JP2004109586A - ドライイメージング材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】帯電防止性能が優れていてゴミの付着による画像欠陥がなく、かつカブリ、感度および保存性等の写真性能に優れたドライイメージング材料の製造方法の提供。
【解決手段】支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤および結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液中に導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを存在させ、塗布時に電解重合を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤および結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液中に導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを存在させ、塗布時に電解重合を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は露光後熱現像により画像を形成するドライイメージング材料の製造方法に関し、詳しくは、優れた帯電防止性能を有し、且つカブリ、感度、保存性および接着性が改良された画像が得られるドライイメージング材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線撮影による医療画像診断の分野において、ドライ処理システムが普及している。このシステムは、被写体を透過したX線エネルギーをイメージングプレート中の輝尽性蛍光体に吸収させ、紫外線、可視光線、或いは赤外線等で時系列的に輝尽性蛍光体を励起し、蓄積されたX線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号をレーザー光の強度に変換し、このレーザー光でドライイメージング材料中のハロゲン化銀に潜像を形成させ、これを熱現像して被写体又は被検体のX線画像を可視画像として再生することを基本としている。
【0003】
前記ドライ処理システムに使用されるドライイメージング材料は、ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略す)やポリエチレンナフタレート(以降、PENと略す)等のポリエステル支持体上に色素で分光増感された高感度のハロゲン化銀粒子、有機銀塩および還元剤を含む感光層と、該感光層に向けて照射した光が吸収されずに通過して支持体の界面や中間層や接着層等で乱反射するのを防ぐイラジエーション防止(以降、AIと略す)層或いはバッキング(以降、BCと略す)層から構成され、更には感光層の上やBC層の上に取り扱い時に傷が付くのを防ぐための保護層が設けられている。BC層を設ける場合には、感光層の下にAI層を設けないこともあるが、両面に感光層を設ける場合には、両面の感光層下部にAI層を設けることが必要となる。
【0004】
従来からこのタイプのドライイメージング材料は、摩擦や剥離で静電気を帯びやすく、いずれも画像欠陥となるスタチックマークやゴミが付きやすい等の課題があった。この解決方法は、導電性の酸化錫や酸化インジウム等の無機微粒子を支持体と感光層の間に塗設することであった。しかし、この方法では導電性を得るために微粒子を微粒子同士が接触する密度まで含有させる必要があり、この密度まで微粒子を含有させると膜強度が劣化するという問題があった。膜強度を強化するために強靱な結合剤や架橋性の硬膜剤等を使用することで解決してきたが、満足な性能を得ることが難しかった。一方有機の導電性の高分子を使用することが検討されていたが、いずれもポリマーを溶解する適当な溶媒がなく、塗設が困難であること、π電子の光吸収のため着色し易いこと等の欠点のため実用化が困難であった。そこで溶媒を使用するラジカル重合でなく、電解重合法が提案されている。例えば、アニリンを電解酸化重合する方法(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)では電極上にポリアニリンのフィルムを形成することが可能であるが、単離操作が煩雑になることや大量合成が困難であるという問題があった。特に、ドライイメージング材料は、感光性ハロゲン化銀の他に還元剤と有機銀塩が必須成分として含まれるため、カブリ易い、高い感度を得にくい、また、保存性、耐光性および銀色調が劣化し易い等の改良すべき多くの課題が存在していて、ドライイメージング材料にとって真に好ましい帯電防止剤の選択は極めて難しい課題であり、従来ドライイメージング材料の塗布に上記電解重合の技術を用いることは全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−235831号公報
【0006】
【非特許文献1】
J.Polymer Sci.Polymer Chem.Ed.,
26,1531(1988)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ドライイメージング材料に優れた帯電防止性能を付与すること、および写真性能を向上させること、即ち、ドライイメージング材料のゴミの付着による画像欠陥を無くし、低カブリ、高感度化を達成し、かつ保存性および接着性を改良することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の目的は、以下の構成によって達成される。
【0009】
1.支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤および結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液中に導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを存在させ、塗布時に電解重合を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【0010】
2.前記電解重合が、電圧5mV〜55Vで行われることを特徴とする前記1に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0011】
3.前記電解重合が、塗布液の供給側を陰極に、塗布液が塗布されるウエッブ搬送ローラー側を陽極に配置して行われることを特徴とする前記1又は2に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0012】
4.前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、アニリン誘導体、テトラザインデン誘導体およびプリン誘導体から選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0013】
5.前記電解重合が、酸化剤の存在下に行われることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0014】
6.前記酸化剤が、過酸化水素、有機又は無機過酸化物類および酸化性ハロゲン化物類から選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記5に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0015】
7.前記酸化性ハロゲン化物類が、前記一般式(1)で示されることを特徴とする前記6に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0016】
8.前記電解重合が、酸化反応促進触媒の存在下で行われることを特徴とする前記5〜7のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0017】
9.前記ドライイメージング材料の支持体が、コロナ放電処理又はプラズマ放電処理され、放電処理の雰囲気が1Pa〜1MPaの圧力下であり、雰囲気ガスがアルゴンガス又はヘリウムガスを70%(体積割合)以上含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0018】
10.前記ドライイメージング材料の支持体が、X線、紫外線又は電子線処理されていることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0019】
11.前記下塗り層が、芳香族系又は脂肪族系の不飽和ビニル化合物類からなる共重合体を含むことを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0020】
12.前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体が、ヒドロキシ基、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基又は活性メチレン基を含むことを特徴とする前記11に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0021】
13.前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体が、イソシアナート化合物、ビニルスルホニル化合物、エポキシ化合物又はアルコキシシラン化合物で架橋されていることを特徴とする前記11に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0022】
以下本発明を詳細に説明する。
(電解重合)
本発明は、導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを含有する下塗り塗布液を支持体上に塗布する時に該重合性モノマーを電解重合して下塗り層を形成することに特徴がある。上記重合性モノマーを含有する下塗り塗布液を支持体上に塗布する代表的塗布機としては、図1に示すキャスティング塗布機、図2に示すディップ塗布機、図3に示すスライド塗布機を挙げることができる。図1中、1は塗布液、2はキャスティングダイス、3は搬送ローラー、4は電源、5は支持体、6は浸漬電極、7はスライドダイス、8は搬送ローラー軸を示し、図1、図2、図3の各図において搬送ローラー3は電源4の陽極側に、図1のキャスティングダイス2、図2の浸漬電極6、図3のスライドダイス7は電源4の陰極側に配置される。また、上記陽極側に配置される搬送ローラー3の材料としてはステンレス、ニッケル、酸化鉛、炭素、酸化鉄、チタン、白金等が、上記陰極側に配置されるキャスティングダイス2、浸漬電極6、スライドダイス7の材料としてはステンレス、スズ、アルミニウム、亜鉛、鉛、銅、炭素、白金等が推奨できるが、好ましくは上記陽極側材料および陰極側材料としてステンレス、白金等が使用できる。貴金属の使用は設備コストが高くなるのでステンレス、例えば、SUS304等を使用してもよい。
【0023】
本発明の電解重合は、陽極と陰極を隔膜で分離する必要はなく、単一槽中で行うことができる。電解反応は、定電流電解法及び定電圧電解法のいずれをも採用することができるが、装置や操作の簡便さの点で定電流電解法を採用するのが好ましい。電解は、直流又は交流電解が可能であるが電流方向を1〜30秒毎に切り替えて行なうこともできる。電流値は、通常1μA〜10A、好ましくは1mA〜1Aの範囲とするのが良い。印加する直流電圧としては、5mV〜55Vを使用することができる。電気量は用いる塗布機の形状、下塗り塗布液の組成、用いる酸化剤の種類等により異なり、一概にはいえないが、通常1mF〜1000F/モル程度、好ましくは1〜100F/モル程度とするのがよい。電流、電圧及び電気量等がこの範囲未満では十分な電解重合を行うことができず、この範囲より大きいと酸素、オゾン等が多量に発生してくるので好ましくない。
【0024】
ディップ塗布機の場合、電極をイオン交換膜で隔離することが可能である。上記でディップ塗布機の場合の下塗り塗布液の電解重合に使用するイオン交換膜の種類としては、各種陽イオン交換膜が使用できるが、米国デュポン社のフッ素樹脂をベースにし、スルフォン酸基を有するナフィオンが好ましい。
【0025】
なお、本発明の電解重合反応は通常−5〜80℃程度、好ましくは0〜60℃程度の温度下に実施される。−5℃未満では塗布液の粘度が増大し、電解重合効率が低下し、80℃を越えると重合性モノマーが揮発や蒸散し易くなるので好ましくない。
【0026】
(重合性モノマー)
本発明に好ましい重合性モノマーは、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、アニリン誘導体、テトラザインデン誘導体およびプリン誘導体から選択されることが好ましく、特にチオフェン誘導体又はフラン誘導体が好ましい。前記誘導体の環上には、それぞれ置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基又はハロゲン原子が導入されてもよい。前記モノマーが電解重合された後の導電性付与のためのドーピング剤として特別なアニオン化合物を添加することをしないで、塗布助剤として使用する活性剤等を兼用してもよい。前記重合性モノマーの使用量は、ドライイメージング材料の平米当たり、1μg〜10gに相当する量の範囲で使用するのが好ましい。1μg未満では導電性が得られず、10g以上では未反応のモノマーが残留するので好ましくない。好ましい重合性モノマーの具体例を下記に示す。
