JP2004109355A - 光学材料の製造方法、光学材料並びに光学素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】光学樹脂の特性を損なわずに、複屈折性を制御した光学材料/光学素子を得ること。
【解決手段】射出成形、押出成形あるいは延伸の工程が、光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有し、同長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶と、光学樹脂とを含む樹脂組成物に対して適用される。射出成形、押出成形は、光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで行なう。延伸の工程は、光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで行なう。複屈折性結晶の複屈折の絶対値は0.01〜0.30の範囲、複屈折性結晶の添加濃度は0.001wt%〜30wt%の範囲であって良い。複屈折性結晶は、炭酸カルシウムや炭酸ストロンチウムであって良い。
【選択図】 なし
【解決手段】射出成形、押出成形あるいは延伸の工程が、光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有し、同長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶と、光学樹脂とを含む樹脂組成物に対して適用される。射出成形、押出成形は、光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで行なう。延伸の工程は、光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで行なう。複屈折性結晶の複屈折の絶対値は0.01〜0.30の範囲、複屈折性結晶の添加濃度は0.001wt%〜30wt%の範囲であって良い。複屈折性結晶は、炭酸カルシウムや炭酸ストロンチウムであって良い。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム状、シート状、レンズ状、ファイバー状、ロッド状等の形態を持つ各種光学素子の材料を構成する光学材料の製造方法、同方法を適用して得られる光学材料、並びに同光学材料で構成された光学素子に関し、特に、高分子材料からなるマトリックスを持ち、所望の複屈折性(非複屈折性を含む)を持つように制御された光学材料の製造方法、同方法を適用して得られる光学材料並びに同光学材料で構成された光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばポリカーボネートやポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン系樹脂等で代表される光学樹脂は、その高い透明性、加工の容易さ、取り扱い易さ、低コストなどの優れた特性により、光学フィルム、各種レンズ、光ファイバーなどの多くの光学素子を構成する材料として広く用いられている。
【0003】
しかし、これら光学素子を構成する材料の製造過程で必要とされる射出成形、押出成形、延伸などの工程において、高分子結合鎖が配向または応力を受けて、複屈折性を生じることが多い。
【0004】
図1はこれを簡単に説明する為の図である。同図に示したように、射出成形、押出成形、延伸などの工程を経た高分子光学材料は、一般に、ポリマーの結合鎖を形成する多数の単位(モノマー)1が体積的に配向方向をもって結合した状態にある。
【0005】
そして、通常光学材料として使用される高分子材料の殆どすべてについて、各単位(符号1で示した)は、屈折率に関して光学的異方性を有している。即ち、配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率nprと配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率nvtが異なっている。
【0006】
このような光学的異方性は、良く知られているように、屈折率楕円体で表現することが出来る。図1において、各結合単位1に付記されている楕円マーク2はその表式に従ったものである。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の場合、各単位1(メチルメタクリレート)の屈折率は、配向方向について相対的に小さく、配向方向と垂直な方向について相対的に大きい。従って、マクロスケールでみた時の屈折率楕円体3は、図示されているように縦長となる。
【0007】
例えばポリメチルメタクリレートの場合、npr<nvtである。ここで、一般に両者の差Δn=npr−nvtは、「配向複屈折値」と呼ばれる。実際のポリマー材料における配向複屈折値Δnは、そのポリマー材料の結合鎖(主鎖)の配向の度合に応じて変化する。結合鎖(主鎖)が延びきって理想状態まで配向した時のΔnの値は、「固有複屈折値」と呼ばれる。光学樹脂の固有複屈折値;Δn=npr−nvtの例をいくつか記せば次のようになる。
【0008】
ポリスチレン;Δn=−0.100
ポリフェレンオキサイド;Δn=+0.210
ポリカーボネート;Δn=+0.106
ポリビニルクロライド ;Δn=+0.027
ポリメチルメタクリレート;Δn=−0.0043
ポリエチレンテレフタレート;Δn=+0.105
ポリエチレン;Δn=+0.044
このように、固有複屈折率値はあくまで理想配向条件下でのΔnの値なので、実際のポリマー材料のΔnの値をΔn(real)で表わせば、0<|Δn(real)|<固有複屈折値の関係が成立する。例えば、図1に示したポリメチルメタクリレートでは固有複屈折率値=−0.0043なので、実際のポリマーにおける配向複屈折率値Δn(real)は、−0.0043<Δn(real)<0となる。
【0009】
ここで、Δn(real)=−0.0043(理想的な配向状態での値)も、Δn(real)=0(完全な無配向状態での値)も実現は困難である。同様に、ポリスチレンでは、−0.100<Δn(real)<0である。また、ポリエチレンではΔnが正の値を示し、0<Δn(real)<+0.044である。
【0010】
以後、高分子の配向に依存した複屈折を配向複屈折と言い、屈折率楕円体の長軸方向を配向複屈折方向と呼ぶこととする。また、「配向複屈折率値Δn(real)の符号」あるいはそれと同じ「固有配向複屈折率値の符号」が正(Δn>0)であることを「複屈折性の符号が正」、同様に負(Δn<0)であることを「複屈折性の符号が負」などと表現することとする。
【0011】
なお、このような複屈折性の表現方式は、棒状、楕円状等、1でないアスペクト比を持つ無機微粒子(結晶粒)にも適用出来る。その場合、微粒子の長径方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率をnpr、同長径方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率(平均屈折率)をnvtとする。そして、Δn=npr−nvtの値が正であれば「複屈折性の符号が正」、負であれば「複屈折性の符号が負」などと表現する。
【0012】
但し、長径方向に垂直な方向の偏波成分について、屈折率が均等で無いことが一般的なので、結晶構造に対応した互いに直交する3軸(a軸、b軸、c軸;長軸をc軸とする)をとり、a軸方向の偏波成分に関する屈折率をna, b軸方向の偏波成分に関する屈折率をnb,c軸方向の偏波成分に関する屈折率をnc とする。そして、npr=nc 、nvt=(na +nb )/2とする。
【0013】
ところでこのような複屈折性は、偏光を用いる光学素子の場合、光の偏光状態を乱し、その特性に悪影響を及ぼし易い。また、複屈折は偏光面の方向によって屈折率が異なる現象であるから、あらゆる偏光が混在する無偏光状態の光を用いるレンズ等の光学素子においても、結像特性を低下させるなどの影響を受ける。
【0014】
このような問題を解決するために複数の観点から提案がなされている。
【0015】
第一に、射出成形や押出成形のように樹脂を溶融させる工程を含む場合については、その溶融時の流動特性を改善することにより、高分子結合鎖の配向を起こりにくくしようという手法が提案されている。例えば、特許文献1では、可塑剤を添加することにより流動特性を改善する方法が提案されている。また、特許文献2では、複数の異なる樹脂を適切な組成比率で混合し、流動特性を改善する方法が提案されている。
【0016】
しかしながら、これらの方法では、物性の低下を招いたり、透明性が損われたりする等好ましくない問題が生じる。また実際には、これらの方法によっても全く高分子結合鎖が配向していない光学素子を得ることは困難である。
【0017】
【特許文献1】
特開昭54−16564号公報
【特許文献2】
特開2000−109669号公報
また、第二の考え方として、新たな化学構造を案出し、配向が起っても本質的に複屈折性が小さくなる樹脂を得るという方法が提案されている。例えば特許文献3、特許文献4には、新たな複屈折性の生じにくい骨格を導入する方法が開示されている。また、特許文献4〜特許文献8には、複屈折性の正負が逆のポリマー同士をブレンドする方法またはそれらを構成するモノマーと共重合する方法などが示されている。
【0018】
これらの方法は非常に優れた方法であるが、広く普及している光学樹脂とは異なる新たな樹脂を用いることになるため、従来の光学樹脂と同じような物理的・化学的特性が得られないことが多い。またコストも増大することが多い。
【特許文献3】
特開昭60−166322号公報
【特許文献4】
特開昭60−166321号公報
【特許文献5】
特開昭61−19630号公報
【特許文献6】
特開昭61−19656号公報
【特許文献7】
特開昭62−18466号公報
【特許文献8】
特開昭62−20524号公報
一方、上述のような複屈折性の低減とは反対に、光学素子に要求される機能によっては、意図的に複屈折性を持たせる技術も必要となる。このようなニーズに応えるものとして、例えば特許文献9、特許文献10では、積極的に配向度や配向方向を精密に制御しながら、所定の複屈折性を持たせた光学素子が提案されている。
【0019】
これらは優れた方法であるが、高分子結合鎖の配向により大きな複屈折性を得ようとすると、大きな配向度にしなければならない。高い配向状態にある樹脂は、エネルギー的に不安定であり、緩和現象により、徐々に高分子結合鎖の配向度が低下する。
【0020】
配向度が高い状態から大きく緩和した場合、それに伴って光学素子に無視できない変形が生じる。従って、樹脂(高分子)自体にはあまり高くない配向度を持たせた条件で、同樹脂を含む光学材料に所定の安定した複屈折状態を与えることを可能にする技術が望まれている。
【特許文献9】
特開平5−157911号公報
【特許文献10】
特開平06−075113号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の基本的な課題は、すでに広く普及している光学樹脂の優れた物理的・化学的特性を損なわずに、複屈折性を制御した光学材料あるいは同材料から構成された光学素子を得ることにある。ここで、「複屈折性の制御」には、(a)「複屈折性の低減」と(b)「安定した所定の複屈折性の保持」が含まれる。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明によれば先ず、光学素子を構成する光学材料の製造方法が提供される。同製造方法は、射出成形の工程、押出成形の工程あるいは延伸の工程を含む。そして、本発明の特徴に従い、射出成形の工程あるいは押出成形の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用される。
【0023】
また、延伸の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と前記ガラス転移温度を160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで適用される。
【0024】
