JP2004189957A - セルロースエステルフィルム、偏光板、及び液晶表示装置、並びにセルロースエステルフィルム、及び偏光板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、TN型LCDの視野角特性を改善できる視野角拡大偏光板とその偏光板とそれに用いるセルロースエステルフィルム、視野角が改善される液晶表示装置及び該フィルムと偏光板の製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)2.4≦A+B≦2.8及び式(2)1.4≦A≦2.0〔Aはアセチル基の置換度、BはC数3または4のアシル基の置換度〕を同時に満足し、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を含有し、面内リターデーション値R0が20〜100nm、厚み方向のリターデーション値Rtが70〜300nmであり、光学的に二軸性を有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】式(1)2.4≦A+B≦2.8及び式(2)1.4≦A≦2.0〔Aはアセチル基の置換度、BはC数3または4のアシル基の置換度〕を同時に満足し、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を含有し、面内リターデーション値R0が20〜100nm、厚み方向のリターデーション値Rtが70〜300nmであり、光学的に二軸性を有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はセルロースエステルフィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置の視野角拡大のために用いられる光学補償フィルムとして、下記のような5種の構成が試みられており、各々、有効な方法として提案されている。
【0003】
(1)特開平7−325221号等に見られるように、負の1軸性を有する化合物であるディスコティック液晶性化合物を支持体上に担持させる方法。
【0004】
(2)特開平10−186356号に見られるように、正の光学異方性を有するネマティック型高分子液晶性化合物を深さ方向に液晶分子のプレチルト角が変化するハイブリッド配向をさせたものを支持体上に担持させる方法。
【0005】
(3)正の光学異方性を有するネマティック型液晶性化合物を支持体上に2層構成にして各々の層の配向方向を略90°とすることにより擬似的に負の1軸性類似の光学特性を付与させる方法。
【0006】
(4)芳香族化合物を添加したセルロースアセテートフィルム上に負の1軸性を有する化合物であるディスコティック液晶性化合物を担持させる方法。
【0007】
(5)芳香族化合物を添加した、セルロースアセテートフィルムを延伸して偏光子に貼り付ける方法。
【0008】
(6)延伸することで光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムを偏光子に貼りつける方法。
【0009】
しかしながら、上記記載の構成の各々が、下記のような問題点を有している。
上記(1)に記載の方法では、TNモードの液晶セルに適用する場合に斜め方向から見た場合の画面が黄色く着色するというディスコティック液晶性化合物特有の欠点が発現する。
【0010】
上記(2)に記載の方法では、液晶発現温度が高く、TAC(セルローストリアセテート)のような等方性の透明支持体上で液晶の配向を固定できず、必ず、一度別の支持体上で配向固定後、TACのような支持体に転写する必要があり、工程が煩雑化、且つ、極めて生産性が低下してしまう。
【0011】
上記(3)に記載の方法の一例として、棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物を用いた光学異方層として、配向能を有する偏光子を介して配向させた棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物からなる層を形成し、固定化して、この層の更に上に再度配向能をもつ偏光子を介して再び配向させた棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物からなる層を形成し固定化する、4層構成の光学異方層が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、2つの液晶層の平面内に投影される配向方向を例えば90度ずらして与えることにより擬似的に円盤状に近い特性を与えることが可能となる。
【0012】
よって、上記(3)に記載の方法は、ディスコティック液晶性化合物の場合と異なり着色の問題がないので、発色再現性が重視される液晶TV(テレビ)などの用途においては極めて有利な特徴を有している。
【0013】
しかしながら、この方法は、ディスコティック液晶性化合物において1層で達成していたものをあえて2層の液晶層で達成するものであり、いかにも効率が悪いという問題点があった。
【0014】
上記(4)に記載の方法の一例として、光学的等方性の高いセルロースアセテートフィルムに芳香族化合物を添加することにより、光学的異方性を持つセルロースアセテートフィルムとし、ディスコティック液晶性化合物を担持させるものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0015】
これらの方法は何れもより根本的な、共通する問題点を有している。すなわち、これらの方式によれば、光学補償能を得るためには液晶性化合物を精密に薄膜塗布する必要があった。液晶性化合物を配向させて塗布するためには配向性層を予め塗布して配向規制力を付与する処理(ラビング処理、偏光露光処理など)を行い、このことは、簡便とされる光学補償フィルムによる視野角改善の方式においても非常にコスト高となっていることを意味する。また、液晶性化合物を使用しない方法としてはポリカーボネートなど位相差板として通常用いられる樹脂を延伸処理して二軸配向性の位相差板を作製し、これを偏光板に事後貼合処理していわゆる楕円偏光板を形成することによる視野角を拡大する方法があり、例えば、住友化学工業(株)よりVACフィルムまたはNew VACフィルムとして市販されている。しかしながら、この様な二軸配向性の位相差板は材質的に均一に延伸することが非常に困難であり、高度な延伸技術を必要とする。また、収率も低いという問題があった。更に、この位相差板は偏光板と接着貼合して用いるため製造工程が増え、コスト増を免れなかった。この様に、従来の偏光板と同様の製造方法により安価に視野角拡大効果を有する偏光板は存在しなかった。
【0016】
上記(5)に記載の方法の一例として、例えば特開2001−249223号には、芳香族化合物を添加した、酢化度60.9(アセチル置換度:2.86)と酢化度の高いセルロースアセテートフィルムを延伸することで、面内の光学異方性を出現させ、偏光子保護フィルムにすることで、視野角を改善した。しかしながら、酢化度60.9(アセチル置換度:2.86)と酢化度の高いセルロースアセテートフィルムは延伸するだけでは光学等方性であり、芳香族を添加することで光学異方性を出現させる必要があるため、延伸倍率が1.5倍と大きく、面内でのレターデーション値のバラツキも大きいという問題が存在した。
【0017】
上記(6)に記載の方法の一例として、延伸したセルロースエステルフィルムを偏光子保護フィルムとすることで、簡便に視野角を改善できる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。但し、この方法では延伸倍率が大きく製造コスト増であるという問題点が存在した。
【0018】
以上から、上述の問題点の早急な解決が要望されていた。
【0019】
【特許文献1】
特開平8−15681号公報
【0020】
【特許文献2】
特開2000−111914号公報
【0021】
【特許文献3】
特開2002−187960号公報
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、TN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性、すなわち、斜め方向から見た場合の画面上下方向のコントラスト、着色、明暗の反転現象を簡便に改善できる視野角拡大偏光板とその偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムの提供であり、更に、前記視野角拡大偏光板を用いて、簡単な構成で上下方向の視野角が改善される液晶表示装置、並びにセルロースエステルフィルム、及び偏光板の製造方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、前記の偏光膜を、液晶表示装置が発生する熱や、使用環境における熱に対して偏光特性が安定している偏光板を提供することにある。
【0024】
本発明の更に別の目的は、従来と同じ厚みで何の問題も生じることなく、表示品位が高く、かつ高輝度で、パネルサイズの大きい液晶表示装置を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0026】
1.下記式(1)及び(2)を同時に満足し、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を含有し、面内リターデーション値R0が20〜100nm、厚み方向のリターデーション値Rtが70〜300nmであり、光学的に二軸性を有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0027】
式(1) 2.4≦A+B≦2.8
式(2) 1.4≦A≦2.0
〔式中、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3または4のアシル基の置換度を表す。〕
2.前記セルロースエステルフィルムが、1.02〜1.20倍に延伸されたことを特徴とする前記1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0028】
3.前記セルロースエステルフィルムが、セルロースエステル100質量部に対して、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を0.1〜20質量部含有していることを特徴とする前記1または2項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0029】
4.前記セルロースエステルフィルムが、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物を含有することを特徴とする、前記1〜3項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0030】
5.前記セルロースエステルフィルムにおいて、前記反応性金属化合物が完全に反応が終了したと仮定した場合の質量が、セルロースエステルフィルム支持体の全質量に対して0.5質量%〜20質量%であることを特徴とする、前記1〜4項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0031】
6.前記反応性金属化合物が、ケイ素、アルミニウムから選ばれることを特徴とする前記4または5項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0032】
7.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴とする偏光板。
【0033】
8.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムと二色性物質を含有する偏光子とを有する偏光板において、該偏光子の光透過軸と該セルロースエステルフィルムの面内で最大屈折率を与える方向とのなす角度が−10°〜10°であることを特徴とする偏光板。
(ここで、二色性物質とは偏光をあてた場合、偏光面の方向により透過光が異なる物質をいう。)
9.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム、二色性物質を含有する偏光子、及び該セルロースエステルフィルムと異なるまたは同一のセルロースエステルフィルムbの順で積層された偏光板において、該セルロースエステルフィルムbが、前記セルロースエステルフィルムと同一の方向に1軸または2軸延伸されたものであることを特徴とする偏光板。
【0034】
10.前記セルロースエステルフィルムbが、製膜時または製膜後に流延方向に対して幅手方向に延伸されたものであることを特徴とする前記9項に記載の偏光板。
【0035】
11.前記セルロースエステルフィルムまたはセルロースエステルフィルムbの延伸倍率が1.02〜1.20倍となるように延伸されたものであることを特徴とする前記9または10項に記載の偏光板。
【0036】
12.前記7〜11項の何れか1項に記載の偏光板と液晶セルとを有する液晶表示装置において、該偏光板のセルロースエステルフィルムが該偏光板の二色性物質を含有する偏光子と該液晶セルとの間に配置されることを特徴とする液晶表示装置。
【0037】
13.前記偏光板の光透過軸と、液晶セルの該偏光板を配置する側のラビング軸または液晶配向軸が直交することを特徴とする前記12項に記載の液晶表示装置。
【0038】
14.前記偏光板と液晶セルとの貼合面側に配置される該偏光板のセルロースエステルフィルムの屈折率が最大となる方向と、該偏光板の光透過軸とのなす角が−10°〜10°に調整されていることを特徴とする前記12または13項に記載の液晶表示装置。
【0039】
15.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムを作製するに当たり、セルロースエステルフィルムに光学的に二軸性を付与する操作が施され、且つ、長尺ロールとして作製されることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0040】
16.前記7〜11項の何れか1項に記載の偏光板の製造方法において、
(1)光学的に二軸性を付与する操作を施し、且つ、流延製膜時における幅手方向の屈折率が最大となるように調整したセルロースエステルフィルムの長尺ロールを作製する工程
(2)二色性物質を含有する偏光子を形成する工程
(3)該長尺ロールに該偏光子をラミネートする工程
を有することを特徴とする偏光板の製造方法。
【0041】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムについて説明する。従来用いられている光学補償フィルムは、透明支持体上に液晶性化合物を均一塗布して配向させたものを用いる方法、またはポリカーボネートなどの樹脂を複雑な延伸技術を駆使して二軸延伸位相差板を用いる方法、すなわちこれらの複雑な光学異方性を有する光学フィルムを偏光板に貼合して使用されていた。その後、光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムが十分な光学補償能を有し、高温高湿条件下においても安定な光学補償能を維持することができるため、それを保護フィルムとして使用した楕円偏光板を見出された。しかしながら、セルロースエステルフィルム作製時の延伸倍率が1.4倍と大きいという問題点が存在した。
【0042】
今回本発明者らは、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を含有するセルロースエステルフィルムのフィルム作製時に1.1〜1.2倍延伸することで偏光子の保護フィルムとして使用した楕円偏光板が、前記楕円偏光板と同様の光学補償効果が得られることを見出すに至った。
また、先の光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムは、液晶セルの両側2枚にて光学補償をしている。本発明のセルロースエステルフィルムのフィルム作製時の延伸倍率を1.2〜1.4倍にすることで、先の光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルム2枚分の光学補償能を持たせることが可能であることも合わせて見出すに至った。必要フィルムが2枚から1枚となり、大幅な製造コストダウンが可能である。ここで、本発明の偏光板とは、位相差機能を有する、いわゆる、楕円偏光板を含めることができる。
【0043】
さらに、本発明者らは、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物をセルロースエステルと反応させることにより、光学的な特性が優れた材料に、その周囲で発生する熱による材料の温度変化に対しても、その光学特性が安定である特性を付与できることを見出した。
【0044】
液晶表示装置に用いられる偏光板は、適当な角度、および大きさに打ち抜かれ、粘着剤を介してパネルに貼り合わせられる。パネルに熱が加わると、偏光板は収縮(もしくは膨張)しようとするが、粘着剤にその変形が抑制されるために、あたかも見かけ上、延伸(もしくは圧縮)されることで複屈折が発生し、黒表示状態で光漏れが生じる。この、外力が加わったときに、内部に発生する応力に応じて光学異方性(複屈折)を生じる現象を光弾性といい、材料の光弾性係数が大きいほど光学異方性も大きくなり、従って光り漏れも多くなる。
【0045】
すなわち、表示品位に優れる大きなパネルサイズの液晶表示装置を作製するには、この光弾性による光漏れを少なくすれば良いことがわかる。従って、液晶表示装置が発生する熱や、使用環境における熱により偏光板内部に発生する応力を減少させるか、光弾性係数の小さな材料を偏光板保護フィルムに用いれば良いことがわかる。偏光板保護フィルムに発生する応力を減少させるには、線膨張係数の小さな材料を偏光板保護フィルムに用いればよい。しかし偏光板保護フィルムには、材料の熱的な特性のみではなく、光学的な特性も要求される。従って材料の選定により熱による歪みを解消することは、光学的な特性を犠牲にする場合もあり、上記の方法はいずれも好ましい解決法とはいえない。
【0046】
本発明者の鋭意研究により、同じ材料でもその弾性率を調整することで、材料の光弾性係数を小さくできることが判明した。すなわち、偏光板保護フィルムに用いられる材料の弾性率を調整することで、光学的な特性が優れた材料に、更に、熱による複屈折の発現(液晶表示装置においては、黒表示状態での光漏れ)が少ない特性を付加できることを見出した。
【0047】
偏光板保護フィルムと偏光膜を一体とした偏光板においては、光学補償シートの面内の少なくとも1方向の弾性率が2.5〜6.0GPaであることが好ましく、3.0〜5.5GPaであることがさらに好ましい。偏光板保護フィルムの弾性率は、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物をセルロースエステルと反応させた樹脂を製膜したフィルムを用いることにより、制御することができる。このセルロースエステルフィルムの面内の遅相軸と偏光板の透過軸が平行になるようにロールtoロールで貼り合わせられるようにセルロースエステルフィルムが延伸されることが好ましく、具体的には搬送方向に対して横方向に延伸されることが好ましい。横方向に延伸する方法としては、テンター法が好ましく用いられる。室温における引張弾性率はJIS−K−6911に基づいて行なった。
【0048】
本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板は、斜め方向から見た場合のコントラストが高く、また、いわゆる視野角が広いだけではなく、斜め方向から見た場合の画面の着色もなく、反転領域も狭くなるなど優れた光学補償能を示すことが判った。
【0049】
更に、本発明の視野角拡大効果を有する偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムは、光学的に二軸性である特徴を有するが、セルロースエステルフィルムを用いる場合にはこの様な光学特性を得るために二軸延伸を行う必要がなく、一軸延伸を行うだけで光学的に二軸性を得ることができる。このことは、流延成膜したセルロースエステルフィルム自身が、もともと負の一軸性(nX=nY>nZ;nX、nYはフィルム面内X、Y方向の屈折率、nZはフィルムの厚み方向の屈折率)を有しているためと考えられる。光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムは、[ここで、光学的に二軸性を有するとは、nX≠nY≠nZ(nX、nYはフィルム面内X、Y方向の屈折率、nZはフィルムの厚み方向の屈折率)となることである]、偏光板を作製する場合に、液晶セル側(偏光板を構成する二色性物質と液晶セルの間側)に保護フィルムとして用いることができ、反対側(最表面側)の支持体は光学特性は特に限定されないため、保護フィルムの種類としては通常用いられるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を使用すればよい。この場合に、例えばこのTACフィルムを少なくとも幅手方向に一定の倍率で延伸操作を行うことにより、高温高湿条件下においても非常に安定した光学特性(リターデーション値の変動が少ない)を維持できる楕円偏光板を得ることができる。
【0050】
本発明における少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物とは、芳香族炭化水素環に加えて芳香族ヘテロ環を含む化合物であり、5員環、6員環、7員環であることが好ましく、6員環であることが特に好ましい。へテロ原子としては、硫黄原子、酸素原子、窒素原子が好ましく、硫黄原子が特に好ましい。
【0051】
芳香族縮合環の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、カルバゾール環、アクリジン環、キサンテン環、フェノチアジン環、チアントレン環、フルオレノン環が含まれる。ベンゾチアゾール環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。
【0052】
一つの炭素数が7以上の芳香族縮合環と単結合、または連結基を介して他の化合物と結合する場合は、炭素原子間の結合であることが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO、−O−、−NH、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。尚、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c13:−NH−CO−アルケニレン−
c14:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
【0053】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、更に置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル及び2−ジエチルアミノエチルが含まれる。アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及び1−ヘキセニルが含まれる。アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニル及び1−ヘキシニルが含まれる。
【0054】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイル及びブタノイルが含まれる。脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、更に置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシ及びメトキシエトキシが含まれる。アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ及びエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0055】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ及びオクチルチオが含まれる。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル及びエタンスルホニルが含まれる。脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド及びn−オクタンスルホンアミドが含まれる。脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ及び2−カルボキシエチルアミノが含まれる。脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル及びジエチルカルバモイルが含まれる。脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル及びジエチルスルファモイルが含まれる。脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ及びモルホリノが含まれる。
【0056】
炭素数が7以上の芳香族縮合環を分子内に有する芳香族化合物の分子量は、200〜600であることが好ましい。炭素数が7以上の芳香族縮合環を分子内に有する芳香族化合物の沸点は、250℃以上であることが好ましい。沸点は、市販の測定装置(例えば、TG/DTA100、セイコー電子工業(株)製)を用いて測定できる。
【0057】
以下に、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物の具体例を示す。
【0058】
【化1】
【0059】
【化2】
【0060】
これら炭素数が7以上の芳香族縮合環を分子内に有する芳香族化合物の添加量としては特に限定されないが、フィルムの延伸倍率、フィルム強度、平面性の点からは基質ポリマーに対して0.1〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0061】
本発明において金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71記載の金属すなわち半金属性原子を含む金属である。
