JP5201002B2 - 位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、液晶パネル等の光学補償に好適に用いられる位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、及びそれを用いた偏光板、液晶表示装置に関する。
従来、液晶表示装置には光学補償用の位相差フィルムが使用されており、その位相差フィルムの一般的な製造方法としては、ポリマーフィルムを種々の延伸技術によって一軸或いは二軸延伸を行う方法が挙げられる。しかし、延伸によって発現する位相差は、ポリマーの光学特性に依存する為、位相差制御には限りがあり、十分な視野角拡大効果が得られなかった。例えば、面内の位相差値(Ro値)を大きくするために延伸処理した場合には、厚み方向の位相差値(Rt値)も増加してしまい、面内及び厚み方向において所望の位相差値を有する位相差フィルムを作成することは困難であった。
そこで、更なる視野角拡大効果を得るため、複数の位相差フィルムを積層した積層位相差フィルムとして所望の位相差値を発現させる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術では、偏光板保護フィルムが設けられた偏光板上に別途延伸処理した位相差板を貼合することで位相差フィルムとし、所望の位相差値を実現して視野角を拡大する方法が用いられている。しかしながら、この方法では、貼合するために接着剤層を介す必要があるため、その分位相差フィルム全体の厚みが増加し、薄型化が求められる液晶表示装置に使用する部材として不適であるとともに、接着剤層が位相差ムラの原因ともなり、特に高画質の液晶表示装置に用いられる場合は問題が顕在化する場合があった。
また、界面と粘着剤自身における散乱が生じるため、フィルム自体のヘイズが高くなり、液晶表示装置に用いた場合に正面コントラスト低下の原因となっていた。
また、正の複屈折性ポリマーで作成された基材に負の複屈折性ポリマー層を形成し、一度の延伸処理によって位相差フィルムを製造しようとすると、所望の位相差値を発現させることが困難で、さらに位相差ムラやヘイズなどの問題も発生することが明らかになった。
特開2006−235576号公報
本発明の目的は、延伸方向に屈折率が増加する特性を有する正の複屈折性ポリマー(正
の固有複屈折ポリマーとも言う)を用いて作成し、幅手方向に延伸処理した基材上に延伸方向と直交する方向の屈折率が増加する特性を有する負の複屈折性ポリマー(負の固有複屈折性ポリマーとも言う)を逐次押出法で積層し、その積層体を延伸することで、視野角拡大に十分な光学特性を有し、位相差ムラやヘイズの発生が抑制され、液晶表示装置等に用いた場合に高い正面コントラストを示す位相差フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.少なくとも2層の異なる光学異方性層を有する位相差フィルムの製造方法であって、溶融製膜法で製膜された正の複屈折性ポリマーからなる基材層を幅手方向に延伸し、
次いで負の複屈折性ポリマーを前記基材層上に逐次押出法で積層することで負の複屈折性層を形成した後、基材層と負の複屈折性層との積層体を基材層の延伸方向(第の延伸方向)に対して直交方向(第の延伸方向)に延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
2.前記1に記載の位相差フィルムの製造方法であって、製造される位相差フィルムの基材層の面内のレターデーション値Ro1、厚み方向のレターデーション値Rt1、および、負の複屈折性層の面内のレターデーション値Ro2、厚み方向のレターデーション値Rt2が、 下記の(2)〜(5)式を共に満たすような光学特性を有する位相差フィルムであることを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
−20≦Ro1≦ 40・・・(2)
80≦Rt1≦160・・・(3)
50≦Ro2≦200・・・(4)
−180≦Rt2≦−80・・・(5)
ただし、基材層の面内の第二の延伸方向の屈折率をnx1、面内で第二の延伸方向と直交する方向の屈折率をny1、厚み方向の屈折率をnz1、基材層の厚みをd1(nm)とし、
負の複屈折性層の面内の第二の延伸方向と直交する方向の屈折率をnx2、第二の延伸方向の屈折率をny2、厚み方向の屈折率をnz2、負の複屈折性層の厚みをd2(nm)とした場合、
Roa=(nxa−nya)×da
Rta=((nxa+nya)/2−nza)×da
(式中、aは1、2のいずれかを表す)。
3.前記1又は2に記載の位相差フィルムの製造方法によって製造された
ことを特徴とする位相差フィルム。
4.前記に記載の位相差フィルムを少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
5.前記に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする液晶表示装置。
本発明により、視野角拡大に十分な光学特性を有し、位相差ムラやヘイズの発生が抑制され、液晶表示装置等に用いた場合に高い正面コントラストを示す位相差フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の位相差フィルムの製造方法を実施する装置の概略フローシートである。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、少なくとも2層の異なる光学異方性層を有する位相差フィルムの製造方法であって、溶融製膜法で製膜された正の複屈折性ポリマーからなる基材層を幅手方向に延伸し、次いで負の複屈折性ポリマーを前記基材層上に逐次押出法で積層することで負の複屈折性層を形成した後、基材層と負の複屈折性層との積層体を基材層の延伸方向(第の延伸方向)に対して直交方向(第の延伸方向)に延伸することを特徴とする。
前記したように、正の複屈折性ポリマー基材上に負の複屈折層を積層し、一度だけ延伸処理すると、所望の位相差値を有する位相差フィルムの調整が困難であるだけでなく、出来上がったフィルムには位相差ムラ、ヘイズの発生や、コントラストの低下などの問題が生じた。しかしながら、正の複屈折性ポリマーからなる基材層をまず幅手方向に延伸し、次いで負の複屈折性層を逐次押出法で形成した後、基材層と負の複屈折性層との積層体を基材層の延伸方向(第の延伸方向)に対して直交方向(第の延伸方向)に延伸することで、位相差ムラやヘイズが発生せず、正面コントラストに優れ、視野角拡大に十分な光学特性を有する位相差フィルムが得られることを見出したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリマーが延伸方向に対して正の複屈折性を示すか否かについては下記の試験法により判断することができる。