これらの方法において、前記複屈折性結晶の複屈折の絶対値は0.01〜0.30の範囲にあることが好ましい。また、前記複屈折性結晶の添加濃度は0.001wt%〜30wt%の範囲にあることが好ましい。採用可能な典型的な複屈折性結晶としては、例えば炭酸カルシウムあるいは炭酸ストロンチウムがある。非複屈折性の光学材料を製造する場合にあっては、得られる光学材料の複屈折値は例えば10−4以下とされる。
【0025】
次に、本発明によれば、光学素子を構成する光学材料が提供される。同光学材料は、少なくとも射出成形の工程、押出成形の工程あるいは延伸の工程を経て得られる。
【0026】
そして、本発明の特徴に従い、射出成形の工程あるいは押出成形の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用される。
【0027】
また、延伸の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と前記ガラス転移温度を160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで適用される。
【0028】
これらの光学材料において、前記複屈折性結晶の複屈折の絶対値は0.01〜0.30の範囲にあることが好ましい。また、前記複屈折性結晶の添加濃度は0.001wt%〜30wt%の範囲にあることが好ましい。採用可能な典型的な複屈折性結晶としては、例えば炭酸カルシウムあるいは炭酸ストロンチウムがある。非複屈折性の光学材料を製造する場合にあっては、得られる光学材料の複屈折値は例えば10−4以下とされる。更に、これら光学材料で光学素子を構成することにより、本発明に従った光学素子が提供される。
【0029】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明では光学樹脂と、同光学樹脂に添加された複屈折性結晶を含む材料(樹脂組成物)が用いられる。光学樹脂としては、広く用いられているポリカーボネートやポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン系樹脂などが採用可能であるが、これに限定されるわけではない。
【0030】
例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリエチレンなど、十分な透光性を備えていれば他の樹脂であっても良い。
【0031】
また、これら光学樹脂に何らかの複屈折性結晶以外の添加物を加えた樹脂組成物、あるいは、複数の樹脂をある比率で混合した樹脂組成物に、複屈折性結晶を添加しても良い。更に、ここで添加や混合の順序を変えても良い。
【0032】
複屈折性結晶としては、適切な大きさ、形状、アスペクト比、複屈折値のものを用いる。特に大きさ及びアスペクト比については、上述した通り、対象としている光学素子に使用する光の波長よりも小さく、且つ、10nmよりも大きな長径を有するとともに、前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上であることを条件とする。
【0033】
この複屈折性結晶を上述の光学樹脂に添加し、光学素子の成形条件を制御することにより、光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖に対して複屈折性結晶が所望の配向状態になるようにする。
【0034】
ここで、所望の配向状態とは、例えば、(a)光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖の配向方向に対して、複屈折結晶がある配向度で、統計的に平行になるような配向状態、(b)光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖の配向方向に対して、複屈折結晶がある配向度で、統計的に直交するような配向状態、(c)光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖の配向方向がほぼランダムであるのに対して、複屈折結晶がある配向度で、統計的にある方向性をもつような配向状態が挙げられる。
【0035】
このような配向状態を実現するには、複屈折性結晶の形状として細長い形状が好ましく、針状または棒状、円柱状、回転楕円体状、細長い板状などの形状が好ましい。既述の通り、最大の径(長径)とそれに垂直な短径とのアスペクト比は、少なくとも1:1.1以上である必要がある。
【0036】
このようなアスペクト比を持つ形状の複屈折性結晶を光学樹脂に添加し、樹脂を溶融状態にし、射出成形または押出成形などの成形加工を行った場合、樹脂は粘弾性の特性を有する流体となる。このような流体に上述のようなアスペクト比を持つ形状の複屈折性結晶を添加すると、例えれば川の流れに丸太を浮かべたような状況になる。
【0037】
流れの中での結晶の配向方向は、結晶の周囲の流体の速度分布に依存して決まる。このことから、原理的にはアスペクト比が丁度1でない限り配向状態を制御し得ると考えられる。しかし、本発明者の検討によれば、長径は短径より少なくとも1割程度大きくなければ、実際上制御は困難である。
【0038】
また、アスペクト比に加えて、結晶のサイズも樹脂材料の流れの中での結晶の配向を左右する重要なファクタである。このことは、(ケース1)川の流れに丸太(大サイズの結晶に対応)を浮かべた場合と、(ケース2)割り箸(小サイズの結晶に対応)を浮かべた場合を想像すれば理解できる。
【0039】
即ち、ケース1とケース2では、配向に影響を及ぼす流体の体積領域の大きさに明らかに差異がある。つまり、大きな複屈折性結晶はより小さな複屈折性結晶に比べると、より広範な体積領域内の流体の流れの影響を受ける。
【0040】
溶融状態の樹脂の流れをマクロ(例えば半径数ミクロン程度の領域)で観測した場合と、ミクロ(数ナノ以下の分子オーダーに近いような領域)で見た場合を比較した時、当然のことながら、両者の流れの方向性が一致するとは限らない。一般に、ミクロな領域では乱雑な動きになり、これらの統計的な総和として表れるマクロな領域の方がなだらかな動きになる。
【0041】
このことは、余り小さなサイズの結晶では、樹脂の流れの中で秩序ある配向状態を持たせることは困難であることを意味している。樹脂が溶融するような温度では、分子の動きは非常に活発で複雑になるため、分子と同程度の大きさの複屈折性結晶では、配向状態の制御は困難である。この観点から、本発明では、結晶に10nmよりも大きな長径を要求している。
【0042】
これらのことから、溶融樹脂の流動の制御および使用する複屈折性結晶の大きさとアスペクト比の調節を行えば、結晶の配向状態を高分子結合鎖の配向状態に近づけることも可能であり、高分子結合鎖の配向状態に対して統計的にある角度をなすような配向状態にすることも可能であると考えられる。
【0043】
また光学樹脂に複屈折結晶を添加した樹脂組成物が、光に対して均一な媒質として作用し、その複屈折性が複屈折結晶の複屈折性と樹脂の複屈折性と和と見なせるようにするためには、複屈折性結晶の大きさは光の波長よりも小さくなければならない。
【0044】
この観点から、本発明では、使用される結晶に、光学素子に使用する光の波長よりも小さい長径を持つことを要求している。結局、本発明で使用される結晶は、10nmよりも大きく、光学素子に使用する光の波長よりも小さい長径を有し、長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上であることが要求されている。
【0045】
次に、光学樹脂を溶融状態にし、複屈折性結晶を配向させるためには、加熱・加圧し、ある程度の流動性を持たせ、結晶が動けるような状態にしなければならない。そのため光学樹脂をガラス転移温度より70℃以上高い温度に加熱することが好ましく、より好ましくはガラス転移温度より90℃以上高い温度に加熱される。
【0046】
但し、あまりに高温になり過ぎると、高分子鎖の動きが乱雑で複雑になるため、添加した複屈折結晶の配向制御が実際上困難になる。この観点からの検討により、光学樹脂を射出成形あるいは押出成形は、好ましくは樹脂組成物のガラス転移温度よりも200℃高い温度以下、より好ましくは樹脂組成物のガラス転移温度よりも180℃高い温度以下で行なわれる。
【0047】
ここで、本明細書でいう樹脂の「ガラス転移温度」は、複屈折結晶が添加された樹脂組成物のガラス転移温度であることに注意する必要がある。例えば、ポリカーボネートに複屈折結晶を含めてなんらかの添加物を加えている場合、それらを含んだ樹脂組成物の示すガラス転移温度のことをいう。
【0048】
溶融樹脂流動挙動と複屈折性結晶の配向には密接な関係がある。例えば押出成形により、Tダイを用いてフィルムを作製する場合、Tダイにより広げられた後は、樹脂の流動はおおよそ一方向になる。このような場合は、複屈折結晶もおおよそ同一方向に配向させることができる。光ディスク基板のように同心円状の光学素子をセンターゲート方式の金型を用いて成形する場合には、樹脂の流動は同心円状になり、高分子結合鎖は半径方向に配向する。
【0049】
しかし、より大きな複屈折性結晶には、円周方向の流動成分も加わるため、添加した複屈折性結晶は円周方向に配向する。その結果、複屈折結晶は高分子結合鎖と直交する配向状態になる。
【0050】
一般には、複屈折結晶の配向度は、全ての結晶が同一方向に向く完全配向状態から、全く偏りが無くあらゆる方向を向く無配向状態まで存在する。本願でいう「配向した状態」とは、統計的見地からある方向に配向しているとみなせる状態をいう。
【0051】
複屈折性結晶の配向度は、複屈折性結晶の大きさ、形状、アスペクト比に依存する。一般に、結晶のアスペクト比が大きいほど、配向度は大きくなる。また、同一アスペクト比であるならば、より流体場からの影響を受けやすい形状の方が配向しやすい。大きさに関しては、その結晶を取り巻く周囲の溶融樹脂の流動速度分布に依存する。
【0052】
樹脂を溶融流動させる状態ではなく、ある程度形状が保持できる状態で変形させることにより、複屈折性結晶の配向状態を制御することも可能である。樹脂は粘弾性的挙動を示すので、加熱・溶融して流体的に振舞う状態とある程度形状を保持しながら、応力を加えることにより変形させることのできる状態の境界を、厳密に決めることは困難である。しかし、実際にはある条件下でおおよそ決めることは可能である。便宜的に後者の、ある程度形状を保持しながら変形できる状態を、本明細書では「ゴム状態」と呼ぶことにする。
【0053】
ゴム状態においては、フィルム延伸などのように、おおよそフィルムの形状を保持しながら変形させることが可能である。このような加工を行うと、高分子結合鎖の配向とずり現象が生じ、添加した複屈折性結晶を配向させることができる。このような延伸を行う場合、あまり温度が高すぎると形体を保持できず樹脂が流れたり、高分子結合鎖の動きが激しくなりすぎ、複屈折性結晶の配向状態の制御が困難になる。このような観点から、延伸は、光学樹脂組成物のガラス転移温度より160℃高い温度以下、好ましくは、光学樹脂のガラス転移温度より130℃高い温度以下で行なわれる。
【0054】
逆に、温度が低すぎる場合には、成形品表面にひび割れ等の不良が発生し易くなるだけでなく、複屈折性結晶が動きにくくなり、複屈折性結晶の配向制御が困難になる。この観点から、延伸は、光学樹脂組成物のガラス転移温度より20℃低い温度以上、好ましくは、光学樹脂のガラス転移温度以上で行なわれる。
【0055】
フィルム状の光学樹脂を一軸延伸した場合は、高分子結合鎖と複屈折性結晶はともに延伸方向に配向する。その配向度は前述の射出成形と押出成形と同様に複屈折性結晶の大きさ、形状、アスペクト比に依存する。一軸延伸以外にも二軸延伸等の公知の種々の延伸方法を利用することが可能であり、これらの手法により、所望の配向状態を作り出すことができる。
【0056】
このように、複屈折結晶のアスペクト比、サイズに条件を課した上で、光学樹脂の流動化(射出成形、押出成形または延伸)に際しての温度範囲条件を複屈折結晶の配向挙動と関連させて特定し、複屈折結晶の配向を制御することを通して、流動化後に固化した状態で得られる光学材料の複屈折を制御することを試みた例はこれまで知られていなかった。
【0057】
複屈折性結晶の種類としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、炭酸バリウムなどの種々の炭酸塩、酸化チタンに代表される種々の酸化物、MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O、6CaO・6SiO2・H2 O、9Al2 O3 ・2B2 O3 などの複屈折性ウィスカーなどが挙げられる。しかし、これらに限られるわけではなく、前述の大きさ、形状、アスペクト比などの要件を満たせば、種々のものが利用可能である。
