JP2004315636A - ポリカーボネート系樹脂シートの製造方法ならびに該シートを用いた光学記録材料及び液晶表示用材料 - Google Patents

ポリカーボネート系樹脂シートの製造方法ならびに該シートを用いた光学記録材料及び液晶表示用材料 Download PDF

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寛史 三浦
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Abstract

【課題】複屈折率すなわち光学的位相差および光学的主軸の振れ幅が小さい、光学的等方性に優れたポリカーボネート系の溶融押出し製法によるシートを供給すること。
【解決手段】溶融押出し法により作製された厚み20μm以上500μm以下のポリカーボネート系の高分子シートにおいて、冷却ロールの温度およびロール間の速度比を制御することにより面内の平面複屈折率△NXYが0.00008〜0.00030であって、分子の光学的主軸が幅方向に対して+10°〜−10°の範囲に配向していることを特徴とする光学用高分子シート及びその製造方法並びにこれらを用いた光記録材料及び液晶表示材料。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学的特性を必要とする光ディスク等の光記録媒体や液晶ディスプレー分野に使用されるポリカーボネート系樹脂フィルムまたはシート(本発明ではフィルム及びシートを総称してシートと記す)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ディスク等の記録媒体基板や液晶表示ディスプレーには様々なプラスチック、例えばポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂などの検討がされており、それらプラスチックには透明性、耐熱性、表面平滑性、寸法安定性、耐溶剤性の特性が要求される。
これらプラスチックの中で、光記録媒体基板や液晶表示用材料には透明性や加工性などで優れた特性を有するポリカーボネート系のシートが使用されている。その製法としては、溶液流延法、射出成型法、溶融押出し法等がある。これら製法のうち溶液流延法、例えば特許文献1にポリカーボネートの溶媒含有シートをキャスティング支持体より剥離した後、4段階の工程を連続的に経てシートを室温まで冷却し、複屈折率および分子配向を制御する技術が開示されているが、含有した溶媒を完全に乾燥させるのが容易ではなく、残留溶媒が耐熱性の低下等の悪影響を及ぼす。また、分子配向の制御についても多くの乾燥工程が必要となり、生産性に劣る。射出成型法においても加工時の樹脂の流れによる分子配向を一定方向に制御することは困難であり、20μm以上500μm以下のシートを生産することは困難である。さらには両製法とも生産性が悪く、溶融押出し法と比較してコストが高くなる欠点がある。
一方、溶融押出し法では、上記製法に比して非常に生産性のよい製法であるが、射出成型法と同様にTダイもしくはコートハンガーダイ内での樹脂の流れによる分子配向、および、ダイスリップより吐出したシートを規定厚みへ延伸する際の流れ方向に対する分子配向が発生するため、幅方向に分子を配向させることは困難であった。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−187828号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は他の特性例えば光線透過率、引張り強度、引き裂き強度等の一般物性を落とさず、分子の光学的主軸が幅方向に対し±10°以下に配向しおり、かつ平面複屈折率が小さなポリカーボネート系樹脂シートを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
・ 溶融押出し法により作製されたシート及びフィルムの厚みが、20μm以上500μm以下であり、面内の平面複屈折率△NXYが0.00008〜0.00030であって、分子の光学的主軸が幅方向に対して+10°〜−10°の範囲に配向していることを特徴とするポリカーボネート系樹脂シート、
・ 溶融押出し法によりTダイもしくはコートハンガーダイにより押出しされたポリカーボネート系樹脂シートを、該ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度Tgより5〜20℃低い表面温度を持つ第一冷却ロールに送り出し、第一冷却ロールに対して速度比制御されたガラス転移温度Tgより5〜40℃低い表面温度を持つ第2冷却ロールでシートを冷却固化することを特徴とするポリカーボネート系樹脂シートの製造方法、
