JP2006154803A - セルロースアシレートフィルム、セルロースアシレートフィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】波長590nmにおける面内レターションReと厚み方向レターデーションRthが下記式(I)〜(III)の範囲を満たし、熱膨張係数が20ppm/℃以上100ppm/℃以下であり、ヘイズが0.01以上0.8以下であるセルロースアシレートフィルム並びにそれを用いた偏光板及び液晶表示板。ここに、式(I):20≦Re≦500、式(II):70≦Rth≦200、式(III):1.0≦Rth/Re≦3.0であり、Re及びRthは、25℃,60%RHにおける値であり、単位は、nmである。
【選択図】なし
Description
これに対しては、特許文献2には平均粒径が0.001以上0.1μm未満の1次微粒子を含む平均粒径が0.1μ〜1.5μmの2次粒子を有する延伸セルロースアシレートフィルムにおいてフィルム中の添加剤の平均含有量より、2次微粒子近傍の添加剤の含有量を多くすることにより、微粒子の凝集を抑制し、ヘイズを低減させる方法が開示されている。しかしこの方法によっても、ヘイズの低減は不十分であり、改善が求められていた。
さらに本発明のもう一つの目的は、正面コントラストが高く、かつコントラストの視野角依存性も小さく、長時間点灯しても高画質を維持できる液晶表示装置を提供することである。
セルロースアシレートの固有複屈折を大きくするには、アシル化度を低下させる、及び分極率異方性の大きい化合物(以下レターデーション発現剤)をフィルム中にドープすることにより見かけの固有複屈折を増幅する、という2つの方法が従来とられてきた。しかし、第1のアシル化度を低下させる方法はマット剤として添加される二酸化珪素等の無機化合物分散物の凝集を促進してしまいヘイズ上昇を引き起こす。また、第2のレターデーション発現剤を添加する方法も、マット剤上でレターデーション発現剤が凝集してしまい、ヘイズを上昇させてしまう問題のあることを突き止めた。
また、ポリマーの配向度を向上させるために高倍率で延伸する方法においては、残留溶剤が少ない状態で延伸するとフィルム中に発生するクレーズによりヘイズが上昇、一方残留溶剤が多い状態で延伸すると結晶化がおこりヘイズが上昇してしまうという問題がある。
これに対し本発明者らは、以下の方法によりヘイズを上昇させることなく、高レターデーションを付与できることを見出し、本発明を完結させるに至った。すなわち、マット剤分散液あるいは添加剤溶液の少なくとも一方に低濃度のセルロースアシレートを添加しておき、流延直前にマット剤液と添加剤液を混合後さらにドープ液と混合し、流延直後から急速に乾燥させ、マット剤及び添加剤の凝集を抑制するものである。また、添加剤の凝集については、(a)マット剤粒子のフィルム表面近傍での存在比率を高めてマット剤を効率的に機能させこれによりマット剤の添加量を低減する、及び(b)マット剤と他の添加剤との溶液状態での接触時間を低減させる。また、延伸によるクレーズ発生については、高発現性のレターデーション発現剤により固有複屈折を実質的に向上させ、低延伸倍率でレターデーションを発現させるものである。
式(I) 20≦Re≦50
式(II) 70≦Rth≦200
式(III) 1.0≦Rth/Re≦3.0
Re及びRthは、25℃,60%RHにおける値であり、その単位は、nmである。
(2)波長590nmにおける面内レターションReと厚み方向レターデーションRthが下記式(IV)及び(V)の範囲を満たし、面内と厚み方向のレターデーションの関係が下記式 (VI)を満たし、かつヘイズが0.01以上0.8以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(IV) 50<Re≦200
式(V) 150≦Rth≦400
式(VI) 2.0≦Rth/Re≦10.0
Re及びRthは、25℃,60%RHにおける値であり、その単位は、nmである。
(3)熱膨張係数が20ppm/℃以上100ppm/℃以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4)添加剤と一次平均粒子径が1nm以上20nm以下のマット剤を含有し、マット剤の2次平均粒子径が0.05μm以上1.05μm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(5)共焦点レーザー顕微鏡により観察される0.2μ以上3μ以下の微粒子の1mm2あたりの個数が20個以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(6)添加剤とマット剤溶液をセルロースアシレート濃度が0.01質量%以上5質量%未満の状態で混合した後、セルロースアシレート濃度が5質量%以上35質量%以下のドープと混合した液を支持体上に流延し、支持体上で乾燥、剥ぎ取り後、フィルムを搬送方向および/あるいは幅方向に1%以上100%以下延伸して得られたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(7)前記マット剤と事前混合される添加剤が紫外線吸収剤、可塑剤、レターデーション発現剤、レターデーション低減剤、劣化防止剤のうちの少なくとも1つでることを特徴とする(6)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(A) 結晶化指数=(2θが27°のX線回折強度)/(2θが25°のX線回折強度)
(9)固形分濃度が17質量%以上25質量%以下であるドープ液を支持体に流延し、流延直後から風速1m/min以上の風をあてて乾燥することにより製造されたことを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(10)支持体上の乾燥温度と風量が下記関係を満たす工程を経て製造されたことを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
支持体前半部での{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)}>支持体後半の乾燥における{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)}
(11)(溶剤含量が0.5%未満におけるフィルムのガラス転移点−30℃)以上(溶剤含量が0.5%未満におけるフィルムのガラス転移点+10℃)以下の温度かつ下記式で表される残留溶剤含量が1質量%以上30質量%以下の状態で延伸されたことを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(残留溶剤含量)=(フィルム中に含まれる溶剤の質量)/(フィルム全体の質量)
(12) X線回折から求めた面内配向度が0.20以上0.50以下であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の記載のセルロースアシレートフィルム。
(13) レターデーション発現剤が下記一般式(B)で表される棒状のレターデーション発現剤であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(B)
Ar1−L1−X−L2−Ar2
(式中、Ar1、Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環を表す。L1、L2は−C(=O)O−、−C(=O)NR−を表す(Rは水素原子またアルキル基を表す。)。Xは下記一般式(2)または一般式(3)を表す。)
一般式(2)
一般式(3)
(14) レターデーション発現剤が下記一般式(4)で表される棒状のレターデーション発現剤であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(4)
(15) セルロースアシレートがアセチル化度2.5以上2.95以下のセルロースアセテートであることを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(16) セルロースアシレートがアシル基としてアセチル基と炭素数3以上22以下のアシル基とを有しており、かつアセチル基の置換度Aと炭素数3〜22のアシル基の置換度Bが下記式(VII)及び(VIII)を満たすことを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(VII) 2.0≦A+B≦3.0
(VIII) 0.1≦A≦2.5
(18) 偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が(1)〜(16)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
(19) 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板を有し、少なくとも1つの偏光板が(18)に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
(20) 液晶セルがVAモードであることを特徴とする(19)に記載の液晶表示装置。
(セルロースアシレート)
まず、本発明のセルロースアシレートについて説明する。
セルロースアシレートの置換度は、セルロースの構成単位(β1→4グリコシド結合しているグルコース基)に存在している三つの水酸基がアシル化されている割合を意味する。置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、ASTM-D817-91に準じて実施する。
本発明のセルロースアシレートはアセチル化度が2.5以上2.95以下のセルロースアセテートが好ましい。アセチル化度は2.6以上2.85以下がさらに好ましい。
また、式(A)で表される6位の置換比率が0.31以上であり、全置換度が2.85以下であるセルロースアセテートを使用することがより好ましい。
式(A)
6位の置換比率=6位の置換度/(2位の置換度+3位の置換度+6位の置換度)
(II) 2.0≦A+B≦3.0
(III) 0.1≦A≦2.5
(A+B)はさらに好ましくは2.2以上2.95以下である。また、Aはさらに好ましくは1.0以上2.2以下である。炭素数3以上22以下のアシル基としては、好ましくはプロピオニル基、ブチリル基である。
本発明のセルロースアシレートは、250乃至800の重量平均重合度を有することが好ましく、300乃至600の重量平均重合度を有することがさらに好ましい。本発明のセルロースアシレートは、70000乃至230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000乃至230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000乃至120000の数平均分子量を有することが最も好ましい。
レターデーション発現剤としては、分子量が200以上2000以下でlogPが2以上の化合物がマット剤分散液の凝集を抑制する効果が大きく好ましい(Pはオクタノールー水分配係数)。分子量は250以上1500以下がさらに好ましい。logPは4以上がさらに好ましい。
前記添加剤としては、レターデーション発現剤、可塑剤、紫外線吸収剤、レターデーション低減剤、劣化防止剤等の機能を有する化合物を用いることができる。
以下に本発明で使用するレターデーション発現剤について詳しく説明する。
(レターデーション発現剤)
一般式(1)
R1〜R5のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。R1、R3またはR5のうちの1つが電子供与性基であることが好ましく、R3が電子供与性基であることがより好ましい。
電子供与性基として好ましくはアルキル基、アルコキシ基であり、より好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)である。
R8として好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基であり、より好ましくは、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基であり、更に好ましくは、炭素数2〜7のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7のアシルアミノ基、シアノ基であり、特に好ましくは、フェニルエチニル基、フェニル基、p−シアノフェニル基、p−メトキシフェニル基、ベンゾイルアミノ基、n−プロポキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、シアノ基である。
一般式(1−A)
一般式(1−B)
一般式(1−B)中、R31は一般式(1−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
R1、R2、R4、R5がすべて水素原子の場合にはXとして好ましくはアルキル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくは、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜4である。)であり、特に好ましくは、メトキシ基、メトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基である。