【0062】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物としては例えば金属アルコキシド、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられ、好ましくは金属種が3価、4価の金属のものであり、より好ましくは金属種がケイ素、アルミニウムから選ばれるものであって、なかでも特に好ましくはケイ素である。これらの金属化合物で、加水分解可能な置換基が金属1原子当たり4個である金属が、金属化合物中におけるモル含有率が50%以上であることが好ましい。加水分解可能な置換基が金属1原子当たり4個である金属以外に共存することが望ましい加水分解可能な金属化合物としては、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基で該金属1原子当たり1つまたは2つ、あるいは3つ置換されている化合物が挙げられる。このような加水分解されない置換基を有する金属化合物の添加量としては、添加される金属化合物の50モル含有率以下が好ましい。
【0063】
このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(たとえばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
【0064】
このような重縮合可能な反応性金属化合物は、中心金属をM、その原子数をq、加水分解されない置換基をX、その置換基数をp、加水分解可能な置換基をY、その置換基数をrとすると、理想的には下記一般式(1)のように反応が完結し、金属酸化物が得られる。
【0065】
一般式(1) XpMqYr → XpMqOr/2
このように反応が完結したと仮定した、XpMqOr/2の質量を、本発明ではセルロースエステルフィルムの無機物の含有量として算出する。
【0066】
セルロースエステルフィルムの無機物の含有量としては、セルロースエステルフィルムの全質量に対して、1〜20質量%以下が好ましい。無機物の添加量が1質量%より少ないとセルロースエステルフィルムの物性改良効果が認められなくなり、20質量%を越えるとセルロースエステルフィルムが脆くなってしまうためである。
【0067】
本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、加水分解可能な置換基が金属1原子当たり2個ある化合物、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、錫エトキシド、亜鉛メトキ
シエトキシド等が挙げられる。
【0068】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり3個である化合物、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマスt−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0069】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり4個である化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−ブトキシド、テトラクロロチタン、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラn−ブトキシゲルマン、セリウムt−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムn−ブトキシド、テルルエトキシド等が挙げられる。
【0070】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり5個である化合物としては、例えば、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−ブトキシド、タングステン(V)エトキシド等が挙げられる。
【0071】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり6個である化合物としては、例えば、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)フェノキシド等が挙げられる。
【0072】
また、本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、分子種内に2つの金属原子を持つダブル金属アルコキシドと呼ばれる化合物でも良い。このようなダブル金属アルコキシドとしては、例えば、ゲレスト社製のアルミニウム銅アルコキシド、アルミニウムチタンアルコキシド、アルミニウムイットリウムアルコキシド、アルミニウムジルコニウムアルコキシド、バリウムチタンアルコキシド、バリウムイットリウムアルコキシド、バリウムジルコニウムアルコキシド、インジウムスズアルコキシド、リチウムニッケルアルコキシド、リチウムニオブアルコキシド、リチウムタンタルアルコキシド、マグネシウムアルミニウムアルコキシド、マグネシウムチタンアルコキシド、マグネシウムジルコニウムアルコキシド、ストロンチウムチタンアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムアルコキシド等が挙げられるが、少なくとも、ケイ素、アルミニウム、チタニウムのいずれかの金属が含まれているものが好ましい。
【0073】
また、本発明のセルロースエステルフィルムにおいて無機化合物である、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、必要に応じて水・触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進する。
【0074】
しかしフィルムのヘイズ、平面性、製膜速度、溶剤リサイクルなどの生産性の観点から、水分はドープ濃度の0.01%以上、2.0%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0075】
疎水的な加水分解重縮合可能な反応性金属化合物に水を添加する場合には、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物と水が混和しやすいように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒も添加されていることが好ましい。また、セルロース誘導体のドープに加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を添加する際に、ドープからセルロース誘導体が析出しないよう、該セルロース誘導体の良溶媒も添加されていることが好ましい。
【0076】
ここで触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加しゾル・ゲル反応が進行した後に塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が5000ppm未満である事が好ましい(ここでアルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。また、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。
【0077】
また触媒として、このような酸類の代りに、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の塩基を用いることができる。
【0078】
このような、酸またはアルカリ触媒の添加量としては特に制限はされないが、好ましくは重縮合可能な反応性金属化合物の量に対して1.0%〜20%が好ましい。また、酸及び塩基の処理を複数回併用しても良い。触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。
【0079】
尚、金属化合物の加水分解重縮合は、塗布前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが塗布前に反応を完結させるのが良い。用途によっては反応は完全に終了しなくても良いが、できれば完結していたほうが良い。
【0080】
本発明のセルロースエステルフィルムを用いて偏光板を作製することにより、支持体に使用するセルロースエステルフィルムの種類を置換するだけで、従来の偏光板作製工程をそのまま利用することにより、通常の偏光板と同様の方法で視野角拡大偏光板を作製することが可能となり、実用上大きなメリットがある。すなわち、セルロースエステルフィルムは、偏光板作製工程において、偏光子とアルカリけん化処理をすることにより接着可能であり、且つ貼合後の水分除去性も優れるため極めて好適な支持体である。偏光子としては、通常、二色性物質をドープしたポリビニルアルコールフィルムを延伸したものが好ましく用いられる。
【0081】
本発明は、偏光板だけで視野角拡大機能を有する視野角拡大偏光板、それに用いる縮合環を分子内に有する芳香族化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上)を含んでなる長尺の光学的に二軸性のセルロースエステルフィルム、当該視野角拡大偏光板の製造方法及び当該視野角拡大偏光板を用いた液晶表示装置の提供を可能にしたものである。更に詳しくは、ねじれネマティック(TN)型の液晶特有の視野角によるコントラストの変化、特にフルカラー表示ディスプレイとして用いられるアクティブマトリックス型TN型液晶表示装置の表示の視野角依存性を改善したものである。
【0082】
本発明のセルロースエステルフィルムの光学特性について説明する。本発明においては、光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムを用いるが、前記のような光学特性は、通常セルロースエステルを流延により製造する過程で一定の方向に張力を付与することにより得ることができる。例えば、セルロースエステルフィルムを流延後に残留溶媒が存在する条件下で延伸などの操作を行うことが特に効果的である。また、加熱したセルロースエステルフィルムを延伸しても製造することができる。
【0083】
セルロースエステルとしては、例えば、セルローストリアセテートを用いることができるが、総置換度は2.0を超えていればよく、特に全アシル基の置換度の合計が2.8以上のセルロースエステルが好ましく用いられる。更に、一定以上の光学補償性能を得るためには、特定の置換基、すなわちアセチル基及びプロピオニル基を有する低級脂肪酸セルロースエステルを用いることが極めて効果的である。
【0084】
本発明のセルロースエステルフィルムの作製に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有しており、前記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
【0085】
更に、本発明においては、下記式(3)及び(4)を同時に満たすセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0086】
式(3) 2.5≦A+B≦2.75
式(4) 1.7≦A≦1.95
これらのアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、例えば6位に高い比率で置換するなどの分布を持った置換がなされていてもよい。
【0087】
ここで、置換度とは、いわゆる結合脂肪酸量の百分率をいい、ASTM−D817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従い算出される数値である。アシル基の置換度の測定法はASTM−D817−96に従って測定できる。
【0088】
アセチル基と炭素数3〜4個のアシル基の置換度の合計が上記の範囲にあることで、長波長ほど位相差が大きくなる特性があり、且つ、良好な水分率や水バリアー性を備えたセルロースエステルフィルムを得ることができるのである。
【0089】
特に、アセチル基の平均置換度が2.0未満であると延伸時の位相差のばらつきが少ないため好ましい。
【0090】
また、機械的強度に優れた光学補償フィルムを得る観点から、本発明に用いられるセルロースエステルの粘度平均重合度(重合度)は、200以上、700以下が好ましく、特に、250以上、500以下のものが好ましい。
【0091】
上記記載の粘度平均重合度(DP)は、以下の方法により求められる。
《粘度平均重合度(DP)の測定》
絶乾したセルロースエステル0.2gを精秤し、メチレンクロライドとエタノールの混合溶媒(質量比9:1)100mlに溶解する。これをオストワルド粘度計にて、25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式によって求める。
【0092】
(a) ηrel=T/Ts
(b) [η]=(lnηrel)/C
(c) DP=[η]/Km
ここで、Tは測定試料の落下秒数、Tsは溶媒の落下秒数、Cはセルロースエステルの濃度(g/l)、Km=6×10-4である。
【0093】
《リターデーション値Rt、R0の測定》
視野角拡大効果をより好ましく得る観点から、本発明に係るセルロースエステルフィルムにおいては、下記式(I)で定義される関係を有することが好ましい。
【0094】
式(I) (nx+ny)/2−nz>0
ここにおいて、nxはセルロースエステルフィルムの面内で屈折率が最大となる方向の屈折率、nyは面内で且つ、nxに直角な方向の屈折率であり、nzは厚み方向でのフィルムの屈折率である。
【0095】
また、本発明の光学的に二軸性を有するセルロースエステル支持体は光学的に二軸性であれば視野角改善効果は認められるが、好適な条件は、厚み方向のリターデーション値Rt値、面内リターデーション値R0値により規定することが可能であり、これらの値を適切に制御することにより視野角拡大効果を著しく改善することができる。具体的な制御方法としては、後述の延伸方法などを用いることができる。
【0096】
厚み方向のリターデーション値Rtについては、下記式(II)で定義されるリターデーション値(Rt値)が30〜500nmであることが好ましく、更に好ましくは、70〜300nmである。
【0097】
式(II)((nx+ny)/2−nz)×d
また、面内方向のリターデーション値R0については、下記式で表される。
【0098】
R0=(nx−ny)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)である。
【0099】
本発明においては、R0は、20〜100nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは40〜100nmである。
【0100】
上記記載のリターデーション値、Rt、R0の測定には、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めることにより得られる。
【0101】
本発明の光学的に二軸性のセルロースエステルフィルムは、光透過率が80%以上、更に好ましくは92%以上の透明支持体であることが好ましい。また、本発明のセルロースエステルフィルムは、その厚みが30〜150μmのものが好ましい。
【0102】
本発明に用いられる、セルロースの混合脂肪酸エステルは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のような酸性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基及びプロピオニル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。アセチル化剤とプロピオニル化剤の使用量は、合成するエステルが前述した置換度の範囲となるように調整する。反応溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜600質量部であることが更に好ましい。酸性触媒の試料量は、セルロース100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは、0.4〜10質量部である。
【0103】
反応温度は、10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることが更に好ましい。尚、他のアシル化剤(例、ブチル化剤)やエステル化剤(例、硫酸エステル化剤)を併用してもよい。また、アシル化反応が終了してから、必要に応じて加水分解(ケン化)して、置換度を調整してもよい。反応終了後、反応混合物を沈澱のような慣用の手段を用いて分離し、洗浄、乾燥することによりセルロースの混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートプロピオネート)が得られる。
【0104】
本発明に用いられるセルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独或いは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性がよい綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更には単独で使用することが最も好ましい。
【0105】
また、本発明に用いられる、アセチル基と炭素原子数3または4のアシル基でアシル化したセルロースエステルは、セルロースの混合脂肪酸エステルとも呼ばれている。
【0106】
炭素原子数3または4のアシル基としては、例えば、プロピオニル基、ブチリル基が挙げられる。フィルムにしたときの機械的強さ、溶解のし易さ等からプロピオニル基またはn−ブチリル基が好ましく、特にプロピオニル基が好ましい。
【0107】
脂肪酸セルロースエステルを溶解してドープを形成する溶媒としてはメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール等を挙げることができる。
【0108】
この中で、メチレンクロライドのような塩素系溶媒は好適に使用できるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等も好ましく用いられる。特に酢酸メチルが全有機溶媒に対して50%以上含有していることが好ましく、全有機溶媒に対して5〜30質量%のアセトンを酢酸メチルと併用するとドープ液粘度を低減でき好ましい。
【0109】
本発明で実質的に塩素系溶媒を含まないとは、全有機溶媒量に対して塩素系溶媒が質量で10%以下、好ましくは5%以下、特に全く含まないことが最も好ましい。
【0110】
本発明に用いられる脂肪酸セルロースエステルドープには、上記有機溶媒の他に質量で1〜30%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。このことでドープを流延用支持体に流延後、溶剤が蒸発を始め、アルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用の支持体から剥離することが容易となり、更に前記有機溶媒に対する脂肪酸セルロースエステルの溶解を促進する効果が得られる。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ、毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
【0111】
ドープの固形分濃度は通常、質量で10〜40%が好ましく、ドープ粘度は(10〜50Pa・sec)の範囲に調整されることが良好なフィルムの平面性を得る点から好ましい。
【0112】
以上の様にして調製されたドープは、濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中には、可塑剤、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、透湿度改善剤等を添加してもよい。
【0113】
本発明に使用するアセチル基及びプロピオニル置換基を有する脂肪酸セルロースエステルはそれ自身が可塑剤としての効果を発現するので、可塑剤を添加しなくても或いは僅かの添加量で十分なフィルム特性が得られるが、その他の目的で可塑剤を添加してもよい。例えば、フィルムの耐湿性を向上する目的では、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0114】
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0115】
リン酸エステル類としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を挙げることができる。
【0116】
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル類、クエン酸エステル類等があり、フタル酸エステル類としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等が挙げられる。
【0117】
クエン酸エステル類としては、例えば、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。
【0118】
また、その他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独或いは併用するのが好ましい。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。セルロースエステルに用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下がセルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こし難く、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方が更に好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。
【0119】
中でも、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。また、これらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
【0120】
この目的で用いる可塑剤の量はセルロースエステルに対して質量で1〜30%が好ましく、特に4〜13%が好ましい。
【0121】
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶剤と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0122】
フィルムの黄味を改善する目的で染料を添加してもよい。色味は、通常の写真用支持体に見られる様なグレーに着色できるものが好ましい。但し、写真用支持体と異なりライトパイピングの防止の必要はないので、含有量は少なくてもよく、セルロースエステルに対する質量割合で1〜100ppmが好ましく、2〜50ppmが更に好ましい。
【0123】
セルロースエステルはやや黄味を呈しているので、青色や紫色の染料が好ましく用いられる。複数の染料を適宜組み合わせてグレーになる様にしてもよい。
【0124】
フィルムが滑りにくいとフィルム同士がブロッキングを起こし、取り扱い性に劣る場合がある。その場合、本発明に係わるフィルムには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。
【0125】
また、二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きく、平均径の小さい方が透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はフィルム中では、通常、凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL200、300、R972、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくはAEROSIL R972V、200V、R972、R974、R202、R812などが挙げられる。
【0126】
このマット剤の配合はフィルムのヘイズが0.6%以下、動摩擦係数が0.5以下となるように配合することが好ましい。
【0127】
この目的で用いられるマット剤の含有量は、質量で脂肪酸セルロースエステルに対して0.005〜0.3%が好ましい。
【0128】
また、本発明のセルロースエステルフィルムは液晶表示装置に組み込まれ、屋外で使用されることも多いので紫外線をカットする機能を有することが好ましい。そのような観点から、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。
【0129】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化の点から波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が、10%以下である必要があり、更に5%以下であることが好ましい。
【0130】
この目的で用いられる紫外線吸収剤は、可視光領域に吸収がないことが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0131】
これらの例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチルなどである。
【0132】
本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0133】
紫外線吸収剤の添加方法はアルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0134】
紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対する質量で、0.1〜5%、好ましくは、0.5〜2.5%、より好ましくは0.8〜2.0%である。
【0135】
フィルムの耐熱性を向上させる目的では、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。また、このほかに、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
【0136】
上記の他に、更に、帯電防止剤、難燃剤、滑り剤等も適宜添加してよい。また、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、偏光板の間に配置されるため異常な屈折光を発生させるような異物は性能劣化の原因となる。その点で、いわゆる輝点状の異常が問題となる。
【0137】
本発明において、偏光クロスニコル状態で認識される輝点とは、2枚の偏光板を直交(クロスニコル)状態にし、その間にセルロースエステルフィルムをおいて反対側より光源の光を当てて観測されるものをいう。この様な輝点は、偏光クロスニコル状態では、暗視野中で、輝点の箇所のみ光って観察されるので、容易にその大きさと個数を識別することができる。
【0138】