・ (1)項記載のポリカーボネート系樹脂シートを使用してなる光記録材料、
・ (1)項記載のポリカーボネート系樹脂シートを使用してなる液晶表示用材料、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明では、溶融押出しに使用されるポリカーボネート系樹脂を特に限定するものではないが、光記録材料やディスプレー用途に使用するためにはガラス転移温度が140℃を超えるような耐熱性の高いグレードを使用することが好ましい。ポリカーボネート系樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアニール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させたエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしてはビスフェノールAから製造されたものが挙げられるが、これに限定するものではない。
【0007】
これらポリカーボネート系樹脂を、Tダイもしくはコートハンガーダイを使用して溶融押出し法によりシート状に加工を行う。シートの厚みについてはその用途に応じて適宜選定されるが、500μm以上のシートはロール状に巻き取ることが困難で、巻き取りが可能であっても巻ぐせが発生し、実用上問題となる。20μm以下のシートでは光学的位相差が充分に低い為、光学的主軸を制御する必要は無い。
【0008】
平面複屈折率の大きさや光学的主軸のばらつきは樹脂の分子配向度のばらつきを示しており、分子配向度のばらつきが大きい場合、例えば平面複屈折率が0.00030以上、光学的主軸の配向が+10°〜−10°の範囲を超えた場合、直線偏光をフィルムに照射すると、シートを透過した光の偏光状態に偏差が生じ、直線偏光が楕円偏光となる。その結果、光記録材料に分子配向度の大きなシートを使用すると記録層にフォーカスすることが出来ず、読み取りエラーが発生してしまう。また、STN型等の液晶表示用材料に使用すると楕円偏光による部分的な光の漏れが発生するため、これらの材料に使用する事は好ましくない。
【0009】
分子の光学的主軸が幅方向に対して+10°〜−10°の範囲に配向させる方法は、溶融押出し法によりTダイもしくはコートハンガーダイにより押出しされたポリカーボネート系樹脂を、該ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度Tgより5〜20℃低い表面温度を持つ第一冷却ロールに送り出し、次に第一冷却ロールに対して速度比制御されたガラス転移温度Tgより5〜40℃低い表面温度を持つ第2冷却ロールでシートを冷却固化させる。第二冷却ロールの速度比は樹脂の収縮に対して任意に設定するため、冷却ロールの速度を0.01%の精度で速度制御できる設備が好ましい。例としては冷却ロールをサーボモーターで駆動させ、サーボモーターのエンコーダより信号を読み取りシーケンサーで速度制御する方法があるが、これに限定されるものではない。
【0010】
幅方向に対し水平な方向に光学的主軸を制御せしめたシートを2本のロール間で流れ方向に一定の張力を掛けて熱処理することにより光学的主軸を連続的に制御することが可能となる。
【0011】
例えば、ドライヤーを配置したロールトウロールの熱処理機を用いて連続的に熱処理することができる。この際、ガラス転移点(以下Tgという)より低い温度、好ましくはTgよりも10℃〜30℃低い温度で押し出しシートを熱処理することが、シート外観を損ねず、面内方向の複屈折率を低減させることができ、望ましいが、特に限定はしない。
【0012】
このようにして得られたポリカーボネート系樹脂シートは、光ディスクや液晶パネルに要求される透明性、加工性等の樹脂本来の優れた特性に加え、平面複屈折率が低いすなわち光学的位相差の低い優れたシートとなる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明する。
【0014】
《実施例1》
住友ダウ(株)製のポリカーボネート系樹脂:カリバー300−15(Tg145℃)を用い、850mm幅のコートハンガーダイで溶融押出し、140℃の熱媒を通した300mm直径の第一冷却ロールに送り出し、冷却ロール間の速度比をR1/R2=0.9980に制御された125℃の熱媒を通した300mm直径の第二冷却ロールにシートを送り出し、冷却固化させ、シート幅が660mmでシート厚みが400μmのポリカーボネート系樹脂シートを作製した。
