JP2004077793A - ドライイメージング材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】支持体上に接着性の高い下塗り層を塗設し、カブリが低く、保存性に優れたドライイメージング材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリエステル支持体をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理及びX線照射処理の中から選択された放射線処理後、該支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤及び結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液を電解酸化処理を行い、次いで該塗布液の塗布、乾燥後に該ポリエステル支持体を80〜230℃のキュアー処理を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエステル支持体をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理及びX線照射処理の中から選択された放射線処理後、該支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤及び結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液を電解酸化処理を行い、次いで該塗布液の塗布、乾燥後に該ポリエステル支持体を80〜230℃のキュアー処理を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像により画像を形成するドライイメージング材料の製造方法に関するもので、更に詳しくはドライイメージング材料の支持体と感光層間の層間接着を写真性能や保存性に影響を与えずに改良する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線撮影による医療画像診断の分野で、ドライ処理システムが普及している。このシステムは、被写体を透過したX線エネルギーをイメージングプレート中の輝尽性蛍光体に吸収させ、紫外線、可視光線、或いは赤外線等で時系列的に輝尽性蛍光体を励起し、蓄積されたX線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号をレーザー光の強度に変換し、このレーザー光でドライイメージング材料中のハロゲン化銀に潜像を形成させ、これを熱現像して被写体又は被検体のX線画像を可視画像として再生することを基本としている。
【0003】
前記ドライシステムに使用されるドライイメージング材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETと略す)やポリエチレンナフタレート(PENと略す)等のポリエステル支持体上に、色素で分光増感された高感度のハロゲン化銀粒子、有機銀塩及び還元剤を含む感光層及び該感光層に向けて照射した光が吸収されずに通過して支持体の界面や中間層や接着層等で乱反射するのを防ぐイラジエーション防止(AIと略す)層或いはバッキング(BCと略す)層から構成され、更には感光層の上やBC層の上に、取り扱い時の傷の付くのを防ぐための保護層が設けられている。BC層を設ける場合には、感光層の下にAI層を設けないこともあるが、両面に感光層を設ける場合には、両面の感光層下部にAI層を設けることが必要となる。
【0004】
上記ドライイメージング材料の各層の結合剤は、各種の添加剤を保持し、熱現像時の酸化還元反応を適切に進行させる場を提供する。微量の水分でも保存性には悪影響を与えるので、できるだけ水分を含まない結合剤が要求される。そのため、スチレン−ブタジエン共重合体やポリビニルアセタール化合物が適用されている。しかし、このような結合剤を選択すると、支持体と感光層間或いは支持体とAI層の接着が弱くなり、剥離し易くなるという問題が生じていた。
【0005】
そこで支持体上に直接上記のAI層、BC層又は感光層等を塗布せず、支持体に下塗り層を設けることで接着性を向上させている。下塗り層の膜強度が弱かったり、支持体への接着性よりも搬送ローラーへの接着性が高いと、搬送ローラーに下塗り膜が一部付着しローラーを汚染し、これが転写して下塗り層を汚染するという問題を引き起こす。そこで、接着性を向上させるためにポリエステル支持体をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理等を行い、該支持体の表面に接着性のよい官能基を露出させて下塗りをしていた。下塗りの接着性を上げるよりも前記放電処理や放射線処理の強度又は処理量を上げると、接着性が増し、ローラー汚染が少なくなるが、放電処理や放射線処理により支持体の表面に生じる新たな副生成物が、カブリを発生させる、又は保存性を劣化せるという問題を引き起こしていた。
【0006】
1975年版ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンスの19巻3315頁(J.App.Polym.Sci.,19,3315(1975))には、コロナ放電処理により安息香酸およびその誘導体(水酸基が1個又は2個置換された安息香酸)、フタル酸およびその誘導体(水酸基が1個又は2個置換されたフタル酸)が生成することが報告されているが、放電処理はその他に蟻酸、蓚酸を発生させ、更に空気中の窒素を酸化してニトロシル化合物、亜酸化窒素、硝酸化合物等を発生させていることが考えられている。いずれの化合物も極微量のためすべての副生成物が同定されているわけではない。また、その中のどの還元物質かは不明であるが、ハロゲン化銀又は有機銀を還元できる物質が生成したと考えられ、これらの還元物質を電気化学的に酸化し、写真的にイナートな物質に変換すればよいとする考えがあった。
【0007】
そのヒントになる別の技術として、アルキルフェノール類からアルキルベンゾキノンを製造しようとする方法が提案されている。例えば、特公昭48−39928号には二酸化鉛を陽極としてフェノール類を電解する例が、また特開昭50−84540号には二酸化鉛あるいは貴金属を陽極としてアルキルフェノール類をアルキルベンゾキノンに電解酸化する例が挙げられている。特開昭59−21389号には陽極として炭素電極を用いる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法はフェノール類に関するものであり、電極への使用は安全性、経済性の面から好ましいものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は支持体上に接着性の高い下塗り層を塗設し、カブリが低く、保存性に優れたドライイメージング材料の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0010】
1)ポリエステル支持体をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理及びX線照射処理の中から選択された放射線処理後、該支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤及び結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液を電解酸化処理を行い、次いで該塗布液の塗布、乾燥後に該ポリエステル支持体を80〜230℃のキュアー処理を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【0011】
2)前記電解酸化処理を電流密度1μA/cm2〜500mA/cm2又は電圧1mV〜20Vで行うことを特徴とする前記1)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0012】
3)前記電解酸化処理をイオン交換膜の存在下で行うことを特徴とする前記1)又は2)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0013】
4)前記電解酸化処理を酸化剤の存在下で行うことを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0014】
5)前記酸化剤が過酸化水素、有機又は無機過酸化物類、酸化性ハロゲン化物類から選択されることを特徴とする前記4)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0015】
6)前記酸化性ハロゲン化物類が前記一般式(1)で示されることを特徴とする前記5)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0016】
7)前記ポリエステル支持体のプラズマ放電処理がマイクロ波プラズマ放電処理又はグロー放電処理であり、該処理圧力が1Pa〜1MPaであり、プラズマ放電処理雰囲気がアルゴンガス又はヘリウムガスを70%(体積割合)以上含むことを特徴とする前記1)〜6)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0017】
8)前記下塗り層が芳香族系又は脂肪族系の不飽和ビニル化合物類からなる共重合体を含むことを特徴とする前記1)〜7)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0018】
9)前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体がヒドロキシル基、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基又は活性メチレン基を含むことを特徴とする前記8)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0019】
10)前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体がイソシアナート化合物、ビニルスルホニル化合物、エポキシ化合物又はアルコキシシラン化合物で架橋されたことを特徴とする前記8)又は9)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0020】
11)前記電解酸化処理を紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理下で行うことを特徴とする前記1)〜10)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0021】
本発明に使用する支持体はポリエステル支持体であり、該支持体の少なくとも一方の側をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理及びX線照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理をしてから、下塗り層、感光層、保護層、バッキング層等の諸層を同時重層塗布又は逐次塗布をする。
【0022】
コロナ放電処理は電極とロール間に交流又は直流の高電圧を印可してコロナ放電を発生させ、その中にフィルムを通過させることによってフィルム表面を処理するものであり、通常、ロールは金属ロール上にハイパロンゴム(ポリエチレンをクロルスルホン化したゴム)、EPTゴム(エチレン・プロピレン・ジエンのターポリマーでEPDMゴムとも言う)、シリコンゴム等の誘電体やセラミックを被覆した誘電体ロールが用いられるが、ポリエステル支持体では誘電体を介さずに直接金属ロールを用いることも可能である。
【0023】
印可する電力はフィルムの厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常、1μW/cm2・分〜200mW/cm2・分、好ましくは100μW/cm2・分〜100mW/cm2・分の電力密度の範囲が用いられる。印可電力が高すぎるとフィルムの特性を損ねたり、しわの発生があったり、表面粗さを損ねるなどの問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0024】
プラズマ放電処理は大気圧プラズマ放電処理や低圧プラズマ放電処理等あるが、大気圧で可能な常圧プラズマ放電処理が好ましい。プラズマ放電処理では、雰囲気ガスとして空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等が好ましい。特に、ヘリウムおよびアルゴンガスが好ましい。雰囲気ガス中に酸素、メタン、二酸化炭素、窒素(窒素雰囲気の場合を除く)、アンモニアを1ppm〜30%(体積割合)含ませてもよい。雰囲気圧力は1Pa〜1MPaが好ましく、大気圧が作業性等から好ましい。しかし、開始電圧が上昇するのでこれを抑えるのに、放電極面に誘電体を挟むこと、雰囲気ガスとしてヘリウム又はアルゴンであること、電源として交流や高周波を使用することが好ましい。周波数として交流周波数から電子レンジ相当の高周波まで選択することができ、50Hz〜100GHzが好ましい。
