JP2004108161A - 筒内噴射式内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することのできる筒内噴射式内燃機関を提供する。
【解決手段】吸気ポート16の開口16aの外縁のうち燃料噴射弁21の燃料噴射口22に隣接する側を覆う隔壁30を形成するとともに、その隔壁30の燃料噴射口22に隣接する部分に開口部31を形成する。それにより、吸気バルブ18の開放に伴って吸気ポート16から燃焼室15へ導入される吸気の一部が、燃料噴射口22に集中して向かうようになるため、吸気行程初期の燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進される。
【選択図】 図1
【解決手段】吸気ポート16の開口16aの外縁のうち燃料噴射弁21の燃料噴射口22に隣接する側を覆う隔壁30を形成するとともに、その隔壁30の燃料噴射口22に隣接する部分に開口部31を形成する。それにより、吸気バルブ18の開放に伴って吸気ポート16から燃焼室15へ導入される吸気の一部が、燃料噴射口22に集中して向かうようになるため、吸気行程初期の燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼室に燃料を直接噴射するようにした筒内噴射式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃焼室内に燃料噴射弁から燃料を直接噴射するようにした筒内噴射式の内燃機関では、圧縮行程時に燃料を噴射することにより、点火プラグの近傍に燃料濃度の高い混合気を偏在させた成層燃焼を行うようにしている。一方、こうした成層燃焼を行う内燃機関にあっても、高負荷時や始動時等には、吸気行程中に燃料を噴射することにより、燃焼室内に均質な混合気を形成する均質燃焼を行うようにしている。
【0003】
但し、こうした筒内噴射式の内燃機関にあっては、吸気ポートに燃料が噴射される吸気ポート噴射式の内燃機関とは異なり、噴射燃料と空気との混合時間が十分に確保されにくい。その結果、燃料の微粒化が促進されず、これに起因する燃焼状態の悪化を招くことがある。
【0004】
そこで従来、吸気ポート等の周囲に隔壁を配設したり(例えば、特許文献1〜3参照)、燃焼室に空気噴射弁を配設して燃焼室内に直接空気を噴射したり(例えば、特許文献4参照)することで、燃焼室内の気流を制御して燃料の微粒化を促進する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−23522号公報
【特許文献2】
特開昭49−116407号公報
【特許文献3】
特開平10−252477号公報
【特許文献4】
特開平10ー331642号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、筒内噴射式内燃機関では、吸気行程噴射に際して燃料噴射の開始時期が遅れると、噴射燃料の気化や空気との混合のための時間が十分に確保されずに燃焼状態が悪化して、排気中の炭化水素(HC)等の増大や燃料消費効率の悪化といった不具合を招いてしまう。そのため、吸気行程噴射時の燃料の噴射完了時期をある程度よりも早くすることが望ましいが、それには燃料の噴射開始時期を早める必要があり、高負荷・高回転時には、吸気行程初期から燃料噴射を開始しなければならなくなる。
【0007】
ただし、吸気行程初期には、吸気ポートから燃焼室内に導入される吸気の量は未だ少なく、噴射された燃料の微粒化や気化、空気との混合等を十分に行うことができない状態となっている。そのため、吸気行程初期に燃料を噴射すれば、燃料の燃焼性が低下して、排気エミッションの悪化を招くこととなる。
【0008】
更に筒内噴射式内燃機関では、ピストンが上死点近傍に位置する吸気行程初期に燃料を噴射すると、噴射した燃料がピストン頂面に直接吹き付けられて付着してしまう。こうしてピストン頂面に付着した燃料は、その後に噴射された燃料の燃焼による筒内温度の上昇に応じて気化されて、一応は燃焼されるようになる。しかしながら、そうして気化された燃料は、十分に空気と混合されにくく、不完全燃焼されやすい。そのため、付着した燃料の多くは、煤等の未燃燃料成分に変成してしまい、排気中の粒子状物質(PM)の増加や黒煙(スモーク)の発生の要因となってしまう。
【0009】
このように筒内噴射式内燃機関では、排気エミッションに対する懸念から吸気行程初期には燃料を噴射できないため、燃料の噴射開始時期の早期化には限度がある。そのため、上記のような燃料噴射開始時期の遅延に伴う不具合をある程度は享受せざるを得ないのが実情となっている。
【0010】
