブフィールドの周囲にそれぞれ額縁状に形成した後、サブフィールドに対応するパターンをマスク母体に形成することを特徴とする。これにより、自立化したマスク母体にかかる応力をサブフィールド内にパターンを形成する前に十分に小さな値として、パターンの位置精度を向上させることができる。また、サブフィールド内にパターンを形成した後に応力調整領域を形成する方法と比較すると、応力調整領域を形成することによって生じるサブフィールドの歪によるパターンの位置精度低下の問題を解消することができる。
【0043】
応力調整領域には複数の開口部を形成することができ、この開口部の数を変えることによって、各サブフィールドに対応するパターンをマスク母体に形成する際に開放される応力の大きさを制御することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に詳細に述べる。
【0045】
実施の形態1.
図1および図2を用い、本発明による露光マスクについて説明する。
【0046】
図1(a)は、本発明による電子ビーム露光用ステンシルマスクの平面図の一例である。ステンシル構造を透過した電子ビームは散乱を受けないので、基材上に結像したパターンのボケ量が小さくなり、高い解像度でパターンを転写することができる。
【0047】
ステンシルマスクは、例えばSOI基板で構成することができる。SOI基板は、例えば、支持基板と、支持基板上に形成した中間膜と、中間膜上に形成したマスク母体とから構成される。支持基板としては、例えばシリコン基板を用いることができる。また、中間膜としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。さらにマスク母体としては、例えばシリコン膜を用いることができる。また、SOI基板の大きさは、例えば200mmφとすることができる。
【0048】
図1(a)に示すように、マスク1には基材上に転写されるべきパターン2が形成されており、さらにパターン2間にはメジャーストラット3が形成されている。パターン2が形成されている部分は、SOI基板の裏面からエッチングされることにより形成されたマスク母体4の自立構造を有する。一方、メジャーストラット3は、マスク1全体の機械的強度を確保するために設けられたバルクシリコン部である。
【0049】
図1(b)は、図1(a)に示すステンシルマスクにおけるパターン部分の拡大平面図である。図1(b)に示すように、パターンエリア5は、サブフィールド6およびマイナーストラット7を有する。図において、複数の矩形状の領域で示されるサブフィールド6は、1つの露光単位領域に対応したパターン領域である。例えば、ウェハ上に250μm角のパターンを投影する場合、縮小率が1/4であるとするとマスク上に形成するサブフィールド6の大きさは1mm角となる。この場合、マイナーストラットの幅、すなわち各サブフィールドの間隔は、例えば1.3mm程度とすることができる。
【0050】
本発明においては、パターンエリア5は、さらに応力調整領域8を有することを特徴とする。応力調整領域8は、各サブフィールド6の周辺部外側に設けられた額縁状の領域である。また、本発明においては、応力調整領域に所定の形状を有する複数の図示しない開口部を設けることができる。サブフィールドの周辺にこのような応力調整領域を設けることによって、サブフィールド内にパターンを形成する際に発生する応力を小さくすることができるとともに、マイナーストラットに加わる応力がマスク面内で概ね一様になるようにすることができる。
【0051】
図1(c)は、図1(b)のA−A′線で切断した部分の断面図である。図1(c)に示すように、各サブフィールド9は、マイナーストラット10の部分を残してSOI基板を裏面からエッチングすることにより形成した、マスク母体11による自立構造を有している。そして、各自立構造に弛みを生じさせないように、マスク母体11には適当な大きさの引張応力が付与されている。引張応力の大きさは、例えば、5MPa〜10MPa程度とすることができる。図1(b)に示すサブフィールド6および応力調整領域8は、このマスク母体11に形成される。
【0052】
本発明における応力調整領域の一例について、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2(a)は、図1(b)に示す1のサブフィールドおよびその周辺部の拡大平面図である。本実施の形態における応力調整領域12は、マイナーストラット13とサブフィールド14の間にサブフィールド14を囲むようにして設けられる。
【0053】