【0025】
印可する電力はコロナ放電処理と同様、支持体の厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常、1μ/cm2・分〜300mW/cm2・分、好ましくは100μW/cm2・分〜200mW/cm2・分の電力密度の範囲が用いられる。印可電力が高すぎると表面の平滑性を損ねたり、放電による飛散物質汚染等の問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0026】
電子線照射装置、紫外線照射装置及びX線照射装置としては、それぞれ電子線、紫外線およびX線を発生して照射可能な一般的なX線照射装置、紫外線照射装置及び電子線照射装置を用いればよい。紫外線照射の露光波長は400nm以下、特に250nm以下が好ましい。250nm以下の露光波長の光を得るには、KrFエキシマレーザー(約248nm)やArFエキシマレーザー(約193nm)を用いる。従来の水銀ランプやエキシマレーザーによる紫外線に加えて、波長7〜16nm付近の極紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)を用いてもよい。紫外線の照射線量は1mJ〜1kJの範囲が好ましく、1mJ未満では紫外線照射のPET表面の改質効果が発現しないし、1kJ以上ではポリエステル支持体の物性的な劣化(脆弱する)を引き起こす。X線照射装置の場合、高輝度のX線を得るために、シンクロトロン放射光を用いて露光する方法がある。しかし、シンクロトロン放射光源は大掛かりな設備を必要とするため、大規模量産においては有効であるが、試作等にも使用できる小型で強力なX線を発生させるX線源を使用してもよい。
【0027】
例えば、米国特許第4,896,341号に示されるようにレーザープラズマ線源と呼ばれるもので、レーザーからのレーザー光をターゲットに照射してプラズマを発生させ、プラズマから発生するX線を使用しようとするものであり、もう一つは、1981年版のジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・テクロノロジー・19巻4の11月/12月号1190頁(J.Vac.Sci.Tec.,19(4)Nov/Dec1190(1981))に示されるように、ガス中で放電によってピンチプラズマを発生させ、X線を発生させようとするものである。放電プラズマを用いたX線源は小型であり、X線量が多く、レーザー生成プラズマを用いたX線源に比べて投入電力のX線への変換効率が高く、低コストである。このため、放電プラズマをX線源に用いてもよい。このようなX線源として、例えば、Dense Plasma Focus(DPF)と呼ばれるものがあり、その概要がcymer社のインターネットホームページ(http://www.Cymer.com/)中の論文「EUV(13.5nm) Light Generation Using Dense Plasma Focus Device」又は特開平10−319195号に開示されている。
【0028】
電子線又はX線の照射環境はできれば酸素不在下とするのが好ましい。放射線の照射環境の酸素不在下とは、実質的な真空中(1Pa以下)ないしは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下をいう。
【0029】
電子線又はX線の照射温度は0〜300℃、好ましくは室温〜250℃である。照射温度が室温未満では支持体表面改質が進行しない。一方、照射温度が高くなりすぎるとポリエステル支持体の分解が進み、強度低下するため照射温度の上限は250℃とするのが好ましい。X線量は1×103〜1×107Gy程度とするのが好ましい。ポリエステル支持体と下塗りの接着性を有効にするために、放射線量は1×103Gy以上とするのが好ましい。一方、放射線量を多くしすぎると、ポリエステル支持体の分解が進むため放射線量は1×106Gy以下とするのが好ましい。本発明に電子線を用いる場合には、ポリエステル支持体と下塗りの接着性を改良できる5×104電子ボルト以上、更には7×105電子ボルト以上のものが好ましい。
【0030】
本発明は下塗り塗布液を電解酸化する。陽極材料として白金、ステンレス、ニッケル、酸化鉛、炭素、酸化鉄、チタン等が、また陰極材料としては白金、スズ、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、鉛、銅、炭素等が使用できるが、好ましくは陽極材料として白金、ステンレス等が使用できる。
【0031】
本発明の電解酸化は陽極と陰極を隔膜で分離してもよいが、特に分離する必要はなく、単一槽中で行ってもよい。単一層で行う場合について先ず述べる。電解反応は、定電流電解法及び定電圧電解法のいずれをも採用することができるが、装置や操作の簡便さの点で定電流電解法を採用するのが好ましい。電解は直流または交流電解が可能であるが、電流方向を1〜30秒毎に切り替えて行なうこともできる。電流密度は通常1μA/cm2〜500mA/cm2、好ましくは1〜200mA/cm2の範囲とするのがよい。印加する直流電圧としては、1mV〜20V、電流としては1μA/cm2〜100mA/cm2を使用することができる。電気量は用いる電解槽の形状、下塗り塗布液の組成、用いる酸化剤の種類等により異なり、一概には言えないが、通常2〜20F/モル程度、好ましくは2〜8F/モル程度とするのがよい。電流、電圧及び電気量等がこの範囲未満では十分な電解酸化を行うことができず、この範囲より大きいと酸素、オゾン等が多量に発生してくるので好ましくない。
【0032】
次にイオン交換膜を使用する場合の電解酸化について述べる。イオン交換膜の片面に陽極を、他面に陰極を配した固体高分子電解質型水電解セルの陽極側に下塗り塗布液を、陰極側に酸性水溶液を供給し、両極間に直流電圧を印加することができる。陰極側に酸性水溶液を供給することにより、電解水として陽極側に金属イオンを多く含む水を供給した場合において、電解時にイオン交換膜の内部に金属水酸化物が析出しても、この金属水酸化物が酸と反応して金属塩となり、陰極側へ排出され、固体高分子電解質型電解セルの性能劣化を抑制することができる。
【0033】
本発明の下塗り塗布液の酸化電解に使用するイオン交換膜の種類としては、各種陽イオン交換膜が使用できるが、米国デュポン社製のフッ素樹脂をベースにし、スルフォン酸基を有するナフィオンが好ましい。また、電解装置の陽極としては、白金等の白金族金属あるいは二酸化鉛等の金属酸化物が好ましい。更に、電解装置の陰極としては、白金等の白金族金属が好ましい。これらの陽極および陰極に使用する金属等は、単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0034】
また、本発明に係わる電解装置において、陰極側に供給する酸性水溶液の種類としては、塩酸、硝酸、硫酸等の種々の酸を使用することができる。また、その濃度としては、0.05〜2mol/Lの範囲を使用することができる。酸濃度が薄すぎると洗浄効果が少なく、電解電圧が上昇し、酸濃度が濃すぎると陽極側に拡散し、酸が電解されてガスが発生したり、陽極に二酸化鉛等を用いた場合には腐食される。本電解酸化反応は通常−5〜100℃程度、好ましくは0〜60℃程度の温度下に実施される。
【0035】
本発明の下塗り組成物中に使用する酸化剤は、過酸化水素、有機過酸化物類、無機過酸化物類、クロラミン化合物類、酸化性ハロゲン化物類を挙げることができる。過酸化水素の他に過酸化水素の付加物、例えば,NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・2H2O2・2H2Oを挙げることができる。有機過酸化物は脂肪族系又は芳香族系いずれでもよく、分子中に−OO−結合を含み,コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、X線照射処理および下塗り処理等で生じる還元性物質(ハロゲン化銀や有機銀塩を還元するために使用する還元剤を除く)を酸化し、写真的性能に悪影響を与える微量の還元物質、現像物質を無害化するものであればよい。酸化剤の好ましい具体例を下記に示す。
【0036】
(U−1)メチルエチルケトンパーオキサイド
(U−2)シクロヘキサノンパーオキサイド
(U−3)2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサド
(U−4)ビス−3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド
(U−5)ラウロイルパーオキサイド
(U−6)ベンゾイルパーオキサイド
(U−7)クメンハイドロパーオキサイド
(U−8)ジクミルパーオキサイド
(U−9)ジ−t−ブチルパーオキサイド
(U−10)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド
(U−11)2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン
(U−12)t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
(U−13)t−ブチルパーオキシベンゾエート
(U−14)ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート
(U−15)ジイソプロピルパーオキシジカーボネート
(U−16)t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート
クロラミン化合物類
(U−17)クロラミンT(ソディウムパラトルエンスルホンクロラミド)
(U−18)クロラミンB(ソディウムベンゼンスルホンクロラミド)
無機過酸化物
(U−19)K2S2O8
(U−20)K2C2O6
(U−21)K2P2O8
(U−22)K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O
(U−23)4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O
(U−24)Na3[VO(O2)(C2O4)2・6H2O]
(Uー25)KMnO4
(U−26)K2Cr2O7
(U−27)カリウムヘキサシアノ第三鉄酸塩
(U−28)カリウム過沃素酸塩
(U−29)次亜塩素酸ナトリウム
特に好ましい酸化性ハロゲン化物として、ハロメタン化合物を挙げることができる。ハロメタン化合物は1個の分子の中に、ハロメタン基を少なくとも1個有する化合物であり、脂肪族基上に置換されたり、芳香族環やヘテロ環に置換されている。芳香族環やヘテロ環は2価の連結基を介して更に芳香族環やヘテロ環に連結してもよい。芳香族はフェニル基やナフチル基が好ましく、これら環上にハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基等、ヘテロ環基としては、例えば、ピリジン基、ピリミジン基、キノリン基、フラン環基、チオフェン環基、イミダゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基等でこれら環上には、芳香族環と同様な置換基を有してもよい。また、芳香族環やヘテロ環上には、耐拡散性を付与するための基やハロゲン化銀への吸着を促進する基を置換してもよい。ハロメタン基に隣接する基がスルホニル基やカルボニル基が好ましいが、直接芳香族環やヘテロ環上に結合してもよく、結合の方式は限定されない。特に3個のハロゲン原子で置換されたトリハロメタン基のハロゲン原子としては、臭素原子が好ましいが、塩素、フッ素、沃素でもよく、これらの組み合わせでもよい。本発明において、前記酸化性ハロゲン化物類が前記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0037】
前記一般式(1)において、Z1は脂肪族基又はアリール基、X1、X2及びX3は水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。L1は−C(=O)−、−SO−又は−SO2−を表し、mは1〜4の整数、pは0又は1を表す。
【0038】
