JP2004109410A - レターデーション上昇剤、セルロースエステルフィルム、光学補償シート、楕円偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブリードアウトを生じることなく、所望のレターデーションを光学フィルムに付与し得るレターデーション上昇剤を提供する。
【解決手段】1種類以上の化合物がその構造内に分子間相互作用を発現する官能基の組み合わせを有することによって形成された分子錯合体からなり、前記分子錯合体が下記一般式(1)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物を少なくともその構成要素として含むセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤である(式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN(R14)を;R11〜R14は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12およびR11とR13は各々互いに結合して環構造を形成していてもよい)。
【化1】
【選択図】 なし
【解決手段】1種類以上の化合物がその構造内に分子間相互作用を発現する官能基の組み合わせを有することによって形成された分子錯合体からなり、前記分子錯合体が下記一般式(1)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物を少なくともその構成要素として含むセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤である(式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN(R14)を;R11〜R14は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12およびR11とR13は各々互いに結合して環構造を形成していてもよい)。
【化1】
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤、ならびにそれを用いたセルロースエステルフィルム、光学補償シート、楕円偏光板および液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、液晶セル、偏光素子および光学補償シート(位相差板)からなる。透過型液晶表示装置では、二枚の偏光素子を液晶セルの両側に取り付け、一枚または二枚の光学補償シートを液晶セルと偏光素子との間に配置する。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚の光学補償シート、そして一枚の偏光素子の順に配置する。液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いで、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、反射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。偏光素子は、一般に、偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を取り付けた構成を有する。
【0003】
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折フィルムが従来から使用されていた。延伸複屈折フィルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に液晶性分子(特にディスコティック液晶性分子)から形成された光学的異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。光学的異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。一般に、重合性基を有する液晶性分子を用いて、重合反応によって配向状態を固定する。液晶性分子は、大きな複屈折率を有する。そして、液晶性分子には、多様な配向形態がある。液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0004】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定する。液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。例えば、TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号および国際特許出願WO96/37804号の各明細書に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0005】
液晶性分子には様々な配向形態があるが、液晶性分子の光学異方性のみでは、液晶セルを充分に光学的に補償できない場合もある。そのような場合には、光学補償シートの透明支持体として光学異方性のものを用いて、液晶性分子の光学異方性と共に液晶セルを光学的に補償する方法が提案されている(米国特許5646703号明細書記載)。光学異方性透明支持体としては、具体的には合成ポリマーの延伸フィルムが用いられている。光学異方性支持体として従来から用いられている合成ポリマー延伸フィルムは、支持体としての機能に問題がある。また、合成ポリマー延伸フィルムを透明支持体として用いると、光学補償シートと偏光板を一体化した楕円偏光板を製造することも難しい。
【0006】
セルロースエステルフィルムは、合成ポリマー延伸フィルムと比較して、支持体としての機能に優れている。光学的異方性が高い(高いレターデーション値を有する)セルロースエステルフィルムが得られれば、光学的異方性が要求される光学補償シートの用途においても、セルロースエステルフィルムを使用することができる。しかし、従来、レターデーション値が低いセルロースエステルフィルムが優れたセルロースエステルフィルムであるとされていたため、セルロースエステルフィルムのレターデーション値を低くする技術については詳細に検討されているものの、レターデーション値を高くする技術についてはほとんど検討されていていないのが実情である。近年、特定の構造のレターデーション上昇剤を含有するセルロースエステルフィルムが提案された(特許文献1参照)。このセルロースエステルフィルムは、レターデーション上昇剤の添加により、光学異方性を向上させたものであり、光学補償シートの支持体として有用である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−166144号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記公報に開示されているレターデーション上昇剤は、その機能が充分に高いものではなく、セルロースエステルフィルムに所望の光学異方性を発現させるためには、使用量を増やす必要がある。レターデーション上昇剤の使用量を増やすと、レターデーション上昇剤のブリードアウト(フィルム表面からの化合物の析出)という新たな問題が生じる。
【0009】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、ブリードアウトを生じることなく、所望のレターデーションを光学フィルムに付与し得るレターデーション上昇剤を提供することを課題とする。また、本発明は、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを提供することを課題とする。さらに本発明は、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを用いた、光学補償機能に優れた光学補償シートおよび楕円偏光板を提供することを課題とする。また、本発明は、前記レターデーション上昇剤を含む光学異方性透明支持体を用いた、画像表示特性に優れた(特に視野角が拡大されたおよび色相変化の発生が少ない)液晶表示装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(17)の手段により解決した。
(1) 分子間相互作用を発現する官能基の組み合わせを有することによって分子錯合体を形成し得る1種以上の化合物からなり、下記一般式(1)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物を少なくともその構成要素として含むセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0011】
一般式(I)
【化14】
【0012】
式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN(R14)を表わし、R11〜R14は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12およびR11とR13は各々互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0013】
(2) 前記ケト−エノール互変異性可能な化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である(1)に記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0014】
一般式(II)
【化15】
【0015】
式中、Q21およびQ22は酸素原子、硫黄原子またはN(R25)を表し、R21〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23およびR21とR24は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0016】
(3) 前記ケト−エノール互変異性可能な化合物が、下記一般式(TAM)で表わされる化合物である(1)に記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0017】
一般式(TAM)
【化16】
【0018】
式中、R1、R2およびR3は各々独立に置換基を表わし、l、mおよびnは各々独立に1〜5の整数を表わす。
【0019】
(4) 下記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を構成要素として含む(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0020】
一般式(III)
【化17】
【0021】
式中、R31〜R33は各々独立に水素原子または置換基を表し、Q31およびQ32は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R31とR32およびR32とR33はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0022】
一般式(IV)
【化18】
【0023】
式中、R41〜R44は各々独立に水素原子または置換基を表し、Q41は酸素原子または硫黄原子を表し、R41とR42、R41とR43およびR42とR44はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0024】
一般式(V)
【化19】
【0025】
式中、R51〜R54は各々独立に水素原子または置換基を表し、R51とR52およびR51とR53はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0026】
一般式(VI)
【化20】
【0027】
式中、R61〜R63は各々独立に水素原子または置換基を表し、Q61は酸素原子または硫黄原子を表す。R61とR62は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0028】
一般式(VII)
【化21】
【0029】
式中、Q71〜Q73は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R71〜R73は各々独立に水素原子または置換基を表す。R71とR72およびR72とR73は各々互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0030】
一般式(VIII)
【化22】
【0031】
式中、Q81〜Q83は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R84)を表し、R81〜R84は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0032】
一般式(IX)
【化23】
【0033】
式中、Q91およびQ92は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R94)を表し、R91〜R94は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0034】
一般式(X)
【化24】
【0035】
式中、Q101およびQ102は各々独立に酸素原子、硫黄原子を表し、Q103は酸素原子、硫黄原子またはN(R103)を表す。R101〜R103は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0036】
一般式(XI)
【化25】
【0037】
式中、Q111およびQ112は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R111〜R114は各々独立に水素原子または置換基を表す。R111とR112、R112とR113、R113とR114、R111とR113およびR112とR114はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0038】
(5) 前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物の少なくとも1種と、前記一般式(III)〜(XI)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とからなるセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
(6) 前記一般式(1)で表されるケトーエノール互変異性可能な化合物の少なくとも1種と、下記一般式(XII)で表される互変異性可能な化合物の少なくとも1種とからなるセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0039】
一般式(XII)
【化26】
【0040】
式中、R121は置換基を表し、Q121およびQ122は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。
【0041】
(7) 前記ケト−エノール互変異性可能な化合物が、エノール型となったときにそのpkaが2〜12である(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
(8) 前記分子錯合体の示差走査熱量測定(DSC)法における熱的相転移温度パターンが、その構成要素の化合物の熱的相転移温度パターンとは互いに異なる(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0042】
(9) セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルム。
(10) セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムからなる光学補償シート。
(11) セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムと、該フィルムの上方に液晶性分子を含有する光学異方性層とを有する光学補償シート。
(12) 前記液晶分子がディスコティク液晶分子である(11)に記載の光学補償シート。
【0043】
(13) 透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であって、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである楕円偏光板。
(14) 液晶セルおよび両側に配置された二枚の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であり、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである液晶表示装置。
(15) 液晶セルがVAモード、OCBモードまたはTNモードの液晶セルである(14)に記載の液晶表示装置。
