JP4013568B2 - セルロースエステルフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶画像表示装置に有用なセルロースエステルフィルム及びセルロースエステルフィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶画像表示装置(LCD)は、低電圧、低消費電力で、IC回路への直結が可能であり、そして、薄型化が可能であることから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。ところで、この液晶画像表示装置の基本的な構成は、例えば液晶セルの両側に偏光板を設けたものであるが、この偏光板は、一定方向の偏波面の光だけを通す。従って、液晶表示装置においては、電界による液晶表示装置の配向の変化を可視化させる重要な役割を担っている。すなわち、偏光板の性能によって液晶表示装置の性能が大きく左右される。
【0003】
この偏光板に使用されるセルロースエステルフィルムは、その表面をアルカリ鹸化して、一軸延伸され且つヨウ素染色されたポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜の片面あるいは両面に、偏光板用保護フィルムとして、ポリビニルアルコールのような粘着剤を介して貼り合わせ偏光板を作製する。この偏光板に使用するセルロースエステルフィルムは解像力やコントラストの表示品質を高く維持するために、高透明性、高平面性、高耐久性(寸法安定性、耐湿熱性、耐水性)、低光学異方性、フィルム内及び表面に異物がないこと、表面に傷がないかまたはつきにくいこと(耐傷性)、適度のフィルム剛性を有すること(取り扱い性)、適度の透水性等の優れた特性を備えていることが要求される。
【0004】
上述の分野で使用されるセルロースエステルフィルムは、従来より使用されているハロゲン化銀写真感光材料のフィルムベースと同様に、溶液流延製膜方法及び装置を用いて製造されている。
【0005】
溶液流延製膜方法によるセルローストリアセテートフィルムの製造方法の一例としては、例えば、図1に示したようなセルローストリアセテートフィルムの製造装置により行われている。図1は、溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の一例を示す概略図である。図1において、はじめに、セルロースエステルを、これを溶解する良溶媒及び溶解しない貧溶媒との混合溶媒に溶解し、この溶液に、必要に応じて可塑剤や紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加してセルローストリアセテート溶液(以下、ドープともいう)を調製し、このドープを鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体1(例えば、ベルトあるいはドラム状で、金属支持体または単に支持体ということがある)上に、ダイ2から流延してフィルムF(ウェブ、あるいはドープ膜ともいう)を形成し、金属支持体1の上下に設けた乾燥工程3、4から温湿度を調整した空気を吹き付けて、冷却及び一定の乾燥を行った後、フィルムFを剥離ロール5で剥離し、ロール63で移送し、ロール乾燥装置6に導入し、ロール63によってフィルムFを引き回し、その間にフィルムFは導入された乾燥ガス風61によって乾燥されセルローストリアセテートフィルムとして、巻取り部7の巻取り機72で巻き取られて製造される。
【0006】
通常、乾燥工程では、図1に示すようなフィルムを多数のロール63を千鳥状に通し、乾燥風を当てるのが一般的であるが、米国特許第2,319,053号明細書のように、赤外線などで乾燥する方法もある。更に、フィルムを直接ロールに掛けるのではなく、エアーを吹き出してその風圧でフィルムを浮上させることにより掛架体と非接触状態で移動させる方式、いわゆるエアーループ方式も開発されている(例えば、特開昭55−135046号公報など)。
【0007】
一方、ポリエステル、ポリプロピレンなどのフィルムの機械強度等を改良する目的でフィルム延伸が行われており、延伸方法の1つとして、フィルムの両側縁部をクリップ等で固定して2〜6倍延伸するテンター方式が知られている。このテンター方式を利用する方法として、例えば、特開昭59−211006号公報には、フェノキシ樹脂等のフィルムから液晶表示パネルの基板を製造する技術が開示されており、このフィルムにはセルロースアセテートフィルムも使用できることがその中に示唆されている。また、特開平4−284211号、特開昭62−115035号公報には、テンター乾燥装置を用いたセルローストリアセテートフィルムの製造方法が開示されており、図2に、上記のテンター乾燥装置を有する溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の一例を示す。
【0008】
上記図1に記載の方法と同様にして、剥離ロール5で剥離されたフィルムFはテンター乾燥装置8に導入され、フィルムの両端をクリップで把持して幅を保持するか、または幅延伸を若干行って乾燥される。乾燥終了後、巻き取りセルロースエステルフィルムを得る。
【0009】
前述の方法でセルロースエステルフィルムを製造した場合、いくつかの問題があった。即ち、金属支持体上に流延されたドープを剥離した後、テンターで幅手方向に延伸することにより、平面性が向上するが、一方、幅手方向において配向角が大きくなる。一般に、配向角が大きくなると偏光板の偏光度が低下し、解像力やコントラストを低下させる原因となる。
【0010】