なお、上記特許文献1〜4に示されるような燃焼室内の気流制御に係る構成を採用すれば、燃料の微粒化が促進されて燃焼状態が向上するため、上記のような燃料噴射の完了時期の遅延に伴う不具合をある程度に抑制することはできる。しかしながら、それら構成では、吸気行程初期に噴射された燃料のピストン頂面への付着を抑制することまでは困難であり、吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化についての有効な対策とはなっていない。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することのできる筒内噴射式内燃機関を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
〔請求項1〕
請求項1に記載の発明は、燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、吸気行程初期に、前記燃焼室内の前記燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成させる気流制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、吸気行程初期には、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流が、すなわち流速の高い気流が形成されるようになる。そしてその気流によって、吸気行程初期に燃料噴射弁から噴射された燃料が、噴射後、直ちに撹拌されるようになる。これにより、燃焼室内への吸気の導入量が未だ少ない吸気行程初期においても、噴射した燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進されるようになる。またこれにより、ピストン頂面への付着が抑制されるようにもなる。従って、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。更にその結果、燃料の噴射開始時期の早期化が許容されるため、排気中の炭化水素等の増大や燃料消費効率悪化といった噴射完了時期の遅延に伴う不具合を抑制することが可能にもなる。
【0014】
ちなみに、吸気行程初期に限り、或いは吸気行程初期に燃料を噴射するときに限り、上記気流を発生させるようにすれば、吸気行程中期以降の燃焼室内でのタンブル流やスワール流などの形成に、上記気流の影響が及ばないようになる。よって、そうした場合には、燃焼室内の気流状態を、吸気行程初期とその中期以降との状況の違いに応じて容易且つ適切に変化させることができる。
【0015】
〔請求項2〕
請求項2に記載の発明は、燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、吸気ポートから前記燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部の流れを前記燃料噴射口の近傍に向かうように案内する気流制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、吸気ポートから燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部が、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に向かうように流されるようになる。その結果、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流が形成され、燃料噴射弁から噴射された燃料が、噴射後、直ちに撹拌されるようになる。そのため、燃焼室内への吸気の導入量が未だ少ない吸気行程初期においても、噴射した燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進されるようになる。またこれにより、ピストン頂面への付着が抑制されるようにもなる。従って、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。更にその結果、燃料の噴射開始時期の早期化が許容されるため、排気中の炭化水素等の増大や燃料消費効率悪化といった噴射完了時期の遅延に伴う不具合を抑制することが可能にもなる。
【0017】
〔請求項3〕
請求項3に記載の発明は、燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、吸気ポートから前記燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部が集中して前記燃料噴射口の近傍に向かうように吸気を案内する気流制御手段を備えることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、吸気ポートから燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部が、集中して燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に向かうようになる。そのため、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に形成される局所的な気流をより強くすることができ、請求項2に記載の構成の効果をより確実に奏することができるようになる。