(16) 前記セルロースエステルがセルロースアセテート、セルロース混合脂肪酸エステル、セルロース芳香族エステルおよびセルロースと脂肪族酸および芳香族酸との混合酸エステルである(9)〜(15)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム、光学補償シート、楕円偏光板または液晶表示装置。
(17) 前記セルロースアセテートフィルムが20〜120μmの厚さを有する(9)〜(16)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム、光学補償シート、楕円偏光板または液晶表示装置。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のレターデーション上昇剤は、分子間相互作用を発現する官能基の組み合わせを有することによって分子錯合体を形成し得る1種以上の化合物からなり、下記一般式(1)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物を少なくともその構成要素として含むことを特徴とする。
【0045】
一般式(I)
【化27】
【0046】
式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN(R14)を表す。R11〜R14は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12およびR11とR13は互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
【0047】
前記一般式(I)中、R11〜R14でそれぞれ表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよび複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。さらに、置換基R11〜R13には、これらの置換基から選ばれる1種類以上の置換基によって置換されたこれらの置換基も含まれる。
【0048】
さらに詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)]、
【0049】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、複素環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換の複素環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
【0050】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
【0051】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
【0052】
複素環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
【0053】
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールおよび複素環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表す。
【0054】
上記の置換基中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の置換基の1種以上で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。より具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0055】
前記一般式(I)において、R11とR12およびR11とR13はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成していてもよい。R11とR12とが連結して形成可能な環構造としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の複素環、およびこれらのベンゾ縮合環、プリン環、ナフチリジン環、プテリジン環等の複素芳香族縮合環が挙げられる。また、R11とR13とが連結して形成可能な環構造としては、ピロリジン環、チアゾリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。
【0056】
前記一般式(I)で表される化合物の好ましい態様として、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
一般式(II)
【化28】
【0058】
式中、Q21およびQ22は酸素原子、硫黄原子またはN(R25)を表す。R21〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23およびR21とR24はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0059】
前記一般式(II)において、R21〜R25がそれぞれ表す置換基については、前記一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0060】
前記一般式(II)において、R21とR22とが連結して形成可能な環構造としては、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、ピリミジン環、トリアジン環等の複素環、およびこれらのベンゾ縮合環(キナゾリン環等)、プリン環、ナフチリジン環、プテリジン環等の複素芳香族縮合環;等が挙げられる。また、R22とR23およびR21とR24がそれぞれ連結して形成可能な環構造としては、ピロリジン環、チアゾリジン環、ピペリジン環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等が挙げられる。
【0061】
前記一般式(I)で表される化合物のより好ましい態様として、下記一般式(TAM)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
一般式(TAM)
【化29】
【0063】
式中、R1〜R3は前記一般式(I)中のR11〜R14と同義である。l、mおよびnは各々独立に1〜5の整数を表す。
【0064】
本発明のレターデーション上昇剤は、下記一般式(III)〜式(XII)で表される化合物を構成要素として含有することができる。下記一般式(III)〜式(XII)で表される化合物は、前記一般式(I)で表される化合物とともに、または前記一般式(I)で表される化合物として用いられる。
【0065】
一般式(III)
【化30】
【0066】
式中、R31〜R33は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q31およびQ32は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R31とR32およびR32とR33はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0067】
一般式(IV)
【化31】
【0068】
式中、R41〜R44は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q41は酸素原子または硫黄原子を表す。R41とR42、R41とR43およびR42とR44はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0069】
一般式(V)
【化32】
【0070】
式中、R51〜R54は各々独立に水素原子または置換基を表す。R51とR52およびR51とR53はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0071】
一般式(VI)
【化33】
【0072】
式中、R61〜R63は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q61は酸素原子または硫黄原子を表す。R61とR62は互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0073】
一般式(VII)
【化34】
【0074】
式中、Q71〜Q73は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R71〜R73は各々独立に水素原子または置換基を表す。R71とR72は互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0075】
一般式(VIII)
【化35】
【0076】
式中、Q81〜Q83は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R84)を表す。R81〜R84は各々独立に水素原子または置換基を表す。R81とR82、R82とR83およびR81とR83は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0077】
一般式(IX)
【化36】
【0078】
式中、Q91およびQ92は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R94)を表す。R91〜R94は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0079】
一般式(X)
【化37】
【0080】
式中、Q101およびQ102は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。Q103は酸素原子、硫黄原子またはN(R103)を表す。R101〜R103は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0081】
一般式(XI)
【化38】
【0082】
式中、Q111およびQ112は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R111〜R114は各々独立に水素原子または置換基を表す。R111とR112、R112とR113、R113とR114、R111とR113およびR112とR114はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0083】
前記式(III)〜(XI)中、R31〜R33、R41〜R44、R51〜R54、R61〜R68、R71〜R73、R81〜R86、R91〜R93、R101〜R103およびR111〜R114がそれぞれ表す置換基としては、前述の一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基と同様であり、その具体例および好ましい範囲についても同様である。
【0084】
前記式中、R31とR32、R32とR33、R41とR42、R41とR43、R42とR44、R51とR52、R51とR53、R61とR62、R72とR73、R81とR82、R111とR112、R112とR113、R113とR114、R111とR113およびR112とR114はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。これらが形成可能な環構造としては、後述する一般式(XII)中のR121が表す環状構造を有する置換基として例示したアリール基および芳香族複素環基をそれぞれ構成している環が挙げられる。
【0085】
前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性が可能な化合物は、エノール型となったときにそのpKaが2〜12であるのが好ましい。
【0086】
前記一般式(I)で表される化合物を構成要素とする分子錯合体は、その構成要素が幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せを有し、そのことによって平面的錯合体を形成可能であるのが好ましい。ここで、「幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せ」とは、一般的には、以下の(1)〜(5)の要件を満たす官能基の組合せをいう。前記分子錯合体の構成要素である相互作用する二つの分子を、基質σとレセプターρとする。レセプター分子ρによる高度の分子認識は、相手である基質σとの結合自由エネルギーと、相互作用が相対的に小さいその他の基質との結合自由エネルギーとの大きな差に依存し、その差が統計分布から大きくずれるほど大きいのが好ましい。結合自由エネルギーに大きな差を出させるには、以下の(1)〜(5)の要件を満たす必要がある。
【0087】
(1) σとρとに立体(形と大きさ)相補性(steric complementarity)があること。即ち、σとρのそれぞれの適切な部位に凹凸が存在していること。ここで、凹凸は(2)でいう相補的結合部位(例えば、水素結合ドナー(凸)と水素結合アクセプター(凹))をいう。
(2) σとρとに相互作用相補性(interactional complementarity)があること。即ち、σとρが互いに結合可能な相補性のある部位に、相補的な電子と原子核(静電力、水素結合やvan der Waals 力)分布マップが得られるように、σとρ上に(好ましくは正しく配列された)相補的結合部位(+/−、電荷/双極子、双極子/双極子、水素結合ドナー/水素結合アクセプターなどのような静電的なもの)が存在していること。
(3) ρとσとの間に広い接触面(large contact area)が存在していること。このことは、以下に述べる複数の作用部位があることによって満足できる。
(4) ρとσに複数の相互作用部位(multiple interaction sites)が存在すること。非共有結合性相互作用は共有結合に比べて弱いため、複数の相互作用部位が求められる。例えば、水素結合による相互作用の場合は、双方に水素結合ドナー/水素結合アクセプターがあることが望ましい。
(5) ρとσとの結合は全体としては強い結合(strong overall binding)になること。理論上、高い安定性は必ずしも高い選択性を意味しないが、実際にはそうであることが多い。実際、結合自由エネルギーの差は、結合が強くなるほど大きくなる傾向がある。つまり、高い結合効率(遊離のσに比べて結合されたσの割合が大きい)には強い相互作用が必要である。効率よく認識する、即ち、高い安定性と高い選択性の両方を実現するためには、ρとσとの間には強い結合が必要である。
【0088】
本発明では、前記一般式(I)中のケト−エノール互変異性可能な官能基が、前述の「幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せ」を構成する官能基となる。前記一般式(I)で表される化合物中のケト−エノール互変異性可能な官能基ととともに、「幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せ」を構成可能な他方の官能基としては、カルボン酸基、チオカルボン酸基、カルボアミド基、チオカルボアミド基、カルボン酸イミド基、チオカルボン酸イミド基またはウレイド基等の互変異性可能な官能基が挙げられる。前記一般式(I)で表される化合物が、ケト−エノール互変異性可能な官能基とともに、前記「他方の官能基」を有し、前記一般式(I)で表される化合物が単独で分子錯合体を構成する態様であってもよい。
【0089】
前記一般式(I)で表される化合物と、(チオ)カルボン酸基、(チオ)カルボアミド基、(チオ)カルボン酸イミド基およびウレイド基とは、以下の式(XIII)〜(XVI)に示す様に、有機化学の古典的電子論で説明される電子の流れによって、共鳴構造的に相補的に分子間相互作用して、安定化する可能性が強く示唆される組合せである。なお、以下の式(XIII)および(XIV)においては、前記一般式(I)中、Q11がN(R13)を表す場合を示し、式中からR11およびR12は省略した。また、以下の式(XV)および(XVI)においては、一般式(II)が2,4−ビスアミノ基置換ピリミジン誘導体を表す場合を示し、置換基は省略した。
【0090】
一般式(XIII)
【化39】
【0091】
一般式(XIV)
【化40】
【0092】
一般式(XV)
【化41】
【0093】
一般式(XVI)
【化42】
【0094】