更に、液晶表示装置は薄型化、小型化が可能であることから、ノート型パーソナルコンピュータ、カーナビゲータ、携帯電話、ゲーム機等への応用が非常な早さで進行し、更に薄型化、小型化となってきている。それにより、従来使用されていた液晶画像表示装置のセルロースエステルフィルムに対しては、更なる薄膜フィルムの開発が要望されてきている。このような薄膜フィルムの場合、平面性を改良するためにテンターを用いると、配向角が大きくなりやすく、同様に偏光度の低下が懸念され、また上記の方法で延伸を行って作製したセルロースアセテートフィルムは、高湿下で保存した際に寸法安定性に劣るという問題点もあり、早急な改良技術の開発が求められている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、偏光板保護膜としての光学特性及び寸法安定性に優れたセルロースエステルフィルム及びその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成された。
【0013】
1.溶液流延製膜法によりセルロースエステルを含む溶液を金属支持体上に流延、剥離したフィルムを、幅手方向に固定又は延伸して製造するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、剥離してから該フィルムの残留溶媒含有量が1質量%以下まで乾燥し、巻き取られる間の工程で、下記式(1)で表される幅手方向の伸縮率Aと下記式(2)で表される搬送方向の伸縮率Bとの比(A/B)が、2.0〜10.0であり、かつ該搬送方向の伸縮率Bが−0.5%以下であることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0014】
式(1)
幅手方向の伸縮率A=(巻き取り時のフィルム幅/金属支持体上のフィルム幅−1)×100(%)
式(2)
搬送方向の伸縮率B=(巻き取り時のフィルム搬送速度/金属支持体上でのフィルム搬送速度−1)×100(%)
2.前記金属支持体上から剥離時のフィルムの残留溶媒量が20質量%以上150質量%以下であることを特徴とする前記1項記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0015】
3.膜厚が20〜60μmであり、かつ前記A/Bが2.5〜8.0であることを特徴とする前記1又は2項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0016】
4.溶液流延製膜法によりセルロースエステルを含む溶液を金属支持体上に流延、剥離したフィルムを、幅手方向に固定又は延伸して製造するセルロースエステルフィルムであって、剥離してから該フィルムの残留溶媒含有量が1質量%以下まで乾燥し、巻き取られる間の工程で、前記式(1)で表される幅手方向の伸縮率Aと前記式(2)で表される搬送方向の伸縮率Bとの比(A/B)が、2.0〜10.0であり、かつ該搬送方向の伸縮率Bが−0.5%以下となる条件で製造されることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0017】
5.前記金属支持体上から剥離する時のフィルムの残留溶媒量が20質量%以上150質量%以下であることを特徴とする前記4項記載のセルロースエステルフィルム。
【0018】
6.搬送方向の配向角θを0度としたとき、幅手方向の配向角θ分布が5度以下であり、かつ面内レタデーション値R0が2〜5nmであることを特徴とする前記4又は5項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0019】
7.膜厚が20〜60μmで、かつ前記A/Bが2.5〜8.0であることを特徴とする前記4又は5項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0020】
8.搬送方向の配向角θを0度としたとき、幅手方向の配向角θ分布が5度以下であり、かつ面内レタデーション値R0が0.5〜2nmであることを特徴とする前記4、5、7項のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0021】
以下、本発明の詳細について説明する。
請求項1、4に係る発明では、溶液流延製膜法によりセルロースエステルを含む溶液を金属支持体上に流延、剥離したフィルムを、幅手方向に固定又は延伸して製造するセルロースエステルフィルム又はその製造方法であって、剥離してから該フィルムの残留溶媒含有量が1質量%以下まで乾燥し、巻き取られる間の工程で、前記式(1)で表される幅手方向の伸縮率Aと前記式(2)で表される搬送方向の伸縮率Bとの比(A/B)が、2.0〜10.0であり、かつ該搬送方向の伸縮率Bが−0.5%以下であることが特徴である。
【0022】
始めに、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法において、その製造工程としては、図1、図2に記載のように、主に、ドープを金属支持体上に流延する工程、金属支持体上での乾燥工程、フィルムを金属支持体から剥離する剥離工程及びフィルムを乾燥する工程から構成されている。
【0023】
本発明で用いる支持体は、無限移送する無端の金属支持体の表面が鏡面となっていることが好ましい。流延工程は、ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、金属支持体、例えば、ステンレスベルトあるいは回転する金属ドラム上に加圧ダイからドープを流延する工程である。その他の流延する方法としては、例えば、流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整でき、かつ膜厚を均一にし易い観点から、加圧ダイを用いることが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等が挙げられるが、何れも好ましく用いられる。また、製膜速度を上げるため、加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層製膜してもよい。膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等を適宜調整することにより行うことができる。
【0024】