【0027】
【化2】
【0028】
次に上記重合性モノマーを電解重合して得られる導電性ポリマーの好ましい例としては以下のものを挙げることができる。
【0029】
【化3】
【0030】
(酸化剤)
本発明における下塗り塗布液の組成物中に使用する酸化剤は過酸化水素、有機過酸化物類、クロラミン化合物類、酸化性ハロゲン化物等を挙げることができる。過酸化水素の他に過酸化水素の付加物、例えばNaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・2H2O2・2H2Oを挙げることができる。有機過酸化物は、脂肪族系又は芳香族系のいずれでもよく、分子中に−O−O−結合を含みコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線処理、電子線処理、X線処理および下塗処理等で生じる還元性物質(ハロゲン化銀や有機銀塩を還元するために使用する還元剤を除く)を酸化するものであり、写真的性能に悪影響を与える微量の還元物質、現像物質を無害化するものであればよい。酸化剤の好ましい具体例を下記に示す。
(U−1)メチルエチルケトンパーオキサイド
(U−2)シクロヘキサノンパーオキサイド
(U−3)2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド
(U−4)ビス−3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド
(U−5)ラウロイルパーオキサイド
(U−6)ベンゾイルパーオキサイド
(U−7)クメンハイドロパーオキサイド
(U−8)ジクミルパーオキサイド
(U−9)ジ−t−ブチルパーオキサイド
(U−10)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド
(U−11)2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン
(U−12)t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
(U−13)t−ブチルパーオキシベンゾエート
(U−14)ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート
(U−15)ジイソプロピルパーオキシジカーボネート
(U−16)t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート
クロラミン化合物類
(U−17)クロラミンT(ソディウムパラトルエンスルホンクロラミド)
(U−18)クロラミンB(ソディウムベンゼンスルホンクロラミド)
無機過酸化物
(U−19)K2S2O8
(U−20)K2C2O6
(U−21)K2P2O8
(U−22)K2{Ti(O2)C2O4}・3H2O
(U−23)4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O
(U−24)Na3{VO(O2)(C2O4)2・6H2O}
(Uー25)KMnO4
(U−26)K2Cr2O7
(U−27)カリウムヘキサシアノ第三鉄酸塩
(U−28)カリウム過沃素酸塩
(U−29)次亜塩素酸ナトリウム
特に好ましい酸化性ハロゲン化物としてハロメタン化合物を挙げることができる。本発明に使用するハロメタン化合物は、1個の分子の中に、ハロゲン化メタン基を少なくとも1個有する化合物であり、脂肪族基上に置換されたり、芳香族環やヘテロ環に置換されている。芳香族環やヘテロ環は2価の連結基を介して更に芳香族環やヘテロ環に連結してもよい。芳香族はフェニル基やナフタレン基が好ましく、これら環上にロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基等、ヘテロ環基としては、例えば、ピリジン基、ピリミジン基、キノリン基、フラン環基、チオフェン環基、イミダゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基等でこれら環上には、芳香族環と同様な置換基を有してもよい。また、芳香族環やヘテロ環上には、耐拡散性を付与するための基やハロゲン化銀への吸着を促進する基を置換してもよい。ハロメタン基に隣接する基がスルホニル基やカルボニル基が好ましいが、直接芳香族環やヘテロ環上に結合してもよく、結合の方式は限定されない。特に3個のハロゲン原子で置換されたトリハロメタン基のハロゲン原子としては、臭素原子が好ましいが、塩素、フッ素、沃素でもよく、これらの組み合わせでもよい。本発明に用いられるハロメタン化合物としては前記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0031】
前記一般式(1)において、Z1は、脂肪族基又はアリール基、X1、X2およびX3は水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。L1は−C(=O)−、−SO−又は−SO2−を表し、mは1〜4の整数、pは0又は1を表す。
【0032】
Z1で表される基は、脂肪族基又は環基を表し、芳香族環基の場合は飽和又は不飽和の単環又は縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の基(例えばアダマンチル基、シクロブタン基、シクロプロパン基、シクロペンタン基、シクロオクタン基、シクロブテン基、シクロペンテン基、シクロヘキセン基、フェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくはアダマンチル基、シクロペンタン基、シクロヘキサン基、シクロヘキセン基、シクロヘキサノン基、シクロペンテン基、フェニル基、ナフチル基である。Z1がヘテロ環基の場合は、N、O又はSの少なくとも一つの原子を含む3ないし10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であっても良いし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。上記ヘテロ環基におけるヘテロ環として、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、ベンズオキサジン、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾールであり、特に好ましくはピペリジン、ピペラジン、ピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンズチアゾール等が挙げられる。Z1が脂肪族基の場合は、炭素数1〜25の飽和又は不飽和の脂肪族基が好ましい。好ましい具体的化合物を下記に示す。
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
上記化合物の添加する位置は、下塗り層であればどの層でもよく、第1層又は第2層目、更には第3層目のいずれでもよい。上記化合物を塗布液に添加する方法は公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。上記化合物の添加量は感光層中のハロゲン化銀1モル当たり、10−6〜10−2モルの範囲に相当する量を下塗り層に添加することができる。前記範囲未満では酸化剤の酸化力が不足し、充分な効果が得られない。又この範囲より多く添加すると感度が低下して高い濃度を得ることが難しくなる。
【0037】
更に酸化反応を促進する触媒を使用すると電解重合反応を促進することができる。
【0038】
触媒の使用は、無機の金属酸化物の触媒が好ましく、例えば、過酸化水素に対しては、過マンガン酸カリウム、有機過酸化物に対しては、遷移金属化合物や貴金触媒等が好ましい。遷移金属化合物としては、コバルト、ニッケル、銅、クロム、鉄、バナジウム等を挙げることができる。貴金属化合物としては、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム等の化合物を挙げることができる。遷移金属化合物や貴金属化合物の使用方法は、ハロゲン化物(塩化物や臭化物)や硝酸塩等でもよいし、シアノ錯体、カルボニル錯体、ニトロシル錯体等でもよい。また、活性なナノメートルサイズの微粒子の金属状態でもよいし、ゼオライトやシリカゲル等に担持した触媒でもよい。使用量は写真画像にカブリやヘイズとして影響のないレベルなら任意であるが、酸化剤1モルに対して1×10−8〜1×102モルの範囲で使用するのが好ましく、より好ましくは1×10−3〜10モルである。上記範囲未満では充分な触媒活性を得ることができず、上記範囲より大である場合は、下塗塗布組成物の安定性が損なわれるので好ましくない。酸化剤を活性化する方法として、上記触媒を使用する他に、前述した紫外線、電子線、X線照射等の放射線照射を使用することができる。放射線の強さは、下塗り塗布液100mlに対して、紫外線の場合は1mJ〜1kJ、電子線の場合は1eV〜1MeV、X線の場合は1kGy〜1MGyの範囲で使用するのが好ましい。いずれも上記範囲未満では、酸化剤の活性化効果が得にくく、上記範囲を超えると塗布液の分解を助長し、下塗り層の膜強度が得られなくなる。酸化剤の反応の活性化は前記触媒と前記放射線照射の併用により行うこともできる。液体に前記放射線処理する方法は、液体を前記放射線の透過率のよいガラス管やプラスチック管に一定の流量で管内を通過させる時に照射する方法が好ましい。
(コロナ放電処理又はプラズマ放電処理)
本発明に使用する支持体はポリエステル支持体であり、該支持体の少なくとも一方の側をコロナ放電処理又はプラズマ放電処理、或いは紫外線処理、電子線処理及びX線処理から選ばれる少なくとも1種の処理をしてから、下塗り層、感光層、保護層、バッキング層等の諸層を同時重層塗布又は逐次塗布をする。
【0039】
コロナ放電処理は電極とローラー間に交流又は直流の高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、その中にフィルムを通過させることによってフィルム表面を処理するものであり、通常ローラーは金属ローラー上にハイパロンゴム(ポリエチレンをクロルスルホン化したゴム)、EPTゴム(エチレン・プロピレン・ジエンのターポリマーでEPDMゴムとも言う)、シリコンゴム等の誘電体やセラミックを被覆した誘電体ローラーが用いられるが、ポリエステル支持体では誘電体を介さずに直接金属ローラーを用いることも可能である。印加する電力は、フィルムの厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常1μW〜200mW/cm2・分、好ましくは100μW〜100mW/cm2・分の電力の範囲が用いられる。印加電力が高すぎるとフィルムの特性を損ねたり、しわの発生があったり、表面粗さを損ねるなどの問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0040】
プラズマ処理は、大気圧プラズマ処理や低圧プラズマ処理等あるが、大気圧で可能な常圧プラズマ処理が好ましい。プラズマ処理では、雰囲気ガスとして、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等が好ましい。特にヘリウムおよびアルゴンガスが好ましい。雰囲気ガス中に、酸素、メタン、二酸化炭素、窒素(窒素雰囲気の場合を除く)、アンモニアを1ppm〜30%(体積割合)含ませてもよい。雰囲気圧力は1Pa〜1MPaが好ましく、大気圧が作業性等から好ましい。しかし、開始電圧が上昇するのでこれを抑えるのに、放電極面に誘電体を挟むこと、雰囲気ガスとしてヘリウム又はアルゴンであること、電源として交流や高周波を使用することが好ましい。周波数として交流周波数から電子レンジ相当の高周波、更に高い高周波まで選択することができ、50Hz〜100GHzが好ましい。印加する電力は、コロナ放電処理と同様、支持体の厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常1μW〜300mW/cm2・分、好ましくは100μW〜200mW/cm2・分の電力密度の範囲が用いられる。印加電力が高すぎると、表面の平滑性を損ねたり、放電による飛散物質汚染等の問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0041】
