JP4915486B2 - 偏光板及び偏光板の製造方法 - Google Patents

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本発明は偏光板及び偏光板の製造方法に関する。
従来、液晶表示装置の視野角拡大のために用いられる光学補償フィルムとして、下記のような3種の構成が試みられており、各々、有効な方法として提案されている。
(1)負の1軸性を有する化合物であるディスコティック液晶性化合物を支持体上に担持させる方法
(2)正の光学異方性を有するネマティック型高分子液晶性化合物を深さ方向に液晶分子のプレチルト角が変化するハイブリッド配向をさせたものを支持体上に担持させる方法
(3)正の光学異方性を有するネマティック型液晶性化合物を支持体上に2層構成にして各々の層の配向方向を略90°とすることにより擬似的に負の1軸性類似の光学特性を付与させる方法
しかしながら、上記記載の構成の各々が、下記のような問題点を有している。
上記(1)に記載の方法では、TNモードの液晶セルに適用する場合に斜め方向から見た場合の画面が黄色く着色するというディスコティック液晶性化合物特有の欠点が発現する。
上記(2)に記載の方法では、液晶発現温度が高く、TAC(セルローストリアセテート)のような等方性の透明支持体上で液晶の配向を固定出来ず、必ず、一度別の支持体上で配向固定後、TACのような支持体に転写する必要があり、工程が煩雑化、且つ、極めて生産性が低下してしまう。
上記(3)に記載の方法の一例として、例えば、特開平8−15681号には、棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物を用いた光学異方層として、配向能を有する偏光子を介して配向させた棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物からなる層を形成し、固定化して、この層のさらに上に再度配向能をもつ偏光子を介して再び配向させた棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物からなる層を形成し固定化する4層構成の光学異方層が開示されている。この場合、2つの液晶層の平面内に投影される配向方向を例えば90度ずらして与えることにより擬似的に円盤状に近い特性を与えることが可能となる。
よって、上記(3)に記載の方法は、ディスコティック液晶性化合物の場合と異なり着色の問題がないので、発色再現性が重視される液晶TV(テレビ)などの用途においては極めて有利な特徴を有している。
しかしながら、この方法は、ディスコティック液晶性化合物において1層で達成していたものをあえて2層の液晶層で達成するものであり、いかにも効率が悪いという問題点があった。
更に、これらの方法はいずれもより根本的な、共通する問題点を有している。すなわち、これらの方式によれば、光学補償能を得るためには液晶性化合物を精密に薄膜塗布する必要があった。液晶性化合物を配向させて塗布するためには配向性層を予め塗布して配向規制力を付与する処理(ラビング処理、偏光露光処理など)を行い、このことは、簡便とされる光学補償フィルムによる視野角改善の方式においても非常にコスト高となっていることを意味する。また、液晶性化合物を使用しない方法としてはポリカーボネートなど位相差板として通常用いられる樹脂を延伸処理して二軸配向性の位相差板を作製しこれを偏光板に事後貼合処理していわゆる楕円偏光板を形成することによる視野角を拡大する方法があり、例えば、住友化学工業(株)よりVACフィルムまたはNew VACフィルムとして市販されている。しかしながら、このような二軸配向性の位相差板は材質的に均一に延伸することが非常に困難であり、高度な延伸技術を必要とする。また、収率も低いという問題があった。さらに、この位相差板は偏光板と接着貼合して用いるため製造工程が増え、コスト増を免れなかった。このように、従来の偏光板と同様の製造方法により安価に視野角拡大効果を有する偏光板は存在しなかった。
そこで、上述の問題点の解決が要望されていた。
特開2000−154261 特開2000−053784
本発明の目的は、TN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性、すなわち、斜め方向から見た場合の画面のコントラスト、着色、明暗の反転現象を簡便に改善できる視野角拡大偏光板とその偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムの提供であり、更に、前記視野角拡大偏光板を用いて、簡単な構成で著しく視野角が改善される液晶表示装置を提供することである。
本発明の上記目的は、下記の構成1〜4により達成された。
1.光学的に二軸性であって幅手方向に屈折率が最大となる軸を有する、面内リターデーション値Rが30〜300nmであり、厚み方向のリターデーション値Rが30〜300nmである長尺ロールセルロースエステルフィルム及び、長尺ロールトリアセチルセルロースフィルムとを、二色性物質を含有する偏光子の両面にそれぞれ保護フィルムとして有することを特徴とする長尺ロール偏光板。
2.前記セルロースエステルフィルムが、下記式(1)及び(2)を同時に満足することを特徴とする前記1記載の偏光板。
式(1) 2.4≦A+B≦2.8
式(2) 1.4≦A≦2.0
〔式中、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3または4のアシル基の置換度を表す。〕
3.光学的に二軸性を有し、流延製膜時に少なくとも幅手方向に1.0〜3.5倍延伸し、長尺ロールとして作製された面内リターデーション値Rが30〜300nmであり、厚み方向のリターデーション値Rが30〜300nmであるセルロースエステルフィルム、長尺ロールトリアセチルセルロースフィルムとを、二色性物質を含有する長尺ロール偏光子に貼合することを特徴とする長尺ロール偏光板の製造方法。
4.前記幅手方向に直交する方向に0.4〜1.2倍延伸することを特徴とする前記3記載の長尺ロール偏光板の製造方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明により、TN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性、すなわち、斜め方向から見た場合の画面のコントラスト、着色、明暗の反転現象を簡便に改善できる視野角拡大偏光板とその偏光板に用いられるセルロースエステルフィルム、更に、前記視野角拡大偏光板を用いて、簡単な構成で著しく視野角が改善される液晶表示装置を提供することが出来た。
本発明の液晶表示装置の構成を示す模式図である。 流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。 本発明の偏光板の構成を示す模式図である。
本発明のセルロースエステルフィルムについて説明する。
従来用いられている光学補償フィルムは、透明支持体上に液晶性化合物を均一塗布して配向させたものを用いる方法、またはポリカーボネートなどの樹脂を複雑な延伸技術を駆使して二軸延伸位相差板を用いる方法、すなわちこれらの複雑な光学異方性を有する光学フィルムを偏光板に貼合して使用するのが実状であった。今回本発明者らは、本発明の光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムが十分な光学補償能を有し、高温高湿条件下においても安定な光学補償能を維持することができるそれを保護フィルムとして使用した楕円偏光板を見出すに至った。尚、ここで、本発明の偏光板とは、位相差機能を有する、いわゆる、楕円偏光板を含めることができる。
本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板は、斜め方向から見た場合のコントラストが高く、また、いわゆる視野角が広いだけではなく、斜め方向から見た場合の画面の着色もなく、反転領域も狭くなるなど優れた光学補償能を示すことが判った。
更に、本発明の視野角拡大効果を有する偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムは、光学的に二軸性である特徴を有するが、セルロースエステルフィルムを用いる場合にはこのような光学特性を得るために二軸延伸を行う必要がなく、一軸延伸を行うだけで光学的に二軸性を得ることができる。このことは、流延成膜したセルロースエステルフィルム自身が、もともと負の一軸性(nX=nY>nZ;nX、nYはフィルム面内X、Y方向の屈折率、nZはフィルムの厚み方向の屈折率。)を有しているためと考えられる。
