JP2004111111A - 粉末法Nb▲3▼Sn超電導線材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粉末を用いて超電導線材を作製する方法によって製造されるNb3Sn超電導線材であって、NbまたはNb基合金からなるシース内に、NbまたはNb基合金からなる芯材を1本または複数本配置すると共に、前記シースと芯材間に形成される空間内に、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとの合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末を充填し、これを縮径加工した線材を一次超電導線として作製されたものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末法によって製造されるNb3Sn超電導線材に関するものであり、殊に高磁場発生用超電導マグネットの素材として有用な粉末法Nb3Sn超電導線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超電導線材が実用化されている分野のうち、高分解能核磁気共鳴(NMR)分析装置に用いられる超電導マグネットについては発生磁場が高いほど分解能が高まることから、超電導マグネットは近年ますます高磁場化の傾向にある。
【0003】
高磁場発生用超電導マグネットに使用される超電導線材としては、Nb3Sn線材が実用化されており、このNb3Sn超電導線材の製造には主にブロンズ法が採用されている。このブロンズ法は、Cu−Sn基合金(ブロンズ)マトリックス中に複数のNb基芯材を埋設し、伸線加工することによって上記Nb基芯材をフィラメントとなし、このフィラメントを複数束ねて線材群となし、安定化の為の銅(安定化銅)に埋設して伸線加工する。上記線材群を600〜800℃で熱処理(拡散熱処理)することにより、Nb基フィラメントとマトリックスの界面にNb3Sn化合物相を生成する方法である(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法ではブロンズ中に固溶できるSn濃度には限界があり、生成されるNb3Sn層の厚さが薄くなってしまい、高磁場特性が良くないという欠点があった。
【0004】
一方、Nb3Sn超電導線材を製造する方法としては、上記ブロンズ法の他に、粉末法も知られている。この粉末法としては、NbとSnの中間化合物粉末をコア材としてNbシースに充填し、加工後熱処理を行うことにより、芯材とNbシースの界面にNb3Sn相を生成する、いわゆるECN法が知られている。また新しい粉末法として、Ta−Snの合金粉末を芯材としてNbまたはNb基合金シース内に充填し、加工後熱処理をすることで、Sn量の制限が無く、ブロンズ法およびECN法よりも厚いNb3Sn相が生成可能であるため、高磁場特性が優れた超電導線材が得られることが示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、一般に超電導線材では、線材に部分的発熱が生じても熱伝導でその熱を除去して安定化するために、超電導フィラメント径は細いことが必要であり、大電流を得ようとすると超電導フィラメントを多数本含んだ極細多芯線が望ましい。実際、ブロンズ法では数千本〜数万本のNb3Snフィラメントを持つ線材が実用化されている。極細多芯線の出発材はNb芯、NbシースまたはNb基合金シースを1本含む単芯線、または数本含むサブマルチ材であって、それらを束ねて複合体とし、これを押出、伸線または圧延等によって縮径加工することで得られる。
【0006】
上記粉末法(前記特許文献1)では、単芯フィラメントを持つ短尺試作材での超電導特性しか評価できておらず、Ta−Sn粉末法で作成される超電導線材における改良された多芯化法の提供による安定した超電導特性を持つ多芯線材の実現が切望されているのが実状である。
【0007】
【非特許文献1】
K.Tachikawa Filamentary A15 Superconductors,Plenum Press(1980)p1
【特許文献1】
特開平11−250749号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これまで提案されている粉末法では、単芯線を縮径加工する際には問題ないが、単芯線材を束ねて複合体として、これを縮径加工し多芯線を作製する際に、粉末の成形性が悪いことから均一な加工が難しく、加工中にNbシースやNb基合金シースが破損することがあり、これが超電導特性に影響を与えるという問題点があった。