電子線照射装置、紫外線照射装置及びX線照射装置としては、それぞれ電子線、紫外線およびX線を発生して照射可能な一般的なX線照射装置、紫外線照射装置及び電子線照射装置を用いればよい。紫外線照射の露光波長は、400nm以下、特に250nm以下が好ましい。250nm以下の露光波長の光を得るにはKrFエキシマレーザ(約248nm)やArFエキシマレーザ(約193nm)を用いる。従来の水銀ランプやエキシマレーザによる紫外線に加えて、波長7〜16nm付近の極紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)を用いてもよい。紫外線の照射線量は1mJ〜1kJの範囲が好ましく、1mJ未満では紫外線照射のPET表面の改質効果が発現しないし、1kJ以上では、ポリエステル支持体の物性的な劣化(脆弱する)を引き起こす。X線照射装置の場合、高輝度のX線を得るために、シンクロトロン放射光を用いて露光する方法がある。しかし、シンクロトロン放射光源は、大掛かりな設備を必要とするため、大規模量産においては有効であるが、試作等にも使用できる小型で強力なX線を発生させるX線源を使用してもよい。例えば、米国特許第4,896,341号明細書に示されるようにレーザプラズマ線源と呼ばれるもので、レーザからのレーザ光をターゲットに照射してプラズマを発生させ、プラズマから発生するX線を使用しようとするものであり、もう一つは、1981年版のジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・テクロノロジー・19巻4の11月/12月号1190頁(J.Vac.Sci.Tec.,19(4)Nov/Dec1190(1981))に示されるように、ガス中で放電によってピンチプラズマを発生させ、X線を発生させようとするものである。放電プラズマを用いたX線源は小型であり、X線量が多く、レーザ生成プラズマを用いたX線源に比べて投入電力のX線への変換効率が高く、低コストである。このため、放電プラズマをX線源に用いてもよい。このようなX線源として例えば、Dense PlasmaFocus(DPF)と呼ばれるものがあり、その概要がCymer社のインターネットホームページ(http://www.Cymer.com/)中の論文「EUV(13.5nm) Light generation Using Dense Plasma Focus Device」又は特開平10−319195号公報に開示されている方法でもよい。電子線又はX線照射にあたり照射環境は、できれば酸素不在下とするのが好ましい。放射線の照射環境の酸素不在下とは、実質的な真空中(1Pa以下)ないしは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下をいう。
【0042】
電子線又はX線の照射温度は0℃〜300℃、好ましくは室温℃〜250℃である。照射温度が、室温未満では支持体表面改質が進行しない。一方、照射温度が高くなりすぎるとポリエステル支持体の分解が進み、強度が低下するため照射温度の上限は250℃とするのが好ましい。X線量は、1×103Gy〜1×107Gy程度とするのが好ましい。ポリエステル支持体と下塗り層との接着性を有効にするために、放射線量は1×103Gy以上とするのが好ましい。一方、放射線量を多くしすぎるとポリエステル支持体の分解が進むため放射線量は1×106Gy以下とするのが好ましい。本発明に電子線を用いる場合には、ポリエステル支持体と下塗り層との接着性を改良できる5×104電子ボルト以上、さらには7×105電子ボルト以上のものが好ましい。
【0043】
(下塗り層)
次に表面処理した支持体と感光層の間に設ける下塗り層について述べる。下塗り層としては、第1層として支持体によく接着する層(以下、下塗り第1層と略す)を設け、その上に第2層(以下、下塗り第2層と略す)を塗布するいわゆる重層法と、支持体と感光層とをよく接着する層を一層のみ塗布する単層法とがあるが、いずれの方法を用いてもよい。場合によっては3層以上塗設してもよい。
【0044】
本発明に使用する第1層目又は第2層目の下塗り層に用いられる不飽和ビニル化合物からなる共重合体の具体例として、メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/メタクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマー、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーなどを挙げることができ、特に塩化ビニリデンモノマーを含む共重合体が好ましい。
【0045】
塩化ビニリデン共重合体を使用する場合は、70〜99.9質量%、より好ましくは85〜99質量%の塩化ビニリデン単量体と、0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%のカルボキシル基含有ビニル単量体を含有する共重合体であることが好ましい。上記塩化ビニリデン共重合体には塩化ビニリデン単量体、カルボキシル基含有単量体以外に共重合可能な単量体の繰り返し単位を含有させてもよい。これら共重合可能な単量体の具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、スチレン等を挙げることができる。これらの共重合可能な単量体は単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0046】
本発明の不飽和ビニル化合物からなる共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下、更に10,000〜45,000が好ましい。本発明の不飽和ビニル共重合体は有機溶媒に溶解した形態でも、水分散物の形態でもどちらでも良いが、水分散物の形態の方が好ましい。この場合、均一構造のポリマー粒子であってもコア部とシェル部で組成の異なったいわゆるコア・シェル構造のポリマー粒子でもよい。本発明の不飽和ビニル化合物の共重合体の単量体単位の配列については限定されず、周期、ランダム、ブロック等のいずれであってもよい。下塗り第1層目又は第2層目に好ましい上記共重合体の具体例を下記に示す。
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
第1層目の組成と第2層目の共重合体の組成は、支持体との接着がよいものを第1層目、第2層目は、感光層又は感光層下層のハレーション防止層との接着性がよいものを選択するのが好ましい。第1層及び第2層目の厚さはそれぞれ10nm〜20μmの厚さの範囲を適宜選択することができる。10nm未満では、共重合体の接着強度を得ることが難しくなり、20μmより厚いと寸法安定の点から好ましくない。
【0050】
(架橋剤)
本発明に使用する架橋剤は、下塗り層や上層の感光層との接着を保持し、傷の付きにくい膜強度を得る。しかし、高い膜強度が得られても架橋反応が遅いと、写真性能が安定せず保存性が劣化する。本発明に使用する即効性で、好ましい架橋剤はイソシアナート基、エポキシ基、又はビニルスルホニル基のいずれかを少なくとも2個有する多官能型架橋剤、あるいはアルコキシシラン基を少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物を挙げることができる。好ましい架橋剤を下記に示す。
(H1)ヘキサメチレンジイソシアナート
(H2)ヘキサメチレンジイソシアナートの3量体
(H3)トリレンジイソシアナート
(H4)フェニレンジイソシアナート
(H5)キシリレンジイソシアナート
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
上記架橋剤は、水、アルコール類、ケトン類、非極性の有機溶媒類に溶解して添加しても良いし、塗布液中に固形のまま添加してもよい。添加量は、結合剤の架橋する基と当量が好ましいが10倍まで増量しても良いし、10分の1以下まで減量してもよい。少なすぎると架橋反応が進まないし、多すぎると未反応の架橋剤が写真性を劣化させるので好ましくない。
【0054】
架橋剤は架橋反応する官能基の当量を添加することが好ましいが、調製する塗布液の濃度や温度、乾燥温度、後処理温度等に応じて理論量の2倍〜10倍量添加して反応収率を高めることができる。また、架橋反応率を高めるために、過剰に架橋剤を添加することによる未反応の架橋剤が写真性能へ悪影響を及ぼしてくるので、化学量論的当量より等倍〜10分の1倍と少なくすることもできる。架橋反応性の高いもの程、屡々、写真性能への影響が大となるものが多いので、ビス体やトリス体のような架橋反応が2段階以上のプロセスで進行するものは、予め第1段階を塗布液に添加する前に済ませておくのが好ましい。架橋剤は、架橋させたい基を有するポリマーを含有する層中に添加することが好ましいが同時上層塗布では、隣接する層中に添加し拡散させて所望の架橋反応をさせてもよい。
【0055】
架橋剤の添加方法は、反応性が高い程架橋反応が早いため塗布液停滞性が悪化するので塗布直前に混合するのが好ましい。混合する方法は、有機溶媒に溶解して添加するか又は水系溶媒に微粒子状に分散して添加することができる。塗布直前混合は、混合された液がスタチックミキサーを通過することで乱流混合される方法や、混合される液が、高速に衝突するジェット噴射混合、超音波混合等を採用することができるが、スタチックミキサーを使用して混合時間から塗布までの時間を10分以内、好ましくは1分以内にするのが好ましい。混合温度は、塗布液の温度と等しいことが好ましいが、5℃〜10℃の範囲以内で混合温度よりも高くても低くてもよい。
【0056】
(乾燥および熱処理)
本発明に係るドライイメージング材料の支持体の一方の諸層を同時に乾燥する条件は、25〜70℃が好ましく、特に30〜60℃が好ましい。低い温度では架橋が進まないため、できるだけ高温にするのが好ましいが、60℃を越えると写真性能、画像保存性や支持体の寸法安定性の劣化が大きくなるので好ましくない。熱風乾燥の場合はドライイメージング材料の表面温度が低く、一定である恒率乾燥過程と熱風温度に徐々に近づく減率過程の条件を適宜選択するのが好ましい。できるだけ恒率乾燥過程の表面温度を下げて乾燥するのが、写真性能への影響が少なく、エネルギーロスも少ないので好ましい。
【0057】
(感光性ハロゲン化銀粒子)
本発明に係るドライイメージング材料の感光層中に含有される感光性ハロゲン化銀は、シングルジェット若しくはダブルジェット法などの写真技術の分野で公知の任意の方法により、例えばアンモニア法乳剤、中性法、酸性法等のいずれかの方法で予め調製し、次いで本発明の他の成分と混合して本発明に用いる組成物中に導入することができる。感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるために、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいものが好ましい。平均粒子サイズで0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。又、ハロゲン化銀の形状としては特に制限はなく、立方体、八面体の所謂正常晶や正常晶でない球状、棒状、平板状等の粒子がある。又ハロゲン化銀組成としても特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。上記ハロゲン化銀の量はハロゲン化銀及び後述の有機銀塩の総量に対し50質量%以下好ましくは25〜0.1質量%、更に好ましくは15〜0.1質量%の間である。
【0058】
(有機銀塩)
本発明に係るドライイメージング材料に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸、ヘテロ有機酸及び酸ポリマーの銀塩などが用いられる。また、配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、エルカ酸等の塩である。
【0059】
(還元剤)
本発明に係るドライイメージング材料に含有される好ましい還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号等の各明細書に記載されており、好ましい還元剤として次のものが挙げられる。
(K−1)1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン
(K−2)ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン
(K−3)2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン
(K−4)4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)
(K−5)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン
前記に示される化合物は、水に分散したり、有機溶媒に溶解して使用する。有機溶媒は、メタノールやエタノール等のアルコール類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等の芳香族系を任意に選択することができる。還元剤の使用量は、銀1モル当り1×10−2〜1×10モル、好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0060】
(結合剤)
本発明に係るドライイメージング材料の感光層又は非感光層に用いられる結合剤としては、ハロゲン化銀、有機銀塩、還元剤が反応する場として好ましい素材が選択される。上記高分子結合剤としては、例えばメタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等を含む極性溶媒に溶解して用いられるポリマーと、水分散系ポリマーとがある。
【0061】
上記ポリマーとしては、有機溶媒に溶解して使用するセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルヘキサナール等のポリビニルアルコール誘導体があり、水に分散や溶解して使用するものとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(水溶性のものと有機溶媒用とがある)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体などが挙げられる。本発明では特にポリアセタール化合物が好ましく、ポリアセタール化合物は、ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるポリビニルアルコールの隣接する水酸基にアルデヒド化合物を反応させるアセタール化により合成される。アセタール化は公知の方法ですることができる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド又はベンズアルデヒド等である。中でも特にアセトアルヒドおよびブチルアルデヒドでアセタール化したものが好ましい。