金属支持体上での乾燥工程は、ウェブ(金属支持体上に流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、例えば、ウェブ側及び金属支持体裏側から加熱風を吹かせる方法、支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等を挙げることができる。また、それらを適宜選択して組み合わせる方法も好ましい。また、ウェブの膜厚が薄ければ乾燥が早い。金属支持体の温度は全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。
【0025】
剥離工程は、金属支持体上で有機溶媒を蒸発させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離する工程で、その後フィルムは乾燥工程に送られる。金属支持体からウェブを剥離する位置のことを剥離点といい、また剥離を助けるロールを剥離ロールという。ウェブの厚さにもよるが、剥離点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがある。
【0026】
請求項2あるいは5に係る発明においては、後述の方法で測定する残留溶媒量が20〜150質量%でウェブの剥離が行われるのが好ましく、さらに好ましくは50〜150質量%である。20質量%未満の剥離を行うと、本発明のセルロースエステルフィルムの機械強度を高くする目的で搬送方向の張力を高くした際に、セルロースエステルフィルムに残留応力が発生し、寸法特性が劣化する。一方、150質量%を超えると剥離残りが発生し、セルロースエステルフィルムの表面欠陥の原因となり好ましくない。
【0027】
また、残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することにより、製膜速度を上げることができる方法の1つとして、残留溶媒量が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)を挙げることができる。ゲル流延法には、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後にゲル化する方法、あるいは支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ、ドープ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることができる。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、フィルムが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで残留溶媒量を決められる。
【0028】
本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはフィルムの任意時点での質量、NはMのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0029】
フィルム乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、本発明では残留溶媒量を1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下にすることにより、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。フィルム乾燥工程では、一般に、ロール懸垂方式、ピンテンター方式、又はクリップテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。本発明では、テンター方式で幅手方向に3%以上の延伸率で延伸しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましく、さらに好ましくは延伸率が3.0〜9.0%であり、より好ましくは3.0〜6.0%である。
【0030】
特に、本発明では、支持体より剥離した直後の残留溶媒量の多いところで幅保持もしくは延伸を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため好ましい。
【0031】
支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは巾方向に収縮しようとする。更に、高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は、可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性、寸法安定性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップでフィルムの巾両端を保持しつつ乾燥させる方法、いわゆるテンター方式を用いることが好ましい。
【0032】
本発明において、フィルムを乾燥させる手段としては、特に制限なく、例えば、熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等を用いて行うことができ、簡便さの観点からは熱風を用いて行う方法が好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、乾燥温度を徐々に高くしていくことが好ましく、更には、80〜140℃の範囲で行うことが、高い寸法安定性を実現する上で好ましい。
【0033】
上述した流延から後乾燥までの各工程は、空気雰囲気下であってもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下であってもよい。また、乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することはもちろんのことである。
