JP2004244497A - セルロースエステルフィルム、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

セルロースエステルフィルム、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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香織 大野
Takahiro Takagi
隆裕 高木
Yasushi Okubo
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Abstract

【課題】弾性率、寸法安定性などの膜物性に優れ、且つTN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性を簡便に改善できるセルロースエステルフィルムと、それを用いた視野角拡大偏光板、及び視野角が改善された液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】セルロースエステルの残留ヒドロキシル基が共有結合を介して架橋構造を形成し、且つ架橋部分に芳香族環を少なくとも1つ以上有し、面内リターデーション値Roが20〜300nmであり、延伸されていることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセルロースエステルフィルム、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置に用いられる視野角拡大用途の光学フィルムとして、下記の様な4種の構成が試みられており、各々、有効な方法として提案されている。
(1)特開平7−325221号公報等に見られるように、光学的に負の複屈折性を有するディスコティック液晶性化合物を支持体上に担持させる方法。
(2)特開平10−186356号公報に見られるように、光学的に正の複屈折性を有する高分子液晶性化合物を、深さ方向に液晶分子のチルト角が変化するハイブリッド配向させたものを支持体上に担持させる方法。
(3)光学的に正の複屈折性を有する液晶性化合物を配向方向が、略90°となる様に支持体上に2層構成とすることにより、擬似的に負の複屈折性と類似の光学特性を付与させる方法。
(4)セルロースエステルフィルムを延伸することで光学的に二軸性を有するフィルムを偏光子に貼りつける方法。
【0003】
しかしながら、これらの方法は、各々、下記の様な問題点を有している。
上記(1)に記載の方法では、TNモードの液晶セルに適用した場合、液晶セルを斜め方向から見た時、黄色く着色してしまうというディスコティック液晶性化合物特有の欠点を有している。
【0004】
上記(2)に記載の方法では、高分子液晶性化合物の液晶発現温度は非常に高温であり、一般的な透明支持体樹脂(例えば、TACなど)の上で液晶の配向を固定することは不可能である。即ち、一度、高い耐熱性を有する別の支持体上で液晶の配向を固定した後、液晶層のみを透明支持体樹脂上に転写する必要があり、工程が煩雑化し、且つ極めて生産性が低下してしまうと言う欠点を有している。
【0005】
上記(3)に記載の方法では、例えば、特開平8−15681号公報には、配向能を有する偏光子上に光学的に正の複屈折性を有する液晶性化合物を配向させた後、この液晶層を固定化し、更にこの液晶層の上に再度配向膜を重ねて、再びその上に光学的に正の複屈折率性を有する液晶性化合物を配向させた後、液晶層を固定化するという、4層構成の光学フィルムが開示されている。この場合、ディスコティック液晶性化合物の場合と異なり着色の問題はないものの、ディスコティック液晶性化合物では液晶層1層で達成していたものを、あえて2層の液晶層で達成するものであり、極めて生産性が悪いという問題点があった。
【0006】
更に、これらの3種の方法は、いずれもより根本的な共通する問題点を有している。即ち、これらの方式では、光学補償能を得るためには液晶性化合物を精密に薄膜塗布する必要があった。液晶性化合物を精密に配向させるためには配向膜を塗布した後、配向力を付与する為の処理(ラビング処理、偏光露光処理など)を行う必要性があり、更には欠陥が無く均一に液晶性化合物を配向させる為には、防塵設備が必須である上に、精密な温度コントロールが必要であるなど製造上の制約が大きかった。これは、光学フィルムにおいて、非常にコスト高となっていることを意味する。
【0007】
上記(4)に記載の方法の一例として、例えば、延伸したセルロースエステルフィルムを偏光子保護フィルムとすることで、極めて簡便に視野角を改善できることが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、延伸倍率が非常に大きく製造コスト増であり、大きな延伸倍率で大面積を均一に延伸するのは非常に困難な操作であり、且つ延伸操作によって膜強度が低下してしまうという問題点を有していた。
【0008】
上述の様に、従来の光学フィルムは着色や膜強度など性能上に問題点を有していたり、低生産性、高コストなど、製造過程においても改善が求められる課題が多く残っていた。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−187960号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、弾性率、寸法安定性などの膜物性に優れ、且つTN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性を簡便に改善できるセルロースエステルフィルムと、それを用いた視野角拡大偏光板、及び視野角が改善された液晶表示装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0012】
1)セルロースエステルの残留ヒドロキシル基が共有結合を介して架橋構造を形成し、且つ架橋部分に芳香族環を少なくとも1つ以上有し、面内リターデーション値Roが20〜300nmであり、延伸されていることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0013】
2)芳香族環を少なくとも1つ以上有し、且つセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を少なくとも2つ以上有する化合物で架橋され、面内リターデーション値Roが20〜300nmであり、延伸されていることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0014】
3)芳香族環を少なくとも1つ以上有し、且つセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を少なくとも2つ以上有する化合物が前記一般式(I)で表されることを特徴とする前記2)に記載のセルロースエステルフィルム。
【0015】
4)前記一般式(I)で表される化合物が前記一般式(II)で表されることを特徴とする前記3)に記載のセルロースエステルフィルム。
【0016】
5)前記一般式(I)及び(II)で表される化合物が単環の芳香族環以外に原子屈折が3.5以上の原子及び置換基を含有することを特徴とする前記3)または4)に記載のセルロースエステルフィルム。
【0017】
6)前記一般式(I)及び(II)で表される化合物のL、L、Lがそれぞれ原子数4以下であることを特徴とする前記3)〜5)のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0018】
7)前記一般式(I)及び(II)で表される化合物のX、X、Xがエポキシ基、イソシアナート基、チオイソシアナート基のいずれかであることを特徴とする前記3)〜6)のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0019】
8)前記2)〜7)のいずれか1項に記載の化合物の総質量がセルロースエステルに対し0.1〜20質量%の割合であることを特徴とする前記2)〜7)のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0020】
9)製膜時または製膜後に幅手方向に延伸されたものであることを特徴とする前記1)〜8)のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0021】
10)延伸倍率が1.02〜1.2倍であることを特徴とする前記9)に記載のセルロースエステルフィルム。
【0022】
11)前記式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とする前記1)〜10)のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0023】
12)前記1)〜11)のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴とする偏光板。
【0024】
13)前記12)に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
14)前記偏光板のセルロースエステルフィルムが液晶セル側に配置されることを特徴とする前記13)に記載の液晶表示装置。
【0025】
本発明のセルロースエステルフィルムについて説明する。
従来の光学フィルムは、透明支持体上に液晶性化合物を均一塗布して配向させたり、またはポリカーボネートなどの透明樹脂を複雑な延伸技術を駆使して二軸延伸するなどして製造していた。その後、光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムが見出されたが、この光学的に二軸性のセルロースエステルフィルム作製時の延伸倍率は非常に大きく、製造コスト高であり、また延伸倍率が高い為に膜強度が低下してしまうという問題点を有していた。
【0026】
今回、本発明者らは架橋構造を有するセルロースエステルを含有し、且つ架橋部分に少なくとも1つの芳香環を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルムを用いる事で、フィルム作製時の延伸倍率を小さくする事に成功し、このセルロースエステルフィルムを偏光子の保護フィルムとして使用した場合に、十分な光学補償効果が得られることを見出すに至った。
【0027】