【0062】
(分光増感色素)
本発明に使用する分光増感色素は、必要により例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号等の各公報、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号等の各明細書に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は例えば、Research Disclosure Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号等の各公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0063】
(AI層又はBC層に使用される染料)
本発明に係るドライイメージング材料は、必要により該ドライイメージング材料のイラジエーション防止用又はハレーション防止用のAI層又はBC層が設けられ、該AI層又はBC層に用いられる染料としては画像露光光を吸収する染料であればよいが、好ましくは米国特許第5,384,237号明細書等に記載される熱消色性染料が用いられる。用いられる染料が熱消色性でない場合は、使用量がドライイメージング材料に画像障害を及ぼさない範囲に限定されるが、熱消色性染料であれば必要にして十分な量の染料を添加することができる。
【0064】
(色調剤)
本発明に係るドライイメージング材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はResearch Disclosure第17029号に開示されており、次のものがある。
【0065】
フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン)、キナゾリンジオン類;ベンズオキサジン、ナフトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−(MeV/2,4−ジオン));ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)。
【0066】
(マット剤)
マット剤としてはシリカやポリメタクリル酸メチルが使用される。マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。本発明においてマット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。本発明に用いられるマット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。本発明のマット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0067】
(支持体)
本発明に係るドライイメージング材料の支持体は、ポリエステル支持体であるが、PETやPEN等のプラスチックフィルムなどの支持体が挙げられる。
【0068】
〈画像露光〉
本発明に係るドライイメージング材料に画像形成を行う際の画像露光は、例えば、発光波長が660nm、670nm、780nm、810nm、830nmの何れかのレーザ走査露光により行うことが好ましいが、ドライイメージング材料の露光面と走査レーザ光のなす角が垂直になることがないレーザ走査露光機を用いることが好ましい。レーザ走査角度は、好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度である。ドライイメージング材料にレーザ光が走査されるときの該ドライイメージング材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。このようなレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。本発明における露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦マルチモードのレーザ露光とすることにより縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、前記の方法の他、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、などの方法がある。なお、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の実施の態様はこれらにより限定されない。
【0070】
実施例1
〈ハロゲン化銀粒子乳剤Aの調製〉
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと、(98/2)のモル比の臭化カリウムおよび沃化カリウムを0.435モル含む水溶液370mlとをpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加し、NaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.03μm、投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後、フェノキシエタノール0.1gを加え、ハロゲン化銀粒子乳剤Aを321g得た。
【0071】
〈有機銀塩の調製〉
3980mlの純水にベヘン酸111.4g、アラキジン酸83.8g、ステアリン酸54.9gを80℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し(pH9.8)、濃硝酸6.9mlを加えた後(pH9.3)、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、前記ハロゲン化銀粒子乳剤Aの28g(銀0.038モルを含む)と純水390mlを添加し5分間攪拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに20分攪拌し、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、最後に遠心分離脱水後40℃15分間で乾燥した。
【0072】
(BC層側塗布)
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレート支持体の塗布面に12mW/cm2・分のコロナ放電処理を施し、以下の添加剤を加えて調製したメチルエチルケトン溶媒塗布液を以下の付き量になるように、BC層およびBC層の保護層を2層同時塗布乾燥をした。
【0073】
(感光層側の下塗り層およびAI層、感光層、感光層の保護層の塗布)
感光層側の下塗り層は、BC層塗布の反対側の支持体表面にそれぞれ表1記載の処理量でコロナ放電処理(mW/cm2・分)、プラズマ放電処理(2.45GHzのマイクロ波でヘリウムガス雰囲気下常温処理)(mW/cm2・分)、紫外線照射処理(波長:193nm)(mJ/cm2・分)、電子線照射処理(eV/cm2・分)又はX線照射処理(kGy/cm2・分)を施した後(表1中では処理量単位を省略)、後述の単位付き量になるように下塗り塗布液を支持体上に塗布加工して形成された。上記下塗り塗布液としては、100m2分の共重合体、架橋剤、酸化剤および場合によっては触媒を含む水溶液を3Lに仕上げたものが用いられた。電解重合は、表1記載の塗布機(表中、塗布機の種類についてキャスティング塗布機をP1、ディップ塗布機P2、スライド塗布機をP3で示した)を使用し、ステンレス製のキャスティングダイス、浸漬電極およびスライドダイスを陰極に、搬送ローラーを陽極となるよう配置し、塗布液の温度を約25℃に保ちつつ電解重合により下塗り層を形成した。この間、電解重合条件として陽極電位は標準水素電極に対して表1記載の電位(単位は飽和カロメル電極に対しての電位V)又は電流の強さ(単位mA又はA)であった。PET支持体上に下記付き量となるように下塗り第1層目、第2層目を塗布し、それぞれ66℃55秒で乾燥して試料101〜122を得た。上記試料101〜122上にAI層、感光層、感光層の保護層の3層を同時重層塗布し60℃2分間で乾燥して表2記載の試料201〜222を得た。AI層、感光層および感光層の保護層は、それぞれ下記付き量になるように100m2分の素材を予めメチルエチルケトン溶液に添加して200ml(液温20℃)に仕上げたものを用いて塗布加工して得られた。
【0074】
【0075】
【化11】
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(写真性能の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を25℃で45%RHの雰囲気下に3日間保存し、810nmの半導体レーザ露光用の感光計で露光し、露光後熱現像装置を用いて(感光層側熱ドラム接触)120℃で8秒間加熱し、感度およびカブリをマクベス濃度計(TD−904)により測定した。カブリは未露光部の濃度を感度はカブリより0.3高い濃度を与える露光量の、逆数で評価し、試料201を基準(100)として相対評価で表し、得られた値を表2に示した。
【0079】
(保存性の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を23℃40%RHの雰囲気下に3日間保存した後、酸化アルミニウムと酸化珪素を1:1で蒸着したポリエチレン製防湿袋に密閉し40℃2週間保存した後に開封し、前記と同様の写真性能の評価方法の露光現像を行い、カブリの増大値を求め、得られた値を表2に示した。
【0080】
(帯電防止性能の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を20℃20%RHの部屋に18時間放置した後、表面を化繊繊維布(ナイロン60%、ポリエステル40%)で5回擦り、これをスチレンビーズ100個(平均粒子径3mm)の上にかざして(接近距離15mm)、ビーズの吸着度合いを評価した。0〜2個の吸着レベルを5、3〜8個の吸着を4、9〜15個の吸着を3、16個〜25個の吸着を2、26個以上を吸着したレベルを1とした。
【0081】
(接着性の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を25℃48%RHで10時間保存後、更に密封包装して33℃で3日間熱処理した後、乳剤層の保護層の上にカッターナイフの刃で(刃角45°)切り込みを入れ、100kPaの荷重を掛けてセロテープ(R)(接着広さ=2cm×2cm)を貼り、自動剥離試験機でセロテープ(R)を剥がしたときの下塗り層の第2層目膜と感光層膜の剥がれた面積状態で評価した。全く剥がれていないレベルを0%、最大に剥がれたレベルを100%と評価した。実用的に問題ないレベルは20%以内である。
【0082】
表1、表2より、導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを含有する下塗り塗布液を支持体上に電解重合しながら塗布した本発明の試料は帯電防止性能が優れていてゴミの付着による画像欠陥がなく、かつカブリ、感度および保存性等の写真性能に優れていることが分かる。さらにはコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理又はX線処理等の各処理を施した支持体上に下塗り塗布液を塗布した場合、支持体と感光層との接着性が改良され、また下塗り塗布液中に酸化剤、さらには反応促進触媒を含有させることにより感度の増大、カブリの抑制、保存性の向上が認められる。
【0083】
【発明の効果】
本発明のドライイメージング材料の製造方法によれば、帯電防止性能が優れていてゴミの付着による画像欠陥がなく、かつカブリ、感度および保存性等の写真性能に優れたドライイメージング材料が得られる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】キャスティング塗布機を示す概略図である。
【図2】ディップ塗布機を示す概略図である。
【図3】スライド塗布機を示す概略図である。
【符号の説明】
1 塗布液
2 キャスティングダイス
3 搬送ローラー
4 電源
5 支持体
6 浸漬電極
7 スライドダイス
8 搬送ローラー軸
【発明の属する技術分野】
本発明は露光後熱現像により画像を形成するドライイメージング材料の製造方法に関し、詳しくは、優れた帯電防止性能を有し、且つカブリ、感度、保存性および接着性が改良された画像が得られるドライイメージング材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線撮影による医療画像診断の分野において、ドライ処理システムが普及している。このシステムは、被写体を透過したX線エネルギーをイメージングプレート中の輝尽性蛍光体に吸収させ、紫外線、可視光線、或いは赤外線等で時系列的に輝尽性蛍光体を励起し、蓄積されたX線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号をレーザー光の強度に変換し、このレーザー光でドライイメージング材料中のハロゲン化銀に潜像を形成させ、これを熱現像して被写体又は被検体のX線画像を可視画像として再生することを基本としている。