マスク母体に電子ビーム透過孔を設けることによって開放される応力の大きさと、応力調整領域に形成する開口部の形状との間には次のような関係がある。すなわち、サブフィールドの各辺に平行な方向に対して開口部の長さが変化すると、開放される応力の大きさは大きく変化する。一方、サブフィールドの各辺に垂直な方向に対して開口部の長さが変化した場合には、開放される応力の大きさの変化量は上記の場合に比較すると小さなものとなる。
【0054】
したがって、応力調整領域には、例えばサブフィールドの各辺に平行な方向に長辺を有する矩形状の開口部を形成することが好ましい。これによりサブフィールドの各辺に垂直な方向の開口部の長さを小さくすることができるので、応力調整領域の幅を小さくすることが可能となる。
【0055】
本実施の形態においては、応力調整領域12に、図2(a)に示すような複数のスリット15を形成する。スリット15はサブフィールドの各辺に平行な方向に長辺を有する矩形状の開口部であって、開口部の長手方向と平行な方向に所定の間隔を置いて配置される。
【0056】
サブフィールド14の周辺部にこのような複数のスリット15を設けることによって、マスク母体にかかっている引張応力が開放され、サブフィールド14には中心付近に向かって縮もうとする力が働く。この際、開放される応力の大きさはスリット15の長手方向の寸法L1に大きく依存し、幅方向の寸法W1に対する依存性は小さい。そこで、サブフィールドが等方的に縮むように、スリットの大きさ、数および間隔などを適当な値に設定する。具体的には、スリットを形成するサブフィールド内の場所や、サブフィールド内に形成するパターンの種類およびレイアウトなどに応じてこれらの値を設定することが好ましい。
【0057】
例えば、図2(a)に示すように、矩形状のサブフィールド14では、サブフィールド14の各コーナー部14aに応力が集中する。したがって、サブフィールドの各辺の中央部14bからコーナー部14aへ行くにしたがってスリット15の長手方向の寸法L1が長くなるようにすることが好ましい。このようにすることによって、マイナーストラット13に加わる応力の分布がマスク面内で概ね一様になるように制御することが可能となる。
【0058】
サブフィールド内に形成するパターンの種類に応じたスリットの例について以下に述べる。
【0059】
図2(b)は、サブフィールド内に3種類の異なるパターン16,17,18が形成されたマスクの拡大平面図である。
【0060】
まず、大きな矩形状開口パターン16を有するサブフィールド19を例にとり説明する。サブフィールド内にこのような大きな開口パターンを形成する際には等方的に大きな応力開放が生じる。したがって、サブフィールド19の周囲に形成した応力調整領域20には、スリット間の間隔を大きくとることによりスリットの総数が比較的少なくなるようにして各スリット21を配置する。このようにすることにより、サブフィールド19内に生じる過度の応力の開放を抑制することができる。
【0061】
次に、複数の小さな矩形状の開口部22からなるパターン17を有するサブフィールド23を例にとり説明する。このようなパターンでは、前述の大開口パターンを形成する場合と比較すると、サブフィールド内に発生する応力開放は小さなものとなる。したがって、サブフィールド23の周囲の応力調整領域24には、スリット間の間隔を小さくとることによりスリットの総数が比較的多くなるようにして各スリット25を配置する。
【0062】
次に、複数のラインパターン26が1方向に並列したパターン18を有するサブフィールド27を例にとり説明する。サブフィールド27内にこのようなパターンを形成する場合、ラインパターン26の長手方向に垂直な方向(X′方向)の応力はほとんど開放される。したがって、ラインパターン26の長手方向と平行な方向(Y′方向)の応力調整領域28aにはスリットを設けず、ラインパターン26の長手方向と垂直な方向(X′方向)の応力調整領域28bにのみスリットを設ける。このようにすることにより、サブフィールド27内におけるラインパターン26に垂直な方向(X′方向)と平行な方向(Y′方向)との非等方性倍率歪を修正することが可能となる。
【0063】
また、図2(a)において、応力調整領域12の幅方向の寸法W2は、形成するスリット15の寸法に応じて適当な値に設定する。寸法W2が大きすぎるとマイナーストラット13の幅が狭くなる結果、マスクの機械的強度が低下し好ましくない。一方、寸法W2が小さすぎるとスリット15がサブフィールド14内に重なって形成されるおそれがあり好ましくない。
【0064】
本実施の形態において、応力調整領域に形成する開口部パターンの形状および配置についての最適化は、例えば、各サブフィールドに対してマイナーストラット部を固定境界として扱う有限要素法による応力解析によって行うことができる。
【0065】