本発明のセルロースエステルから成るセルロースエステルフィルムは、斜め方向から見た場合のコントラストが高く、また視野角が広いだけではなく、斜め方向から見た場合の画面の着色もなく、反転領域も狭くなるなど優れた光学補償能に加えて、弾性率、寸法安定性などの膜物性にも優れた効果を示すことが判った。
【0028】
本発明のセルロースエステルフィルムは偏光板を作製する場合に、液晶セル側(偏光板を構成する偏光子と液晶セルの間)の保護フィルムとして用いることができ、また反対側(最表面側)の保護フィルムとしても用いることができる。更に、この反対側(最表面側)の保護フィルムの光学特性は特に限定されないため、通常用いられるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を保護フィルムとして使用することもできる。
【0029】
本発明における、セルロースエステルの残留ヒドロキシル基が共有結合を介して架橋構造を形成しているとは、例えば、セルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を少なくとも2つ以上有する化合物によってセルロースエステルの残留ヒドロキシル基同志が共有結合で架橋されているものを示し、セルロースエステルの未反応ヒドロキシル基と反応できる官能基とは、例えば、ヒドロキシル基、ホルミル基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、カルボキシル基、クロロカルボニル基、酸無水物基、スルホン酸基、クロロスルホニル基、スルフィン酸基、クロロスルフィニル基、エポキシ基、ビニル基、ハロゲン原子等を挙げることができる。好ましくは、エポキシ基、ヒドロキシル基、ホルミル基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、カルボキシル基であり、更に好ましくはエポキシ基、イソシアナート基、チオイソシアナート基である。これらの架橋剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0030】
また、もう一つのセルロースエステルの共有結合を介する架橋方法とは、セルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を有し、且つ重合性基を有する化合物を用いて、先ずこの化合物をセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応させた後に、重合性基同志を重合させることによってセルロースエステルを共有結合で架橋させてもよく、セルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基とは前述した通りで、例えば、ヒドロキシル基、ホルミル基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、カルボキシル基、クロロカルボニル基、酸無水物基、スルホン酸基、クロロスルホニル基、スルフィン酸基、クロロスルフィニル基、エポキシ基、グリシジル基、ビニル基、ハロゲン原子等であるが、好ましくは酸無水物基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、グリシジル基、エポキシ基である。
【0031】
重合性基とは、例えば、スチリル基、アリル基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基、ビニルケトン基、ビニル基、イソプロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基、エポキシ基などの基が挙げられる。好ましくはビニルエーテル基、ビニル基、メタクリロイル基、エポキシ基である。
【0032】
本発明の架橋部分に芳香族環を少なくとも1つ以上有するとは、架橋部分のいずれかに芳香族環を1つ以上有していればよく、特に制限されないが、例えば、あるセルロースエステル鎖の残留ヒドロキシル基と、もう一方のセルロースエステル鎖の残留ヒドロキシル基とを共有結合でつないでいる架橋鎖の一部に芳香族環が含有されている、もしくは架橋鎖の一部に芳香族環が置換されている構造を示し、芳香族環とは特に制限されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、ピレン環、チオフェン環、フラン環、ピラン環、イソベンゾフラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環などが挙げられる。好ましくは単環の芳香族環であり、例えば、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピラゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、キノリン環である。
【0033】
これらの芳香族環はハロゲン原子、もしくは置換基を有していてもよく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子である。置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基など)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基など)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基など)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基など)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、アニリノ基(例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基など)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基など)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基など)、スルファモイルアミノ基(例えば、ジメチルスルファモイルアミノ基など)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基など)、スルファモイル基(例えば、エチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基など)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、ウレイド基(例えば、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基など)、イミド基(例えば、フタルイミド基など)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)が挙げられるが、好ましくはシアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0034】
光学補償効果をより好ましく得る観点から、本発明のセルロースエステルフィルムにおいては、面内方向のリターデーション値Roは20〜300nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは30〜250nmである。ここで、面内方向のリターデーション値Roについては、下記式(A)で表される。
【0035】
式(A) Ro=(nx−ny)×d
但し、nxはセルロースエステルフィルムの面内で屈折率が最大となる方向の屈折率、nyは面内で、且つnxに直角な方向の屈折率であり、dはフィルムの厚み(nm)である。
【0036】
一方、厚さ方向のリターデーション値Rtについては、下記式(B)で定義されるリターデーション値(Rt値)が50〜350nmであることが好ましく、更に好ましくは70〜300nmである。
【0037】
式(B) ((nx+ny)/2−nz)×d
但し、nxはセルロースエステルフィルムの面内で屈折率が最大となる方向の屈折率、nyは面内で、且つnxに直角な方向の屈折率であり、nzは厚み方向でのフィルムの屈折率、dはフィルムの厚み(nm)である。上記の面内のリターデーション値Ro、及び厚み方向のリターデーション値Rtは、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めることより算出した。
【0038】
本発明の延伸することを特徴とするセルロースエステルフィルムとは、製膜時、または製膜後に延伸されたセルロースエステルフィルムであり、延伸方向、延伸方法には特に限定はないが、好ましくは製膜時、または製膜後に幅手方向に延伸されることが好ましい。延伸方法として、例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0039】
本発明のセルロースエステルフィルムでは、その製造に際し、フィルム中の残留溶媒をコントロールすることで、高温でなくても延伸が可能であるが、この方法を用いない場合には、高温で延伸することも可能である。高温で延伸する場合、延伸温度としては、セルロースエステルのガラス転移温度以上の温度で延伸するのであるが、揮発性の可塑剤ではその効果が薄れてしまい延伸性が十分得られない場合がある。この場合、高温においても十分な延伸性が付与できる可塑剤が必要となるが、この様な可塑剤としては不揮発性を有するものが好ましく、不揮発性可塑剤とは200℃における蒸気圧が1330Pa以下の化合物であり、極めて低い蒸気圧を有し、且つ低い揮発度を有する性質のものである。より好ましくは蒸気圧665Pa以下、更に好ましくは133Pa以下である。
【0040】
例えば、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルが好ましい。このほか、リン酸トリクレシル(38.6Pa、200℃)、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(66.5Pa、200℃)等も好ましく用いられる。あるいは、特表平6−501040号公報に記載されている不揮発性燐酸エステルも好ましく用いられる。このほか、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニルを含む共重合体などのポリマー、あるいはオリゴマーなどの高分子量の可塑剤も好ましく用いることができる。この場合、可塑剤の含有量はセルロースエステルに対して0.1〜30質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。このように可塑剤を用いることで、高温でのセルロースの延伸性を向上でき、特にフィルムの面品質や平面性に優れたセルロースエステルフィルムを生産性よく製造できる。