【0003】
前記ドライ処理システムに使用されるドライイメージング材料は、ポリエチレンテレフタレート(以降、PETと略す)やポリエチレンナフタレート(以降、PENと略す)等のポリエステル支持体上に色素で分光増感された高感度のハロゲン化銀粒子、有機銀塩および還元剤を含む感光層と、該感光層に向けて照射した光が吸収されずに通過して支持体の界面や中間層や接着層等で乱反射するのを防ぐイラジエーション防止(以降、AIと略す)層或いはバッキング(以降、BCと略す)層から構成され、更には感光層の上やBC層の上に取り扱い時に傷が付くのを防ぐための保護層が設けられている。BC層を設ける場合には、感光層の下にAI層を設けないこともあるが、両面に感光層を設ける場合には、両面の感光層下部にAI層を設けることが必要となる。
【0004】
従来からこのタイプのドライイメージング材料は、摩擦や剥離で静電気を帯びやすく、いずれも画像欠陥となるスタチックマークやゴミが付きやすい等の課題があった。この解決方法は、導電性の酸化錫や酸化インジウム等の無機微粒子を支持体と感光層の間に塗設することであった。しかし、この方法では導電性を得るために微粒子を微粒子同士が接触する密度まで含有させる必要があり、この密度まで微粒子を含有させると膜強度が劣化するという問題があった。膜強度を強化するために強靱な結合剤や架橋性の硬膜剤等を使用することで解決してきたが、満足な性能を得ることが難しかった。一方有機の導電性の高分子を使用することが検討されていたが、いずれもポリマーを溶解する適当な溶媒がなく、塗設が困難であること、π電子の光吸収のため着色し易いこと等の欠点のため実用化が困難であった。そこで溶媒を使用するラジカル重合でなく、電解重合法が提案されている。例えば、アニリンを電解酸化重合する方法(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)では電極上にポリアニリンのフィルムを形成することが可能であるが、単離操作が煩雑になることや大量合成が困難であるという問題があった。特に、ドライイメージング材料は、感光性ハロゲン化銀の他に還元剤と有機銀塩が必須成分として含まれるため、カブリ易い、高い感度を得にくい、また、保存性、耐光性および銀色調が劣化し易い等の改良すべき多くの課題が存在していて、ドライイメージング材料にとって真に好ましい帯電防止剤の選択は極めて難しい課題であり、従来ドライイメージング材料の塗布に上記電解重合の技術を用いることは全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−235831号公報
【0006】
【非特許文献1】
J.Polymer Sci.Polymer Chem.Ed.,
26,1531(1988)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ドライイメージング材料に優れた帯電防止性能を付与すること、および写真性能を向上させること、即ち、ドライイメージング材料のゴミの付着による画像欠陥を無くし、低カブリ、高感度化を達成し、かつ保存性および接着性を改良することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の目的は、以下の構成によって達成される。
【0009】
1.支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤および結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液中に導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを存在させ、塗布時に電解重合を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【0010】
2.前記電解重合が、電圧5mV〜55Vで行われることを特徴とする前記1に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0011】
3.前記電解重合が、塗布液の供給側を陰極に、塗布液が塗布されるウエッブ搬送ローラー側を陽極に配置して行われることを特徴とする前記1又は2に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0012】
4.前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、アニリン誘導体、テトラザインデン誘導体およびプリン誘導体から選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0013】
5.前記電解重合が、酸化剤の存在下に行われることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0014】
6.前記酸化剤が、過酸化水素、有機又は無機過酸化物類および酸化性ハロゲン化物類から選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記5に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0015】
7.前記酸化性ハロゲン化物類が、前記一般式(1)で示されることを特徴とする前記6に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0016】
8.前記電解重合が、酸化反応促進触媒の存在下で行われることを特徴とする前記5〜7のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0017】
9.前記ドライイメージング材料の支持体が、コロナ放電処理又はプラズマ放電処理され、放電処理の雰囲気が1Pa〜1MPaの圧力下であり、雰囲気ガスがアルゴンガス又はヘリウムガスを70%(体積割合)以上含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0018】
10.前記ドライイメージング材料の支持体が、X線、紫外線又は電子線処理されていることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0019】
11.前記下塗り層が、芳香族系又は脂肪族系の不飽和ビニル化合物類からなる共重合体を含むことを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0020】
12.前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体が、ヒドロキシ基、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基又は活性メチレン基を含むことを特徴とする前記11に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0021】
13.前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体が、イソシアナート化合物、ビニルスルホニル化合物、エポキシ化合物又はアルコキシシラン化合物で架橋されていることを特徴とする前記11に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0022】
以下本発明を詳細に説明する。
(電解重合)
本発明は、導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを含有する下塗り塗布液を支持体上に塗布する時に該重合性モノマーを電解重合して下塗り層を形成することに特徴がある。上記重合性モノマーを含有する下塗り塗布液を支持体上に塗布する代表的塗布機としては、図1に示すキャスティング塗布機、図2に示すディップ塗布機、図3に示すスライド塗布機を挙げることができる。図1中、1は塗布液、2はキャスティングダイス、3は搬送ローラー、4は電源、5は支持体、6は浸漬電極、7はスライドダイス、8は搬送ローラー軸を示し、図1、図2、図3の各図において搬送ローラー3は電源4の陽極側に、図1のキャスティングダイス2、図2の浸漬電極6、図3のスライドダイス7は電源4の陰極側に配置される。また、上記陽極側に配置される搬送ローラー3の材料としてはステンレス、ニッケル、酸化鉛、炭素、酸化鉄、チタン、白金等が、上記陰極側に配置されるキャスティングダイス2、浸漬電極6、スライドダイス7の材料としてはステンレス、スズ、アルミニウム、亜鉛、鉛、銅、炭素、白金等が推奨できるが、好ましくは上記陽極側材料および陰極側材料としてステンレス、白金等が使用できる。貴金属の使用は設備コストが高くなるのでステンレス、例えば、SUS304等を使用してもよい。
【0023】
本発明の電解重合は、陽極と陰極を隔膜で分離する必要はなく、単一槽中で行うことができる。電解反応は、定電流電解法及び定電圧電解法のいずれをも採用することができるが、装置や操作の簡便さの点で定電流電解法を採用するのが好ましい。電解は、直流又は交流電解が可能であるが電流方向を1〜30秒毎に切り替えて行なうこともできる。電流値は、通常1μA〜10A、好ましくは1mA〜1Aの範囲とするのが良い。印加する直流電圧としては、5mV〜55Vを使用することができる。電気量は用いる塗布機の形状、下塗り塗布液の組成、用いる酸化剤の種類等により異なり、一概にはいえないが、通常1mF〜1000F/モル程度、好ましくは1〜100F/モル程度とするのがよい。電流、電圧及び電気量等がこの範囲未満では十分な電解重合を行うことができず、この範囲より大きいと酸素、オゾン等が多量に発生してくるので好ましくない。
【0024】
ディップ塗布機の場合、電極をイオン交換膜で隔離することが可能である。上記でディップ塗布機の場合の下塗り塗布液の電解重合に使用するイオン交換膜の種類としては、各種陽イオン交換膜が使用できるが、米国デュポン社のフッ素樹脂をベースにし、スルフォン酸基を有するナフィオンが好ましい。
【0025】
なお、本発明の電解重合反応は通常−5〜80℃程度、好ましくは0〜60℃程度の温度下に実施される。−5℃未満では塗布液の粘度が増大し、電解重合効率が低下し、80℃を越えると重合性モノマーが揮発や蒸散し易くなるので好ましくない。
【0026】
(重合性モノマー)
本発明に好ましい重合性モノマーは、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、アニリン誘導体、テトラザインデン誘導体およびプリン誘導体から選択されることが好ましく、特にチオフェン誘導体又はフラン誘導体が好ましい。前記誘導体の環上には、それぞれ置換されてもよいアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アミド基又はハロゲン原子が導入されてもよい。前記モノマーが電解重合された後の導電性付与のためのドーピング剤として特別なアニオン化合物を添加することをしないで、塗布助剤として使用する活性剤等を兼用してもよい。前記重合性モノマーの使用量は、ドライイメージング材料の平米当たり、1μg〜10gに相当する量の範囲で使用するのが好ましい。1μg未満では導電性が得られず、10g以上では未反応のモノマーが残留するので好ましくない。好ましい重合性モノマーの具体例を下記に示す。
【0027】
【化2】
【0028】
次に上記重合性モノマーを電解重合して得られる導電性ポリマーの好ましい例としては以下のものを挙げることができる。
【0029】
【化3】
【0030】
(酸化剤)
本発明における下塗り塗布液の組成物中に使用する酸化剤は過酸化水素、有機過酸化物類、クロラミン化合物類、酸化性ハロゲン化物等を挙げることができる。過酸化水素の他に過酸化水素の付加物、例えばNaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・2H2O2・2H2Oを挙げることができる。有機過酸化物は、脂肪族系又は芳香族系のいずれでもよく、分子中に−O−O−結合を含みコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線処理、電子線処理、X線処理および下塗処理等で生じる還元性物質(ハロゲン化銀や有機銀塩を還元するために使用する還元剤を除く)を酸化するものであり、写真的性能に悪影響を与える微量の還元物質、現像物質を無害化するものであればよい。酸化剤の好ましい具体例を下記に示す。
(U−1)メチルエチルケトンパーオキサイド
(U−2)シクロヘキサノンパーオキサイド
(U−3)2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド
(U−4)ビス−3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド
(U−5)ラウロイルパーオキサイド
(U−6)ベンゾイルパーオキサイド
(U−7)クメンハイドロパーオキサイド
(U−8)ジクミルパーオキサイド
(U−9)ジ−t−ブチルパーオキサイド
(U−10)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド
(U−11)2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン
(U−12)t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