〈ポリマーの複屈折性試験法〉
ポリマーを単独で溶媒に溶解しキャスト製膜した後、加熱乾燥し、透過率80%以上のフィルムについて複屈折性の評価を行う。
アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて屈折率測定を行い、上記フィルムを幅手方向に延伸した時に、延伸方向の屈折率をNx、また直交する面内方向の屈折率をNyとする。590nmの各々の屈折率について、(Nx−Ny)>0であるフィルムについて、該ポリマーは延伸方向に対して正の複屈折性を有すると判断する。同様にして(Nx−Ny)<0である場合、負の複屈折性を有すると判断する。
(正の複屈折性ポリマー)
本発明における正の複屈折性ポリマーは、延伸時に延伸方向の屈折率が大きくなる特性を有するポリマーであれば特に限定されないが、透明性が高く熱可塑性のあるものが好ましい。但し、複数の材料を含んだ混合物として正の位相差を発現させればよく、質量分率、体積分率で最も多い成分が正の複屈折性を有している必要はない。具体的には、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等のセルロース樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂や、これらの混合物等が挙げられる。特にセルロース樹脂が好ましく、特にセルロースエステルが好ましい。
(基材層の作製)
本発明における基材層は、溶融流延法によって製造されるが、その後の負の複屈折層の付与、延伸操作が行われることを考慮して、適切な複屈折異方性を持ったフィルムとして作製される。この複屈折異方性を調整する手段としては、公知の手段が用いられる。たとえば、膜厚、延伸温度、延伸倍率などがあげられる。
(負の複屈折性ポリマー)
負の複屈折性ポリマーは、延伸時に延伸方向と直交方向の屈折率が大きくなる特性を有するポリマーであれば特に限定されないが、複数の材料を含んだ結果として負の複屈折性を発現性を有すればよいことは、前記正の複屈折性ポリマーと同様である。特に透明性が高く熱可塑性のあるものが好ましい。更に好ましくは、共重合成分として、(複素環)芳香族置換基と重合性部位とを結合する最小原子数が0以上2以下である重合性モノマー単位を有するポリマーを含有することが好ましく、(複素環)芳香族置換基と重合性部位とを結合する最小原子数が0以上2以下である重合性モノマー単位としては、例えば下記一般式(1)で表される構造が挙げられる。ここでいう(複素)芳香族とは、環状不飽和有機化合物のうち、炭化水素のみで構成された芳香族化合物と、環構造に炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、硫黄などを含む複素芳香族化合物とを合わせた化合物群を意味する。
Figure 0005201002
一般式(1)において、Rは水素、F、Cl、Br等のハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、炭素数1〜12の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基を表す。また、Zは(複素環)芳香族置換基を表す。
(複素環)芳香族置換基としては、例えば、下記一般式(2)〜(6)で表される構造が挙げられる。
Figure 0005201002
Figure 0005201002
Figure 0005201002
Figure 0005201002
Figure 0005201002
一般式(2)〜(6)においてR、R、R及びRは、水素、F、Cl、Br等のハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、炭素数1〜12の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1〜12のアルコキシル基、炭素数1〜12のアシル基、炭素数1〜12のアシルオキシ基、炭素数1〜12のアルキルオキシカルボニル基、水酸基を有する炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基を有する炭素数1〜4の炭化水素基、炭素数1〜4の炭化水素基を有する第2級または第3級アミノ基を表す。
また(複素環)芳香族置換基と重合性部位とを結合する最小原子数が0以上2以下である化合物を形成する重合性モノマー単位としては、具体的には、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン等のアルキル置換スチレン類、1,1−ジフェニルエチレン、N−ビニルカルバゾール、2−ビニルカルバゾール、4−ビニルフェノール、4−ビニルビフェニル、メチルカルボキシフェニルメタクリルアミド、(1−アセチルインダゾール−3−イルカルボニルオキシ)エチレン、フタルイミドエチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルプロピル)スチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、2−ジメチルアミノカルボニルスチレン、2−フェニルアミノカルボニルスチレン、3−(4−ビフェニルイル)スチレン、4−(4−ビフェニルイル)スチレン、2,6−ジクロロスチレン、ペルフルオロスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,5−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニル芳香族類及びその置換体などが挙げられる。中でも、シンジオタクチック構造を持つスチレンやN−ビニルカルバゾールなどが好ましい。
また、負の複屈折性ポリマー中には、共重合成分として、前記(複素環)芳香族置換基と重合性部位とを結合する最小原子数が0以上2以下である重合性モノマー単位と共に、上記以外の共重合可能な重合性モノマーを有してもよく、共重合成分の種類数は問わない。
共重合可能な重合性モノマーとしては、好ましくは、耐熱性付与の期待できるマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等のマレイミド単量体、シアン化ビニル、無水マレイン酸などの酸無水物やその誘導体、イソプロペニルベンゼン(α−メチルスチレン)、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等のアルキル置換イソプロペニルベンゼン類、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド類が挙げられる。