輝点の個数としては、面積250mm2あたり、偏光クロスニコル状態で認識される、大きさが5〜50μmの輝点が200個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。更に好ましくは、5〜50μmの輝点が100個以下であり、特に好ましくは0〜10個である。この様な輝点が多いと、液晶ディスプレイの画像に重大な悪影響を及ぼす。
【0139】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。セルロースエステルフィルムの製造方法としては、ドープ液を流延用支持体上に流延、製膜し、得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、その後、張力をかけて乾燥ゾーン中を搬送させながら乾燥する、溶液流延製膜法が好ましい。下記に溶液流延製膜法について述べる。
【0140】
(1)溶解工程:セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを撹拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液(ドープ)を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、J.M.G.Cowie等によるMakromol.chem.143巻、105頁(1971)に記載されたような、また、特開平9−95544号及び同9−95557号に記載された様な低温で溶解する冷却溶解法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。
【0141】
(2)流延工程:ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルト或いは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延方法としては流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは、共流延法を用いて積層構造のセルロースエステルフィルムとすることもできる。
【0142】
(3)溶媒蒸発工程:ウェブ(流延用支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がより好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
【0143】
(4)剥離工程:支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大きすぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で十分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0144】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることができるのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らかすぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
【0145】
(5)乾燥工程:ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する工程である。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、70〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0146】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この観点から、例えば、特開昭62−46625号に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を巾方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
【0147】
(6)巻き取り工程:ウェブを残留溶媒量が質量で2%以下となってからフィルムとして巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0148】
脂肪酸セルロースエステルフィルムの膜厚の調節には所望の厚みになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0149】
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0150】
本発明に係る光学的に二軸性の性質を有するセルロースエステル支持体は、光学的に二軸性を示す(nx>ny>nzの関係を示す)配向を得るためのあらゆる方法をとることができるが、最も効果的に行う方法の一つとして延伸方法をとることができる。
【0151】
本発明のセルロースエステルフィルムでは、その製造に際し、後述するようなフィルム中の残留溶媒をコントロールすることで、高温でなくても延伸が可能であるが、この方法を用いない場合には、高温で延伸することも可能である。高温で延伸する場合、延伸温度としては、セルロースエステルのガラス転移温度以上の温度で延伸するのであるが、前述した様な可塑剤では、その効果が薄れてしまい延伸性が十分得られない場合がある。高温においても十分な延伸性が付与できる可塑剤が必要となるのであるが、この様な可塑剤としては、不揮発性を有するものが好ましく使用できることを見出した。不揮発性可塑剤とは、200℃における蒸気圧が1330Pa以下の化合物であり、極めて低い蒸気圧を有し、且つ低い揮発度を有する性質のものである。より好ましくは蒸気圧665Pa以下、更に好ましくは133Pa以下である。例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルが好ましい。このほか、リン酸トリクレシル(38.6Pa、200℃)、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(66.5Pa、200℃)等も好ましく用いられる。或いは、特表平6−501040号に記載されている不揮発性リン酸エステルも好ましく用いられる。このほか、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニルを含む共重合体などのポリマー或いはオリゴマーなどの高分子量の可塑剤も好ましく用いることができる。この場合、可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して0.1〜30質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。この様に可塑剤を用いることで、高温でのセルロースエステルの延伸性を向上でき、特に、フィルムの面品質や平面性に優れたセルロースエステルフィルムを生産性よく製造できる。
【0152】
本発明のセルロースエステルフィルムに、光学的二軸性を付与する方法としては、上記に述べたように溶剤を含有した状態で延伸操作を行う方法が好ましい方法の一例として用いられる。以下、その延伸方法について説明する。
【0153】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造において、セルロースエステル溶解ドープ液を流延用支持体に流延後、次いで、流延用支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が100質量%以下、特に10〜100質量%の範囲にある間に、少なくとも1方向に1.0〜4.0倍延伸することが好ましい。
【0154】
尚、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0155】
ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜40質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
【0156】
本発明に係るセルロースエステルを用いて溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜180℃以下の範囲が好ましい。
【0157】
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。
【0158】
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動が大きすぎると位相差のムラとなり、光学補償フィルムとして用いたとき着色等の問題が生じる。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ0.8〜4.0倍、0.4〜1.2倍の範囲とすることが好ましい。
【0159】
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、或いは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。勿論これらの方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0160】
以上のようにして得られたフィルムは、最終仕上がりフィルムの残留溶媒量で2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0161】
本発明においては、流延製膜時、流延支持体上において製膜されるセルロースエステルフィルムの幅手方向の屈折率が最大となるように上記記載の各種条件を調整することが好ましい。
【0162】
上記に記載のように本発明に係る光学的に二軸性を有するセルロースエステル支持体は、フィルムの屈折率nx、ny、nzがnx>ny>nzの関係を満たしている。本発明において、上記の『幅手方向の屈折率が最大となる』とは、nxの方向が幅手方向に略等しいということである。
【0163】
ここで、方向が略等しいとは、軸同士の向きが略平行であることを示す。ここで、略平行とは、当該各々の軸のなす角が±10°以内であり、好ましくは±3°以内、更に好ましくは±1°以内である。
【0164】
また、本発明の偏光板においては、二色性物質を含有する偏光子の光透過軸と前記偏光子に貼合する光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムの流延製膜時の幅手方向の延伸方向とが略平行になるように貼合されることが好ましい。尚、本発明において、直交しているとは上記記載のように軸同士が略直交していることを表し、また、方向が一致しているとは、軸同士の向きが略平行であることを示す。ここで、略平行とは、当該各々の軸のなす角が±10°以内であり、好ましくは±3°以内、更に好ましくは±1°以内である場合を表す。
【0165】
更に、偏光板の作製時、二色性物質を含有する偏光子と光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムとを貼合するが、生産効率向上の観点から、長尺ロールとして作製されたセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。本発明において、長尺とは、500m以上を示すが、好ましくは1000m以上であり、特に好ましくは1000m〜4000mである。
【0166】
本発明の偏光板及び液晶表示装置について説明する。本発明の偏光板に用いる偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたものを用いる。こうして得られた偏光子を、セルロースエステルフィルムにより貼合する。このとき、セルロールエステルフィルムのうちの少なくとも一枚は、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることが必要であるが、従来公知の偏光板用支持体として用いられていたセルローストリアセテート(TAC)フィルムを他の偏光子の面の貼合に用いてもよいが、本発明に記載の効果を最大に得るためには、偏光板保護膜の両面の物性の同一性の点で偏光板を構成する全てのセルロースエステルフィルムとして、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0167】
本発明のセルロースエステルフィルム、偏光子、セルローストリアセテート(TAC)フィルムの順に積層して偏光板を構成する場合においては、セルローストリアセテートフィルムを幅手方向に延伸操作を行ったものを用いることにより温度湿度環境の変化に対して、寸法変化(形状変化)の少ない耐性を有する優れた光学特性を維持した位相差機能つき偏光板を得ることができる。延伸操作は、流延製膜時に行ってもよいし、製膜後オフラインで実施してもよいが、延伸の均一性、生産性等の観点から流延製膜時に連続的に実施することが好ましい。延伸倍率は、1.01倍〜1.2倍の範囲が好ましく、特に好ましくは1.03倍〜1.15倍であり、最も好ましくは1.05倍〜1.10倍である。
【0168】
更に偏光板の作製時、偏光子の一方の面に貼合する、本発明のセルロースエステルフィルムの延伸倍率Aと前記偏光子を挟んで反対側のもう一方の面に貼合するセルロースエステルフィルムの延伸倍率Bとの関係としては、A/Bが1000〜0.001の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、200〜0.005であり、特に好ましくは、100〜0.01の範囲である。
【0169】
また、偏光板の作製時、本発明のセルロースエステルフィルムの流延製膜時の流延方向と偏光子の延伸方向を略平行にすることが好ましい。この様にして得られた偏光板を、液晶セルの両面に、好ましくは次のように配置して貼合する。
【0170】
本発明の偏光板は、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸(ここで、偏光子の延伸方向と光透過軸は直交している)が直交するように貼合して、液晶表示装置を得ることができる。ここで、図1に本発明のベストモードである液晶表示装置の模式図を示す。図1において表される液晶表示装置9は、一枚の液晶セル7と2枚の偏光板6a、6bから構成される。
【0171】
偏光板6aは、2枚のセルロースエステルフィルム1aと一枚の偏光子2aから、偏光板6bは2枚のセルロースエステルフィルム1bと一枚の偏光子2bから各々、構成される。
【0172】
偏光板6a、6bにおいて、流延方向3a、3bは各々、セルロースエステルフィルム1a、1bの流延製膜時の流延方向を表す。延伸方向4a、4bは各々、偏光子2a、2bの延伸方向を表す。光透過軸8a、8bは、各々、偏光板6a、6bの光透過軸を表し、各々、液晶セル7のラビング軸5a、5bと直交している。以上のような簡単な構成で著しく視野角の改善された液晶表示装置を得ることができる。
【0173】
本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚は、10〜300μmであるのが好ましい。膜厚が10μmより薄いと機械強度が不足し、また300μmを越えると取り扱い性や加工性が悪くなるため、好ましくない。セルロースエステルフィルムの膜厚は、40〜160μmであるのがより好ましく、特に、40〜80μmの薄膜フィルムであるのが好ましい。尚、セルロースエステルフィルムの機械的強度は、室温における引張弾性率を指標として表した場合、好ましくは2,450MPaであり、より好ましくは2,940MPa以上である。
【0174】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0175】
実施例1
《セルロースエステルフィルムの作製》
(セルロースエステルフィルム1の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0176】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0177】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.1倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム1を得た。
【0178】
セルロースエステルフィルム1は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0179】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを下記により測定し、面内リターデーション値R0、厚み方向のリターデーション値Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R052nm、Rt132nmであった。R0、Rtは、下記式で定義される。
【0180】
R0=(nx−ny)×d、Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、dはフィルムの厚み(nm)である。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0181】
屈折率は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めた。
【0182】
(セルロースエステルフィルム2の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0183】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)及びAEROSIL R972V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。R972Vは、予め、上記エタノールに分散して添加した。
【0184】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は80質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向に1.2倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム2を得た。
【0185】
セルロースエステルフィルム2は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0186】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzをセルロースエステルフィルム1の作製、評価と同様にして、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々99nm、205nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.4度の範囲に収まっていた。
【0187】
(セルロースエステルフィルム3の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(7)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0188】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を酢酸メチル94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度50℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から55℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで同時二軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向と流延方向(長さ方向)に同時に変化させることで、150℃で巾方向に1.1倍、流延方向(長さ方向)に1.05倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム3を得た。
【0189】
セルロースエステルフィルム3は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0190】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々100nm、198nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。
【0191】
(セルロースエステルフィルム4の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、例示化合物(5)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート3質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0192】
上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。
【0193】
次いで、120℃のオーブン内でロール搬送しながら、オーブン入り口直後のロール周速に対してオーブン出口直前のロール周速を2.1倍になるようにして、流延方向(フィルムの長尺方向)に1.2倍延伸した。延伸後、直ちに60℃まで冷却した。更にテンターを用いてウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を固定のまま、140℃で5分乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム4を得た。
【0194】
セルロースエステルフィルム4は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度270℃のエンボスリングを押し当て、10μmの厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0195】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々97nm、188nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.5度の範囲に収まっていた。
【0196】
(セルロースエステルフィルム5の作製)
セルロースエステルフィルムに用いるセルロースエステルをアセチル基の置換度1.90、ブチリル基の置換度0.55、粘度平均重合度300のセルロースアセテートブチレートに変更した以外はセルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム5及びそのフィルムロールを作製した。
【0197】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々48nm、120nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。
【0198】
(セルロースエステルフィルム6の作製)
アセチル基の置換度1.95、プロピオニル基の置換度0.55、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、例示化合物(13)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0199】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0200】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、115℃で巾方向のみに1.15倍延伸した。
更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム6を得た。
【0201】
セルロースエステルフィルム6は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0202】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々95nm、188nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
【0203】
(セルロースエステルフィルム7の作製)
延伸倍率を幅手方向に1.10倍とした以外は、セルロースエステルフィルム6と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム7を作製した。
【0204】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々61nm、158nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
【0205】
(セルロースエステルフィルム8の作製)
延伸後の最終膜厚を40μmとした以外は、セルロースエステルフィルム6と同様にしてセルロースエステルフィルム8を作製した。
【0206】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々49nm、108nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
【0207】
(セルロースエステルフィルム9の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0208】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0209】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.4倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム9を得た。
【0210】
セルロースエステルフィルム9は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0211】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々51nm、131nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0212】
(セルロースエステルフィルム10の作製)
巾方向の延伸倍率を1.2とした以外は、セルロースエステルフィルム9と同様にしてセルロースエステルフィルム10を作製した。