一般式(1−C)
一般式(1−D)
R42は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
一般式(1−E)
好ましくはR4、R5が−OR13で表される基であり、より好ましくはR4が−OR13で表される基である。
R13は炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはエチル基、メチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノールと縮合する方法が好ましい。
本反応には塩基を用いないのが好ましく、塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミンなどが挙げられる)である。
3,4,5−トリメトキシ安息香酸24.6g(0.116モル)、トルエン100mL、N−N−ジメチルホルムアミド1mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル15.2g(0.127モル)をゆっくりと滴下し、2時間60℃で加熱した。その後、あらかじめ4−シアノフェノール15.1g(0.127モル)をアセトニトリル50mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、60℃で3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、得られた固形物に、アセトニトリル100mLを加え、再結晶操作を行った。アセトニトリル溶液を室温まで冷却し、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を11.0g(収率11%)得た。なお、化合物の同定は1H−NMR(400MHz)およびマススペクトル解析で行った。
マススペクトル:m/z 314(M+H)+。
得られた化合物の融点は172〜173℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸106.1g(0.5モル)、トルエン340mL、ジメチルホルムアミド1mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル65.4g(0.55モル)をゆっくりと滴下し、2時間65〜70℃で加熱した。その後、あらかじめ4−シアノフェノール71.5g(0.6モル)をアセトニトリル150mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、80〜85℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル(1L)、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸マグネシウムで水分を除去した後、約500mLの溶媒を減圧留去し、メタノール1Lを加え、再結晶操作を行った。析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を125.4g(収率80%)得た。なお、化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびマススペクトル解析で行った。
マススペクトル:m/z 314(M+H)+。
得られた化合物の融点は116℃であった。
2,3,4−トリメトキシ安息香酸10.1g(47.5ミリモル)、トルエン40mL、ジメチルホルムアミド0.5mLを80℃に加熱した後、塩化チオニル6.22g(52.3ミリモル)をゆっくりと滴下し、80℃で2時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−シアノフェノール6.2g(52.3ミリモル)をアセトニトリル20mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、80〜85℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、メタノール50mLを加え、再結晶操作を行った。析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を11.9g(収率80%)得た。なお、化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびマススペクトル解析で行った。
マススペクトル:m/z 314(M+H)+。
得られた化合物の融点は102〜103℃であった。
2,4,6−トリメトキシ安息香酸25.0g(118ミリモル)、トルエン100mL、ジメチルホルムアミド1mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル15.4g(129ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−シアノフェノール15.4g(129ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、80〜85℃で4.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、メタノール500mL、アセトニトリル100mLを加え、再結晶操作を行った。析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を10.0g(収率27%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトル解析で行った。
マススペクトル:m/z 314(M+H)+。
得られた化合物の融点は172〜173℃であった。
2,3−ジメトキシ安息香酸15.0g(82.3ミリモル)、トルエン60mL、ジメチルホルムアミド0.5mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル10.7(90.5ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−シアノフェノール10.8g(90.5ミリモル)をアセトニトリル30mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、70〜80℃で7時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、イソプロピルアルコール90mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を12.3g(収率53%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトル解析で行った。
得られた化合物の融点は104℃であった。
A−5における2,3−ジメトキシ安息香酸を2,4−ジメトキシ安息香酸に変更する以外は同様の方法で合成した。また化合物の同定はマススペクトル解析で行った。
マススペクトル:m/z 284(M+H)+。
得られた化合物の融点は134〜136℃であった。
2,5−ジメトキシ安息香酸25.0g(137ミリモル)、トルエン100mL、ジメチルホルムアミド1.0mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル18.0(151ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−シアノフェノール18.0g(151ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、70〜80℃で7.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル、飽和食塩水で分液操作を行い、得られた有機相を硫酸ナトリウムで水分を除去した後、溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン−酢酸エチル(9/1、V/V))で精製操作を行い、白色の結晶として目的化合物を18.8g(収率48%)得た。また化合物の同定はマススペクトル解析で行った。
得られた化合物の融点は79〜80℃であった。
A−5における2,3−ジメトキシ安息香酸を2,6−ジメトキシ安息香酸に変更する以外は同様の方法で合成した。また化合物の同定はマススペクトル解析で行った。
マススペクトル:m/z 284(M+H)+。
得られた化合物の融点は130〜131℃であった。
A−2における4−シアノフェノール71.5gを4−クロロフェノール76.9gに変更する以外は同様の方法で目的化合物を得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)およびマススペクトル解析で行った。
マススペクトル:m/z 323(M+H)+。
得られた化合物の融点は127〜129℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸45.0g(212ミリモル)、トルエン180mL、ジメチルホルムアミド1.8mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル27.8g(233ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2.5時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−ヒドロキシ安息香酸メチル35.4g(233ミリモル)をジメチルホルムアミド27mLに溶解させた液をゆっくりと添加し、80℃で3時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却し、メタノール270mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を64.5g(収率88%)得た。また化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 347(M+H)+。
得られた化合物の融点は121〜123℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸20.0g(94.3ミリモル)、トルエン100mL、ジメチルホルムアミド1mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル12.3g(104ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−フェニルフェノール17.7g(104ミリモル)をトルエン150mLに溶解させた液をゆっくりと添加し、80℃で3時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却し、メタノール250mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を21.2g(収率62%)得た。また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)およびマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 365(M+H)+。
得られた化合物の融点は131−132℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸12.9g(61ミリモル)、トルエン50mL、ジメチルホルムアミド0.6mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル8.0g(67ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−フェニルフェノール17.7g(104ミリモル)をアセトニトリル25mLに溶解させた液をゆっくりと添加し、80℃で3時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却し、メタノール100mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を21.6g(収率93%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 381(M+H)+。
得られた化合物の融点は91〜92℃であった。
A−2における4−シアノフェノール71.5gをフェノール56.4gに変更する以外は同様の方法で目的化合物を得た。なお、化合物の同定は1H−NMRおよびマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 289(M+H)+
得られた化合物の融点は105〜108℃であった。
A−2における4−シアノフェノール71.5gを4−メトキシフェノール74.4gに変更する以外は同様の方法で目的化合物を得ることができる。なお、化合物の同定は1H−NMRおよびマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 319(M+H)+。
得られた化合物の融点は102〜103℃であった。
A−2における4−シアノフェノール71.5gを4−エチルフェノール73.3gに変更する以外は同様の方法で目的化合物を得た。なお、化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 317(M+H)+。