光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムは、偏光板を作製する場合に、液晶セル側(偏光板を構成する二色性物質と液晶セルの間側)に保護フィルムとして用いることができ、反対側(最表面側)の支持体は光学特性は特に限定されないため、保護フィルムの種類としては通常用いられるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を使用すれば良い。この場合に、例えばこのTACフィルムを少なくとも幅手方向に一定の倍率で延伸操作を行うことにより、高温高湿条件下においても非常に安定した光学特性を維持できる楕円偏光板を得ることができる。
また、本発明のセルロースエステルフィルムを用いて偏光板を作製することにより、支持体に使用するセルロースエステルフィルムの種類を置換するだけで、従来の偏光板作製工程をそのまま利用することにより通常の偏光板と同様の方法で視野角拡大偏光板を作製することが可能となり、実用上大きなメリットがある。すなわち、セルロースエステルフィルムは、偏光板作製工程において、偏光子とアルカリけん化処理をすることにより接着可能であり、かつ貼合後の水分除去性も優れるため極めて好適な支持体である。偏光子としては、通常、二色性物質をドープしたポリビニルアルコールフィルムを延伸したものが好ましく用いられる。
本発明は、偏光板だけで視野角拡大機能を有する視野角拡大偏光板、それに用いる長尺の光学的に二軸性のセルロースエステルフィルム、当該視野角拡大偏光板の製造方法及び当該視野角拡大偏光板を用いた液晶表示装置の提供を可能にしたものである。更に詳しくは、ねじれネマティック(TN)型の液晶特有の視野角によるコントラストの変化、特にフルカラー表示ディスプレーとして用いられるアクティブマトリックス型TN型液晶表示装置の表示の視野角依存性を改善したものである。
本発明のセルロースエステルフィルムの光学特性について説明する。
本発明においては、光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムを用いるが、前記のような光学特性は、通常セルロースエステルを流延により製造する過程で一定の方向に張力を付与することにより得ることができる。例えば、セルロースエステルフィルムを流延後に残留溶媒が存在する条件下で延伸などの操作を行うことが特に効果的である。また、加熱したセルロースエステルフィルムを延伸しても製造することが出来る。
セルロースエステルとしては、例えば、セルローストリアセテートを用いることが出来るが、総置換度は2.0を超えていれば良く、特に全アシル基の置換度の合計が2.8以上のセルロースエステルが好ましく用いられる。更に、一定以上の光学補償性能を得るためには、特定の置換基、すなわちアセチル基およびプロピオニル基を有する低級脂肪酸セルロースエステルを用いることが極めて効果的である。
本発明のセルロースエステルフィルムの作製に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有しており、前記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
更に、本発明においては、下記式(3)及び(4)を同時に満たすセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。
式(3) 2.5≦A+B≦2.75
式(4) 1.7≦A≦1.95
これらのアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していても良いし、例えば6位に高い比率で置換するなどの分布を持った置換がなされていても良い。
ここで、置換度とは所謂、結合脂肪酸量の百分率をいい、ASTM−D817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従い算出される数値である。アシル基の置換度の測定法はASTM−D817−96に従って測定できる。
アセチル基と炭素数3〜4個のアシル基の置換度の合計が上記の範囲にあることで、長波長ほど位相差が大きくなる特性があり、かつ、良好な水分率や水バリアー性を備えたセルロースエステルフィルムを得ることができるのである。
特に、アセチル基の平均置換度が2.0未満であると延伸時の位相差のばらつきが少ないため好ましい。
また、機械的強度に優れた光学補償フィルムを得る観点から、本発明に用いられるセルロースエステルの粘度平均重合度(重合度)は、200以上700以下が好ましく、特に、250以上500以下のものが好ましい。
上記記載の粘度平均重合度(DP)は、以下の方法により求められる。
《粘度平均重合度(DP)の測定》
絶乾したセルロースエステル0.2gを精秤し、メチレンクロライドとエタノールの混合溶媒(質量比9:1)100mlに溶解する。これをオストワルド粘度計にて、25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式によって求める。
(a) ηrel=T/Ts
(b) [η]=(lnηrel)/C
(c) DP=[η]/Km
ここで、Tは測定試料の落下秒数、Tsは溶媒の落下秒数、Cはセルロースエステルの濃度(g/l)、Km=6×10−4である。
《リターデーション値R、Rの測定》
視野角拡大効果をより好ましく得る観点から、本発明に係るセルロースエステルフィルムにおいては、式(I)で定義される関係を有することが好ましい。
式(I)(nx+ny)/2−nz>0
ここにおいて、nxはセルロースエステルフィルムの面内で屈折率が最大となる方向の屈折率、nyは面内で且つ、nxに直角な方向の屈折率であり、nzは厚み方向でのフィルムの屈折率である。
また、本発明の光学的に二軸性を有するセルロースエステル支持体は光学的に二軸性であれば視野角改善効果は認められるが、好適な条件は、厚さ方向のリターデーション値R値、面内リターデーション値R値により規定することが可能であり、これらの値を適切に制御することにより視野角拡大効果を著しく改善することができる。具体的な制御方法としては、後述の延伸方法などを用いることができる。
厚さ方向のリターデーション値Rについては、下記式(II)で定義されるリターデーション値(R値)が30〜300nmであることが好ましく、更に好ましくは、60〜250nmである。
式(II)((nx+ny)/2−nz)×d
また、面内方向のリターデーション値Rについては、下記式で表される。
=(nx−ny)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)である。
本発明においては、Rは、30〜300nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは40〜150nmである。
上記記載のリターデーション値、R、Rの測定には、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めることにより得られる。
本発明の光学的に二軸性のセルロースエステルフィルムは、光透過率が80%以上、更に好ましくは92%以上の透明支持体であることが好ましい。また、本発明のセルロースエステルフィルムは、その厚さが30〜150μmのものが好ましい。
本発明に用いられる、セルロースの混合脂肪酸エステルは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のような酸性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基およびプロピオニル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。アセチル化剤とプロピオニル化剤の使用量は、合成するエステルが前述した置換度の範囲となるように調整する。反応溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜600質量部であることがさらに好ましい。酸性触媒の試料量は、セルロース100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは、0.4〜10質量部である。
反応温度は、10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることがさらに好ましい。なお、他のアシル化剤(例、ブチル化剤)やエステル化剤(例、硫酸エステル化剤)を併用してもよい。また、アシル化反応が終了してから、必要に応じて加水分解(ケン化)して、置換度を調整してもよい。反応終了後、反応混合物を沈澱のような慣用の手段を用いて分離し、洗浄、乾燥することによりセルロースの混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートプロピオネート)が得られる。