【0041】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造において、セルロースエステル溶解ドープ液を流延用支持体に流延後、次いで流延用支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が100質量%以下、特に10〜100質量%の範囲にある間に、少なくとも1方向に1.02〜4.0倍延伸することが好ましい。延伸倍率が大き過ぎると、生産性の低下、膜強度の低下、膜厚のムラが生じ易くなり、結果的に光学特性のムラが生じ、セルロースエステルフィルムとして用いた時に、着色などの問題が生じる。
【0042】
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0043】
ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10〜50質量%、特に12〜40質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。延伸倍率の更に好ましい範囲は1.02〜1.2倍の範囲である。
【0044】
本発明のセルロースエステルを用いて溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜180℃以下の範囲が好ましい。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量で2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0045】
一般式(I)及び(II)において、A及びAは単環の芳香族環を表し、例えば、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、キノリン環、フタラジン環、キナゾリン環などが挙げられる。好ましくはベンゼン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環である。これらの単環の芳香族環はハロゲン原子、もしくは置換基を有していてもよく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子である。置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基など)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基など)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基など)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基など)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、アニリノ基(例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基など)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基など)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基など)、スルファモイルアミノ基(例えば、ジメチルスルファモイルアミノ基など)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基など)、スルファモイル基(例えば、エチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基など)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、ウレイド基(例えば、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基など)、イミド基(例えば、フタルイミド基など)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)、が挙げられるが、好ましくは、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0046】
一般式(I)及び(II)において、L、L及びLは連結基を表し、L、Lは互いに同じであっても異なっていてもよい。連結基とは、例えば、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン)、アルケニレン基(例えば、エテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、アミノ基などが挙げられ、好ましくは、アルキレン基、エステル基、チオエーテル基、エーテル基である。これらは1つ、またはそれ以上を組み合わせて用いることができ、L、Lは互いに同じであっても異なっていてもよい。L、L及びLはハロゲン原子、もしくは置換基を有していてもよく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子である。置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基など)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基など)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基など)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基など)、アシル基(例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基など)、カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基など)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基など)、アニリノ基(例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基など)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基など)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基など)、スルファモイルアミノ基(例えば、ジメチルスルファモイルアミノ基など)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基など)、スルファモイル基(例えば、エチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基など)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基など)、ウレイド基(例えば、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基など)、イミド基(例えば、フタルイミド基など)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基など)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)、が挙げられるが、好ましくは、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
【0047】
一般式(I)及び(II)における、L、L、Lはあっても無くてもよく、L、L、Lが無い場合には、AとX、AとX、もしくはAとXが直接結合することとなる。
【0048】
一般式(I)及び(II)において、X、X及びXはセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を表し、例えば、ヒドロキシル基、ホルミル基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、カルボキシル基、クロロカルボニル基、酸無水物基、スルホン酸基、クロロスルホニル基、スルフィン酸基、クロロスルフィニル基、エポキシ基、グリシジル基、ビニル基ハロゲン原子等を挙げることができる。好ましくは、エポキシ基、グリシジル基、ヒドロキシル基、ホルミル基、イソシアナート基、チオイソシアナート基、カルボキシル基であり、更に好ましくは、エポキシ基、グリシジル基、イソシアナート基、チオイソシアナート基である。X、Xは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0049】
一般式(I)において、n、mは0〜6までの整数を表し、一般式(II)において、lは2〜6の整数を表すが、一般式(I)のn、mに関しては、同時に6≧n+m≧2の関係式も満たさなければならない。
【0050】
一般式(I)及び(II)で表される化合物が、単環の芳香族環以外に、原子屈折が3.5以上の原子もしくは置換基を含有しているとは、例えば、A、Aで表される単環の芳香族環上に置換基として原子屈折が3.5以上の原子もしくは置換基が置換されていたり、またはL、L、Lで表される連結基中に原子屈折が3.5以上の原子が含まれていたり、L、L、Lで表される連結基上に原子屈折が3.5以上の原子もしくは置換基が置換されていたり、またはX、X、Xで表されるセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基中に、原子屈折が3.5以上の原子が含まれていたり、X、X、Xで表されるセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基上に原子屈折が3.5以上の原子もしくは置換基が置換されていることを示す。
【0051】
本発明において、原子屈折が3.5以上の原子もしくは置換基は複数個含有していてもよいし、もしくは複数個置換されていてもよい。