【0034】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に係る巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、例えば、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0035】
本発明では、剥離してからフィルムの残留溶媒含有量が1質量%以下まで乾燥し、巻き取られる間の工程で、前記式(1)で表される幅手方向の伸縮率Aと前記式(2)で表される搬送方向の伸縮率Bとの比(A/B)が、2.0〜10.0であり、かつ該搬送方向の伸縮率Bが−0.5%以下であることが特徴である。
【0036】
幅手方向の伸縮率Aは、前記式(1)により求めることができ、具体的には、金属支持体上に流延されたフィルムの幅を測定する。次いで、テンター乾燥装置8、ロール乾燥装置6、9を経て、フィルムの残留溶媒量が1質量%以下になるまで乾燥させた後、巻取り部7の巻取り機72の直前で、試料をサンプリングし、その幅手方向の長さを測定することにより求めることができる。本発明においては、幅手方向の伸縮率Aとしては、−2.0〜−10.0%であることが好ましい。
【0037】
また、搬送方向の伸縮率Bは、前記式(2)により求めることができ、具体的には、図1、図2で示すフィルムを形成する金属支持体の搬送速度(m/min)と、巻取り部7の巻取り機72の搬送速度とにより求めることができる。これは、塗膜形成から巻き取りまでの全製膜工程を通じて、一定の張力で搬送させる場合、残留溶媒量の多い領域である塗膜形成部、すなわち金属支持体の搬送速度は相対的に早くなり、逆に乾燥が終了し残留溶媒量が極めて低い巻取り部、すなわち巻取り機の搬送速度は相対的に遅くなり、この搬送速度比をもって搬送方向の伸縮率とすることができる。本発明においては、搬送方向の伸縮率Bは、−0.5%以下であることが好ましいが、より好ましくは−0.5〜−2.0%である。
【0038】
本発明においては、A/Bは2.0〜10.0であることが特徴の1つであるが、好ましくは、フィルムの膜厚が20〜60μmの場合には、A/Bが2.5〜8.0である。
【0039】
本発明において、上記で規定するA/Bの範囲となるように各伸縮率を調整する方法として、特に制限はないが、各工程での乾燥条件、搬送張力条件、テンターによる延伸条件等を適宜調整することが最も有効である。
【0040】
上述の乾燥条件、搬送張力条件、テンターによる延伸条件と適切に設定することにより、配向角、レタデーションの調整が可能となる。
【0041】
次に、本発明のセルロースエステルフィルムの詳細について、以下説明する。本発明のセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、リンターパルプ、ウッドパルプ及びケナフパルプから選ばれるセルロースを用い、それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対する全アシル基の置換度が2.5〜3.0のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましく用いられる。
【0042】
本発明に係るセルロースエステルのアセチル基の置換度は、少なくとも1.5以上であることが好ましい。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。これらのセルロースエステルの分子量は、数平均分子量として70,000〜300,000の範囲が、フィルムに成形した場合の機械的強度が強く好ましく、更に、80,000〜200,000が好ましい。通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後において、フレーク状となり、その形状で使用されるが、粒子サイズとしては、平均粒径として0.05〜2.0mmの範囲とすることが、より溶解性を早める観点から好ましい。
【0043】
セルロースエステルフィルム中には、フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などを含有することにより、セルロースエステルフィルムに起因するハロゲン化銀写真感光材料や液晶画像表示装置の性能を向上させることができ好ましい。
【0044】
本発明において、セルロースエステルフィルム中含有させることができる可塑剤としては、特に限定しないが、リン酸エステル系としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができる。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0045】
本発明のセルロースエステルフィルムで用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50質量%以下とすることが、セルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方がさらに好ましく、特には、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが好ましい。可塑剤のセルロースエステルに対する添加量としては、0.5〜30質量%が好ましく、特に2〜15質量%が好ましい。
【0046】
また、本発明において、セルロースエステルフィルム中に含有させることができる紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の観点より、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が10%以下であることが必要となり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。ベンゾトリアゾール系の市販の紫外線吸収剤として、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等を好ましく用いることができるが、これらには限定されない。紫外線吸収剤は、2種以上用いてもよい。
【0047】
紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。本発明において、紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対し0.5〜20質量%の範囲で添加することができ、0.6〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.6〜2.0質量%である。
【0048】
また、本発明において、セルロースエステルフィルム中に、微粒子のマット剤を含有することが好ましく、微粒子のマット剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズ(失透性)を小さくできるので好ましい。微粒子の2次粒子としては、平均粒径で0.01〜1.0μmであることが好ましく、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.5質量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子では、有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、例えば、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等が挙げられる。微粒子の平均粒径としては、大きい方がマット効果は大きく、逆に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径として5〜50nmで、より好ましくは7〜20nmである。これらの微粒子は、セルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を形成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはAEROSIL 200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えば、AEROSIL 200Vと同R972Vとを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用できる。
【0049】
次に、本発明におけるセルロースエステルドープの調製方法について述べる。溶解釜中でセルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒を攪拌しながら、フレーク状のセルロースエステルを添加、溶解してドープを形成する。溶解方法としては、例えば、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下の温度で行う方法、主溶媒の沸点以上の温度で加圧しながら行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を挙げることができる。溶解したセルロールエステル溶液、いわゆるドープは、次いで濾材による濾過を施した後、脱泡してポンプにより次工程に送液される。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、一般には10〜35質量%であるが、好ましくは15〜25質量%である。本発明に有用なポリマーをセルロースエステルドープ中に含有させるには、予め有機溶媒に該ポリマーを溶解してから添加、セルロースエステルドープに直接添加等、添加方法として特に制限なく行うことができる。この場合、ポリマーがドープ中で白濁したり、相分離したりしないように注意して添加する必要がある。
【0050】
本発明で用いることのできる良溶媒としては、セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒であり、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等を挙げることができ、特に、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンを好ましく用いることができる。しかし、近年の環境問題等から非塩素系の有機溶媒を用いることが好ましい。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用することにより、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減できるので好ましい。特に、沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。本発明に係るドープに使用する有機溶媒は、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独では溶解しないものを貧溶剤と定義している。本発明に係るドープに使用する貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等を好ましく使用し得る。本発明に有用なポリマーに対しても、有機溶媒の選定は、セルロースエステルの良溶媒を用いるのが好ましい。前述のように、低分子可塑剤を使用する場合には、通常の添加方法で行うことができ、ドープ中に直接添加しても、予め有機溶媒に溶解してからドープ中に注ぎ入れてもよい。
【0051】
本発明において、前記のような種々の添加剤溶液または分散液をセルロースエステルドープに添加する際、それぞれの移送系列より移送され、移送管が合流したところで各添加要素をドープ液とし合液させ、その直後に管内混合器で十分に混合する方法も好ましい。例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer 東レエンジニアリング製)のようなインラインミキサーを使用するのが好ましい。インラインミキサーを用いる場合、セルロースエステルを高圧下で濃縮溶解したドープに適用することもできる。
【0052】