(延伸)
延伸については、負の複屈折性層の付与前における延伸(第1の延伸)方向と、後における延伸(第2の延伸)方向が直交しており、第1の延伸は幅手方向への延伸である。
また、本発明における延伸方向とは、最終的に延伸前の状態に対して、いずれの方向に伸びたかを定義しているものであり、複数段階の延伸の組み合わせで達成しても良い。特に、異なる延伸倍率、速度、温度条件で構成された複数段階を経ることが、フィルムの遅相軸方向(配向角)を均一にする手段として好ましい。例えば長尺フィルムの製膜の場合、基材層の製膜後、搬送方向に縦伸した後に、テンターを用いて搬送方向と直交する幅手方向に延伸してもよい。同じ方向の延伸複数段階あってもかまわない。但し、いずれかの方向における延伸倍率が大きく、フィルの遅相軸が搬送方向または搬送方向に直交方向に向いている必要がある。第2の延伸は、主に縦延伸を行う。第2の延伸が、複数の伸操作の組み合わせであっても良いことも第1の延伸と同様である
縦延伸の方法としては、ロールの組み合わせで構成された所謂縦延伸機での延伸で行えばよい。縦延伸における幅収縮については、所望の位相差値とフィルム幅によって、収縮度合いについては、適宜選択し、フィルム張力、処理温度、フィルム−ロール幅比を変化させることによって調整できる。収縮させることにより、厚み方向の位相差値の絶対値を下げることができるが、フィルム幅は狭くなる。横延伸についても公知のピンテンター、クリップテンターなどを用いて行うことができる。
(位相差フィルムの光学特性)
本発明において、nx1、ny1、nz1は、それぞれ基材層の面内の第二の延伸方向の屈折率、面内で第二の延伸方向と直交する方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。本発明における基材層は、nx1≒ny1>nz1を満たすことが好ましく、より好ましくは基材層のレターデーション値Ro1、Rt1が
−20≦Ro1≦40 かつ 80≦Rt1≦160
を満たし、更に好ましくは
−10≦Ro1≦20 かつ 100≦Rt1≦130
を満たすことである。
また、本発明において、nx2、ny2、nz2は、それぞれの負の複屈折性層の面内の第二の延伸方向と直交する方向の屈折率、第二の延伸方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表し、nz2≧nx2>ny2を満たすことが好ましく、より好ましくは負の複屈折性層のレターデーション値Ro2、Rt2が
50≦Ro2≦200 かつ −180≦Rt2≦−80
を満たし、更に好ましくは
80≦Ro2≦180 かつ −150≦Rt2≦−100
を満たすことである。
本発明で開示される製造方法により作成される基材層と負の複屈折層が積層された位相差フィルム全体の光学特性は、面内の遅相軸方向の屈折率、面内で遅相軸方向と直交する方向の屈折率、厚み方向の屈折率をそれぞれnx3、ny3、nz3とした場合、位相差フィルムのレターデーション値Ro3、Rt3がそれぞれ50≦Ro3≦200、−70≦Rt3≦70を満たすことが好ましい。
上記各レターデーション値は下記のように定義される。
Roa=(nxa−nya)×da
Rta=((nxa+nya)/2−nza)×da
(但し、aは1、2、3のいずれかを表す)
〈屈折率の測定法〉
アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて590nmの波長における平均屈折率を測定する。その値と、王子計測機器株式会社製KOBRA21−ADHを用いて23℃、55%RHの雰囲気下で590nmの波長において3次元屈折率測定を行い、遅相軸方向の屈折率nxa、進相軸方向の屈折率nya、厚み方向の屈折率nzaを求める。
本発明で提供される製造方法では、基材層は基材層のみで施される第1の延伸と、積層体を形成したのち第1の延伸に対して直交方向に施される第2の延伸の合計2回の延伸がなされる。一方、負の複屈折層は積層体形成後の第2の延伸のみである。負の複屈折層に必要な位相差を発現させるために第2の延伸の倍率は決定されるため、第1の延伸がない場合、基材の位相差は負の複屈折層の位相差によって一義的に決まってしまう。しかし、あらかじめ基材に第1の延伸を施すことで、基材のみの位相差を調節することができるため、基材と負の複屈折層の位相差の独立制御が可能となる。よって、それぞれの層が任意の位相差を持った積層体を一体成形することができる。
本発明で開示される製造方法により作成される位相差フィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく、0〜0.5%であることが特に好ましい。
また本発明で開示される製造方法により作成される位相差フィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
本発明における直交方向というのは、角度を0〜90度で表すと、基準となる方向との成す角が87〜90度、好ましくは89〜90度、更に好ましくは89.5〜90度であることを意味する。また、平行方向というのは、基準となる方向との成す角が3〜0度、好ましくは1〜0度、更に好ましくは0.5〜0度であることを意味する。
〈ガラス転移温度(Tg)の測定〉
ガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製DSC6220)にて行う。フィルムを室温から220℃まで20℃/分の割合で昇温させ、一度室温まで冷却したのち、再び同条件で昇温を行い、二度目の昇温で得た発熱量変化を用いる。温度−発熱曲線の2点の屈曲点のうち、高温側と低温側それぞれを点A・Bとし、点A以上の温度範囲と点Bの以下の温度範囲のそれぞれで直線近似し、点A・B間の変曲点を通過する直線l1とのそれぞれの交点の中点をTgとする。なお、変曲点が読み取れない場合には、l1の代わりに、点A・B間のみを直線近似した線l2を用いる。
(基材層)
前記正の複屈折性ポリマーからなる基材層の膜厚は特に限定されないが、10〜200μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは20〜60μmである。
前記基材層中には、必要に応じて可塑剤を含有することができる。可塑剤は特に本発明においては、負の複屈折性ポリマーとのTg差を調整するために重要である。