【0052】
本発明における原子屈折とは、化学便覧、基礎編II(社団法人日本化学会編 丸善株式会社発行)に記載の様に、分子屈折に寄与する各原子の屈折を表し、例えば、ある波長の光に対する原子の分極率をα、1モル中の原子数をNとすると、原子屈折は(4π/3)Nαで表される。原子屈折が3.5以上の原子とは、D線での原子屈折の算出値が3.5以上の原子及び置換基を表し、例えば、金属原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子、窒素原子、シアノ基などを表す。好ましくは、塩素原子、臭素原子、硫黄原子、窒素原子である。原子屈折が3.5以上の原子もしくは置換基を含有する事で、少ない延伸倍率でRo、Rt値を調節可能となり、より高い光学補償効果が得られ易くなる。
【0053】
一般式(I)及び(II)において、L、L、Lの原子数が4以下であるとは、例えば、単環の芳香族環Aからセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基Xまでの最短の原子数が4以下であることを示し、最短の原子数として数えなかった原子および置換基がL上に置換していてもよい。具体例を挙げて説明すると、Lがプロピレンだった場合に、最短の原子数は炭素原子3個であり、それに置換されている水素原子6個は本発明ではその数に入れないこととする。また前述の通り、L、L、Lは無い場合もあり、L、L、Lが無い場合には、AとX、AとX、もしくはAとXが直接結合することとなる。L、L、Lの原子数が4以下であると、架橋の効果が現れやすく、膜物性の向上効果がとりわけ顕著に得られるばかりでなく、より高い光学特性が観察されるなど、本発明において非常に好ましい。
【0054】
本発明の化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0055】
【化3】
Figure 2004244497
【0056】
【化4】
Figure 2004244497
【0057】
【化5】
Figure 2004244497
【0058】
【化6】
Figure 2004244497
【0059】
【化7】
Figure 2004244497
【0060】
【化8】
Figure 2004244497
【0061】
【化9】
Figure 2004244497
【0062】
【化10】
Figure 2004244497
【0063】
本発明において、芳香族環を有し、且つセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を有する化合物の総質量は、セルロースエステルに対し0.1〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.2〜15質量%である。化合物の質量が0.1〜20質量%であるとフィルム強度も向上し、且つ平面性も保たれ、更にはセルロースエステルフィルムの片材を溶媒に再溶解させて再利用する場合にも、溶解性などの点で好ましい。
【0064】
本発明に用いられるセルロースエステルは特に制限はないが、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどを用いることができる。アシル基の種類は2種以上が混合されていてもよい。セルロースの総置換度は特に制限はないが、透湿度や吸水性などの点から2.0を超えているものが好ましく、特に全アシル基の置換度の合計が2.4以上のセルロースエステルが好ましく用いられる。
【0065】
更に好ましくは、下記式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とするセルロースエステルであり、
式(1) 2.4≦A+B≦2.8
式(2) 1.4≦A≦2.0
より好ましくは下記式(3)及び(4)を同時に満足することを特徴とするセルロースエステルである。
【0066】
式(3) 2.5≦A+B≦2.75
式(4) 1.7≦A≦1.95
式中、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3または4のアシル基の置換度を表す。
【0067】
これらのアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、例えば、6位に高い比率で置換するなどの分布を持った置換がなされていてもよい。更に、一定以上の光学補償性能を得るためには、特定の置換基、即ちアセチル基およびプロピオニル基を有する低級脂肪酸セルロースエステルを用いることが有効である。
【0068】
ここで、置換度とは、結合脂肪酸量の百分率をいい、ASTM−D817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従い算出される数値である。アシル基の置換度の測定法はASTM−D817−96に従って測定できる。
【0069】
アシル基の置換度の合計が2.0以上の範囲にあることで、長波長ほど位相差が大きくなる特性があり、且つ良好な水分率や水バリアー性を備えたセルロースフィルムを得ることができる。
【0070】
本発明に用いられるセルロースの混合脂肪酸エステルは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のような酸性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基およびプロピオニル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。アセチル化剤とプロピオニル化剤の使用量は、合成するエステルが前述した置換度の範囲となるように調整する。反応溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜600質量部であることが更に好ましい。酸性触媒の試料量はセルロース100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.4〜10質量部である。
【0071】
反応温度は10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることが更に好ましい。なお、他のアシル化剤(例、ブチル化剤)やエステル化剤(例、硫酸エステル化剤)を併用してもよい。また、アシル化反応が終了してから、必要に応じて加水分解(ケン化)して、置換度を調整してもよい。反応終了後、反応混合物を沈澱のような慣用の手段を用いて分離し、洗浄、乾燥することによりセルロースの混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートプロピオネート)が得られる。
【0072】
機械的強度に優れたセルロースエステルフィルムを得る観点から、本発明に用いられるセルロースの粘度平均重合度(重合度)は、200以上、700以下が好ましく、特に250以上、500以下のものが好ましい。上記の粘度平均重合度(DP)は、以下の方法により求められる。絶乾したセルロース0.2gを精秤し、メチレンクロライドとエタノールの混合溶媒(質量比9:1)100mlに溶解する。これをオストワルド粘度計にて、25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式によって求める。
【0073】
(a) ηrel=T/Ts
(b) [η]=(lnηrel)/C
(c) DP=[η]/Km
ここで、Tは測定試料の落下秒数、Tsは溶媒の落下秒数、Cはセルロースの濃度(g/l)、Km=6×10−4である。
【0074】
セルロースエステルを溶解してドープを形成する溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール等を挙げることができる。この中で、メチレンクロライドのような塩素系溶媒は好適に使用できるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等も好ましく用いられる。特に酢酸メチルが全有機溶媒に対して50%以上含有していることが好ましく、全有機溶媒に対して5〜30質量%のアセトンを酢酸メチルと併用するとドープ液粘度を低減でき好ましい。
【0075】
ドープの固形分濃度は通常、質量で10〜40%が好ましく、ドープ粘度は(10〜50Pa・sec)の範囲に調整されることが良好なフィルムの平面性を得る点から好ましい。
【0076】
以上の様にして調製されたドープは濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中には可塑剤、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、透湿度改善剤等を添加してもよい。
【0077】
本発明に使用するセルロースエステルはそれ自身が可塑剤としての効果を発現するので、可塑剤を添加しなくても或いはわずかの添加量で充分なフィルム特性が得られるが、その他の目的で可塑剤を添加してもよい。例えば、フィルムの耐湿性を向上する目的では、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0078】
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0079】
リン酸エステル類としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を挙げることができる。
【0080】
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル類、クエン酸エステル類等があり、フタル酸エステル類としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等が挙げられる。クエン酸エステル類としては、例えば、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。
【0081】