【0058】
結晶系の観点から言えば、立方晶系以外の結晶は光学的異方性を有する複屈折性の結晶であり、正方晶系、六方晶系および菱面体晶系は一軸性複屈折性結晶、斜方晶系、単斜晶系および三斜晶系は二軸性複屈折性結晶であるので、これらに属するものは利用することができる。また複屈折性結晶は単結晶であっても良いし、多結晶であっても良い。
【0059】
複屈折性結晶は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などにより表面処理されていても良い。これらの表面処理剤に限らず、種々の公知の表面処理方法を利用することも可能である。
【0060】
複屈折性結晶の正負については、前述したように、次のように定義する。複屈折性結晶の長径方向に偏光した光に対する屈折率をnpr、長径方向に直交する方向に偏光した光に対する平均屈折率をnvtとする。複屈折結晶の複屈折Δnは、下記の式で定義される。
【0061】
Δn=npr−nvt
すなわち、結晶の長径方向の屈折率が、それに直交する方向の平均屈折率よりも大きければ正の複屈折、その逆であれば負の複屈折となる。
【0062】
本発明で使用される複屈折性結晶の持つ複屈折の絶対値には特に制限はないが、添加による複屈折性制御の効率、光学樹脂との屈折率差に起因する光散乱等を考慮すると、0.01〜0.30であることが好ましく、0.05〜0.30であることが更に好ましい。
【0063】
すでに広く普及している光学樹脂の優れた物理的・化学的特性を保持したままで、複屈折性を低減した光学素子を提供するためには、次の二通りの方法がある。一つは、光学樹脂の配向複屈折性と正負逆の複屈折性を有する複屈折性結晶を添加し、高分子結合鎖と複屈折性結晶を同一方向に配向させる方法である。
【0064】
二つ目は、光学樹脂と正負同一の複屈折性を有する複屈折性結晶を添加し、高分子結合鎖と複屈折性結晶が直交するように配向させる方法である。
【0065】
正の配向複屈折性を有する光学樹脂としては、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂(例えば日本ゼオン株式会社製 ゼオノア(登録商標)、ゼオネックス(登録商標)、JSR株式会社製 アートン(登録商標))などが挙げられる。負の配向複屈折性を有する光学樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0066】
正の複屈折性を有する複屈折性結晶としては、MgSO4 ・5Mg(OH)2・3H2 O、6CaO・6SiO2 ・H2 O、9Al2 O3 ・2B2 O3 が挙げられる。負の複屈折性を示す複屈折性結晶としては、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどが挙げられる。
【0067】
これらを上述の手法に合わせて組み合わせれば良い。複屈折性結晶の添加濃度には特に制限は無いが、結晶による極微量の光散乱および高濃度に添加した場合の凝集等を考慮すれば、0.001wt%〜30wt%とすることが好ましく、0.01wt%〜15wt%とすることが更に好ましい。
【0068】
所定の複屈折性を有する光学素子を提供するには、前述の複屈折を低減する組み合わせと複屈折性結晶の正負と反対にすれば、複屈折性を強めあう結果になるため、非常に効率良く所定の複屈折性付与することができる。更に、分子サイズよりも大きな結晶を用いることで、分子オーダーの配向よりも効率良く、配向させられることも明らかである。
【0069】
その結果、フィルム延伸等の従来技術よりも少ない延伸倍率で所望の複屈折性を得ることができるので、得られる光学材料の熱安定性も高くなる。また一般に複屈折性結晶は、光学樹脂よりも複屈折性が大きいので、前述の複屈折性を低減するような組み合わせでも、組み合わせによっては大きな複屈折性を効率良く得ることができる。
【0070】
また、比較的大きな複屈折性結晶を用いれば、一度延伸した後、形状を保持したままゆっくりアニーリングすることにより、複屈折性結晶の配向度をあまり低下させずに高分子結合鎖の配向を緩和させることができる。その結果、高分子鎖はほとんど配向させずに複屈折性結晶のみを配向させた光学材料を得ることができる。その結果、得られた光学材料で構成される光学素子は、従来技術で問題となっている寸法安定性についても大きく改善されたものとなる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明のいくつかの実施例について説明する。
[実施例1]
MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 Oの針状結晶(長さ300 nm〜400 nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、光学樹脂アートン(登録商標;JSR株式会社製)へ混練し、ペレットとした。この時の同結晶の添加濃度は、重量比でアートン(登録商標)100に対し0.5の割合とした。このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM−7型)を用いて、図2に示すような平板状(35mm×35mm×2mm)に射出成形した。
【0072】
このときの射出成形条件は、ノズル温度285℃、シリンダ温度285℃、金型温度90℃とした。得られた平板状試料のリタデーション(=[複屈折値Δn]×[光路長])の面内分布を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて測定した。
【0073】
また、結晶無添加とした以外は同条件で、比較試料を作成し、同じ測定を行なった。その結果を図3に示す。図3(a)は比較試料についての測定結果を表わし、図3(b)は本実施例の結晶添加試料についての測定結果を表わしている。測定は、各平板状試料(比較試料及び結晶添加の試料)を厚み方向に透過するレーザー光を用いて行った。
【0074】
図3(a)、(b)のリタデーションマップは、35mmの辺で囲まれる平面を1mm角のセグメント群に分割し、ほぼ垂直に透過する光が受けるリタデーションの値を各セグメント毎に濃度グレードで表わして作成されたものである。
【0075】
測定範囲は、周辺部による光の屈折・回折等が及ぼす誤差を避けるために、図3(c)の網目模様で表わした部分、即ち、周辺から約5mm内側の領域とした。各セグメント内のリタデーションは、各セグメントに垂直に入射する偏光に対し最も屈折率が小さくなる方向を「進相軸」、それに直交する最も屈折率が大きくなる方向を「遅相軸」と定義し、それぞれの方向の偏光間の位相差によりリタデーションを求めた。
【0076】
各セグメント内の直線は、進相軸の方向を表わし、それに直交する方向が遅相軸となる。リタデーションの大きさは濃淡グレードで表わしている。金型の溶融したポリマーが流れ込む部位はゲートと呼ばれ、リタデーションマップの右端中央付近が平板試料のゲートに最も近い部分に相当する。従って、リタデーションマップの右側から溶融したポリマーが金型へ流れ込み、左側へ進んで行ったことになる。
【0077】
図3(a)のゲート付近では、ゲート位置に相当するところから同心円を考えた時に、その円周に沿うような方向に進相軸(屈折率が小さい方向)が向いている。遅相軸(屈折率が大きい方向)は進相軸と直交するので、ゲート位置から放射方向へ向いている。アートン(登録商標)の配向複屈折は正である(ポリマー主鎖の配向方向の屈折率がそれと直交する方向よりも大きい)ことから、アートン(登録商標)ポリマーの主鎖はゲートから放射方向へ配向していることがわかる。
【0078】
同様にして、試料各部分でのアートン(登録商標)の配向方向を知ることができる。ただし、これは各セグメントの厚さ方向全域での平均値であり、表面近傍の薄い層ではより内部とは配向方向が異なる部位もある。しかし、表面層以外のほとんどの部分では統計的にこの方向に配向していると考えて良い。
【0079】
図3(a)と図3(b)を比較すると、MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O針状結晶を添加したアートン(登録商標)の方が試料全体のリタデーションが小さく、ゲートから最も遠い位置では進相軸の向きが90度異なっていることがわかる。
【0080】
走査型電子顕微鏡により、射出成形品内部の針状結晶の配向状況を観察したところ、ゲート付近では前述の同心円の円周方向に沿うように、ゲートから最も遠い位置では図3(b)中の進相軸に直交するような方向に(遅相軸に沿うような方向に)、それぞれ配向していることが確認できた。従って、ポリマー主鎖とほぼ直交する方向に、長軸方向の屈折率が短軸方向の屈折率より大きいMgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O針状結晶が配向することにより、アートン(登録商標)ポリマーの正の配向複屈折を相殺できたことが確認できた。
【0081】
測定領域内の平均リタデーションはアートン(登録商標)のみの場合が41.0nmであったのに対し、MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O針状結晶を添加した場合は23.4nmに減少した。
【0082】
[実施例2]
6CaO・6SiO2 ・H2 Oの針状結晶(長さ250nm〜350nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、透明樹脂アートン(登録商標)(JSR株式会社製)へ混練し、ペレットとした。この時の同結晶の添加濃度は、重量比でアートン(登録商標)100に対し0.5の割合とした。
【0083】
このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM−7型)を用いて、平板状(35mm×35mm×2mm)に射出成形した。このときの射出成形条件は、ノズル温度285℃、シリンダ温度285℃、金型温度90℃とした。得られた平板状試料のリタデーション(=[複屈折値Δn]×[光路長])の面内分布を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて測定した。
【0084】
その結果を図4に示す。図4(a)は比較試料についての測定結果を表わし、図4(b)は本実施例の結晶添加試料についての測定結果を表わしている。
【0085】
測定は、各平板状試料(比較試料及び結晶添加の試料)を厚み方向に透過するレーザー光を用いて行った。
【0086】
図4(a)、(b)のリタデーションマップは、35mmの辺で囲まれる平面を1mm角のセグメント群で分割し、ほぼ垂直に透過する光が受けるリタデーションの値をセグメント毎に濃淡グレードで表わしたものである。測定範囲は、周辺部による光の屈折・回折等が及ぼす誤差を避けるために、図4(c)の網目模様で表わした、周辺から約5mm内側の領域とした。各セグメント内のリタデーションは、各セグメントに垂直に入射する偏光に対し最も屈折率が小さくなる方向を「進相軸」、それに直交する最も屈折率が大きくなる方向を「遅相軸」と定義し、それぞれの方向の偏光間の位相差によりリタデーションを求めた。各セグメント内の直線は、進相軸の方向を表わし、それに直交する方向が遅相軸となる。リタデーションの大きさは濃淡グレードで表わしている。金型の溶融したポリマーが流れ込む部位はゲートと呼ばれ、リタデーションマップの右端中央付近が平板試料のゲートに最も近い部分に相当する。従って、リタデーションマップの右側から溶融したポリマーが金型へ流れ込み、左側へ進んで行ったことになる。
【0087】
図4(a)のゲート付近では、ゲート位置に相当するところから同心円を考えた時に、その円周に沿うような方向に進相軸(屈折率が小さい方向)が向いている。遅相軸(屈折率が大きい方向)は進相軸と直交するので、ゲート位置から放射方向へ向いている。アートン(登録商標)の配向複屈折は正である(ポリマー主鎖の配向方向の屈折率がそれと直交する方向よりも大きい)ことから、アートン(登録商標)ポリマーの主鎖はゲートから放射方向へ配向していることがわかる。
【0088】