Z1で表される基は脂肪族基又は環基を表し、芳香族環基の場合は飽和又は不飽和の単環又は縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の基(例えば、アダマンチル基、シクロブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくはアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、フェニル基、ナフチル基である。Z1がヘテロ環基の場合は、N、O又はSの少なくとも一つの原子を含む、3ないし10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。上記ヘテロ環基におけるヘテロ環として、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、ベンズオキサジン、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾールであり、特に好ましくはピペリジン、ピペラジン、ピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンズチアゾールである。Z1が脂肪族基の場合は、炭素数1〜25の飽和又は不飽和の脂肪族基が好ましい。好ましい具体的化合物を下記に示す。
【0039】
【化2】
【0040】
【化3】
【0041】
【化4】
【0042】
上記化合物の添加する位置は下塗り層であればどの層でもよく、第1層又は第2層目、更には第3層目のいずれでもよい。上記化合物を塗布液に添加する方法は公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。上記化合物の添加量は感光層中のハロゲン化銀1モル当たり、10ー6〜10−2モルの範囲に相当する量を下塗り層に添加することができる。前記範囲未満では酸化剤の酸化力が不足し、充分な効果が得られない。又、この範囲より多く添加すると感度が低下して高い濃度を得ることが難しくなる。
【0043】
次に表面処理した支持体と感光層の間に設ける下塗り層について述べる。下塗り層としては、第1層として支持体によく接着する層(以下、下塗り第1層と略す)を設け、その上に第2層(以下、下塗り第2層と略す)を塗布する、いわゆる重層法と、支持体と写真層をよく接着する層を一層のみ塗布する単層法とがあるが、いずれの方法を用いてもよい。場合によっては3層以上塗設してもよい。
【0044】
本発明に使用する不飽和ビニル化合物からなる共重合体第1層目又は第2層目の下塗り層に使用する不飽和ビニル化合物からなる共重合体は、スチレンの如き芳香族ビニルモノマーを繰り返し単位として含む芳香族系とアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートを繰り返し単位として含む脂肪族系共重合体が好ましく、具体的にはメチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/メタクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマー、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーなどを挙げることができる。
【0045】
上記組成の不飽和ビニル化合物からなる共重合体を10nm〜20μmの厚さの下塗り層で両面を被覆した支持体を用いることによって、ポリエステル支持体と感光層の接着性を向上させることができる。ポリエステル支持体と下塗りの接着を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、X線照射処理等を行うと、このとき発生する何らかの還元性物質が下塗り組成分中に存在し、この還元性物質が上層の感光層に拡散することにより、カブリの増大或いは保存性の劣化を引き起こしていることがわかり、酸化剤を存在させて電解処理を行うとカブリの上昇、保存性の劣化を防ぐことができた。しかし、単なる酸化剤の存在のみでは、還元物質を酸化することが充分行えず、酸化剤の反応を促進する紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理を追加することにより一層酸化剤の還元物質の不活性化を効果的に行えることがわかった。
【0046】
酸化剤を活性化する方法として、上記触媒を使用する他に、前述した紫外線、電子線、X線照射等の放射線照射を使用することができる。放射線の強さは下塗り塗布液100mlに対して、紫外線の場合は1mJ〜1kJ、電子線の場合は1eV〜1MeV、X線の場合は1kGy〜1MGyの範囲で使用するのが好ましい。いずれも上記範囲未満では酸化剤の活性化効果が得にくく、上記範囲を超えると塗布液の分解を助長し、下塗り層の膜強度が得られなくなる。酸化剤の反応の活性化は前記触媒と前記放射線照射の併用により行うこともできる。液体に前記放射線処理する方法は、液体を前記放射線の透過率のよいガラス管やプラスチック管に一定の流量で管内を通過させる時に照射する方法が好ましい。
【0047】
下塗り第1層目又は第2層目に用いる好ましい共重合体の具体例を下記に示す。
【0048】
【化5】
【0049】
【化6】
【0050】
第1層目の組成と第2層目の共重合体の組成は、支持体との接着がよいものを第1層目、第2層目は感光層又は感光層下層のハレーション防止層との接着性がよいもを選択するのが好ましい。第1層及び第2層目の厚さはそれぞれ10nm〜20μmの厚さの範囲を適宜選択することができる。10nm未満では共重合体の接着強度を得ることが難しくなり、20μmより厚いと寸法安定の点から好ましくない。
【0051】
本発明に使用する架橋剤は下塗り層や上層の感光層との接着を保持し、傷の付きにくい膜強度を得る。しかし、高い膜強度が得られても架橋反応が遅いと、写真性能が安定せず保存性が劣化する。本発明に使用する即効性で、好ましい架橋剤はイソシアナート基、エポキシ基、又はビニルスルホニル基のいずれかを少なくとも2個有する多官能型架橋剤、あるいはアルコキシシラン基を少なくと1個有するアルコキシシラン化合物を挙げることができる。好ましい架橋剤を下記に示す。
【0052】
(H−1)ヘキサメチレンジイソシアナート
(H−2)ヘキサメチレンジイソシアナートの3量体
(H−3)トリレンジイソシアナート
(H−4)フェニレンジイソシアナート
(H−5)キシリレンジイソシアナート
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
上記架橋剤は水、アルコール類、ケトン類、非極性の有機溶媒類に溶解して添加してもよいし、塗布液中に固形のまま添加してもよい。添加量は結合剤の架橋する基と当量が好ましいが、10倍まで増量してもよいし、10分の1以下まで減量してもよい。少なすぎると架橋反応が進まないし、多すぎると未反応の架橋剤が写真性を劣化させるので好ましくない。
【0056】
架橋剤は架橋反応する可能基の当量を添加することが好ましいが、調製する塗布液の濃度や温度、乾燥温度、後処理温度等に応じて、理論量の2〜10倍量添加して反応収率を高めることができる。また、架橋反応率を高めるために、過剰に架橋剤を添加することによる未反応の架橋剤が写真性能へ悪影響を及ぼしてくるので、化学量論的当量より等倍〜10分の1倍と少なくすることもできる。架橋反応性の高いもの程、屡々、写真性能への影響が大となるものが多いので、ビス体やトリス体のような架橋反応が2段階以上のプロセスで進行するものは、予め第1段階を塗布液に添加する前に済ませておくのが好ましい。架橋剤は架橋させたい基を有するポリマーを含有する層中に添加することが好ましいが、同時重層塗布では、隣接する層中に添加し拡散させて所望の架橋反応をさせてもよい。
【0057】
架橋剤の添加方法は、反応性が高い程架橋反応が早いため塗布液停滞性が悪化するので塗布直前に混合するのが好ましい。混合する方法は、有機溶媒に溶解して添加するか又は微粒子状で添加することができる。塗布直前混合は、混合された液がスタチックミキサーを通過することで乱流混合される方法や、混合される液が、高速に衝突するジェット噴射混合、超音波混合等を採用することができるが、スタチックミキサーを使用して混合時間から塗布までの時間を10分以内、好ましくは1分以内にするのが好ましい。混合温度は、塗布液の温度と等しいことが好ましいが、5〜10℃の範囲以内で混合温度よりも高くても低くてもよい。
【0058】
ドライイメージング材料の支持体の一方の諸層を同時に乾燥する条件は、25〜70℃が好ましく、特に30〜60℃が好ましい。低い温度では架橋が進まないため、できるだけ高温にするのが好ましいが、60℃を越えると写真性能、画像保存性や支持体の寸法安定性の劣化が大きくなるので好ましくない。熱風乾燥の場合はドライイメージング材料の表面温度が低く、一定である恒率乾燥過程と熱風温度に徐々に近づく減率過程の条件を適宜選択するのが好ましい。できるだけ恒率乾燥過程の表面温度を下げて乾燥するのが、写真性能への影響が少なく、エネルギーロスも少ないので好ましい。
【0059】
本発明のドライイメージング材料の感光層中に含有される感光性ハロゲン化銀は、シングルジェット若しくはダブルジェット法などの写真技術の分野で公知の任意の方法により、例えば、アンモニア法乳剤、中性法、酸性法等のいずれかの方法で予め調製し、次いで本発明の他の成分と混合して本発明に用いる組成物中に導入することができる。感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるために、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいものが好ましい。平均粒子サイズで0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。
【0060】
又、ハロゲン化銀の形状としては特に制限はなく、立方体、八面体の所謂正常晶や正常晶でない球状、棒状、平板状等の粒子がある。又ハロゲン化銀組成としても特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。上記ハロゲン化銀の量はハロゲン化銀及び後述の有機銀塩の総量に対し50質量%以下、好ましくは25〜0.1質量%、更に好ましくは15〜0.1質量%である。
【0061】
本発明のドライイメージング材料に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸、ヘテロ有機酸及び酸ポリマーの銀塩などが用いられる。また、配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、エルカ酸等の塩である。
【0062】
本発明のドライイメージング材料に含有される好ましい還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号等に記載されており、好ましい還元剤として次のものが挙げられる。
【0063】
(K−1)1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン
(K−2)ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン
(K−3)2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン
(K−4)4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)
(K−5)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン
前記に示される化合物は水に分散したり、有機溶媒に溶解して使用する。有機溶媒はメタノールやエタノール等のアルコール類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等の芳香族系を任意に選択することができる。還元剤の使用量は、銀1モル当り1×10−2〜1×10モル、好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0064】
本発明のドライイメージング材料の感光層又は非感光層に用いられる高分子結合剤としては、ハロゲン化銀、有機銀塩、還元剤が反応する場として好ましい素材が選択される。上記高分子結合剤としては、例えば、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等を含む極性溶媒に溶解して用いられるポリマーと、水分散系ポリマーとがある。
【0065】
上記ポリマーとしては、有機溶媒に溶解して使用するセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルヘキサナール等のポリビニルアルコール誘導体があり、水に分散や溶解して使用するものとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(水溶性のものと有機溶媒用とがある。)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体などが挙げられる。
【0066】
本発明では特にポリアセタール化合物が好ましく、ポリアセタール化合物は、ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるポリビニルアルコールの隣接する水酸基にアルデヒド化合物を反応させるアセタール化により合成される。アセタール化は公知の方法ですることができる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド又はベンズアルデヒド等である。中でも、特にアセトアルヒドおよびブチルアルデヒドでアセタール化したものが好ましい。