【0213】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々34nm、115nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0214】
(セルロースエステルフィルム11の作製)
テトラメトキシシラン3.8質量部にトリフルオロ酢酸30質量%水溶液1.8質量部、塩化メチレン3.8質量部、エタノール3.8質量部を攪拌混合し、60分加水分解させ、反応性金属重合液を作製した。
【0215】
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次に先に調製した反応性金属重合液13.2質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて100℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0216】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0217】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.1倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム11を得た。
【0218】
セルロースエステルフィルム11は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0219】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、面内リターデーション値R0、厚み方向のリターデーション値Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R052nm、Rt120nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0220】
(セルロースエステルフィルム12の作製)
テトラメトキシシラン3.8質量部にアルミニウムトリ−s−ブトキシド0.6質量部、塩化メチレン3.8質量部、エタノール3.8質量部を攪拌混合し、60分加水分解させ、反応性金属重合液を調製した。
【0221】
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0222】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を酢酸メチル94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度50℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から55℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで同時二軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向と流延方向(長さ方向)に同時に変化させることで、120℃で巾方向に1.1倍、流延方向(長さ方向)に1.05倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム12を得た。
【0223】
セルロースエステルフィルム12は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0224】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R050nm、Rt112nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。
【0225】
(比較対照フィルム1の作製)
以下の手順により、従来より偏光板用支持体として用いられているセルローストリアセテートフィルム(比較対照フィルム1)を作製した。
【0226】
アセチル基の置換度2.86(酸化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0227】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0228】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)7質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、及びAEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0229】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで剥離したウェブの両端を固定しながら120℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0230】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R02nm、Rt42nmであった。また、遅相軸の方向は、R0値が小さいため測定限界以下であった。
【0231】
(比較対照フィルム2の作製)
アセチル基の置換度2.86(酢化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、例示化合物(1)3質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0232】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0233】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、AEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0234】
上記ドープ100質量部に対してマット剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0235】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.4倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0236】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R042nm、Rt95nmであった。
【0237】
(比較対照フィルム3の作製)
アセチル基の置換度2.86(酢化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、例示化合物(5)3質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0238】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0239】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、AEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0240】
上記ドープ100質量部に対してマット剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0241】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.4倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0242】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R044nm、Rt105nmであった。
【0243】
作製したセルロースエステルフィルムの巾手延伸倍率、R0、Rt、膜厚、遅相軸の方向、を表1に示す。
【0244】
【表1】
【0245】
表1の結果から明らかなように、本発明のセルロースエステルフィルムは比較のセルロースフィルム9と同等のR0、Rtを得るために、延伸倍率を1.4から1.10〜1.20の範囲に低下させることが可能である。
【0246】
次に、得られたフィルムロールからフィルムサンプルを切り出し、下記方法に従い膜厚むら、ヘイズ、R0、Rtの測定及び面押され故障の評価を行った。
【0247】
〈膜厚むらの測定〉
フィルムの巾方向に、10mm間隔でマイクロメーターを用いて膜厚(μm)を測定し、各膜厚の最大値と最小値の差(μm)で表した。
【0248】
〈ヘイズ測定〉
JIS K7105−1981に準じてヘイズを測定した。
【0249】
〈面押され故障の評価〉
フィルム1m×1mの範囲を目視で観察し、フィルム表面の変形の大きさが100μm以上の押され変形故障の個数を測定した。面押され故障数として3個以下であれば、実用上問題はないと判断した。
【0250】
〔弾性率測定方法〕
フィルムを温度23℃、相対湿度55%に温調された部屋に4時間以上放置した後、試料巾10mm、長さ100mmに切断し、(株)オリエンテック製テンシロン(RTA−100)を用いて、チャック間50mmにして引張速度100mm/分で引張試験をし測定した。
【0251】
得られた結果を表2に示す。
【0252】
【表2】
【0253】
表2より明らかなように、本発明のセルロースエステルフィルムは、比較対照フィルムに対して、膜厚ムラが少なく、ヘイズも低く、R0、Rtのバラツキが少なく、面押され故障の発生が極めて少ないことがわかる。
【0254】
更に、反応性金属を導入し、作製したセルロースエステルフィルムの巾手延伸倍率、使用金属種、膜厚、弾性率、ヘイズを表3に示す。
【0255】
【表3】
【0256】
表3から明らかなように、反応性金属を導入したセルロースエステルフィルムは、ヘイズ値を悪化させることなく、弾性率を上昇させることができる。
【0257】
《偏光板の作製》
(偏光板1の作製)
厚み120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、この偏光膜に上述のセルロースエステルフィルム1を以下の手順でラミネートして本発明の偏光板1を得た。
【0258】
(1)保護フィルムとして、図2に示すように30cm×18cmの長方形ABCDの形状に切り取った上述のセルロースエステルフィルム支持体2枚を2モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。
【0259】
図2は、流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。流延製膜され、作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルム1において、流延方向11は流延製膜時の流延方向、幅手方向12は流延製膜時の幅手方向を表す。偏光板作製に用いられるセルロースエステルフィルムは、例えば、長方形ABCDのように切り取られて使用されるが、長方形ABCDの一辺ABとセルロースエステルフィルム1の流延方向12とのなす角度は45度であるように切り取られる。
【0260】
(2)2枚のセルロースエステルフィルム試料と同サイズに調製した上記記載の偏光膜(偏光子)を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
【0261】
(3)前記の偏光膜(偏光子)に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、図3のような配置で前記セルロースエステルフィルム試料の面上にのせ、更にもう1枚の前記セルロースエステルフィルム試料の面と接着剤とが接する様に積層し配置する。
【0262】
図3は、本発明の偏光板の模式図である。偏光板6aは、偏光子2aを2枚の本発明のセルロースエステルフィルム1aが挟みこむ状態に配置、構成されている。セルロースエステルフィルム1aの流延製膜時の流延方向と偏光子2aの延伸方向は平行である。
【0263】
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルムとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cm2の圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
【0264】
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。
次いで、得られた偏光板(視野角拡大偏光板1)を下記に示すように液晶セルに組み込み、表示装置としての特性:視野角を評価した。
【0265】
(偏光板2の作製)
上記のセルロースエステルフィルム3を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0266】
(偏光板3の作製)
セルロースエステルフィルム5を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0267】
(偏光板4の作製)
セルロースエステルフィルム8を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0268】
(偏光板5の作製)
セルロースエステルフィルム11を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0269】
(偏光板6の作製)
セルロースエステルフィルム10を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0270】
(偏光板7の作製)
上記記載の比較対照フィルム1とセルロースエステルフィルム2の組み合わせをラミネート用の支持体として、以下の手順で偏光板を作製した。
【0271】
まず、厚み120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、
(1)保護フィルムとして、図2に示したように、30cm×18cmの長方形ABCDに各々、切り取ったセルロースエステルフィルム1と同比較対照フィルムをそれぞれ2モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。
【0272】
(2)これらの2枚のセルロースエステルフィルム試料と同サイズに調製した上記記載の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
【0273】
(3)前記の偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、2枚の本発明のセルロースエステルフィルムの1枚を上記記載の比較対照フィルムに代えて以外は、図3と同様な配置で偏光子上にセルロースエステルフィルムを積層した。
【0274】
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルムとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cm2の圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
【0275】
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板1について視野角測定を行った。
【0276】
視野角拡大偏光板1を液晶セルの両面に、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交し、支持体であるセルロースエステルフィルム1が液晶セル側(内側)となるように貼合した。これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0277】
(偏光板8の作製)
平均重合度3800、けん化度99.5モル%のポリビニルアルコール100部を水に溶解し、5.0質量%濃度の溶液を得た。該液をポリエチレンテレフタレート上に流延後乾燥して原反フィルムを得た。このフィルムをヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム60g/Lよりなる水溶液中に30℃にて240秒浸漬し、次いでホウ酸70g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液に浸漬すると共に、同時に搬送方向に6.0倍に一軸延伸しつつ搬送しながら、5分間ホウ酸処理を行い乾燥した。一方、上述のセルロースエステルフィルム1をコア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状に巻き取ったセルロースエステル原反フィルムを2モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。このけん化処理セルロースエステル原反フィルムを、前述の延伸して巻き取り済みのポリビニルアルコールフィルムの両面に保護膜としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、ロール・ツー・ロールで連続的に貼合した。図2に示すように、30cm×18cmの長方形ABCDを切り取った。
【0278】
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板8について視野角測定を行った。視野角拡大偏光板8を液晶セルの両面に、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交するように貼合した。これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0279】
(比較対照用の偏光板9の作製)
比較対照セルロースエステルフィルム1を2枚用いて、セルロースエステルフィルム1を用いた場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0280】
〔視野角測定〕
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板1〜9について視野角測定を行った。
【0281】
視野角拡大偏光板1を液晶セルの両面に、以下のように配置して貼合し、パネルで評価した。すなわち本発明の偏光板は、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交するように貼合した。液晶セルは、NEC製15インチディスプレイMulti Sync LCD1525Jのあらかじめ貼合されていた光学補償フィルム及び偏光板を剥がしたものを使用した。こうして得られた液晶表示装置を、ELDIM社製EZ−contrastにより視野角を測定した。視野角は、液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲で表した。その結果、視野角拡大偏光板1〜9を用いて得られた視野角の値を下記に示した。
【0282】
上記の評価結果から、比較例に比べて本発明の試料は、著しく視野角が改善されていることが明らかである。
【0283】
実施例2
下記のようにして、偏光板10〜14を作製した。
【0284】
(偏光板10の作製)
(セルロースエステルフィルムAの作製)
以下の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムA)を作製した。
【0285】
アセチル基の置換度2.86(酸化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0286】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0287】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)7質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、及びAEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0288】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は80質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、105℃で巾方向のみに1.07倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムA得た。
【0289】
得られたセルロースエステルフィルムAと、実施例1に記載のセルロースエステルフィルム1を用いて、実施例1の偏光板1の作製と同様にして偏光板10を作製した。
【0290】
偏光板10の視野角測定を実施例1に記載と同様に行い(保存前)、且つ、作製後の偏光板10を80℃、90%湿度条件下で500時間静置(保存後)した後、前述と同様の方法により視野角測定を行った。
【0291】
(偏光板11の作製)
剥離後の巾方向の延伸倍率を1.15倍とした以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムB)を作製した。
【0292】
このセルロースエステルフィルムBを用いて、偏光板10の場合と同様にして偏光板11を作製した。得られた偏光板11を偏光板10と同様に評価した。
【0293】
(偏光板12の作製)
セルロースエステルフィルムAを用いて、セルロースエステルフィルム11を1とした以外は、偏光板10の場合と同様にして偏光板12を作製した。得られた偏光板12を偏光板10と同様に評価した。
【0294】
(偏光板13の作製)
このセルロースエステルフィルムBを用いて、セルロースエステルフィルム11を1とした以外は、偏光板10の場合と同様にして偏光板13を作製した。得られた偏光板13を偏光板10と同様に評価した。
【0295】
(偏光板14の作製)
剥離後の巾方向の延伸を行わなかった以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムC)を作製した。
【0296】
このセルロースエステルフィルムCを用いて、偏光板10の場合と同様にして偏光板14を作製した。得られた偏光板14を偏光板10と同様に評価した。
【0297】
上記の評価結果から、本発明のセルロースエステルフィルムを有する偏光板10〜14は、良好な視野角改善効果が見られることが明らかである。また、経時保存後の処理をした場合、偏光板を構成する2枚のセルロースエステルフィルムのうち、一枚のみを使用した偏光板14については、保存後の視野角の劣化がやや観察され、また、黒表示時に光漏れ等が観察されたが、2枚とも本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板10〜13は経時保存後も保存前と同様に優れた視野角改善効果を示していることが判る。特に、反応性金属を導入したセルロースエステルフィルムを導入した偏光板10、11は全く劣化が見られず、優れた視野角改善効果を示した。
【0298】
【発明の効果】
本発明により、TN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性、すなわち、斜め方向から見た場合の画面のコントラスト、着色、明暗の反転現象を、簡便に改善できる視野角拡大偏光板と、その偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムを、更に、前記視野角拡大偏光板を用いて、簡単な構成でより安価に著しく視野角が改善される液晶表示装置及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示装置の構成を示す模式図である。
【図2】流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。
【図3】本発明の偏光板の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1a、1b セルロースエステルフィルム
2a、2b 偏光子
3a、3b セルロースエステルフィルム流延製膜時の流延方向
4a、4b 偏光子の延伸方向
5a、5b 液晶セルのラビング方向
6a、6b 偏光板
7 液晶セル
8a、8b 偏光板の光透過軸
9 液晶表示装置
10 長尺のセルロースエステルフィルム
11 流延製膜時の流延方向
12 流延製膜時の幅手方向
ABCD 切り取られる長方形
【発明の属する技術分野】
本発明はセルロースエステルフィルム、偏光板及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置の視野角拡大のために用いられる光学補償フィルムとして、下記のような5種の構成が試みられており、各々、有効な方法として提案されている。
【0003】
(1)特開平7−325221号等に見られるように、負の1軸性を有する化合物であるディスコティック液晶性化合物を支持体上に担持させる方法。
【0004】
(2)特開平10−186356号に見られるように、正の光学異方性を有するネマティック型高分子液晶性化合物を深さ方向に液晶分子のプレチルト角が変化するハイブリッド配向をさせたものを支持体上に担持させる方法。
【0005】
(3)正の光学異方性を有するネマティック型液晶性化合物を支持体上に2層構成にして各々の層の配向方向を略90°とすることにより擬似的に負の1軸性類似の光学特性を付与させる方法。
【0006】
(4)芳香族化合物を添加したセルロースアセテートフィルム上に負の1軸性を有する化合物であるディスコティック液晶性化合物を担持させる方法。
【0007】
(5)芳香族化合物を添加した、セルロースアセテートフィルムを延伸して偏光子に貼り付ける方法。
【0008】
(6)延伸することで光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムを偏光子に貼りつける方法。
【0009】
しかしながら、上記記載の構成の各々が、下記のような問題点を有している。
上記(1)に記載の方法では、TNモードの液晶セルに適用する場合に斜め方向から見た場合の画面が黄色く着色するというディスコティック液晶性化合物特有の欠点が発現する。
【0010】
上記(2)に記載の方法では、液晶発現温度が高く、TAC(セルローストリアセテート)のような等方性の透明支持体上で液晶の配向を固定できず、必ず、一度別の支持体上で配向固定後、TACのような支持体に転写する必要があり、工程が煩雑化、且つ、極めて生産性が低下してしまう。
【0011】