【0009】
また、最終の拡散熱処理後の線材断面を成分分析すると、コア中心部付近に余剰のSn成分が残留しており、全断面積に占めるNb3Sn反応領域の割合が小さく留まっており、Sn成分および高磁場特性の向上に有効なTa成分が有効に活用されているとは言えない状況である。
【0010】
更に、粉末コア部分および金属間化合物であるNb3Sn相部分は拡散熱処理後に脆くなり、NbまたはNb基合金シースのみしか線材強度には寄与しないため、上記方法のNb3Sn線材はブロンズ法に比べて強度が不足するという問題がある。しかも、熱処理後に曲げ歪みを受けると、Nb3Sn相に対する影響が大きくなり、超電導特性が大幅に低下する。これらは、線材をマグネットに実用するときに解決すべき問題となる。
【0011】
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、線材としての強度を向上すると共に、優れた超電導特性を発揮し、しかも歪みが導入された場合であっても超電導特性の劣化を招くことがないような粉末法Nb3Sn超電導線材を提供することにある。
【0012】
【発明を解決するための手段】
上記目的を達成することのできた本発明のNb3Sn超電導線材とは、粉末を用いて超電導線材を作製する方法によって製造されるNb3Sn超電導線材であって、NbまたはNb基合金からなるシース内に、NbまたはNb基合金からなる芯材を1本または複数本配置すると共に、前記シースと芯材間に形成される空間内に、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとの合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末を充填し、これを縮径加工した線材を一次超電導線として作製されたものである点に要旨を有するものである。
【0013】
本発明の上記目的は、NbまたはNb基合金からなるパイプ状部材内に、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとの合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末を充填して縮径加工した線材を、NbまたはNb基合金からなるシース内に1本または複数本配置すると共に、前記シースと線材間に形成される空間内に、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとの合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末を充填し、これを縮径加工した線材を一次超電導線として作製されたNb3Sn超電導線材によっても達成される。
【0014】
本発明の粉末法Nb3Sn超電導線材で用いる前記粉末としては、更にCuを構成元素として含有したものを用いることも好ましい。
【0015】
上記のような超電導線材で用いる一次超電導線の単数または複数本をCuマトリックス内に埋設した線材を用いることや、このCuマトリックス内に埋設した線材の複数本を更にCuマトリックス内に埋設した線材を用いても本発明の粉末法Nb3Sn超電導線材を作製することができ、こうした構成によって多芯化した超電導線材とすることができる。
【0016】
また、上記のような各種超電導原線の外周に、Nb3Sn相形成の拡散処理時に外部へのSnの拡散を防止するバリヤ層を配置し、更にその外周にCuシースを配置して複合体を構成し、この複合体を用いても本発明の粉末法Nb3Sn超電導線材を作製することができる。
【0017】
更に、本発明の超電導線材においては、前記NbまたはNb基合金からなるシースと粉末との間にCuシースを介在させた超電導原線または複合体を用いて作製することもでき、こうした構成の超電導線材では、縮径加工の際にNbまたはNb基合金のより均一な加工が可能なものとなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するために様々な角度から検討した。その結果、上記のような構成の各種超電導原線若しくは複合体を用いて作製した粉末法Nb3Sn超電導線材では、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。本発明の構成を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明で用いる一次超電導線の一構成例を示した概略断面図であり、図中1はNbまたはNb基合金からなる芯材、2はNbまたはNb基合金からなるシース、3は原料粉末、4はCuシースを夫々示し、これらの部材によって本発明の一次超電導線10が構成される。この一次超電導線10では、NbまたはNb基合金からなるシース2内に、NbまたはNb基合金からなる芯材1を1本または複数本配置すると共に、前記シースと芯材間に形成される空間内に、原料粉末3を充填し、これを縮径加工した線材である。