また、単に可塑化効果のみならず、基材層の正の複屈折発現性(延伸後の位相差)、波長分散を適切に調整する機能を有しても良い。また、光弾性係数の絶対値を低下させる材料が好ましい。可塑剤は特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤及び多価アルコールエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アクリル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、糖系可塑剤等から選択される。更に基材層の位相差をコントロールするために、正の複屈折性を発現する材料や、波長分散を調整する材料、光弾性係数をゼロに近づける材料などを含んでいてもよいが、特に多価アルコールエステル系可塑剤やポリエステル系可塑剤を使用することが好ましい。
(多価アルコールエステル系可塑剤)
本発明の有機酸は、下記一般式(1)で表される。
Figure 0005201002
式中、R〜Rは水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらはさらに置換基を有していてよい。Lは連結基を表し、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表す。
〜Rで表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の基である。これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8のアシル基、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のカルボニルオキシ基等が挙げられる。
〜Rで表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、γ−フェニルプロピル基等の基を表し、また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
〜Rで表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、もしくはt−ブトキシ等の各アルコキシ基である。
また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)、アルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によってさらに置換されていてもよい))、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基が、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられる。
〜Rで表されるシクロアルコキシ基としては、無置換のシクロアルコキシ基としては炭素数1〜8のシクロアルコキシ基基が挙げられ、具体的には、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の基が挙げられる。
また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
〜Rで表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられるが、このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等前記シクロアルキル基に置換してもよい基として挙げられた置換基で置換されていてもよい。
〜Rで表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
〜Rで表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8の無置換のアシル基が挙げられ(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
〜Rで表されるカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらの基はさらに前記シクロアルキル基に置換してもよい基と同様の基により置換されていてもよい。
〜Rで表されるオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、またフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基を表す。
これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
〜Rで表されるオキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシカルボニルオキシ基を表し、これらの置換基はさらに置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることができる。
〜Rのうちのいずれか同士で互いに連結し、環構造を形成していてもよい。
また、Lで表される連結基としては、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表すが、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の基であり、これらの基は、さらに前記のR〜Rで表される基に置換してもよい基としてあげられた基で置換されていてもよい。
中でも、Lで表される連結基として特に好ましいのは直接結合であり芳香族カルボン酸である。
また、これら本発明において可塑剤となるエステル化合物を構成する、前記一般式(1)で表される有機酸としては、少なくともRまたはRに前記アルコキシ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基を有するものが好ましい。また複数の置換基を有する化合物も好ましい。
なお本発明においては3価以上のアルコールの水酸基を置換する有機酸は単一種であっても複数種であってもよい。
本発明における、前記一般式(1)で表される有機酸と反応して多価アルコールエステル化合物を形成する3価以上のアルコール化合物としては、好ましくは3〜20価の脂肪族多価アルコールであり、本発明おいて3価以上のアルコールは下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
一般式(2) R′−(OH)m