(U−13)t−ブチルパーオキシベンゾエート
(U−14)ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート
(U−15)ジイソプロピルパーオキシジカーボネート
(U−16)t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート
クロラミン化合物類
(U−17)クロラミンT(ソディウムパラトルエンスルホンクロラミド)
(U−18)クロラミンB(ソディウムベンゼンスルホンクロラミド)
無機過酸化物
(U−19)K2S2O8
(U−20)K2C2O6
(U−21)K2P2O8
(U−22)K2{Ti(O2)C2O4}・3H2O
(U−23)4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O
(U−24)Na3{VO(O2)(C2O4)2・6H2O}
(Uー25)KMnO4
(U−26)K2Cr2O7
(U−27)カリウムヘキサシアノ第三鉄酸塩
(U−28)カリウム過沃素酸塩
(U−29)次亜塩素酸ナトリウム
特に好ましい酸化性ハロゲン化物としてハロメタン化合物を挙げることができる。本発明に使用するハロメタン化合物は、1個の分子の中に、ハロゲン化メタン基を少なくとも1個有する化合物であり、脂肪族基上に置換されたり、芳香族環やヘテロ環に置換されている。芳香族環やヘテロ環は2価の連結基を介して更に芳香族環やヘテロ環に連結してもよい。芳香族はフェニル基やナフタレン基が好ましく、これら環上にロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基等、ヘテロ環基としては、例えば、ピリジン基、ピリミジン基、キノリン基、フラン環基、チオフェン環基、イミダゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基等でこれら環上には、芳香族環と同様な置換基を有してもよい。また、芳香族環やヘテロ環上には、耐拡散性を付与するための基やハロゲン化銀への吸着を促進する基を置換してもよい。ハロメタン基に隣接する基がスルホニル基やカルボニル基が好ましいが、直接芳香族環やヘテロ環上に結合してもよく、結合の方式は限定されない。特に3個のハロゲン原子で置換されたトリハロメタン基のハロゲン原子としては、臭素原子が好ましいが、塩素、フッ素、沃素でもよく、これらの組み合わせでもよい。本発明に用いられるハロメタン化合物としては前記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0031】
前記一般式(1)において、Z1は、脂肪族基又はアリール基、X1、X2およびX3は水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。L1は−C(=O)−、−SO−又は−SO2−を表し、mは1〜4の整数、pは0又は1を表す。
【0032】
Z1で表される基は、脂肪族基又は環基を表し、芳香族環基の場合は飽和又は不飽和の単環又は縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の基(例えばアダマンチル基、シクロブタン基、シクロプロパン基、シクロペンタン基、シクロオクタン基、シクロブテン基、シクロペンテン基、シクロヘキセン基、フェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくはアダマンチル基、シクロペンタン基、シクロヘキサン基、シクロヘキセン基、シクロヘキサノン基、シクロペンテン基、フェニル基、ナフチル基である。Z1がヘテロ環基の場合は、N、O又はSの少なくとも一つの原子を含む3ないし10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であっても良いし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。上記ヘテロ環基におけるヘテロ環として、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、ベンズオキサジン、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾールであり、特に好ましくはピペリジン、ピペラジン、ピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンズチアゾール等が挙げられる。Z1が脂肪族基の場合は、炭素数1〜25の飽和又は不飽和の脂肪族基が好ましい。好ましい具体的化合物を下記に示す。
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
上記化合物の添加する位置は、下塗り層であればどの層でもよく、第1層又は第2層目、更には第3層目のいずれでもよい。上記化合物を塗布液に添加する方法は公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。上記化合物の添加量は感光層中のハロゲン化銀1モル当たり、10−6〜10−2モルの範囲に相当する量を下塗り層に添加することができる。前記範囲未満では酸化剤の酸化力が不足し、充分な効果が得られない。又この範囲より多く添加すると感度が低下して高い濃度を得ることが難しくなる。
【0037】
更に酸化反応を促進する触媒を使用すると電解重合反応を促進することができる。
【0038】
触媒の使用は、無機の金属酸化物の触媒が好ましく、例えば、過酸化水素に対しては、過マンガン酸カリウム、有機過酸化物に対しては、遷移金属化合物や貴金触媒等が好ましい。遷移金属化合物としては、コバルト、ニッケル、銅、クロム、鉄、バナジウム等を挙げることができる。貴金属化合物としては、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム等の化合物を挙げることができる。遷移金属化合物や貴金属化合物の使用方法は、ハロゲン化物(塩化物や臭化物)や硝酸塩等でもよいし、シアノ錯体、カルボニル錯体、ニトロシル錯体等でもよい。また、活性なナノメートルサイズの微粒子の金属状態でもよいし、ゼオライトやシリカゲル等に担持した触媒でもよい。使用量は写真画像にカブリやヘイズとして影響のないレベルなら任意であるが、酸化剤1モルに対して1×10−8〜1×102モルの範囲で使用するのが好ましく、より好ましくは1×10−3〜10モルである。上記範囲未満では充分な触媒活性を得ることができず、上記範囲より大である場合は、下塗塗布組成物の安定性が損なわれるので好ましくない。酸化剤を活性化する方法として、上記触媒を使用する他に、前述した紫外線、電子線、X線照射等の放射線照射を使用することができる。放射線の強さは、下塗り塗布液100mlに対して、紫外線の場合は1mJ〜1kJ、電子線の場合は1eV〜1MeV、X線の場合は1kGy〜1MGyの範囲で使用するのが好ましい。いずれも上記範囲未満では、酸化剤の活性化効果が得にくく、上記範囲を超えると塗布液の分解を助長し、下塗り層の膜強度が得られなくなる。酸化剤の反応の活性化は前記触媒と前記放射線照射の併用により行うこともできる。液体に前記放射線処理する方法は、液体を前記放射線の透過率のよいガラス管やプラスチック管に一定の流量で管内を通過させる時に照射する方法が好ましい。
(コロナ放電処理又はプラズマ放電処理)
本発明に使用する支持体はポリエステル支持体であり、該支持体の少なくとも一方の側をコロナ放電処理又はプラズマ放電処理、或いは紫外線処理、電子線処理及びX線処理から選ばれる少なくとも1種の処理をしてから、下塗り層、感光層、保護層、バッキング層等の諸層を同時重層塗布又は逐次塗布をする。
【0039】
コロナ放電処理は電極とローラー間に交流又は直流の高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、その中にフィルムを通過させることによってフィルム表面を処理するものであり、通常ローラーは金属ローラー上にハイパロンゴム(ポリエチレンをクロルスルホン化したゴム)、EPTゴム(エチレン・プロピレン・ジエンのターポリマーでEPDMゴムとも言う)、シリコンゴム等の誘電体やセラミックを被覆した誘電体ローラーが用いられるが、ポリエステル支持体では誘電体を介さずに直接金属ローラーを用いることも可能である。印加する電力は、フィルムの厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常1μW〜200mW/cm2・分、好ましくは100μW〜100mW/cm2・分の電力の範囲が用いられる。印加電力が高すぎるとフィルムの特性を損ねたり、しわの発生があったり、表面粗さを損ねるなどの問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0040】
プラズマ処理は、大気圧プラズマ処理や低圧プラズマ処理等あるが、大気圧で可能な常圧プラズマ処理が好ましい。プラズマ処理では、雰囲気ガスとして、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等が好ましい。特にヘリウムおよびアルゴンガスが好ましい。雰囲気ガス中に、酸素、メタン、二酸化炭素、窒素(窒素雰囲気の場合を除く)、アンモニアを1ppm〜30%(体積割合)含ませてもよい。雰囲気圧力は1Pa〜1MPaが好ましく、大気圧が作業性等から好ましい。しかし、開始電圧が上昇するのでこれを抑えるのに、放電極面に誘電体を挟むこと、雰囲気ガスとしてヘリウム又はアルゴンであること、電源として交流や高周波を使用することが好ましい。周波数として交流周波数から電子レンジ相当の高周波、更に高い高周波まで選択することができ、50Hz〜100GHzが好ましい。印加する電力は、コロナ放電処理と同様、支持体の厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常1μW〜300mW/cm2・分、好ましくは100μW〜200mW/cm2・分の電力密度の範囲が用いられる。印加電力が高すぎると、表面の平滑性を損ねたり、放電による飛散物質汚染等の問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0041】
電子線照射装置、紫外線照射装置及びX線照射装置としては、それぞれ電子線、紫外線およびX線を発生して照射可能な一般的なX線照射装置、紫外線照射装置及び電子線照射装置を用いればよい。紫外線照射の露光波長は、400nm以下、特に250nm以下が好ましい。250nm以下の露光波長の光を得るにはKrFエキシマレーザ(約248nm)やArFエキシマレーザ(約193nm)を用いる。従来の水銀ランプやエキシマレーザによる紫外線に加えて、波長7〜16nm付近の極紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)を用いてもよい。紫外線の照射線量は1mJ〜1kJの範囲が好ましく、1mJ未満では紫外線照射のPET表面の改質効果が発現しないし、1kJ以上では、ポリエステル支持体の物性的な劣化(脆弱する)を引き起こす。X線照射装置の場合、高輝度のX線を得るために、シンクロトロン放射光を用いて露光する方法がある。しかし、シンクロトロン放射光源は、大掛かりな設備を必要とするため、大規模量産においては有効であるが、試作等にも使用できる小型で強力なX線を発生させるX線源を使用してもよい。例えば、米国特許第4,896,341号明細書に示されるようにレーザプラズマ線源と呼ばれるもので、レーザからのレーザ光をターゲットに照射してプラズマを発生させ、プラズマから発生するX線を使用しようとするものであり、もう一つは、1981年版のジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・テクロノロジー・19巻4の11月/12月号1190頁(J.Vac.Sci.Tec.,19(4)Nov/Dec1190(1981))に示されるように、ガス中で放電によってピンチプラズマを発生させ、X線を発生させようとするものである。放電プラズマを用いたX線源は小型であり、X線量が多く、レーザ生成プラズマを用いたX線源に比べて投入電力のX線への変換効率が高く、低コストである。このため、放電プラズマをX線源に用いてもよい。このようなX線源として例えば、Dense PlasmaFocus(DPF)と呼ばれるものがあり、その概要がCymer社のインターネットホームページ(http://www.Cymer.com/)中の論文「EUV(13.5nm) Light generation Using Dense Plasma Focus Device」又は特開平10−319195号公報に開示されている方法でもよい。電子線又はX線照射にあたり照射環境は、できれば酸素不在下とするのが好ましい。放射線の照射環境の酸素不在下とは、実質的な真空中(1Pa以下)ないしは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下をいう。
【0042】
電子線又はX線の照射温度は0℃〜300℃、好ましくは室温℃〜250℃である。照射温度が、室温未満では支持体表面改質が進行しない。一方、照射温度が高くなりすぎるとポリエステル支持体の分解が進み、強度が低下するため照射温度の上限は250℃とするのが好ましい。X線量は、1×103Gy〜1×107Gy程度とするのが好ましい。ポリエステル支持体と下塗り層との接着性を有効にするために、放射線量は1×103Gy以上とするのが好ましい。一方、放射線量を多くしすぎるとポリエステル支持体の分解が進むため放射線量は1×106Gy以下とするのが好ましい。本発明に電子線を用いる場合には、ポリエステル支持体と下塗り層との接着性を改良できる5×104電子ボルト以上、さらには7×105電子ボルト以上のものが好ましい。