【0020】
このとき用いる原料粉末3としては、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとを成分として含むものであり、その形態は合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末のいずれでも良い。この原料粉末3に含まれる成分のうちSnは、周囲に配置されるNbやNb基合金と反応してNb3Sn相を形成するものとなるが、Ta,NbおよびTi等の成分は、Nb3Sn相の形成を促進したり、それ自体がSnと反応して超電導体となるという作用を発揮するものである。この原料粉末3中のSn成分の含有量は、20〜75原子%程度であることが好ましく、Sn含有量が20原子%未満となるとNb3Sn相が薄くなり、超電導特性が劣化し、75原子%を超えると拡散熱処理時にSnの蒸発が起きてボイドが形成され、強度および超電導特性が低下する原因となる。尚、この原料粉末3は、いずれの形態を採るにしても、その平均粒径は熱処理時の反応性を高めるという観点から150μm以下(100メッシュアンダー)であることが好ましい。
【0021】
また、この原料粉末3には、必要によってCu成分を含有することも有効である。このCu成分は、拡散熱処理温度を低減する作用を発揮する。即ち、従来の粉末法においてCu成分が含有されていない場合の最適反応温度(拡散熱処理温度)は900〜925℃であり、一方ブロンズ法の最適反応温度は650〜850℃程度であり、900℃以上で熱処理すると結晶粒が大きくなり過ぎて超電導特性が劣化するときがあるが、原料粉末にCu成分を含有させることによって、最適熱処理温度を下げることができ、その結果、結晶粒が微細化され、Nb3Sn超電導線材における高特性が実現できるのである。こうした作用を発揮させるためには、原料粉末中のCu含有量は0.3質量%以上であることが好ましいが、Cu含有量が大きくなり過ぎると、生成するNb3Snに対してCuが不純物として作用して特性が劣化するので、その上限は30質量%程度にすることが好ましい。
【0022】
図1に示したような一次超電導線10を用いて拡散熱処理することによって、シース中のNbと原料粉末中のSnとが反応してNb3Sn相が形成されて本発明の超電導線材が得られる。こうした構成では、NbまたはNb基合金からなる芯材1が粉末内部に入った状態であるため、従来線材に比べると線材全体の強度が増加し、NbまたはNb基合金からなるシース2が破損しにくくなり、断線も極力回避でできることになる。また、粉末中心部(コア部)のSn成分の付近に芯材が配置されることによって、Sn原子の拡散距離を短くすること、および粉末内部に芯材を埋め込むことで粉末に接するNbやNb基合金の表面積が増加することになり、線材全断面積に占めるNb3Sn反応層の比率を大きくして臨界電流を大きくすることができる。
【0023】
また、本発明の超電導線材によれば、Nb3Sn相が各部に分散されて生成するため、個々部分のNb3Sn相の厚みが薄くなりひび割れしにくくなることや、また一部にひび割れが入っても残りのNb3Sn相で影響を補えるため、拡散熱処理後の線材に対して歪みがかかった場合であっても、Nb3Sn相に対する影響は少なくなって、超電導特性の低下を防止することができるものとなる。尚、これらの作用を考慮すると、芯材1と原料粉末3の面積比率(芯材:原料粉末)は1:0.1〜7程度であることが好ましい。
【0024】
図2は本発明で用いる一次超電導線の他の構成例を示した概略断面図であり、図中5はNbまたはNb基合金からなるパイプ状部材、6、8は原料粉末、7はNbまたはNb基合金からなるシース、9はCuシースを夫々示し、これらの部材によって本発明の一次超電導線11が構成される。この一次超電導線11の構成は、パイプ状部材5内に原料粉末を充填して縮径加工した線材を前記芯材の代わりに用いる以外は、基本的に前記図1に示した一次超電導線10と類似するものである。
【0025】
こうした構成では、パイプ状部材5が前記芯材1と同様の機能を発揮する他、図1に示した一次超電導線10よりも更に原料粉末6、8に接するNbまたはNb基合金の表面積を増加させることで、Nb3Sn相の生成面積を増加させることができる。また、図2のように原料粉末8の内部にNbまたはNb基合金からなるパイプ状部材5がある場合、その部材が加工途中で破損しても原料粉末6中のSn成分は原料粉末8部に流出するだけであり、従来線材のようにCuシースには拡散して無駄に消費されることはないのでNb3Sn相の生成に影響を及ぼすことが無くなるのである。