本実施の形態においては、露光用マスクがステンシルマスクである場合について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。本発明にかかる露光用マスクはメンブレンマスクであってもよい。この場合、高散乱体のないメンブレン部が、ステンシルマスクのサブフィールドに形成される開口部に相当する。
【0066】
本実施の形態においては、電子ビーム露光用のマスクについて述べたが、本発明はこれに限られるものではない。本発明のマスクを用いてパターンを転写することができるものであればイオンビームなどの他の荷電粒子ビームであってもよい。また、荷電粒子ビームに限らず他の露光エネルギービームであってもよい。
【0067】
本実施の形態によれば、サブフィールドの周辺部に応力調整領域を設けることによって、サブフィールド内パターンを形成する際に発生する応力による歪を低減させることができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、各サブフィールド内に形成するパターンの種類に応じて応力調整領域に形成するスリットの数や間隔などを変えることによって、マイナーストラットに加わる応力がマスク面内で略一様になるようにすることができる。したがって、マイナーストラットの変形を低減させることができるので、パターンの位置精度の低下を防止することが可能となる。
【0069】
さらに、本実施の形態によれば、応力調整領域に形成する各スリットの長さを形成する場所に応じて調整することによって、サブフィールド内の場所の相違による応力の大きさの相違に対応した制御が可能となる。したがって、マイナーストラットに加わる応力がマスク面内で均一な分布を持つようにすることができる。
【0070】
実施の形態2.
図3を用いて、本発明による電子ビーム露光方法について説明する。
【0071】
図3(a)は、本発明による電子ビーム露光方法を実施することのできる電子ビーム露光装置の一例である。
【0072】
図3(a)において、図示しない電子銃から放射された電子ビーム29は、照明光学系30を介し、マスク31に形成されたパターンエリア32を照射する。パターンエリア32は、全体として1個の半導体デバイスチップをなすパターンが形成されているエリアに相当する。また、本実施の形態においては、マスクとして、実施の形態1で説明した本発明にかかる露光用マスクを用いる。
【0073】
パターンエリア32には、図示しない複数のサブフィールドが形成されており、電子ビーム29は1つのサブフィールドのみを照射するように成形される。具体的には、電子ビーム29は、図示しない成形光学系および照明光学系30によって、例えば1mm角程度の断面形状に成形される。
【0074】
照明偏光器33は、電子ビームを図のX方向に順次走査する。これによって、照明光学系30の視野内にあるマスク31の各サブフィールドが照射される。
【0075】
マスク31は、図のX方向およびY方向に移動可能なマスクステージ34上に載置されている。また、ウェハ35もX方向およびY方向に移動可能なウェハステージ36上に載置されている。マスクステージ34およびウェハステージ36を互いに逆のY方向に同期走査することによって、チップパターン内でY方向に多数配列されたサブフィールドが順次露光されてウェハ35上に転写される。
【0076】
図3(b)は、本発明にかかる露光用マスクに形成されたサブフィールドの1つを電子ビームが照射する様子を示す図である。図に示すように、矩形状のサブフィールド37の周囲にはその各辺を囲むように額縁状に応力調整領域38が形成されている。ここで、応力調整領域には、例えば、実施の形態1で説明した複数のスリット(図示せず)が設けられている。
【0077】
本実施の形態においては、電子ビームは、サブフィールドのみを照射することを特徴とする。すなわち、図3(b)に示すように、矩形状に成形された電子ビーム39は、サブフィールド37のみを透過し、応力調整領域38に設けられたスリットを透過することはない。したがって、応力調整領域38に形成されたスリットがパターンとしてウェハ上に転写されることはない。
【0078】
図3(a)において、マスク31を透過した電子ビーム29は、投影光学系40によってウェハ35上に結像する。例えば、電子ビームの断面が1mm角程度である場合、結像光学系40の縮小率が1/4であるとすると、各サブフィールドはウェハ35上に250μm角程度の大きさで投影される。
【0079】
マスク31の下方には、また、投影偏光器41が設けられている。マスク31のサブフィールドに照射された電子ビーム29は、投影光学系40によって縮小結像されるとともに、投影偏光器41によって、照明偏光器33により偏向される方向とは逆のX方向に走査される。
【0080】