【0067】
本発明に使用する分光増感色素は、必要により、例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号等に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は、例えば、Research Disclosure Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号記載の化合物が好ましく用いられる。
【0068】
本発明のドライイメージング材料は、必要により該ドライイメージング材料のイラジエーション防止用又はハレーション防止用のAI層又はBC層が設けられ、該AI層又はBC層に用いられる染料としては、画像露光光を吸収する染料であればよいが、好ましくは米国特許第5,384,237号に記載される熱消色性染料が用いられる。用いられる染料が熱消色性でない場合は、使用量がドライイメージング材料に画像障害を及ぼさない範囲に限定されるが、熱消色性染料であれば必要にして十分な量の染料を添加することができる。
【0069】
本発明のドライイメージング材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例は、Research Disclosure第17029号に開示されており、次のものがある。
【0070】
フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン)、キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナフトキサジン誘導体、ベンズオキサジン−2,4−ジオン類、ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)。
【0071】
マット剤としてはシリカやポリメタクリル酸メチルが使用される。マット剤の形状は定形、不定形どちらでもよいが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。マット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。用いられるマット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0072】
支持体はポリエステル支持体であるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムなどの支持体が挙げられる。
【0073】
本発明のドライイメージング材料に画像形成を行う際の画像露光は、例えば、発光波長が660nm、670nm、780nm、810nm、830nmの何れかのレーザー走査露光により行うことが好ましいが、ドライイメージング材料の露光面と走査レーザー光のなす角が垂直になることがないレーザー走査露光機を用いることが好ましい。レーザー走査角度は好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度である。
【0074】
ドライイメージング材料にレーザー光が走査されるときの該ドライイメージング材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。このようなレーザー走査露光を行うことにより、干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。露光は縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦マルチモードのレーザー露光とすることにより縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、前記の方法の他、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかける等の方法がある。なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0075】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の実施の態様はこれらにより限定されない。
【0076】
実施例1
〈ハロゲン化銀粒子乳剤Aの調製〉
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(98/2)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを0.435モル含む水溶液370mlを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加し、NaOHでpHを5.0に調整して平均粒子サイズ0.03μm、投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ、脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、ハロゲン化銀粒子乳剤Aを321g得た。
【0077】
〈有機銀塩の調製〉
3980mlの純水にベヘン酸111.4g、アラキジン酸83.8g、ステアリン酸54.9gを80℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5モルの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し(pH9.8)、濃硝酸6.9mlを加えた後(pH9.3)、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。この有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、前記ハロゲン化銀粒子乳剤Aの28g(銀0.038モルを含む)と純水390mlを添加し、5分間攪拌した。次に1モルの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、更に20分攪拌し、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、最後に遠心分離脱水後40℃15分間で乾燥した。
【0078】
〈BC層側塗布〉
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレート支持体の塗布面に、0.8mW/cm2・分のコロナ放電処理を施し、以下の添加剤を加えて調製したメチルエチルケトン溶媒塗布液を以下の付き量になるように、BC層およびBC層の保護層を2層同時塗布、乾燥をした。
【0079】
〈感光層側塗布〉
感光層側の塗布は、BC層塗布の反対側の支持体表面に、それぞれ表1記載のコロナ放電処理(mW/cm2・分)、プラズマ放電処理(2.45GHzのマイクロ波でヘリウムガス雰囲気下常温処理:W/cm2・分)、紫外線照射処理(波長:193nm:mJ/cm2)、電子線照射処理(eV/cm2・分)、X線照射処理(kGy/cm2・分)を施した後(表1中では/cm2・分を省略)、下記単位付き量になるように下塗り塗布組成液を調製した。組成液の調製は、100m2分の共重合体、架橋剤、酸化剤を含む水溶液を3Lに仕上げた。
【0080】
下塗り第2層目の水溶液を連続流れの電解酸化処理装置内を通過させた。電解酸化処理は、白金製の電極を二つのビーカーにそれぞれ取り付け、陽極側となるビーカーに下塗り塗布液を、陰極側のビーカー内には1M硫酸水溶液1000mlを加えた。電解液の温度を約25℃に保ちつつ電解反応を実施した。この間、陽極電位は標準水素電極に対して表1記載の電位(単位は飽和カロメル電極に対しての電位V)、電流の強さであった。イオン交換膜を使用する場合は、米国デュポン社製のナフィオン115を使用し、陽極室と陰極室に分け、陽極室に下塗り塗布液を導入し、電解酸化処理をした。
【0081】
電解酸化処理後の電子線照射処理又はX線照射処理は、下塗り組成液を透明なパイレックス(R)ガラス管(内径5mmφ、長さ1m)内を1分間に10mlの早さで通過させ、この通過時間内に照射された量を記載した。前記放射線処理後の組成液をPET支持体上に下記付き量となるように第1層目、第2層目を塗布し、それぞれ80℃、55秒で乾燥した。乾燥後の下塗り済みフィルムを表1記載の条件でキュアー処理した。キュアー後、前記下塗り済みフィルム上に、AI層、感光層、感光層の保護層の3層を同時重層塗布し、60℃2分間で乾燥した。AI層、感光層および感光層の保護層は、それぞれ下記付き量になるように100m2分の素材を予めメチルエチルケトン溶液に添加して200ml(液温20℃)に仕上げた。
【0082】
【0083】
【化9】
【0084】
【化10】
【0085】
【表1】
【0086】
〈写真性能の評価〉
上記作製した試料を25℃で45%RHの雰囲気下に3日間保存したものと、更に該試料をアルミ蒸着ポリエステル袋に封入密閉し、55℃で3日間保存した試料の両者を、810nmの半導体レーザー露光用の感光計で露光し、露光後熱現像装置を用いて(感光層側熱ドラム接触)120℃で8秒間加熱し、感度およびカブリをマクベス濃度計(TD−904)により測定した。カブリは未露光部の濃度を、感度はカブリより0.3高い濃度を与える露光量の逆数で評価し、試料101を基準(100)として相対評価で表した。
【0087】
〈保存性の評価〉
塗布乾燥した試料を23℃で40%RHの雰囲気下に3日間保存した後、酸化アルミニウムと酸化珪素を1:1で蒸着したポリエチレン製防湿袋に密閉し、40℃で2週間保存した後に開封し、前記写真性能の評価方法の露光現像を行い、カブリの増大値を求めた。
【0088】
〈接着性の評価〉
表1記載の下塗りを施した支持体上にBC層、BC層保護層を同時重層塗布し、支持体の反対側にAI層、感光層、保護層を同時重層塗布後、25℃の相対湿度48%で10時間保存後、更に密封包装して33℃で3日間熱処理した後、乳剤層の保護層の上にカッターナイフの刃で(刃角45°)切り込みを入れ、100kPaの荷重を掛けてセロテープ(R)(接着広さ=2cm×2cm)を貼り、自動剥離試験機でセロテープ(R)を剥がしたときの下塗り層の第2層目膜と感光層膜の剥がれた面積状態で評価した。
【0089】
全く剥がれていないレベルを0%、最大に剥がれたレベルを100%と評価した。実用的に問題ないレベルは20%以内である。結果を表2に示す。
【0090】
表1、2より支持体表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理等の各処理を施し、下塗り組成分に酸化剤を含有させ、該下塗り組成液を該支持体上に塗布した後キュアーすると、カブリの増加、感度の低下及び保存性を劣化させず、膜面に接着強度のある熱現像試料が作製できたことが分かる。また、酸化剤としてトリハロメタン化合物を使用すると、特に保存性に優れることが分かる。
【0091】
【表2】
【0092】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって、ドライイメージング材料において、下塗り層の高い接着性を維持しつつ、カブリ、保存性を改良することができた。
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像により画像を形成するドライイメージング材料の製造方法に関するもので、更に詳しくはドライイメージング材料の支持体と感光層間の層間接着を写真性能や保存性に影響を与えずに改良する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線撮影による医療画像診断の分野で、ドライ処理システムが普及している。このシステムは、被写体を透過したX線エネルギーをイメージングプレート中の輝尽性蛍光体に吸収させ、紫外線、可視光線、或いは赤外線等で時系列的に輝尽性蛍光体を励起し、蓄積されたX線エネルギーを蛍光として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号をレーザー光の強度に変換し、このレーザー光でドライイメージング材料中のハロゲン化銀に潜像を形成させ、これを熱現像して被写体又は被検体のX線画像を可視画像として再生することを基本としている。
【0003】
前記ドライシステムに使用されるドライイメージング材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETと略す)やポリエチレンナフタレート(PENと略す)等のポリエステル支持体上に、色素で分光増感された高感度のハロゲン化銀粒子、有機銀塩及び還元剤を含む感光層及び該感光層に向けて照射した光が吸収されずに通過して支持体の界面や中間層や接着層等で乱反射するのを防ぐイラジエーション防止(AIと略す)層或いはバッキング(BCと略す)層から構成され、更には感光層の上やBC層の上に、取り扱い時の傷の付くのを防ぐための保護層が設けられている。BC層を設ける場合には、感光層の下にAI層を設けないこともあるが、両面に感光層を設ける場合には、両面の感光層下部にAI層を設けることが必要となる。