同様にして、試料各部分でのアートン(登録商標)の配向方向を知ることができる。ただし、これは各セグメントの厚さ方向全域での平均値であり、表面近傍の薄い層ではより内部とは配向方向が異なる部位もある。しかし、表面層以外のほとんどの部分では統計的にこの方向に配向していると考えて良い。
【0089】
図4(a)と(b)を比較すると、6CaO・6SiO2 ・H2 O針状結晶を添加したアートン(登録商標)の方が試料全体のリタデーションが小さくなっていることがわかる。
【0090】
走査型電子顕微鏡により、射出成形品内部の針状結晶の配向状況を観察したところ、ゲート付近では前述の同心円の円周方向に沿うように、ゲートから最も遠い位置では図4(b)中の進相軸に沿うような方向に、それぞれ配向していることが確認できた。従って、ポリマー主鎖とほぼ直交する方向に、長軸方向の屈折率が短軸方向の屈折率より大きい6CaO・6SiO2 ・H2 O針状結晶が配向することにより、アートン(登録商標)ポリマーの正の配向複屈折を相殺できたことが確認できた。
【0091】
測定領域内の平均リタデーションはアートン(登録商標)のみの場合が41.0nmであったのに対し、6CaO・6SiO2 ・H2 O針状結晶を添加した場合は35.8nmに減少した。
【0092】
[実施例3]
炭酸ストロンチウムSrCO3 の針状結晶(長さ100 nm〜200 nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、光学樹脂ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、アクリペット(登録商標)(VH)へ混練し、ペレットとした。この時の炭酸ストロンチウム針状結晶の添加濃度は、重量比でポリメチルメタクリレート100に対し0.02の割合とした。
【0093】
このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM−7型)を用いて、平板状(35mm×35mm×2mm)に射出成形した。このときの射出成形条件は、ノズル温度255℃、シリンダ温度255℃、金型温度80℃とした。得られた平板状試料のリタデーション(=[複屈折値Δn]×[光路長])の面内分布を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて測定した。
【0094】
その結果を図5に示す。図5(a)は比較試料についての測定結果を表わし、図5(b)は本実施例の結晶添加試料についての測定結果を表わしている。
【0095】
測定は、各平板状試料(比較試料及び結晶添加の試料)を厚み方向に透過するレーザー光を用いて行った。
【0096】
図5(a)、(b)のリタデーションマップは、35mmの辺で囲まれる平面を1mm角のセグメント群で分割し、ほぼ垂直に透過する光が受けるリタデーションの値を各セグメント毎に表わしたものである。測定範囲は、周辺部による光の屈折・回折等が及ぼす誤差を避けるために、図5(c)の網目模様で表わした、周辺から約5mm内側の領域とした。
【0097】
各セグメント内のリタデーションは、各セグメントに垂直に入射する偏光に対し最も屈折率が小さくなる方向を「進相軸」、それに直交する最も屈折率が大きくなる方向を「遅相軸」と定義し、それぞれの方向の偏光間の位相差によりリタデーションを求めた。各セグメント内の直線は、進相軸の方向を表わし、それに直交する方向が遅相軸となる。リタデーションの大きさは濃淡グレードによって表わしている。
【0098】
金型の溶融したポリマーが流れ込む部位はゲートと呼ばれ、リタデーションマップの右端中央付近が平板試料のゲートに最も近い部分に相当する。従って、リタデーションマップの右側から溶融したポリマーが金型へ流れ込み、左側へ進んで行ったことになる。
【0099】
図5(a)のゲート付近では、ゲート位置に相当するところから放射状に進相軸(屈折率が小さい方向)が向いている。遅相軸(屈折率が大きい方向)は進相軸と直交するので、ゲート位置を中心に同心円を考えた時、その円周に沿うような方向へ向いている。ポリメチルメタクリレートの配向複屈折は負である(ポリマー主鎖の配向方向の屈折率がそれと直交する方向よりも小さい)ことから、ポリメチルメタクリレートの主鎖はゲートから放射方向へ配向していることがわかる。
【0100】
同様にして、試料各部分でのポリメチルメタクリレートの配向方向を知ることができる。ただし、これは各セグメントの厚さ方向全域での平均値であり、表面近傍の薄い層ではより内部とは配向方向が異なる部位もある。しかし、表面層以外のほとんどの部分では統計的にこの方向に配向していると考えて良い。
【0101】
図5(a)と(b)を比較すると、炭酸ストロンチウム針状結晶添加ポリメチルメタクリレートの方が試料全体のリタデーションが小さくなっていることがわかる。走査型電子顕微鏡により、射出成形品内部の針状結晶の配向状況を観察したところ、ゲート付近では前述の同心円の円周方向に沿うように、ゲートから最も遠い位置では図5(b)中の進相軸に沿うような方向に、それぞれ配向していることが確認できた。
【0102】
ポリマー主鎖とほぼ直交する方向に、長軸方向の屈折率が短軸方向の屈折率より小さい炭酸ストロンチウム針状結晶が配向することにより、ポリメチルメタクリレートの負の配向複屈折を相殺できたことが確認できた。測定領域内の平均リタデーションはポリメチルメタクリレートのみの場合が7.8nmであったのに対し、炭酸ストロンチウム針状結晶を添加した場合は2.4nmに減少した。
【0103】
[実施例4]
アラゴナイト系炭酸カルシウムCaCO3 の針状結晶(長さ100nm〜200nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、光学樹脂ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、ユーピロン(登録商標)(H−4000)へ混練し、ペレットとした。この時の炭酸カルシウム針状結晶の添加濃度は、重量比でポリカーボネート100に対し3の割合とした。
【0104】
このペレットを、押出成形機によりシリンダー温度290℃、Tダイス温度280℃で幅650mmのTダイスリップより鉛直下に吐出し、引取速度5.0m/min.で巻き取り、シート厚さ150μmのポリカーボネート樹脂シートを得た。複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて、シートの周辺から50mmより内側を、シートの幅方向(横断する方向)に50mm間隔で12点測定し、その平均リタデーションを求めた。
【0105】
その結果、リタデーションは約5.5nmであったことから、光路長150μmで割ることにより、平均複屈折値3.7×10−5が求められた。炭酸カルシウム針状結晶を添加しなかった場合は、同様な製法で得られたシートの平均複屈折値が4.4×10−4であったことから、炭酸カルシウム針状結晶の添加により大きく複屈折が低減されたことがわかる。
【0106】
[実施例5]
炭酸ストロンチウム針状結晶(長さ90nm〜150nm)を0.03g計り取り、サンプル管へ入れた。そこに純正化学株式会社製テトラヒドロフランを6.0g加えた。本多電子株式会社製超音波洗浄器W−113MK−IIを用いて、24kHz、5分間の超音波照射を行い、炭酸ストロンチウム針状結晶微粒子をテトラヒドロフランへ分散させた。
【0107】
更に、JSR株式会社製光学樹脂アートン(登録商標)を1.5g加え、東京理化器械株式会社製振盪機マルチシェーカーMMS−310型により、140rpm、12時間振とうした。得られたポリマー溶液を水平なガラス板上にナイフコーターを用いて展開し、室温で溶媒を蒸発させた。
【0108】
ガラス板より厚さ約50μmのポリマーフィルムを剥がし、東京理化器械株式会社製真空定温乾燥器VOS−301SDを用い、100Pa、70℃で24時間減圧乾燥した。
【0109】
このようにして得られたフィルムサンプルを、株式会社エー・アンド・デイ社製汎用試験機RTC−1210Aを用い、延伸温度235℃においてフィルムの一軸延伸を行った。この時の延伸倍率は1.75倍とした。延伸したフィルムの複屈折を有限会社ユニオプト製ABR−10Aを用いて測定した。
【0110】
炭酸ストロンチウム針状結晶を添加した場合の複屈折値は−1.5×10−5であったのに対し、炭酸ストロンチウム針状結晶を添加しなかった場合は1.7×10−4であった。この結果から、炭酸ストロンチウム針状結晶により複屈折が大幅に低減されたことがわかる。
【0111】
[実施例6]
アラゴナイト系炭酸カルシウムCaCO3 の針状結晶(長さ100nm〜200nm)を0.05g計り取り、サンプル管へ入れた。そこに純正化学株式会社製テトラヒドロフランを6.0g加えた。本多電子株式会社製超音波洗浄器W−113MK−IIを用いて、24kHz、5分間の超音波照射を行い、炭酸ストロンチウム針状結晶微粒子をテトラヒドロフランへ分散させた。
【0112】
更に、光学樹脂ポリメチルメタクリレートを1.5g加え、東京理化器械株式会社製振盪機マルチシェーカーMMS−310型により、140rpm、12時間振とうした。得られたポリマー溶液を水平なガラス板上にナイフコーターを用いて展開し、室温で溶媒を蒸発させた。
【0113】
ガラス板より厚さ約50μmのポリマーフィルムを剥がし、東京理化器械株式会社製真空定温乾燥器VOS−301SDを用い、100Pa、70℃で24時間減圧乾燥した。
【0114】
このようにして得られたフィルムサンプルを、株式会社エー・アンド・デイ社製汎用試験機RTC−1210Aを用い、延伸温度150℃においてフィルムの一軸延伸を行った。この時の延伸倍率は2倍とした。延伸終了後、延伸倍率2倍の状態にフィルムを保持したまま、フィルム周囲の温度を140℃に下げ、24時間放置した。
【0115】
得られたフィルムの複屈折を有限会社ユニオプト製ABR−10Aを用いて測定した。炭酸ストロンチウム針状結晶を添加した場合の複屈折値が−1.5×10−4であったのに対し、炭酸ストロンチウム針状結晶を添加しなかった場合は−9.7×10−6であった。この結果からフィルム内で高分子結合鎖が緩和し、非常に配向度が低い状態であるにも関わらず、大きな複屈折性を有するフィルムが作製できたことがわかる。
【0116】
【発明の効果】
本発明によれば、すでに広く普及している光学樹脂の優れた物理的・化学的特性を損なわずに、複屈折性を制御した光学材料あるいは同材料から構成された光学素子を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子材料の配向複屈折性について説明する図である。
【図2】実施例1〜実施例3において、射出成形によって得られる板状試料について説明する図である。
【図3】実施例1におけるリタデーションの測定結果を説明する図で、(a)は結晶無添加の試料のリタデーション分布を表わし、(b)は結晶添加の試料のリタデーション分布を表わしている。
【図4】実施例2におけるリタデーションの測定結果を説明する図で、(a)は結晶無添加の試料のリタデーション分布を表わし、(b)は結晶添加の試料のリタデーション分布を表わしている。
【図5】実施例3におけるリタデーションの測定結果を説明する図で、(a)は結晶無添加の試料のリタデーション分布を表わし、(b)は結晶添加の試料のリタデーション分布を表わしている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム状、シート状、レンズ状、ファイバー状、ロッド状等の形態を持つ各種光学素子の材料を構成する光学材料の製造方法、同方法を適用して得られる光学材料、並びに同光学材料で構成された光学素子に関し、特に、高分子材料からなるマトリックスを持ち、所望の複屈折性(非複屈折性を含む)を持つように制御された光学材料の製造方法、同方法を適用して得られる光学材料並びに同光学材料で構成された光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばポリカーボネートやポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン系樹脂等で代表される光学樹脂は、その高い透明性、加工の容易さ、取り扱い易さ、低コストなどの優れた特性により、光学フィルム、各種レンズ、光ファイバーなどの多くの光学素子を構成する材料として広く用いられている。
【0003】