前記式中、Q131、Q132、Q141、Q151、Q152およびQ161は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R131、R141、R142、R151、R152、R161およびR162は各々独立に置換基を表し、R141とR142、R151とR152、およびR161とR162Rはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。R131、R141、R142、R151、R152、R161およびR162がそれぞれ表す置換基は、前記一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基と同様であり、具体例および好ましい範囲についても同様である。R141とR142、R151とR152、およびR161とR162は互いに結合して環を形成しているのが好ましい。特に、前記一般式(XVI)において、R161とR162は互いに結合して環を形成しているのが好ましい。このような環構造の例としては、ベンヅイミダゾリノン、インダゾリノン、ウラシル、チオウラシル、ベンヅオキサゾリノン、コハク酸イミド、フタル酸イミド、ビオルル酸、バルビツール酸、ピラゾロン、ヒダントイン、ローダニン、オロチン酸、ベンゾチアゾリノン、アンメリン、クマリン、マレイン酸ヒドラジド、イサチン、3−インダゾリノン、パラバン酸、フタラジノン、ウラゾール、アロキサン、メルドラム酸、ウラミル、カプロラクトン、カプロラクタム、チアペンジオン、テトラヒドロ−2−ピリミジノン、2,5−ピペラジンジオン、2,4−キナゾリンジオン、2,4−プテリジンジオール、葉酸、アセチレンウレア、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0095】
以上の式(XIII)〜(XVI)によって、錯合体形成のための前述の相補的要件である(1)〜(5)を満足する具体例を示した。(1)の立体相補性について、(XV)を例として説明する。2,4−ジアミノトリアジン構造(σとする)および酸イミド(ρとする)は双方が凹凸を有する。σでは凸がアミノ基でトリアジン環の窒素が凹となる。一方、ρではカルボニル基が凹で、中央のアミノ基が凸となる。σは凸凹凸の順で並んだ構造を、ρは凹凸凹の順で並んだ構造を有する。このことにより、σとρは3箇所で同程度の距離で、無理なく水素結合可能となり、強い分子間結合を実現している。
【0096】
また、(2)の相互作用相補性に関しては、式(XIII)〜(XVI)では協奏的な電子の流れとして記載したが、式(XIII)の→の出発点をδ−、→の到着点をδ+として、下記式(XIX)のように記載すると、静電的な電子の授受で説明することもできる。
【0097】
一般式(XVII)
【化43】
【0098】
再び、式(XIII)〜(XVI)で示される一連の電子の流れについて説明すると、前記電子の流れは、三次元的より、二次元(平面)的に流れるのが、エネルギー的に有利であり、好ましい。この点から、式(XIV)〜(XVI)中のRとR’は互いに結合して環を形成することが好ましく、共役していること、また芳香族環を形成していることが好ましい。また、式(XIII)中のRも環構造の基であることが好ましく、芳香族環基(アリール基および芳香族複素環基の双方を含む)であることが好ましい。
【0099】
前記式(XV)について説明すると、2,4−ジアミノトリアジン構造(A)と、酸イミド構造(B)は、3箇所で水素結合しているが、(A)ではアミノ基が凸でトリアジン環の窒素原子は凹となる
【0100】
前記分子錯合体の好ましい態様としては、前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能なn種類(nは1以上の整数)の化合物A1〜Anからなる分子錯合体が挙げられる。また、前記分子錯合体の好ましい態様としては、前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物と(チオ)カルボン酸他のケト−エノール互変異性可能な化合物との組合せからなる分子錯合体が挙げられ、前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物と下記一般式(XII)で表される(チオ)カルボン酸との組合せが特に好ましい。下記一般式(XII)で表される(チオ)カルボン酸は、前記一般式(I)で表される化合物とともに、前述の(1)〜(5)の要件を満たす相互作用によって分子錯合体を形成可能な化合物である。
【0101】
一般式(XII)
【化44】
【0102】
式中、R121は置換基を表し、Q121およびQ122は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R121が表す置換基としては、前述の一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基と同様であり、その具体例および好ましい範囲についても同様である。
【0103】
前記一般式(XII)中、R121が表す置換基については、環状構造を有する置換基が好ましい。前記環状構造を有する置換基としては、アリール基および芳香族複素環基が好ましい。前記アリール基としては、フェニル基、インデニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アントラセニル基およびピレニル基等が挙げられる。中でも、フェニル基およびナフチル基が好ましい。
【0104】
前記芳香族複素環基としては、5〜7員環構造の複素環基が好ましく、5員環または6員環がより好ましく、6員環が最も好ましい。これらの骨格の具体的例は、岩波理化学辞典 第三版増補版 (岩波書店発行)の付録11章 有機化学命名法 表4.主要複素単環式化合物の名称 1606頁 および表5.主要縮合複素環式化合物の名称 1607頁 に記載される複素環が挙げられる。
【0105】
なお、前記一般式(I)で表される化合物と錯合体を形成可能な化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。また、前記分子錯合体は、前記一般式(I)で表される化合物と、2種類以上の化合物との分子錯合体であってもよい。
【0106】
前記一般式(I)で表される化合物が分子錯合体を形成しているか否かは、例えば、結晶が得られる場合には、該結晶を分析することによって錯合体形成の有無を判断することができる。また、結晶が得られない場合であっても、一般式(I)で表される化合物(ρ)と、ρと相互作用可能な官能基を有する化合物(σ)の錯合体形成による溶媒和も含めた分子間力(結合自由エネルギー)と、ρとσ各々単独の溶媒和による結合自由エネルギーが同程度であったり、後者のほうが大きい場合は、錯合体を形成しているものと推定できる。また、ρおよびσの各々の熱相転移温度パターンと、ρおよびσを化学量論的な整数比で混合した後の熱相転移温度パターンを比較し、ρおよびσの各々の熱相転移温度パターンと明瞭に異なる錯合体独自の熱物性を示すことを確認することによって、錯合体の形成の有無を判断することができる。ρとσが相互作用を及ぼさない単なる混合状態にある場合は、凝固点降下のように転移温度ピークが混合比に応じてずれるのみであるが、錯合体を形成する場合は、ほとんどの場合にその熱転移ピークが新たな温度域に発生する。さらに、錯合体と、ρおよびσのFT−IRスペクトルを各々比較し、相互作用する官能基の振動吸収スペクトルのシフトを確認することによって、錯合体形成の有無を判断することができる。
【0107】
以下に、前述の(1)〜(5)の要件を満たす組合せからなる、前記一般式(I)で表される化合物を構成要素とする分子錯合体の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0108】
【化45】
【0109】
【化46】
【0110】
【化47】
【0111】
【化48】
【0112】
【化49】
【0113】
【化50】
【0114】
【化51】
【0115】
【化52】
【0116】
【化53】
【0117】
【化54】
【0118】
【化55】
【0119】
【化56】
【0120】
【化57】
【0121】
【化58】
【0122】
前記一般式(I)で表される化合物および該化合物と分子錯合体を形成可能な化合物は、従来公知の製造方法を組み合わせることによって合成することができる。
【0123】
前記一般式(I)で表される化合物は、それ自身の分子間相互作用によって、または他の化合物との分子間相互作用によって分子錯合体を形成する。前記錯合体は、光学フィルム用のレターデーション上昇剤として有用である。本発明のレターデーション上昇剤は、前記一般式(I)で表される化合物が単独でそれ自身の分子間相互作用によって分子錯合体を形成する場合は、該化合物の一種を単独で構成要素とする分子錯合体であってもよいし、前記一般式(I)で表される化合物と、他の少なくとも1種の化合物(例えば前記一般式(III)〜(XII)で表される化合物)とを構成要素として含む分子錯合体であってもよい。前記一般式(I)で表される化合物と他の化合物とを構成要素とする分子錯合体は、前記一般式(I)で表される化合物と前記他の化合物とを、化学量論比で混合することによって調製することができる。例えば、前記一般式(I)で表される化合物と他の化合物とが、1:1のモル比で分子錯合体を形成する場合は、1:1のモル比で双方を混合することによって調製することができる。
【0124】
本発明では、前記分子錯合体とともに、更に、1,3,5−トリアジン環を有するホモポリマーまたはコポリマーを、レターデーション上昇剤として併用してもよい。
【0125】
本発明のレターデーション上昇剤は、ポリマーフィルムに添加することができる。前記ポリマーフィルムは、レターデーション上昇剤が添加されていない状態では、光学等方性を示すポリマーフィルムが好ましい。ここで、光学等方性とは、具体的には、本発明のレターデーション上昇剤を用いずに製造した場合、面内レターデーション(Re)が10nm未満(好ましくは5nm未満)で、厚み方向のレターデーション(Rth)が10nm未満(5nm未満であるのが好ましい)であることをいう。フィルムの面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re = (nx−ny)×d
Rth = [{nx+ny)/2}−nz]×d
式中、nxおよびnyは、フィルムの面内屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、そしてdはフィルムの厚さである。
【0126】
また、本発明のレターデーション上昇剤は、光学異方性のポリマーフィルムに添加することもできる。前記光学異方性のポリマーフィルムは、光学的一軸性または光学的二軸性を有することが好ましい。光学的一軸性フィルムは、光学的に正(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも大)であっても負(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも小)であってもよい。光学的二軸性フィルムは、前記式の屈折率nx、nyおよびnzは、全て異なる値(nx≠ny≠nz)になる。光学異方性フィルムは、本発明のレターデーション上昇剤を用いずに製造した場合、面内レターデーション(Re)が0〜300nmであることが好ましく、0〜200nmであることがさらに好ましく、0〜100nmであることが最も好ましい。前記光学異方性フィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)は、10〜1000nmであることが好ましく、50〜400nmであることがより好ましく、100〜300nmであることがさらに好ましい。
なお、本発明のレターデーション上昇剤を、光学等方性フィルムに添加するか、光学異方性フィルムに添加するかは、作製される光学フィルムの用途、使用される液晶表示モードの種類によって適宜決定することができる。
【0127】
本発明のレターデーション上昇剤を添加するフィルムの好ましい材料については、光学等方性フィルムを用いるか、または光学異方性フィルムを用いるかによって異なる。光学等方性フィルムの材料としては、セルロースエステルが好ましく用いられる。光学異方性フィルムの材料としては、合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。ただし、セルロースアセテートの酢化度の低下、あるいは冷却溶解法によるフィルムの製造により、光学異方性の(レターデーションが高い)セルロースエステルフィルムを製造することもできる。
【0128】
本発明の一態様は、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムである。
前記セルロースエステルフィルムは光学補償フィルムとして、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。
【0129】
前記セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)、4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。更には、セルロースベンゾエートのようなセルロース芳香族酸エステルやあるいはセルロースアセテートベンゾエートやセルロースプロピオネートベンゾエートのような脂肪族酸と芳香族酸との混合酸エステルを用いてもよい。
【0130】
本発明に用いるセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.3〜1.6であることが最も好ましい。
【0131】
本発明のセルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により作製することが好ましい。また、フィルムには延伸処理を実施することもできる。光学的一軸性フィルムを製造する場合は、通常の一軸延伸処理または二軸延伸処理を実施すればよい。光学的二軸性フィルムを製造する場合は、アンバランス二軸延伸処理を実施することが好ましい。アンバランス二軸延伸では、フィルムをある方向に一定倍率(例えば3〜100%、好ましくは5〜30%)延伸し、それと垂直な方向にそれ以上の倍率(例えば6〜200%、好ましくは10〜90%)延伸する。二方向の延伸処理は、同時に実施してもよい。延伸方向(アンバランス二軸延伸では延伸倍率の高い方向)と延伸後のフィルムの面内の遅相軸とは、実質的に同じ方向になることが好ましい。延伸方向と遅相軸との角度は、10゜未満であることが好ましく、5゜未満であることがさらに好ましく、3゜未満であることが最も好ましい。
【0132】
本発明のセルロースエステルフィルムの厚さは、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがさらに好ましく、20〜150μmであるのが特に好ましい。
【0133】
本発明のセルロースフィルムには、その上方に設けられる層(密着層、配向膜あるいは光学的異方性層)との密着性を改善するため、表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火災処理)を実施してもよい。
【0134】
本発明のセルロースエステルフィルムのレターデーション値、製造の際に用いられる有機溶媒、溶液の調製、フィルムの製造、フィルムの添加剤、セルロースエステルフィルムの表面処理については、特開2001−166144号公報の第110段落〜第128段落に記載の内容を適用できる。
【0135】
本発明の他の態様は、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムと、該フィルムの上方に液晶性分子を含有する光学異方性層とを有する光学補償シートである。前記液晶分子は、ディスコティク液晶分子であるのが好ましい。前記光学補償シートは、種々のモードの液晶素子に用いることができる。
【0136】
本発明の他の態様は、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であって、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである楕円偏光板である。
【0137】
また、本発明の他の態様は、液晶セルおよび両側に配置された二枚の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であり、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである液晶表示装置である。
【0138】
本発明の液晶表示装置の他の態様は、反射板、液晶セルおよび一枚の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子が、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶性分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であり、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対して、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムであることを特徴とする液晶表示装置である。
【0139】
本発明の光学補償シート、楕円偏光板および液晶表示装置についての詳細(例えば、各種の液晶表示装置の構成、液晶セル、光学補償シート、偏光素子、液晶性分子から形成される光学的異方性層、および配向膜)については、特開2001−166144号公報の第129段落〜第192段落に記載の内容を適用できる。