尚、マスクがステンシルマスクの場合には、電子ビームはサブフィールドに形成された開口部を透過する。一方、マスクがメンブレンマスクである場合には、電子ビームは高散乱体のないメンブレン部を透過する。
【0081】
図3(a)において、マスク31上のX方向には多数の図示しないサブフィールドが一列に並んでいる。一方、Y方向にはこのようなサブフィールドの列が多数並んでいて1つのストライプ32aを形成するとともに、複数のストライプがX方向に並列している。
【0082】
1つのストライプ内において、X方向に並んだ各サブフィールドは、電子線偏向により順次露光される。一方、Y方向についてはステージが連続的に走査されることにより順次露光される。そして、隣接するストライプについては、ステージがX方向に間欠的に移動することによって順次露光される。
【0083】
尚、ウェハ上には、例えばレジスト膜が形成されていて、このレジスト膜に電子ビームが照射されることによってマスク上のパターンの縮小パターンがレジスト膜上に転写される。その後、現像液を用いてレジスト膜をパターニングし、このレジストパターンをマスクとして下地のウェハまたは絶縁膜などの薄膜をエッチングすることによりチップパターンがウェハ上に転写される。ウェハとしては、例えばシリコンウェハを用いることができる。
【0084】
本実施の形態においては、電子ビームがサブフィールドのみを照射する場合について示したが、本発明はこれに限られるものではない。本発明における露光方法は、応力調整領域に設けられた開口部を電子ビームが透過することによって、開口部パターンが基材に転写されるものでなければよい。すなわち、電子ビームによって応力調整領域が照射されたとしても、応力調整領域に設けられた開口部を電子ビームが透過しなければよい。換言すると、本発明における露光方法は、実質的にサブフィールドのみを照射することによって、サブフィールドに形成されたパターンのみを転写するものである。
【0085】
本実施の形態においては、電子ビーム露光方法およびこの方法を実施することのできる電子ビーム露光装置について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。実質的にサブフィールドのみを照射するものであれば、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームによる露光方法および露光装置であってもよい。また、荷電粒子ビームに限らず他の露光エネルギービームによる露光方法および露光装置であってもよい。
【0086】
以上述べたように、本実施の形態によれば、実質的にサブフィールド領域のみを電子ビームで照射するので、応力調整領域に設けられた開口部パターンが基材に転写されることはない。したがって、マスクレイアウト設計時において、基材に転写するパターンとして応力調整領域に設ける開口部パターンを考慮する必要がない。例えば、基材として半導体基材を用いた場合には、開口部パターンを設けることによって回路配置が制限を受けることはなく、開口部パターンが半導体基材に転写されて半導体装置の集積度の低下が生じることもない。
【0087】
実施の形態3.
図4を用いて、本発明による露光用マスクの製造方法について説明する。
【0088】
図4(a)〜(f)は、本発明による露光用マスクの製造方法を説明する工程図の一例である。まず、図4(a)に示すように、SOI基板42を準備する。SOI基板42は、例えば、支持基板43と、中間膜44と、マスク母体45とから構成される。支持基板43としては、例えばシリコン基板を用いることができる。また、中間膜44としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。さらに、マスク母体45としては、例えばシリコン膜を用いることができる。また、SOI基板42の大きさは、例えば200mmφとすることができる。
【0089】
具体的には、SOI基板は、貼合せ法やSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法などによって製造することができる。貼合せ法によれば、SOI基板は、例えば、表面に酸化シリコン膜が形成されたシリコン基板を二つ用意し、これらのシリコン基板の酸化シリコン膜を熱融着によって互いに貼合せることにより製造することができる。また、SIMOX法によれば、SOI基板は、例えば、シリコン基板中に高濃度の酸素をイオン注入し、シリコン基板内に酸化膜を形成することによって製造することができる。
【0090】
また、後の工程でマスク母体45を自立構造としたときに弛みが生じないように、マスク母体45には所定の大きさを有する引張応力を付与する。引張応力の大きさは、例えば5MPa〜10MPaとするのが好ましい。
【0091】