本発明において、セルロースエステルドープの調製においては、異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識しやすい異物は除去しなければならない。本発明のセルロースエステルフィルムを偏光板用保護フィルムとして使用する場合には、この濾過精度によって、その品質が決定されるといっても過言ではない。濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。このため、本発明に係るセルロースエステルドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(R)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。本発明に係るセルロースエステルドープの濾過は、通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過材前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6×106Pa以下であることが好ましく、1.2×106Pa以下であることがより好ましく、1.0×106Pa以下であることが更に好ましい。
【0053】
また、原料のセルロースエステルにアシル基の未置換もしくは低置換度のセルロースエステルが含まれていると、異物故障(以下、輝点故障ともいう)が発生することがある。輝点故障とは、直交状態(クロスニコル)の2枚の偏光板の間にセルロースエステルフィルムを置き、片側から光を照射して、その反対側から光学顕微鏡(50倍)で観察すると、正常なセルロースエステルフィルムであれば、光が遮断されていて、黒く何も見えないが、異物があるとそこから光が漏れて、スポット状に光って見える認識される現象である。輝点故障の直径が大きいほど、液晶画像表示装置とした場合の実害が大きく、その直径は50μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましく、更に8μm以下が好ましい。なお、輝点の直径とは、輝点を真円に近似して測定する直径を意味する。輝点故障は、上記の直径のものが400個/cm2以下であれば実用上問題ないが、300個/cm2以下であることが好ましく、200個/cm2以下であることがより好ましい。このような輝点故障の発生数及び大きさを減少させるために、細かい異物を十分濾過する必要がある。また、特開2000−137115公報に記載のように、一度製膜したセルロースエステルフィルムの粉砕品をドープにある割合再添加して、セルロースエステル及びその添加剤の原料とする方法は、輝点故障を低減することができる好ましい方法である。
【0054】
セルロースエステルフィルムの厚さとしては、一般的には、20〜200μmの厚みで使用されるが、LCD等に使用される偏光板の薄肉化、軽量化が要望から、本発明では20〜60μmであることが好ましく、より好ましくは、30〜60μm、更に好ましくは35〜50μmである。厚みが20μm未満では、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板の作製工程でシワ等の発生によるトラブルを起こしやすくなり、また、60μmを越える厚さでは、LCDの薄膜化に対する寄与が低減し、好ましくない。
【0055】
請求項6に係る発明のセルロースエステルフィルムでは、搬送方向の配向角θを0度としたとき、幅手方向の配向角θ分布が5度以下であり、かつ面内レタデーション値R0が2〜5nmであることが好ましく、また請求項8に係る発明のセルロースエステルフィルムでは、搬送方向の配向角θを0度としたとき、幅手方向の配向角θ分布が5度以下であり、かつ面内レタデーション値R0が0.5〜2nmであることが好ましい。
【0056】
本発明でいう配向角θとは、製膜時のフィルム搬送方向とNxが為す角度(度)であり、面内レタデーション値R0(nm)は、下式で表される。
【0057】
R0=(Nx−Ny)×d
Nx:フィルムの面内での最大屈折率方向であるx方向の屈折率
Ny:x方向に垂直な該フィルム面内の方向であるy方向の屈折率
d:フィルムの膜厚(nm)
本発明においては、幅手方向の配向角θ分布が5度以下であることが好ましいが、さらに好ましくは0.1〜5度である。
【0058】
本発明において、セルロースエステルフィルム全体の屈折率の測定は、通常の屈折率計を用いることができる。例えば、全体の屈折率を測定した後、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率Nx、Nyを算出し、かつフィルムの厚さを測定してR0値と配向角θを求めることができる。
【0059】
偏光板の重要品質の一つとして光学等方性がある。これは、必要不可欠な構成要素であるセルロースエステルフィルムの影響を大きく受ける。これまで、保護フィルムとして光学等方性に優れているセルロースエステルフィルムが使用されてきた。光学等方性はレタデーション値R0、配向角θにより影響される品質であり、優れた光学等方性を得るためには低R0値が必要となる。
【0060】
本発明のセルロースエステルフィルムは、光学等方性に優れ、汚れもなく、液晶表示用部材に好ましく用いることができる。本発明でいう液晶表示用部材とは、液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、光学補償フィルム、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等があげられる。上記記載の中でも、偏光板または偏光板用保護フィルム用に好ましく用いられる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0062】
上記各組成を、順次密閉容器中に投入し、釜内温度を70℃まで昇温した後、70℃で3時間攪拌を行って、各組成物を完全に溶解した。その後、攪拌を停止し、液温を43℃まで下げてドープを調製した後、直ちに連結した配管を経て後述の濾過工程に送液し、絶対濾過精度0.005mmの濾紙を用い、濾過流量300L/m2・時、濾圧は1.0×106Paで濾過を行った。