【0019】
〔請求項4〕
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記気流制御手段は、前記吸気ポートの開口外周の少なくとも前記燃料噴射口に隣接する側の近傍を覆うように形成された隔壁と、その隔壁の前記燃料噴射口に隣接する部分に形成された開口部とを備えてなることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、吸気ポートの開口からその外周に向かう吸気の流れが隔壁によって規制され、吸気が開口部に集中して燃料噴射口の近傍に向かうように流されるようになる。よって、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を、より確実に形成させることができる。
【0021】
〔請求項5〕
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記隔壁は、燃焼室頂面の前記吸気ポートの開口外縁に沿って形成されていることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、吸気ポートの開口外縁に沿って隔壁が設けられているため、燃料噴射口の近傍の局所的な強い気流を、より確実且つ容易に形成することができる。
【0023】
〔請求項6〕
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記隔壁は、吸気バルブ弁体の上面に、その外周に沿って形成されていることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、吸気バルブの弁体の上面、すなわち機関燃料室側とは反対側の面に隔壁が形成される。こうした構成によっても、燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成することができる。しかも、この場合には、燃焼室頂面につきだした部分を追加する必要がないため、吸気行程以外の燃焼室内での気流状態や燃料の燃焼状態などに与える影響を低く抑えることができる。
【0025】
〔請求項7〕
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、前記隔壁の高さは、前記燃焼室内への吸気バルブの最大リフト量よりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、吸気バルブのリフト量が隔壁の高さに達するまでは、燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流が形成される。一方、吸気バルブのリフト量がそれ以上となると、吸気が隔壁を乗り越えて流れるようになるため、吸気の流れを規制する隔壁を形成したことによる吸気の導入効率の低下が抑えられるようになる。従って、上記構成によれば、吸気行程初期には、燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成させながらも、吸気行程中期以降には、比較的多量の吸気の導入を許容することができるようになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
図1は、筒内噴射式内燃機関10の燃焼室15近傍の側部断面構造を示している。同図1に示されるように、筒内噴射式内燃機関10は、シリンダブロック11と、同シリンダブロック11の上面を覆うように設けられるシリンダヘッド12とを備えて構成されている。シリンダブロック11は、筒内噴射式内燃機関10の気筒数と同数のシリンダボア13(図1にはその一つのみを示す)を有し、各シリンダボア13には、上下動可能に配設されたピストン14がそれぞれ収容されている。また、シリンダボア13の内周面とピストン14の頂面とシリンダヘッド12の下面とにより区画される空間には、燃焼室15が形成されている。
【0028】
シリンダヘッド12の内部には、吸気通路の一部を構成する吸気ポート16と、排気通路の一部を構成する排気ポート17とが各気筒に2つずつ形成されている。またシリンダヘッド12の内部には、吸気ポート16及び排気ポート17を燃焼室15に対してそれぞれ開閉する吸気バルブ18、排気バルブ19が揺動可能に設けられている。ちなみに、同図1は、吸気ポート16及び排気ポート17の双方が閉じられた状態を示している。
【0029】
更に、シリンダヘッド12には、各気筒の燃焼室15にそれぞれ対応して点火プラグ20及び燃料噴射弁21が取り付けられている。燃料噴射弁21は、燃料噴射口22の形成された先端部を燃焼室15に露出させた状態で取り付けられている。
【0030】