上記(3)に記載の方法の一例として、棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物を用いた光学異方層として、配向能を有する偏光子を介して配向させた棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物からなる層を形成し、固定化して、この層の更に上に再度配向能をもつ偏光子を介して再び配向させた棒状の正の1軸性低分子液晶性化合物からなる層を形成し固定化する、4層構成の光学異方層が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、2つの液晶層の平面内に投影される配向方向を例えば90度ずらして与えることにより擬似的に円盤状に近い特性を与えることが可能となる。
【0012】
よって、上記(3)に記載の方法は、ディスコティック液晶性化合物の場合と異なり着色の問題がないので、発色再現性が重視される液晶TV(テレビ)などの用途においては極めて有利な特徴を有している。
【0013】
しかしながら、この方法は、ディスコティック液晶性化合物において1層で達成していたものをあえて2層の液晶層で達成するものであり、いかにも効率が悪いという問題点があった。
【0014】
上記(4)に記載の方法の一例として、光学的等方性の高いセルロースアセテートフィルムに芳香族化合物を添加することにより、光学的異方性を持つセルロースアセテートフィルムとし、ディスコティック液晶性化合物を担持させるものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0015】
これらの方法は何れもより根本的な、共通する問題点を有している。すなわち、これらの方式によれば、光学補償能を得るためには液晶性化合物を精密に薄膜塗布する必要があった。液晶性化合物を配向させて塗布するためには配向性層を予め塗布して配向規制力を付与する処理(ラビング処理、偏光露光処理など)を行い、このことは、簡便とされる光学補償フィルムによる視野角改善の方式においても非常にコスト高となっていることを意味する。また、液晶性化合物を使用しない方法としてはポリカーボネートなど位相差板として通常用いられる樹脂を延伸処理して二軸配向性の位相差板を作製し、これを偏光板に事後貼合処理していわゆる楕円偏光板を形成することによる視野角を拡大する方法があり、例えば、住友化学工業(株)よりVACフィルムまたはNew VACフィルムとして市販されている。しかしながら、この様な二軸配向性の位相差板は材質的に均一に延伸することが非常に困難であり、高度な延伸技術を必要とする。また、収率も低いという問題があった。更に、この位相差板は偏光板と接着貼合して用いるため製造工程が増え、コスト増を免れなかった。この様に、従来の偏光板と同様の製造方法により安価に視野角拡大効果を有する偏光板は存在しなかった。
【0016】
上記(5)に記載の方法の一例として、例えば特開2001−249223号には、芳香族化合物を添加した、酢化度60.9(アセチル置換度:2.86)と酢化度の高いセルロースアセテートフィルムを延伸することで、面内の光学異方性を出現させ、偏光子保護フィルムにすることで、視野角を改善した。しかしながら、酢化度60.9(アセチル置換度:2.86)と酢化度の高いセルロースアセテートフィルムは延伸するだけでは光学等方性であり、芳香族を添加することで光学異方性を出現させる必要があるため、延伸倍率が1.5倍と大きく、面内でのレターデーション値のバラツキも大きいという問題が存在した。
【0017】
上記(6)に記載の方法の一例として、延伸したセルロースエステルフィルムを偏光子保護フィルムとすることで、簡便に視野角を改善できる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。但し、この方法では延伸倍率が大きく製造コスト増であるという問題点が存在した。
【0018】
以上から、上述の問題点の早急な解決が要望されていた。
【0019】
【特許文献1】
特開平8−15681号公報
【0020】
【特許文献2】
特開2000−111914号公報
【0021】
【特許文献3】
特開2002−187960号公報
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、TN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性、すなわち、斜め方向から見た場合の画面上下方向のコントラスト、着色、明暗の反転現象を簡便に改善できる視野角拡大偏光板とその偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムの提供であり、更に、前記視野角拡大偏光板を用いて、簡単な構成で上下方向の視野角が改善される液晶表示装置、並びにセルロースエステルフィルム、及び偏光板の製造方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、前記の偏光膜を、液晶表示装置が発生する熱や、使用環境における熱に対して偏光特性が安定している偏光板を提供することにある。
【0024】
本発明の更に別の目的は、従来と同じ厚みで何の問題も生じることなく、表示品位が高く、かつ高輝度で、パネルサイズの大きい液晶表示装置を提供することである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0026】
1.下記式(1)及び(2)を同時に満足し、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を含有し、面内リターデーション値R0が20〜100nm、厚み方向のリターデーション値Rtが70〜300nmであり、光学的に二軸性を有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0027】
式(1) 2.4≦A+B≦2.8
式(2) 1.4≦A≦2.0
〔式中、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3または4のアシル基の置換度を表す。〕
2.前記セルロースエステルフィルムが、1.02〜1.20倍に延伸されたことを特徴とする前記1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0028】
3.前記セルロースエステルフィルムが、セルロースエステル100質量部に対して、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を0.1〜20質量部含有していることを特徴とする前記1または2項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0029】
4.前記セルロースエステルフィルムが、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物を含有することを特徴とする、前記1〜3項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0030】
5.前記セルロースエステルフィルムにおいて、前記反応性金属化合物が完全に反応が終了したと仮定した場合の質量が、セルロースエステルフィルム支持体の全質量に対して0.5質量%〜20質量%であることを特徴とする、前記1〜4項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0031】
6.前記反応性金属化合物が、ケイ素、アルミニウムから選ばれることを特徴とする前記4または5項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0032】
7.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴とする偏光板。
【0033】
8.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムと二色性物質を含有する偏光子とを有する偏光板において、該偏光子の光透過軸と該セルロースエステルフィルムの面内で最大屈折率を与える方向とのなす角度が−10°〜10°であることを特徴とする偏光板。
(ここで、二色性物質とは偏光をあてた場合、偏光面の方向により透過光が異なる物質をいう。)
9.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム、二色性物質を含有する偏光子、及び該セルロースエステルフィルムと異なるまたは同一のセルロースエステルフィルムbの順で積層された偏光板において、該セルロースエステルフィルムbが、前記セルロースエステルフィルムと同一の方向に1軸または2軸延伸されたものであることを特徴とする偏光板。
【0034】
10.前記セルロースエステルフィルムbが、製膜時または製膜後に流延方向に対して幅手方向に延伸されたものであることを特徴とする前記9項に記載の偏光板。
【0035】
11.前記セルロースエステルフィルムまたはセルロースエステルフィルムbの延伸倍率が1.02〜1.20倍となるように延伸されたものであることを特徴とする前記9または10項に記載の偏光板。
【0036】
12.前記7〜11項の何れか1項に記載の偏光板と液晶セルとを有する液晶表示装置において、該偏光板のセルロースエステルフィルムが該偏光板の二色性物質を含有する偏光子と該液晶セルとの間に配置されることを特徴とする液晶表示装置。
【0037】
13.前記偏光板の光透過軸と、液晶セルの該偏光板を配置する側のラビング軸または液晶配向軸が直交することを特徴とする前記12項に記載の液晶表示装置。
【0038】
14.前記偏光板と液晶セルとの貼合面側に配置される該偏光板のセルロースエステルフィルムの屈折率が最大となる方向と、該偏光板の光透過軸とのなす角が−10°〜10°に調整されていることを特徴とする前記12または13項に記載の液晶表示装置。
【0039】
15.前記1〜6項の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムを作製するに当たり、セルロースエステルフィルムに光学的に二軸性を付与する操作が施され、且つ、長尺ロールとして作製されることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0040】
16.前記7〜11項の何れか1項に記載の偏光板の製造方法において、
(1)光学的に二軸性を付与する操作を施し、且つ、流延製膜時における幅手方向の屈折率が最大となるように調整したセルロースエステルフィルムの長尺ロールを作製する工程
(2)二色性物質を含有する偏光子を形成する工程
(3)該長尺ロールに該偏光子をラミネートする工程
を有することを特徴とする偏光板の製造方法。
【0041】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムについて説明する。従来用いられている光学補償フィルムは、透明支持体上に液晶性化合物を均一塗布して配向させたものを用いる方法、またはポリカーボネートなどの樹脂を複雑な延伸技術を駆使して二軸延伸位相差板を用いる方法、すなわちこれらの複雑な光学異方性を有する光学フィルムを偏光板に貼合して使用されていた。その後、光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムが十分な光学補償能を有し、高温高湿条件下においても安定な光学補償能を維持することができるため、それを保護フィルムとして使用した楕円偏光板を見出された。しかしながら、セルロースエステルフィルム作製時の延伸倍率が1.4倍と大きいという問題点が存在した。
【0042】
今回本発明者らは、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を含有するセルロースエステルフィルムのフィルム作製時に1.1〜1.2倍延伸することで偏光子の保護フィルムとして使用した楕円偏光板が、前記楕円偏光板と同様の光学補償効果が得られることを見出すに至った。
また、先の光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムは、液晶セルの両側2枚にて光学補償をしている。本発明のセルロースエステルフィルムのフィルム作製時の延伸倍率を1.2〜1.4倍にすることで、先の光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルム2枚分の光学補償能を持たせることが可能であることも合わせて見出すに至った。必要フィルムが2枚から1枚となり、大幅な製造コストダウンが可能である。ここで、本発明の偏光板とは、位相差機能を有する、いわゆる、楕円偏光板を含めることができる。
【0043】
さらに、本発明者らは、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物をセルロースエステルと反応させることにより、光学的な特性が優れた材料に、その周囲で発生する熱による材料の温度変化に対しても、その光学特性が安定である特性を付与できることを見出した。
【0044】
液晶表示装置に用いられる偏光板は、適当な角度、および大きさに打ち抜かれ、粘着剤を介してパネルに貼り合わせられる。パネルに熱が加わると、偏光板は収縮(もしくは膨張)しようとするが、粘着剤にその変形が抑制されるために、あたかも見かけ上、延伸(もしくは圧縮)されることで複屈折が発生し、黒表示状態で光漏れが生じる。この、外力が加わったときに、内部に発生する応力に応じて光学異方性(複屈折)を生じる現象を光弾性といい、材料の光弾性係数が大きいほど光学異方性も大きくなり、従って光り漏れも多くなる。
【0045】
すなわち、表示品位に優れる大きなパネルサイズの液晶表示装置を作製するには、この光弾性による光漏れを少なくすれば良いことがわかる。従って、液晶表示装置が発生する熱や、使用環境における熱により偏光板内部に発生する応力を減少させるか、光弾性係数の小さな材料を偏光板保護フィルムに用いれば良いことがわかる。偏光板保護フィルムに発生する応力を減少させるには、線膨張係数の小さな材料を偏光板保護フィルムに用いればよい。しかし偏光板保護フィルムには、材料の熱的な特性のみではなく、光学的な特性も要求される。従って材料の選定により熱による歪みを解消することは、光学的な特性を犠牲にする場合もあり、上記の方法はいずれも好ましい解決法とはいえない。
【0046】
本発明者の鋭意研究により、同じ材料でもその弾性率を調整することで、材料の光弾性係数を小さくできることが判明した。すなわち、偏光板保護フィルムに用いられる材料の弾性率を調整することで、光学的な特性が優れた材料に、更に、熱による複屈折の発現(液晶表示装置においては、黒表示状態での光漏れ)が少ない特性を付加できることを見出した。
【0047】
偏光板保護フィルムと偏光膜を一体とした偏光板においては、光学補償シートの面内の少なくとも1方向の弾性率が2.5〜6.0GPaであることが好ましく、3.0〜5.5GPaであることがさらに好ましい。偏光板保護フィルムの弾性率は、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物をセルロースエステルと反応させた樹脂を製膜したフィルムを用いることにより、制御することができる。このセルロースエステルフィルムの面内の遅相軸と偏光板の透過軸が平行になるようにロールtoロールで貼り合わせられるようにセルロースエステルフィルムが延伸されることが好ましく、具体的には搬送方向に対して横方向に延伸されることが好ましい。横方向に延伸する方法としては、テンター法が好ましく用いられる。室温における引張弾性率はJIS−K−6911に基づいて行なった。
【0048】
本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板は、斜め方向から見た場合のコントラストが高く、また、いわゆる視野角が広いだけではなく、斜め方向から見た場合の画面の着色もなく、反転領域も狭くなるなど優れた光学補償能を示すことが判った。
【0049】
更に、本発明の視野角拡大効果を有する偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムは、光学的に二軸性である特徴を有するが、セルロースエステルフィルムを用いる場合にはこの様な光学特性を得るために二軸延伸を行う必要がなく、一軸延伸を行うだけで光学的に二軸性を得ることができる。このことは、流延成膜したセルロースエステルフィルム自身が、もともと負の一軸性(nX=nY>nZ;nX、nYはフィルム面内X、Y方向の屈折率、nZはフィルムの厚み方向の屈折率)を有しているためと考えられる。光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムは、[ここで、光学的に二軸性を有するとは、nX≠nY≠nZ(nX、nYはフィルム面内X、Y方向の屈折率、nZはフィルムの厚み方向の屈折率)となることである]、偏光板を作製する場合に、液晶セル側(偏光板を構成する二色性物質と液晶セルの間側)に保護フィルムとして用いることができ、反対側(最表面側)の支持体は光学特性は特に限定されないため、保護フィルムの種類としては通常用いられるセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)を使用すればよい。この場合に、例えばこのTACフィルムを少なくとも幅手方向に一定の倍率で延伸操作を行うことにより、高温高湿条件下においても非常に安定した光学特性(リターデーション値の変動が少ない)を維持できる楕円偏光板を得ることができる。
【0050】
本発明における少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物とは、芳香族炭化水素環に加えて芳香族ヘテロ環を含む化合物であり、5員環、6員環、7員環であることが好ましく、6員環であることが特に好ましい。へテロ原子としては、硫黄原子、酸素原子、窒素原子が好ましく、硫黄原子が特に好ましい。
【0051】
芳香族縮合環の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、カルバゾール環、アクリジン環、キサンテン環、フェノチアジン環、チアントレン環、フルオレノン環が含まれる。ベンゾチアゾール環、ナフタレン環、ベンゾチオフェン環が好ましい。
【0052】
一つの炭素数が7以上の芳香族縮合環と単結合、または連結基を介して他の化合物と結合する場合は、炭素原子間の結合であることが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO、−O−、−NH、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。尚、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c13:−NH−CO−アルケニレン−
c14:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
【0053】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、更に置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル及び2−ジエチルアミノエチルが含まれる。アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及び1−ヘキセニルが含まれる。アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニル及び1−ヘキシニルが含まれる。
【0054】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイル及びブタノイルが含まれる。脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、更に置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシ及びメトキシエトキシが含まれる。アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ及びエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0055】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ及びオクチルチオが含まれる。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル及びエタンスルホニルが含まれる。脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド及びn−オクタンスルホンアミドが含まれる。脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ及び2−カルボキシエチルアミノが含まれる。脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル及びジエチルカルバモイルが含まれる。脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル及びジエチルスルファモイルが含まれる。脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ及びモルホリノが含まれる。
【0056】
炭素数が7以上の芳香族縮合環を分子内に有する芳香族化合物の分子量は、200〜600であることが好ましい。炭素数が7以上の芳香族縮合環を分子内に有する芳香族化合物の沸点は、250℃以上であることが好ましい。沸点は、市販の測定装置(例えば、TG/DTA100、セイコー電子工業(株)製)を用いて測定できる。
【0057】
以下に、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物の具体例を示す。
【0058】
【化1】
【0059】
【化2】
【0060】
これら炭素数が7以上の芳香族縮合環を分子内に有する芳香族化合物の添加量としては特に限定されないが、フィルムの延伸倍率、フィルム強度、平面性の点からは基質ポリマーに対して0.1〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0061】
本発明において金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71記載の金属すなわち半金属性原子を含む金属である。
【0062】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物としては例えば金属アルコキシド、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられ、好ましくは金属種が3価、4価の金属のものであり、より好ましくは金属種がケイ素、アルミニウムから選ばれるものであって、なかでも特に好ましくはケイ素である。これらの金属化合物で、加水分解可能な置換基が金属1原子当たり4個である金属が、金属化合物中におけるモル含有率が50%以上であることが好ましい。加水分解可能な置換基が金属1原子当たり4個である金属以外に共存することが望ましい加水分解可能な金属化合物としては、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基で該金属1原子当たり1つまたは2つ、あるいは3つ置換されている化合物が挙げられる。このような加水分解されない置換基を有する金属化合物の添加量としては、添加される金属化合物の50モル含有率以下が好ましい。
【0063】
このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(たとえばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
【0064】
このような重縮合可能な反応性金属化合物は、中心金属をM、その原子数をq、加水分解されない置換基をX、その置換基数をp、加水分解可能な置換基をY、その置換基数をrとすると、理想的には下記一般式(1)のように反応が完結し、金属酸化物が得られる。
【0065】
一般式(1) XpMqYr → XpMqOr/2
このように反応が完結したと仮定した、XpMqOr/2の質量を、本発明ではセルロースエステルフィルムの無機物の含有量として算出する。
【0066】
セルロースエステルフィルムの無機物の含有量としては、セルロースエステルフィルムの全質量に対して、1〜20質量%以下が好ましい。無機物の添加量が1質量%より少ないとセルロースエステルフィルムの物性改良効果が認められなくなり、20質量%を越えるとセルロースエステルフィルムが脆くなってしまうためである。
【0067】
本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、加水分解可能な置換基が金属1原子当たり2個ある化合物、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、錫エトキシド、亜鉛メトキ
シエトキシド等が挙げられる。
【0068】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり3個である化合物、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマスt−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0069】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり4個である化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンn−ブトキシド、テトラクロロチタン、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラn−ブトキシゲルマン、セリウムt−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムn−ブトキシド、テルルエトキシド等が挙げられる。
【0070】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり5個である化合物としては、例えば、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブn−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタルn−ブトキシド、タングステン(V)エトキシド等が挙げられる。
【0071】
加水分解可能な置換基が金属1原子当たり6個である化合物としては、例えば、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)フェノキシド等が挙げられる。
【0072】