本発明に用いられるセルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更には単独で使用することが最も好ましい。
また、本発明に用いられる、アセチル基と炭素原子数3または4のアシル基でアシル化したセルロースエステルは、セルロースの混合脂肪酸エステルとも呼ばれている。
炭素原子数3または4のアシル基としては、例えば、プロピオニル基、ブチリル基が挙げられる。フィルムにしたときの機械的強さ、溶解のし易さ等からプロピオニル基またはn−ブチリル基が好ましく、特にプロピオニル基が好ましい。
脂肪酸セルロースエステルを溶解してドープを形成する溶媒としてはメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール等を挙げることができる。
この中で、メチレンクロライドのような塩素系溶媒は好適に使用できるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等も好ましく用いられる。特に酢酸メチルが全有機溶媒に対して50%以上含有していることが好ましく、全有機溶媒に対して5〜30質量%のアセトンを酢酸メチルと併用するとドープ液粘度を低減でき好ましい。
本発明で実質的に塩素系溶媒を含まないとは、全有機溶媒量に対して塩素系溶媒が質量で10%以下、好ましくは5%以下、特に全く含まないことが最も好ましい。
本発明に用いられる脂肪酸セルロースエステルドープには、上記有機溶媒の他に質量で1〜30%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。このことでドープを流延用支持体に流延後、溶剤が蒸発を始め、アルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用の支持体から剥離することが容易となり、更に前記有機溶媒に対する脂肪酸セルロースエステルの溶解を促進する効果が得られる。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、かつ、毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
ドープの固形分濃度は通常、質量で10〜40%が好ましく、ドープ粘度は(10〜50Pa・sec)の範囲に調整されることが良好なフィルムの平面性を得る点から好ましい。
以上の様にして調整されたドープは、濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中には、可塑剤、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、透湿度改善剤等を添加してもよい。
本発明に使用するアセチル基およびプロピオニル置換基を有する脂肪酸セルロースエステルはそれ自身が可塑剤としての効果を発現するので、可塑剤を添加しなくても或いはわずかの添加量で充分なフィルム特性が得られるが、その他の目的で可塑剤を添加してもよい。例えば、フィルムの耐湿性を向上する目的では、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステルなどが挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
リン酸エステル類としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を挙げることができる。
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル類、クエン酸エステル類等があり、
フタル酸エステル類としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル類としては、例えば、クエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。
又、その他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独或いは併用するのが好ましい。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。セルロースエステルに用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下がセルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こし難く、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方が更に好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。
中でも、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。又、これらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
この目的で用いる可塑剤の量はセルロースエステルに対して質量で1〜30%が好ましく、特に4〜13%が好ましい。
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶剤と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
フィルムの黄味を改善する目的で染料を添加してもよい。色味は、通常の写真用支持体にみられる様なグレーに着色できるものが好ましい。但し、写真用支持体と異なりライトパイピングの防止の必要はないので、含有量は少なくてもよく、セルロースエステルに対する質量割合で1〜100ppmが好ましく、2〜50ppmが更に好ましい。
セルロースエステルはやや黄味を呈しているので、青色や紫色の染料が好ましく用いられる。複数の染料を適宜組み合わせてグレーになる様にしてもよい。
フィルムが滑りにくいとフィルム同士がブロッキングを起こし、取り扱い性に劣る場合がある。その場合、本発明に係わるフィルムには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。
又、二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均径が大きいほうがマット効果は大きく、平均径の小さいほうが透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はフィルム中では、通常、凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL200、300、R972、R974、R202、R812、OX50、TT600などがあげられ、好ましくはAEROSIL R972V、200V、R972、R974、R202、R812などがあげられる。
このマット剤の配合はフィルムのヘイズが0.6%以下、動摩擦係数が0.5以下となるように配合することが好ましい。
この目的で用いられるマット剤の含有量は、質量で脂肪酸セルロースエステルに対して0.005〜0.3%が好ましい。
また、本発明のセルロースエステルフィルムは液晶表示装置に組み込まれ、屋外で使用されることも多いので紫外線をカットする機能を有する事が好ましい。そのような観点から、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化の点から波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が、10%以下である必要があり、更に5%以下であることが好ましい。
この目的で用いられる紫外線吸収剤は、可視光領域に吸収がないことが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物等が挙げられる。
これらの例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチルなどである。
本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤の添加方法はアルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対する質量で、0.1〜5%、好ましくは、0.5〜2.5%、より好ましくは0.8〜2.0%である。紫外線吸収剤の使用量が2.5%より多いと透明性が悪くなる傾向があり好ましくない。
フィルムの耐熱性を向上させる目的では、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。又、このほかに、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