図2は、こうしたシリンダヘッド12に形成される燃焼室15の頂面部分、すなわち燃焼室頂面15aの平面構造を示している。同図2に示されるように、燃焼室頂面15aには、吸気ポート16の開口16a、及び排気ポート17の開口17aがそれぞれ2つずつ、互いに隣り合う位置に形成されている。またそれら4つの開口16a、17aによって囲繞された燃焼室頂面15aの略中央には、点火プラグ20が取り付けられるプラグ取付孔20aが形成されている。更に燃焼室頂面15aの吸気ポート16の2つの開口16aの間には、燃料噴射弁21が取り付けられる噴射弁取付孔21aが形成されている。
【0031】
更に本実施形態の筒内噴射式内燃機関10には、そのシリンダヘッド12の燃焼室頂面15aに、吸気ポート16から燃焼室15内に導入される吸気を案内するための隔壁30が形成されている。また隔壁30は、吸気ポート16の各開口16aの外周の噴射弁取付孔21aに隣接する側の近傍を覆うように、各開口16aの外縁に沿ってそれぞれ形成されている。更に各隔壁30は、噴射弁取付孔21aに最も近接したその周方向中央で分断されている。そうした隔壁30の分断された部分は、燃料噴射弁21の燃料噴射口22に向けて吸気を流出させるための開口部31となっている。
【0032】
次に本実施形態での隔壁30の高さHの設定態様を、図3を併せ参照して説明する。図3には、この筒内噴射式内燃機関10の一気筒における吸気行程初期及びその前後のピストン位置の推移、及び吸気バルブ18のバルブリフト量の推移が示されている。
【0033】
同図3に示されるように、筒内噴射式内燃機関10のピストン14は、吸気行程に先立つ排気行程において、下死点から上死点に向けて上昇される。吸気バルブ18は、ピストン14が上死点の近傍の位置P1に上昇されるまでの期間aには閉弁されている。そしてピストン14が上記位置P1に達した排気行程末期から開弁され始め、その後、吸気バルブ18のバルブリフト量は増大されていく。
【0034】
ピストン14が上死点から下降され始めると、開弁された吸気バルブ18を介して吸気ポート16から燃焼室15内に吸気が導入され始め、吸気行程が開始される。ただし吸気行程の開始直後、すなわち吸気行程初期には、吸気バルブ18のバルブリフト量は小さく、またピストン14の下降速度も低いため、吸気の導入量は限られている。同図3では、吸気行程の開始からピストン14が位置P2に下降されるまでの期間bが、そうした吸気行程初期に相当している。
【0035】
ピストン14が上記位置P2まで下降された後の吸気行程中期(期間c)では、吸気バルブ18のバルブリフト量、及びピストン14の下降速度が十分に増大されるため、多量の吸気が導入されるようになる。なお、吸気バルブ18のバルブリフト量の増大は、ピストン14が上死点と下死点との中間付近に下降される時点まで続けられる。このときの最大となった吸気バルブ18のバルブリフト量を、すなわち全開時の吸気バルブ18のバルブリフト量を「最大リフト量」という。
【0036】
本実施形態では、上記のような吸気バルブ18のバルブリフト量の推移に対応して、上記隔壁30の高さHが設定されている。具体的には、隔壁30の高さHは、吸気行程初期が終わった時点の、すなわちピストン14が上記位置P2まで下降された時点の吸気バルブ18のバルブリフト量とほぼ一致するように設定されている。この筒内噴射式内燃機関10では、そうした隔壁30の高さHは、2〜3mmとなっている。
【0037】
続いて、以上説明したように構成された本実施形態の作用を、図4を併せ参照して説明する。図4には、こうした隔壁30が開口16aの外縁に形成された吸気ポート16近傍の断面構造が示されている。なお、同図(a)には、吸気バルブ18が全閉されている上記期間aの状態が示されている。また同図(b)には、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さに達する前の上記期間bの状態が、すなわち吸気行程初期の状態が示されている。更に同図(c)には、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さHを超えた後の上記期間cの状態が、すなわち吸気行程中期の状態が示されている。
【0038】
さて、吸気バルブ18が開弁され、ピストン14が上死点から下降され始めると、吸気ポート16から燃焼室15内への吸気の導入が開始される。このとき、吸気ポート16を通過した吸気は、吸気バルブ18の弁体と同吸気ポート16の開口16aとの間の隙間から周囲に広がるように流出しようとする。
【0039】