上記条件で作製されたシートは、平面複屈折率(△Nxy)が0.00016、光学的主軸はシート幅方向に対し、+1.6°〜0.0°であった。シート幅方向7点の測定結果を表1に示す。
【0015】
《実施例2》
住友ダウ(株)製のポリカーボネート系樹脂:カリバー300−15(Tg145℃)を用い、700mm幅のコートハンガーダイで溶融押出し、135℃の熱媒を通した300mm直径の第一冷却ロールに送り出し、冷却ロール間の速度比をR1/R2=0.9980に制御された125℃の熱媒を通した300mm直径の第二冷却ロールにシートを送り出し、冷却固化させ、シート幅が500mmでシート厚みが100μmのポリカーボネート系樹脂シートを作製した。
上記条件で作製されたシートは、平面複屈折率(△Nxy)が0.00013、光学的主軸は、シート幅方向に対し、+3.9°〜−3.5°であった。シート幅方向7点の測定結果を表1に示す。
【0016】
《比較例》
住友ダウ(株)製のポリカーボネート系樹脂:カリバー300−15(Tg145℃)を用い、700mm幅のコートハンガーダイで溶融押出し、135℃の熱媒を通した300mm直径の第一冷却ロールに送り出し、冷却ロール間の速度比をR1/R2=1.010に制御された125℃の熱媒を通した300mm直径の第二冷却ロールにシートを送り出し、冷却固化させ、シート幅が500mmでシート厚みが100μmのポリカーボネート系樹脂シートを作製した。
上記条件で作製されたシートは、平面複屈折率(△Nxy)が0.00039、光学的主軸は、シート幅方向に対し、すべて+10°〜−10°の範囲を超えた値を示した。シート幅方向7点の測定結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 2004315636
【0018】
なお、本発明のシートの光学的物性は次の方法により測定した。
(1)シート厚み
接触式のダイヤルゲージで高分子シートの幅方向に20mm間隔で測定した平均値。
(2)ポリカーボネート系樹脂シートの平面複屈折率、光学的主軸
王子計測機器(株)製の自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用い、波長590nmにて平行ニコル回転法で、平面の位相差及び配向角を測定した。配向角は屈折率楕円体の長軸方向の傾きを示しており、その傾きは幅方向を基準(0°)としている。屈折率楕円体の長軸方向を光学的主軸とする。シートサンプルより幅方向50mmピッチでサンプリングし測定した。その光学的位相差値Reを厚みdで割った値が平面複屈折率となる。計算式は△Nxy=Re/d。
【0019】
【発明の効果】
本発明により光学的異方性が小さいポリカーボネート系の溶融押出し製法によるシートを供給することができる。このシートを所定のディスクサイズに打ち抜き記録層や保護層等の必要な層構成に加工することにより、光ディスクを作製することができ、また、透明導電層等を付与することにより、低コストで従来のガラス基板に比べ軽量で割れに強い液晶パネルを作製することが可能となる。

Claims (4)

  1. 溶融押出し法により作製されたシート及びフィルムの厚みが、20μm以上500μm以下であり、面内の平面複屈折率△NXYが0.00008〜0.00030であって、分子の光学的主軸が幅方向に対して+10°〜−10°の範囲に配向していることを特徴とするポリカーボネート系樹脂シート。
  2. 溶融押出し法によりTダイもしくはコートハンガーダイにより押出しされたポリカーボネート系樹脂フィルムを、該ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度Tgより5〜20℃低い表面温度を持つ第一冷却ロールに送り出し、第一冷却ロールに対して速度比制御されたガラス転移温度Tgより5〜40℃低い表面温度を持つ第2冷却ロールでシートを冷却固化することを特徴とするポリカーボネート系樹脂シートの製造方法。
  3. 請求項1記載のポリカーボネート系樹脂シートを使用してなる光記録材料。
  4. 請求項1記載のポリカーボネート系樹脂シートを使用してなる液晶表示用材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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