【0004】
上記ドライイメージング材料の各層の結合剤は、各種の添加剤を保持し、熱現像時の酸化還元反応を適切に進行させる場を提供する。微量の水分でも保存性には悪影響を与えるので、できるだけ水分を含まない結合剤が要求される。そのため、スチレン−ブタジエン共重合体やポリビニルアセタール化合物が適用されている。しかし、このような結合剤を選択すると、支持体と感光層間或いは支持体とAI層の接着が弱くなり、剥離し易くなるという問題が生じていた。
【0005】
そこで支持体上に直接上記のAI層、BC層又は感光層等を塗布せず、支持体に下塗り層を設けることで接着性を向上させている。下塗り層の膜強度が弱かったり、支持体への接着性よりも搬送ローラーへの接着性が高いと、搬送ローラーに下塗り膜が一部付着しローラーを汚染し、これが転写して下塗り層を汚染するという問題を引き起こす。そこで、接着性を向上させるためにポリエステル支持体をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理等を行い、該支持体の表面に接着性のよい官能基を露出させて下塗りをしていた。下塗りの接着性を上げるよりも前記放電処理や放射線処理の強度又は処理量を上げると、接着性が増し、ローラー汚染が少なくなるが、放電処理や放射線処理により支持体の表面に生じる新たな副生成物が、カブリを発生させる、又は保存性を劣化せるという問題を引き起こしていた。
【0006】
1975年版ジャーナル・オブ・アプライド・ポリマー・サイエンスの19巻3315頁(J.App.Polym.Sci.,19,3315(1975))には、コロナ放電処理により安息香酸およびその誘導体(水酸基が1個又は2個置換された安息香酸)、フタル酸およびその誘導体(水酸基が1個又は2個置換されたフタル酸)が生成することが報告されているが、放電処理はその他に蟻酸、蓚酸を発生させ、更に空気中の窒素を酸化してニトロシル化合物、亜酸化窒素、硝酸化合物等を発生させていることが考えられている。いずれの化合物も極微量のためすべての副生成物が同定されているわけではない。また、その中のどの還元物質かは不明であるが、ハロゲン化銀又は有機銀を還元できる物質が生成したと考えられ、これらの還元物質を電気化学的に酸化し、写真的にイナートな物質に変換すればよいとする考えがあった。
【0007】
そのヒントになる別の技術として、アルキルフェノール類からアルキルベンゾキノンを製造しようとする方法が提案されている。例えば、特公昭48−39928号には二酸化鉛を陽極としてフェノール類を電解する例が、また特開昭50−84540号には二酸化鉛あるいは貴金属を陽極としてアルキルフェノール類をアルキルベンゾキノンに電解酸化する例が挙げられている。特開昭59−21389号には陽極として炭素電極を用いる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法はフェノール類に関するものであり、電極への使用は安全性、経済性の面から好ましいものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は支持体上に接着性の高い下塗り層を塗設し、カブリが低く、保存性に優れたドライイメージング材料の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0010】
1)ポリエステル支持体をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理及びX線照射処理の中から選択された放射線処理後、該支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤及び結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液を電解酸化処理を行い、次いで該塗布液の塗布、乾燥後に該ポリエステル支持体を80〜230℃のキュアー処理を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
【0011】
2)前記電解酸化処理を電流密度1μA/cm2〜500mA/cm2又は電圧1mV〜20Vで行うことを特徴とする前記1)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0012】
3)前記電解酸化処理をイオン交換膜の存在下で行うことを特徴とする前記1)又は2)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0013】
4)前記電解酸化処理を酸化剤の存在下で行うことを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0014】
5)前記酸化剤が過酸化水素、有機又は無機過酸化物類、酸化性ハロゲン化物類から選択されることを特徴とする前記4)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0015】
6)前記酸化性ハロゲン化物類が前記一般式(1)で示されることを特徴とする前記5)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0016】
7)前記ポリエステル支持体のプラズマ放電処理がマイクロ波プラズマ放電処理又はグロー放電処理であり、該処理圧力が1Pa〜1MPaであり、プラズマ放電処理雰囲気がアルゴンガス又はヘリウムガスを70%(体積割合)以上含むことを特徴とする前記1)〜6)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0017】
8)前記下塗り層が芳香族系又は脂肪族系の不飽和ビニル化合物類からなる共重合体を含むことを特徴とする前記1)〜7)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0018】
9)前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体がヒドロキシル基、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基又は活性メチレン基を含むことを特徴とする前記8)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0019】
10)前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体がイソシアナート化合物、ビニルスルホニル化合物、エポキシ化合物又はアルコキシシラン化合物で架橋されたことを特徴とする前記8)又は9)に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0020】
11)前記電解酸化処理を紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理下で行うことを特徴とする前記1)〜10)のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
【0021】
本発明に使用する支持体はポリエステル支持体であり、該支持体の少なくとも一方の側をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理及びX線照射処理から選ばれる少なくとも1種の処理をしてから、下塗り層、感光層、保護層、バッキング層等の諸層を同時重層塗布又は逐次塗布をする。
【0022】
コロナ放電処理は電極とロール間に交流又は直流の高電圧を印可してコロナ放電を発生させ、その中にフィルムを通過させることによってフィルム表面を処理するものであり、通常、ロールは金属ロール上にハイパロンゴム(ポリエチレンをクロルスルホン化したゴム)、EPTゴム(エチレン・プロピレン・ジエンのターポリマーでEPDMゴムとも言う)、シリコンゴム等の誘電体やセラミックを被覆した誘電体ロールが用いられるが、ポリエステル支持体では誘電体を介さずに直接金属ロールを用いることも可能である。
【0023】
印可する電力はフィルムの厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常、1μW/cm2・分〜200mW/cm2・分、好ましくは100μW/cm2・分〜100mW/cm2・分の電力密度の範囲が用いられる。印可電力が高すぎるとフィルムの特性を損ねたり、しわの発生があったり、表面粗さを損ねるなどの問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0024】
プラズマ放電処理は大気圧プラズマ放電処理や低圧プラズマ放電処理等あるが、大気圧で可能な常圧プラズマ放電処理が好ましい。プラズマ放電処理では、雰囲気ガスとして空気、窒素、ヘリウム、アルゴン等が好ましい。特に、ヘリウムおよびアルゴンガスが好ましい。雰囲気ガス中に酸素、メタン、二酸化炭素、窒素(窒素雰囲気の場合を除く)、アンモニアを1ppm〜30%(体積割合)含ませてもよい。雰囲気圧力は1Pa〜1MPaが好ましく、大気圧が作業性等から好ましい。しかし、開始電圧が上昇するのでこれを抑えるのに、放電極面に誘電体を挟むこと、雰囲気ガスとしてヘリウム又はアルゴンであること、電源として交流や高周波を使用することが好ましい。周波数として交流周波数から電子レンジ相当の高周波まで選択することができ、50Hz〜100GHzが好ましい。
【0025】
印可する電力はコロナ放電処理と同様、支持体の厚み、ポリマー組成、表面特性等によっても異なり、必要な接着性に合わせて条件を選定する必要があるが、通常、1μ/cm2・分〜300mW/cm2・分、好ましくは100μW/cm2・分〜200mW/cm2・分の電力密度の範囲が用いられる。印可電力が高すぎると表面の平滑性を損ねたり、放電による飛散物質汚染等の問題が発生することがあり、注意する必要がある。
【0026】
電子線照射装置、紫外線照射装置及びX線照射装置としては、それぞれ電子線、紫外線およびX線を発生して照射可能な一般的なX線照射装置、紫外線照射装置及び電子線照射装置を用いればよい。紫外線照射の露光波長は400nm以下、特に250nm以下が好ましい。250nm以下の露光波長の光を得るには、KrFエキシマレーザー(約248nm)やArFエキシマレーザー(約193nm)を用いる。従来の水銀ランプやエキシマレーザーによる紫外線に加えて、波長7〜16nm付近の極紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)を用いてもよい。紫外線の照射線量は1mJ〜1kJの範囲が好ましく、1mJ未満では紫外線照射のPET表面の改質効果が発現しないし、1kJ以上ではポリエステル支持体の物性的な劣化(脆弱する)を引き起こす。X線照射装置の場合、高輝度のX線を得るために、シンクロトロン放射光を用いて露光する方法がある。しかし、シンクロトロン放射光源は大掛かりな設備を必要とするため、大規模量産においては有効であるが、試作等にも使用できる小型で強力なX線を発生させるX線源を使用してもよい。
【0027】
例えば、米国特許第4,896,341号に示されるようにレーザープラズマ線源と呼ばれるもので、レーザーからのレーザー光をターゲットに照射してプラズマを発生させ、プラズマから発生するX線を使用しようとするものであり、もう一つは、1981年版のジャーナル・オブ・バキューム・サイエンス・テクロノロジー・19巻4の11月/12月号1190頁(J.Vac.Sci.Tec.,19(4)Nov/Dec1190(1981))に示されるように、ガス中で放電によってピンチプラズマを発生させ、X線を発生させようとするものである。放電プラズマを用いたX線源は小型であり、X線量が多く、レーザー生成プラズマを用いたX線源に比べて投入電力のX線への変換効率が高く、低コストである。このため、放電プラズマをX線源に用いてもよい。このようなX線源として、例えば、Dense Plasma Focus(DPF)と呼ばれるものがあり、その概要がcymer社のインターネットホームページ(http://www.Cymer.com/)中の論文「EUV(13.5nm) Light Generation Using Dense Plasma Focus Device」又は特開平10−319195号に開示されている。
【0028】
電子線又はX線の照射環境はできれば酸素不在下とするのが好ましい。放射線の照射環境の酸素不在下とは、実質的な真空中(1Pa以下)ないしは窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下をいう。
【0029】