上記の他に、更に、帯電防止剤、難燃剤、滑り剤等も適宜添加してよい。
また、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、偏光板の間に配置されるため異常な屈折光を発生させるような異物は性能劣化の原因となる。その点で、いわゆる輝点状の異常が問題となる。
本発明において、偏光クロスニコル状態で認識される輝点とは、2枚の偏光板を直交(クロスニコル)状態にし、その間にセルロースエステルフィルムをおいて反対側より光源の光を当てて観測されるものをいう。この様な輝点は、偏光クロスニコル状態では、暗視野中で、輝点の箇所のみ光って観察されるので、容易にその大きさと個数を識別することができる。
輝点の個数としては、面積250mmあたり、偏光クロスニコル状態で認識される、大きさが5〜50μmの輝点が200個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。更に好ましくは、5〜50μmの輝点が100個以下であり、特に好ましくは0〜10個である。このような輝点が多いと、液晶ディスプレイの画像に重大な悪影響を及ぼす。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
セルロースエステルフィルムの製造方法としては、ドープ液を流延用支持体上に流延、製膜し、得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、その後、張力をかけて乾燥ゾーン中を搬送させながら乾燥する、溶液流延製膜法が好ましい。下記に溶液流延製膜法について述べる。
(1)溶解工程:セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液(ドープ)を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、J.M.G.Cowie等によるMakromol.chem.143巻、105頁(1971)に記載されたような、又、特開平9−95544号及び同9−95557号公報に記載された様な低温で溶解する冷却溶解法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。
(2)流延工程:ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延方法としては流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは、共流延法を用いて積層構造のセルロースエステルフィルムとすることも出来る。
(3)溶媒蒸発工程:ウェブ(流延用支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
(4)剥離工程:支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
(5)乾燥工程:ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する工程である。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、70〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この観点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
(6)巻き取り工程:ウェブを残留溶媒量が質量で2%以下となってからフィルムとして巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
脂肪酸セルロースエステルフィルムの膜厚の調節には所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度をコントロールするのがよい。又、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
本発明に係る光学的に二軸性の性質を有するセルロースエステル支持体は、光学的に二軸性を示す(nx>ny>nzの関係を示す)配向を得るためのあらゆる方法をとることができるが、最も効果的に行う方法の一つとして延伸方法を採ることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムでは、その製造に際し、後述するようなフィルム中の残留溶媒をコントロールすることで、高温でなくても延伸が可能であるが、この方法を用いない場合には、高温で延伸することも可能である。高温で延伸する場合、延伸温度としては、セルロースエステルのガラス転移温度以上の温度で延伸するのであるが、前述した様な可塑剤では、その効果が薄れてしまい延伸性が十分得られない場合がある。高温においても十分な延伸性が付与できる可塑剤が必要となるのであるが、この様な可塑剤としては、不揮発性を有するものが好ましく使用できることを見いだした。不揮発性可塑剤とは、200℃における蒸気圧が1330Pa以下の化合物であり、極めて低い蒸気圧を有し、かつ低い揮発度を有する性質のものである。より好ましくは蒸気圧665Pa以下、更に好ましくは133Pa以下である。例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルが好ましい。このほか、リン酸トリクレシル(38.6Pa、200℃)、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(66.5Pa、200℃)等も好ましく用いられる。あるいは、特表平6−501040号に記載されている不揮発性燐酸エステルも好ましく用いられる。このほか、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニルを含む共重合体などのポリマーあるいはオリゴマーなどの高分子量の可塑剤も好ましく用いることができる。この場合、可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して0.1〜30質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。このように可塑剤を用いることで、高温でのセルロースエステルの延伸性を向上でき、特に、フィルムの面品質や平面性に優れたセルロースエステルフィルムを生産性よく製造できる。
本発明のセルロースエステルフィルムに、光学的二軸性を付与する方法としては、上記に述べたように溶剤を含有した状態で延伸操作を行う方法が好ましい方法の一例として用いられる。以下、その延伸方法について説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造において、セルロースエステル溶解ドープ液を流延用支持体に流延後、次いで、流延用支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が100質量%以下、特に10〜100質量%の範囲にある間に、少なくとも1方向に1.0〜4.0倍延伸することが好ましい。
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜40質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。延伸倍率の更に好ましい範囲は1.0倍〜3.5倍の範囲である。
本発明に係るセルロースエステルを用いて溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜180℃以下の範囲が好ましい。
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、光学補償フィルムとして用いたとき着色等の問題が生じる。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ0.8〜4.0倍、0.4〜1.2倍の範囲とすることが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
以上のようにして得られたフィルムは、最終仕上がりフィルムの残留溶媒量で2質量%以下、さらに0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
本発明においては、流延製膜時、流延支持体上において製膜されるセルロースエステルフィルムの幅手方向の屈折率が最大となるように上記記載の各種条件を調整することが好ましい。