式中、R′はm価の有機基、mは3以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基を表す。特に好ましいのは、mとしては3または4の多価アルコールである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と一般式(2)で表される3価以上の多価アルコールのエステルは、公知の方法により合成できる。実施例に代表的合成例を示したが、前記一般式(1)で表される有機酸と、一般式(2)で表される多価アルコールを例えば、酸の存在下縮合させエステル化する方法、また、有機酸を予め酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と一般式(2)で表される3価以上の多価アルコールのエステルからなる可塑剤としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005201002
式中、R〜R20は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらはさらに置換基を有していてよい。R21は水素原子またはアルキル基を表す。
〜R20のシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基については、前記一般式(1)のR〜Rと同様の基が挙げられる。
以下に、本発明に係わる多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 0005201002
Figure 0005201002
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Figure 0005201002
Figure 0005201002
〈酸化防止剤〉
本発明では、酸化防止剤としては、通常知られているものを使用することができる。
特に、ラクトン系、イオウ系、フェノール系、二重結合系、ヒンダードアミン系、リン系化合物のものを好ましく用いることができる。
例えば、チバ・ジャパン株式会社から、“IrgafosXP40”、“IrgafosXP60”という商品名で市販されているものを含むものが好ましい。
上記フェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有するものが好ましく、例えば、チバ・ジャパン株式会社、“Irganox1076”、“Irganox1010”、(株)ADEKA“アデカスタブAO−50”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記リン系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“SumilizerGP”、株式会社ADEKAから“ADK STAB PEP−24G”、“ADK STAB PEP−36”および“ADK STAB 3010”、チバ・ジャパン株式会社から“IRGAFOS P−EPQ”、“IRGAFOS 168”堺化学工業株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記ヒンダードアミン系化合物は、例えば、チバ・ジャパン株式会社から、“Tinuvin144”および“Tinuvin770”、株式会社ADEKAから“ADK STAB LA−52”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記イオウ系化合物は、例えば、住友化学株式会社から、“Sumilizer TPL−R”および“Sumilizer TP−D”という商品名で市販されているものが好ましい。
上記二重結合系化合物は、住友化学株式会社から、“Sumilizer GM”および“Sumilizer GS”という商品名で市販されているものが好ましい。
さらに、酸捕捉剤として米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物を含有させることも可能である。
これらの酸化防止剤等は、再生使用される際の工程に合わせて適宜添加する量が決められるが、一般には、フィルムの主原料である樹脂に対して、0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲で添加される。
これらの酸化防止剤は、一種のみを用いるよりも数種の異なった系の化合物を併用することで相乗効果を得ることができる。例えば、ラクトン系、リン系、フェノール系および二重結合系化合物の併用は好ましい。
<着色剤>
本発明においては、着色剤を使用することもできる。着色剤と言うのは染料や顔料を意味するが、本発明では、液晶画面の色調を青色調にする効果またはイエローインデックスの調整、ヘイズの低減を有するものを指す。着色剤としては各種の染料、顔料が使用可能だが、アントラキノン染料、アゾ染料、フタロシアニン顔料などが有効である。
<紫外線吸収剤>
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
<マット剤>
本発明では、フィルムの滑り性を付与するためにマット剤を添加することが好ましい。
本発明で用いられるマット剤としては、得られるフィルムの透明性を損なうことがなく、溶融時の耐熱性があれば無機化合物または有機化合物どちらでもよく、例えば、タルク、マイカ、ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、クレー、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ワラストナイト、窒化ホウ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホワイトカーボンなどが挙げられる。これらのマット剤は、単独でも二種以上併用しても使用できる。
粒径や形状(例えば針状と球状など)の異なる粒子を併用することで高度に透明性と滑り性を両立させることもできる。これらの中でも、セルロースエステルと屈折率が近いので透明性(ヘイズ)に優れる二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の具体例としては、アエロジル200V、アエロジルR972V、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKEP−10、シーホスターKEP−30、シーホスターKEP−50(以上、株式会社日本触媒製)、サイロホービック100(富士シリシア製)、ニップシールE220A(日本シリカ工業製)、アドマファインSO(アドマテックス製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。
粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いると得られるフィルムの透明性が良好にできるので好ましい。
粒子の大きさは、可視光の波長に近いと光が散乱し、透明性が悪くなるので、可視光の波長より小さいことが好ましく、さらに可視光の波長の1/2以下であることが好ましい。粒子の大きさが小さすぎると滑り性が改善されない場合があるので、80nmから180nmの範囲であることが特に好ましい。
なお、粒子の大きさとは、粒子が1次粒子の凝集体の場合は凝集体の大きさを意味する。また、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
その他の成分として、帯電防止剤、滑材、離型材、着色防止剤、難燃剤などを含んでも良い。
また、基材のいずれかの面に、帯電防止層、滑性層、易接着層を設けても良い。
(負の複屈折層)
前記負の複屈折性ポリマーからなる負の複屈折層の厚みは特に限定されないが、2〜50μmが用いられる。特に膜厚は3〜40μmであることが特に好ましい。更に好ましくは5〜30μmである。
基材層と負の複屈折層との密着性を更に高めたい場合は、二つの層の間に易接着層を設けても良い。易接着層の材料としては特に限定はなく、公知の材料を適宜用いることができる。易接着層の膜厚は、1μm以下が好ましく、更に好ましくは0.5μm以下である。
(負の複屈折層の積層)
負の複屈折層の積層方法は逐次押出法や塗布法などがあるが、本願では、溶融押出による逐次押出法を用いる
(位相差フィルム)
本発明で開示された製造方法で作成される位相差フィルムは、液晶表示装置の視野角拡大フィルムとして偏光板に好適に用いることができる。その際、偏光子の少なくとも一方の面に直接貼合し、偏光板保護フィルムとしての機能も兼ねることができる。この場合、基材層側と偏光子とを貼合することが好ましい。
偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明の位相差フィルム基材層側をアルカリ鹸化処理する。ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、該鹸化処理した位相差フィルムを、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも位相差フィルムを用いても、別の偏光子保護フィルムを用いてもよい。負の複屈折性層側を偏光子に貼り合わせる場合は、公知の接着剤を用いることができるが、水系接着剤が好ましい。
裏面側に用いられる偏光子保護フィルムとしては、任意の適切な材料が採用され得る。このような材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムを構成する樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のアシレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。また、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂も用いられ得る。偏光特性および耐久性の観点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。また、市販のセルロースアシレートフィルムとして、KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC(以上、コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
本発明に係る偏光子保護フィルムは工業的には長尺のフィルムとして作製され、同じく長尺のフィルムとして作製される偏光子と張り合わせて偏光板を構成する態様が最も有用である。また、偏光板に更に張り合わせるなど、偏光子保護フィルムとしての機能を持たない単なる位相差フィルムとして使用することも出来る。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmの偏光子が好ましく用いられる。
本発明で開示される製造方法で作成された位相差フィルムは、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、FFS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。好ましくはVA(MVA,PVA)、IPS、FFS型液晶表示装置である。STN、OCB、TN型液晶表示装置に用いる場合には、偏光子の吸収軸方向と、各々の延伸軸が必ずしも平行または直交している必要はなく、ずれている形態も、好ましく用いられる。これらの液晶表示装置に用いることにより、視野角が広く、正面コントラストの高い視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
本発明の位相差フィルムは、波長板としても好ましく用いられる。例えば反射型、半透過型液晶表示装置や、電界発光型表示装置に用いるλ/4波長板としても好ましい。本発明の製造方法によれば、正の複屈折性基材層と負の複屈折性層の積層構成であり、更に2度の延伸操作の条件により、波長分散を所望な値に調整することができる。これらの表示装置においては、正面及び斜め方向など全方向からもλ/4の位相差を持つことが一般的に好ましく、本発明の構成においては、負の複屈折率層のRo2がλ/4に近く、Rt2がRt1に近いことが好ましいが、特に液晶表示装置において視野角拡大効果を併用する系においてはこの限りではない。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《位相差フィルムの作製》
〈正の複屈折性を有する基材層A1の作製と延伸〉
80℃で6時間乾燥した(水分率200ppm)のアセチル基の置換度1.30、プロピオニル基の置換度1.20、総アシル基置換度2.50、数平均分子量65000(重量平均分子量200000)のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、化合物48(株式会社ADEKA)を12質量部、リン系化合物としてPEP−36(株式会社ADEKA)0.01質量部、Irganox1010(チバ・ジャパン株式会社製)0.5質量部、SumilizerGS(住友化学株式会社製)0.24質量部、アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製)0.1質量部を真空ナウターミキサーで80℃、133Paで3時間混合しながら、さらに乾燥した。