得られた化合物の融点は70〜71℃であった。
4―エトキシ安息香酸27.3g(164ミリモル)、トルエン108mL、ジメチルホルムアミド1mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル21.5g(181ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−エトキシフェノール25.0g(181ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で4時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール100mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を30.6g(収率65%)得た。なお、化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 287(M+H)+。
得られた化合物の融点は113〜114℃であった。
4―エトキシ安息香酸24.7g(149ミリモル)、トルエン100mL、ジメチルホルムアミド1mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル19.5g(164ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−プロポキシフェノール25.0g(165ミリモル)をアセトニトリル50mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で4時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール100mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、得られた固体にメタノール100mLを加え再結晶操作を行い、得られた結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を33.9g(収率76%)得た。なお、化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 301(M+H)+。
得られた化合物の融点は107℃であった。
A−24の合成法における4―エトキシ安息香酸27.3gを4―プロポキシ安息香酸29.5gに変更する以外は同様の方法で合成した。なお、化合物の同定はマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 301(M+H)+。
得られた化合物の融点は88〜89℃であった。
A−25の合成法における4―エトキシ安息香酸24.7gを4―プロポキシ安息香酸26.8gに変更する以外は同様の方法で合成した。なお、化合物の同定はマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 315(M+H)+。
得られた化合物の融点は92℃であった。
2,4−ジメトキシ安息香酸20.0g(109ミリモル)、トルエン80mL、ジメチルホルムアミド0.8mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル14.4g(121ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で3.5時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−フェニルフェノール20.5g(121ミリモル)をジメチルホルムアミド50mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で6時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール100mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を31.7g(収率86%)得た。なお、化合物の同定はマススペクトル解析により行った。
マススペクトル:m/z 335(M+H)+。
得られた化合物の融点は161〜162℃であった。
2,4―ジメトキシ安息香酸30.0g(165ミリモル)、トルエン120mL、ジメチルホルムアミド1.2mLを60℃に加熱した後、塩化チオニル21.6g(181ミリモル)をゆっくりと滴下し、60℃で2時間加熱撹拌した。その後、あらかじめ4−フヒドロキシ安息香酸メチル27.6g(181ミリモル)をジメチルホルムアミド40mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、80℃で6時間加熱撹拌した後、反応液を室温まで冷却した後、メタノール140mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を24.4g(収率47%)得た。なお、化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびマススペクトル解析により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ3.92(m,9H),6.56(m,2H),7.27(m,2H),8.09(m,3H)。
得られた化合物の融点は122〜123℃であった。
以下に、一般式(B)で表される化合物に関して詳細に説明する。
一般式(2)
一般式(3)
一般式(B)中、Ar1、Ar2で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
Rは水素原子またはアルキル基を表し、Rとして好ましくは水素原子または、炭素数1〜6アルキル基であり、より好ましくは水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8として好ましくは、水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17およびR18として好ましくは、水素原子、アルキル基、アミノ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、フッ素原子であり、特に好ましくは水素原子、フッ素原子であり、最も好ましくは水素原子である。
一般式(B2)
一般式(B3)
一般式(B4)
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの各基が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどの各基が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどの各基が挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどの各基が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどの各基が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどの各基が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどの各基が挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、
製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール、あるいはアニリン誘導体と縮合する方法が好ましい。
本反応には塩基を用いないのが好ましく、塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミンなどが挙げられる)である。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸40.1g(189ミリモル)、4、4‘−ジヒドロキシビフェニル16.75g(90ミリモル)、トルエン200mL、ジメチルホルムアミド2mLを70℃に加熱した後、塩化チオニル23.6g(198ミリモル)をゆっくりと滴下し、70℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール300mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を48.4g(収率94%)得た。また化合物の同定は1H―NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),3.99(s,6H),6.58(s,2H),7.28(d,4H),7.62(m,6H)。
得られた化合物の融点は227〜229℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸34g(160ミリモル)、4、4‘−ジヒドロキシー3−フルオロビフェニル15g(73ミリモル)、トルエン110mL、ジメチルホルムアミド1.6mLを70℃に加熱した後、塩化チオニル20.9g(176ミリモル)をゆっくりと滴下し、70℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール300mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を37g(収率86%)得た。また化合物の同定は1H―NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),4.00(s,6H),6.59(s,2H),7.26−7.45(m,5H),7.63(m,4H)。
得られた化合物の融点は197〜199℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸23.3g(110ミリモル)、4、4‘−ジヒドロキシ−3−クロロビフェニル15g(50ミリモル)、トルエン75mL、ジメチルホルムアミド1.1mLを70℃に加熱した後、塩化チオニル14.4g(121ミリモル)をゆっくりと滴下し、80℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール250mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を26g(収率85%)得た。また化合物の同定は1H―NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ3.90−4.00(m,18H),6.59(s,2H),7.26−7.70(m,9H)。
得られた化合物の融点は168〜170℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸30.3g(143ミリモル)、4、4‘−ジヒドロキシー3−メチルビフェニル15g(65ミリモル)、トルエン100mL、ジメチルホルムアミド1.4mLを70℃に加熱した後、塩化チオニル18.7g(157ミリモル)をゆっくりと滴下し、70℃で2.5時間加熱攪拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、メタノール300mLを加え、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を27.4g(収率72%)得た。また化合物の同定は1H―NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3)δ2.31(s,3H),3.95(s,6H),4.00(s,6H),6.60(s,2H),7.10(m,2H),7.27(m,3H),7.40(m,2H),7.63(d,2H)。
マススペクトル:m/z 589(M+H)+。
得られた化合物の融点は188〜189℃であった。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸5.72g(26.9ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン3.5g(27ミリモル)、テトラヒドロフラン20mLを氷水で冷却した後、メタンスルホニルクロリド3.1g(27ミリモル)をゆっくりと滴下し、滴下後2時間室温で攪拌した。その後、氷水に冷却し、あらかじめビス(4−ヒドロキシフェニル)アセチレン2.9g(13.7ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン3.5g(27ミリモル)をテトラヒドロフラン40mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、滴下後、室温で3時間、50℃1時間攪拌した。その後水160mLを添加し、得られた結晶をろ過回収し、メタノール100mLを加え、再結晶操作を行い、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を3.0g(収率19%)得た。
1H−NMR(CDCl3)δ3.93(s,6H),3.95(s,6H),3.99(s,6H),6.57(s,2H),7.24(m,4H),7.58(m,6H)。