上記に記載のように本発明に係る光学的に二軸性を有するセルロースエステル支持体は、フィルムの屈折率nx、ny、nzがnx>ny>nzの関係を満たしている。本発明において、上記の『幅手方向の屈折率が最大となる』とは、nxの方向が幅手方向に略等しいということである。
ここで、方向が略等しいとは、軸同士の向きが略平行であることを示す。ここで、略平行とは、当該各々の軸のなす角が±10°以内であり、好ましくは±3°以内、さらに好ましくは±1°以内である。
また、本発明の偏光板においては、二色性物質を含有する偏光子の光透過軸と前記偏光子に貼合する光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムの流延製膜時の幅手方向の延伸方向とが略平行になるように貼合されることが好ましい。尚、本発明において、直交しているとは上記記載のように軸同士が略直交していることを表し、また、方向が一致しているとは、軸同士の向きが略平行であることを示す。ここで、略平行とは、当該各々の軸のなす角が±10°以内であり、好ましくは±3°以内、さらに好ましくは±1°以内である場合を表す。
更に、偏光板の作製時、二色性物質を含有する偏光子と光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムとを貼合するが、生産効率向上の観点から、長尺ロールとして作製されたセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。本発明において、長尺とは、500m以上を示すが、好ましくは1000m以上であり、特に好ましくは1000m〜4000mである。
本発明の偏光板及び液晶表示装置について説明する。
本発明の偏光板に用いる偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたものを用いる。こうして得られた偏光子を、セルロースエステルフィルムにより貼合する。
このとき、セルロールエステルフィルムのうちの少なくとも一枚は、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることが必要であるが、従来公知の偏光板用支持体として用いられていたセルローストリアセテート(TAC)フィルムを他の偏光子の面の貼合に用いても良いが、本発明に記載の効果を最大に得るためには、偏光板保護膜の両面の物性の同一性の点で偏光板を構成する全てのセルロースエステルフィルムとして、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルム、偏光子、セルローストリアセテート(TAC)フィルムの順に積層して偏光板を構成する場合においては、セルローストリアセテートフィルムを幅手方向に延伸操作を行ったものを用いることにより温度湿度環境の変化に対して、寸法変化(形状変化)の少ない耐性を有する優れた光学特性を維持した位相差機能つき偏光板を得ることが出来る。延伸操作は、流延製膜時に行っても良いし、製膜後オフラインで実施しても良いが、延伸の均一性、生産性等の観点から流延製膜時に連続的に実施することが好ましい。延伸倍率は、1.01倍〜1.2倍の範囲が好ましく、特に好ましくは1.03倍〜1.15倍であり、最も好ましくは1.05倍〜1.10倍である。
更に偏光板の作製時、偏光子の一方の面に貼号する、本発明のセルロースエステルフィルムの延伸倍率Aと前記偏光子を挟んで反対側のもう一方の面に貼号するセルロースエステルフィルムの延伸倍率Bとの関係としては、A/Bが1000〜0.001の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、200〜0.005であり、特に好ましくは、100〜0.01の範囲である。
また、偏光板の作製時、本発明のセルロースエステルフィルムの流延製膜時の流延方向と偏光子の延伸方向を略平行にすることが好ましい。この様にして得られた偏光板を、液晶セルの両面に、好ましくは次のように配置して貼合する。
本発明の偏光板は、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸(ここで、偏光子の延伸方向と光透過軸は直交している)が直交するように貼合して、液晶表示装置を得ることが出来る。ここで、図1に本発明のベストモードである液晶表示装置の模式図を示す。図1において表される液晶表示装置9は、一枚の液晶セル7と2枚の偏光板6a、6bから構成される。
偏光板6aは、2枚のセルロースエステルフィルム1aと一枚の偏光子2aから、偏光板6bは2枚のセルロースエステルフィルム1bと一枚の偏光子2bから各々、構成される。
偏光板6a、6bにおいて、流延方向3a、3bは各々、セルロースエステルフィルム1a、1bの流延製膜時の流延方向を表す。延伸方向4a、4bは各々、偏光子2a、2bの延伸方向を表す。光透過軸8a、8bは、各々、偏光板6a、6bの光透過軸を表し、各々、液晶セル7のラビング軸5a、5bと直交している。以上のような簡単な構成で著しく視野角の改善された液晶表示装置を得ることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《セルロースエステルフィルムの作製》
(セルロースエステルフィルム1の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)6質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)4質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.65倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚100μmのセルロースエステルフィルム1を得た。
セルロースエステルフィルム1は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを下記により測定し、面内リターデーション値R、厚さ方向のリターデーション値Rをそれぞれ算出したところ、中央部で、R78nm、R175nmであった。R、Rは、下記式で定義される。
=(nx−ny)×d、R=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、dはフィルムの厚み(nm)である。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めた。また、後述する水分率測定方法を用いて測定した結果、1.8%であった。
《セルロースエステルフィルム2の作製》
アセチル基の置換度1.60、プロピオニル基の置換度1.20、粘度平均重合度400のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)6質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)4質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)及びAEROSIL R972V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。R972Vは、予め、上記エタノールに分散して添加した。
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は80質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向に1.5倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚50μmのセルロースエステルフィルム2を得た。
セルロースエステルフィルム2は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzをセルロースエステルフィルム1の作製、評価と同様にして、R、Rをそれぞれ算出したところ、いずれも中央部で、85nm、93nmであった。
また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.4度の範囲に収まっていた。水分率測定した結果、2.1%であった。
《セルロースエステルフィルム3の作製》