電子線又はX線の照射温度は0〜300℃、好ましくは室温〜250℃である。照射温度が室温未満では支持体表面改質が進行しない。一方、照射温度が高くなりすぎるとポリエステル支持体の分解が進み、強度低下するため照射温度の上限は250℃とするのが好ましい。X線量は1×103〜1×107Gy程度とするのが好ましい。ポリエステル支持体と下塗りの接着性を有効にするために、放射線量は1×103Gy以上とするのが好ましい。一方、放射線量を多くしすぎると、ポリエステル支持体の分解が進むため放射線量は1×106Gy以下とするのが好ましい。本発明に電子線を用いる場合には、ポリエステル支持体と下塗りの接着性を改良できる5×104電子ボルト以上、更には7×105電子ボルト以上のものが好ましい。
【0030】
本発明は下塗り塗布液を電解酸化する。陽極材料として白金、ステンレス、ニッケル、酸化鉛、炭素、酸化鉄、チタン等が、また陰極材料としては白金、スズ、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、鉛、銅、炭素等が使用できるが、好ましくは陽極材料として白金、ステンレス等が使用できる。
【0031】
本発明の電解酸化は陽極と陰極を隔膜で分離してもよいが、特に分離する必要はなく、単一槽中で行ってもよい。単一層で行う場合について先ず述べる。電解反応は、定電流電解法及び定電圧電解法のいずれをも採用することができるが、装置や操作の簡便さの点で定電流電解法を採用するのが好ましい。電解は直流または交流電解が可能であるが、電流方向を1〜30秒毎に切り替えて行なうこともできる。電流密度は通常1μA/cm2〜500mA/cm2、好ましくは1〜200mA/cm2の範囲とするのがよい。印加する直流電圧としては、1mV〜20V、電流としては1μA/cm2〜100mA/cm2を使用することができる。電気量は用いる電解槽の形状、下塗り塗布液の組成、用いる酸化剤の種類等により異なり、一概には言えないが、通常2〜20F/モル程度、好ましくは2〜8F/モル程度とするのがよい。電流、電圧及び電気量等がこの範囲未満では十分な電解酸化を行うことができず、この範囲より大きいと酸素、オゾン等が多量に発生してくるので好ましくない。
【0032】
次にイオン交換膜を使用する場合の電解酸化について述べる。イオン交換膜の片面に陽極を、他面に陰極を配した固体高分子電解質型水電解セルの陽極側に下塗り塗布液を、陰極側に酸性水溶液を供給し、両極間に直流電圧を印加することができる。陰極側に酸性水溶液を供給することにより、電解水として陽極側に金属イオンを多く含む水を供給した場合において、電解時にイオン交換膜の内部に金属水酸化物が析出しても、この金属水酸化物が酸と反応して金属塩となり、陰極側へ排出され、固体高分子電解質型電解セルの性能劣化を抑制することができる。
【0033】
本発明の下塗り塗布液の酸化電解に使用するイオン交換膜の種類としては、各種陽イオン交換膜が使用できるが、米国デュポン社製のフッ素樹脂をベースにし、スルフォン酸基を有するナフィオンが好ましい。また、電解装置の陽極としては、白金等の白金族金属あるいは二酸化鉛等の金属酸化物が好ましい。更に、電解装置の陰極としては、白金等の白金族金属が好ましい。これらの陽極および陰極に使用する金属等は、単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0034】
また、本発明に係わる電解装置において、陰極側に供給する酸性水溶液の種類としては、塩酸、硝酸、硫酸等の種々の酸を使用することができる。また、その濃度としては、0.05〜2mol/Lの範囲を使用することができる。酸濃度が薄すぎると洗浄効果が少なく、電解電圧が上昇し、酸濃度が濃すぎると陽極側に拡散し、酸が電解されてガスが発生したり、陽極に二酸化鉛等を用いた場合には腐食される。本電解酸化反応は通常−5〜100℃程度、好ましくは0〜60℃程度の温度下に実施される。
【0035】
本発明の下塗り組成物中に使用する酸化剤は、過酸化水素、有機過酸化物類、無機過酸化物類、クロラミン化合物類、酸化性ハロゲン化物類を挙げることができる。過酸化水素の他に過酸化水素の付加物、例えば,NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・2H2O2・2H2Oを挙げることができる。有機過酸化物は脂肪族系又は芳香族系いずれでもよく、分子中に−OO−結合を含み,コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、X線照射処理および下塗り処理等で生じる還元性物質(ハロゲン化銀や有機銀塩を還元するために使用する還元剤を除く)を酸化し、写真的性能に悪影響を与える微量の還元物質、現像物質を無害化するものであればよい。酸化剤の好ましい具体例を下記に示す。
【0036】
(U−1)メチルエチルケトンパーオキサイド
(U−2)シクロヘキサノンパーオキサイド
(U−3)2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサド
(U−4)ビス−3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド
(U−5)ラウロイルパーオキサイド
(U−6)ベンゾイルパーオキサイド
(U−7)クメンハイドロパーオキサイド
(U−8)ジクミルパーオキサイド
(U−9)ジ−t−ブチルパーオキサイド
(U−10)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド
(U−11)2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン
(U−12)t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート
(U−13)t−ブチルパーオキシベンゾエート
(U−14)ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート
(U−15)ジイソプロピルパーオキシジカーボネート
(U−16)t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート
クロラミン化合物類
(U−17)クロラミンT(ソディウムパラトルエンスルホンクロラミド)
(U−18)クロラミンB(ソディウムベンゼンスルホンクロラミド)
無機過酸化物
(U−19)K2S2O8
(U−20)K2C2O6
(U−21)K2P2O8
(U−22)K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O
(U−23)4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O
(U−24)Na3[VO(O2)(C2O4)2・6H2O]
(Uー25)KMnO4
(U−26)K2Cr2O7
(U−27)カリウムヘキサシアノ第三鉄酸塩
(U−28)カリウム過沃素酸塩
(U−29)次亜塩素酸ナトリウム
特に好ましい酸化性ハロゲン化物として、ハロメタン化合物を挙げることができる。ハロメタン化合物は1個の分子の中に、ハロメタン基を少なくとも1個有する化合物であり、脂肪族基上に置換されたり、芳香族環やヘテロ環に置換されている。芳香族環やヘテロ環は2価の連結基を介して更に芳香族環やヘテロ環に連結してもよい。芳香族はフェニル基やナフチル基が好ましく、これら環上にハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基等、ヘテロ環基としては、例えば、ピリジン基、ピリミジン基、キノリン基、フラン環基、チオフェン環基、イミダゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基等でこれら環上には、芳香族環と同様な置換基を有してもよい。また、芳香族環やヘテロ環上には、耐拡散性を付与するための基やハロゲン化銀への吸着を促進する基を置換してもよい。ハロメタン基に隣接する基がスルホニル基やカルボニル基が好ましいが、直接芳香族環やヘテロ環上に結合してもよく、結合の方式は限定されない。特に3個のハロゲン原子で置換されたトリハロメタン基のハロゲン原子としては、臭素原子が好ましいが、塩素、フッ素、沃素でもよく、これらの組み合わせでもよい。本発明において、前記酸化性ハロゲン化物類が前記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0037】
前記一般式(1)において、Z1は脂肪族基又はアリール基、X1、X2及びX3は水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルフォニル基、アリール基を表すが、少なくとも一つはハロゲン原子である。L1は−C(=O)−、−SO−又は−SO2−を表し、mは1〜4の整数、pは0又は1を表す。
【0038】
Z1で表される基は脂肪族基又は環基を表し、芳香族環基の場合は飽和又は不飽和の単環又は縮環していてもよく、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の基(例えば、アダマンチル基、シクロブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくはアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、フェニル基、ナフチル基である。Z1がヘテロ環基の場合は、N、O又はSの少なくとも一つの原子を含む、3ないし10員の飽和もしくは不飽和のヘテロ環基であり、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。上記ヘテロ環基におけるヘテロ環として、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、ベンズオキサジン、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、より好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンであり、更に好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾールであり、特に好ましくはピペリジン、ピペラジン、ピリジン、チアジアゾール、キノリン、ベンズチアゾールである。Z1が脂肪族基の場合は、炭素数1〜25の飽和又は不飽和の脂肪族基が好ましい。好ましい具体的化合物を下記に示す。
【0039】
【化2】
【0040】
【化3】
【0041】
【化4】
【0042】
上記化合物の添加する位置は下塗り層であればどの層でもよく、第1層又は第2層目、更には第3層目のいずれでもよい。上記化合物を塗布液に添加する方法は公知の添加法に従って添加することができる。即ち、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等の極性溶媒等に溶解して添加することができる。又、サンドミル分散やジェットミル分散、超音波分散やホモジナイザー分散により1μm以下の微粒子にして水や有機溶媒に分散して添加することもできる。微粒子分散技術については多くの技術が開示されているが、これらに準じて分散することができる。上記化合物の添加量は感光層中のハロゲン化銀1モル当たり、10ー6〜10−2モルの範囲に相当する量を下塗り層に添加することができる。前記範囲未満では酸化剤の酸化力が不足し、充分な効果が得られない。又、この範囲より多く添加すると感度が低下して高い濃度を得ることが難しくなる。
【0043】
次に表面処理した支持体と感光層の間に設ける下塗り層について述べる。下塗り層としては、第1層として支持体によく接着する層(以下、下塗り第1層と略す)を設け、その上に第2層(以下、下塗り第2層と略す)を塗布する、いわゆる重層法と、支持体と写真層をよく接着する層を一層のみ塗布する単層法とがあるが、いずれの方法を用いてもよい。場合によっては3層以上塗設してもよい。
【0044】
本発明に使用する不飽和ビニル化合物からなる共重合体第1層目又は第2層目の下塗り層に使用する不飽和ビニル化合物からなる共重合体は、スチレンの如き芳香族ビニルモノマーを繰り返し単位として含む芳香族系とアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートを繰り返し単位として含む脂肪族系共重合体が好ましく、具体的にはメチルメタクリレート/エチルメタクリレート/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/スチレン/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/アクリル酸コポリマー、アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘプチル、ヘキシル、ペンチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシルなど)アクリレート/メタクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/アクリル酸コポリマー、スチレン/ブタジエン/ジビニルベンゼン/メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレート/塩化ビニル/アクリル酸コポリマー、塩化ビニリデン/エチルアクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸コポリマーなどを挙げることができる。