【0140】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
室温において、平均酢化度60.9%のセルロースアセテート45質量部、レターデーション上昇剤 化合物(17)0.68質量部、メチレンクロリド232.72質量部、メタノール42.57質量部およびn−ブタノール8.50質量部を混合して溶液(ドープ)を調製した。
得られた溶液(ドープ)を、有効長6mのバンド流延機を用いて、乾燥膜厚が100μmになるように流延して、乾燥した。
製造したセルロースアセテートフィルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおける厚み方向のレターデーション値(Rth550)を測定した。結果を第1表に示す。
【0141】
[比較例1]
レターデーション上昇剤 化合物(17)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にフィルムを製造して、評価した。結果は第1表に示す。
【0142】
[実施例2〜4]
レターデーション上昇剤 化合物(17)に代えて、レターデーション上昇剤化合物(9)、化合物(25)および化合物(33)をそれぞれ添加した以外は、実施例1と同様にフィルムを製造して、評価した。結果は第1表に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
[実施例5]
室温において、平均酢化度60.9%のセルロースアセテート45質量部、レターデーション上昇剤 化合物(23)0.68質量部、リン酸トリフェニル(可塑剤)2.75質量部、リン酸ビフェニルジフェニル2.20質量部、メチレンクロリド232.72質量部、メタノール42.57質量部およびn−ブタノール8.50質量部を混合して溶液(ドープ)を調製した。
得られた溶液(ドープ)を、有効長6mのバンド流延機を用いて、乾燥膜厚が100μmになるように流延して、乾燥した。
製造したセルロースアセテートフィルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおける厚み方向のレターデーション値(Rth550)を測定した。さらに、フィルム表面を観察して、ブリードアウトの有無を評価した。結果を第2表に示す。
【0145】
[実施例6〜8]
レターデーション上昇剤 化合物(23)に代えて、レターデーション上昇剤化合物(7)、化合物(15)および化合物(31)をそれぞれ同量用いた以外は、実施例5と同様にフィルムを製造して、評価した。結果を第2表に示す。
【0146】
[比較例2]
レターデーション上昇剤を添加しなかった以外は、実施例5と同様にフィルムを製造して、評価した。結果は第2表に示す。
[比較例3]
レターデーション上昇剤 化合物(23)に代えて、下記構造式で示されるRef(I)を第2表に示した添加量で添加した以外は、実施例5と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。
[比較例4]
Ref(I)に代えて、下記構造式で示されるRef(II)を添加した以外は比較例3と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。
[比較例5]
Ref(I)に代えて、下記構造式で示されるRef(III)を添加した以外は、比較例4と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。[比較例6]
Ref(I)に代えて下記構造式で示されるRef(IV)を添加した以外は、比較例5と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。
【0147】
【化59】
【0148】
【表2】
【0149】
第2表に示す結果から明らかな様に、従来の技術では所望のRthを得るために添加量を増やすと、ブリードアウトしてしまうという問題があるが、実施例のフィルムでは添加量を増やしてもブリードアウトすることなく、所望のRthを得ることができた。
【0150】
[実施例9]
(液晶セルの作製)
電極(ITO)付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。得られた二枚のガラス基板の表面を対向させて配置し、セルギャップを10μmに設定して、液晶(ZLI1132、メルク社製)を注入し、OCBモードの液晶セルを作製した。
【0151】
(液晶表示装置の作製)
液晶セルを挟むように、実施例5で作製したセルロースアセテートフィルム二枚を光学補償シートとして配置した。その外側に全体を挟むように、偏光素子を配置した。
作製した液晶表示装置に、55Hz矩形波で電圧を印加したところ、着色のない鮮明な画像が得られた。
【0152】
[実施例10]
(光学補償シートの支持体)
実施例5で作製したセルロースアセテートフィルムを光学補償シートの支持体として用いた。
【0153】
(配向膜の形成)
支持体の上に、下記の組成の塗布液をスライドコーターで25mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、支持体の遅相軸方向と平行の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
配向膜塗布液組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0154】
変性ポリビニルアルコール
【化60】
【0155】
(光学的異方性層の形成)
配向膜上に、下記のディスコティック液晶性化合物 1.8g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.04g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを、8.43gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を#2.5のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学補償シート(1)を作製した。
【0156】
ディスコティック液晶性化合物
【化61】
【0157】
(光学補償シートの評価)
光学的異方性層の厚さは、約1.0μmであった。光学的異方性層のみのレターデーション値をラビング軸に沿って測定したところ、レターデーションが0となる方向は存在しなかった。また、面内レターデーションは14nm(Re=14)、厚み方向のレターデーションは35nm(Rth=35)であった。
光学補償シート(1)を、ミクロトームを用いて、ラビング方向に添って垂直に切断し、極めて薄い垂直断片(サンプル)を得た。サンプルをOsO4の雰囲気中に48時間放置して、染色した。染色サンプルを、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、その顕微鏡写真を得た。染色サンプルでは、前記ディスコティック液晶性化合物のアクリロイル基が染色され、写真の像として認められた。
この写真を検討した結果、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位は、支持体の表面から傾いていることが認められた。さらに、傾斜角は、支持体表面からの距離が増加するに伴い、連続的に増加していた。
【0158】
(VAモード液晶セルの作製)
ポリビニルアルコール3質量%水溶液に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(カップリング剤)を1質量%添加した。これを、ITO電極付きのガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるように実施した。セルギャップ(d)が5.5μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.05)を注入し、VAモード液晶セルを作製した。Δnとdとの積は275nmであった。
【0159】
(VA型液晶表示装置の作製)
VAモード液晶セルに、光学補償シート(1)をセルを挟むように2枚、光学補償シートの光学的異方性層と液晶セルのガラス基板とが対面するように配置した。VAモード液晶セルの配向膜のラビング方向と光学補償シートの配向膜のラビング方向は、逆平行になるように配置した。これらの両側に、偏光素子(楕円偏光板)をクロスニコルに配置した。
なお、楕円偏光板は以下の様にして作製した。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて、偏光膜を作製した。偏光膜の片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償シートを、光学異方性層が外側となるように貼り付けた。反対側には、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、透明保護膜を貼り付けた。偏光膜の吸収軸と、光学異方性層のラビング方向は、平行になるように配置した。このようにして、楕円偏光板を作製した。
【0160】
VAモード液晶セルに対して、55Hz矩形波で電圧を印加した。黒表示2V、白表示6VのNBモードとし、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比とした。上下、左右からのコントラスト比を、計器(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)で測定した。その結果、正面コントラスト比が300、視野角(コントラスト比10が得られる視野の角度)が上下左右いずれも70度との良好な結果が得られた。
【0161】
[実施例11]
(光学補償シートの支持体)
実施例5で作製したセルロースアセテートフィルムを光学補償シートの支持体として用いた。
【0162】
(配向膜の形成)
支持体の上に、下記の組成の塗布液をスライドコーターで25mL/m2塗布した。60℃で2分間乾燥した。
次に、支持体の面内の主屈折率の大きい方向と平行の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。ラビング条件は、ラビングロール径が150mm、搬送速度が10m/分、ラッピング角度が6゜、ラビングロール回転数が1200rpmであった。
配向膜塗布液組成
実施例10で用いた変性ポリビニルアルコールの10質量%水溶液 24g
水 73g
メタノール 23g
グルタルアルデヒド(架橋剤)の50質量%水溶液 0.2g
【0163】
(光学的異方性層の形成)
配向膜上に、実施例10で用いたディスコティック液晶性化合物1.8g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.04g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1.0、イーストマンケミカル社製)0.01g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを、3.4gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#6のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、140℃の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、140℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学補償シート(2)を作製した。
【0164】
(光学補償シートの評価)
光学的異方性層の厚さは、2.0μmであった。光学的異方性層のみのレターデーション値をラビング軸に沿って測定したところ、レターデーションが0となる方向は存在しなかった。
光学的異方性層の面内レターデーションは42nm(Re=42)、厚み方向のレターデーションは134nm(Rth=134)であった。
光学補償シート(2)を、ミクロトームを用いて、ラビング方向に添って垂直に切断し、極めて薄い垂直断片(サンプル)を得た。サンプルをOsO4の雰囲気中に48時間放置して、染色した。染色サンプルを、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、その顕微鏡写真を得た。染色サンプルでは、前記ディスコティック液晶性化合物のアクリロイル基が染色され、写真の像として認められた。
この写真を検討した結果、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位は、支持体の表面から傾いていることが認められた。さらに、傾斜角は、支持体表面からの距離が増加するに伴い、連続的に増加していた。
【0165】
(OCBモード液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行った。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるように実施した。セルギャップ(d)が8μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、Δnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、OCBモード液晶セルを作製した。Δnとdとの積は1109nm、面内レターデーションは90nm(Re=90)であった。
【0166】
(OCB型液晶表示装置の作製)
OCBモード液晶セルに、光学補償シート(2)をセルを挟むように2枚、光学補償シートの光学的異方性層と液晶セルのガラス基板とが対面するように配置した。OCBモード液晶セルの配向膜のラビング方向と光学補償シートの配向膜のラビング方向は、逆平行になるように配置した。これらの両側に、実施例10と同様に偏光素子(楕円偏光板)をクロスニコルに配置した。
OCBモード液晶セルに対して、55Hz矩形波で電圧を印加した。白表示2V、黒表示6VのNWモードとし、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比とした。上下、左右からのコントラスト比を、計器(LCD−5000、大塚電子(株)製)で測定した。その結果、上側の視野角(コントラスト比10が得られる視野の角度)が80度以上、下側の視野角が58度、左右の視野角がいずれも67度との良好な結果が得られた。
【0167】
[実施例12]
(HANモード液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行った。ITO電極付きのガラス基板をもう一枚用意し、酸化ケイ素を蒸着させて配向膜を形成した。セルギャップ(d)が4μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、Δnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、HANモード液晶セルを作製した。Δnとdとの積は558nm、面内レターデーションは45nm(Re=45)であった。
【0168】
(HAN型液晶表示装置の作製)
HANモード液晶セルの表示面側に実施例11で作製した光学補償シート(2)を一枚、光学的異方性層がセル側となるように配置した。HANモード液晶セルの配向膜のラビング方向と光学補償シートの配向膜のラビング方向は、逆平行になるように配置した。光学補償シートの上に実施例10と同様に偏光素子(楕円偏光板)を、偏光素子の透過軸と液晶セルのラビング方向との角度が45゜となるように配置した。偏光素子の上に、拡散板を配置した。HANモード液晶セルの反対側には、鏡(反射板)を配置した。
作製したHAN型液晶表示装置の表示面の法線方向から、20゜傾けた方向に光源を置き、光を照射した。HANモード液晶セルに対しては、55Hz矩形波で電圧を印加した。白表示2V、黒表示6VのNWモードとし、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比とした。上下、左右からのコントラスト比を、計器(bm−7、TOPCON社製)で測定した。その結果、上側の視野角(コントラスト比10が得られる視野の角度)が44度、下側の視野角が26度、左右の視野角がいずれも39度との良好な結果が得られた。
【0169】
【発明の効果】