しかし、これら光学素子を構成する材料の製造過程で必要とされる射出成形、押出成形、延伸などの工程において、高分子結合鎖が配向または応力を受けて、複屈折性を生じることが多い。
【0004】
図1はこれを簡単に説明する為の図である。同図に示したように、射出成形、押出成形、延伸などの工程を経た高分子光学材料は、一般に、ポリマーの結合鎖を形成する多数の単位(モノマー)1が体積的に配向方向をもって結合した状態にある。
【0005】
そして、通常光学材料として使用される高分子材料の殆どすべてについて、各単位(符号1で示した)は、屈折率に関して光学的異方性を有している。即ち、配向方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率nprと配向方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率nvtが異なっている。
【0006】
このような光学的異方性は、良く知られているように、屈折率楕円体で表現することが出来る。図1において、各結合単位1に付記されている楕円マーク2はその表式に従ったものである。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の場合、各単位1(メチルメタクリレート)の屈折率は、配向方向について相対的に小さく、配向方向と垂直な方向について相対的に大きい。従って、マクロスケールでみた時の屈折率楕円体3は、図示されているように縦長となる。
【0007】
例えばポリメチルメタクリレートの場合、npr<nvtである。ここで、一般に両者の差Δn=npr−nvtは、「配向複屈折値」と呼ばれる。実際のポリマー材料における配向複屈折値Δnは、そのポリマー材料の結合鎖(主鎖)の配向の度合に応じて変化する。結合鎖(主鎖)が延びきって理想状態まで配向した時のΔnの値は、「固有複屈折値」と呼ばれる。光学樹脂の固有複屈折値;Δn=npr−nvtの例をいくつか記せば次のようになる。
【0008】
ポリスチレン;Δn=−0.100
ポリフェレンオキサイド;Δn=+0.210
ポリカーボネート;Δn=+0.106
ポリビニルクロライド ;Δn=+0.027
ポリメチルメタクリレート;Δn=−0.0043
ポリエチレンテレフタレート;Δn=+0.105
ポリエチレン;Δn=+0.044
このように、固有複屈折率値はあくまで理想配向条件下でのΔnの値なので、実際のポリマー材料のΔnの値をΔn(real)で表わせば、0<|Δn(real)|<固有複屈折値の関係が成立する。例えば、図1に示したポリメチルメタクリレートでは固有複屈折率値=−0.0043なので、実際のポリマーにおける配向複屈折率値Δn(real)は、−0.0043<Δn(real)<0となる。
【0009】
ここで、Δn(real)=−0.0043(理想的な配向状態での値)も、Δn(real)=0(完全な無配向状態での値)も実現は困難である。同様に、ポリスチレンでは、−0.100<Δn(real)<0である。また、ポリエチレンではΔnが正の値を示し、0<Δn(real)<+0.044である。
【0010】
以後、高分子の配向に依存した複屈折を配向複屈折と言い、屈折率楕円体の長軸方向を配向複屈折方向と呼ぶこととする。また、「配向複屈折率値Δn(real)の符号」あるいはそれと同じ「固有配向複屈折率値の符号」が正(Δn>0)であることを「複屈折性の符号が正」、同様に負(Δn<0)であることを「複屈折性の符号が負」などと表現することとする。
【0011】
なお、このような複屈折性の表現方式は、棒状、楕円状等、1でないアスペクト比を持つ無機微粒子(結晶粒)にも適用出来る。その場合、微粒子の長径方向に平行な方向の偏波成分に関する屈折率をnpr、同長径方向に垂直な方向の偏波成分に関する屈折率(平均屈折率)をnvtとする。そして、Δn=npr−nvtの値が正であれば「複屈折性の符号が正」、負であれば「複屈折性の符号が負」などと表現する。
【0012】
但し、長径方向に垂直な方向の偏波成分について、屈折率が均等で無いことが一般的なので、結晶構造に対応した互いに直交する3軸(a軸、b軸、c軸;長軸をc軸とする)をとり、a軸方向の偏波成分に関する屈折率をna, b軸方向の偏波成分に関する屈折率をnb,c軸方向の偏波成分に関する屈折率をnc とする。そして、npr=nc 、nvt=(na +nb )/2とする。
【0013】
ところでこのような複屈折性は、偏光を用いる光学素子の場合、光の偏光状態を乱し、その特性に悪影響を及ぼし易い。また、複屈折は偏光面の方向によって屈折率が異なる現象であるから、あらゆる偏光が混在する無偏光状態の光を用いるレンズ等の光学素子においても、結像特性を低下させるなどの影響を受ける。
【0014】
このような問題を解決するために複数の観点から提案がなされている。
【0015】
第一に、射出成形や押出成形のように樹脂を溶融させる工程を含む場合については、その溶融時の流動特性を改善することにより、高分子結合鎖の配向を起こりにくくしようという手法が提案されている。例えば、特許文献1では、可塑剤を添加することにより流動特性を改善する方法が提案されている。また、特許文献2では、複数の異なる樹脂を適切な組成比率で混合し、流動特性を改善する方法が提案されている。
【0016】
しかしながら、これらの方法では、物性の低下を招いたり、透明性が損われたりする等好ましくない問題が生じる。また実際には、これらの方法によっても全く高分子結合鎖が配向していない光学素子を得ることは困難である。
【0017】
【特許文献1】
特開昭54−16564号公報
【特許文献2】
特開2000−109669号公報
また、第二の考え方として、新たな化学構造を案出し、配向が起っても本質的に複屈折性が小さくなる樹脂を得るという方法が提案されている。例えば特許文献3、特許文献4には、新たな複屈折性の生じにくい骨格を導入する方法が開示されている。また、特許文献4〜特許文献8には、複屈折性の正負が逆のポリマー同士をブレンドする方法またはそれらを構成するモノマーと共重合する方法などが示されている。
【0018】
これらの方法は非常に優れた方法であるが、広く普及している光学樹脂とは異なる新たな樹脂を用いることになるため、従来の光学樹脂と同じような物理的・化学的特性が得られないことが多い。またコストも増大することが多い。
【特許文献3】
特開昭60−166322号公報
【特許文献4】
特開昭60−166321号公報
【特許文献5】
特開昭61−19630号公報
【特許文献6】
特開昭61−19656号公報
【特許文献7】
特開昭62−18466号公報
【特許文献8】
特開昭62−20524号公報
一方、上述のような複屈折性の低減とは反対に、光学素子に要求される機能によっては、意図的に複屈折性を持たせる技術も必要となる。このようなニーズに応えるものとして、例えば特許文献9、特許文献10では、積極的に配向度や配向方向を精密に制御しながら、所定の複屈折性を持たせた光学素子が提案されている。
【0019】
これらは優れた方法であるが、高分子結合鎖の配向により大きな複屈折性を得ようとすると、大きな配向度にしなければならない。高い配向状態にある樹脂は、エネルギー的に不安定であり、緩和現象により、徐々に高分子結合鎖の配向度が低下する。
【0020】
配向度が高い状態から大きく緩和した場合、それに伴って光学素子に無視できない変形が生じる。従って、樹脂(高分子)自体にはあまり高くない配向度を持たせた条件で、同樹脂を含む光学材料に所定の安定した複屈折状態を与えることを可能にする技術が望まれている。
【特許文献9】
特開平5−157911号公報
【特許文献10】
特開平06−075113号公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の基本的な課題は、すでに広く普及している光学樹脂の優れた物理的・化学的特性を損なわずに、複屈折性を制御した光学材料あるいは同材料から構成された光学素子を得ることにある。ここで、「複屈折性の制御」には、(a)「複屈折性の低減」と(b)「安定した所定の複屈折性の保持」が含まれる。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明によれば先ず、光学素子を構成する光学材料の製造方法が提供される。同製造方法は、射出成形の工程、押出成形の工程あるいは延伸の工程を含む。そして、本発明の特徴に従い、射出成形の工程あるいは押出成形の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用される。
【0023】
また、延伸の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と前記ガラス転移温度を160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで適用される。
【0024】
これらの方法において、前記複屈折性結晶の複屈折の絶対値は0.01〜0.30の範囲にあることが好ましい。また、前記複屈折性結晶の添加濃度は0.001wt%〜30wt%の範囲にあることが好ましい。採用可能な典型的な複屈折性結晶としては、例えば炭酸カルシウムあるいは炭酸ストロンチウムがある。非複屈折性の光学材料を製造する場合にあっては、得られる光学材料の複屈折値は例えば10−4以下とされる。
【0025】
次に、本発明によれば、光学素子を構成する光学材料が提供される。同光学材料は、少なくとも射出成形の工程、押出成形の工程あるいは延伸の工程を経て得られる。
【0026】
そして、本発明の特徴に従い、射出成形の工程あるいは押出成形の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用される。
【0027】
また、延伸の工程については、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と前記ガラス転移温度を160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで適用される。
【0028】
これらの光学材料において、前記複屈折性結晶の複屈折の絶対値は0.01〜0.30の範囲にあることが好ましい。また、前記複屈折性結晶の添加濃度は0.001wt%〜30wt%の範囲にあることが好ましい。採用可能な典型的な複屈折性結晶としては、例えば炭酸カルシウムあるいは炭酸ストロンチウムがある。非複屈折性の光学材料を製造する場合にあっては、得られる光学材料の複屈折値は例えば10−4以下とされる。更に、これら光学材料で光学素子を構成することにより、本発明に従った光学素子が提供される。
【0029】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明では光学樹脂と、同光学樹脂に添加された複屈折性結晶を含む材料(樹脂組成物)が用いられる。光学樹脂としては、広く用いられているポリカーボネートやポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、ノルボルネン系樹脂などが採用可能であるが、これに限定されるわけではない。
【0030】
例えば、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリエチレンなど、十分な透光性を備えていれば他の樹脂であっても良い。
【0031】
また、これら光学樹脂に何らかの複屈折性結晶以外の添加物を加えた樹脂組成物、あるいは、複数の樹脂をある比率で混合した樹脂組成物に、複屈折性結晶を添加しても良い。更に、ここで添加や混合の順序を変えても良い。
【0032】
複屈折性結晶としては、適切な大きさ、形状、アスペクト比、複屈折値のものを用いる。特に大きさ及びアスペクト比については、上述した通り、対象としている光学素子に使用する光の波長よりも小さく、且つ、10nmよりも大きな長径を有するとともに、前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上であることを条件とする。
【0033】
この複屈折性結晶を上述の光学樹脂に添加し、光学素子の成形条件を制御することにより、光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖に対して複屈折性結晶が所望の配向状態になるようにする。
【0034】