マススペクトル:m/z 599(M+H)+。
得られた化合物の融点は201〜203℃であった。
6−1 2,4,5−トリメトキシ安息香酸-4−エチニルアニリドの合成
2,4,5−トリメトキシ安息香酸21.2g(100ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン12.9g(100ミリモル)、テトラヒドロフラン126mLを氷水で冷却した後、メタンスルホニルクロリド11.4g(100ミリモル)をゆっくりと滴下し、滴下後2時間室温で攪拌した。その後、氷水に冷却し、あらかじめ4−エチルアニリン11.7g(100ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン12.9g(100ミリモル)をテトラヒドロフラン42mLに溶解させた溶液をゆっくり添加し、滴下後、室温で6時間攪拌した。その後酢酸エチル200mLを添加し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、0.5mol/L塩酸水、飽和食塩水の順で有機相を洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを添加し、脱水操作を行い、濾過により硫酸ナトリウムを濾別し、有機溶媒を減圧留去した。
メタノール350mLを加え、再結晶操作を行い、析出した結晶をろ過回収し、白色の結晶として目的化合物を15.0g(収率48%)得た。
2,4,5−トリメトキシ安息香酸-4−エチニルアニリド3.1g(10ミリモル)、2,4,5−トリメトキシ安息香酸 4−ヨードフェニル4.1g(10ミリモル)、トリエチルアミン5.56mL(40ミルモル)、テトラヒドロフラン15mLを窒素雰囲気下、室温で攪拌し、塩化第一銅 22.8mg(0.12ミリモル)、トリフェニルホスフィン131mg(0.5ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド70mg(0.1ミリモル)を添加し、60℃で3時間加熱攪拌した。その後反応液を室温まで冷却し、水200mLを添加した。得られた結晶を濾過し、メタノール100mLで再結晶操作を行い、黄白色の結晶として目的化合物を5.6g(収率94%)得た。
なお、化合物の同定は1H―NMR(400MHz)およびにより行った。
1H−NMR(DMSO-d6)δ3.92(s,3H),3.93(s,3H),4.05(m,9H)4.15(s,3H)6.96(br,2H),7.46(d,2H),7.55(s,1H), 7.62(s,1H),7.69(d,2H),7.76(d,2H),7.98(d,2H),10.30(s,1H)。
得られた化合物の融点は216〜218℃であった。
一般式(4)
R11、R13で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、または環状であって、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、好ましくは置換もしくは無置換の炭素数1から〜30のアルキル基、炭素数3から〜30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、炭素数5から〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基(つまり、炭素数5から〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基。)、更に環構造が多いトリシクロ構造などが挙げられる。
R13として特に好ましくは、炭素原子2個以上を含むアルキル基であり、より好ましくは炭素原子3個以上を含むアルキル基である。分岐または環状構造をもったものは特に好ましく用いられる。
一般式(4)中、Ar1で表されるアリーレン基として好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar1で表されるアリーレン基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、p−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
一般式(4))中、Ar2で表されるアリール基として好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。Ar2で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニレン基、p−メチルフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
前記二価の連結基として好ましいものは、−O−、−NR―(Rは水素原子または置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基をあらわす)、−CO−、−SO2−、−S−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基およびこれらの二価の基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは−O−、−NR−、−CO−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基である。Rは好ましくは水素原子を表す。
一般式(5)
一般式(6)
一般式(6)において、R14は水素原子またはアルキル基を表し、アルキル基としてはR11、R13の好ましい例として示したアルキル基が好ましく用いられる。前記R14としてまた好ましくは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表しであり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。R11とR14はとは同じ同一であってもよいし異なっていてもよいが、ともにメチル基であることが特に好ましい。
一般式(6―A)
一般式(6−B)
置換基Tとして好ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換または無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換または無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換または無置換の、芳香族または非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3〜30の5または6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、
一般式(4)で表される化合物の製造方法としては、製造プロセス等を考慮すると置換安息香酸を酸ハロゲン化物に官能基変換した後、フェノール誘導体もしくはアニリン誘導体と縮合する方法が好ましい。
また、本反応には塩基を用いないのが好ましく、い。塩基を用いる場合には有機塩基、無機塩基のどちらでもよく、好ましくは有機塩基であり、ピリジン、3級アルキルアミン(好ましくはトリエチルアミン、エチルジイソプルピルアミンなどが挙げられる)である。
構造体A
水酸基、アミノ基等の反応性部位を有する誘導体との反応に付して得られた中間体:
中間体B
化合物C
本発明のレターデーション発現剤は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランの有機溶媒にセルロースアシレート濃度が0.01質量%以上5質量%未満の状態で溶解してから、マット剤分散液と混合したのち、セルロースアシレート濃度が5質量%以上35質量%以下のセルロースアシレート溶液(ドープ)に添加することが好ましい。レターデーション発現剤溶液のセルロースアシレート濃度は0.1質量%以上3質量%未満がさらに好ましい。
また、セルロースアシレート溶液の中のセルロアシレート濃度は10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。このような添加方法をとることにより、所望のレターデーションでかつヘイズの低いセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
本発明のセルロースアシレートフイルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。これらの微粒子の中ではケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が1nm以上20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができて、より好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のセルロースアシレートフイルムは、ソルベントキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2-エトキシエチルアセテート、2-メトキシエタノールおよび2-ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
本発明の有機溶媒はメチレンクロライドとアルコールを混合して用いることが好ましく、メチレンクロライドに対するアルコールの比率は1質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下が好ましく、12質量%以上30質量%以下が最も好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n-フ゛タノールが好ましく、2種類以上のアルコールを混合して使用してもよい。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
上記範囲の固形分濃度のドープを用いて製膜することにより、製膜過程でのセルロースアシレートの結晶化を抑制でき、かつ不溶解物に起因する面状故障を防止することができる。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。
また本発明のセルロースアシレートフィルムは支持体上の平均乾燥温度と平均風量が下記関係を満たす工程を経て製造されることが好ましい。
支持体前半部において:
{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)}>支持体
後半の乾燥において:
{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)}
より好ましくは、支持体前半部において:
{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)}>支持体
後半の乾燥において:
{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)}+4000
である。
ここで乾燥風の平均温度とは、所定の期間における乾燥風の10秒ごとに記録した乾燥温度の平均値であり、平均風速とは所定の期間における乾燥風の10秒ごとに記録した風速の平均値を表す。
流延するセルロースアシレート溶液は、同一の溶液を用いてもよいし、異なるセルロースアシレート溶液を用いてもよい。複数のセルロースアシレート層に機能をもたせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押し出せばよい。さらに本発明のセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、紫外線吸収層、偏光層など)と同時に流延することもできる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、延伸処理されることが好ましい。延伸処理によりセルロースアシレートフィルムに所望のレターデーションを付与することが可能である。
セルロースアシレートフィルムの延伸方向は幅方向、長手方向のいずれでも好ましい。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
また、延伸温度は残留溶剤含量が0.5%未満におけるフィルムのガラス転移点(Tg)に対して下記範囲であることが好ましい。
(Tg-30)℃≦延伸温度≦(Tg+10)℃
さらに好ましくは
(Tg-25)℃≦延伸温度≦(Tg)℃
であり、最も好ましくは
(Tg-20)℃≦延伸温度≦(Tg-5)℃
である。
フィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA-225(アイティー計測制御株式会社製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定した。縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いた。
この直線1と直線2の交点は、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度すなわち、ガラス転移領域に移行し始める温度であり、これをガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とする。
上記温度範囲で延伸を行うことにより、クレージングによるヘイズ上昇及び結晶化によるヘイズ上昇の双方を抑制することができる。