【0063】
《セルロースアセテートフィルム1〜10の作製》
上記調製したドープを、図2に記載のテンター乾燥装置を有する溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置を用いて、流延及び乾燥を行いセルロースアセテートフィルムを作製した。但し、図2に記載の第1番目のロール乾燥装置6を除いたものを使用した。
【0064】
上記調製したドープ液を、ダイ2を通して、ステンレスベルト製の金属支持体1の上に流延し、ステンレスベルトの温度を25℃に制御し、フィルムF側の乾燥工程4からは45℃の風を10m/秒の風速で斜めにあて、ステンレスベルト側の乾燥工程3からは、前半を40℃の風を10m/秒で垂直にあてフィルムを乾燥し、フィルム中の残留溶媒量が20質量%になるまで溶媒を蒸発した後、剥離ロール5にて剥離した。
【0065】
次いで、テンター乾燥装置8及びロール乾燥装置9にフィルムを導入して、テンター乾燥装置8にて、幅保持しながら105℃で乾燥し、続いてフィルムを千鳥状に配置したロール乾燥装置9で120℃で乾燥し、巻取り部7の巻取り機72で巻き取り、最終的に20℃に冷却して、厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム1(フィルム試料1ともいう)を作製した。なお、上記全工程を通じてフィルムの搬送時の張力として、196N/幅となるように、ステンレスベルトの搬送速度及び巻き取り機の巻取り速度を適宜調整した。
【0066】
次いで、上記フィルム試料1の作製において、表1に記載の幅手方向の伸縮率A、搬送方向の伸縮率B、A/Bの値となるように、各搬送張力条件、剥離時の残留溶媒量、テンターでの延伸条件、乾燥温度及び膜厚を適宜調整して、セルロースアセテートフィルムであるフィルム試料2〜10を作製した。
【0067】
(幅手方向の伸縮率A、搬送方向の伸縮率B、A/Bの値の測定)
幅手方向の伸縮率A及び搬送方向の伸縮率Bは下式に従い測定した。
【0068】
式(1)
幅手方向の伸縮率A=(巻き取り時のフィルム幅/金属支持体上のフィルム幅−1)×100(%)
式(2)
搬送方向の伸縮率B=(巻き取り時のフィルム搬送速度/金属支持体上でのフィルム搬送速度−1)×100(%)
上記式(1)において、図2に記載の金属支持体上でのフィルムの幅を、公知の計測装置により測定した。次いで、テンター乾燥装置8、ロール乾燥装置6、9を経て、フィルムの残留溶媒量が1質量%以下になるまで乾燥させた後、巻取り部7の巻取り機72の直前で、試料をサンプリングし、その幅手方向の長さをメジャーにより測定した。また、金属支持体上でのフィルム搬送速度及び巻き取り時のフィルム搬送速度は、196N/幅の張力で搬送した際に、搬送しているフィルムが弛まない状態、全ての搬送ロールが正常に追従している状態で、フィルムが過度に引っ張られないように、あるいはフィルム端が過度の張力で折れジワが発生しないように搬送速度を最適に調整し、その時の搬送速度を求めた。
【0069】
《セルロースアセテートフィルムの評価》
以上のようにして作製した各セルロースアセテートフィルムについて、以下の方法に従って、レタデーション値R0、配向角θの測定及び寸法安定性の評価を行った。
【0070】
(レタデーション値R0、配向角θの測定)
レタデーション値R0の測定には、自動副屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定し、キーエンス社製のレーザフォーカス変位計LT−8010によりフィルムの膜厚を測定し、その平均膜厚dを求め、前述の方法に従って、試料の幅手方向で10箇所測定し、レタデーション値R0の最大値及び搬送方向の配向角θを0度としたときの幅手方向の配向角θの最大値を測定した。
【0071】
(寸法安定性の評価)
巻取り直後の各セルロースアセテートフィルムから、搬送方向及び幅手方向に直交するようにして、一辺が100mmの正方形の試料を切り出し、搬送方向の長さを、工場顕微鏡を用いて1/1000mm単位まで正確に測定し、この長さをL1とした。次いで、この試料を80℃、相対湿度55%の雰囲気下で8時間保存した後、同様の方法で搬送方向の長さを測定し、これをL2とし、下記式にしたがって、寸法変化率を求め、これを寸法安定性の尺度とした。
【0072】
寸法変化率={(L1−L2)/L1×100}(%)
以上により得られた結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1より明らかなように、本発明で規定する前記式(1)で表される幅手方向の伸縮率Aと前記式(2)で表される搬送方向の伸縮率Bとの比(A/B)が、2.0〜10.0で、かつ搬送方向の伸縮率Bが−0.5%以下であるセルロースアセテートフィルムは、比較例に対し、幅手方向における配向角分布が小さく、更に寸法変化率が小さく、寸法安定性に優れていることが分かる。更に、上記で規定する条件は、剥離時の残留溶媒量を20〜150質量%の範囲とすること、膜厚として20〜60μmとすることにより、レタデーション値を低くし、配向角の分布を小さくすることができ、より寸法安定性が向上していることが分かる。
【0075】
実施例2
《偏光板の作製》
実施例1で作製したセルロースアセテートフィルム1〜10の未処理の試料と80℃、相対湿度55%の雰囲気下で8時間保存した試料(強制劣化試料)とを用いて、下記に記載の方法に従って、偏光板1A〜10A(未処理試料)及び偏光板1B〜10B(強制劣化試料)を作製した。
【0076】
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1g、ホウ酸4gを含む水溶液100gに浸漬し、50℃で6倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面に、下記アルカリケン化処理を行った各セルロースエステルフィルムを、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ偏光板1A〜10A(未処理試料)及び偏光板1B〜10B(強制劣化試料)を作製した。