また、その他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独或いは併用するのが好ましい。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。セルロースエステルに用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下がセルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こし難く、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方が更に好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。
【0082】
中でも、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。また、これらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
【0083】
この目的で用いる可塑剤の量はセルロースエステルに対して質量で1〜30%が好ましく、特に4〜13%が好ましい。
【0084】
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶剤と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0085】
フィルムの黄味を改善する目的で染料を添加してもよい。色味は通常の写真用支持体にみられる様なグレーに着色できるものが好ましい。但し、写真用支持体と異なりライトパイピングの防止の必要はないので、含有量は少なくてもよく、セルロースエステルに対する質量割合で1〜100ppmが好ましく、2〜50ppmが更に好ましい。セルロースエステルはやや黄味を呈しているので、青色や紫色の染料が好ましく用いられる。複数の染料を適宜組み合わせてグレーになる様にしてもよい。
【0086】
フィルムが滑りにくいとフィルム同士がブロッキングを起こし、取り扱い性に劣る場合がある。その場合、本発明に係わるフィルムには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。
【0087】
また、二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均径が大きいほうがマット効果は大きく、平均径の小さいほうが透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はフィルム中では、通常、凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL200、300、R972、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくはAEROSIL R972V、200V、R972、R974、R202、R812などが挙げられる。
【0088】
このマット剤の配合はフィルムのヘイズが0.6%以下、動摩擦係数が0.5以下となるように配合することが好ましい。この目的で用いられるマット剤の含有量は、質量でセルロースに対して0.005〜0.3%が好ましい。
【0089】
また、本発明のセルロースエステルフィルムは液晶表示装置に組み込まれ、屋外で使用されることも多いので紫外線をカットする機能を有する事が好ましい。そのような観点から、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。
【0090】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化の点から波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が、10%以下である必要があり、更に5%以下であることが好ましい。
【0091】
この目的で用いられる紫外線吸収剤は、可視光領域に吸収がないことが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0092】
これらの例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチルなどである。
【0093】
本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0094】
紫外線吸収剤の添加方法はアルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0095】
紫外線吸収剤の使用量はセルロースに対する質量で、0.1〜5%、好ましくは、0.5〜2.5%、より好ましくは0.8〜2.0%である。紫外線吸収剤の使用量が2.5%より多いと透明性が悪くなる傾向があり好ましくない。
【0096】
フィルムの耐熱性を向上させる目的では、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、これらの化合物の添加量はセルロースに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。また、このほかに、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
【0097】
上記の他に、更に、帯電防止剤、難燃剤、滑り剤等も適宜添加してよい。また、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、偏光板の間に配置されるため異常な屈折光を発生させるような異物は性能劣化の原因となる。その点で、いわゆる輝点状の異常が問題となる。
【0098】
本発明において、偏光クロスニコル状態で認識される輝点とは、2枚の偏光板を直交(クロスニコル)状態にし、その間にセルロースエステルフィルムをおいて反対側より光源の光を当てて観測されるものをいう。この様な輝点は、偏光クロスニコル状態では、暗視野中で、輝点の箇所のみ光って観察されるので、容易にその大きさと個数を識別することができる。
【0099】
輝点の個数としては、面積250mmあたり、偏光クロスニコル状態で認識される、大きさが5〜50μmの輝点が200個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。更に好ましくは5〜50μmの輝点が100個以下であり、特に好ましくは0〜10個である。このような輝点が多いと、液晶ディスプレイの画像に重大な悪影響を及ぼす。
【0100】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明で使用されるセルロースエステルフィルムの製造方法としては、ドープ液を流延用支持体上に流延、製膜し、得ら得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、その後、張力をかけて乾燥ゾーン中を搬送させながら乾燥する、溶液流延製膜法が好ましい。下記に溶液流延製膜法について述べる。
【0101】
(1)溶解工程:セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液(ドープ)を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、J.M.G.Cowie等によるMakromol.chem.143巻、105頁(1971)に記載されたような、また、特開平9−95544号及び同9−95557号公報に記載された様な低温で溶解する冷却溶解法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。
【0102】
(2)流延工程:ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延方法としては流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイにはコートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは、共流延法を用いて積層構造のセルロースエステルフィルムとすることもできる。
【0103】
(3)溶媒蒸発工程:ウェブ(流延用支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
【0104】
(4)剥離工程:支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0105】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることができるのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
【0106】
(5)乾燥工程:ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する工程である。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、70〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0107】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この観点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
【0108】
(6)巻き取り工程:ウェブを残留溶媒量が質量で2%以下となってからフィルムとして巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。巻き取り方法は一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0109】
セルロースエステルフィルムの膜厚の調節には所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0110】
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0111】
本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚は、10〜300μmであるのが好ましい。膜厚が10μmより薄いと機械強度が不足し、また300μmを越えると取り扱い性や加工性が悪くなる傾向にある。セルロースエステルフィルムの膜厚は、30〜160μmであるのがより好ましく、特に30〜100μmの薄膜フィルムであるのが好ましい。芳香族環を有する架橋剤を反応させることによる効果が、薄膜のセルロースエステルフィルムでは特に顕著である。