本発明によれば、ブリードアウトを生じることなく、所望のレターデーションを光学フィルムに付与し得るレターデーション上昇剤を提供することができる。また、本発明によれば、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを提供することができる。さらに本発明によれば、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを用いた、光学補償機能に優れた光学補償シートおよび楕円偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、光学異方性透明支持体を用いた、画像表示特性に優れた(特に視野角の拡大、色相変化の発生が少ない等)液晶表示装置を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤、ならびにそれを用いたセルロースエステルフィルム、光学補償シート、楕円偏光板および液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、液晶セル、偏光素子および光学補償シート(位相差板)からなる。透過型液晶表示装置では、二枚の偏光素子を液晶セルの両側に取り付け、一枚または二枚の光学補償シートを液晶セルと偏光素子との間に配置する。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚の光学補償シート、そして一枚の偏光素子の順に配置する。液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いで、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、反射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。偏光素子は、一般に、偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を取り付けた構成を有する。
【0003】
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折フィルムが従来から使用されていた。延伸複屈折フィルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に液晶性分子(特にディスコティック液晶性分子)から形成された光学的異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。光学的異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。一般に、重合性基を有する液晶性分子を用いて、重合反応によって配向状態を固定する。液晶性分子は、大きな複屈折率を有する。そして、液晶性分子には、多様な配向形態がある。液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0004】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定する。液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。例えば、TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号および国際特許出願WO96/37804号の各明細書に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0005】
液晶性分子には様々な配向形態があるが、液晶性分子の光学異方性のみでは、液晶セルを充分に光学的に補償できない場合もある。そのような場合には、光学補償シートの透明支持体として光学異方性のものを用いて、液晶性分子の光学異方性と共に液晶セルを光学的に補償する方法が提案されている(米国特許5646703号明細書記載)。光学異方性透明支持体としては、具体的には合成ポリマーの延伸フィルムが用いられている。光学異方性支持体として従来から用いられている合成ポリマー延伸フィルムは、支持体としての機能に問題がある。また、合成ポリマー延伸フィルムを透明支持体として用いると、光学補償シートと偏光板を一体化した楕円偏光板を製造することも難しい。
【0006】
セルロースエステルフィルムは、合成ポリマー延伸フィルムと比較して、支持体としての機能に優れている。光学的異方性が高い(高いレターデーション値を有する)セルロースエステルフィルムが得られれば、光学的異方性が要求される光学補償シートの用途においても、セルロースエステルフィルムを使用することができる。しかし、従来、レターデーション値が低いセルロースエステルフィルムが優れたセルロースエステルフィルムであるとされていたため、セルロースエステルフィルムのレターデーション値を低くする技術については詳細に検討されているものの、レターデーション値を高くする技術についてはほとんど検討されていていないのが実情である。近年、特定の構造のレターデーション上昇剤を含有するセルロースエステルフィルムが提案された(特許文献1参照)。このセルロースエステルフィルムは、レターデーション上昇剤の添加により、光学異方性を向上させたものであり、光学補償シートの支持体として有用である。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−166144号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記公報に開示されているレターデーション上昇剤は、その機能が充分に高いものではなく、セルロースエステルフィルムに所望の光学異方性を発現させるためには、使用量を増やす必要がある。レターデーション上昇剤の使用量を増やすと、レターデーション上昇剤のブリードアウト(フィルム表面からの化合物の析出)という新たな問題が生じる。
【0009】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、ブリードアウトを生じることなく、所望のレターデーションを光学フィルムに付与し得るレターデーション上昇剤を提供することを課題とする。また、本発明は、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを提供することを課題とする。さらに本発明は、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを用いた、光学補償機能に優れた光学補償シートおよび楕円偏光板を提供することを課題とする。また、本発明は、前記レターデーション上昇剤を含む光学異方性透明支持体を用いた、画像表示特性に優れた(特に視野角が拡大されたおよび色相変化の発生が少ない)液晶表示装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(17)の手段により解決した。
(1) 分子間相互作用を発現する官能基の組み合わせを有することによって分子錯合体を形成し得る1種以上の化合物からなり、下記一般式(1)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物を少なくともその構成要素として含むセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0011】
一般式(I)
【化14】
【0012】
式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN(R14)を表わし、R11〜R14は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12およびR11とR13は各々互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0013】
(2) 前記ケト−エノール互変異性可能な化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である(1)に記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0014】
一般式(II)
【化15】
【0015】
式中、Q21およびQ22は酸素原子、硫黄原子またはN(R25)を表し、R21〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23およびR21とR24は、それぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0016】
(3) 前記ケト−エノール互変異性可能な化合物が、下記一般式(TAM)で表わされる化合物である(1)に記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0017】
一般式(TAM)
【化16】
【0018】
式中、R1、R2およびR3は各々独立に置換基を表わし、l、mおよびnは各々独立に1〜5の整数を表わす。
【0019】
(4) 下記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を構成要素として含む(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0020】
一般式(III)
【化17】
【0021】
式中、R31〜R33は各々独立に水素原子または置換基を表し、Q31およびQ32は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R31とR32およびR32とR33はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0022】
一般式(IV)
【化18】
【0023】
式中、R41〜R44は各々独立に水素原子または置換基を表し、Q41は酸素原子または硫黄原子を表し、R41とR42、R41とR43およびR42とR44はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0024】
一般式(V)
【化19】
【0025】
式中、R51〜R54は各々独立に水素原子または置換基を表し、R51とR52およびR51とR53はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0026】
一般式(VI)
【化20】
【0027】
式中、R61〜R63は各々独立に水素原子または置換基を表し、Q61は酸素原子または硫黄原子を表す。R61とR62は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0028】
一般式(VII)
【化21】
【0029】
式中、Q71〜Q73は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R71〜R73は各々独立に水素原子または置換基を表す。R71とR72およびR72とR73は各々互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0030】
一般式(VIII)
【化22】
【0031】
式中、Q81〜Q83は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R84)を表し、R81〜R84は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0032】
一般式(IX)
【化23】
【0033】
式中、Q91およびQ92は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R94)を表し、R91〜R94は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0034】
一般式(X)
【化24】
【0035】
式中、Q101およびQ102は各々独立に酸素原子、硫黄原子を表し、Q103は酸素原子、硫黄原子またはN(R103)を表す。R101〜R103は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0036】
一般式(XI)
【化25】
【0037】
式中、Q111およびQ112は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R111〜R114は各々独立に水素原子または置換基を表す。R111とR112、R112とR113、R113とR114、R111とR113およびR112とR114はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0038】
(5) 前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物の少なくとも1種と、前記一般式(III)〜(XI)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とからなるセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
(6) 前記一般式(1)で表されるケトーエノール互変異性可能な化合物の少なくとも1種と、下記一般式(XII)で表される互変異性可能な化合物の少なくとも1種とからなるセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0039】
一般式(XII)
【化26】
【0040】
式中、R121は置換基を表し、Q121およびQ122は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。
【0041】
(7) 前記ケト−エノール互変異性可能な化合物が、エノール型となったときにそのpkaが2〜12である(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
(8) 前記分子錯合体の示差走査熱量測定(DSC)法における熱的相転移温度パターンが、その構成要素の化合物の熱的相転移温度パターンとは互いに異なる(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
【0042】
(9) セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルム。
(10) セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムからなる光学補償シート。
(11) セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムと、該フィルムの上方に液晶性分子を含有する光学異方性層とを有する光学補償シート。
(12) 前記液晶分子がディスコティク液晶分子である(11)に記載の光学補償シート。
【0043】
(13) 透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であって、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである楕円偏光板。
(14) 液晶セルおよび両側に配置された二枚の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であり、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである液晶表示装置。
(15) 液晶セルがVAモード、OCBモードまたはTNモードの液晶セルである(14)に記載の液晶表示装置。
(16) 前記セルロースエステルがセルロースアセテート、セルロース混合脂肪酸エステル、セルロース芳香族エステルおよびセルロースと脂肪族酸および芳香族酸との混合酸エステルである(9)〜(15)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム、光学補償シート、楕円偏光板または液晶表示装置。
(17) 前記セルロースアセテートフィルムが20〜120μmの厚さを有する(9)〜(16)のいずれかに記載のセルロースエステルフィルム、光学補償シート、楕円偏光板または液晶表示装置。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のレターデーション上昇剤は、分子間相互作用を発現する官能基の組み合わせを有することによって分子錯合体を形成し得る1種以上の化合物からなり、下記一般式(1)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物を少なくともその構成要素として含むことを特徴とする。
【0045】
一般式(I)
【化27】
【0046】
式中、Q11は酸素原子、硫黄原子またはN(R14)を表す。R11〜R14は各々独立に水素原子または置換基を表す。R11とR12およびR11とR13は互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
【0047】
前記一般式(I)中、R11〜R14でそれぞれ表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよび複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。さらに、置換基R11〜R13には、これらの置換基から選ばれる1種類以上の置換基によって置換されたこれらの置換基も含まれる。
【0048】
さらに詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)]、