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.80、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、酢酸メチル175質量部、エタノール75質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて65℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)6質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)4質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)5質量部を酢酸メチル94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度50℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から55℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで同時二軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向と流延方向(長さ方向)に同時に変化させることで、150℃で巾方向に1.8倍、流延方向(長さ方向)に1.05倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚120μmのセルロースエステルフィルム3を得た。
セルロースエステルフィルム3は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R、Rをそれぞれ算出したところ、165nm、184nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。水分率測定した結果、1.6%であった。
《セルロースエステルフィルム4の作製》
アセチル基の置換度2.30、プロピオニル基の置換度0.5、粘度平均重合度300のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート3質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)3質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)4質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)5質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。
次いで、120℃のオーブン内でロール搬送しながら、オーブン入り口直後のロール周速に対してオーブン出口直前のロール周速を2.1倍になるようにして、流延方向(フィルムの長尺方向)に2.1倍延伸した。延伸後、直ちに60℃まで冷却した。更にテンターを用いてウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を固定のまま、140℃で5分乾燥させ、膜厚160μmのセルロースエステルフィルム4を得た。
セルロースエステルフィルム4は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度270℃のエンボスリングを押し当て、10μmの厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R、Rをそれぞれ算出したところ、中央部で、147nm、142nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.5度の範囲に収まっていた。水分率測定した結果、2.0%であった。
《セルロースエステルフィルム5の作製》
セルロースエステルフィルムに用いるセルロースエステルをアセチル基の置換度1.90、ブチリル基の置換度0.75、粘度平均重合度300のセルロースアセテートブチレートに変更した以外はセルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚100μmのセルロースエステルフィルム5及びそのフィルムロールを作製した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R、Rをそれぞれ算出したところ、中央部で、111nm、139nmであった。
また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。水分率測定した結果、1.3%であった。
《セルロースエステルフィルム6の作製》
アセチル基の置換度1.90、プロピオニル基の置換度0.75、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)6質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)4質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、115℃で巾方向のみに1.40倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム6得た。
セルロースエステルフィルム6、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを下記により測定し、面内リターデーション値R、厚さ方向のリターデーション値Rをそれぞれ算出したところ、中央部で、R50nm、R122nmであった。R、Rは、下記式で定義される。
=(nx−ny)×d、R=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、dはフィルムの厚み(nm)である。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めた。また、後述する水分率測定方法を用いて測定した結果、1.8%であった。
《セルロースエステルフィルム7の作製》
延伸倍率を幅手方向に1.30倍とした以外は、セルロースエステルフィルム6と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム7を作製した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを下記により測定し、面内リターデーション値R、厚さ方向のリターデーション値Rをそれぞれ算出したところ、中央部で、R32nm、R105nmであった。R、Rは、下記式で定義される。
=(nx−ny)×d、R=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、dはフィルムの厚み(nm)である。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めた。また、後述する水分率測定方法を用いて測定した結果、1.8%であった。
《セルロースエステルフィルム8の作製》
延伸後の最終膜厚を40μmとした以外は、セルロースエステルフィルム6と同様にしてセルロースエステルフィルム8を作製した。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを下記により測定し、面内リターデーション値R、厚さ方向のリターデーション値Rをそれぞれ算出したところ、中央部で、R28nm、R91nmであった。R、Rは、下記式で定義される。
=(nx−ny)×d、R=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、dはフィルムの厚み(nm)である。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めた。また、後述する水分率測定方法を用いて測定した結果、1.1%であった。
《比較対照フィルムの作製》
以下の手順により、従来より偏光板用支持体として用いられているセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)を作製した。
アセチル基の置換度2.92、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)3質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)7質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)5質量部、及びAEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで剥離したウェブの両端を固定しながら120℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルム(比較フィルム)を得た。
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚さ方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R、Rをそれぞれ算出したところ、中央部で、2nm、42nmであった。また、遅相軸の方向は、R値が小さいため測定限界以下であった。水分率測定した結果、1.3%であった。