【0026】
前記図1、2に示した一次超電導線10、11に対して拡散熱処理を施すことによって希望する特性を発揮する超電導線材が得られるのであるが、上記一次超電導線10(図1)、11(図2)および一次超電導線10、11よりCuシース4を除いたものの単数または複数本をCuマトリックス12内に埋設した線材(図3、4)を用いることや、このCuマトリックス12内に埋設した線材の複数本を更にCuマトリックス内に埋設した超電導原線を用いても本発明の粉末法Nb3Sn超電導線材を作製することができ、こうした構成によって多芯化(例えば、一次超電導線の数が10000程度まで)した超電導線材とすることができる。また、このCuマトリックスは、Nb3Sn相を磁気的に安定化させる作用も発揮する。
【0027】
また、上記のような各種超電導原線の外周に、Nb3Sn相形成の拡散処理時に外部へのSnの拡散を防止するバリヤ層(例えば、Nb層)を配置し、更にその外周にCuシースを配置して複合体を構成し、この複合体を用いても本発明の粉末法Nb3Sn超電導線材を作成することができる。
【0028】
更に、本発明の超電導線材においては、前記NbまたはNb基合金からなるシースと原料粉末との間にCuシースを介在させた超電導原線または複合体を用いて作成することもでき、こうした構成の超電導線材では、縮径加工の際にNbまたはNb基合金シースのより均一な加工が可能なものとなる。
【0029】
尚、本発明で用いるNbまたはNb基合金からなるシース2、7(図1、2)は、最終的に管状となれば良く、例えば薄肉のNbまたはNb基合金からなるシートを重ね巻きしたり、またそれらを溶接することによって管状としたものを採用することができる。
【0030】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0031】
【実施例】
実施例1
325メッシュ以下のTa粉末とSn粉末を、その原子比が6:5(Ta:Sn)となるよう混合し、この混合粉末に更に325メッシュ以下のCu粉末を混合後の全体粉末量に対して2質量%になるよう添加混合した。この混合粉末を、アルミナ製坩堝に入れ、1.33×10−3Paの真空中で950℃、20時間反応させてTa−Sn−Cu合金微粉末を作製した。
【0032】
次に、外径:8mm、内径:5mmのNb−4.0原子%Ta合金製シース内の中央部に、外径:2mmのNb−4.0原子%Ta合金製芯材を配置しておき、これに(シース材と芯材間に形成される空間内に)先に作製したTa−Sn−Cu合金微粉末を充填し、溝ロールにより1.0mm角正方形断面の線材(一次超電導線)に加工した。このとき比較材として、シース内に芯材を配置せずにTa−Sn−Cu合金粉末を充填し、溝ロールにより1.0mm角正方形断面の線材に加工したものについても作製した。
【0033】
両線材に800℃で80時間の拡散熱処理を行って、超電導線材とした。比較材のNb3Sn線材の断面を図5(図面代用金属電子顕微鏡写真)に示すが、Nb−4.0原子%Ta合金製シースの一部(線材の端部以外)にSnの流出が認められた。これは加工中の強度不足によってシースが不均一に薄くなったことが原因と考えられる。
【0034】
一方、本発明材の超電導線材の断面を図6(図面代用金属電子顕微鏡写真)に示すが、Nb−4.0原子%Ta合金製シースには、線材の端部以外でのSnの流出は認められなかった。
【0035】
これらのNb3Sn超電導線材をCuめっきした後、液体ヘリウム中(4.2K)で14〜17Tの磁場(外部磁場)における臨界電流密度(臨界電流Icを、安定化銅を除いた線材断面積で割った値:Jc)を測定したところ、下記のような値が得られた。
【0036】
[臨界電流密度Jcの測定値]
(1)本発明材
523A/mm2(14T)、481A/mm2(15T)、461A/mm2(16T)、445A/mm2(16.5T)、419A/mm2(17T)
(2)比較材
107A/mm2(16T)、89A/mm2(17T)
例えば、外部磁場が17TのときのJcは、比較材で89A/mm2、本発明材は419A/mm2となっており、本発明材では従来のブロンズ法で得られる実績値の200A/mm2を大幅に上回る特性を示していた。外部磁場Bと臨界電流密度Jcの関係を図10に示す。尚図10には、Cu−Sn基合金(Sn含有量:14質量%)の臨界電流密度Jcについても同時に示した。
【0037】