【0049】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、複素環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換の複素環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
【0050】
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、
【0051】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
【0052】
複素環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
【0053】
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールおよび複素環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表す。
【0054】
上記の置換基中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の置換基の1種以上で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。より具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0055】
前記一般式(I)において、R11とR12およびR11とR13はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成していてもよい。R11とR12とが連結して形成可能な環構造としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の複素環、およびこれらのベンゾ縮合環、プリン環、ナフチリジン環、プテリジン環等の複素芳香族縮合環が挙げられる。また、R11とR13とが連結して形成可能な環構造としては、ピロリジン環、チアゾリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。
【0056】
前記一般式(I)で表される化合物の好ましい態様として、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
一般式(II)
【化28】
【0058】
式中、Q21およびQ22は酸素原子、硫黄原子またはN(R25)を表す。R21〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R21とR22、R22とR23およびR21とR24はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0059】
前記一般式(II)において、R21〜R25がそれぞれ表す置換基については、前記一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0060】
前記一般式(II)において、R21とR22とが連結して形成可能な環構造としては、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、ピリミジン環、トリアジン環等の複素環、およびこれらのベンゾ縮合環(キナゾリン環等)、プリン環、ナフチリジン環、プテリジン環等の複素芳香族縮合環;等が挙げられる。また、R22とR23およびR21とR24がそれぞれ連結して形成可能な環構造としては、ピロリジン環、チアゾリジン環、ピペリジン環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等が挙げられる。
【0061】
前記一般式(I)で表される化合物のより好ましい態様として、下記一般式(TAM)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
一般式(TAM)
【化29】
【0063】
式中、R1〜R3は前記一般式(I)中のR11〜R14と同義である。l、mおよびnは各々独立に1〜5の整数を表す。
【0064】
本発明のレターデーション上昇剤は、下記一般式(III)〜式(XII)で表される化合物を構成要素として含有することができる。下記一般式(III)〜式(XII)で表される化合物は、前記一般式(I)で表される化合物とともに、または前記一般式(I)で表される化合物として用いられる。
【0065】
一般式(III)
【化30】
【0066】
式中、R31〜R33は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q31およびQ32は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R31とR32およびR32とR33はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0067】
一般式(IV)
【化31】
【0068】
式中、R41〜R44は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q41は酸素原子または硫黄原子を表す。R41とR42、R41とR43およびR42とR44はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0069】
一般式(V)
【化32】
【0070】
式中、R51〜R54は各々独立に水素原子または置換基を表す。R51とR52およびR51とR53はそれぞれ互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0071】
一般式(VI)
【化33】
【0072】
式中、R61〜R63は各々独立に水素原子または置換基を表す。Q61は酸素原子または硫黄原子を表す。R61とR62は互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0073】
一般式(VII)
【化34】
【0074】
式中、Q71〜Q73は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R71〜R73は各々独立に水素原子または置換基を表す。R71とR72は互いに結合して、環構造を形成してもよい。
【0075】
一般式(VIII)
【化35】
【0076】
式中、Q81〜Q83は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R84)を表す。R81〜R84は各々独立に水素原子または置換基を表す。R81とR82、R82とR83およびR81とR83は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0077】
一般式(IX)
【化36】
【0078】
式中、Q91およびQ92は各々独立に酸素原子、硫黄原子またはN(R94)を表す。R91〜R94は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0079】
一般式(X)
【化37】
【0080】
式中、Q101およびQ102は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。Q103は酸素原子、硫黄原子またはN(R103)を表す。R101〜R103は各々独立に水素原子または置換基を表す。
【0081】
一般式(XI)
【化38】
【0082】
式中、Q111およびQ112は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R111〜R114は各々独立に水素原子または置換基を表す。R111とR112、R112とR113、R113とR114、R111とR113およびR112とR114はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0083】
前記式(III)〜(XI)中、R31〜R33、R41〜R44、R51〜R54、R61〜R68、R71〜R73、R81〜R86、R91〜R93、R101〜R103およびR111〜R114がそれぞれ表す置換基としては、前述の一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基と同様であり、その具体例および好ましい範囲についても同様である。
【0084】
前記式中、R31とR32、R32とR33、R41とR42、R41とR43、R42とR44、R51とR52、R51とR53、R61とR62、R72とR73、R81とR82、R111とR112、R112とR113、R113とR114、R111とR113およびR112とR114はそれぞれ互いに結合して環構造を形成してもよい。これらが形成可能な環構造としては、後述する一般式(XII)中のR121が表す環状構造を有する置換基として例示したアリール基および芳香族複素環基をそれぞれ構成している環が挙げられる。
【0085】
前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性が可能な化合物は、エノール型となったときにそのpKaが2〜12であるのが好ましい。
【0086】
前記一般式(I)で表される化合物を構成要素とする分子錯合体は、その構成要素が幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せを有し、そのことによって平面的錯合体を形成可能であるのが好ましい。ここで、「幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せ」とは、一般的には、以下の(1)〜(5)の要件を満たす官能基の組合せをいう。前記分子錯合体の構成要素である相互作用する二つの分子を、基質σとレセプターρとする。レセプター分子ρによる高度の分子認識は、相手である基質σとの結合自由エネルギーと、相互作用が相対的に小さいその他の基質との結合自由エネルギーとの大きな差に依存し、その差が統計分布から大きくずれるほど大きいのが好ましい。結合自由エネルギーに大きな差を出させるには、以下の(1)〜(5)の要件を満たす必要がある。
【0087】
(1) σとρとに立体(形と大きさ)相補性(steric complementarity)があること。即ち、σとρのそれぞれの適切な部位に凹凸が存在していること。ここで、凹凸は(2)でいう相補的結合部位(例えば、水素結合ドナー(凸)と水素結合アクセプター(凹))をいう。
(2) σとρとに相互作用相補性(interactional complementarity)があること。即ち、σとρが互いに結合可能な相補性のある部位に、相補的な電子と原子核(静電力、水素結合やvan der Waals 力)分布マップが得られるように、σとρ上に(好ましくは正しく配列された)相補的結合部位(+/−、電荷/双極子、双極子/双極子、水素結合ドナー/水素結合アクセプターなどのような静電的なもの)が存在していること。
(3) ρとσとの間に広い接触面(large contact area)が存在していること。このことは、以下に述べる複数の作用部位があることによって満足できる。
(4) ρとσに複数の相互作用部位(multiple interaction sites)が存在すること。非共有結合性相互作用は共有結合に比べて弱いため、複数の相互作用部位が求められる。例えば、水素結合による相互作用の場合は、双方に水素結合ドナー/水素結合アクセプターがあることが望ましい。
(5) ρとσとの結合は全体としては強い結合(strong overall binding)になること。理論上、高い安定性は必ずしも高い選択性を意味しないが、実際にはそうであることが多い。実際、結合自由エネルギーの差は、結合が強くなるほど大きくなる傾向がある。つまり、高い結合効率(遊離のσに比べて結合されたσの割合が大きい)には強い相互作用が必要である。効率よく認識する、即ち、高い安定性と高い選択性の両方を実現するためには、ρとσとの間には強い結合が必要である。
【0088】
本発明では、前記一般式(I)中のケト−エノール互変異性可能な官能基が、前述の「幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せ」を構成する官能基となる。前記一般式(I)で表される化合物中のケト−エノール互変異性可能な官能基ととともに、「幾何学的に相補的な位置関係で分子間相互作用を発現する官能基の組合せ」を構成可能な他方の官能基としては、カルボン酸基、チオカルボン酸基、カルボアミド基、チオカルボアミド基、カルボン酸イミド基、チオカルボン酸イミド基またはウレイド基等の互変異性可能な官能基が挙げられる。前記一般式(I)で表される化合物が、ケト−エノール互変異性可能な官能基とともに、前記「他方の官能基」を有し、前記一般式(I)で表される化合物が単独で分子錯合体を構成する態様であってもよい。
【0089】
前記一般式(I)で表される化合物と、(チオ)カルボン酸基、(チオ)カルボアミド基、(チオ)カルボン酸イミド基およびウレイド基とは、以下の式(XIII)〜(XVI)に示す様に、有機化学の古典的電子論で説明される電子の流れによって、共鳴構造的に相補的に分子間相互作用して、安定化する可能性が強く示唆される組合せである。なお、以下の式(XIII)および(XIV)においては、前記一般式(I)中、Q11がN(R13)を表す場合を示し、式中からR11およびR12は省略した。また、以下の式(XV)および(XVI)においては、一般式(II)が2,4−ビスアミノ基置換ピリミジン誘導体を表す場合を示し、置換基は省略した。
【0090】
一般式(XIII)
【化39】
【0091】
一般式(XIV)
【化40】
【0092】
一般式(XV)
【化41】
【0093】
一般式(XVI)
【化42】
【0094】
前記式中、Q131、Q132、Q141、Q151、Q152およびQ161は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R131、R141、R142、R151、R152、R161およびR162は各々独立に置換基を表し、R141とR142、R151とR152、およびR161とR162Rはそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。R131、R141、R142、R151、R152、R161およびR162がそれぞれ表す置換基は、前記一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基と同様であり、具体例および好ましい範囲についても同様である。R141とR142、R151とR152、およびR161とR162は互いに結合して環を形成しているのが好ましい。特に、前記一般式(XVI)において、R161とR162は互いに結合して環を形成しているのが好ましい。このような環構造の例としては、ベンヅイミダゾリノン、インダゾリノン、ウラシル、チオウラシル、ベンヅオキサゾリノン、コハク酸イミド、フタル酸イミド、ビオルル酸、バルビツール酸、ピラゾロン、ヒダントイン、ローダニン、オロチン酸、ベンゾチアゾリノン、アンメリン、クマリン、マレイン酸ヒドラジド、イサチン、3−インダゾリノン、パラバン酸、フタラジノン、ウラゾール、アロキサン、メルドラム酸、ウラミル、カプロラクトン、カプロラクタム、チアペンジオン、テトラヒドロ−2−ピリミジノン、2,5−ピペラジンジオン、2,4−キナゾリンジオン、2,4−プテリジンジオール、葉酸、アセチレンウレア、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0095】
以上の式(XIII)〜(XVI)によって、錯合体形成のための前述の相補的要件である(1)〜(5)を満足する具体例を示した。(1)の立体相補性について、(XV)を例として説明する。2,4−ジアミノトリアジン構造(σとする)および酸イミド(ρとする)は双方が凹凸を有する。σでは凸がアミノ基でトリアジン環の窒素が凹となる。一方、ρではカルボニル基が凹で、中央のアミノ基が凸となる。σは凸凹凸の順で並んだ構造を、ρは凹凸凹の順で並んだ構造を有する。このことにより、σとρは3箇所で同程度の距離で、無理なく水素結合可能となり、強い分子間結合を実現している。
【0096】
また、(2)の相互作用相補性に関しては、式(XIII)〜(XVI)では協奏的な電子の流れとして記載したが、式(XIII)の→の出発点をδ−、→の到着点をδ+として、下記式(XIX)のように記載すると、静電的な電子の授受で説明することもできる。
【0097】
一般式(XVII)
【化43】
【0098】
再び、式(XIII)〜(XVI)で示される一連の電子の流れについて説明すると、前記電子の流れは、三次元的より、二次元(平面)的に流れるのが、エネルギー的に有利であり、好ましい。この点から、式(XIV)〜(XVI)中のRとR’は互いに結合して環を形成することが好ましく、共役していること、また芳香族環を形成していることが好ましい。また、式(XIII)中のRも環構造の基であることが好ましく、芳香族環基(アリール基および芳香族複素環基の双方を含む)であることが好ましい。