得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。セルロースエステルフィルムの製膜は図1に示す製造装置で行った。
ペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機を用いてTダイから表面温度が90℃の第1冷却ロール上に溶融温度240℃でフィルム状に溶融押し出し、55μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。
得られたフィルムを予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターに導入し、幅手方向に130℃で30%延伸した。その後、クリップ把持部を裁ち落として平均膜厚は40μmのフィルムを得た。この基材層A1のガラス転移温度Tgは141℃であった。
得られたフィルムは、アッベ屈折率計−4T((株)アタゴ製)に多波長光源を用いて屈折率測定を行い、延伸方向の屈折率をNx、また直交する面内方向の屈折率をNyとした時に(Nx−Ny)>0であり、正の複屈折性を有していた。
〈正の複屈折性を有する基材層A2の作製と延伸〉
表1に記載の延伸倍率に変更した以外は、基材層A1と同様にして基材層A2を作製した。この基材層A2のTgは141℃であり、上記屈折率の測定から同様に正の複屈折性を有していた。
〈正の複屈折性を有する基材層A3の作製と延伸〉
セルロースアセテートプロピオネートをアセチル基の置換度1.40、プロピオニル基の置換度1.30に変更した以外は基材層A1と同様にして基材層A3を作製した。この基材層A3のTgは135℃であり、上記屈折率の測定から同様に正の複屈折性を有していた。
〈正の複屈折性を有する基材層A4の作製と延伸〉
セルロースアセテートプロピオネートをアセチル基の置換度1.20、プロピオニル基の置換度1.10に変更した以外は基材層A1と同様にして基材層A4を作製した。この基材層A4のTgは150℃であり、上記屈折率の測定から同様に正の複屈折性を有していた。
〈正の複屈折性を有する基材層A5の作製〉
延伸を行わなかった以外は、基材層A1と同様にして基材層A5を作製した。この基材層A5のTgは141℃であり、上記屈折率の測定から同様に正の複屈折性を有していた。
〈負の複屈折性を有する層の作製方法1〉
(負の複屈折性樹脂(N1))
シンジオタクチック構造をもつスチレン単位70%、スチレン単位30%の共重合体であり、DSC測定により、Tgは100℃であった。
(負の複屈折性樹脂(N2))
シンジオタクチック構造をもつスチレン単位100%の重合体であり、DSC測定により、Tgは100℃であった。
(負の複屈折性樹脂(N3))
スチレン単位50%、N−アクリロイルモルホリン単位50%、を含む共重合体であり、DSC測定により、Tgは126℃であった。
(負の複屈折性樹脂(N4))
N−ビニルカルバゾール単位30%、N−アクリロイルモルホリン単位70%、を含む共重合体であり、DSC測定によりTgは185℃であった。
負の複屈折性樹脂N1を100質量部、リン系酸化防止剤(Irgafos168:チバ・ジャパン(株)製)0.2質量部を真空ナウターミキサーで80℃、133Paで3時間混合しながら、乾燥した。
得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて270℃で溶融混合しペレット化した。
そのペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機を用いてTダイから、正の複屈折性を有する基材層A1に、膜厚20μmとなるように、フィルム状に溶融押し出しし、積層体1を得た。
〈負の複屈折性を有する層の作製方法2〉
負の複屈折性樹脂N2 20質量部
トルエン 80質量部
以上を混合、攪拌溶解させて塗布溶液とし、基材層A1上にコンマコーターにて塗布層の乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、80℃で乾燥させて溶媒を蒸発させ、積層体2を得た。
〈後延伸〉
得られた積層体1を、150℃で加熱しながら縦延伸機にて搬送方向に30%延伸して位相差フィルム1を得た。同様にして基材層A1、A2、A3、A4および、負の複屈折性樹脂N1、N2、N3、N4を用いて表1に記載の条件で、負の複屈折性層の付与及び後延伸を行い、位相差フィルム2〜8を得た。
〈比較例の位相差フィルムの作製〉
(位相差フィルム9)
未延伸の基材層A5を用いて表1の構成で位相差フィルム9を作製した。
(位相差フィルム10)
基材層A1を用いて表1の構成で後延伸を行わない位相差フィルム10を作製した。
(位相差フィルム11)
負の複屈折性樹脂(N1)を用いて製膜を行い、負の複屈折性層N5(乾燥膜厚20μm)を得た。これをアクリル系粘着剤を用いてアルカリ鹸化処理した基材層A1に貼合し、さらに表1に記載の条件で後延伸して位相差フィルム11を作製した。
Figure 0005201002
《位相差フィルムの評価》
(Roa、Rtaの測定)
王子計測機器株式会社製KOBRA21−ADHを用い、波長590nm、23℃相対湿度55%下にてRo、Rtを測定し、それぞれをRoa、Rtaとした。(但し、aは1、2、3のいずれかである)
(ムラの評価)
作製した位相差フィルム2枚を、遅相軸が垂直になるように2枚重ね、クロスニコル状態に重ねた2枚の偏光板の間に、遅相軸(または進相軸)と偏光板の透過軸(又は吸収軸)が平行(または垂直)になるように入れて、光漏れのムラの程度を評価した。
◎・・・ムラがない。
○・・・ややムラが認められる。
×・・・かなりムラがある。
○以上であれば、使用上問題ないレベルである。
(ヘイズの評価)
作製した各々のフィルム試料について、フィルム試料1枚をJIS K−6714に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を使用して測定した。
Figure 0005201002
表2から、本発明の位相差フィルム1〜8は所望のレターデーション値を有し、ムラ、ヘイズに優れていることが明らかである。
《偏光板と液晶表示装置への適用》