マスク母体に引張応力を付与する方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、マスク母体であるシリコン膜中に、ホウ素やリンなどのシリコンより小さい原子をドープすることによって、マスク母体の内部応力を引張応力とすることができる。
【0092】
次に、SOI基板42の裏面、すなわち支持基板43の表面43aに、図示しないエッチングマスクを形成する。エッチングマスクとしては、例えば、窒化シリコン膜を用いることができる。そして、このエッチングマスクを用いて支持基板43および中間膜44をエッチングし、図4(b)の構造とする。図4(b)において、エッチング後の支持基板43および中間膜44は、マイナーストラット46を構成する。すなわち、このエッチングによって、マイナーストラット46で支持された自立構造を有するマスク母体45が形成される。
【0093】
次に、マスク母体45のマイナーストラット46で囲まれた領域内において、サブフィールドの周辺部に実施の形態1で説明した開口部パターンを形成する。すなわり、この開口部パターンを形成する領域が応力調整領域に相当する。
【0094】
まず、図4(b)のマスク母体45上にレジスト組成物を塗布して図示しないレジスト膜を形成する。続いて、応力調整領域に形成する開口部パターンをレジスト膜に転写した後、レジスト膜を現像することにより図4(c)に示すレジストパターン47を形成する。実施の形態1で説明したように、開口部パターンは、例えばスリットパターンとすることができる。そして、サブフィールド内に形成するパターンの種類やレイアウトに応じて、スリットの大きさ、間隔および数などを変える。
【0095】
レジスト膜にスリットパターンを転写した場合、サブフィールド内にパターンを形成する際にマスク母体から開放される応力の大きさは、各スリットの長手方向の寸法に大きく依存し、幅方向の寸法に対する依存性は小さい。したがって、各スリットにおいて、寸法の小さい幅方向に対して高い寸法精度が要求されることはない。すなわち、スリットパターンは高解像度のパターンである必要はないので、レジストパターンの形成には光露光技術を適用することができる。
【0096】
次に、レジストパターン47をマスクとしてマスク母体45をエッチングすることにより、マスク母体45に開口部パターン48を形成することができる(図4(d))。そして、この開口部パターン48の形成によって、マスク母体45にかけられた引張応力の値が略ゼロになるまで応力を開放することが可能となる。
【0097】
次に、形成した開口部パターン48によって囲まれたサブフィールド領域内に、各サブフィールドに対応する所望のパターンを形成する。図4(d)において、サブフィールドは、開口部48aと開口部48bによって挟まれた領域45aや、開口部48cと開口部48dによって挟まれた領域45bにある。また、ここで所望のパターンとは、半導体集積回路において、1チップに対応する配線パターンを複数のサブフィールドに分割したときの個々のサブフィールドに形成するパターンをいう。
【0098】
まず、図4(d)のマスク母体45に上にレジスト組成物を塗布して図示しないレジスト膜を形成する。この際、レジスト組成物の粘度および開口部48a,48b,…の大きさを最適化することによって、開口部48a,48b,…の内部へのレジストの侵入を防ぐことができる。
【0099】
続いて、サブフィールド内に形成する所定のパターンをレジスト膜に転写した後、レジスト膜を現像することにより図4(e)に示すレジストパターン49を形成する。この際、レジストパターン49の形成には高い解像度が要求されることから、電子ビーム露光技術を適用して所定のパターンをレジスト膜に転写する。その後、レジストパターン49をマスクとしてマスク母体45をエッチングし、所望のパターンに対応する電子ビーム開口孔50を形成する。次いで、レジストパターン49を剥離することにより、本発明にかかる露光用マスクを製造することができる(図4(f))。
【0100】
本実施の形態における露光用マスクは、例えば、電子ビーム露光用マスクとして用いることができる。また、電子ビームに限らず、露光エネルギービームであればイオンビームなどの他の荷電粒子ビーム露光用マスクであってもよい。
【0101】
本実施の形態によれば、マスクパターンを形成する前に応力調整領域に開口部パターンを形成する。この開口部パターンの形成によって、マスク母体にかかっている引張応力の殆どを開放することができる。したがって、サブフィールドに所望のパターンを形成する際に、マスク母体の歪によるパターンの位置ずれの問題を解消することができる。
【0102】