また、本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、分子種内に2つの金属原子を持つダブル金属アルコキシドと呼ばれる化合物でも良い。このようなダブル金属アルコキシドとしては、例えば、ゲレスト社製のアルミニウム銅アルコキシド、アルミニウムチタンアルコキシド、アルミニウムイットリウムアルコキシド、アルミニウムジルコニウムアルコキシド、バリウムチタンアルコキシド、バリウムイットリウムアルコキシド、バリウムジルコニウムアルコキシド、インジウムスズアルコキシド、リチウムニッケルアルコキシド、リチウムニオブアルコキシド、リチウムタンタルアルコキシド、マグネシウムアルミニウムアルコキシド、マグネシウムチタンアルコキシド、マグネシウムジルコニウムアルコキシド、ストロンチウムチタンアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムアルコキシド等が挙げられるが、少なくとも、ケイ素、アルミニウム、チタニウムのいずれかの金属が含まれているものが好ましい。
【0073】
また、本発明のセルロースエステルフィルムにおいて無機化合物である、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、必要に応じて水・触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進する。
【0074】
しかしフィルムのヘイズ、平面性、製膜速度、溶剤リサイクルなどの生産性の観点から、水分はドープ濃度の0.01%以上、2.0%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0075】
疎水的な加水分解重縮合可能な反応性金属化合物に水を添加する場合には、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物と水が混和しやすいように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒も添加されていることが好ましい。また、セルロース誘導体のドープに加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を添加する際に、ドープからセルロース誘導体が析出しないよう、該セルロース誘導体の良溶媒も添加されていることが好ましい。
【0076】
ここで触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加しゾル・ゲル反応が進行した後に塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が5000ppm未満である事が好ましい(ここでアルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。また、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。
【0077】
また触媒として、このような酸類の代りに、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の塩基を用いることができる。
【0078】
このような、酸またはアルカリ触媒の添加量としては特に制限はされないが、好ましくは重縮合可能な反応性金属化合物の量に対して1.0%〜20%が好ましい。また、酸及び塩基の処理を複数回併用しても良い。触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。
【0079】
尚、金属化合物の加水分解重縮合は、塗布前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが塗布前に反応を完結させるのが良い。用途によっては反応は完全に終了しなくても良いが、できれば完結していたほうが良い。
【0080】
本発明のセルロースエステルフィルムを用いて偏光板を作製することにより、支持体に使用するセルロースエステルフィルムの種類を置換するだけで、従来の偏光板作製工程をそのまま利用することにより、通常の偏光板と同様の方法で視野角拡大偏光板を作製することが可能となり、実用上大きなメリットがある。すなわち、セルロースエステルフィルムは、偏光板作製工程において、偏光子とアルカリけん化処理をすることにより接着可能であり、且つ貼合後の水分除去性も優れるため極めて好適な支持体である。偏光子としては、通常、二色性物質をドープしたポリビニルアルコールフィルムを延伸したものが好ましく用いられる。
【0081】
本発明は、偏光板だけで視野角拡大機能を有する視野角拡大偏光板、それに用いる縮合環を分子内に有する芳香族化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上)を含んでなる長尺の光学的に二軸性のセルロースエステルフィルム、当該視野角拡大偏光板の製造方法及び当該視野角拡大偏光板を用いた液晶表示装置の提供を可能にしたものである。更に詳しくは、ねじれネマティック(TN)型の液晶特有の視野角によるコントラストの変化、特にフルカラー表示ディスプレイとして用いられるアクティブマトリックス型TN型液晶表示装置の表示の視野角依存性を改善したものである。
【0082】
本発明のセルロースエステルフィルムの光学特性について説明する。本発明においては、光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムを用いるが、前記のような光学特性は、通常セルロースエステルを流延により製造する過程で一定の方向に張力を付与することにより得ることができる。例えば、セルロースエステルフィルムを流延後に残留溶媒が存在する条件下で延伸などの操作を行うことが特に効果的である。また、加熱したセルロースエステルフィルムを延伸しても製造することができる。
【0083】
セルロースエステルとしては、例えば、セルローストリアセテートを用いることができるが、総置換度は2.0を超えていればよく、特に全アシル基の置換度の合計が2.8以上のセルロースエステルが好ましく用いられる。更に、一定以上の光学補償性能を得るためには、特定の置換基、すなわちアセチル基及びプロピオニル基を有する低級脂肪酸セルロースエステルを用いることが極めて効果的である。
【0084】
本発明のセルロースエステルフィルムの作製に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有しており、前記式(1)及び(2)を同時に満足するものが好ましい。
【0085】
更に、本発明においては、下記式(3)及び(4)を同時に満たすセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0086】
式(3) 2.5≦A+B≦2.75
式(4) 1.7≦A≦1.95
これらのアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していてもよいし、例えば6位に高い比率で置換するなどの分布を持った置換がなされていてもよい。
【0087】
ここで、置換度とは、いわゆる結合脂肪酸量の百分率をいい、ASTM−D817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従い算出される数値である。アシル基の置換度の測定法はASTM−D817−96に従って測定できる。
【0088】
アセチル基と炭素数3〜4個のアシル基の置換度の合計が上記の範囲にあることで、長波長ほど位相差が大きくなる特性があり、且つ、良好な水分率や水バリアー性を備えたセルロースエステルフィルムを得ることができるのである。
【0089】
特に、アセチル基の平均置換度が2.0未満であると延伸時の位相差のばらつきが少ないため好ましい。
【0090】
また、機械的強度に優れた光学補償フィルムを得る観点から、本発明に用いられるセルロースエステルの粘度平均重合度(重合度)は、200以上、700以下が好ましく、特に、250以上、500以下のものが好ましい。
【0091】
上記記載の粘度平均重合度(DP)は、以下の方法により求められる。
《粘度平均重合度(DP)の測定》
絶乾したセルロースエステル0.2gを精秤し、メチレンクロライドとエタノールの混合溶媒(質量比9:1)100mlに溶解する。これをオストワルド粘度計にて、25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式によって求める。
【0092】
(a) ηrel=T/Ts
(b) [η]=(lnηrel)/C
(c) DP=[η]/Km
ここで、Tは測定試料の落下秒数、Tsは溶媒の落下秒数、Cはセルロースエステルの濃度(g/l)、Km=6×10-4である。
【0093】
《リターデーション値Rt、R0の測定》
視野角拡大効果をより好ましく得る観点から、本発明に係るセルロースエステルフィルムにおいては、下記式(I)で定義される関係を有することが好ましい。
【0094】
式(I) (nx+ny)/2−nz>0
ここにおいて、nxはセルロースエステルフィルムの面内で屈折率が最大となる方向の屈折率、nyは面内で且つ、nxに直角な方向の屈折率であり、nzは厚み方向でのフィルムの屈折率である。
【0095】
また、本発明の光学的に二軸性を有するセルロースエステル支持体は光学的に二軸性であれば視野角改善効果は認められるが、好適な条件は、厚み方向のリターデーション値Rt値、面内リターデーション値R0値により規定することが可能であり、これらの値を適切に制御することにより視野角拡大効果を著しく改善することができる。具体的な制御方法としては、後述の延伸方法などを用いることができる。
【0096】
厚み方向のリターデーション値Rtについては、下記式(II)で定義されるリターデーション値(Rt値)が30〜500nmであることが好ましく、更に好ましくは、70〜300nmである。
【0097】
式(II)((nx+ny)/2−nz)×d
また、面内方向のリターデーション値R0については、下記式で表される。
【0098】
R0=(nx−ny)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)である。
【0099】
本発明においては、R0は、20〜100nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは40〜100nmである。
【0100】
上記記載のリターデーション値、Rt、R0の測定には、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めることにより得られる。
【0101】
本発明の光学的に二軸性のセルロースエステルフィルムは、光透過率が80%以上、更に好ましくは92%以上の透明支持体であることが好ましい。また、本発明のセルロースエステルフィルムは、その厚みが30〜150μmのものが好ましい。
【0102】
本発明に用いられる、セルロースの混合脂肪酸エステルは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のような酸性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基及びプロピオニル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。アセチル化剤とプロピオニル化剤の使用量は、合成するエステルが前述した置換度の範囲となるように調整する。反応溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜600質量部であることが更に好ましい。酸性触媒の試料量は、セルロース100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは、0.4〜10質量部である。
【0103】
反応温度は、10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることが更に好ましい。尚、他のアシル化剤(例、ブチル化剤)やエステル化剤(例、硫酸エステル化剤)を併用してもよい。また、アシル化反応が終了してから、必要に応じて加水分解(ケン化)して、置換度を調整してもよい。反応終了後、反応混合物を沈澱のような慣用の手段を用いて分離し、洗浄、乾燥することによりセルロースの混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートプロピオネート)が得られる。
【0104】
本発明に用いられるセルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独或いは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性がよい綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更には単独で使用することが最も好ましい。
【0105】
また、本発明に用いられる、アセチル基と炭素原子数3または4のアシル基でアシル化したセルロースエステルは、セルロースの混合脂肪酸エステルとも呼ばれている。
【0106】
炭素原子数3または4のアシル基としては、例えば、プロピオニル基、ブチリル基が挙げられる。フィルムにしたときの機械的強さ、溶解のし易さ等からプロピオニル基またはn−ブチリル基が好ましく、特にプロピオニル基が好ましい。
【0107】
脂肪酸セルロースエステルを溶解してドープを形成する溶媒としてはメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサノン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール等を挙げることができる。
【0108】
この中で、メチレンクロライドのような塩素系溶媒は好適に使用できるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等も好ましく用いられる。特に酢酸メチルが全有機溶媒に対して50%以上含有していることが好ましく、全有機溶媒に対して5〜30質量%のアセトンを酢酸メチルと併用するとドープ液粘度を低減でき好ましい。
【0109】
本発明で実質的に塩素系溶媒を含まないとは、全有機溶媒量に対して塩素系溶媒が質量で10%以下、好ましくは5%以下、特に全く含まないことが最も好ましい。
【0110】
本発明に用いられる脂肪酸セルロースエステルドープには、上記有機溶媒の他に質量で1〜30%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。このことでドープを流延用支持体に流延後、溶剤が蒸発を始め、アルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用の支持体から剥離することが容易となり、更に前記有機溶媒に対する脂肪酸セルロースエステルの溶解を促進する効果が得られる。炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ、毒性がないこと等からエタノールが好ましい。
【0111】
ドープの固形分濃度は通常、質量で10〜40%が好ましく、ドープ粘度は(10〜50Pa・sec)の範囲に調整されることが良好なフィルムの平面性を得る点から好ましい。
【0112】
以上の様にして調製されたドープは、濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。ドープ中には、可塑剤、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、透湿度改善剤等を添加してもよい。
【0113】
本発明に使用するアセチル基及びプロピオニル置換基を有する脂肪酸セルロースエステルはそれ自身が可塑剤としての効果を発現するので、可塑剤を添加しなくても或いは僅かの添加量で十分なフィルム特性が得られるが、その他の目的で可塑剤を添加してもよい。例えば、フィルムの耐湿性を向上する目的では、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0114】
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0115】
リン酸エステル類としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等を挙げることができる。
【0116】
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル類、クエン酸エステル類等があり、フタル酸エステル類としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等が挙げられる。
【0117】
クエン酸エステル類としては、例えば、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることができる。
【0118】
また、その他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独或いは併用するのが好ましい。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。セルロースエステルに用いる場合、リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は50%以下がセルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こし難く、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル系の可塑剤比率は少ない方が更に好ましく、フタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤だけを使用することが特に好ましい。
【0119】
中でも、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。また、これらアルキルフタリルアルキルグリコレートを2種以上混合して使用してもよい。
【0120】
この目的で用いる可塑剤の量はセルロースエステルに対して質量で1〜30%が好ましく、特に4〜13%が好ましい。
【0121】
これらの化合物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶剤と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0122】
フィルムの黄味を改善する目的で染料を添加してもよい。色味は、通常の写真用支持体に見られる様なグレーに着色できるものが好ましい。但し、写真用支持体と異なりライトパイピングの防止の必要はないので、含有量は少なくてもよく、セルロースエステルに対する質量割合で1〜100ppmが好ましく、2〜50ppmが更に好ましい。
【0123】
セルロースエステルはやや黄味を呈しているので、青色や紫色の染料が好ましく用いられる。複数の染料を適宜組み合わせてグレーになる様にしてもよい。
【0124】
フィルムが滑りにくいとフィルム同士がブロッキングを起こし、取り扱い性に劣る場合がある。その場合、本発明に係わるフィルムには、二酸化ケイ素、二酸化チタン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。
【0125】
また、二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きく、平均径の小さい方が透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はフィルム中では、通常、凝集体として存在しフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL200、300、R972、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくはAEROSIL R972V、200V、R972、R974、R202、R812などが挙げられる。
【0126】
このマット剤の配合はフィルムのヘイズが0.6%以下、動摩擦係数が0.5以下となるように配合することが好ましい。
【0127】
この目的で用いられるマット剤の含有量は、質量で脂肪酸セルロースエステルに対して0.005〜0.3%が好ましい。
【0128】
また、本発明のセルロースエステルフィルムは液晶表示装置に組み込まれ、屋外で使用されることも多いので紫外線をカットする機能を有することが好ましい。そのような観点から、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。
【0129】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化の点から波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が、10%以下である必要があり、更に5%以下であることが好ましい。
【0130】
この目的で用いられる紫外線吸収剤は、可視光領域に吸収がないことが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0131】
これらの例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニル、サリチル酸メチルなどである。
【0132】
本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。
【0133】
紫外線吸収剤の添加方法はアルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0134】
紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対する質量で、0.1〜5%、好ましくは、0.5〜2.5%、より好ましくは0.8〜2.0%である。
【0135】
フィルムの耐熱性を向上させる目的では、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。また、このほかに、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
【0136】
上記の他に、更に、帯電防止剤、難燃剤、滑り剤等も適宜添加してよい。また、本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、偏光板の間に配置されるため異常な屈折光を発生させるような異物は性能劣化の原因となる。その点で、いわゆる輝点状の異常が問題となる。
【0137】
本発明において、偏光クロスニコル状態で認識される輝点とは、2枚の偏光板を直交(クロスニコル)状態にし、その間にセルロースエステルフィルムをおいて反対側より光源の光を当てて観測されるものをいう。この様な輝点は、偏光クロスニコル状態では、暗視野中で、輝点の箇所のみ光って観察されるので、容易にその大きさと個数を識別することができる。
【0138】
輝点の個数としては、面積250mm2あたり、偏光クロスニコル状態で認識される、大きさが5〜50μmの輝点が200個以下、50μm以上の輝点が0個であることが好ましい。更に好ましくは、5〜50μmの輝点が100個以下であり、特に好ましくは0〜10個である。この様な輝点が多いと、液晶ディスプレイの画像に重大な悪影響を及ぼす。
【0139】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。セルロースエステルフィルムの製造方法としては、ドープ液を流延用支持体上に流延、製膜し、得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、その後、張力をかけて乾燥ゾーン中を搬送させながら乾燥する、溶液流延製膜法が好ましい。下記に溶液流延製膜法について述べる。
【0140】
(1)溶解工程:セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを撹拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液(ドープ)を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、J.M.G.Cowie等によるMakromol.chem.143巻、105頁(1971)に記載されたような、また、特開平9−95544号及び同9−95557号に記載された様な低温で溶解する冷却溶解法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。
【0141】
(2)流延工程:ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルト或いは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延方法としては流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは、共流延法を用いて積層構造のセルロースエステルフィルムとすることもできる。
【0142】
(3)溶媒蒸発工程:ウェブ(流延用支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がより好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
【0143】
(4)剥離工程:支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大きすぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で十分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0144】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることができるのである。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らかすぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
【0145】
(5)乾燥工程:ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する工程である。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、70〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0146】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この観点から、例えば、特開昭62−46625号に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を巾方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