【0112】
なお、セルロースエステルフィルムの機械的強度は、室温における引張弾性率を指標として表した場合、好ましくは2.452×10Pa以上であり、より好ましくは2.942×10Pa以上である。室温における引張弾性率はJIS−K−6911に基づいて行なった。
【0113】
また、本発明のセルロースエステルフィルムは架橋構造を有するセルロースエステルの架橋密度の向上から、可塑剤や紫外線吸収剤といった添加剤のブリードアウトや揮発による物性変化が少なく、良好な保存安定性を持つフィルムを提供でき、また芳香環を有する架橋構造によるセルロースエステルフィルムの透湿度の改善によって、可塑剤の減量が可能である。
【0114】
本発明のセルロースエステルフィルムは、光透過率が80%以上、更に好ましくは92%以上の透明支持体であることが好ましい。
【0115】
本発明の偏光板及び液晶表示装置について説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムを用いて偏光板を作製することにより、これまで支持体に使用されてきたトリアセチルセルロースフィルムの種類を代えるだけで、従来の偏光板作製工程をそのまま利用した視野角拡大偏光板の作製が可能となる。即ち、トリアセチルセルロースフィルムは、偏光板作製工程において、アルカリけん化処理を施すことにより偏光子と接着可能であり、且つ貼合後の水分除去性も優れている為、従来から極めて好適な偏光板の支持体として使用されてきた。トリアセチルセルロースフィルムの種類を変えるだけで視野角拡大偏光板を製造できることは、製造上大変有利である。
【0116】
本発明の偏光板に用いる偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性物質で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたもの、ブリュースター角を利用したもの、コレステリック液晶を利用したもの、積層膜の屈折率差を利用したもの等が挙げられる。好ましくは、二色性物質を含有する偏光子である。こうして得られた偏光子をセルロースエステルフィルムにより貼合する。このとき、セルロールエステルフィルムのうちの少なくとも一枚は、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることが必要であるが、従来公知の偏光板用支持体として用いられていたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを他の偏光子の面の貼合に用いてもよいが、本発明に記載の効果を最大に得るためには、偏光板保護膜の両面の物性の同一性の点で偏光板を構成する全てのセルロースエステルフィルムを、本発明のセルロースエステルフィルムにすることが好ましい。
【0117】
また、本発明の偏光板においては、二色性物質を含有する偏光子の光透過軸と前記偏光子に貼合するセルロースエステルフィルムの流延製膜時の幅手方向への延伸方向とが略平行になるように貼合されることが好ましい。なお、本発明において、直交しているとは上記記載のように軸同士が略直交していることを表し、また方向が一致しているとは、軸同士の向きが略平行であることを示す。ここで、略平行とは当該各々の軸のなす角が±10°以内であり、好ましくは±3°以内、更に好ましくは±1°以内である場合を表す。
【0118】
更に、偏光板の作製時に二色性物質を含有する偏光子とセルロースエステルフィルムとを貼合するが、生産効率向上の観点から、長尺ロールとして作製されたセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。本発明において、長尺とは、500m以上を示すが、好ましくは1000m以上であり、特に好ましくは1000m〜4000mである。
【0119】
本発明のセルロースエステルフィルム、偏光子、セルローストリアセテート(TAC)フィルムの順に積層して偏光板を構成する場合においては、TACを幅手方向に延伸操作を行ったものを用いることにより温湿度環境の変化に対して、寸法変化(形状変化)が少なく優れた光学特性を維持した位相差機能つき偏光板を得ることができる。延伸操作は流延製膜時に行ってもよいし、製膜後オフラインで実施してもよいが、延伸の均一性、生産性等の観点から流延製膜時に連続的に実施することが好ましい。延伸倍率は1.01〜1.2倍の範囲が好ましく、特に好ましくは1.03〜1.15倍であり、最も好ましくは1.05〜1.10倍である。
【0120】
更に偏光板の作製時、偏光子の一方の面に貼号する、本発明のセルロースエステルフィルムの延伸倍率Aと前記偏光子を挟んで反対側のもう一方の面に貼号するセルロースフィルムの延伸倍率Bとの関係としては、A/Bが1000〜0.001の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは200〜0.005であり、特に好ましくは100〜0.01の範囲である。
【0121】
また、偏光板の作製時、本発明のセルロースエステルフィルムの製膜時の流延方向と偏光子の延伸方向を略平行にすることが好ましい。この様にして得られた偏光板を、液晶セルの両面に好ましくは次のように配置して貼合する。
【0122】
本発明の偏光板は、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸(ここで、偏光子の延伸方向と光透過軸は直交している)が直交するように貼合して、液晶表示装置を得ることができる。ここで、図1に本発明のベストモードである液晶表示装置の模式図を示す。図1において表される液晶表示装置9は、一枚の液晶セル7と2枚の偏光板6a、6bから構成される。
【0123】
偏光板6aは2枚のセルロースエステルフィルム1aと一枚の偏光子2aから、偏光板6bは2枚のセルロースエステルフィルム1bと一枚の偏光子2bから各々、構成される。
【0124】
偏光板6a、6bにおいて、流延方向3a、3bは各々、セルロースエステルフィルム1a、1bの流延製膜時の流延方向を表す。延伸方向4a、4bは各々、偏光子2a、2bの延伸方向を表す。光透過軸8a、8bは、各々、偏光板6a、6bの光透過軸を表し、各々、液晶セル7のラビング軸5a、5bと直交している。以上のような簡単な構成で著しく視野角の改善された液晶表示装置を得ることができる。
【0125】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0126】
実施例1
〔セルロースエステルフィルムの作製〕
《セルロースエステルフィルム1の作製》
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、アセトン60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次に化合物例1を3質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部を入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ、溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0127】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を、塩化メチレン94質量部とアセトン8質量部に混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0128】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.2倍に延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム1を得た。
【0129】
セルロースエステルフィルム1は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0130】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし、遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを下記により測定し、面内リターデーション値Ro、厚さ方向のリターデーション値Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:98nm、Rt:152nmであった。
【0131】
(Ro、Rtの評価方法)
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求め、この値よりRo、Rtを算出した。Ro、Rtは下記式で定義される。
【0132】
Ro=(nx−ny)×d、Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、dはフィルムの厚み(nm)である。
【0133】
(弾性率の評価方法)
フィルムを23℃、相対湿度55%に温調された部屋に4時間以上放置した後、試料幅10mm、長さ200mmに切断した。チャック間を100mmにして引張速度100mm/分で引張試験を5回行い、その平均値より弾性率を求めた。
【0134】
(寸法安定性評価方法)
フィルムを幅手方向150mm×長手方向120mmに切断し、該フィルム表面に、幅手方向及び長手方向それぞれに100mm間隔で2ヶ所、カミソリなどの鋭利な刃物で十文字の印を付けた。該フィルムを23℃、55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理前の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L1を測定した。次に、該試料を80℃、90%RHの高温高湿条件下で120時間放置後、再び該試料を23℃、55%RHの環境下で24時間調湿し、工場顕微鏡で処理後の幅手方向及び長手方向のそれぞれの印間距離L2を測定した。この処理前後の変化率を次式によって求めた。
【0135】
寸法変化率(%)=(L1−L2)/L1×100
L1:処理前の印間距離
L2:処理後の印間距離
《セルロースエステルフィルム2の作製》
化合物例1の代わりに化合物例90を使用した以外は、セルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム2を得た。