ただし、この筒内噴射式内燃機関10では、吸気行程初期(期間b)には、吸気ポート16の開口16aの周囲にあってその燃料噴射弁21の燃料噴射口22に隣接する側の近傍では、吸気バルブ18の弁体と開口16aとの間に形成されるはずの隙間が隔壁30によって塞がれている。これにより開口16aの外周側への流出が規制された吸気の多くは、同図(b)に矢印で示されるように、隔壁30の周方向中央に形成された開口部31に向かい、その開口部31から流出される。こうして開口部31から流出される吸気は、その開口部31にて絞られることで流速が高められている。そのため、この筒内噴射式内燃機関10では、吸気行程初期に、燃料噴射弁21の燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流が形成されるようになる。なお、そうした吸気行程初期での吸気の導入態様は、図2にも矢印で示されている。このように本実施の形態では、この隔壁30及び開口部31によって上記気流制御手段が構成されている。
【0040】
こうした吸気行程初期に燃料噴射弁21から燃料噴射が行われると、燃料は、燃料噴射口22から噴射された後、その近傍に形成された強い気流によって、直ちに撹拌されるようになる。そのため、吸気の導入量の少ない吸気行程初期であれ、噴射した燃料の微粒化や気化、空気との混合が好適に促進されるようになる。また、これにより、ピストン14が上死点近傍に位置する吸気行程初期であれ、噴射した燃料のピストン14の頂面への付着が好適に抑制されるようにもなる。
【0041】
一方、吸気行程中期(期間c)には、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さHを超えるため、同図(c)に示すように、吸気バルブ18の弁体はその全周に亘って開かれた状態となる。よって吸気ポート16を通って開口16aまで送られた吸気は、隔壁30の設けられた側にも流出可能となり、燃焼室15内への多量の吸気導入が許容されるようになる。また、これにより、例えばタンブル流やスワール流などのような吸気行程中期の燃焼室15内での気流形成に、隔壁30が与える影響が好適に抑制されるようにもなる。
【0042】
以上のように本実施形態では、隔壁30により形成される気流によって、噴射燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進され、またピストン14の頂面に対する燃料付着も抑制されるため、PMの増加やスモークの発生といった吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化を好適に抑制することができる。そしてその結果として、排気エミッション性能を好適に維持可能な燃料噴射開始時期の限界を排気行程側に拡げることができるようにもなる。
【0043】
また、こうした燃料噴射開始時期の早期化に伴い、高回転全負荷運転時の筒内噴射式内燃機関10の出力性能が向上されるようにもなる。以下にその理由を、図5を参照して説明する。
【0044】
筒内噴射式内燃機関では、吸気行程中に燃料を噴射させると、その燃料の気化潜熱によって燃焼室内の吸気を冷却してその密度を高めることで、機関全負荷運転時の体積効率を向上することができる。そうした体積効率向上には、吸気行程のうちでも、より多量の吸気が導入されている時期に燃料噴射を実施することが好ましい。そこで、同図(a)に示されるように、燃料噴射期間の中央を、吸気導入量が最大となる時期、すなわち最大吸気時期と一致させるように燃料噴射期間を設定すれば、そうした燃料の気化潜熱による体積効率の向上効果を最大限に享受できるようになる。
【0045】
なお、高回転運転時には機関サイクルの周期が短くなるため、噴射される燃料の量は同一でも、クランク角単位の燃料噴射期間は、すなわち噴射完了までのクランクシャフトの回転角は大きくなる。そこで、そうした高回転運転時に、燃料噴射期間の中央を最大吸気時期と一致させるように燃料噴射期間を設定すれば、同図(b)に示されるように、噴射開始時期が、スモークの発生を許容レベル内に維持可能な噴射開始時期の限界、すなわちスモーク発生限界よりも早い時期となることがある。従って、そうした場合には、同図(c)に示されるように、噴射開始時期をスモーク発生限界以降とすべく、燃料噴射期間全体を圧縮行程側にずらさざるを得なくなり、上記のような体積効率の向上効果を最大限に享受することはできなくなってしまう。
【0046】
その点、本実施形態の筒内噴射式内燃機関10では、上記のように吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化を抑えられるため、スモーク発生限界は従来よりも排気行程側となっている。その結果、高回転全負荷運転時においても、同図(b)に示されるような体積効率向上に最適な燃料噴射時期の設定が許容されやすくなる。またそうした最適な設定ができない場合にも、最適な時期からの燃料噴射時期のずれを比較的少なくすることができる。従って、本実施形態の筒内噴射式内燃機関10では、排気エミッションの悪化を抑えながらも、燃料の気化潜熱による体積効率の向上効果をより多く享受することができるようになり、高回転全負荷運転時の出力性能が向上されるようになる。