【0147】
(6)巻き取り工程:ウェブを残留溶媒量が質量で2%以下となってからフィルムとして巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0148】
脂肪酸セルロースエステルフィルムの膜厚の調節には所望の厚みになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度をコントロールするのがよい。また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0149】
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0150】
本発明に係る光学的に二軸性の性質を有するセルロースエステル支持体は、光学的に二軸性を示す(nx>ny>nzの関係を示す)配向を得るためのあらゆる方法をとることができるが、最も効果的に行う方法の一つとして延伸方法をとることができる。
【0151】
本発明のセルロースエステルフィルムでは、その製造に際し、後述するようなフィルム中の残留溶媒をコントロールすることで、高温でなくても延伸が可能であるが、この方法を用いない場合には、高温で延伸することも可能である。高温で延伸する場合、延伸温度としては、セルロースエステルのガラス転移温度以上の温度で延伸するのであるが、前述した様な可塑剤では、その効果が薄れてしまい延伸性が十分得られない場合がある。高温においても十分な延伸性が付与できる可塑剤が必要となるのであるが、この様な可塑剤としては、不揮発性を有するものが好ましく使用できることを見出した。不揮発性可塑剤とは、200℃における蒸気圧が1330Pa以下の化合物であり、極めて低い蒸気圧を有し、且つ低い揮発度を有する性質のものである。より好ましくは蒸気圧665Pa以下、更に好ましくは133Pa以下である。例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステルが好ましい。このほか、リン酸トリクレシル(38.6Pa、200℃)、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(66.5Pa、200℃)等も好ましく用いられる。或いは、特表平6−501040号に記載されている不揮発性リン酸エステルも好ましく用いられる。このほか、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニルを含む共重合体などのポリマー或いはオリゴマーなどの高分子量の可塑剤も好ましく用いることができる。この場合、可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して0.1〜30質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。この様に可塑剤を用いることで、高温でのセルロースエステルの延伸性を向上でき、特に、フィルムの面品質や平面性に優れたセルロースエステルフィルムを生産性よく製造できる。
【0152】
本発明のセルロースエステルフィルムに、光学的二軸性を付与する方法としては、上記に述べたように溶剤を含有した状態で延伸操作を行う方法が好ましい方法の一例として用いられる。以下、その延伸方法について説明する。
【0153】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造において、セルロースエステル溶解ドープ液を流延用支持体に流延後、次いで、流延用支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が100質量%以下、特に10〜100質量%の範囲にある間に、少なくとも1方向に1.0〜4.0倍延伸することが好ましい。
【0154】
尚、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0155】
ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜40質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
【0156】
本発明に係るセルロースエステルを用いて溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、室温(15℃)〜180℃以下の範囲が好ましい。
【0157】
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。
【0158】
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動が大きすぎると位相差のムラとなり、光学補償フィルムとして用いたとき着色等の問題が生じる。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ0.8〜4.0倍、0.4〜1.2倍の範囲とすることが好ましい。
【0159】
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、或いは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。勿論これらの方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0160】
以上のようにして得られたフィルムは、最終仕上がりフィルムの残留溶媒量で2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0161】
本発明においては、流延製膜時、流延支持体上において製膜されるセルロースエステルフィルムの幅手方向の屈折率が最大となるように上記記載の各種条件を調整することが好ましい。
【0162】
上記に記載のように本発明に係る光学的に二軸性を有するセルロースエステル支持体は、フィルムの屈折率nx、ny、nzがnx>ny>nzの関係を満たしている。本発明において、上記の『幅手方向の屈折率が最大となる』とは、nxの方向が幅手方向に略等しいということである。
【0163】
ここで、方向が略等しいとは、軸同士の向きが略平行であることを示す。ここで、略平行とは、当該各々の軸のなす角が±10°以内であり、好ましくは±3°以内、更に好ましくは±1°以内である。
【0164】
また、本発明の偏光板においては、二色性物質を含有する偏光子の光透過軸と前記偏光子に貼合する光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムの流延製膜時の幅手方向の延伸方向とが略平行になるように貼合されることが好ましい。尚、本発明において、直交しているとは上記記載のように軸同士が略直交していることを表し、また、方向が一致しているとは、軸同士の向きが略平行であることを示す。ここで、略平行とは、当該各々の軸のなす角が±10°以内であり、好ましくは±3°以内、更に好ましくは±1°以内である場合を表す。
【0165】
更に、偏光板の作製時、二色性物質を含有する偏光子と光学的に二軸性を有するセルロースエステルフィルムとを貼合するが、生産効率向上の観点から、長尺ロールとして作製されたセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。本発明において、長尺とは、500m以上を示すが、好ましくは1000m以上であり、特に好ましくは1000m〜4000mである。
【0166】
本発明の偏光板及び液晶表示装置について説明する。本発明の偏光板に用いる偏光子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールの如き親水性ポリマーからなるフィルムを、ヨウ素の如き二色性染料で処理して延伸したものや、塩化ビニルの如きプラスチックフィルムを処理して配向させたものを用いる。こうして得られた偏光子を、セルロースエステルフィルムにより貼合する。このとき、セルロールエステルフィルムのうちの少なくとも一枚は、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることが必要であるが、従来公知の偏光板用支持体として用いられていたセルローストリアセテート(TAC)フィルムを他の偏光子の面の貼合に用いてもよいが、本発明に記載の効果を最大に得るためには、偏光板保護膜の両面の物性の同一性の点で偏光板を構成する全てのセルロースエステルフィルムとして、本発明のセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0167】
本発明のセルロースエステルフィルム、偏光子、セルローストリアセテート(TAC)フィルムの順に積層して偏光板を構成する場合においては、セルローストリアセテートフィルムを幅手方向に延伸操作を行ったものを用いることにより温度湿度環境の変化に対して、寸法変化(形状変化)の少ない耐性を有する優れた光学特性を維持した位相差機能つき偏光板を得ることができる。延伸操作は、流延製膜時に行ってもよいし、製膜後オフラインで実施してもよいが、延伸の均一性、生産性等の観点から流延製膜時に連続的に実施することが好ましい。延伸倍率は、1.01倍〜1.2倍の範囲が好ましく、特に好ましくは1.03倍〜1.15倍であり、最も好ましくは1.05倍〜1.10倍である。
【0168】
更に偏光板の作製時、偏光子の一方の面に貼合する、本発明のセルロースエステルフィルムの延伸倍率Aと前記偏光子を挟んで反対側のもう一方の面に貼合するセルロースエステルフィルムの延伸倍率Bとの関係としては、A/Bが1000〜0.001の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、200〜0.005であり、特に好ましくは、100〜0.01の範囲である。
【0169】
また、偏光板の作製時、本発明のセルロースエステルフィルムの流延製膜時の流延方向と偏光子の延伸方向を略平行にすることが好ましい。この様にして得られた偏光板を、液晶セルの両面に、好ましくは次のように配置して貼合する。
【0170】
本発明の偏光板は、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸(ここで、偏光子の延伸方向と光透過軸は直交している)が直交するように貼合して、液晶表示装置を得ることができる。ここで、図1に本発明のベストモードである液晶表示装置の模式図を示す。図1において表される液晶表示装置9は、一枚の液晶セル7と2枚の偏光板6a、6bから構成される。
【0171】
偏光板6aは、2枚のセルロースエステルフィルム1aと一枚の偏光子2aから、偏光板6bは2枚のセルロースエステルフィルム1bと一枚の偏光子2bから各々、構成される。
【0172】
偏光板6a、6bにおいて、流延方向3a、3bは各々、セルロースエステルフィルム1a、1bの流延製膜時の流延方向を表す。延伸方向4a、4bは各々、偏光子2a、2bの延伸方向を表す。光透過軸8a、8bは、各々、偏光板6a、6bの光透過軸を表し、各々、液晶セル7のラビング軸5a、5bと直交している。以上のような簡単な構成で著しく視野角の改善された液晶表示装置を得ることができる。
【0173】
本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚は、10〜300μmであるのが好ましい。膜厚が10μmより薄いと機械強度が不足し、また300μmを越えると取り扱い性や加工性が悪くなるため、好ましくない。セルロースエステルフィルムの膜厚は、40〜160μmであるのがより好ましく、特に、40〜80μmの薄膜フィルムであるのが好ましい。尚、セルロースエステルフィルムの機械的強度は、室温における引張弾性率を指標として表した場合、好ましくは2,450MPaであり、より好ましくは2,940MPa以上である。
【0174】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0175】
実施例1
《セルロースエステルフィルムの作製》
(セルロースエステルフィルム1の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0176】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0177】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.1倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム1を得た。
【0178】
セルロースエステルフィルム1は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0179】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを下記により測定し、面内リターデーション値R0、厚み方向のリターデーション値Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R052nm、Rt132nmであった。R0、Rtは、下記式で定義される。
【0180】
R0=(nx−ny)×d、Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
但し、dはフィルムの厚み(nm)である。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0181】
屈折率は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを求めた。
【0182】
(セルロースエステルフィルム2の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0183】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)及びAEROSIL R972V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。R972Vは、予め、上記エタノールに分散して添加した。
【0184】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は80質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向に1.2倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム2を得た。
【0185】
セルロースエステルフィルム2は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0186】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzをセルロースエステルフィルム1の作製、評価と同様にして、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々99nm、205nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.4度の範囲に収まっていた。
【0187】
(セルロースエステルフィルム3の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(7)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0188】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を酢酸メチル94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度50℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から55℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで同時二軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向と流延方向(長さ方向)に同時に変化させることで、150℃で巾方向に1.1倍、流延方向(長さ方向)に1.05倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム3を得た。
【0189】
セルロースエステルフィルム3は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0190】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々100nm、198nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。
【0191】
(セルロースエステルフィルム4の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、例示化合物(5)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート3質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0192】
上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。
【0193】
次いで、120℃のオーブン内でロール搬送しながら、オーブン入り口直後のロール周速に対してオーブン出口直前のロール周速を2.1倍になるようにして、流延方向(フィルムの長尺方向)に1.2倍延伸した。延伸後、直ちに60℃まで冷却した。更にテンターを用いてウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を固定のまま、140℃で5分乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム4を得た。
【0194】
セルロースエステルフィルム4は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度270℃のエンボスリングを押し当て、10μmの厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0195】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々97nm、188nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.5度の範囲に収まっていた。
【0196】
(セルロースエステルフィルム5の作製)
セルロースエステルフィルムに用いるセルロースエステルをアセチル基の置換度1.90、ブチリル基の置換度0.55、粘度平均重合度300のセルロースアセテートブチレートに変更した以外はセルロースエステルフィルム1の作製と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム5及びそのフィルムロールを作製した。
【0197】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々48nm、120nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。
【0198】
(セルロースエステルフィルム6の作製)
アセチル基の置換度1.95、プロピオニル基の置換度0.55、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、例示化合物(13)3質量部を入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0199】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0200】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、115℃で巾方向のみに1.15倍延伸した。
更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム6を得た。
【0201】
セルロースエステルフィルム6は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0202】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々95nm、188nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
【0203】
(セルロースエステルフィルム7の作製)
延伸倍率を幅手方向に1.10倍とした以外は、セルロースエステルフィルム6と同様にして膜厚80μmのセルロースエステルフィルム7を作製した。
【0204】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々61nm、158nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
【0205】
(セルロースエステルフィルム8の作製)
延伸後の最終膜厚を40μmとした以外は、セルロースエステルフィルム6と同様にしてセルロースエステルフィルム8を作製した。
【0206】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々49nm、108nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.7度の範囲に収まっていた。
【0207】
(セルロースエステルフィルム9の作製)
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0208】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0209】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.4倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム9を得た。
【0210】
セルロースエステルフィルム9は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0211】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々51nm、131nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0212】
(セルロースエステルフィルム10の作製)
巾方向の延伸倍率を1.2とした以外は、セルロースエステルフィルム9と同様にしてセルロースエステルフィルム10を作製した。
【0213】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々34nm、115nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0214】
(セルロースエステルフィルム11の作製)
テトラメトキシシラン3.8質量部にトリフルオロ酢酸30質量%水溶液1.8質量部、塩化メチレン3.8質量部、エタノール3.8質量部を攪拌混合し、60分加水分解させ、反応性金属重合液を作製した。
【0215】
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次に先に調製した反応性金属重合液13.2質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて100℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0216】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
【0217】
上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.1倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム11を得た。
【0218】
セルロースエステルフィルム11は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0219】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、面内リターデーション値R0、厚み方向のリターデーション値Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R052nm、Rt120nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±0.8度の範囲に収まっていた。
【0220】
(セルロースエステルフィルム12の作製)
テトラメトキシシラン3.8質量部にアルミニウムトリ−s−ブトキシド0.6質量部、塩化メチレン3.8質量部、エタノール3.8質量部を攪拌混合し、60分加水分解させ、反応性金属重合液を調製した。
【0221】
アセチル基の置換度2.00、プロピオニル基の置換度0.60、粘度平均重合度350のセルロースアセテートプロピオネート100質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、完全に溶解した。次にエチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、例示化合物(1)3質量部を入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0222】
また、これとは別に、上記セルロースアセテートプロピオネート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を酢酸メチル94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度50℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から55℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで同時二軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向と流延方向(長さ方向)に同時に変化させることで、120℃で巾方向に1.1倍、流延方向(長さ方向)に1.05倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム12を得た。