残留溶剤を含んだ状態で一定の時間で延伸することが好ましい。延伸開始時の残留溶剤含量は流延前の溶剤含量の5%以上100%以下が好ましく、10%以上50%以下がさらに好ましい。延伸終了時の残留溶剤含量は0.1%以上50%以下が好ましく、1%以上30%以下がさらに好ましい。
延伸時間は10秒以上120秒以下が好ましく、20秒以上90秒以下がさらに好ましい。
延伸時の雰囲気温度は100℃以上160℃以下が好ましく、120℃以上150℃以下がさらに好ましい。
フィルムの延伸倍率は、1%〜100%が好ましく、5%〜90%がさらに好ましい。なお、本発明において、フィルムの延伸倍率とは、(延伸後の寸法/延伸前の寸法)−1}×100(%)を指すものとする。
本発明のセルロースアシレートフィルムはレターデーション発現剤の他に紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を含有することが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは紫外線吸収剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、特開平8−337574号記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
セルロースアシレートフィルムには機械的物性を改良するために、以下の可塑剤を用いることができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアセテートの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
<フィルムのヘイズ>
本発明のセルロースアシレートフイルムのヘイズは0.01〜0.8%であることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.7%である。ヘイズが0.8%以上になると液晶表示装置のコントラストの低下が著しい。ヘイズが低いほど光学的性能が優れるが原料選択や製造管理も考慮すると上記範囲が好ましい。
フィルムのヘイズは大きく2つの要因によって上昇する。第1はマット剤粒子の凝集による2次粒径の増大、第2は延伸処理によるフィルム中の空隙の増大である。セルロースアシレートのアシル化度及びアシル基の種類を適度に調節すること、及び/あるいは本発明の分極率異方性の高いレターデーション発現剤を用いることにより、前記2つのヘイズ上昇要因の全てを効果的に抑制できる。
ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフイルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−7136に従って測定した。
セルロースアシレートフィルムの熱膨張係数は熱機械測定装置で一定荷重で昇温させた場合の温度あたりの寸度変化として測定することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの熱膨張係数は20ppm/℃以上100ppm/℃以下が好ましく、25ppm/℃以上80ppm/℃以下がさらに好ましく、30ppm/℃以上70ppm/℃以下が最も好ましい。熱膨張係数が前記範囲となることにより、高温で使用された場合のレターデーション変化を低減することができる。
<セルロースアシレートフィルムの厚み>
本発明のセルロースアシレートフィルムの厚みは10μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上150μm以下がさらに好ましく、30μm以上100μm以下が最も好ましい。
セルロースアシレートフィルムの面内配向度(配向オーダーパラメーター)Pは透過2次元X線測定における2θ=6〜11°のピーク強度の平均値から下記式を用いて求めることができる。
P0 = <3 cos2 β−1> /2
ここで
本発明のセルロースアシレートフィルムの結晶化指数はフィルムのX線回折強度測定により下記式(A)で定義するものとする。
(A) 結晶化指数=(2θが27°のX線回折強度)/(2θが25°のX線回折強度)
ここでの、2θが27°のX線回折強度、2θが25°のX線回折強度は、それぞれ、結晶部に基づくX線回折強度、(非晶部+結晶部)に基づくX線回折強度を意味しており、したがって、(2θが27°のX線回折強度)/(2θが25°のX線回折強度)の値は、微結晶の含有率に比例する値、すなわち結晶化指数を表すと考えることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの結晶化指数は0.80以上1.1以下であり、好ましくは0.85以上0.1.0以下であり、さらに好ましくは0.85以上0.95以下である。
セルロースアシレートフィルムの結晶化指数を上記範囲に制御することにより、ヘイズを低減することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは共焦点レーザー顕微鏡により観察される0.2μm以上3μm以下の微粒子の100μm2あたりの個数が20個以下であることが好ましい。さらに好ましくは10個以下であり、最も好ましくは5個以下である。前記共焦点レーザー顕微鏡で観察される微粒子はセルロースアシレートフィルム中に添加された可塑剤等の添加剤がマット剤表面に集まり凝集体を形成したものである。マット剤、添加剤、セルロースアシレートの添加方法を前記の如く工夫することにより、該凝集体の形成を抑制できヘイズの低いセルロースアシレートフィルムが得られる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは湿度によるカール変化が小さいことが好ましい。
カール度の測定は該フイルムを幅手方向50mm、長手方向2mmに切断し、所定の湿度で24時間調湿し、曲率スケールを用いて該フイルムのカール値を測定することにより求めることができる。カール値は1/Rで表され、Rは曲率半径で単位はmを用いる(JIS K7619参照)。
本発明のセルロースアシレートフィルムの相対湿度1%あたりのカール値変化は0.02以下が好ましく、0.015以下がさらに好ましい。
相対湿度1%あたりのカール値変化を上記範囲にすることにより偏光板加工後に使用環境湿度変化による変形が小さくなり、液晶表示装置の使用環境の変化に伴う光漏れが防止することができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは高温恒湿下での寸度変化が小さいことが好ましい。40℃95%24hr処理前後での寸度変化率は0.20%以下が好ましく、0.15%以下がさらに好ましい。
高温恒湿下での寸度変化を上記範囲にすることにより偏光板加工後に使用環境湿度変化による変形が小さくなり、液晶表示装置の使用環境の変化に伴う光漏れが防止することができる。
透湿度はJIS Z0208に記載の方法に則り、各試料の透湿度を測定し、面積1m2あたり24時間で蒸発する水分量(g)として算出する。透湿度は偏光板の耐久性と密接に関係したフィルム物性であり、透湿度を下げることにより偏光板耐久性を向上させることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24hrにおける透湿度が200g/m2以上1700g/m2以下であることが好ましい。より好ましくは、500g/m2以上1400g/m2以下である。
セルロースアシレートフィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は前記温湿度に24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃、80%RHにおける含水率は4.5質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましく、3.5質量%以下であることが最も好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムはアルカリ鹸化処理することによりポリビニルアルコールとの密着性を付与し、偏光板保護フィルムとして用いることができる。
セルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1乃至5.0規定の範囲にあることが好ましく、0.5乃至4.0規定の範囲にあることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温乃至90℃の範囲にあることが好ましく、40乃至70℃の範囲にあることがさらに好ましい。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)及びRth(λ)は複屈折計を用いて各規定の方向から光を入射させて当該方向の屈折率を測定してその値から求める。例えば、Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
また、Rth(590)/Re(590)比は1.0以上3.0以下が好ましく、1.2以上2.9
以下がさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートの光弾性係数は60×10−8cm2/N以下が好ましく、20×10−8cm2がさらに好ましい。光弾性係数はエリプソメーターにより求めることができる。
<ガラス転移温度>
本発明のセルロースアシレートのガラス転移温度は120℃以上が好ましく、更に140℃以上が好ましい。ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分で測定したときにフィルムのガラス転移に由来するベースラインが変化しはじめる温度と再びベースラインに戻る温度との平均値として求めたものである。
(偏光板の構成)
まず、本発明の偏光板を構成する保護フィルム、偏光子について説明する。
本発明の偏光板は、偏光子や保護フィルム以外にも、粘着剤層、セパレートフィルム、保護フィルムを構成要素として有していても構わない。
本発明の偏光板は偏光子の両側に1ずつ合計2枚の保護フィルムを有し、少なくとも1枚は本発明のセルロースアシレートフィルムである。また、2枚の保護フィルムのうち、少なくとも一枚は位相差フィルムとしての機能を合わせてもつことが好ましい。液晶表示装置に本発明の偏光板を用いる場合、液晶セルの両側に配置される二枚の偏光板の少なくとも一方が、本発明の偏光板であることが好ましい。
本発明において用いられる保護フィルムはノルボルネン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリスルフォン、セルロースアシレートなどから製造されたポリマーフィルムであることが好ましく、セルロースアシレートフィルムであることが最も好ましい。
本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール(PVA)と二色性分子から構成することが好ましいが、特開平11−248937に記載されているようにPVAやポリ塩化ビニルを脱水、脱塩素することによりポリエン構造を生成し、これを配向させたポリビニレン系偏光子も使用することができる。
PVAのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80〜100mol%が好ましく、90〜100mol%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが、1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。
PVAのシンジオタクティシティーは特許2978219号に記載されているように耐久性を改良するため55%以上が好ましいが、特許第3317494号に記載されている45〜52.5%も好ましく用いることができる。
PVAフィルムの結晶化度は、特に限定されないが、特許第3251073号に記載されている平均結晶化度(Xc)50〜75質量%や、面内の色相バラツキを低減させるため、特開2002−236214号に記載されている結晶化度38%以下のPVAフィルムを用いることができる。
これ以外にも、C.I.Direct Yellow 8、C.I.Direct Yellow 28、C.I.Direct Yellow 86、C.I.Direct Yellow 87、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 72、C.I.Direct Orange 106、C.I.Direct Orange 107、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 39、C.I.Direct Red 83、C.I.Direct Red 89、C.I.Direct Red 240、C.I.Direct Red 242、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Violet 48、C.I.Direct Violet 51、C.I.Direct Violet 98、C.I.Direct Blue 15、C.I.Direct Blue 67、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 98、C.I.Direct Blue 168、C.I.Direct Blue 202、C.I.Direct Blue 236、C.I.Direct Blue 249、C.I.Direct Blue 270、C.I.Direct Green 59、C.I.Direct Green 85、C.I.Direct Brown 44、C.I.Direct Brown 106、C.I.Direct Brown 195、C.I.Direct Brown 210、C.I.Direct Brown 223、C.I.Direct Brown 224、C.I.Direct Black 1、C.I.Direct Black 17、C.I.Direct Black 19、C.I.Direct Black 54等が、さらに特開昭62−70802号、特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開平1−248105号、特開平1−265205号、特開平7−261024号、の各公報記載の二色性染料等も好ましく使用することができる。各種の色相を有する二色性分子を製造するため、これらの二色性染料は2種以上を配合してもかまわない。二色性染料を用いる場合、特開2002−082222号に記載されているように吸着厚みが4μm以上であってもよい。