ここで、所望の配向状態とは、例えば、(a)光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖の配向方向に対して、複屈折結晶がある配向度で、統計的に平行になるような配向状態、(b)光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖の配向方向に対して、複屈折結晶がある配向度で、統計的に直交するような配向状態、(c)光学素子を構成する光学材料中の高分子結合鎖の配向方向がほぼランダムであるのに対して、複屈折結晶がある配向度で、統計的にある方向性をもつような配向状態が挙げられる。
【0035】
このような配向状態を実現するには、複屈折性結晶の形状として細長い形状が好ましく、針状または棒状、円柱状、回転楕円体状、細長い板状などの形状が好ましい。既述の通り、最大の径(長径)とそれに垂直な短径とのアスペクト比は、少なくとも1:1.1以上である必要がある。
【0036】
このようなアスペクト比を持つ形状の複屈折性結晶を光学樹脂に添加し、樹脂を溶融状態にし、射出成形または押出成形などの成形加工を行った場合、樹脂は粘弾性の特性を有する流体となる。このような流体に上述のようなアスペクト比を持つ形状の複屈折性結晶を添加すると、例えれば川の流れに丸太を浮かべたような状況になる。
【0037】
流れの中での結晶の配向方向は、結晶の周囲の流体の速度分布に依存して決まる。このことから、原理的にはアスペクト比が丁度1でない限り配向状態を制御し得ると考えられる。しかし、本発明者の検討によれば、長径は短径より少なくとも1割程度大きくなければ、実際上制御は困難である。
【0038】
また、アスペクト比に加えて、結晶のサイズも樹脂材料の流れの中での結晶の配向を左右する重要なファクタである。このことは、(ケース1)川の流れに丸太(大サイズの結晶に対応)を浮かべた場合と、(ケース2)割り箸(小サイズの結晶に対応)を浮かべた場合を想像すれば理解できる。
【0039】
即ち、ケース1とケース2では、配向に影響を及ぼす流体の体積領域の大きさに明らかに差異がある。つまり、大きな複屈折性結晶はより小さな複屈折性結晶に比べると、より広範な体積領域内の流体の流れの影響を受ける。
【0040】
溶融状態の樹脂の流れをマクロ(例えば半径数ミクロン程度の領域)で観測した場合と、ミクロ(数ナノ以下の分子オーダーに近いような領域)で見た場合を比較した時、当然のことながら、両者の流れの方向性が一致するとは限らない。一般に、ミクロな領域では乱雑な動きになり、これらの統計的な総和として表れるマクロな領域の方がなだらかな動きになる。
【0041】
このことは、余り小さなサイズの結晶では、樹脂の流れの中で秩序ある配向状態を持たせることは困難であることを意味している。樹脂が溶融するような温度では、分子の動きは非常に活発で複雑になるため、分子と同程度の大きさの複屈折性結晶では、配向状態の制御は困難である。この観点から、本発明では、結晶に10nmよりも大きな長径を要求している。
【0042】
これらのことから、溶融樹脂の流動の制御および使用する複屈折性結晶の大きさとアスペクト比の調節を行えば、結晶の配向状態を高分子結合鎖の配向状態に近づけることも可能であり、高分子結合鎖の配向状態に対して統計的にある角度をなすような配向状態にすることも可能であると考えられる。
【0043】
また光学樹脂に複屈折結晶を添加した樹脂組成物が、光に対して均一な媒質として作用し、その複屈折性が複屈折結晶の複屈折性と樹脂の複屈折性と和と見なせるようにするためには、複屈折性結晶の大きさは光の波長よりも小さくなければならない。
【0044】
この観点から、本発明では、使用される結晶に、光学素子に使用する光の波長よりも小さい長径を持つことを要求している。結局、本発明で使用される結晶は、10nmよりも大きく、光学素子に使用する光の波長よりも小さい長径を有し、長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上であることが要求されている。
【0045】
次に、光学樹脂を溶融状態にし、複屈折性結晶を配向させるためには、加熱・加圧し、ある程度の流動性を持たせ、結晶が動けるような状態にしなければならない。そのため光学樹脂をガラス転移温度より70℃以上高い温度に加熱することが好ましく、より好ましくはガラス転移温度より90℃以上高い温度に加熱される。
【0046】
但し、あまりに高温になり過ぎると、高分子鎖の動きが乱雑で複雑になるため、添加した複屈折結晶の配向制御が実際上困難になる。この観点からの検討により、光学樹脂を射出成形あるいは押出成形は、好ましくは樹脂組成物のガラス転移温度よりも200℃高い温度以下、より好ましくは樹脂組成物のガラス転移温度よりも180℃高い温度以下で行なわれる。
【0047】
ここで、本明細書でいう樹脂の「ガラス転移温度」は、複屈折結晶が添加された樹脂組成物のガラス転移温度であることに注意する必要がある。例えば、ポリカーボネートに複屈折結晶を含めてなんらかの添加物を加えている場合、それらを含んだ樹脂組成物の示すガラス転移温度のことをいう。
【0048】
溶融樹脂流動挙動と複屈折性結晶の配向には密接な関係がある。例えば押出成形により、Tダイを用いてフィルムを作製する場合、Tダイにより広げられた後は、樹脂の流動はおおよそ一方向になる。このような場合は、複屈折結晶もおおよそ同一方向に配向させることができる。光ディスク基板のように同心円状の光学素子をセンターゲート方式の金型を用いて成形する場合には、樹脂の流動は同心円状になり、高分子結合鎖は半径方向に配向する。
【0049】
しかし、より大きな複屈折性結晶には、円周方向の流動成分も加わるため、添加した複屈折性結晶は円周方向に配向する。その結果、複屈折結晶は高分子結合鎖と直交する配向状態になる。
【0050】
一般には、複屈折結晶の配向度は、全ての結晶が同一方向に向く完全配向状態から、全く偏りが無くあらゆる方向を向く無配向状態まで存在する。本願でいう「配向した状態」とは、統計的見地からある方向に配向しているとみなせる状態をいう。
【0051】
複屈折性結晶の配向度は、複屈折性結晶の大きさ、形状、アスペクト比に依存する。一般に、結晶のアスペクト比が大きいほど、配向度は大きくなる。また、同一アスペクト比であるならば、より流体場からの影響を受けやすい形状の方が配向しやすい。大きさに関しては、その結晶を取り巻く周囲の溶融樹脂の流動速度分布に依存する。
【0052】
樹脂を溶融流動させる状態ではなく、ある程度形状が保持できる状態で変形させることにより、複屈折性結晶の配向状態を制御することも可能である。樹脂は粘弾性的挙動を示すので、加熱・溶融して流体的に振舞う状態とある程度形状を保持しながら、応力を加えることにより変形させることのできる状態の境界を、厳密に決めることは困難である。しかし、実際にはある条件下でおおよそ決めることは可能である。便宜的に後者の、ある程度形状を保持しながら変形できる状態を、本明細書では「ゴム状態」と呼ぶことにする。
【0053】
ゴム状態においては、フィルム延伸などのように、おおよそフィルムの形状を保持しながら変形させることが可能である。このような加工を行うと、高分子結合鎖の配向とずり現象が生じ、添加した複屈折性結晶を配向させることができる。このような延伸を行う場合、あまり温度が高すぎると形体を保持できず樹脂が流れたり、高分子結合鎖の動きが激しくなりすぎ、複屈折性結晶の配向状態の制御が困難になる。このような観点から、延伸は、光学樹脂組成物のガラス転移温度より160℃高い温度以下、好ましくは、光学樹脂のガラス転移温度より130℃高い温度以下で行なわれる。
【0054】
逆に、温度が低すぎる場合には、成形品表面にひび割れ等の不良が発生し易くなるだけでなく、複屈折性結晶が動きにくくなり、複屈折性結晶の配向制御が困難になる。この観点から、延伸は、光学樹脂組成物のガラス転移温度より20℃低い温度以上、好ましくは、光学樹脂のガラス転移温度以上で行なわれる。
【0055】
フィルム状の光学樹脂を一軸延伸した場合は、高分子結合鎖と複屈折性結晶はともに延伸方向に配向する。その配向度は前述の射出成形と押出成形と同様に複屈折性結晶の大きさ、形状、アスペクト比に依存する。一軸延伸以外にも二軸延伸等の公知の種々の延伸方法を利用することが可能であり、これらの手法により、所望の配向状態を作り出すことができる。
【0056】
このように、複屈折結晶のアスペクト比、サイズに条件を課した上で、光学樹脂の流動化(射出成形、押出成形または延伸)に際しての温度範囲条件を複屈折結晶の配向挙動と関連させて特定し、複屈折結晶の配向を制御することを通して、流動化後に固化した状態で得られる光学材料の複屈折を制御することを試みた例はこれまで知られていなかった。
【0057】
複屈折性結晶の種類としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸コバルト、炭酸亜鉛、炭酸バリウムなどの種々の炭酸塩、酸化チタンに代表される種々の酸化物、MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O、6CaO・6SiO2・H2 O、9Al2 O3 ・2B2 O3 などの複屈折性ウィスカーなどが挙げられる。しかし、これらに限られるわけではなく、前述の大きさ、形状、アスペクト比などの要件を満たせば、種々のものが利用可能である。
【0058】
結晶系の観点から言えば、立方晶系以外の結晶は光学的異方性を有する複屈折性の結晶であり、正方晶系、六方晶系および菱面体晶系は一軸性複屈折性結晶、斜方晶系、単斜晶系および三斜晶系は二軸性複屈折性結晶であるので、これらに属するものは利用することができる。また複屈折性結晶は単結晶であっても良いし、多結晶であっても良い。
【0059】
複屈折性結晶は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などにより表面処理されていても良い。これらの表面処理剤に限らず、種々の公知の表面処理方法を利用することも可能である。
【0060】
複屈折性結晶の正負については、前述したように、次のように定義する。複屈折性結晶の長径方向に偏光した光に対する屈折率をnpr、長径方向に直交する方向に偏光した光に対する平均屈折率をnvtとする。複屈折結晶の複屈折Δnは、下記の式で定義される。
【0061】
Δn=npr−nvt
すなわち、結晶の長径方向の屈折率が、それに直交する方向の平均屈折率よりも大きければ正の複屈折、その逆であれば負の複屈折となる。
【0062】
本発明で使用される複屈折性結晶の持つ複屈折の絶対値には特に制限はないが、添加による複屈折性制御の効率、光学樹脂との屈折率差に起因する光散乱等を考慮すると、0.01〜0.30であることが好ましく、0.05〜0.30であることが更に好ましい。
【0063】
すでに広く普及している光学樹脂の優れた物理的・化学的特性を保持したままで、複屈折性を低減した光学素子を提供するためには、次の二通りの方法がある。一つは、光学樹脂の配向複屈折性と正負逆の複屈折性を有する複屈折性結晶を添加し、高分子結合鎖と複屈折性結晶を同一方向に配向させる方法である。
【0064】
二つ目は、光学樹脂と正負同一の複屈折性を有する複屈折性結晶を添加し、高分子結合鎖と複屈折性結晶が直交するように配向させる方法である。
【0065】
正の配向複屈折性を有する光学樹脂としては、ポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂(例えば日本ゼオン株式会社製 ゼオノア(登録商標)、ゼオネックス(登録商標)、JSR株式会社製 アートン(登録商標))などが挙げられる。負の配向複屈折性を有する光学樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0066】
正の複屈折性を有する複屈折性結晶としては、MgSO4 ・5Mg(OH)2・3H2 O、6CaO・6SiO2 ・H2 O、9Al2 O3 ・2B2 O3 が挙げられる。負の複屈折性を示す複屈折性結晶としては、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウムなどが挙げられる。
【0067】
これらを上述の手法に合わせて組み合わせれば良い。複屈折性結晶の添加濃度には特に制限は無いが、結晶による極微量の光散乱および高濃度に添加した場合の凝集等を考慮すれば、0.001wt%〜30wt%とすることが好ましく、0.01wt%〜15wt%とすることが更に好ましい。