また、本実施の形態により製造された露光用マスクを用いて半導体装置を製造することにより、半導体基材に転写する回路パターンの位置精度を向上させることができる。パターンの位置精度が向上すれば重ね合わせ精度も向上させることができるので、重ね合わせのマージンを小さくして集積度を向上させることが可能となる。また、重ね合わせ精度の向上により、パターンの重ね合わせ不良を減少させて、製品の歩留まりを向上させることもできる。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、サブフィールドの周辺部に応力調整領域を設けるので、サブフィールド内にパターンを形成する際に発生する応力による歪を低減させることができる。
【0104】
また、本発明によれば、実質的にサブフィールド領域のみを電子ビームで照射するので、応力調整領域に設けられた開口部パターンが基材に転写されることはない。
【0105】
さらに、本発明によれば、各サブフィールドに対応するパターンを形成する前に応力調整領域に開口部を形成するので、パターン形成前にマスク母体にかかっている引張応力を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1において、図1(a)は露光用マスクの平面図、図1(b)は露光用マスクのパターンエリアの拡大平面図、図1(c)は図1(b)のA−A′線で示す部分の断面図である。
【図2】実施の形態1において、図2(a)はサブフィールドの拡大平面図、図2(b)はマスクパターンの拡大平面図である。
【図3】実施の形態2において、図3(a)は電子ビーム露光装置の概略図、図3(b)は電子ビームの照射の様子を示す図である。
【図4】実施の形態3において、露光用マスクの製造方法を説明する工程図である。
【図5】従来の電子ビーム露光装置の概略図である。
【図6】図6(a)は従来の露光用マスクの平面図、図6(b)はその拡大平面図、図6(c)は図6(b)のB−B′線で示す部分の断面図である。
【図7】従来の露光用マスクの製造方法を説明する工程図である。
【図8】従来の露光用マスクにおけるマスクパターンの平面図である。
【符号の説明】
1 マスク、 2 パターン、 3 メジャーストラット、 4 マスク母体、5 パターンエリア、 6,9 サブフィールド、 7,10 マイナーストラット、 8 応力調整領域、 15 スリット。
Claims (11)
- 基材上に転写するパターンが複数の矩形状のサブフィールドに分割して形成されたマスク母体を有する露光用マスクであって、
前記マスク母体には、前記サブフィールド内にパターンを形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域が形成されており、
前記応力調整領域は、前記各サブフィールドの周囲にそれぞれ額縁状に設けられていることを特徴とする露光用マスク。 - 前記応力調整領域は複数の開口部を有する請求項1に記載の露光用マスク。
- 前記開口部は矩形状開口部であり、
複数の前記矩形状開口部が前記矩形状開口部の長手方向と平行な方向に所定の間隔をおいて配置される請求項2に記載の露光用マスク。 - 前記サブフィールドのコーナー部近くになるにしたがって前記矩形状開口部の長手方向の寸法が大きくなる請求項3に記載の露光用マスク。
- 複数のライン状パターンが1方向に並列するパターンに対応するサブフィールドについては、前記ライン状パターンが並列する方向と平行な方向にのみ前記矩形状開口部を配置する請求項3または4に記載の露光用マスク。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の露光用マスクを露光エネルギービームで照射した後、前記露光用マスクを透過した前記露光エネルギービームを基材上に投影結像させる露光方法であって、
前記露光エネルギービームが前記露光用マスクの実質的に前記サブフィールドのみを照射することを特徴とする露光方法。 - 前記露光エネルギービームは荷電粒子ビームである請求項6に記載の露光方法。
- 前記荷電粒子ビームは電子ビームである請求項7に記載の露光方法。
- 前記基材は半導体基材であって、請求項6〜8のいずれかに記載の露光方法を用いた半導体装置の製造方法。
- 基材上に転写するパターンが複数の矩形状のサブフィールドに分割された露光用マスクの製造方法であって、
前記各サブフィールドに対応するパターンをマスク母体に形成する際に開放される応力の大きさを調整する応力調整領域を、前記サブフィールドの周囲にそれぞれ額縁状に形成した後、前記サブフィールドに対応するパターンを前記マスク母体に形成することを特徴とする露光用マスクの製造方法。 - 前記応力調整領域は複数の開口部を有し、前記開口部の数を変えることによって前記応力の大きさを制御する請求項10に記載の露光用マスクの製造方法。
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