偏光子の好ましい膜厚としては、5μm〜40μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜30μmである。偏光子の厚さと後述する保護フィルムの厚さの比を、特開2002−174727号に記載されている0.01≦A(偏光子膜厚)/B(保護フィルム膜厚)≦0.16範囲とすることも好ましい。
保護フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸の交差角は、任意の値でよいが、平行もしくは45±20゜の方位角であることが好ましい。
次に、本発明の偏光板の製造工程について説明する。
本発明における偏光板の製造工程は、膨潤工程、染色工程、硬膜工程、延伸工程、乾燥工程、保護フィルム貼り合わせ工程、貼り合わせ後乾燥工程から構成されることが好ましい。染色工程、硬膜工程、延伸工程の順序を任意に変えること、また、いくつかの工程を組み合わせて同時に行っても構わない。また、特許第3331615に記載されているように、硬膜工程の後に水洗することも好ましく行うことができる。
また、膨潤工程の温度、時間は、任意に定めることができるが、10℃以上60℃以下、5秒以上2000秒以下が好ましい。
染色工程は、特開2002−86554に記載の方法を用いることができる。また、染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。また、特開2002−290025号に記載されているように、ヨウ素の濃度、染色浴温度、浴中の延伸倍率、および浴中の浴液を攪拌させながら染色させる方法を用いてもよい。
また、特許第3145747号に記載されているように、染色液にホウ酸、ホウ砂等のホウ素系化合物を添加しても良い。
硬膜工程に用いる架橋剤としてホウ酸を用いる場合には、ホウ酸−ヨウ化カリウム水溶液に金属イオンを添加しても良い。金属イオンとしては塩化亜鉛が好ましいが、特開2000−35512に記載されているように、塩化亜鉛の変わりに、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの亜鉛塩を用いることもできる。
貼り合わせ後乾燥条件は、特開2002−86554に記載の方法に従うが、好ましい温度範囲は30℃〜100℃であり、好ましい乾燥時間は30秒〜60分である。また、特開平07−325220号に記載されているように温湿度管理をした雰囲気でエージングすることも好ましい。
(1)透過率および偏光度
本発明の偏光板の好ましい単板透過率は42.5%以上49.5%以下であるが、さらに好ましくは42.8%以上49.0%以下である。式4で定義される偏光度の好ましい範囲は99.900%以上99.999%以下であり、さらに好ましくは99.940%以上99.995%以下である。平行透過率の好ましい範囲は36%以上42%以下であり、直交透過率の好ましい範囲は、0.001%以上0.05%以下である。次に示す式5で定義される二色性比の好ましい範囲は48以上、1215以下であるが、さらに好ましくは53以上525以下である。
y(λ):XYZ系における等色関数
τ(λ):分光透過率
平行透過率は、特開2001−083328号や特開2002−022950号に記載されているように波長依存性が小さくてもよい。偏光板をクロスニコルに配置した場合の光学特性は、特開2001−091736号に記載されている範囲であってもよく、平行透過率と直交透過率の関係は、特開2002−174728号に記載されている範囲内であってもよい。
本発明の偏光板の色相は、CIE均等知覚空間として推奨されているL*a*b*表色系における明度指数L*およびクロマティクネス指数a*とb*を用いて好ましく評価される。
L*、a*、b*は、上述のX、 Y、 Zを用いて式6で定義される。
偏光板をクロスニコルに配置して波長550nmの光を入射させる場合の、垂直光を入射させた場合と、偏光軸に対して45度の方位から法線に対し40度の角度で入射させた場合の、透過率比やxy色度差を特開2001−166135号や特開2001−166137号に記載された範囲とすることも好ましい。また、特開平10−068817号に記載されているように、クロスニコル配置した偏光板積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)を10000以下としたり、特開2002−139625号に記載されているように、偏光板に法線から仰角80度までの任意な角度で自然光を入射させた場合に、その透過スペクトルの520〜640nmの波長範囲において波長域20nm以内における透過光の透過率差を6%以下としたり、特開平08−248201号に記載されている、フィルム上の任意の1cm離れた場所における透過光の輝度差が30%以内とすることも好ましい。
(4−1)湿熱耐久性
60℃、95%RHの雰囲気に500時間放置した場合のその前後における光透過率及び偏光度の変化率が絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下であることが好ましい。また、特開平07−077608号に記載されているように80℃、90%RH、500時間放置後の偏光度が95%以上、単体透過率が38%以上であることも好ましい。
80℃、ドライ雰囲気下に500時間放置した場合のその前後における光透過率及び偏光度の変化率も絶対値に基づいて3%以下であることが好ましい。特に、光透過率の変化率は2%以下、また、偏光度の変化率は絶対値に基づいて1.0%以下、更には0.1%以下であることが好ましい。
さらに、特開平06−167611号に記載されているように80℃で2時間放置した後の収縮率を0.5%以下としたり、ガラス板の両面にクロスニコル配置した偏光板積層体を69℃の雰囲気中で750時間放置した後のx値及びy値を特開平10−068818号に記載されている範囲内としたり、80℃、90%RHの雰囲気中で200時間放置処理後のラマン分光法による105cm−1及び157cm−1のスペクトル強度比の変化を、特開平08−094834号や特開平09−197127号に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
PVAの配向度は高い程良好な偏光性能が得られるが、偏光ラマン散乱や偏光FT−IR等の手段によって算出されるオーダーパラメーター値として0.2〜1.0が好ましい範囲である。また、特開昭59−133509号に記載されているように、偏光子の全非晶領域の高分子セグメントの配向係数と占領分子の配向係数(0.75以上)との差を少なくとも0.15としたり、特開平04−204907号に記載されているように偏光子の非晶領域の配向係数を0.65〜0.85としたり、I3 −やI5 ―の高次ヨウ素イオンの配向度を、オーダーパラメーター値として0.8〜1.0とすることも好ましく行うことができる。
特開2002−006133号に記載されているように、80℃30分加熱したときの単位幅あたりの吸収軸方向の収縮力を4.0N/cm以下としたり、特開2002−236213号に記載されているように、偏光板を70℃の加熱条件下に120時間置いた場合に、偏光板の吸収軸方向の寸法変化率及び偏光軸方向の寸法変化率を、共に±0.6%以内としたり、偏光板の水分率を特開2002−090546号に記載されているように3質量%以下とすることも好ましく行うことができる。さらに、特開2000−249832号に記載されているように延伸軸に垂直な方向の表面粗さを中心線平均粗さに基づいて0.04μm以下としたり、特開平10−268294号に記載されているように透過軸方向の屈折率n0 を1.6より大きくしたり、偏光板の厚みと保護フィルムの厚みの関係を特開平10−111411号に記載された範囲とすることも好ましく行うことができる。
本発明の偏光板は、LCDの視野角拡大フィルム、反射型LCDに適用するためのλ/4板等の位相差フィルム、ディスプレイの視認性向上のための反射防止フィルム、輝度向上フィルムや、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層等の機能層を有する光学フィルムと複合した機能化偏光板として好ましく使用される。
本発明の偏光板と上述の機能性光学フィルムを複合した構成例を図1に示した。偏光板5の片側の保護フィルムとして機能性光学フィルム3と偏光子2を粘着層を介して接着しても良いし(図1(A))、偏光子2の両面に保護フィルム1a、1bを設けた偏光板5に粘着層4を介して機能性光学フィルム3を接着しても良い(図1(B))。前者の場合、もう一方の保護フィルム1には任意の透明保護フィルムを使用してもよい。また、本発明の偏光板においては、保護フィルムに光学機能層を粘着層を介して貼り合わせ、機能性光学フィルム3として、図1(A)の構成とすることも好ましい。機能層や保護フィルム等の各層間の剥離強度は特開2002−311238号に記載されている4.0N/25mm以上とすることも好ましい。機能性光学フィルムは、目的とする機能に応じて液晶モジュール側に配置したり、液晶モジュールとは反対側、すなわち表示側もしくはバックライト側に配置することが好ましい。
以下に本発明の偏光板と複合して使用される機能性光学フィルムについて説明する。
(1)視野角拡大フィルム
本発明の偏光板は、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードに提案されている視野角拡大フィルムと組み合わせて使用することができる。
TNモード用の視野角拡大フィルムの好ましい構成は、前述の透明なポリマーフィルム上に配向層と光学異方性層をこの順に有したものである。視野角拡大フィルムは粘着剤を介して偏光板と貼合され、用いられてよいが、SID’00 Dig.、p.551(2000)に記載されているように、前記偏光子の保護フィルムの一方も兼ねて使用されることが薄手化の観点から特に好ましい。
光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい
本発明の偏光板は、位相差層を有することが好ましい。本発明における位相差層としてはλ/4板が好ましく、本発明の偏光板とλ/4板とを積層させることで、円偏光板として使用することができる。円偏光板は入射した光を円偏光に変換する機能を有しており、反射型液晶表示装置やECBモードなどの半透過型液晶表示装置、あるいは有機EL素子等に好ましく利用されている。
本発明の偏光板は反射防止フィルムと組み合わせて使用することができる。反射防止フィルムは、フッ素系ポリマー等の低屈折率素材を単層付与しただけの反射率1.5%程度のフィルム、もしくは薄膜の多層干渉を利用した反射率1%以下のフィルムのいずれも使用できる。本発明では、透明支持体上に低屈折率層、及び低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)を積層した構成が好ましく使用される。また、日東技報,38巻, 1号(5月),26頁〜28頁(2000)や特開2002−301783号公報などに記載された反射防止フィルムも好ましく使用できる。
各層の屈折率は以下の関係を満足する。
含シリコーン化合物はポリシロキサン構造を有する化合物が好ましいが、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製)や両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報)等を使用することもできる。シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化させてもよい(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報、特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)。
低屈折率層には、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有させることも好ましく行うことができる。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