【0045】
上記組成の不飽和ビニル化合物からなる共重合体を10nm〜20μmの厚さの下塗り層で両面を被覆した支持体を用いることによって、ポリエステル支持体と感光層の接着性を向上させることができる。ポリエステル支持体と下塗りの接着を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、X線照射処理等を行うと、このとき発生する何らかの還元性物質が下塗り組成分中に存在し、この還元性物質が上層の感光層に拡散することにより、カブリの増大或いは保存性の劣化を引き起こしていることがわかり、酸化剤を存在させて電解処理を行うとカブリの上昇、保存性の劣化を防ぐことができた。しかし、単なる酸化剤の存在のみでは、還元物質を酸化することが充分行えず、酸化剤の反応を促進する紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理を追加することにより一層酸化剤の還元物質の不活性化を効果的に行えることがわかった。
【0046】
酸化剤を活性化する方法として、上記触媒を使用する他に、前述した紫外線、電子線、X線照射等の放射線照射を使用することができる。放射線の強さは下塗り塗布液100mlに対して、紫外線の場合は1mJ〜1kJ、電子線の場合は1eV〜1MeV、X線の場合は1kGy〜1MGyの範囲で使用するのが好ましい。いずれも上記範囲未満では酸化剤の活性化効果が得にくく、上記範囲を超えると塗布液の分解を助長し、下塗り層の膜強度が得られなくなる。酸化剤の反応の活性化は前記触媒と前記放射線照射の併用により行うこともできる。液体に前記放射線処理する方法は、液体を前記放射線の透過率のよいガラス管やプラスチック管に一定の流量で管内を通過させる時に照射する方法が好ましい。
【0047】
下塗り第1層目又は第2層目に用いる好ましい共重合体の具体例を下記に示す。
【0048】
【化5】
【0049】
【化6】
【0050】
第1層目の組成と第2層目の共重合体の組成は、支持体との接着がよいものを第1層目、第2層目は感光層又は感光層下層のハレーション防止層との接着性がよいもを選択するのが好ましい。第1層及び第2層目の厚さはそれぞれ10nm〜20μmの厚さの範囲を適宜選択することができる。10nm未満では共重合体の接着強度を得ることが難しくなり、20μmより厚いと寸法安定の点から好ましくない。
【0051】
本発明に使用する架橋剤は下塗り層や上層の感光層との接着を保持し、傷の付きにくい膜強度を得る。しかし、高い膜強度が得られても架橋反応が遅いと、写真性能が安定せず保存性が劣化する。本発明に使用する即効性で、好ましい架橋剤はイソシアナート基、エポキシ基、又はビニルスルホニル基のいずれかを少なくとも2個有する多官能型架橋剤、あるいはアルコキシシラン基を少なくと1個有するアルコキシシラン化合物を挙げることができる。好ましい架橋剤を下記に示す。
【0052】
(H−1)ヘキサメチレンジイソシアナート
(H−2)ヘキサメチレンジイソシアナートの3量体
(H−3)トリレンジイソシアナート
(H−4)フェニレンジイソシアナート
(H−5)キシリレンジイソシアナート
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
上記架橋剤は水、アルコール類、ケトン類、非極性の有機溶媒類に溶解して添加してもよいし、塗布液中に固形のまま添加してもよい。添加量は結合剤の架橋する基と当量が好ましいが、10倍まで増量してもよいし、10分の1以下まで減量してもよい。少なすぎると架橋反応が進まないし、多すぎると未反応の架橋剤が写真性を劣化させるので好ましくない。
【0056】
架橋剤は架橋反応する可能基の当量を添加することが好ましいが、調製する塗布液の濃度や温度、乾燥温度、後処理温度等に応じて、理論量の2〜10倍量添加して反応収率を高めることができる。また、架橋反応率を高めるために、過剰に架橋剤を添加することによる未反応の架橋剤が写真性能へ悪影響を及ぼしてくるので、化学量論的当量より等倍〜10分の1倍と少なくすることもできる。架橋反応性の高いもの程、屡々、写真性能への影響が大となるものが多いので、ビス体やトリス体のような架橋反応が2段階以上のプロセスで進行するものは、予め第1段階を塗布液に添加する前に済ませておくのが好ましい。架橋剤は架橋させたい基を有するポリマーを含有する層中に添加することが好ましいが、同時重層塗布では、隣接する層中に添加し拡散させて所望の架橋反応をさせてもよい。
【0057】
架橋剤の添加方法は、反応性が高い程架橋反応が早いため塗布液停滞性が悪化するので塗布直前に混合するのが好ましい。混合する方法は、有機溶媒に溶解して添加するか又は微粒子状で添加することができる。塗布直前混合は、混合された液がスタチックミキサーを通過することで乱流混合される方法や、混合される液が、高速に衝突するジェット噴射混合、超音波混合等を採用することができるが、スタチックミキサーを使用して混合時間から塗布までの時間を10分以内、好ましくは1分以内にするのが好ましい。混合温度は、塗布液の温度と等しいことが好ましいが、5〜10℃の範囲以内で混合温度よりも高くても低くてもよい。
【0058】
ドライイメージング材料の支持体の一方の諸層を同時に乾燥する条件は、25〜70℃が好ましく、特に30〜60℃が好ましい。低い温度では架橋が進まないため、できるだけ高温にするのが好ましいが、60℃を越えると写真性能、画像保存性や支持体の寸法安定性の劣化が大きくなるので好ましくない。熱風乾燥の場合はドライイメージング材料の表面温度が低く、一定である恒率乾燥過程と熱風温度に徐々に近づく減率過程の条件を適宜選択するのが好ましい。できるだけ恒率乾燥過程の表面温度を下げて乾燥するのが、写真性能への影響が少なく、エネルギーロスも少ないので好ましい。
【0059】
本発明のドライイメージング材料の感光層中に含有される感光性ハロゲン化銀は、シングルジェット若しくはダブルジェット法などの写真技術の分野で公知の任意の方法により、例えば、アンモニア法乳剤、中性法、酸性法等のいずれかの方法で予め調製し、次いで本発明の他の成分と混合して本発明に用いる組成物中に導入することができる。感光性ハロゲン化銀は、画像形成後の白濁を低く抑えるために、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいものが好ましい。平均粒子サイズで0.1μm以下、好ましくは0.01〜0.1μm、特に0.02〜0.08μmが好ましい。
【0060】
又、ハロゲン化銀の形状としては特に制限はなく、立方体、八面体の所謂正常晶や正常晶でない球状、棒状、平板状等の粒子がある。又ハロゲン化銀組成としても特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。上記ハロゲン化銀の量はハロゲン化銀及び後述の有機銀塩の総量に対し50質量%以下、好ましくは25〜0.1質量%、更に好ましくは15〜0.1質量%である。
【0061】
本発明のドライイメージング材料に含有される有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸、ヘテロ有機酸及び酸ポリマーの銀塩などが用いられる。また、配位子が4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機又は無機の銀塩錯体も有用である。銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、エルカ酸等の塩である。
【0062】
本発明のドライイメージング材料に含有される好ましい還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同3,773,512号、同3,593,863号等に記載されており、好ましい還元剤として次のものが挙げられる。
【0063】
(K−1)1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン
(K−2)ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン
(K−3)2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン
(K−4)4,4−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチルフェノール)
(K−5)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン
前記に示される化合物は水に分散したり、有機溶媒に溶解して使用する。有機溶媒はメタノールやエタノール等のアルコール類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、トルエンやキシレン等の芳香族系を任意に選択することができる。還元剤の使用量は、銀1モル当り1×10−2〜1×10モル、好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0064】
本発明のドライイメージング材料の感光層又は非感光層に用いられる高分子結合剤としては、ハロゲン化銀、有機銀塩、還元剤が反応する場として好ましい素材が選択される。上記高分子結合剤としては、例えば、メタノールやエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトンやアセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシドやジメチルホルムアミド等を含む極性溶媒に溶解して用いられるポリマーと、水分散系ポリマーとがある。
【0065】
上記ポリマーとしては、有機溶媒に溶解して使用するセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルヘキサナール等のポリビニルアルコール誘導体があり、水に分散や溶解して使用するものとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(水溶性のものと有機溶媒用とがある。)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、カゼイン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体などが挙げられる。
【0066】
本発明では特にポリアセタール化合物が好ましく、ポリアセタール化合物は、ポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるポリビニルアルコールの隣接する水酸基にアルデヒド化合物を反応させるアセタール化により合成される。アセタール化は公知の方法ですることができる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド又はベンズアルデヒド等である。中でも、特にアセトアルヒドおよびブチルアルデヒドでアセタール化したものが好ましい。
【0067】
本発明に使用する分光増感色素は、必要により、例えば、特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号等に記載された増感色素が使用できる。本発明に使用される有用な増感色素は、例えば、Research Disclosure Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item1831X項(1978年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば、特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号記載の化合物が好ましく用いられる。
【0068】
本発明のドライイメージング材料は、必要により該ドライイメージング材料のイラジエーション防止用又はハレーション防止用のAI層又はBC層が設けられ、該AI層又はBC層に用いられる染料としては、画像露光光を吸収する染料であればよいが、好ましくは米国特許第5,384,237号に記載される熱消色性染料が用いられる。用いられる染料が熱消色性でない場合は、使用量がドライイメージング材料に画像障害を及ぼさない範囲に限定されるが、熱消色性染料であれば必要にして十分な量の染料を添加することができる。
【0069】
本発明のドライイメージング材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例は、Research Disclosure第17029号に開示されており、次のものがある。