【0136】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:61nm、Rt:120nmであった。
【0137】
《セルロースエステルフィルム3の作製(高原子屈折置換(X))》
化合物例1の代わりに化合物例36を使用した以外は、セルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム3を得た。
【0138】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:110nm、Rt:183nmであった。
【0139】
《セルロースエステルフィルム4の作製》
化合物例1の代わりに化合物例25を使用した以外は、セルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム4を得た。
【0140】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:101nm、Rt:203nmであった。
【0141】
《セルロースエステルフィルム5の作製》
化合物例1の代わりに化合物例133を使用した以外は、セルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム5を得た。
【0142】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:48nm、Rt:112nmであった。
【0143】
《セルロースエステルフィルム6の作製》
化合物例1の代わりに化合物例7を使用した以外は、セルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム6を得た。
【0144】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:70nm、Rt:148nmであった。
【0145】
《セルロースエステルフィルム7の作製》
延伸倍率を1.4倍にした以外は、セルロースエステルフィルム1と同様にして膜厚70μmのセルロースエステルフィルム7を得た。
【0146】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:122nm、Rt:232nmであった。
【0147】
《セルロースエステルフィルム8の作製》
化合物例36の添加量を50質量%にした以外は、セルロースエステルフィルム3と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム8を作製したが、延伸時に膜が破断してしまった。
【0148】
《セルロースエステルフィルム9の作製》
アセチル基の置換度2.92、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部を使用した以外は、セルロースエステルフィルム6の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム9を得た。
【0149】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:48nm、Rt:89nmであった。
【0150】
《比較セルロースエステルフィルム10の作製》
延伸操作を行わなかった以外は、セルロースエステルフィルム1と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム10を作製した。
【0151】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:3nm、Rt:101nmであった。
【0152】
《比較セルロースエステルフィルム11の作製》
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0153】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を、塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部に混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0154】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.4倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚70μmのセルロースエステルフィルム11を得た。
【0155】
セルロースエステルフィルム11は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0156】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:34nm、Rt:85nmであった。
【0157】
《比較セルロースエステルフィルム12の作製》
幅方向の延伸倍率を1.2とした以外は、セルロースエステルフィルム11と同様にしてセルロースエステルフィルム12を作製した。
【0158】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:19nm、Rt:62nmであった。
【0159】
《比較セルロースエステルフィルム13の作製》
化合物例1をヘキサデシルメチレンジイソシアナートにした以外は、セルロースエステルフィルム1と同様にしてセルロースエステルフィルム13を作製した。
【0160】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:17nm、Rt:65nmであった。
【0161】
《セルローストリアセテートフィルムの作製》
以下の手順により、従来より偏光板用支持体として用いられているセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を作製した。
【0162】
アセチル基の置換度2.92、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0163】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)7質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、及びAEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を、塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部に混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0164】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで剥離したウェブの両端を固定しながら120℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)を得た。
【0165】
セルロースエステルフィルム1の評価と同様にして、Ro、Rtをそれぞれ算出したところ、Ro:2nm、Rt:42nmであった。
【0166】
作製したセルロースエステルフィルムの延伸倍率、Ro、Rt、膜厚、弾性率、寸法安定性を表1に示す。
【0167】
【表1】
Figure 2004244497
【0168】
表1の結果から明らかなように、本発明のセルロースエステルフィルムは少ない延伸で高いRo、Rtを得ることが可能であり、弾性率、寸法安定性などの膜物性にも優れていることが分かる。
【0169】
〔偏光板の作製〕
《偏光板1の作製》
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、この偏光膜に上述のセルロースエステルフィルム1を以下の手順でラミネートして本発明の偏光板1を得た。
【0170】
(1)保護フィルムとして、図2に示すように30cm×18cmの長方形ABCDの形状に切り取った上述のセルロースエステルフィルム2枚を2mol/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。
【0171】
図2は、流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。流延製膜され、作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルム1において、流延方向11は流延製膜時の流延方向、幅手方向12は流延製膜時の幅手方向を表す。偏光板作製に用いられるセルロースエステルフィルムは、例えば、長方形ABCDのように切り取られて使用されるが、長方形ABCDの一辺ABとセルロースエステルフィルム1の流延方向11とのなす角度は45度であるように切り取られる。
【0172】
(2)2枚のセルロースエステルフィルムと同じサイズに調整した上記の偏光膜(偏光子)を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
【0173】
(3)前記の偏光膜(偏光子)に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、図3のような配置で前記セルロースエステルフィルムの面上にのせ、更にもう1枚の前記セルロースエステルフィルム試料の面と接着剤とが接する様に積層し配置する。
【0174】
図3は、本発明の偏光板の模式図である。偏光板6aは、偏光子2aを2枚の本発明のセルロースエステルフィルム1aが挟みこむ状態に配置、構成されている。セルロースエステルフィルム1aの流延製膜時の流延方向と偏光子2aの延伸方向は平行である。
【0175】
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルムとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cmの圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
【0176】
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。次いで、得られた偏光板(視野角拡大偏光板1)を下記に示すように液晶セルに組み込み、表示装置としての特性を評価した。