【0043】
(下塗り層)
次に表面処理した支持体と感光層の間に設ける下塗り層について述べる。下塗り層としては、第1層として支持体によく接着する層(以下、下塗り第1層と略す)を設け、その上に第2層(以下、下塗り第2層と略す)を塗布するいわゆる重層法と、支持体と感光層とをよく接着する層を一層のみ塗布する単層法とがあるが、いずれの方法を用いてもよい。場合によっては3層以上塗設してもよい。
【0044】
本発明に使用する第1層目又は第2層目の下塗り層に用いられる不飽和ビニル化合物からなる共重合体の具体例として、メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/メタクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマー、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーなどを挙げることができ、特に塩化ビニリデンモノマーを含む共重合体が好ましい。
【0045】
塩化ビニリデン共重合体を使用する場合は、70〜99.9質量%、より好ましくは85〜99質量%の塩化ビニリデン単量体と、0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%のカルボキシル基含有ビニル単量体を含有する共重合体であることが好ましい。上記塩化ビニリデン共重合体には塩化ビニリデン単量体、カルボキシル基含有単量体以外に共重合可能な単量体の繰り返し単位を含有させてもよい。これら共重合可能な単量体の具体例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、スチレン等を挙げることができる。これらの共重合可能な単量体は単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0046】
本発明の不飽和ビニル化合物からなる共重合体の分子量は、質量平均分子量で45,000以下、更に10,000〜45,000が好ましい。本発明の不飽和ビニル共重合体は有機溶媒に溶解した形態でも、水分散物の形態でもどちらでも良いが、水分散物の形態の方が好ましい。この場合、均一構造のポリマー粒子であってもコア部とシェル部で組成の異なったいわゆるコア・シェル構造のポリマー粒子でもよい。本発明の不飽和ビニル化合物の共重合体の単量体単位の配列については限定されず、周期、ランダム、ブロック等のいずれであってもよい。下塗り第1層目又は第2層目に好ましい上記共重合体の具体例を下記に示す。
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
第1層目の組成と第2層目の共重合体の組成は、支持体との接着がよいものを第1層目、第2層目は、感光層又は感光層下層のハレーション防止層との接着性がよいものを選択するのが好ましい。第1層及び第2層目の厚さはそれぞれ10nm〜20μmの厚さの範囲を適宜選択することができる。10nm未満では、共重合体の接着強度を得ることが難しくなり、20μmより厚いと寸法安定の点から好ましくない。
【0050】
(架橋剤)
本発明に使用する架橋剤は、下塗り層や上層の感光層との接着を保持し、傷の付きにくい膜強度を得る。しかし、高い膜強度が得られても架橋反応が遅いと、写真性能が安定せず保存性が劣化する。本発明に使用する即効性で、好ましい架橋剤はイソシアナート基、エポキシ基、又はビニルスルホニル基のいずれかを少なくとも2個有する多官能型架橋剤、あるいはアルコキシシラン基を少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物を挙げることができる。好ましい架橋剤を下記に示す。
(H1)ヘキサメチレンジイソシアナート
(H2)ヘキサメチレンジイソシアナートの3量体
(H3)トリレンジイソシアナート
(H4)フェニレンジイソシアナート
(H5)キシリレンジイソシアナート
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
上記架橋剤は、水、アルコール類、ケトン類、非極性の有機溶媒類に溶解して添加しても良いし、塗布液中に固形のまま添加してもよい。添加量は、結合剤の架橋する基と当量が好ましいが10倍まで増量しても良いし、10分の1以下まで減量してもよい。少なすぎると架橋反応が進まないし、多すぎると未反応の架橋剤が写真性を劣化させるので好ましくない。
【0054】
架橋剤は架橋反応する官能基の当量を添加することが好ましいが、調製する塗布液の濃度や温度、乾燥温度、後処理温度等に応じて理論量の2倍〜10倍量添加して反応収率を高めることができる。また、架橋反応率を高めるために、過剰に架橋剤を添加することによる未反応の架橋剤が写真性能へ悪影響を及ぼしてくるので、化学量論的当量より等倍〜10分の1倍と少なくすることもできる。架橋反応性の高いもの程、屡々、写真性能への影響が大となるものが多いので、ビス体やトリス体のような架橋反応が2段階以上のプロセスで進行するものは、予め第1段階を塗布液に添加する前に済ませておくのが好ましい。架橋剤は、架橋させたい基を有するポリマーを含有する層中に添加することが好ましいが同時上層塗布では、隣接する層中に添加し拡散させて所望の架橋反応をさせてもよい。
【0055】
架橋剤の添加方法は、反応性が高い程架橋反応が早いため塗布液停滞性が悪化するので塗布直前に混合するのが好ましい。混合する方法は、有機溶媒に溶解して添加するか又は水系溶媒に微粒子状に分散して添加することができる。塗布直前混合は、混合された液がスタチックミキサーを通過することで乱流混合される方法や、混合される液が、高速に衝突するジェット噴射混合、超音波混合等を採用することができるが、スタチックミキサーを使用して混合時間から塗布までの時間を10分以内、好ましくは1分以内にするのが好ましい。混合温度は、塗布液の温度と等しいことが好ましいが、5℃〜10℃の範囲以内で混合温度よりも高くても低くてもよい。
【0056】
(乾燥および熱処理)
本発明に係るドライイメージング材料の支持体の一方の諸層を同時に乾燥する条件は、25〜70℃が好ましく、特に30〜60℃が好ましい。低い温度では架橋が進まないため、できるだけ高温にするのが好ましいが、60℃を越えると写真性能、画像保存性や支持体の寸法安定性の劣化が大きくなるので好ましくない。熱風乾燥の場合はドライイメージング材料の表面温度が低く、一定である恒率乾燥過程と熱風温度に徐々に近づく減率過程の条件を適宜選択するのが好ましい。できるだけ恒率乾燥過程の表面温度を下げて乾燥するのが、写真性能への影響が少なく、エネルギーロスも少ないので好ましい。
【0057】
(感光性ハロゲン化銀粒子)
本発明に係るドライイメージング材料の感光層中に含有される感光性ハロゲン化銀は、シングルジェット若しくはダブルジェット法などの写真技術の分野で公知の任意の方法により、例えばアンモニア法乳剤、中性法、酸性法等のいずれかの方法で予め調製し、次いで本発明の他の成分と混合して本発明に用いる組成物中に導入することができる。感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるために、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいものが好ましい。平均粒子サイズで0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。又、ハロゲン化銀の形状としては特に制限はなく、立方体、八面体の所謂正常晶や正常晶でない球状、棒状、平板状等の粒子がある。又ハロゲン化銀組成としても特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。上記ハロゲン化銀の量はハロゲン化銀及び後述の有機銀塩の総量に対し50質量%以下好ましくは25〜0.1質量%、更に好ましくは15〜0.1質量%の間である。
【0058】
(有機銀塩)
本発明に係るドライイメージング材料に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸、ヘテロ有機酸及び酸ポリマーの銀塩などが用いられる。また、配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、エルカ酸等の塩である。
【0059】
(還元剤)
本発明に係るドライイメージング材料に含有される好ましい還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号等の各明細書に記載されており、好ましい還元剤として次のものが挙げられる。
(K−1)1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン
(K−2)ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン
(K−3)2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン
(K−4)4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)
(K−5)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン
前記に示される化合物は、水に分散したり、有機溶媒に溶解して使用する。有機溶媒は、メタノールやエタノール等のアルコール類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等の芳香族系を任意に選択することができる。還元剤の使用量は、銀1モル当り1×10−2〜1×10モル、好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0060】
(結合剤)
本発明に係るドライイメージング材料の感光層又は非感光層に用いられる結合剤としては、ハロゲン化銀、有機銀塩、還元剤が反応する場として好ましい素材が選択される。上記高分子結合剤としては、例えばメタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等を含む極性溶媒に溶解して用いられるポリマーと、水分散系ポリマーとがある。
【0061】
上記ポリマーとしては、有機溶媒に溶解して使用するセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルヘキサナール等のポリビニルアルコール誘導体があり、水に分散や溶解して使用するものとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(水溶性のものと有機溶媒用とがある)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体などが挙げられる。本発明では特にポリアセタール化合物が好ましく、ポリアセタール化合物は、ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるポリビニルアルコールの隣接する水酸基にアルデヒド化合物を反応させるアセタール化により合成される。アセタール化は公知の方法ですることができる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド又はベンズアルデヒド等である。中でも特にアセトアルヒドおよびブチルアルデヒドでアセタール化したものが好ましい。
【0062】
(分光増感色素)
本発明に使用する分光増感色素は、必要により例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号等の各公報、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号等の各明細書に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は例えば、Research Disclosure Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号等の各公報に記載の化合物が好ましく用いられる。
【0063】
(AI層又はBC層に使用される染料)
本発明に係るドライイメージング材料は、必要により該ドライイメージング材料のイラジエーション防止用又はハレーション防止用のAI層又はBC層が設けられ、該AI層又はBC層に用いられる染料としては画像露光光を吸収する染料であればよいが、好ましくは米国特許第5,384,237号明細書等に記載される熱消色性染料が用いられる。用いられる染料が熱消色性でない場合は、使用量がドライイメージング材料に画像障害を及ぼさない範囲に限定されるが、熱消色性染料であれば必要にして十分な量の染料を添加することができる。
【0064】
(色調剤)
本発明に係るドライイメージング材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はResearch Disclosure第17029号に開示されており、次のものがある。
【0065】
フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン)、キナゾリンジオン類;ベンズオキサジン、ナフトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンズオキサジン−(MeV/2,4−ジオン));ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)。
【0066】
(マット剤)
マット剤としてはシリカやポリメタクリル酸メチルが使用される。マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。本発明においてマット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。本発明に用いられるマット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。本発明のマット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0067】
(支持体)
本発明に係るドライイメージング材料の支持体は、ポリエステル支持体であるが、PETやPEN等のプラスチックフィルムなどの支持体が挙げられる。
【0068】
〈画像露光〉
本発明に係るドライイメージング材料に画像形成を行う際の画像露光は、例えば、発光波長が660nm、670nm、780nm、810nm、830nmの何れかのレーザ走査露光により行うことが好ましいが、ドライイメージング材料の露光面と走査レーザ光のなす角が垂直になることがないレーザ走査露光機を用いることが好ましい。レーザ走査角度は、好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度である。ドライイメージング材料にレーザ光が走査されるときの該ドライイメージング材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。このようなレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。本発明における露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦マルチモードのレーザ露光とすることにより縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、前記の方法の他、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、などの方法がある。なお、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0069】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の実施の態様はこれらにより限定されない。
【0070】
実施例1
〈ハロゲン化銀粒子乳剤Aの調製〉
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと、(98/2)のモル比の臭化カリウムおよび沃化カリウムを0.435モル含む水溶液370mlとをpAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加し、NaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.03μm、投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後、フェノキシエタノール0.1gを加え、ハロゲン化銀粒子乳剤Aを321g得た。
【0071】
〈有機銀塩の調製〉
3980mlの純水にベヘン酸111.4g、アラキジン酸83.8g、ステアリン酸54.9gを80℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し(pH9.8)、濃硝酸6.9mlを加えた後(pH9.3)、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、前記ハロゲン化銀粒子乳剤Aの28g(銀0.038モルを含む)と純水390mlを添加し5分間攪拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに20分攪拌し、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、最後に遠心分離脱水後40℃15分間で乾燥した。
【0072】
(BC層側塗布)
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレート支持体の塗布面に12mW/cm2・分のコロナ放電処理を施し、以下の添加剤を加えて調製したメチルエチルケトン溶媒塗布液を以下の付き量になるように、BC層およびBC層の保護層を2層同時塗布乾燥をした。
【0073】
(感光層側の下塗り層およびAI層、感光層、感光層の保護層の塗布)
感光層側の下塗り層は、BC層塗布の反対側の支持体表面にそれぞれ表1記載の処理量でコロナ放電処理(mW/cm2・分)、プラズマ放電処理(2.45GHzのマイクロ波でヘリウムガス雰囲気下常温処理)(mW/cm2・分)、紫外線照射処理(波長:193nm)(mJ/cm2・分)、電子線照射処理(eV/cm2・分)又はX線照射処理(kGy/cm2・分)を施した後(表1中では処理量単位を省略)、後述の単位付き量になるように下塗り塗布液を支持体上に塗布加工して形成された。上記下塗り塗布液としては、100m2分の共重合体、架橋剤、酸化剤および場合によっては触媒を含む水溶液を3Lに仕上げたものが用いられた。電解重合は、表1記載の塗布機(表中、塗布機の種類についてキャスティング塗布機をP1、ディップ塗布機P2、スライド塗布機をP3で示した)を使用し、ステンレス製のキャスティングダイス、浸漬電極およびスライドダイスを陰極に、搬送ローラーを陽極となるよう配置し、塗布液の温度を約25℃に保ちつつ電解重合により下塗り層を形成した。この間、電解重合条件として陽極電位は標準水素電極に対して表1記載の電位(単位は飽和カロメル電極に対しての電位V)又は電流の強さ(単位mA又はA)であった。PET支持体上に下記付き量となるように下塗り第1層目、第2層目を塗布し、それぞれ66℃55秒で乾燥して試料101〜122を得た。上記試料101〜122上にAI層、感光層、感光層の保護層の3層を同時重層塗布し60℃2分間で乾燥して表2記載の試料201〜222を得た。AI層、感光層および感光層の保護層は、それぞれ下記付き量になるように100m2分の素材を予めメチルエチルケトン溶液に添加して200ml(液温20℃)に仕上げたものを用いて塗布加工して得られた。
【0074】
【0075】
【化11】
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
(写真性能の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を25℃で45%RHの雰囲気下に3日間保存し、810nmの半導体レーザ露光用の感光計で露光し、露光後熱現像装置を用いて(感光層側熱ドラム接触)120℃で8秒間加熱し、感度およびカブリをマクベス濃度計(TD−904)により測定した。カブリは未露光部の濃度を感度はカブリより0.3高い濃度を与える露光量の、逆数で評価し、試料201を基準(100)として相対評価で表し、得られた値を表2に示した。
【0079】
(保存性の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を23℃40%RHの雰囲気下に3日間保存した後、酸化アルミニウムと酸化珪素を1:1で蒸着したポリエチレン製防湿袋に密閉し40℃2週間保存した後に開封し、前記と同様の写真性能の評価方法の露光現像を行い、カブリの増大値を求め、得られた値を表2に示した。
【0080】
(帯電防止性能の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を20℃20%RHの部屋に18時間放置した後、表面を化繊繊維布(ナイロン60%、ポリエステル40%)で5回擦り、これをスチレンビーズ100個(平均粒子径3mm)の上にかざして(接近距離15mm)、ビーズの吸着度合いを評価した。0〜2個の吸着レベルを5、3〜8個の吸着を4、9〜15個の吸着を3、16個〜25個の吸着を2、26個以上を吸着したレベルを1とした。
【0081】
(接着性の評価)
上記のように塗布乾燥して作製した試料201〜222を25℃48%RHで10時間保存後、更に密封包装して33℃で3日間熱処理した後、乳剤層の保護層の上にカッターナイフの刃で(刃角45°)切り込みを入れ、100kPaの荷重を掛けてセロテープ(R)(接着広さ=2cm×2cm)を貼り、自動剥離試験機でセロテープ(R)を剥がしたときの下塗り層の第2層目膜と感光層膜の剥がれた面積状態で評価した。全く剥がれていないレベルを0%、最大に剥がれたレベルを100%と評価した。実用的に問題ないレベルは20%以内である。
【0082】
表1、表2より、導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを含有する下塗り塗布液を支持体上に電解重合しながら塗布した本発明の試料は帯電防止性能が優れていてゴミの付着による画像欠陥がなく、かつカブリ、感度および保存性等の写真性能に優れていることが分かる。さらにはコロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理又はX線処理等の各処理を施した支持体上に下塗り塗布液を塗布した場合、支持体と感光層との接着性が改良され、また下塗り塗布液中に酸化剤、さらには反応促進触媒を含有させることにより感度の増大、カブリの抑制、保存性の向上が認められる。
【0083】
【発明の効果】
本発明のドライイメージング材料の製造方法によれば、帯電防止性能が優れていてゴミの付着による画像欠陥がなく、かつカブリ、感度および保存性等の写真性能に優れたドライイメージング材料が得られる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】キャスティング塗布機を示す概略図である。
【図2】ディップ塗布機を示す概略図である。
【図3】スライド塗布機を示す概略図である。
【符号の説明】
1 塗布液
2 キャスティングダイス
3 搬送ローラー
4 電源
5 支持体
6 浸漬電極
7 スライドダイス
8 搬送ローラー軸
Claims (13)
- 支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤および結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液中に導電性ポリマーを形成する重合性モノマーを存在させ、塗布時に電解重合を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解重合が、電圧5mV〜55Vで行われることを特徴とする請求項1に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解重合が、塗布液の供給側を陰極に、塗布液が塗布されるウエッブ搬送ローラー側を陽極に配置して行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記重合性モノマーが、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、フラン誘導体、アニリン誘導体、テトラザインデン誘導体およびプリン誘導体から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解重合が、酸化剤の存在下に行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記酸化剤が、過酸化水素、有機又は無機過酸化物類および酸化性ハロゲン化物類から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解重合が、酸化反応促進触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記ドライイメージング材料の支持体が、コロナ放電処理又はプラズマ放電処理され、放電処理の雰囲気が1Pa〜1MPaの圧力下であり、雰囲気ガスがアルゴンガス又はヘリウムガスを70%(体積割合)以上含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記ドライイメージング材料の支持体が、X線、紫外線又は電子線処理されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記下塗り層が、芳香族系又は脂肪族系の不飽和ビニル化合物類からなる共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体が、ヒドロキシ基、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基又は活性メチレン基を含むことを特徴とする請求項11に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体が、イソシアナート化合物、ビニルスルホニル化合物、エポキシ化合物又はアルコキシシラン化合物で架橋されていることを特徴とする請求項11に記載のドライイメージング材料の製造方法。
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