【0068】
所定の複屈折性を有する光学素子を提供するには、前述の複屈折を低減する組み合わせと複屈折性結晶の正負と反対にすれば、複屈折性を強めあう結果になるため、非常に効率良く所定の複屈折性付与することができる。更に、分子サイズよりも大きな結晶を用いることで、分子オーダーの配向よりも効率良く、配向させられることも明らかである。
【0069】
その結果、フィルム延伸等の従来技術よりも少ない延伸倍率で所望の複屈折性を得ることができるので、得られる光学材料の熱安定性も高くなる。また一般に複屈折性結晶は、光学樹脂よりも複屈折性が大きいので、前述の複屈折性を低減するような組み合わせでも、組み合わせによっては大きな複屈折性を効率良く得ることができる。
【0070】
また、比較的大きな複屈折性結晶を用いれば、一度延伸した後、形状を保持したままゆっくりアニーリングすることにより、複屈折性結晶の配向度をあまり低下させずに高分子結合鎖の配向を緩和させることができる。その結果、高分子鎖はほとんど配向させずに複屈折性結晶のみを配向させた光学材料を得ることができる。その結果、得られた光学材料で構成される光学素子は、従来技術で問題となっている寸法安定性についても大きく改善されたものとなる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明のいくつかの実施例について説明する。
[実施例1]
MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 Oの針状結晶(長さ300 nm〜400 nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、光学樹脂アートン(登録商標;JSR株式会社製)へ混練し、ペレットとした。この時の同結晶の添加濃度は、重量比でアートン(登録商標)100に対し0.5の割合とした。このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM−7型)を用いて、図2に示すような平板状(35mm×35mm×2mm)に射出成形した。
【0072】
このときの射出成形条件は、ノズル温度285℃、シリンダ温度285℃、金型温度90℃とした。得られた平板状試料のリタデーション(=[複屈折値Δn]×[光路長])の面内分布を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて測定した。
【0073】
また、結晶無添加とした以外は同条件で、比較試料を作成し、同じ測定を行なった。その結果を図3に示す。図3(a)は比較試料についての測定結果を表わし、図3(b)は本実施例の結晶添加試料についての測定結果を表わしている。測定は、各平板状試料(比較試料及び結晶添加の試料)を厚み方向に透過するレーザー光を用いて行った。
【0074】
図3(a)、(b)のリタデーションマップは、35mmの辺で囲まれる平面を1mm角のセグメント群に分割し、ほぼ垂直に透過する光が受けるリタデーションの値を各セグメント毎に濃度グレードで表わして作成されたものである。
【0075】
測定範囲は、周辺部による光の屈折・回折等が及ぼす誤差を避けるために、図3(c)の網目模様で表わした部分、即ち、周辺から約5mm内側の領域とした。各セグメント内のリタデーションは、各セグメントに垂直に入射する偏光に対し最も屈折率が小さくなる方向を「進相軸」、それに直交する最も屈折率が大きくなる方向を「遅相軸」と定義し、それぞれの方向の偏光間の位相差によりリタデーションを求めた。
【0076】
各セグメント内の直線は、進相軸の方向を表わし、それに直交する方向が遅相軸となる。リタデーションの大きさは濃淡グレードで表わしている。金型の溶融したポリマーが流れ込む部位はゲートと呼ばれ、リタデーションマップの右端中央付近が平板試料のゲートに最も近い部分に相当する。従って、リタデーションマップの右側から溶融したポリマーが金型へ流れ込み、左側へ進んで行ったことになる。
【0077】
図3(a)のゲート付近では、ゲート位置に相当するところから同心円を考えた時に、その円周に沿うような方向に進相軸(屈折率が小さい方向)が向いている。遅相軸(屈折率が大きい方向)は進相軸と直交するので、ゲート位置から放射方向へ向いている。アートン(登録商標)の配向複屈折は正である(ポリマー主鎖の配向方向の屈折率がそれと直交する方向よりも大きい)ことから、アートン(登録商標)ポリマーの主鎖はゲートから放射方向へ配向していることがわかる。
【0078】
同様にして、試料各部分でのアートン(登録商標)の配向方向を知ることができる。ただし、これは各セグメントの厚さ方向全域での平均値であり、表面近傍の薄い層ではより内部とは配向方向が異なる部位もある。しかし、表面層以外のほとんどの部分では統計的にこの方向に配向していると考えて良い。
【0079】
図3(a)と図3(b)を比較すると、MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O針状結晶を添加したアートン(登録商標)の方が試料全体のリタデーションが小さく、ゲートから最も遠い位置では進相軸の向きが90度異なっていることがわかる。
【0080】
走査型電子顕微鏡により、射出成形品内部の針状結晶の配向状況を観察したところ、ゲート付近では前述の同心円の円周方向に沿うように、ゲートから最も遠い位置では図3(b)中の進相軸に直交するような方向に(遅相軸に沿うような方向に)、それぞれ配向していることが確認できた。従って、ポリマー主鎖とほぼ直交する方向に、長軸方向の屈折率が短軸方向の屈折率より大きいMgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O針状結晶が配向することにより、アートン(登録商標)ポリマーの正の配向複屈折を相殺できたことが確認できた。
【0081】
測定領域内の平均リタデーションはアートン(登録商標)のみの場合が41.0nmであったのに対し、MgSO4 ・5Mg(OH)2 ・3H2 O針状結晶を添加した場合は23.4nmに減少した。
【0082】
[実施例2]
6CaO・6SiO2 ・H2 Oの針状結晶(長さ250nm〜350nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、透明樹脂アートン(登録商標)(JSR株式会社製)へ混練し、ペレットとした。この時の同結晶の添加濃度は、重量比でアートン(登録商標)100に対し0.5の割合とした。
【0083】
このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM−7型)を用いて、平板状(35mm×35mm×2mm)に射出成形した。このときの射出成形条件は、ノズル温度285℃、シリンダ温度285℃、金型温度90℃とした。得られた平板状試料のリタデーション(=[複屈折値Δn]×[光路長])の面内分布を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて測定した。
【0084】
その結果を図4に示す。図4(a)は比較試料についての測定結果を表わし、図4(b)は本実施例の結晶添加試料についての測定結果を表わしている。
【0085】
測定は、各平板状試料(比較試料及び結晶添加の試料)を厚み方向に透過するレーザー光を用いて行った。
【0086】
図4(a)、(b)のリタデーションマップは、35mmの辺で囲まれる平面を1mm角のセグメント群で分割し、ほぼ垂直に透過する光が受けるリタデーションの値をセグメント毎に濃淡グレードで表わしたものである。測定範囲は、周辺部による光の屈折・回折等が及ぼす誤差を避けるために、図4(c)の網目模様で表わした、周辺から約5mm内側の領域とした。各セグメント内のリタデーションは、各セグメントに垂直に入射する偏光に対し最も屈折率が小さくなる方向を「進相軸」、それに直交する最も屈折率が大きくなる方向を「遅相軸」と定義し、それぞれの方向の偏光間の位相差によりリタデーションを求めた。各セグメント内の直線は、進相軸の方向を表わし、それに直交する方向が遅相軸となる。リタデーションの大きさは濃淡グレードで表わしている。金型の溶融したポリマーが流れ込む部位はゲートと呼ばれ、リタデーションマップの右端中央付近が平板試料のゲートに最も近い部分に相当する。従って、リタデーションマップの右側から溶融したポリマーが金型へ流れ込み、左側へ進んで行ったことになる。
【0087】
図4(a)のゲート付近では、ゲート位置に相当するところから同心円を考えた時に、その円周に沿うような方向に進相軸(屈折率が小さい方向)が向いている。遅相軸(屈折率が大きい方向)は進相軸と直交するので、ゲート位置から放射方向へ向いている。アートン(登録商標)の配向複屈折は正である(ポリマー主鎖の配向方向の屈折率がそれと直交する方向よりも大きい)ことから、アートン(登録商標)ポリマーの主鎖はゲートから放射方向へ配向していることがわかる。
【0088】
同様にして、試料各部分でのアートン(登録商標)の配向方向を知ることができる。ただし、これは各セグメントの厚さ方向全域での平均値であり、表面近傍の薄い層ではより内部とは配向方向が異なる部位もある。しかし、表面層以外のほとんどの部分では統計的にこの方向に配向していると考えて良い。
【0089】
図4(a)と(b)を比較すると、6CaO・6SiO2 ・H2 O針状結晶を添加したアートン(登録商標)の方が試料全体のリタデーションが小さくなっていることがわかる。
【0090】
走査型電子顕微鏡により、射出成形品内部の針状結晶の配向状況を観察したところ、ゲート付近では前述の同心円の円周方向に沿うように、ゲートから最も遠い位置では図4(b)中の進相軸に沿うような方向に、それぞれ配向していることが確認できた。従って、ポリマー主鎖とほぼ直交する方向に、長軸方向の屈折率が短軸方向の屈折率より大きい6CaO・6SiO2 ・H2 O針状結晶が配向することにより、アートン(登録商標)ポリマーの正の配向複屈折を相殺できたことが確認できた。
【0091】
測定領域内の平均リタデーションはアートン(登録商標)のみの場合が41.0nmであったのに対し、6CaO・6SiO2 ・H2 O針状結晶を添加した場合は35.8nmに減少した。
【0092】
[実施例3]
炭酸ストロンチウムSrCO3 の針状結晶(長さ100 nm〜200 nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、光学樹脂ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン株式会社製、アクリペット(登録商標)(VH)へ混練し、ペレットとした。この時の炭酸ストロンチウム針状結晶の添加濃度は、重量比でポリメチルメタクリレート100に対し0.02の割合とした。
【0093】
このペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、HM−7型)を用いて、平板状(35mm×35mm×2mm)に射出成形した。このときの射出成形条件は、ノズル温度255℃、シリンダ温度255℃、金型温度80℃とした。得られた平板状試料のリタデーション(=[複屈折値Δn]×[光路長])の面内分布を、複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて測定した。
【0094】
その結果を図5に示す。図5(a)は比較試料についての測定結果を表わし、図5(b)は本実施例の結晶添加試料についての測定結果を表わしている。
【0095】
測定は、各平板状試料(比較試料及び結晶添加の試料)を厚み方向に透過するレーザー光を用いて行った。
【0096】
図5(a)、(b)のリタデーションマップは、35mmの辺で囲まれる平面を1mm角のセグメント群で分割し、ほぼ垂直に透過する光が受けるリタデーションの値を各セグメント毎に表わしたものである。測定範囲は、周辺部による光の屈折・回折等が及ぼす誤差を避けるために、図5(c)の網目模様で表わした、周辺から約5mm内側の領域とした。
【0097】
各セグメント内のリタデーションは、各セグメントに垂直に入射する偏光に対し最も屈折率が小さくなる方向を「進相軸」、それに直交する最も屈折率が大きくなる方向を「遅相軸」と定義し、それぞれの方向の偏光間の位相差によりリタデーションを求めた。各セグメント内の直線は、進相軸の方向を表わし、それに直交する方向が遅相軸となる。リタデーションの大きさは濃淡グレードによって表わしている。