【0047】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態では、燃焼室頂面15aに隔壁30を形成することで、吸気行程初期に、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成している。そのため、吸気行程初期に燃料噴射口22から噴射される燃料は、噴射後、直ちに撹拌されて、微粒化や気化が促進されるとともに、空気との混合も促進される。また、これにより、燃料のピストン14頂面への付着が抑制されるようにもなる。従って、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。
【0048】
(2)本実施の形態では、吸気ポート16の開口16aのうち、燃料噴射口22に隣接する側の近傍のみに隔壁30を設けている。そのため、隔壁30によってその流れを規制されない吸気はそのまま燃焼室15内に放出されるようになり、吸気導入効率の低下を抑制することができる。
【0049】
(3)本実施の形態では、隔壁30を燃焼室頂面15aの吸気ポート16の開口16a外縁に沿って形成している。そのため、燃料噴射口22近傍への局所的な強い気流をより確実且つ容易に形成することができる。
【0050】
(4)本実施の形態では、隔壁30の高さHを吸気行程初期の吸気バルブ18のバルブリフト量に合わせて設定している。そのため、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さHに達するまでは、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流が形成される。一方、吸気バルブ18のバルブリフト量がそれ以上となると、吸気が隔壁30を乗り越えて流れるようになるため、吸気の流れを規制する隔壁30を形成したことによる吸気の導入効率の低下が抑えられるようになる。従って、吸気行程初期には、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成させながらも、吸気行程中期には、比較的多量の吸気の導入を許容することができるようになる。
【0051】
(5)本実施の形態では、燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができるため、燃料噴射時期をより早期に設定することが可能となる。そのため、高回転全負荷運転時の筒内噴射式内燃機関10の出力性能を向上することができる。
【0052】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、隔壁30の高さHを吸気行程初期のバルブリフト量に設定したが、この高さHは任意である。少なくとも、吸気行程初期において、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができれば、上記(1)〜(3)に記載のものと同様の効果を得ることはできる。
【0053】
・上記実施の形態では、隔壁30を吸気ポート16の開口16aの外縁のうち燃料噴射口22に隣接する側の近傍のみに設けるとともに、開口部31を隔壁30の最も燃料噴射口22に近い部分に設けている。こうした隔壁30の態様は、これに限らず適宜変更しても良い。例えば、図6に示されるように、開口16aの外縁を囲むように隔壁30を形成するとともに、燃料噴射口22に最も近い部分に、すなわち燃焼室頂面15aの噴射弁取付孔21aに最も近い部分に、開口部31を形成するようにしてもよい。このようにした場合でも、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができるため、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。
【0054】
・また、隔壁の態様は、開口16aの外縁を囲むものに限られず、例えば、図7に示されるようにしてもよい。すなわち、吸気ポート16の2つの開口16aの間を横切り、燃料噴射口22の噴射弁取付孔21aから点火プラグ20のプラグ取付孔20aまで伸びる隔壁40と、燃焼室頂面15aの外縁に沿ってその内側に、開口16aから噴射弁取付孔21aまで伸びる隔壁50とを形成する。そして、この隔壁40と隔壁50とによって開口部45を形成する。このような構成によっても、一部の吸気が燃料噴射口22へ案内されるため、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができる。
【0055】
・上記実施の形態では、隔壁30は、燃焼室頂面15aに設けられていたが、隔壁30は、例えば図8に示されるように、吸気バルブ18の弁体18aの上面にその外周に沿って形成するようにしても良い。こうした構成によっても、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができる。しかも、この場合には、吸気バルブ18が開かれたときのみ気流が形成されるため、吸気行程以外の燃焼室15内での気流状態や燃料の燃焼状態などに与える影響を低く抑えることができる。
【0056】