《水分率測定方法》
上記記載で得られた各々のセルロースエステルフィルム試料を10cmの大きさに断裁し、23℃、80%RHの条件下で48時間放置した後、その質量を測定しW1とした。ついで、該フィルムを、120℃で45分間加熱乾燥処理を施した後、その質量を測定しW2とした。各々得られた測定値から下記計算式により、23℃、80%RHにおける水分率を測定する。結果は下記に示す。
水分率(%)=((W1−W2)/W2)×100
《偏光板の作製》
(偏光板1の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、この偏光膜に上述のセルロースエステルフィルム1を以下の手順でラミネートして本発明の偏光板1を得た。
(1)保護フィルムとして、図2に示すように30cm×18cmの長方形ABCDの形状に切り取った上述のセルロースエステルフィルム支持体2枚を2mol/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、さらに水洗、乾燥させた。
図2は、流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。流延製膜され、作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルム10において、流延方向11は流延製膜時の流延方向、幅手方向12は流延製膜時の幅手方向を表す。偏光板作製に用いられるセルロースエステルフィルムは、例えば、長方形ABCDのように切り取られて使用されるが、長方形ABCDの一辺ABとセルロースエステルフィルム10の流延方向12とのなす角度は45度であるように切り取られる。
(2)2枚のセルロースエステルフィルム試料と同サイズに調整した上記記載の偏光膜(偏光子)を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
(3)前記の偏光膜(偏光子)に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、図3のような配置で前記セルロースエステルフィルム試料の面上にのせ、さらにもう1枚の前記セルロースエステルフィルム試料の面と接着剤とが接する様に積層し配置する。
図3は、本発明の偏光板の模式図である。偏光板6aは、偏光子2aを2枚の本発明のセルロースエステルフィルム1aが挟みこむ状態に配置、構成されている。セルロースエステルフィルム1aの流延製膜時の流延方向と偏光子2aの延伸方向は平行である。
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルムとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cmの圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。
次いで、得られた偏光板(視野角拡大偏光板1)を下記に示すように液晶セルに組み込み、表示装置としての特性を評価した。
《偏光板2の作製》
上記のセルロースエステルフィルム2を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《偏光板3の作製》
セルロースエステルフィルム3を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《偏光板4の作製》
セルロースエステルフィルム4を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《偏光板5の作製》
セルロースエステルフィルム5を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《偏光板6の作製》
上記記載の比較対照フィルム(セルローストリアセテートフィルム)とセルロースエステルフィルム1の組み合わせをラミネート用の支持体として、以下の手順で偏光板を作製した。
まず、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、
(1)保護フィルムとして、図2に示したように、30cm×18cmの長方形ABCDに各々、切り取ったセルロースエステルフィルム1と同比較対照フィルムをそれぞれ2mol/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、さらに水洗、乾燥させた。
(2)これらの2枚のセルロースエステルフィルム試料と同サイズに調整した上記記載の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
(3)前記の偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、2枚の本発明のセルロースエステルフィルムの1枚を上記記載の比較対照フィルムに代えて以外は、図3と同様な配置で偏光子上にセルロースエステルフィルムを積層した。
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルムとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cmの圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板1について視野角測定を行った。
視野角拡大偏光板1を液晶セルの両面に、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交し、支持体であるセルロースエステルフィルム1が液晶セル側(内側)となるように貼合した。これを前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《偏光板7の作製》
平均重合度3800、けん化度99.5モル%のポリビニルアルコール100部を水に溶解し、5.0質量%濃度の溶液を得た。該液をポリエチレンテレフタレート上に流延後乾燥して原反フィルムを得た。このフィルムをヨウ素0.2g/l、ヨウ化カリウム60g/lよりなる水溶液中に30℃にて240秒浸漬し、次いでホウ酸70g/l、ヨウ化カリウム30g/lの組成の水溶液に浸漬すると共に、同時に搬送方向に6.0倍に一軸延伸しつつ搬送しながら、5分間ホウ酸処理を行い乾燥した。一方、上述のセルロースエステルフィルム1をコア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状に巻き取ったセルロースエステル原反フィルムを2mol/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、さらに水洗、乾燥させた。このけん化処理セルロースエステル原反フィルムを、前述の延伸して巻き取り済みのポリビニルアルコールフィルムの両面に保護膜としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、ロール・ツー・ロールで連続的に貼合した。図2に示すように、30cm×18cmの長方形ABCDを切り取った。
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板11について視野角測定を行った。
視野角拡大偏光板11を液晶セルの両面に、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交するように貼合した。これを前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《比較対照用の偏光板8の作製》
比較対照セルロースエステルフィルム2枚を用いて、セルロースエステルフィルム1を用いた場合と同様にして偏光板を作製し、これを前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《視野角測定》
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板1について視野角測定を行った。
視野角拡大偏光板1を液晶セルの両面に、以下のように配置して貼合し、パネルで評価した。すなわち本発明の偏光板は、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交するように貼合した。液晶セルは、NEC製15インチディスプレイMulti Sync LCD1525Jのあらかじめ貼合されていた光学補償フィルムおよび偏光板を剥がしたものを使用した。こうして得られた液晶表示装置を、ELDIM社製EZ−contrastにより視野角を測定した。視野角は、液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲であらわした。その結果、本発明の視野角拡大偏光板1を用いて得られた視野角の値を下記に示した。