【0098】
金型の溶融したポリマーが流れ込む部位はゲートと呼ばれ、リタデーションマップの右端中央付近が平板試料のゲートに最も近い部分に相当する。従って、リタデーションマップの右側から溶融したポリマーが金型へ流れ込み、左側へ進んで行ったことになる。
【0099】
図5(a)のゲート付近では、ゲート位置に相当するところから放射状に進相軸(屈折率が小さい方向)が向いている。遅相軸(屈折率が大きい方向)は進相軸と直交するので、ゲート位置を中心に同心円を考えた時、その円周に沿うような方向へ向いている。ポリメチルメタクリレートの配向複屈折は負である(ポリマー主鎖の配向方向の屈折率がそれと直交する方向よりも小さい)ことから、ポリメチルメタクリレートの主鎖はゲートから放射方向へ配向していることがわかる。
【0100】
同様にして、試料各部分でのポリメチルメタクリレートの配向方向を知ることができる。ただし、これは各セグメントの厚さ方向全域での平均値であり、表面近傍の薄い層ではより内部とは配向方向が異なる部位もある。しかし、表面層以外のほとんどの部分では統計的にこの方向に配向していると考えて良い。
【0101】
図5(a)と(b)を比較すると、炭酸ストロンチウム針状結晶添加ポリメチルメタクリレートの方が試料全体のリタデーションが小さくなっていることがわかる。走査型電子顕微鏡により、射出成形品内部の針状結晶の配向状況を観察したところ、ゲート付近では前述の同心円の円周方向に沿うように、ゲートから最も遠い位置では図5(b)中の進相軸に沿うような方向に、それぞれ配向していることが確認できた。
【0102】
ポリマー主鎖とほぼ直交する方向に、長軸方向の屈折率が短軸方向の屈折率より小さい炭酸ストロンチウム針状結晶が配向することにより、ポリメチルメタクリレートの負の配向複屈折を相殺できたことが確認できた。測定領域内の平均リタデーションはポリメチルメタクリレートのみの場合が7.8nmであったのに対し、炭酸ストロンチウム針状結晶を添加した場合は2.4nmに減少した。
【0103】
[実施例4]
アラゴナイト系炭酸カルシウムCaCO3 の針状結晶(長さ100nm〜200nm)を、二軸エクストルーダーを用いて、光学樹脂ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、ユーピロン(登録商標)(H−4000)へ混練し、ペレットとした。この時の炭酸カルシウム針状結晶の添加濃度は、重量比でポリカーボネート100に対し3の割合とした。
【0104】
このペレットを、押出成形機によりシリンダー温度290℃、Tダイス温度280℃で幅650mmのTダイスリップより鉛直下に吐出し、引取速度5.0m/min.で巻き取り、シート厚さ150μmのポリカーボネート樹脂シートを得た。複屈折測定装置(有限会社ユニオプト社製、自動複屈折測定装置ABR−10A−EX)を用いて、シートの周辺から50mmより内側を、シートの幅方向(横断する方向)に50mm間隔で12点測定し、その平均リタデーションを求めた。
【0105】
その結果、リタデーションは約5.5nmであったことから、光路長150μmで割ることにより、平均複屈折値3.7×10−5が求められた。炭酸カルシウム針状結晶を添加しなかった場合は、同様な製法で得られたシートの平均複屈折値が4.4×10−4であったことから、炭酸カルシウム針状結晶の添加により大きく複屈折が低減されたことがわかる。
【0106】
[実施例5]
炭酸ストロンチウム針状結晶(長さ90nm〜150nm)を0.03g計り取り、サンプル管へ入れた。そこに純正化学株式会社製テトラヒドロフランを6.0g加えた。本多電子株式会社製超音波洗浄器W−113MK−IIを用いて、24kHz、5分間の超音波照射を行い、炭酸ストロンチウム針状結晶微粒子をテトラヒドロフランへ分散させた。
【0107】
更に、JSR株式会社製光学樹脂アートン(登録商標)を1.5g加え、東京理化器械株式会社製振盪機マルチシェーカーMMS−310型により、140rpm、12時間振とうした。得られたポリマー溶液を水平なガラス板上にナイフコーターを用いて展開し、室温で溶媒を蒸発させた。
【0108】
ガラス板より厚さ約50μmのポリマーフィルムを剥がし、東京理化器械株式会社製真空定温乾燥器VOS−301SDを用い、100Pa、70℃で24時間減圧乾燥した。
【0109】
このようにして得られたフィルムサンプルを、株式会社エー・アンド・デイ社製汎用試験機RTC−1210Aを用い、延伸温度235℃においてフィルムの一軸延伸を行った。この時の延伸倍率は1.75倍とした。延伸したフィルムの複屈折を有限会社ユニオプト製ABR−10Aを用いて測定した。
【0110】
炭酸ストロンチウム針状結晶を添加した場合の複屈折値は−1.5×10−5であったのに対し、炭酸ストロンチウム針状結晶を添加しなかった場合は1.7×10−4であった。この結果から、炭酸ストロンチウム針状結晶により複屈折が大幅に低減されたことがわかる。
【0111】
[実施例6]
アラゴナイト系炭酸カルシウムCaCO3 の針状結晶(長さ100nm〜200nm)を0.05g計り取り、サンプル管へ入れた。そこに純正化学株式会社製テトラヒドロフランを6.0g加えた。本多電子株式会社製超音波洗浄器W−113MK−IIを用いて、24kHz、5分間の超音波照射を行い、炭酸ストロンチウム針状結晶微粒子をテトラヒドロフランへ分散させた。
【0112】
更に、光学樹脂ポリメチルメタクリレートを1.5g加え、東京理化器械株式会社製振盪機マルチシェーカーMMS−310型により、140rpm、12時間振とうした。得られたポリマー溶液を水平なガラス板上にナイフコーターを用いて展開し、室温で溶媒を蒸発させた。
【0113】
ガラス板より厚さ約50μmのポリマーフィルムを剥がし、東京理化器械株式会社製真空定温乾燥器VOS−301SDを用い、100Pa、70℃で24時間減圧乾燥した。
【0114】
このようにして得られたフィルムサンプルを、株式会社エー・アンド・デイ社製汎用試験機RTC−1210Aを用い、延伸温度150℃においてフィルムの一軸延伸を行った。この時の延伸倍率は2倍とした。延伸終了後、延伸倍率2倍の状態にフィルムを保持したまま、フィルム周囲の温度を140℃に下げ、24時間放置した。
【0115】
得られたフィルムの複屈折を有限会社ユニオプト製ABR−10Aを用いて測定した。炭酸ストロンチウム針状結晶を添加した場合の複屈折値が−1.5×10−4であったのに対し、炭酸ストロンチウム針状結晶を添加しなかった場合は−9.7×10−6であった。この結果からフィルム内で高分子結合鎖が緩和し、非常に配向度が低い状態であるにも関わらず、大きな複屈折性を有するフィルムが作製できたことがわかる。
【0116】
【発明の効果】
本発明によれば、すでに広く普及している光学樹脂の優れた物理的・化学的特性を損なわずに、複屈折性を制御した光学材料あるいは同材料から構成された光学素子を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】高分子材料の配向複屈折性について説明する図である。
【図2】実施例1〜実施例3において、射出成形によって得られる板状試料について説明する図である。
【図3】実施例1におけるリタデーションの測定結果を説明する図で、(a)は結晶無添加の試料のリタデーション分布を表わし、(b)は結晶添加の試料のリタデーション分布を表わしている。
【図4】実施例2におけるリタデーションの測定結果を説明する図で、(a)は結晶無添加の試料のリタデーション分布を表わし、(b)は結晶添加の試料のリタデーション分布を表わしている。
【図5】実施例3におけるリタデーションの測定結果を説明する図で、(a)は結晶無添加の試料のリタデーション分布を表わし、(b)は結晶添加の試料のリタデーション分布を表わしている。
Claims (17)
- 光学素子を構成する光学材料の製造方法であって、
射出成形の工程を含み、
前記射出成形は、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用されることを特徴とする、前記光学材料の製造方法。 - 光学素子を構成する光学材料の製造方法であって、
押出成形の工程を含み、
前記押出成形は、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用されることを特徴とする、前記光学材料の製造方法。 - 光学素子を構成する光学材料の製造方法であって、
延伸の工程を含み、
前記延伸は、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と前記ガラス転移温度を160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで適用されることを特徴とする、前記光学材料の製造方法。 - 前記複屈折性結晶の複屈折の絶対値が0.01〜0.30の範囲にある、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された光学材料の製造方法。
- 前記複屈折性結晶の添加濃度が0.001wt%〜30wt%の範囲にある、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された光学材料の製造方法。
- 前記複屈折性結晶として炭酸カルシウムが添加される、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された光学材料の製造方法。
- 前記複屈折性結晶として炭酸ストロンチウムが添加される、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された光学材料の製造方法。
- 複屈折値が10−4以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された光学材料の製造方法。
- 光学素子を構成する光学材料であって、
前記光学材料は、少なくとも射出成形の工程を経て得られる光学材料であって、
前記射出成形は、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用されることを特徴とする、前記光学材料。 - 光学素子を構成する光学材料であって、
前記光学材料は、少なくとも押出成形の工程を経て得られる光学材料であって、
前記押出成形は、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を70℃〜200℃の範囲で上回る温度のもとで適用されることを特徴とする、前記光学材料。 - 光学素子を構成する光学材料であって、
前記光学材料は、少なくとも延伸の工程を経て得られる光学材料であって、
前記延伸は、光学樹脂と、前記光学素子に使用する光の波長よりも小さく10nmよりも大きな長径を有するとともに前記長径とそれに垂直な短径のアスペクト比が1:1.1以上である複屈折性結晶とを含む樹脂組成物に対して、前記光学樹脂組成物のガラス転移温度を20℃下回る温度と前記ガラス転移温度を160℃上回る温度の間の範囲の温度のもとで適用されることを特徴とする、前記光学材料。 - 前記複屈折性結晶の複屈折の絶対値が0.01〜0.30の範囲にある、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載された光学材料。
- 前記複屈折性結晶の添加濃度が0.001wt%〜30wt%の範囲にある、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載された光学材料。
- 前記複屈折性結晶として炭酸カルシウムが添加される、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載された光学材料。
- 前記複屈折性結晶として炭酸ストロンチウムが添加される、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載された光学材料。
- 10−4以下の複屈折値を有する、請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載された光学材料。
- 請求項9〜請求項16のいずれか1項に記載された光学材料で構成された光学素子。
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