また、各超電導線材について、臨界電流Icの曲げ歪み依存性を、歪が0のときの臨界電流Ic0との比(Ic/Ic0)で評価した。その結果を、図11に示すが、比較材では急激にIcが低下していたが、本発明材ではIcの低下率が大幅に抑制されていることが分かる。
【0038】
実施例2
実施例1と同様にして作製したTa−Sn−Cu合金微粉末を、外径:8mm、内径:5mmのNb−4.0原子%Ta合金製パイプ状部材内に充填し、溝ロールにより2.0mm角正方形断面の線材に加工した。その後、この線材をスエージング加工して円形断面の線材とした(以下、この線材を「加工線材」と呼ぶ)。
【0039】
次に、別途準備した外径:8mm、内径:5mmのNb−4.0原子%Ta合金製シース内の中央部に、上記加工線材を配置しておき、これに(シースと加工線材間に形成される空間内に)、実施例1で作製したTa−Sn−Cu合金微粉末を充填し、溝ロールにより1.0mm角正方形断面の線材に加工した。
【0040】
この線材に800℃で80時間の拡散熱処理を行って、超電導線材とした。得られた超電導線材の断面を図7(図面代用金属電子顕微鏡写真)に示すが、実施例1(本発明例)の場合と同様に、線材の端部以外でのSnの流出は認められなかった。
【0041】
この超電導線材について、実施例1と同様にして17〜24Tの磁場(外部磁場)における臨界電流密度Jcを測定したところ、下記のような値が得られた。これらの値を、前記図10に併せて示す。
【0042】
[臨界電流密度Jcの測定値]
559A/mm2(17T)、167A/mm2(22T)、92A/mm2(23T)、46A/mm2(24T)、21A/mm2(25T)
また、この超電導線材について、臨界電流Icの曲げ歪み依存性を、実施例1と同様にして調査した。その結果を、前記図11に併記するが、Icの低下率が比較材と比べて顕著に抑制されていることが分かる。
【0043】
実施例3
外径:8mm、内径:5mmのNb−4.0原子%Ta合金製シース内の中央部に、外径:0.8mmのNb製芯材を7本束ねて配置しておき、これに(シースと加工線材間に形成される空間内に)、実施例1で作製したTa−Sn−Cu合金微粉末を充填し、溝ロールにより1.4mm角正方形断面の線材に加工した。
【0044】
この線材に800℃で80時間の拡散熱処理を行って、超電導線材とした。得られた超電導線材の断面を図8(図面代用金属電子顕微鏡写真)に示すが、実施例1(本発明例)の場合と同様に、線材の端部以外でのSnの流出は認められなかった。
【0045】
この超電導線材について、実施例1と同様にして15〜25Tの磁場(外部磁場)における臨界電流密度Jcを測定したところ、下記のような値が得られた。これらの値を、前記図10に併せて示す。
【0046】
[臨界電流密度Jcの測定値]
264A/mm2(15T)、261A/mm2(15.5T)、259A/mm2(16T)、256A/mm2(16.5T)、253A/mm2(17T)、240A/mm2(18T)、200A/mm2(20T)、166A/mm2(21T)、130A/mm2(22T)、91A/mm2(23T)、45A/mm2(24T)、20A/mm2(25T)
また、この超電導線材について、臨界電流Icの曲げ歪み依存性を、実施例1と同様にして調査した。その結果を、前記図11に併記するが、Icの低下率が比較材と比べて明瞭に抑制されていることが分かる。
【0047】
実施例4
外径:53mm、内径49mmのCuシースと、ネジ込み式のCu蓋を準備し、Cu蓋に内径:5mm、深さ:3mm程度の凹みを31個均等に開け、その凹みに、外径:5mmのNb−4.0原子%Ta合金芯材を31本差し込むことで保持し、Cuシース内に芯材が均等に配置されるようにした。これに実施例1と同様に作製したTa−Sn−Cu合金微粉末を充填したものに、もう一方の蓋をし、更にその外周を厚さ0.2mmのNbシートを外径が59mmになるまで巻きつけ(拡散バリヤ層)、これを外径:68mm、内径:60mmのCuビレット(安定化銅)内に装填して複合体とした。
【0048】
この複合体を、押出加工と伸線加工によって外径:2.0mmになるまで加工し、得られた線材に800℃で80時間の拡散熱処理を行って、超電導線材とした。得られた超電導線材の断面を図9(図面代用金属顕微鏡写真)に示すが、NbシートとCuシース部の境界部およびNb−4.0原子%Ta合金芯材と粉末コア境界部にNb3Sn相が均一に生成されていた。
【0049】