【0177】
《偏光板2の作製》
上記のセルロースエステルフィルム2を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、同様に視野角測定を行った。
【0178】
《偏光板3の作製》
セルロースエステルフィルム3を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、同様に視野角測定を行った。
【0179】
《偏光板4の作製》
セルロースエステルフィルム5を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、同様に視野角測定を行った。
【0180】
《偏光板5の作製》
セルロースエステルフィルム6を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、同様に視野角測定を行った。
【0181】
《偏光板6の作製》
上記のセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)とセルロースエステルフィルム3の組み合わせをラミネート用の支持体として、以下の手順で偏光板を作製した。
【0182】
まず、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、
(1)保護フィルムとして、図2に示したように、30cm×18cmの長方形ABCDに各々、切り取ったセルロースエステルフィルム3とセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)をそれぞれ2mol/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。
【0183】
(2)これらのセルロースエステルフィルム3とセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)と同じサイズに調整した上記記載の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
【0184】
(3)前記の偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、本発明のセルロースエステルフィルム3を上記のセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)に代えた以外は、図3と同様な配置で偏光子上にセルロースエステルフィルムを積層した。
【0185】
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルム3、もしくはセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)との積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cmの圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
【0186】
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。支持体であるセルロースエステルフィルム3が液晶セル側(内側)となるように貼合した。そして、同様に視野角測定を行った。
【0187】
《偏光板7の作製》
セルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)を2枚用いて、セルロースエステルフィルム1を用いた場合と同様にして偏光板を作製し、同様に視野角測定を行った。
【0188】
《視野角測定》
次に、以下の方法により、上記で作製の各偏光板(視野角拡大偏光板)について視野角測定を行った。
【0189】
視野角拡大偏光板を液晶セルの両面に、以下のように配置して貼合し、パネルで評価した。即ち、本発明の偏光板は液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交するように貼合した。液晶セルは、NEC製15インチディスプレイMulti Sync LCD1525Jのあらかじめ貼合されていた光学補償フィルムおよび偏光板を剥がしたものを使用した。こうして得られた液晶表示装置を、ELDIM社製EZ−contrastにより視野角を測定した。視野角は、液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲で表した。
【0190】
【表2】
Figure 2004244497
【0191】
表2の評価結果から、比較例に比べて本発明の試料は著しく視野角が改善されていることが明らかである。
【0192】
【発明の効果】
本発明により、弾性率、寸法安定性などの膜物性に優れ、且つTN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性を簡便に改善できるセルロースエステルフィルムと、それを用いた視野角拡大偏光板、及び視野角が改善された液晶表示装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示装置の構成を示す模式図である。
【図2】流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。
【図3】本発明の偏光板の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1a、1b セルロースエステルフィルム
2a、2b 偏光子
3a、3b セルロースエステルフィルム流延製膜時の流延方向
4a、4b 偏光子の延伸方向
5a、5b 液晶セルのラビング方向
6a、6b 偏光板
7 液晶セル
8a、8b 偏光板の光透過軸
9 液晶表示装置
10 長尺のセルロースエステルフィルム
11 流延製膜時の流延方向
12 流延製膜時の幅手方向

Claims (14)

  1. セルロースエステルの残留ヒドロキシル基が共有結合を介して架橋構造を形成し、且つ架橋部分に芳香族環を少なくとも1つ以上有し、面内リターデーション値Roが20〜300nmであり、延伸されていることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
  2. 芳香族環を少なくとも1つ以上有し、且つセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を少なくとも2つ以上有する化合物で架橋され、面内リターデーション値Roが20〜300nmであり、延伸されていることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
  3. 芳香族環を少なくとも1つ以上有し、且つセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を少なくとも2つ以上有する化合物が下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項2に記載のセルロースエステルフィルム。
    Figure 2004244497
    (式中、Aは単環の芳香族環を表し、L、Lは共に連結基を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。X、Xは共にセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を表し、互いに同じであっても異なっていてもよい。n、mは共に0〜6までの整数を表すが、同時に6≧n+m≧2の関係式も満たす。但し、L、L、Aはハロゲン原子、置換基を有していてもよく、またL、Lはあっても無くてもよい。)
  4. 前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項3に記載のセルロースエステルフィルム。
    Figure 2004244497
    (式中、Aは単環の芳香族環を表し、Lは連結基を表す。Xはセルロースエステルの残留ヒドロキシル基と反応可能な官能基を表し、lは2〜6の整数を表す。但し、L、Aはハロゲン原子、置換基を有していてもよく、Lはあっても無くてもよい。)
  5. 前記一般式(I)及び(II)で表される化合物が単環の芳香族環以外に原子屈折が3.5以上の原子及び置換基を含有することを特徴とする請求項3または4に記載のセルロースエステルフィルム。
  6. 前記一般式(I)及び(II)で表される化合物のL、L、Lがそれぞれ原子数4以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
  7. 前記一般式(I)及び(II)で表される化合物のX、X、Xがエポキシ基、イソシアナート基、チオイソシアナート基のいずれかであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
  8. 請求項2〜7のいずれか1項に記載の化合物の総質量がセルロースエステルに対し0.1〜20質量%の割合であることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
  9. 製膜時または製膜後に幅手方向に延伸されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
  10. 延伸倍率が1.02〜1.2倍であることを特徴とする請求項9に記載のセルロースエステルフィルム。
  11. 下記式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
    式(1) 2.4≦A+B≦2.8
    式(2) 1.4≦A≦2.0
    (式中、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3または4のアシル基の置換度を表す。)
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴とする偏光板。
  13. 請求項12に記載の偏光板を有することを特徴とする液晶表示装置。
  14. 前記偏光板のセルロースエステルフィルムが液晶セル側に配置されることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
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