【0099】
前記式(XV)について説明すると、2,4−ジアミノトリアジン構造(A)と、酸イミド構造(B)は、3箇所で水素結合しているが、(A)ではアミノ基が凸でトリアジン環の窒素原子は凹となる
【0100】
前記分子錯合体の好ましい態様としては、前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能なn種類(nは1以上の整数)の化合物A1〜Anからなる分子錯合体が挙げられる。また、前記分子錯合体の好ましい態様としては、前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物と(チオ)カルボン酸他のケト−エノール互変異性可能な化合物との組合せからなる分子錯合体が挙げられ、前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物と下記一般式(XII)で表される(チオ)カルボン酸との組合せが特に好ましい。下記一般式(XII)で表される(チオ)カルボン酸は、前記一般式(I)で表される化合物とともに、前述の(1)〜(5)の要件を満たす相互作用によって分子錯合体を形成可能な化合物である。
【0101】
一般式(XII)
【化44】
【0102】
式中、R121は置換基を表し、Q121およびQ122は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。R121が表す置換基としては、前述の一般式(I)中のR11〜R13がそれぞれ表す置換基と同様であり、その具体例および好ましい範囲についても同様である。
【0103】
前記一般式(XII)中、R121が表す置換基については、環状構造を有する置換基が好ましい。前記環状構造を有する置換基としては、アリール基および芳香族複素環基が好ましい。前記アリール基としては、フェニル基、インデニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アントラセニル基およびピレニル基等が挙げられる。中でも、フェニル基およびナフチル基が好ましい。
【0104】
前記芳香族複素環基としては、5〜7員環構造の複素環基が好ましく、5員環または6員環がより好ましく、6員環が最も好ましい。これらの骨格の具体的例は、岩波理化学辞典 第三版増補版 (岩波書店発行)の付録11章 有機化学命名法 表4.主要複素単環式化合物の名称 1606頁 および表5.主要縮合複素環式化合物の名称 1607頁 に記載される複素環が挙げられる。
【0105】
なお、前記一般式(I)で表される化合物と錯合体を形成可能な化合物は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。また、前記分子錯合体は、前記一般式(I)で表される化合物と、2種類以上の化合物との分子錯合体であってもよい。
【0106】
前記一般式(I)で表される化合物が分子錯合体を形成しているか否かは、例えば、結晶が得られる場合には、該結晶を分析することによって錯合体形成の有無を判断することができる。また、結晶が得られない場合であっても、一般式(I)で表される化合物(ρ)と、ρと相互作用可能な官能基を有する化合物(σ)の錯合体形成による溶媒和も含めた分子間力(結合自由エネルギー)と、ρとσ各々単独の溶媒和による結合自由エネルギーが同程度であったり、後者のほうが大きい場合は、錯合体を形成しているものと推定できる。また、ρおよびσの各々の熱相転移温度パターンと、ρおよびσを化学量論的な整数比で混合した後の熱相転移温度パターンを比較し、ρおよびσの各々の熱相転移温度パターンと明瞭に異なる錯合体独自の熱物性を示すことを確認することによって、錯合体の形成の有無を判断することができる。ρとσが相互作用を及ぼさない単なる混合状態にある場合は、凝固点降下のように転移温度ピークが混合比に応じてずれるのみであるが、錯合体を形成する場合は、ほとんどの場合にその熱転移ピークが新たな温度域に発生する。さらに、錯合体と、ρおよびσのFT−IRスペクトルを各々比較し、相互作用する官能基の振動吸収スペクトルのシフトを確認することによって、錯合体形成の有無を判断することができる。
【0107】
以下に、前述の(1)〜(5)の要件を満たす組合せからなる、前記一般式(I)で表される化合物を構成要素とする分子錯合体の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
【0108】
【化45】
【0109】
【化46】
【0110】
【化47】
【0111】
【化48】
【0112】
【化49】
【0113】
【化50】
【0114】
【化51】
【0115】
【化52】
【0116】
【化53】
【0117】
【化54】
【0118】
【化55】
【0119】
【化56】
【0120】
【化57】
【0121】
【化58】
【0122】
前記一般式(I)で表される化合物および該化合物と分子錯合体を形成可能な化合物は、従来公知の製造方法を組み合わせることによって合成することができる。
【0123】
前記一般式(I)で表される化合物は、それ自身の分子間相互作用によって、または他の化合物との分子間相互作用によって分子錯合体を形成する。前記錯合体は、光学フィルム用のレターデーション上昇剤として有用である。本発明のレターデーション上昇剤は、前記一般式(I)で表される化合物が単独でそれ自身の分子間相互作用によって分子錯合体を形成する場合は、該化合物の一種を単独で構成要素とする分子錯合体であってもよいし、前記一般式(I)で表される化合物と、他の少なくとも1種の化合物(例えば前記一般式(III)〜(XII)で表される化合物)とを構成要素として含む分子錯合体であってもよい。前記一般式(I)で表される化合物と他の化合物とを構成要素とする分子錯合体は、前記一般式(I)で表される化合物と前記他の化合物とを、化学量論比で混合することによって調製することができる。例えば、前記一般式(I)で表される化合物と他の化合物とが、1:1のモル比で分子錯合体を形成する場合は、1:1のモル比で双方を混合することによって調製することができる。
【0124】
本発明では、前記分子錯合体とともに、更に、1,3,5−トリアジン環を有するホモポリマーまたはコポリマーを、レターデーション上昇剤として併用してもよい。
【0125】
本発明のレターデーション上昇剤は、ポリマーフィルムに添加することができる。前記ポリマーフィルムは、レターデーション上昇剤が添加されていない状態では、光学等方性を示すポリマーフィルムが好ましい。ここで、光学等方性とは、具体的には、本発明のレターデーション上昇剤を用いずに製造した場合、面内レターデーション(Re)が10nm未満(好ましくは5nm未満)で、厚み方向のレターデーション(Rth)が10nm未満(5nm未満であるのが好ましい)であることをいう。フィルムの面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)は、それぞれ下記式で定義される。
Re = (nx−ny)×d
Rth = [{nx+ny)/2}−nz]×d
式中、nxおよびnyは、フィルムの面内屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、そしてdはフィルムの厚さである。
【0126】
また、本発明のレターデーション上昇剤は、光学異方性のポリマーフィルムに添加することもできる。前記光学異方性のポリマーフィルムは、光学的一軸性または光学的二軸性を有することが好ましい。光学的一軸性フィルムは、光学的に正(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも大)であっても負(光軸方向の屈折率が光軸に垂直な方向の屈折率よりも小)であってもよい。光学的二軸性フィルムは、前記式の屈折率nx、nyおよびnzは、全て異なる値(nx≠ny≠nz)になる。光学異方性フィルムは、本発明のレターデーション上昇剤を用いずに製造した場合、面内レターデーション(Re)が0〜300nmであることが好ましく、0〜200nmであることがさらに好ましく、0〜100nmであることが最も好ましい。前記光学異方性フィルムの厚み方向のレターデーション(Rth)は、10〜1000nmであることが好ましく、50〜400nmであることがより好ましく、100〜300nmであることがさらに好ましい。
なお、本発明のレターデーション上昇剤を、光学等方性フィルムに添加するか、光学異方性フィルムに添加するかは、作製される光学フィルムの用途、使用される液晶表示モードの種類によって適宜決定することができる。
【0127】
本発明のレターデーション上昇剤を添加するフィルムの好ましい材料については、光学等方性フィルムを用いるか、または光学異方性フィルムを用いるかによって異なる。光学等方性フィルムの材料としては、セルロースエステルが好ましく用いられる。光学異方性フィルムの材料としては、合成ポリマー(例、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ノルボルネン樹脂)が用いられる。ただし、セルロースアセテートの酢化度の低下、あるいは冷却溶解法によるフィルムの製造により、光学異方性の(レターデーションが高い)セルロースエステルフィルムを製造することもできる。
【0128】
本発明の一態様は、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムである。
前記セルロースエステルフィルムは光学補償フィルムとして、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。
【0129】
前記セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)、4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。更には、セルロースベンゾエートのようなセルロース芳香族酸エステルやあるいはセルロースアセテートベンゾエートやセルロースプロピオネートベンゾエートのような脂肪族酸と芳香族酸との混合酸エステルを用いてもよい。
【0130】
本発明に用いるセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.3〜1.6であることが最も好ましい。
【0131】
本発明のセルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により作製することが好ましい。また、フィルムには延伸処理を実施することもできる。光学的一軸性フィルムを製造する場合は、通常の一軸延伸処理または二軸延伸処理を実施すればよい。光学的二軸性フィルムを製造する場合は、アンバランス二軸延伸処理を実施することが好ましい。アンバランス二軸延伸では、フィルムをある方向に一定倍率(例えば3〜100%、好ましくは5〜30%)延伸し、それと垂直な方向にそれ以上の倍率(例えば6〜200%、好ましくは10〜90%)延伸する。二方向の延伸処理は、同時に実施してもよい。延伸方向(アンバランス二軸延伸では延伸倍率の高い方向)と延伸後のフィルムの面内の遅相軸とは、実質的に同じ方向になることが好ましい。延伸方向と遅相軸との角度は、10゜未満であることが好ましく、5゜未満であることがさらに好ましく、3゜未満であることが最も好ましい。
【0132】
本発明のセルロースエステルフィルムの厚さは、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがさらに好ましく、20〜150μmであるのが特に好ましい。
【0133】
本発明のセルロースフィルムには、その上方に設けられる層(密着層、配向膜あるいは光学的異方性層)との密着性を改善するため、表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火災処理)を実施してもよい。
【0134】
本発明のセルロースエステルフィルムのレターデーション値、製造の際に用いられる有機溶媒、溶液の調製、フィルムの製造、フィルムの添加剤、セルロースエステルフィルムの表面処理については、特開2001−166144号公報の第110段落〜第128段落に記載の内容を適用できる。
【0135】
本発明の他の態様は、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムと、該フィルムの上方に液晶性分子を含有する光学異方性層とを有する光学補償シートである。前記液晶分子は、ディスコティク液晶分子であるのが好ましい。前記光学補償シートは、種々のモードの液晶素子に用いることができる。
【0136】
本発明の他の態様は、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であって、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである楕円偏光板である。
【0137】
また、本発明の他の態様は、液晶セルおよび両側に配置された二枚の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であり、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである液晶表示装置である。
【0138】
本発明の液晶表示装置の他の態様は、反射板、液晶セルおよび一枚の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子が、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶性分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であり、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対して、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムであることを特徴とする液晶表示装置である。
【0139】
本発明の光学補償シート、楕円偏光板および液晶表示装置についての詳細(例えば、各種の液晶表示装置の構成、液晶セル、光学補償シート、偏光素子、液晶性分子から形成される光学的異方性層、および配向膜)については、特開2001−166144号公報の第129段落〜第192段落に記載の内容を適用できる。
【0140】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
室温において、平均酢化度60.9%のセルロースアセテート45質量部、レターデーション上昇剤 化合物(17)0.68質量部、メチレンクロリド232.72質量部、メタノール42.57質量部およびn−ブタノール8.50質量部を混合して溶液(ドープ)を調製した。
得られた溶液(ドープ)を、有効長6mのバンド流延機を用いて、乾燥膜厚が100μmになるように流延して、乾燥した。
製造したセルロースアセテートフィルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおける厚み方向のレターデーション値(Rth550)を測定した。結果を第1表に示す。
【0141】
[比較例1]
レターデーション上昇剤 化合物(17)を添加しなかった以外は、実施例1と同様にフィルムを製造して、評価した。結果は第1表に示す。
【0142】
[実施例2〜4]
レターデーション上昇剤 化合物(17)に代えて、レターデーション上昇剤化合物(9)、化合物(25)および化合物(33)をそれぞれ添加した以外は、実施例1と同様にフィルムを製造して、評価した。結果は第1表に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
[実施例5]
室温において、平均酢化度60.9%のセルロースアセテート45質量部、レターデーション上昇剤 化合物(23)0.68質量部、リン酸トリフェニル(可塑剤)2.75質量部、リン酸ビフェニルジフェニル2.20質量部、メチレンクロリド232.72質量部、メタノール42.57質量部およびn−ブタノール8.50質量部を混合して溶液(ドープ)を調製した。
得られた溶液(ドープ)を、有効長6mのバンド流延機を用いて、乾燥膜厚が100μmになるように流延して、乾燥した。
製造したセルロースアセテートフィルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長550nmにおける厚み方向のレターデーション値(Rth550)を測定した。さらに、フィルム表面を観察して、ブリードアウトの有無を評価した。結果を第2表に示す。
【0145】
[実施例6〜8]
レターデーション上昇剤 化合物(23)に代えて、レターデーション上昇剤化合物(7)、化合物(15)および化合物(31)をそれぞれ同量用いた以外は、実施例5と同様にフィルムを製造して、評価した。結果を第2表に示す。
【0146】
[比較例2]