【0070】
フタラジノン、フタラジノン誘導体又はこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン)、キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナフトキサジン誘導体、ベンズオキサジン−2,4−ジオン類、ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)。
【0071】
マット剤としてはシリカやポリメタクリル酸メチルが使用される。マット剤の形状は定形、不定形どちらでもよいが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。マット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。用いられるマット剤は、平均粒径が0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0〜8.0μmである。マット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
【0072】
支持体はポリエステル支持体であるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムなどの支持体が挙げられる。
【0073】
本発明のドライイメージング材料に画像形成を行う際の画像露光は、例えば、発光波長が660nm、670nm、780nm、810nm、830nmの何れかのレーザー走査露光により行うことが好ましいが、ドライイメージング材料の露光面と走査レーザー光のなす角が垂直になることがないレーザー走査露光機を用いることが好ましい。レーザー走査角度は好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度である。
【0074】
ドライイメージング材料にレーザー光が走査されるときの該ドライイメージング材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザー入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。このようなレーザー走査露光を行うことにより、干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることができる。露光は縦マルチである走査レーザー光を発するレーザー走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦マルチモードのレーザー露光とすることにより縦単一モードの走査レーザー光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、前記の方法の他、合波による戻り光を利用する、高周波重畳をかける等の方法がある。なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0075】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の実施の態様はこれらにより限定されない。
【0076】
実施例1
〈ハロゲン化銀粒子乳剤Aの調製〉
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(98/2)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウムを0.435モル含む水溶液370mlを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加し、NaOHでpHを5.0に調整して平均粒子サイズ0.03μm、投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ、脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、ハロゲン化銀粒子乳剤Aを321g得た。
【0077】
〈有機銀塩の調製〉
3980mlの純水にベヘン酸111.4g、アラキジン酸83.8g、ステアリン酸54.9gを80℃で溶解した。次に高速で攪拌しながら1.5モルの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し(pH9.8)、濃硝酸6.9mlを加えた後(pH9.3)、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。この有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、前記ハロゲン化銀粒子乳剤Aの28g(銀0.038モルを含む)と純水390mlを添加し、5分間攪拌した。次に1モルの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、更に20分攪拌し、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、最後に遠心分離脱水後40℃15分間で乾燥した。
【0078】
〈BC層側塗布〉
厚さ175μmのポリエチレンテレフタレート支持体の塗布面に、0.8mW/cm2・分のコロナ放電処理を施し、以下の添加剤を加えて調製したメチルエチルケトン溶媒塗布液を以下の付き量になるように、BC層およびBC層の保護層を2層同時塗布、乾燥をした。
【0079】
〈感光層側塗布〉
感光層側の塗布は、BC層塗布の反対側の支持体表面に、それぞれ表1記載のコロナ放電処理(mW/cm2・分)、プラズマ放電処理(2.45GHzのマイクロ波でヘリウムガス雰囲気下常温処理:W/cm2・分)、紫外線照射処理(波長:193nm:mJ/cm2)、電子線照射処理(eV/cm2・分)、X線照射処理(kGy/cm2・分)を施した後(表1中では/cm2・分を省略)、下記単位付き量になるように下塗り塗布組成液を調製した。組成液の調製は、100m2分の共重合体、架橋剤、酸化剤を含む水溶液を3Lに仕上げた。
【0080】
下塗り第2層目の水溶液を連続流れの電解酸化処理装置内を通過させた。電解酸化処理は、白金製の電極を二つのビーカーにそれぞれ取り付け、陽極側となるビーカーに下塗り塗布液を、陰極側のビーカー内には1M硫酸水溶液1000mlを加えた。電解液の温度を約25℃に保ちつつ電解反応を実施した。この間、陽極電位は標準水素電極に対して表1記載の電位(単位は飽和カロメル電極に対しての電位V)、電流の強さであった。イオン交換膜を使用する場合は、米国デュポン社製のナフィオン115を使用し、陽極室と陰極室に分け、陽極室に下塗り塗布液を導入し、電解酸化処理をした。
【0081】
電解酸化処理後の電子線照射処理又はX線照射処理は、下塗り組成液を透明なパイレックス(R)ガラス管(内径5mmφ、長さ1m)内を1分間に10mlの早さで通過させ、この通過時間内に照射された量を記載した。前記放射線処理後の組成液をPET支持体上に下記付き量となるように第1層目、第2層目を塗布し、それぞれ80℃、55秒で乾燥した。乾燥後の下塗り済みフィルムを表1記載の条件でキュアー処理した。キュアー後、前記下塗り済みフィルム上に、AI層、感光層、感光層の保護層の3層を同時重層塗布し、60℃2分間で乾燥した。AI層、感光層および感光層の保護層は、それぞれ下記付き量になるように100m2分の素材を予めメチルエチルケトン溶液に添加して200ml(液温20℃)に仕上げた。
【0082】
【0083】
【化9】
【0084】
【化10】
【0085】
【表1】
【0086】
〈写真性能の評価〉
上記作製した試料を25℃で45%RHの雰囲気下に3日間保存したものと、更に該試料をアルミ蒸着ポリエステル袋に封入密閉し、55℃で3日間保存した試料の両者を、810nmの半導体レーザー露光用の感光計で露光し、露光後熱現像装置を用いて(感光層側熱ドラム接触)120℃で8秒間加熱し、感度およびカブリをマクベス濃度計(TD−904)により測定した。カブリは未露光部の濃度を、感度はカブリより0.3高い濃度を与える露光量の逆数で評価し、試料101を基準(100)として相対評価で表した。
【0087】
〈保存性の評価〉
塗布乾燥した試料を23℃で40%RHの雰囲気下に3日間保存した後、酸化アルミニウムと酸化珪素を1:1で蒸着したポリエチレン製防湿袋に密閉し、40℃で2週間保存した後に開封し、前記写真性能の評価方法の露光現像を行い、カブリの増大値を求めた。
【0088】
〈接着性の評価〉
表1記載の下塗りを施した支持体上にBC層、BC層保護層を同時重層塗布し、支持体の反対側にAI層、感光層、保護層を同時重層塗布後、25℃の相対湿度48%で10時間保存後、更に密封包装して33℃で3日間熱処理した後、乳剤層の保護層の上にカッターナイフの刃で(刃角45°)切り込みを入れ、100kPaの荷重を掛けてセロテープ(R)(接着広さ=2cm×2cm)を貼り、自動剥離試験機でセロテープ(R)を剥がしたときの下塗り層の第2層目膜と感光層膜の剥がれた面積状態で評価した。
【0089】
全く剥がれていないレベルを0%、最大に剥がれたレベルを100%と評価した。実用的に問題ないレベルは20%以内である。結果を表2に示す。
【0090】
表1、2より支持体表面にコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理等の各処理を施し、下塗り組成分に酸化剤を含有させ、該下塗り組成液を該支持体上に塗布した後キュアーすると、カブリの増加、感度の低下及び保存性を劣化させず、膜面に接着強度のある熱現像試料が作製できたことが分かる。また、酸化剤としてトリハロメタン化合物を使用すると、特に保存性に優れることが分かる。
【0091】
【表2】
【0092】
【発明の効果】
本発明の製造方法によって、ドライイメージング材料において、下塗り層の高い接着性を維持しつつ、カブリ、保存性を改良することができた。
Claims (11)
- ポリエステル支持体をコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理、電子線照射処理及びX線照射処理の中から選択された放射線処理後、該支持体上に下塗り層を塗設し、次いで感光性ハロゲン化銀粒子、有機銀塩、還元剤及び結合剤を含有する感光層を設けたドライイメージング材料の製造方法において、該下塗り層の塗布液を電解酸化処理を行い、次いで該塗布液の塗布、乾燥後に該ポリエステル支持体を80〜230℃のキュアー処理を行うことを特徴とするドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解酸化処理を電流密度1μA/cm2〜500mA/cm2又は電圧1mV〜20Vで行うことを特徴とする請求項1に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解酸化処理をイオン交換膜の存在下で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解酸化処理を酸化剤の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記酸化剤が過酸化水素、有機又は無機過酸化物類、酸化性ハロゲン化物類から選択されることを特徴とする請求項4に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記ポリエステル支持体のプラズマ放電処理がマイクロ波プラズマ放電処理又はグロー放電処理であり、該処理圧力が1Pa〜1MPaであり、プラズマ放電処理雰囲気がアルゴンガス又はヘリウムガスを70%(体積割合)以上含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記下塗り層が芳香族系又は脂肪族系の不飽和ビニル化合物類からなる共重合体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体がヒドロキシル基、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基又は活性メチレン基を含むことを特徴とする請求項8に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記不飽和ビニル化合物類からなる共重合体がイソシアナート化合物、ビニルスルホニル化合物、エポキシ化合物又はアルコキシシラン化合物で架橋されたことを特徴とする請求項8又は9に記載のドライイメージング材料の製造方法。
- 前記電解酸化処理を紫外線照射処理、電子線照射処理又はX線照射処理下で行うことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のドライイメージング材料の製造方法。
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