この超電導線材について、実施例1と同様にして17Tの磁場(外部磁場)における臨界電流密度Jcを測定したところ、300A/mm2となり、従来のブロンズ法線材を上回っていた。また、この超電導線材について、臨界電流Icの曲げ歪み依存性を、実施例1と同様にして調査した。その結果を、前記図11に併記するが、Icの低下率が著しく抑制されていることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、線材としての強度を向上すると共に、優れた超電導特性を発揮し、しかも歪みが導入された場合であっても超電導特性の劣化を招くことがないような粉末法Nb3Sn超電導線材が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる超電導原線の一構成例を示した概略断面図である。
【図2】本発明で用いる超電導原線の他の構成例を示した概略断面図である。
【図3】本発明で用いる超電導原線の更に他の構成例を示した概略断面図である。
【図4】本発明で用いる超電導原線の他の構成例を示した概略断面図である。
【図5】実施例1で得られた超電導線材(比較材)の断面を示す図面代用金属顕微鏡写真である。
【図6】実施例1で得られた超電導線材(本発明材)の断面を示す図面代用金属顕微鏡写真である。
【図7】実施例2で得られた超電導線材(本発明材)の断面を示す図面代用金属顕微鏡写真である。
【図8】実施例3で得られた超電導線材(本発明材)の断面を示す図面代用金属顕微鏡写真である。
【図9】実施例4で得られた超電導線材(本発明材)の断面を示す図面代用金属顕微鏡写真である。
【図10】各実施例1〜3で得られたNb3Sn超電導線のJc特性と外部磁場との関係を示すグラフである。
【図11】各実施例1〜4で得られたNb3Sn超電導線の曲げ歪み依存性を比較して示したグラフである。
【符号の説明】
1 NbまたはNb基合金からなる芯材
2、7 NbまたはNb基合金からなるシース
3、6、8 原料粉末
4、9 Cuシース
10、11 一次超電導線
12 Cuマトリックス
Claims (7)
- 粉末を用いて超電導線材を作製する方法によって製造されるNb3Sn超電導線材であって、NbまたはNb基合金からなるシース内に、NbまたはNb基合金からなる芯材を1本または複数本配置すると共に、前記シースと芯材間に形成される空間内に、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとの合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末を充填し、これを縮径加工した線材を一次超電導線として作製されたものであることを特徴とする粉末法Nb3Sn超電導線材。
- 粉末を用いて超電導線材を作製する方法によって製造されるNb3Sn超電導線材であって、NbまたはNb基合金からなるパイプ状部材内に、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとの合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末を充填して縮径加工した線材を、NbまたはNb基合金からなるシース内に1本または複数本配置すると共に、前記シースと線材間に形成される空間内に、Ta,NbおよびTiのうちの少なくとも1種の金属とSnとの合金粉末、金属間化合物粉末または混合粉末を充填し、これを縮径加工した線材を一次超電導線として作製されたものであることを特徴とする粉末法Nb3Sn超電導線材。
- 前記粉末は、更にCuを構成元素として含有したものである請求項1または2に記載の粉末法Nb3Sn超電導線材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の一次超電導線の単数または複数本をCuマトリックス内に埋設した線材を用いて作製されたものである粉末法Nb3Sn超電導線材。
- 請求項4に記載の線材の複数本を更にCuマトリックス内に埋設した線材を用いて作製されたものである粉末法Nb3Sn超電導線材。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の超電導原線の外周に、Nb3Sn相形成の拡散処理時に外部へのSnの拡散を防止するバリヤ層を配置し、更にその外周にCuシースを配置して複合体を構成し、この複合体を用いて作製されたものである粉末法Nb3Sn超電導線材。
- 前記NbまたはNb基合金からなるシースと粉末との間にCuシースを介在させた一次超電導線または複合体を用いて作製されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の粉末法Nb3Sn超電導線材。
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