レターデーション上昇剤を添加しなかった以外は、実施例5と同様にフィルムを製造して、評価した。結果は第2表に示す。
[比較例3]
レターデーション上昇剤 化合物(23)に代えて、下記構造式で示されるRef(I)を第2表に示した添加量で添加した以外は、実施例5と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。
[比較例4]
Ref(I)に代えて、下記構造式で示されるRef(II)を添加した以外は比較例3と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。
[比較例5]
Ref(I)に代えて、下記構造式で示されるRef(III)を添加した以外は、比較例4と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。[比較例6]
Ref(I)に代えて下記構造式で示されるRef(IV)を添加した以外は、比較例5と同様にしてフィルムを製造し、評価した。結果を第2表に示す。
【0147】
【化59】
【0148】
【表2】
【0149】
第2表に示す結果から明らかな様に、従来の技術では所望のRthを得るために添加量を増やすと、ブリードアウトしてしまうという問題があるが、実施例のフィルムでは添加量を増やしてもブリードアウトすることなく、所望のRthを得ることができた。
【0150】
[実施例9]
(液晶セルの作製)
電極(ITO)付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。得られた二枚のガラス基板の表面を対向させて配置し、セルギャップを10μmに設定して、液晶(ZLI1132、メルク社製)を注入し、OCBモードの液晶セルを作製した。
【0151】
(液晶表示装置の作製)
液晶セルを挟むように、実施例5で作製したセルロースアセテートフィルム二枚を光学補償シートとして配置した。その外側に全体を挟むように、偏光素子を配置した。
作製した液晶表示装置に、55Hz矩形波で電圧を印加したところ、着色のない鮮明な画像が得られた。
【0152】
[実施例10]
(光学補償シートの支持体)
実施例5で作製したセルロースアセテートフィルムを光学補償シートの支持体として用いた。
【0153】
(配向膜の形成)
支持体の上に、下記の組成の塗布液をスライドコーターで25mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、支持体の遅相軸方向と平行の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
配向膜塗布液組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0154】
変性ポリビニルアルコール
【化60】
【0155】
(光学的異方性層の形成)
配向膜上に、下記のディスコティック液晶性化合物 1.8g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.04g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを、8.43gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を#2.5のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学補償シート(1)を作製した。
【0156】
ディスコティック液晶性化合物
【化61】
【0157】
(光学補償シートの評価)
光学的異方性層の厚さは、約1.0μmであった。光学的異方性層のみのレターデーション値をラビング軸に沿って測定したところ、レターデーションが0となる方向は存在しなかった。また、面内レターデーションは14nm(Re=14)、厚み方向のレターデーションは35nm(Rth=35)であった。
光学補償シート(1)を、ミクロトームを用いて、ラビング方向に添って垂直に切断し、極めて薄い垂直断片(サンプル)を得た。サンプルをOsO4の雰囲気中に48時間放置して、染色した。染色サンプルを、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、その顕微鏡写真を得た。染色サンプルでは、前記ディスコティック液晶性化合物のアクリロイル基が染色され、写真の像として認められた。
この写真を検討した結果、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位は、支持体の表面から傾いていることが認められた。さらに、傾斜角は、支持体表面からの距離が増加するに伴い、連続的に増加していた。
【0158】
(VAモード液晶セルの作製)
ポリビニルアルコール3質量%水溶液に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(カップリング剤)を1質量%添加した。これを、ITO電極付きのガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるように実施した。セルギャップ(d)が5.5μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.05)を注入し、VAモード液晶セルを作製した。Δnとdとの積は275nmであった。
【0159】
(VA型液晶表示装置の作製)
VAモード液晶セルに、光学補償シート(1)をセルを挟むように2枚、光学補償シートの光学的異方性層と液晶セルのガラス基板とが対面するように配置した。VAモード液晶セルの配向膜のラビング方向と光学補償シートの配向膜のラビング方向は、逆平行になるように配置した。これらの両側に、偏光素子(楕円偏光板)をクロスニコルに配置した。
なお、楕円偏光板は以下の様にして作製した。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて、偏光膜を作製した。偏光膜の片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学補償シートを、光学異方性層が外側となるように貼り付けた。反対側には、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、透明保護膜を貼り付けた。偏光膜の吸収軸と、光学異方性層のラビング方向は、平行になるように配置した。このようにして、楕円偏光板を作製した。
【0160】
VAモード液晶セルに対して、55Hz矩形波で電圧を印加した。黒表示2V、白表示6VのNBモードとし、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比とした。上下、左右からのコントラスト比を、計器(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)で測定した。その結果、正面コントラスト比が300、視野角(コントラスト比10が得られる視野の角度)が上下左右いずれも70度との良好な結果が得られた。
【0161】
[実施例11]
(光学補償シートの支持体)
実施例5で作製したセルロースアセテートフィルムを光学補償シートの支持体として用いた。
【0162】
(配向膜の形成)
支持体の上に、下記の組成の塗布液をスライドコーターで25mL/m2塗布した。60℃で2分間乾燥した。
次に、支持体の面内の主屈折率の大きい方向と平行の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。ラビング条件は、ラビングロール径が150mm、搬送速度が10m/分、ラッピング角度が6゜、ラビングロール回転数が1200rpmであった。
配向膜塗布液組成
実施例10で用いた変性ポリビニルアルコールの10質量%水溶液 24g
水 73g
メタノール 23g
グルタルアルデヒド(架橋剤)の50質量%水溶液 0.2g
【0163】
(光学的異方性層の形成)
配向膜上に、実施例10で用いたディスコティック液晶性化合物1.8g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.04g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1.0、イーストマンケミカル社製)0.01g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを、3.4gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#6のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、140℃の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、140℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射し、ディスコティック液晶性化合物を架橋した。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学補償シート(2)を作製した。
【0164】
(光学補償シートの評価)
光学的異方性層の厚さは、2.0μmであった。光学的異方性層のみのレターデーション値をラビング軸に沿って測定したところ、レターデーションが0となる方向は存在しなかった。
光学的異方性層の面内レターデーションは42nm(Re=42)、厚み方向のレターデーションは134nm(Rth=134)であった。
光学補償シート(2)を、ミクロトームを用いて、ラビング方向に添って垂直に切断し、極めて薄い垂直断片(サンプル)を得た。サンプルをOsO4の雰囲気中に48時間放置して、染色した。染色サンプルを、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、その顕微鏡写真を得た。染色サンプルでは、前記ディスコティック液晶性化合物のアクリロイル基が染色され、写真の像として認められた。
この写真を検討した結果、ディスコティック液晶性化合物の円盤状構造単位は、支持体の表面から傾いていることが認められた。さらに、傾斜角は、支持体表面からの距離が増加するに伴い、連続的に増加していた。
【0165】
(OCBモード液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行った。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるように実施した。セルギャップ(d)が8μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、Δnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、OCBモード液晶セルを作製した。Δnとdとの積は1109nm、面内レターデーションは90nm(Re=90)であった。
【0166】
(OCB型液晶表示装置の作製)
OCBモード液晶セルに、光学補償シート(2)をセルを挟むように2枚、光学補償シートの光学的異方性層と液晶セルのガラス基板とが対面するように配置した。OCBモード液晶セルの配向膜のラビング方向と光学補償シートの配向膜のラビング方向は、逆平行になるように配置した。これらの両側に、実施例10と同様に偏光素子(楕円偏光板)をクロスニコルに配置した。
OCBモード液晶セルに対して、55Hz矩形波で電圧を印加した。白表示2V、黒表示6VのNWモードとし、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比とした。上下、左右からのコントラスト比を、計器(LCD−5000、大塚電子(株)製)で測定した。その結果、上側の視野角(コントラスト比10が得られる視野の角度)が80度以上、下側の視野角が58度、左右の視野角がいずれも67度との良好な結果が得られた。
【0167】
[実施例12]
(HANモード液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行った。ITO電極付きのガラス基板をもう一枚用意し、酸化ケイ素を蒸着させて配向膜を形成した。セルギャップ(d)が4μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、Δnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、HANモード液晶セルを作製した。Δnとdとの積は558nm、面内レターデーションは45nm(Re=45)であった。
【0168】
(HAN型液晶表示装置の作製)
HANモード液晶セルの表示面側に実施例11で作製した光学補償シート(2)を一枚、光学的異方性層がセル側となるように配置した。HANモード液晶セルの配向膜のラビング方向と光学補償シートの配向膜のラビング方向は、逆平行になるように配置した。光学補償シートの上に実施例10と同様に偏光素子(楕円偏光板)を、偏光素子の透過軸と液晶セルのラビング方向との角度が45゜となるように配置した。偏光素子の上に、拡散板を配置した。HANモード液晶セルの反対側には、鏡(反射板)を配置した。
作製したHAN型液晶表示装置の表示面の法線方向から、20゜傾けた方向に光源を置き、光を照射した。HANモード液晶セルに対しては、55Hz矩形波で電圧を印加した。白表示2V、黒表示6VのNWモードとし、透過率の比(白表示/黒表示)をコントラスト比とした。上下、左右からのコントラスト比を、計器(bm−7、TOPCON社製)で測定した。その結果、上側の視野角(コントラスト比10が得られる視野の角度)が44度、下側の視野角が26度、左右の視野角がいずれも39度との良好な結果が得られた。
【0169】
【発明の効果】
本発明によれば、ブリードアウトを生じることなく、所望のレターデーションを光学フィルムに付与し得るレターデーション上昇剤を提供することができる。また、本発明によれば、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを提供することができる。さらに本発明によれば、レターデーション値が高いセルロースエステルフィルムを用いた、光学補償機能に優れた光学補償シートおよび楕円偏光板を提供することができる。また、本発明によれば、光学異方性透明支持体を用いた、画像表示特性に優れた(特に視野角の拡大、色相変化の発生が少ない等)液晶表示装置を提供することができる。
Claims (11)
- 下記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を構成要素として含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
一般式(III)
一般式(IV)
一般式(V)
一般式(VI)
一般式(VII)
一般式(VIII)
一般式(IX)
一般式(X)
一般式(XI)
- 前記一般式(I)で表されるケト−エノール互変異性可能な化合物の少なくとも1種と、前記一般式(III)〜(XI)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種とからなるセルロースエステルフィルム用レターデーション上昇剤。
- セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルム。
- セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論的比率で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmであるセルロースエステルフィルムと、該フィルムの上方に液晶性分子を含有する光学異方性層とを有する光学補償シート。
- 前記液晶分子がディスコティク液晶分子である請求項8に記載の光学補償シート。
- 透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であって、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである楕円偏光板。
- 液晶セルおよび両側に配置された二枚の偏光素子からなる液晶表示装置であって、偏光素子の少なくとも一方が、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶分子から形成された光学的異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板であり、前記透明支持体が、セルロースエステル100質量部に対し、前記一般式(I)または前記一般式(II)で表わされる化合物を0.01〜20.0質量部、および前記一般式(III)〜(XII)のいずれかで表わされる化合物の少なくとも1種を化学量論比で含有し、且つ波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値(Rth550)が60〜1000nmのセルロースエステルフィルムである液晶表示装置。
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