視野角
試料 左 右 上 下 備考
偏光板1 65° 65° 28° 29° 本発明
偏光板2 57° 57° 27° 23° 本発明
偏光板3 60° 60° 27° 27° 本発明
偏光板4 55° 55° 25° 25° 本発明
偏光板5 62° 62° 27° 25° 本発明
偏光板6 65° 65° 28° 28° 本発明
偏光板7 64° 64° 27° 26° 本発明
偏光板8 35° 35° 25° 20° 比較例
上記の評価結果から、比較例に比べて本発明の試料は、著しく視野角が改善されていることが明らかである。
実施例2
下記のようにして、偏光板9〜13を作製した。
《偏光板9の作製》
(セルロースエステルフィルムAの作製)
以下の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムA)を作製した。
アセチル基の置換度2.92、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内は1.2気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)3質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)7質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)5質量部、及びAEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は80質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、105℃で巾方向のみに1.07倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムA得た。
得られたセルロースエステルフィルムAと、実施例1に記載のセルロースエステル6を用いて、実施例1の偏光板1の作製と同様にして偏光板9を作製した。
偏光板9の視野角測定を実施例1に記載と同様に行い(保存前)、且つ、作製後の偏光板9を80℃、90%湿度条件下で500時間静置(保存後)した後、前述と同様の方法により視野角測定を行った。
《偏光板10の作製》
剥離後の幅方向の延伸倍率を1.15倍とした以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムB)を作製した。
このセルロースエステルフィルムBを用いて、偏光板9の場合と同様にして偏光板10を作製した。得られた偏光板10を偏光板9と同様に評価した。
《偏光板11の作製》
剥離後の幅方向の延伸倍率を1.20倍とした以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムC)を作製した。
このセルロースエステルフィルムCを用いて、偏光板9の場合と同様にして偏光板11を作製した。得られた偏光板11を偏光板9と同様に評価した。
《偏光板12の作製》
剥離後の幅方向の延伸倍率を1.02倍とした以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムD)を作製した。
このセルロースエステルフィルムDを用いて、偏光板9の場合と同様にして偏光板12を作製した。得られた偏光板12を偏光板9と同様に評価した。
《偏光板13の作製》
剥離後の幅方向の延伸を行わなかった以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムE)を作製した。
このセルロースエステルフィルムEを用いて、偏光板9の場合と同様にして偏光板13を作製した。得られた偏光板13を偏光板9と同様に評価した。
視野角
試料 左 右 上 下
偏光板9(保存前) 64° 64° 28° 27°
偏光板9(保存後) 64° 64° 27° 28°(劣化なし)
偏光板10(保存前) 65° 65° 27° 27°
偏光板10(保存後) 65° 65° 28° 26°(劣化なし)
偏光板11(保存前) 65° 65° 27° 27°
偏光板11(保存後) 61° 60° 28° 25°(僅かに劣化)
偏光板12(保存前) 65° 65° 27° 27°
偏光板12(保存後) 62° 62° 25° 27°(僅かに劣化)
偏光板13(保存前) 65° 65° 27° 27°
偏光板13(保存後) 55° 57° 23° 23°(やや劣化)
上記の評価結果から、本発明のセルロースエステルフィルムを有する偏光板9〜13は、良好な視野角改善効果が見られることが明らかである。また、経時保存後の処理をした場合、偏光板を構成する2枚のセルロースエステルフィルムのうち、一枚のみを使用した偏光板13については、保存後の視野角の劣化がやや観察され、また、黒表示時に光漏れ等が観察されたが、2枚とも本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板9〜12は経時保存後も保存前と同様に優れた視野角改善効果を示していることが判る。
また、偏光板9〜13は、一方の面を延伸倍率1.40のセルロースエステルフィルム6を各々用いているが、経時保存処理(60℃、90%、500時間処理)後の偏光板のカール特性を目視で観察した結果、延伸操作を行わなかったセルロースエステルフィルムEを片面の保護フィルムに使用した偏光板13は偏光板自身の寸法変化によるカールが観察されたのに対し、延伸倍率2%(セルロースエステルフィルムD)、20%(セルロースエステルフィルムC)、15%(セルロースエステルフィルムB)、7%(セルロースエステルフィルムA)のセルロースエステルフィルムを各々、片面の保護フィルムとした場合は、延伸倍率2%、20%のもので改善が見られ、15%、7%ではほとんどカールは発生しなかった。
1a、1b セルロースエステルフィルム
2a、2b 偏光子
3a、3b セルロースエステルフィルム流延製膜時の流延方向
4a、4b 偏光子の延伸方向
5a、5b 液晶セルのラビング方向
6a、6b 偏光板
7 液晶セル
8a、8b 偏光板の光透過軸
9 液晶表示装置
10 長尺のセルロースエステルフィルム
11 流延製膜時の流延方向
12 流延製膜時の幅手方向
ABCD 切り取られる長方形

Claims (6)

  1. 光学的に二軸性を有し、面内リターデーション値Rが30〜300nmであり、厚み方向のリターデーション値Rが30〜300nmである長尺ロールセルロースエステルフィルムと、
    幅手方向に1.02〜1.20倍の延伸倍率で延伸されてなる長尺ロールトリアセチルセルロースフィルムとが、
    二色性物質を含有する長尺ロール偏光子のそれぞれの面に貼合されてなることを特徴とする長尺ロール偏光板。
  2. 前記長尺ロールセルロースエステルフィルムが、下記式(1)及び(2)を同時に満足するセルロースエステルを含有することを特徴とする請求項1記載の偏光板。
    式(1) 2.4≦A+B≦2.8
    式(2) 1.4≦A≦2.0
    〔式中、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3または4のアシル基の置換度を表す。〕
  3. 前記長尺ロールセルロースエステルフィルムの面内リターデーション値R が40〜150nmであり、厚み方向のリターデーション値R が60〜250nmであることを特徴とする請求項1または2記載の偏光板。
  4. 前記長尺ロールトリアセチルセルロースフィルムが幅手方向に1.05〜1.15倍の延伸倍率で延伸されてなるものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の偏光板。
  5. セルローストリアセテートフィルムを幅手方向に1.02〜1.20倍の延伸倍率で延伸して長尺ロールトリアセチルセルロースフィルムを得る工程と、
    得られた長尺ロールトリアセチルセルロースフィルムと、光学的に二軸性を有し、面内リターデーション値R が30〜300nmであり、厚み方向のリターデーション値R が30〜300nmである長尺ロールセルロースエステルフィルムとを、二色性物質を含有する長尺ロール偏光子のそれぞれの面に貼合する工程と、
    を含む長尺ロール偏光板の製造方法。
  6. 前記延伸倍率が1.05〜1.15倍である、請求項5記載の製造方法。
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