本発明の偏光板は、輝度向上フィルムと組み合わせて使用することができる。輝度向上フィルムは、円偏光もしくは直線偏光の分離機能を有しており、偏光板とバックライトの間に配置され、一方の円偏光もしくは直線偏光をバックライト側に後方反射もしくは後方散乱する。バックライト部からの再反射光は、部分的に偏光状態を変化させ、輝度向上フィルムおよび偏光板に再入射する際、部分的に透過するため、この過程を繰り返すことにより光利用率が向上し、正面輝度が1.4倍程度に向上する。輝度向上フィルムとしては異方性反射方式および異方性散乱方式が知られており、いずれも本発明の偏光板と組み合わせることができる。
本発明の偏光板は、さらに、ハードコート層、前方散乱層、アンチグレア(防眩)層、ガスバリア層、滑り層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けた機能性光学フィルムと組み合わせて使用することも好ましい。また、これらの機能層は、前述の反射防止フィルムにおける反射防止層、あるいは視野角補償フィルムにおける光学異方性層等と同一層内で相互に複合して使用することも好ましい。これらの機能層は、偏光子側および偏光子と反対面(より空気側の面)のどちらか片面、もしくは両面の設けて使用できる。
本発明の偏光板は耐擦傷性等の力学的強度を付与するため、ハードコート層を透明支持体の表面に設けた機能性光学フィルムと組み合わせることが好ましく行われる。ハードコート層を、前述の反射防止フィルムに適用して用いる場合は、特に、透明支持体と高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光及び/又は熱による硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、又加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、WO0/46617号公報等記載のものを好ましく使用することができる。
ハードコート層の膜厚は、0.2〜100μmであることが好ましい。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
前方散乱層は、本発明の偏光板を液晶表示装置に適用した際の、上下左右方向の視野角特性(色相と輝度分布)改良するために使用される。本発明では、屈折率の異なる微粒子をバインダー分散した構成が好ましく、例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等の構成を使用することができる。また、本発明の偏光板をヘイズの視野角特性を制御するため、住友化学の技術レポート「光機能性フィルム」31頁〜39頁に記載された「ルミスティ」と組み合わせて使用することも好ましく行うことができる。
アンチグレア(防眩)層は、反射光を散乱させ映り込みを防止するために使用される。アンチグレア機能は、液晶表示装置の最表面(表示側)に凹凸を形成することにより得られる。アンチグレア機能を有する光学フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
フィルム表面に凹凸を形成する方法は、例えば、微粒子を添加して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成する方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、フィルム表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等を好ましく使用することができる。
次に本発明の偏光板が使用される液晶表示装置について説明する。
図2は、本発明の偏光板が使用される液晶表示装置の一例である。
なお、ツイスト角は、ノートパソコンやパソコンモニタ、テレビ用の液晶表示装置の場合は90°近傍(85から95°)に、携帯電話などの反射型表示装置として使用する場合は0から70°に設定する。またIPSモードやECBモードでは、ツイスト角が0°となる。IPSモードでは電極が下側基板13のみに配置され、基板面に平行な電界が印加される。また、OCBモードでは、ツイスト角がなく、チルト角を大きくされ、VAモードでは液晶分子12が上下基板に垂直に配向する。
上側偏光板6の吸収軸7と下側偏光板17の吸収軸18の交差角は一般に概略直交に積層することで高コントラストが得られる。液晶セルの上側偏光板6の吸収軸7と上側基板10のラビング方向の交差角は液晶表示モードによってことなるが、TN、IPSモードでは一般に平行か垂直に設定する。OCB、ECBモードでは45°に設定することが多い。ただし、表示色の色調や視野角の調整のために各表示モードで最適値が異なり、この範囲に限定されるわけではない。
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
<セルロースアセテート溶液の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
セルロースアシレート溶液A組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル化度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
トリフェニルフォスフェート(可塑剤) 8.0質量部
ビフェニルフォスフェート(可塑剤) 4.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
マット剤溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 75.0質量部
メタノール(第2溶媒) 12.7質量部
セルロースアシレート溶液A 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション発現剤溶液を調製した。
レターデーション発現剤溶液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤(B-5) 20.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液A 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートの種類、レターデーション発現剤の種類、添加量、延伸倍率を表1の内容に変更した以外は同様にしてセルロースアシレートフィルム2〜4を作製した。
(セルロースアシレートフィルム5の作製)
<セルロースアセテート溶液の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Bを調製した。
セルロースアシレート溶液B組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル化度1.95、プロピオニル化度0.90のセルロースアシレート
100.0質量部
トリフェニルフォスフェート(可塑剤) 9.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 3.5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 362.0質量部
エタノール(第2溶媒) 100.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
マット剤溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 75.0質量部
エタノール(第2溶媒) 12.7質量部
セルロースアシレート溶液B 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液を調製した。
レターデーション発現剤溶液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤(B-5) 7.5質量部
紫外線吸収剤(A) 4.0質量部
紫外線吸収剤(B) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 75.2質量部
エタノール(第2溶媒) 11.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートの種類、レターデーション発現剤の種類、添加量、延伸倍率を表1の内容に変更した以外は同様にしてセルロースアシレートフィルム5〜6を作製した。
(セルロースアシレートフィルム8の作製)
<セルロースアセテート溶液Cの調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Dを調製した。
セルロースアシレート溶液C組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル化度1.80、プロピオニル化度0.90のセルロースアシレート
100.0質量部
トリフェニルフォスフェート(可塑剤) 9.0質量部
エチルフタリルエチルグリコレート(可塑剤) 3.5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 442.0質量部
エタノール(第2溶媒) 20.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
マット剤溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 83.0質量部
エタノール(第2溶媒) 4.7質量部
セルロースアシレート溶液C 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線吸収剤(A) 14.0質量部
紫外線吸収剤(B) 6.0質量部
レターデーション発現剤
(特開平2003-344655の例示化合物I-2) 10.5質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 54.4質量部
エタノール(第2溶媒) 2.3質量部
セルロースアシレート溶液C 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線吸収剤(A)
(セルロースアシレートフィルム9の作製)
実施例1のセルロースアシレートフィルム1において、マット剤溶液とセルロースアシレート溶液Aを混合後レターデーション発現剤溶液を混合した以外は同様にして、セルロースアシレートフィルム9を作製した。
(セルロースアシレートフィルム10の作製)
実施例1のセルロースアシレートフィルム2において、マット剤溶液とセルロースアシレート溶液Aを混合後レターデーション発現剤溶液を混合した以外は同様にして、セルロースアシレートフィルム10を作製した。
フイルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。
フィルムの熱膨張係数はティー・エイ・インスツルメント社製TMA2940、荷重0.04Nで30℃より80℃まで3℃/分の昇温させ、1℃あたりの寸度変化を測定した。
X線回折による配向度は以下のようにして求めた。
理学電機製 RINT RAPIDでX線源にはCu管球を用い、40kV−36mAでX線を発生した。コリメーターは0.8mmf、フィルム試料は透過試料台を用いて固定した。また、露光時間は600秒とした。
マット剤の2次平均粒径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒径とした。
結果を表2に示す。
(鹸化処理)
セルロースアシレートフィルム 1〜10を、2.3規定の水酸化ナトリウム水溶液に、60℃で1分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに110℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフィルムの表面をケン化した。
さらに市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を同条件で鹸化し、実施例7の試料作製に供した。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例6で鹸化処理したセルロースアシレートフィルム1を偏光子の片側に貼り付けた。偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。
さらに実施例6で鹸化処理したフジタックTD80UFをポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の反対側に貼り付けた。このようにして偏光板(1)を作製した。
〔VA液晶表示装置の作成と評価1〕
ポリビニルアルコール3質量%水溶液に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(カップリング剤)を1質量%添加した。これを、ITO電極付のガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるようにした。セルギャップ(d)が5μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.08)を注入し、垂直配向液晶セルを作成した。Δnとdとの積は400nmであった。
25℃60%の環境下で、偏光板2を取り出して、作成した垂直配向液晶セルの両面に、粘着シートを用いて貼り付けて、液晶表示装置2を作製した。
偏光板3〜6、8、10についても同様にして液晶表示装置3〜6、8、10を作製した。