本発明の製造方法によって作製した位相差フィルム1〜8、比較例の位相差フィルム9〜11のセルロースエステル側(基材層側)をアルカリ鹸化処理し下記偏光板保護フィルムとした。次いで厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し50℃で6倍に延伸して偏光子を作製し該偏光子の片面に、上記位相差フィルムを完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として、第2の延伸方向と偏光子の延伸方向を合わせ、かつ基材層面側が偏光子側になるように各々貼合した。もう一方の面にコニカミノルタタックフィルムKC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)を同様にアルカリケン化処理して貼り合わせて偏光板を作製した。
VA型液晶表示装置である富士通製15型液晶ディスプレイVL−1530Sの視認側の偏光板を剥がし、代わりに上記偏光板を、元の偏光子の軸と同様になるようにして日東電工(株)製粘着剤CS9621を介して貼り合わせ、バックライト側の偏光板としては、偏光子にコニカミノルタタックフィルムKC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)と、偏光子の反対側の面に下記作製したRo=0nm、Rt=250nmの位相差をもつ位相差フィルムとを貼合した偏光板を貼って、視野角、正面コントラストを確認したところ、本発明の位相差フィルム1〜8を用いた液晶テレビは、視野角が良好であり、かつ表2に記載のように、ELDIM製EZcontrast160Dにて測定した正面コントラストも良好であった。なお、正面コントラストは、液晶セルの白表示と黒表示時のセルに対して法線方向の輝度を測定し、その比から計算し、正面コントラストが高いものから、◎、○、×とした。
〈バックライト側偏光板用位相差フィルムの作製〉
80℃で6時間乾燥した(水分率200ppm)のアセチル基の置換度1.20、プロピオニル基の置換度1.10、総アシル基置換度2.3、数平均分子量65000(重量平均分子量200000)のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、化合物48(株式会社ADEKA)を12質量部、リン系化合物としてPEP−36(株式会社ADEKA)0.01質量部、Irganox1010(チバ・ジャパン株式会社製)0.5質量部、SumilizerGS(住友化学株式会社製)0.24質量部、アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製)0.1質量部を真空ナウターミキサーで80℃、133Paで3時間混合しながら、さらに乾燥した。
得られた混合物を、2軸式押し出し機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
ペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機を用いてTダイから表面温度が90℃の第1冷却ロール上に溶融温度240℃でフィルム状に溶融押し出し、80μmのキャストフィルムを得た。この際第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。
次いでこのフィルムを、ロール周速差を利用した延伸機によって130℃で搬送方向に30%延伸し、さらに予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有する幅手方向の延伸機であるテンターに導入し、幅手方向に130℃で30%延伸した後、30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落として、膜厚50μmのバックライト側偏光板用位相差フィルムを得た。
このフィルムを王子計測機器株式会社製KOBRA21−ADHを用い、波長590nm、23℃相対湿度55%下にてRo、Rtを測定したところ、Ro=0nm、Rt=250nmであった。
1 押出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 回転支持体(第1冷却ロール)
6 挟圧回転体(タッチロール)
7 回転支持体(第2冷却ロール)
8 回転支持体(第3冷却ロール)
9、11、13、14、15 搬送ロール
10 セルロースエステルフィルム
16 巻取り装置

Claims (5)

  1. 少なくとも2層の異なる光学異方性層を有する位相差フィルムの製造方法であって、溶融製膜法で製膜された正の複屈折性ポリマーからなる基材層を幅手方向に延伸し、
    次いで負の複屈折性ポリマーを前記基材層上に逐次押出法で積層することで負の複屈折性層を形成した後、基材層と負の複屈折性層との積層体を基材層の延伸方向(第の延伸方向)に対して直交方向(第の延伸方向)に延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
  2. 請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法であって、製造される位相差フィルムの基材層の面内のレターデーション値Ro1、厚み方向のレターデーション値Rt1、および、負の複屈折性層の面内のレターデーション値Ro2、厚み方向のレターデーション値Rt2が、下記の(2)〜(5)式を共に満たすような光学特性を有する位相差フィルムであることを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
    −20≦Ro1≦ 40・・・(2)
    80≦Rt1≦160・・・(3)
    50≦Ro2≦200・・・(4)
    −180≦Rt2≦−80・・・(5)
    ただし、基材層の面内の第二の延伸方向の屈折率をnx1、面内で第二の延伸方向と直交する方向の屈折率をny1、厚み方向の屈折率をnz1、基材層の厚みをd1(nm)
    とし、負の複屈折性層の面内の第二の延伸方向と直交する方向の屈折率をnx2、第二の延伸方向の屈折率をny2、厚み方向の屈折率をnz2、負の複屈折性層の厚みをd2(nm)とした場合、
    Roa=(nxa−nya)×da
    Rta=((nxa+nya)/2−nza)×da
    (式中、aは1、2のいずれかを表す)。
  3. 請求項1又は2に記載の位相差フィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする位相差フィルム。
  4. 請求項3に記載の位相差フィルムを少なくとも一方の面に有することを特徴とする偏光板。
  5. 請求項4に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に有することを特徴とする液晶表示装置。
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