【0077】
(アルカリケン化処理)
工程 処理液 処理温度 処理時間
ケン化工程:2モル/LNaOH 50℃ 90秒
水洗工程 : 水 30℃ 45秒
中和工程 :10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 : 水 30℃ 45秒
上記条件で各セルロースエステルフィルムを、ケン化、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
【0078】
《液晶表示パネルによる評価》
市販の液晶表示パネル(NEC製 カラー液晶ディスプレイ MultiSync LCD1525J:型名 LA−1529HM)の両面の偏光板を注意深く剥離し、ここに偏光方向を合わせた上記偏光板1A〜10A及び偏光板1B〜10Bを張り付けて、液晶表示パネル1A〜10A及び液晶表示パネル1B〜10Bを作製し、下記の方法に従って視認性の評価を行った。
【0079】
(視認性の評価)
液晶表示パネル1A〜10Aについて、白色LEDによる照明下で、光学特性として、法線方向から35°の角度より反射光の色むら、画面の均一性を観察し、下記の基準に従って評価した。
【0080】
◎:反射光の色むらはなく、画像にもムラがなく鮮明な画像である
○:若干反射光の色むらが認識されるが、画像にはムラがなく鮮明に認識できる
△:明らかに反射光の色むら、画像のムラが認識される
×:反射光の色むら、画像のムラが目立ち、画面が見にくい
以上の評価を行った結果、比較品はいずれも△又は×の評価であったが、本発明の試料は、○又は◎であり、液晶表示装置に用いた際に視認性に優れていることを確認することができた。
【0081】
(画像均一性の評価)
液晶表示パネル1B〜10Bについて、2mm間隔で幅1mmの格子状画像パターンを全面に表示し、左右、上下における格子線の歪みを目視評価した。
【0082】
上記評価を行った結果、本発明のセルロースアセテートフィルムを用いて作製した液晶表示パネルは、比較品に対して、いずれも左右、上下での格子線の歪みが認められず、画像均一性に優れていることを確認することができた。
【0083】
【発明の効果】
本発明により、幅手方向での配向角分布が小さく、かつ寸法変化率が小さく、寸法安定性に優れた液晶表示装置に有用なセルロースエステルフィルム及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いることのできる、溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明で用いることのできる、テンター乾燥装置を有する溶液流延製膜セルロースエステルフィルム製造装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
F フィルム(ウェブともいう)
1 金属支持体
2 ダイ
3、4 乾燥工程
5 剥離ロール
6、9 ロール乾燥装置
8 テンター乾燥装置
61 乾燥ガス風
63 ロール
72 巻取り機
Claims (8)
- 溶液流延製膜法によりセルロースエステルを含む溶液を金属支持体上に流延、剥離したフィルムを、幅手方向に固定又は延伸して製造するセルロースエステルフィルムの製造方法であって、剥離してから該フィルムの残留溶媒含有量が1質量%以下まで乾燥し、巻き取られる間の工程で、下記式(1)で表される幅手方向の伸縮率Aと下記式(2)で表される搬送方向の伸縮率Bとの比(A/B)が、2.0〜10.0であり、かつ該搬送方向の伸縮率Bが−0.5%以下であることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
式(1)
幅手方向の伸縮率A=(巻き取り時のフィルム幅/金属支持体上のフィルム幅−1)×100(%)
式(2)
搬送方向の伸縮率B=(巻き取り時のフィルム搬送速度/金属支持体上でのフィルム搬送速度−1)×100(%) - 前記金属支持体上から剥離時のフィルムの残留溶媒量が20質量%以上150質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 膜厚が20〜60μmであり、かつ前記A/Bが2.5〜8.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 溶液流延製膜法によりセルロースエステルを含む溶液を金属支持体上に流延、剥離したフィルムを、幅手方向に固定又は延伸して製造するセルロースエステルフィルムであって、剥離してから該フィルムの残留溶媒含有量が1質量%以下まで乾燥し、巻き取られる間の工程で、前記式(1)で表される幅手方向の伸縮率Aと前記式(2)で表される搬送方向の伸縮率Bとの比(A/B)が、2.0〜10.0であり、かつ該搬送方向の伸縮率Bが−0.5%以下となる条件で製造されることを特徴とするセルロースエステルフィルム。
- 前記金属支持体上から剥離する時のフィルムの残留溶媒量が20質量%以上150質量%以下であることを特徴とする請求項4記載のセルロースエステルフィルム。
- 搬送方向の配向角θを0度としたとき、幅手方向の配向角θ分布が5度以下であり、かつ面内レタデーション値R0が2〜5nmであることを特徴とする請求項4又は5に記載のセルロースエステルフィルム。
- 膜厚が20〜60μmで、かつ前記A/Bが2.5〜8.0であることを特徴とする請求項4又は5に記載のセルロースエステルフィルム。
- 搬送方向の配向角θを0度としたとき、幅手方向の配向角θ分布が5度以下であり、かつ面内レタデーション値R0が0.5〜2nmであることを特徴とする請求項4、5、7のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
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