・上記実施の形態では、燃焼室頂面や吸気バルブの弁体等に設けられた隔壁によって、吸気行程初期に燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成するようにしている。ただし、隔壁等以外の他の手段によってそうした気流を形成しても、吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化を好適に抑制することは可能である。例えば、次のような空気噴射弁を設けることによっても、そうした気流を形成することができる。すなわち、図9に示されるように、空気噴射弁60を、燃焼室頂面15aに形成された燃料噴射口22に近接するように形成する。空気噴射弁60及び燃料噴射弁21は、筒内噴射式内燃機関10の各種制御を実行する電子制御装置61に信号線を介して接続されている。電子制御装置61には、上死点センサ62やクランク角センサ63が接続され、それら各センサの検出信号が入力されるようにもなっている。
【0057】
空気噴射弁60の制御手段である電子制御装置61は、図10に示されるように、ピストン14が上死点付近に位置し、吸気バルブ18が開放される吸気行程初期(期間b)に、空気噴射弁60の空気噴射圧を高め、空気を燃料噴射弁21の燃料噴射口22に向けて噴射する。そしてそれにより、燃料噴射口22から噴射される燃料は、噴射後、直ちに撹拌されて、微粒化や気化が促進されるようになり、空気との混合も促進される。従って、こうした構成によっても、上記(1)、(4)、(5)に記載のものと同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、こうした空気噴射弁60の空気噴射を、吸気行程初期から吸気行程中期にかけて行うとともに、その空気噴射圧を、同図10に一点鎖線で示されるように、吸気行程初期に限って高めるようにしても良い。その場合にも、吸気行程初期に燃料噴射口22近傍に局所的な強い気流が形成されるため、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
次に、上記各実施形態から把握できる他の技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記気流制御手段は、前記燃料噴射弁に隣接して形成されて前記燃料噴射口近傍に空気を噴射する空気噴射弁と、吸気行程初期に高圧の空気を噴射させるように前記空気噴射弁を制御する制御手段と、を備えてなる請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の筒内噴射式内燃機関の燃焼室近傍の側部断面図。
【図2】同実施形態のシリンダヘッドの燃焼室頂面部分の平面図。
【図3】同実施形態のピストン位置とバルブリフト量の推移を示すグラフ。
【図4】同実施形態の吸気ポート近傍の側部断面図。
【図5】同実施形態のバルブリフト量と燃料噴射期間との関係を示すグラフ。
【図6】同実施形態の変形例1の燃焼室頂面の平面図。
【図7】同実施形態の変形例2の燃焼室頂面の平面図。
【図8】同実施形態の変形例3の吸気バルブの弁体部分の斜視図。
【図9】同実施形態の変形例4の燃焼室近傍の側部断面図。
【図10】同変形例4の吸気行程中の機関運転状態と空気噴射圧との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
10…筒内噴射式内燃機関、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…シリンダボア、14…ピストン、15…燃焼室、15a…燃焼室頂面、16…吸気ポート、16a…開口、17…排気ポート、17a…開口、18…吸気バルブ、18a…弁体、19…排気バルブ、20…点火プラグ、20a…プラグ取付孔、21…燃料噴射弁、21a…噴射弁取付孔、22…燃料噴射口、30…隔壁、31…開口部、40…隔壁、45…開口部、50…隔壁、60…空気噴射弁、61…電子制御装置、62…上死点センサ、63…クランク角センサ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼室に燃料を直接噴射するようにした筒内噴射式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃焼室内に燃料噴射弁から燃料を直接噴射するようにした筒内噴射式の内燃機関では、圧縮行程時に燃料を噴射することにより、点火プラグの近傍に燃料濃度の高い混合気を偏在させた成層燃焼を行うようにしている。一方、こうした成層燃焼を行う内燃機関にあっても、高負荷時や始動時等には、吸気行程中に燃料を噴射することにより、燃焼室内に均質な混合気を形成する均質燃焼を行うようにしている。
【0003】
但し、こうした筒内噴射式の内燃機関にあっては、吸気ポートに燃料が噴射される吸気ポート噴射式の内燃機関とは異なり、噴射燃料と空気との混合時間が十分に確保されにくい。その結果、燃料の微粒化が促進されず、これに起因する燃焼状態の悪化を招くことがある。