【0223】
セルロースエステルフィルム12は、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0224】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R050nm、Rt112nmであった。また、遅相軸の方向は、各サンプル共、フィルムの巾方向に対し±1.2度の範囲に収まっていた。
【0225】
(比較対照フィルム1の作製)
以下の手順により、従来より偏光板用支持体として用いられているセルローストリアセテートフィルム(比較対照フィルム1)を作製した。
【0226】
アセチル基の置換度2.86(酸化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0227】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0228】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)7質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、及びAEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0229】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで剥離したウェブの両端を固定しながら120℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0230】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R02nm、Rt42nmであった。また、遅相軸の方向は、R0値が小さいため測定限界以下であった。
【0231】
(比較対照フィルム2の作製)
アセチル基の置換度2.86(酢化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、例示化合物(1)3質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0232】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0233】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、AEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0234】
上記ドープ100質量部に対してマット剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0235】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.4倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0236】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R042nm、Rt95nmであった。
【0237】
(比較対照フィルム3の作製)
アセチル基の置換度2.86(酢化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、例示化合物(5)3質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0238】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0239】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、AEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0240】
上記ドープ100質量部に対してマット剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0241】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、120℃で巾方向のみに1.4倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムを得た。
【0242】
得られたフィルムロールからフィルムの巾方向の中央部からサンプリングし遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、厚み方向の屈折率nzを上記と同様にして測定し、R0、Rtをそれぞれ算出したところ、何れも中央部で、各々R044nm、Rt105nmであった。
【0243】
作製したセルロースエステルフィルムの巾手延伸倍率、R0、Rt、膜厚、遅相軸の方向、を表1に示す。
【0244】
【表1】
【0245】
表1の結果から明らかなように、本発明のセルロースエステルフィルムは比較のセルロースフィルム9と同等のR0、Rtを得るために、延伸倍率を1.4から1.10〜1.20の範囲に低下させることが可能である。
【0246】
次に、得られたフィルムロールからフィルムサンプルを切り出し、下記方法に従い膜厚むら、ヘイズ、R0、Rtの測定及び面押され故障の評価を行った。
【0247】
〈膜厚むらの測定〉
フィルムの巾方向に、10mm間隔でマイクロメーターを用いて膜厚(μm)を測定し、各膜厚の最大値と最小値の差(μm)で表した。
【0248】
〈ヘイズ測定〉
JIS K7105−1981に準じてヘイズを測定した。
【0249】
〈面押され故障の評価〉
フィルム1m×1mの範囲を目視で観察し、フィルム表面の変形の大きさが100μm以上の押され変形故障の個数を測定した。面押され故障数として3個以下であれば、実用上問題はないと判断した。
【0250】
〔弾性率測定方法〕
フィルムを温度23℃、相対湿度55%に温調された部屋に4時間以上放置した後、試料巾10mm、長さ100mmに切断し、(株)オリエンテック製テンシロン(RTA−100)を用いて、チャック間50mmにして引張速度100mm/分で引張試験をし測定した。
【0251】
得られた結果を表2に示す。
【0252】
【表2】
【0253】
表2より明らかなように、本発明のセルロースエステルフィルムは、比較対照フィルムに対して、膜厚ムラが少なく、ヘイズも低く、R0、Rtのバラツキが少なく、面押され故障の発生が極めて少ないことがわかる。
【0254】
更に、反応性金属を導入し、作製したセルロースエステルフィルムの巾手延伸倍率、使用金属種、膜厚、弾性率、ヘイズを表3に示す。
【0255】
【表3】
【0256】
表3から明らかなように、反応性金属を導入したセルロースエステルフィルムは、ヘイズ値を悪化させることなく、弾性率を上昇させることができる。
【0257】
《偏光板の作製》
(偏光板1の作製)
厚み120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、この偏光膜に上述のセルロースエステルフィルム1を以下の手順でラミネートして本発明の偏光板1を得た。
【0258】
(1)保護フィルムとして、図2に示すように30cm×18cmの長方形ABCDの形状に切り取った上述のセルロースエステルフィルム支持体2枚を2モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。
【0259】
図2は、流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。流延製膜され、作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルム1において、流延方向11は流延製膜時の流延方向、幅手方向12は流延製膜時の幅手方向を表す。偏光板作製に用いられるセルロースエステルフィルムは、例えば、長方形ABCDのように切り取られて使用されるが、長方形ABCDの一辺ABとセルロースエステルフィルム1の流延方向12とのなす角度は45度であるように切り取られる。
【0260】
(2)2枚のセルロースエステルフィルム試料と同サイズに調製した上記記載の偏光膜(偏光子)を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
【0261】
(3)前記の偏光膜(偏光子)に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、図3のような配置で前記セルロースエステルフィルム試料の面上にのせ、更にもう1枚の前記セルロースエステルフィルム試料の面と接着剤とが接する様に積層し配置する。
【0262】
図3は、本発明の偏光板の模式図である。偏光板6aは、偏光子2aを2枚の本発明のセルロースエステルフィルム1aが挟みこむ状態に配置、構成されている。セルロースエステルフィルム1aの流延製膜時の流延方向と偏光子2aの延伸方向は平行である。
【0263】
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルムとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cm2の圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
【0264】
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。
次いで、得られた偏光板(視野角拡大偏光板1)を下記に示すように液晶セルに組み込み、表示装置としての特性:視野角を評価した。
【0265】
(偏光板2の作製)
上記のセルロースエステルフィルム3を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0266】
(偏光板3の作製)
セルロースエステルフィルム5を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0267】
(偏光板4の作製)
セルロースエステルフィルム8を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0268】
(偏光板5の作製)
セルロースエステルフィルム11を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0269】
(偏光板6の作製)
セルロースエステルフィルム10を用いて、セルロースエステルフィルム1の場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0270】
(偏光板7の作製)
上記記載の比較対照フィルム1とセルロースエステルフィルム2の組み合わせをラミネート用の支持体として、以下の手順で偏光板を作製した。
【0271】
まず、厚み120μmのポリビニルアルコールフィルムをヨウ素1部、ヨウ化カリウム2部、ホウ酸4部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を得た。次に、
(1)保護フィルムとして、図2に示したように、30cm×18cmの長方形ABCDに各々、切り取ったセルロースエステルフィルム1と同比較対照フィルムをそれぞれ2モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。
【0272】
(2)これらの2枚のセルロースエステルフィルム試料と同サイズに調製した上記記載の偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬する。
【0273】
(3)前記の偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く取り除き、2枚の本発明のセルロースエステルフィルムの1枚を上記記載の比較対照フィルムに代えて以外は、図3と同様な配置で偏光子上にセルロースエステルフィルムを積層した。
【0274】
(4)ハンドローラで積層された偏光膜とセルロースエステルフィルムとの積層物の端部から過剰の接着剤及び気泡を取り除きはり合わせる。ハンドローラは、20〜30N/cm2の圧力をかけて、ローラスピードは約2m/分とした。
【0275】
(5)80℃の乾燥器中に得られた試料を2分間放置し、偏光板を作製した。
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板1について視野角測定を行った。
【0276】
視野角拡大偏光板1を液晶セルの両面に、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交し、支持体であるセルロースエステルフィルム1が液晶セル側(内側)となるように貼合した。これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0277】
(偏光板8の作製)
平均重合度3800、けん化度99.5モル%のポリビニルアルコール100部を水に溶解し、5.0質量%濃度の溶液を得た。該液をポリエチレンテレフタレート上に流延後乾燥して原反フィルムを得た。このフィルムをヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム60g/Lよりなる水溶液中に30℃にて240秒浸漬し、次いでホウ酸70g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液に浸漬すると共に、同時に搬送方向に6.0倍に一軸延伸しつつ搬送しながら、5分間ホウ酸処理を行い乾燥した。一方、上述のセルロースエステルフィルム1をコア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状に巻き取ったセルロースエステル原反フィルムを2モル/リットルの水酸化ナトリウム溶液に60℃で1分間浸漬し、更に水洗、乾燥させた。このけん化処理セルロースエステル原反フィルムを、前述の延伸して巻き取り済みのポリビニルアルコールフィルムの両面に保護膜としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、ロール・ツー・ロールで連続的に貼合した。図2に示すように、30cm×18cmの長方形ABCDを切り取った。
【0278】
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板8について視野角測定を行った。視野角拡大偏光板8を液晶セルの両面に、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交するように貼合した。これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0279】
(比較対照用の偏光板9の作製)
比較対照セルロースエステルフィルム1を2枚用いて、セルロースエステルフィルム1を用いた場合と同様にして偏光板を作製し、これを下記の方法により視野角測定を行った。
【0280】
〔視野角測定〕
次に、以下の方法により、視野角拡大偏光板1〜9について視野角測定を行った。
【0281】
視野角拡大偏光板1を液晶セルの両面に、以下のように配置して貼合し、パネルで評価した。すなわち本発明の偏光板は、液晶セルの近接する基板面のラビング軸方向と偏光板透過軸が直交するように貼合した。液晶セルは、NEC製15インチディスプレイMulti Sync LCD1525Jのあらかじめ貼合されていた光学補償フィルム及び偏光板を剥がしたものを使用した。こうして得られた液晶表示装置を、ELDIM社製EZ−contrastにより視野角を測定した。視野角は、液晶セルの白表示と黒表示時のコントラスト比が10以上を示すパネル面に対する法線方向からの傾き角の範囲で表した。その結果、視野角拡大偏光板1〜9を用いて得られた視野角の値を下記に示した。
【0282】
上記の評価結果から、比較例に比べて本発明の試料は、著しく視野角が改善されていることが明らかである。
【0283】
実施例2
下記のようにして、偏光板10〜14を作製した。
【0284】
(偏光板10の作製)
(セルロースエステルフィルムAの作製)
以下の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムA)を作製した。
【0285】
アセチル基の置換度2.86(酸化度:60.9)、粘度平均重合度300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルフォスフェイト8.5質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて80℃まで上げ溶解した。容器内は1.5気圧となった。
【0286】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。
【0287】
また、これとは別に、上記セルローストリアセテート5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)7質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部、及びAEROSIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。上記ドープ100質量部に対して紫外線吸収剤溶液を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。
【0288】
剥離時のウェブ中の残留溶媒量は80質量%であった。次いで延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔の巾方向を変化させることで、105℃で巾方向のみに1.07倍延伸した。更にローラ搬送しながら130℃で10分間乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムA得た。
【0289】
得られたセルロースエステルフィルムAと、実施例1に記載のセルロースエステルフィルム1を用いて、実施例1の偏光板1の作製と同様にして偏光板10を作製した。
【0290】
偏光板10の視野角測定を実施例1に記載と同様に行い(保存前)、且つ、作製後の偏光板10を80℃、90%湿度条件下で500時間静置(保存後)した後、前述と同様の方法により視野角測定を行った。
【0291】
(偏光板11の作製)
剥離後の巾方向の延伸倍率を1.15倍とした以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムB)を作製した。
【0292】
このセルロースエステルフィルムBを用いて、偏光板10の場合と同様にして偏光板11を作製した。得られた偏光板11を偏光板10と同様に評価した。
【0293】
(偏光板12の作製)
セルロースエステルフィルムAを用いて、セルロースエステルフィルム11を1とした以外は、偏光板10の場合と同様にして偏光板12を作製した。得られた偏光板12を偏光板10と同様に評価した。
【0294】
(偏光板13の作製)
このセルロースエステルフィルムBを用いて、セルロースエステルフィルム11を1とした以外は、偏光板10の場合と同様にして偏光板13を作製した。得られた偏光板13を偏光板10と同様に評価した。
【0295】
(偏光板14の作製)
剥離後の巾方向の延伸を行わなかった以外はセルロースエステルフィルムAと同様の手順により、偏光板保護フィルム用のセルローストリアセテートフィルム(セルロースエステルフィルムC)を作製した。
【0296】
このセルロースエステルフィルムCを用いて、偏光板10の場合と同様にして偏光板14を作製した。得られた偏光板14を偏光板10と同様に評価した。
【0297】
上記の評価結果から、本発明のセルロースエステルフィルムを有する偏光板10〜14は、良好な視野角改善効果が見られることが明らかである。また、経時保存後の処理をした場合、偏光板を構成する2枚のセルロースエステルフィルムのうち、一枚のみを使用した偏光板14については、保存後の視野角の劣化がやや観察され、また、黒表示時に光漏れ等が観察されたが、2枚とも本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板10〜13は経時保存後も保存前と同様に優れた視野角改善効果を示していることが判る。特に、反応性金属を導入したセルロースエステルフィルムを導入した偏光板10、11は全く劣化が見られず、優れた視野角改善効果を示した。
【0298】
【発明の効果】
本発明により、TN−TFTなどのTN型LCDの視野角特性、すなわち、斜め方向から見た場合の画面のコントラスト、着色、明暗の反転現象を、簡便に改善できる視野角拡大偏光板と、その偏光板に用いられるセルロースエステルフィルムを、更に、前記視野角拡大偏光板を用いて、簡単な構成でより安価に著しく視野角が改善される液晶表示装置及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示装置の構成を示す模式図である。
【図2】流延製膜により作製された本発明の長尺のセルロースエステルフィルムの模式図である。
【図3】本発明の偏光板の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1a、1b セルロースエステルフィルム
2a、2b 偏光子
3a、3b セルロースエステルフィルム流延製膜時の流延方向
4a、4b 偏光子の延伸方向
5a、5b 液晶セルのラビング方向
6a、6b 偏光板
7 液晶セル
8a、8b 偏光板の光透過軸
9 液晶表示装置
10 長尺のセルロースエステルフィルム
11 流延製膜時の流延方向
12 流延製膜時の幅手方向
ABCD 切り取られる長方形
Claims (16)
- 下記式(1)及び(2)を同時に満足し、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を含有し、面内リターデーション値R0が20〜100nm、厚み方向のリターデーション値Rtが70〜300nmであり、光学的に二軸性を有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式(1) 2.4≦A+B≦2.8
式(2) 1.4≦A≦2.0
〔式中、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数3または4のアシル基の置換度を表す。〕 - 前記セルロースエステルフィルムが、1.02〜1.20倍に延伸されたことを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、セルロースエステル100質量部に対して、少なくとも2つの環からなる芳香族縮合環を分子内に有する化合物(但し、5員環と6員環にて構成される縮合環の場合は、構成する炭素数が7以上、8以下)、または、少なくとも3つの環から成る芳香族縮合環を分子内に有する化合物を0.1〜20質量部含有していることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムにおいて、前記反応性金属化合物が完全に反応が終了したと仮定した場合の質量が、セルロースエステルフィルム支持体の全質量に対して0.5質量%〜20質量%であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記反応性金属化合物が、ケイ素、アルミニウムから選ばれることを特徴とする請求項4または5に記載のセルロースエステルフィルム。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムを有することを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムと二色性物質を含有する偏光子とを有する偏光板において、該偏光子の光透過軸と該セルロースエステルフィルムの面内で最大屈折率を与える方向とのなす角度が−10°〜10°であることを特徴とする偏光板。
(ここで、二色性物質とは偏光をあてた場合、偏光面の方向により透過光が異なる物質をいう。) - 請求項1〜6の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルム、二色性物質を含有する偏光子、及び該セルロースエステルフィルムと異なるまたは同一のセルロースエステルフィルムbの順で積層された偏光板において、該セルロースエステルフィルムbが、前記セルロースエステルフィルムと同一の方向に1軸または2軸延伸されたものであることを特徴とする偏光板。
- 前記セルロースエステルフィルムbが、製膜時または製膜後に流延方向に対して幅手方向に延伸されたものであることを特徴とする請求項9に記載の偏光板。
- 前記セルロースエステルフィルムまたはセルロースエステルフィルムbの延伸倍率が1.02〜1.20倍となるように延伸されたものであることを特徴とする請求項9または10に記載の偏光板。
- 請求項7〜11の何れか1項に記載の偏光板と液晶セルとを有する液晶表示装置において、該偏光板のセルロースエステルフィルムが該偏光板の二色性物質を含有する偏光子と該液晶セルとの間に配置されることを特徴とする液晶表示装置。
- 前記偏光板の光透過軸と、液晶セルの該偏光板を配置する側のラビング軸または液晶配向軸が直交することを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
- 前記偏光板と液晶セルとの貼合面側に配置される該偏光板のセルロースエステルフィルムの屈折率が最大となる方向と、該偏光板の光透過軸とのなす角が−10°〜10°に調整されていることを特徴とする請求項12または13に記載の液晶表示装置。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載のセルロースエステルフィルムを作製するに当たり、セルロースエステルフィルムに光学的に二軸性を付与する操作が施され、且つ、長尺ロールとして作製されることを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
- 請求項7〜11の何れか1項に記載の偏光板の製造方法において、
(1)光学的に二軸性を付与する操作を施し、且つ、流延製膜時における幅手方向の屈折率が最大となるように調整したセルロースエステルフィルムの長尺ロールを作製する工程
(2)二色性物質を含有する偏光子を形成する工程
(3)該長尺ロールに該偏光子をラミネートする工程
を有することを特徴とする偏光板の製造方法。
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