このようにして作製した液晶表示装置について黒表示における正面、及び方位角45°及び−45°、極角45°及び−45°におけるコントラストを測定した。結果を表3に示す。
〔VA液晶表示装置の作成と評価2〕
図3の液晶表示装置を作製した。即ち、観察方向(上)から上側偏光板、VAモード液晶セル(上基板、液晶層、下基板)、下側偏光板を積層し、さらにバックライト光源を配置した。以下の例では、上側偏光板に市販品の偏光板(HLC2−5618)を用いて、下側偏光板に本発明の偏光板を使用した。
液晶セルは、基板間のセルギャップを3.6μmとし、負の誘電率異方性を有する液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を基板間に滴下注入して封入し、基板間に液晶層を形成して作製した。液晶層のリターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を300nmとした。なお、液晶材料は垂直配向するように配向させた。
このようにして作製した液晶表示装置について黒表示における正面、及び方位角45°及び−45°、極角45°及びー45°におけるコントラストを測定した結果、偏光板(1)を用いた本発明の液晶表示装置は正面コントラストが高く、かつ視野角依存性も小さく、好ましく、偏光板(9)を用いた比較例の液晶表示装置よりも顕著に優れていることがわかった。
(セルロースアシレートフィルム11の作製)
<セルロースアセテート溶液の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
セルロースアシレート溶液D組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル化度2.80のセルロースアセテート 100.0質量部
トリフェニルフォスフェート(可塑剤) 7.6質量部
ビフェニルフォスフェート(可塑剤) 3.8質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 414.0質量部
メタノール(第2溶媒) 61.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
マット剤溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 74.4質量部
メタノール(第2溶媒) 11.1質量部
セルロースアシレート溶液D 12.4質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション発現剤溶液を調製した。
レターデーション発現剤溶液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤(A-107) 20.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 57.3質量部
メタノール(第2溶媒) 8.6質量部
セルロースアシレート溶液D 14.1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレートの種類、レターデーション発現剤の種類、添加量、マット剤、レターデーション発現剤及びドープ中のセルロースアシレート濃度、支持体上の乾燥条件、延伸温度、延伸時の残量溶剤含量、延伸倍率を表4の内容に変更した以外は同様にしてセルロースアシレートフィルム12〜17を作製した。
レターデーション、面内配向度P、ヘイズ、マット剤の2次平均粒径は実施例5と同様にして測定した。
<Tg測定>
フィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃60%RHで2時間以上調湿した後に動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA-225(アイティー計測制御株式会社製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定した。縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる貯蔵弾性率の急激な減少を固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いた。
この直線1と直線2の交点は、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度すなわち、ガラス転移領域に移行し始める温度であり、これをガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
共焦点レーザー顕微鏡観察は、Lasertec社製のVL2000Dを用いて行った。レーザー光源には波長410 nmのGaN固体ブルーレーザーを用いた。コントラストおよび空間分解能向上のために、対物レンズに水浸観察用150倍レンズ(NA=1.25)を使用し、水浸観察を行った。10μm×10μm四方3箇所について、最長方向の長さが0.2μm以上3μm以下のサイズの微粒子数を数え、3箇所の平均を算出した。
理学電機(株)製“RAPID R−AXIS”により、X線源にはCuを回転対陰極として用い、50kV−100mAでX線を発生させた。コリメーターは0.8mmφ、フィルム試料は透過試料台を用いて固定した。また、露光時間は180秒とした。このようにして2θ=25°及び27°における回折強度を読み取り、下記式(A)により結晶化指数を求めた。
(A) 結晶化指数=(2θが27°のX線回折強度)/(2θが25°のX線回折強度)
2 偏光子
3 機能性光学フィルム
4 粘着層
5 偏光板
6 上側偏光板
7 上側偏光板吸収軸
8 上側光学異方性層
9 上側光学異方性層配向制御方向
10 液晶セル上電極基板
11 上側基板配向制御方向
12 液晶分子
13 液晶セル下電極基板
14 下側基板配向制御方向
15 下側光学異方性層
16 下側光学異方性層配向制御方向
17 下側偏光板
18 下側偏光板吸収軸
30 上側偏光板
31 VAモード液晶セル
32 下側偏光板
33 セルロースアシレートフィルム
34 偏光子
Claims (20)
- 波長590nmにおける面内レターションReと厚み方向レターデーションRthが下記式(I)〜(III)の範囲を満たし、ヘイズが0.01以上0.8以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(I) 20≦Re≦50
式(II) 70≦Rth≦200
式(III) 1.0≦Rth/Re≦3.0
Re及びRthは、25℃,60%RHにおける値であり、その単位は、nmである。 - 波長590nmにおける面内レターションReと厚み方向レターデーションRthが下記式(IV)及び(V)の範囲を満たし、面内と厚み方向のレターデーションの関係が下記式 (VI)を満たし、かつヘイズが0.01以上0.8以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(IV) 50<Re≦200
式(V) 150≦Rth≦400
式(VI) 2.0≦Rth/Re≦10.0
Re及びRthは、25℃,60%RHにおける値であり、その単位は、nmである。 - 熱膨張係数が20ppm/℃以上100ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 添加剤と一次平均粒子径が1nm以上20nm以下のマット剤を含有し、マット剤の2次平均粒子径が0.05μm以上1.05μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 共焦点レーザー顕微鏡により観察される0.2μ以上3μ以下の微粒子の1mm2あたりの個数が20個以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 添加剤とマット剤溶液をセルロースアシレート濃度が0.01質量%以上5質量%未満の状態で混合した後、セルロースアシレート濃度が5質量%以上35質量%以下のドープと混合した液を支持体上に流延し、支持体上で乾燥し、剥ぎ取った後、フィルムを搬送方向および/又は幅方向に1%以上100%以下延伸して得られたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記マット剤と事前混合される添加剤が紫外線吸収剤、可塑剤、レターデーション発現剤、レターデーション低減剤、劣化防止剤のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項6に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 下式(A)で表される結晶化指数が0.80以上1.10以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(A) 結晶化指数=(2θが27°のX線回折強度)/(2θが25°のX線回折強度) - 固形分濃度が17質量%以上25質量%以下であるドープ液を支持体に流延し、流延直後から風速1m/min以上の風をあてて乾燥することにより製造されたことを特徴とする請求項1〜8に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 支持体上の乾燥温度と風量が下記関係を満たす工程を経て製造されたことを特徴とする請求項1〜9に記載のセルロースアシレートフィルム。
支持体前半部での{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)}>支持体後半の乾燥における{乾燥風の平均温度(℃)×乾燥風の平均風速(m/min)} - (溶剤含量が0.5%未満におけるフィルムのガラス転移点−30℃)以上(溶剤含量が0.5%未満におけるフィルムのガラス転移点+10℃)以下の温度かつ下記式で表される残留溶剤含量が1質量%以上30質量%以下の状態で延伸されたことを特徴とする請求項1〜10に記載のセルロースアシレートフィルム。
(残留溶剤含量)=(フィルム中に含まれる溶剤の質量)/(フィルム全体の質量) - X線回折から求めた面内配向度が0.20以上0.50以下であることを特徴とする請求項1〜11に記載のセルロースアシレートフィルム。
- レターデーション発現剤が下記一般式(B)で表される棒状のレターデーション発現剤であることを特徴とする請求項1〜12に記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(B)
Ar1−L1−X−L2−Ar2
(式中、Ar1、Ar2はアリール基または芳香族ヘテロ環を表す。L1、L2は−C(=O)O−、−C(=O)NR−を表す(Rは水素原子またアルキル基を表す。)。Xは下記一般式(2)または一般式(3)を表す。)
一般式(2)
一般式(3)
- レターデーション発現剤が下記一般式(4)で表される棒状のレターデーション発現剤であることを特徴とする請求項1〜12に記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(4)
- セルロースアシレートがアセチル化度2.5以上2.95以下のセルロースアセテートであることを特徴とする請求項1〜14に記載のセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレートがアシル基としてアセチル基と炭素数3以上22以下のアシル基とを有しており、かつアセチル基の置換度Aと炭素数3〜22のアシル基の置換度Bが下記式(VII)及び(VIII)を満たすことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(VII) 2.0≦A+B≦3.0
(VIII) 0.1≦A≦2.5
レターデーション発現剤レターデーション発現剤レターデーション発現剤レターデーション発現剤レターデーション発現剤レターデーション発現剤レターデーション発現剤レターデーション発現剤 - レターデーション発現剤レターデーション発現剤を含有し、レターデーション発現剤レターデーション発現剤溶液とマット剤溶液をセルロースアシレート濃度が0.01質量%以上5質量%未満の状態で混合した後、セルロースアシレート濃度が5質量%以上35質量%以下のドープと混合した液を流延し、フィルムを搬送方向および/あるいは幅方向に1%以上100%以下延伸して請求項1〜16のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを得ることを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 偏光子の両側に保護フィルムが貼り合わされてなる偏光板において、該保護フィルムの少なくとも1枚が請求項1〜16のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
- 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板を有し、少なくとも1つの偏光板が請求項18に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
- 液晶セルがVAモードであることを特徴とする請求項19に記載の液晶表示装置。
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