【0004】
そこで従来、吸気ポート等の周囲に隔壁を配設したり(例えば、特許文献1〜3参照)、燃焼室に空気噴射弁を配設して燃焼室内に直接空気を噴射したり(例えば、特許文献4参照)することで、燃焼室内の気流を制御して燃料の微粒化を促進する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭56−23522号公報
【特許文献2】
特開昭49−116407号公報
【特許文献3】
特開平10−252477号公報
【特許文献4】
特開平10ー331642号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、筒内噴射式内燃機関では、吸気行程噴射に際して燃料噴射の開始時期が遅れると、噴射燃料の気化や空気との混合のための時間が十分に確保されずに燃焼状態が悪化して、排気中の炭化水素(HC)等の増大や燃料消費効率の悪化といった不具合を招いてしまう。そのため、吸気行程噴射時の燃料の噴射完了時期をある程度よりも早くすることが望ましいが、それには燃料の噴射開始時期を早める必要があり、高負荷・高回転時には、吸気行程初期から燃料噴射を開始しなければならなくなる。
【0007】
ただし、吸気行程初期には、吸気ポートから燃焼室内に導入される吸気の量は未だ少なく、噴射された燃料の微粒化や気化、空気との混合等を十分に行うことができない状態となっている。そのため、吸気行程初期に燃料を噴射すれば、燃料の燃焼性が低下して、排気エミッションの悪化を招くこととなる。
【0008】
更に筒内噴射式内燃機関では、ピストンが上死点近傍に位置する吸気行程初期に燃料を噴射すると、噴射した燃料がピストン頂面に直接吹き付けられて付着してしまう。こうしてピストン頂面に付着した燃料は、その後に噴射された燃料の燃焼による筒内温度の上昇に応じて気化されて、一応は燃焼されるようになる。しかしながら、そうして気化された燃料は、十分に空気と混合されにくく、不完全燃焼されやすい。そのため、付着した燃料の多くは、煤等の未燃燃料成分に変成してしまい、排気中の粒子状物質(PM)の増加や黒煙(スモーク)の発生の要因となってしまう。
【0009】
このように筒内噴射式内燃機関では、排気エミッションに対する懸念から吸気行程初期には燃料を噴射できないため、燃料の噴射開始時期の早期化には限度がある。そのため、上記のような燃料噴射開始時期の遅延に伴う不具合をある程度は享受せざるを得ないのが実情となっている。
【0010】
なお、上記特許文献1〜4に示されるような燃焼室内の気流制御に係る構成を採用すれば、燃料の微粒化が促進されて燃焼状態が向上するため、上記のような燃料噴射の完了時期の遅延に伴う不具合をある程度に抑制することはできる。しかしながら、それら構成では、吸気行程初期に噴射された燃料のピストン頂面への付着を抑制することまでは困難であり、吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化についての有効な対策とはなっていない。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することのできる筒内噴射式内燃機関を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
〔請求項1〕
請求項1に記載の発明は、燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、吸気行程初期に、前記燃焼室内の前記燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成させる気流制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、吸気行程初期には、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流が、すなわち流速の高い気流が形成されるようになる。そしてその気流によって、吸気行程初期に燃料噴射弁から噴射された燃料が、噴射後、直ちに撹拌されるようになる。これにより、燃焼室内への吸気の導入量が未だ少ない吸気行程初期においても、噴射した燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進されるようになる。またこれにより、ピストン頂面への付着が抑制されるようにもなる。従って、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。更にその結果、燃料の噴射開始時期の早期化が許容されるため、排気中の炭化水素等の増大や燃料消費効率悪化といった噴射完了時期の遅延に伴う不具合を抑制することが可能にもなる。
【0014】
ちなみに、吸気行程初期に限り、或いは吸気行程初期に燃料を噴射するときに限り、上記気流を発生させるようにすれば、吸気行程中期以降の燃焼室内でのタンブル流やスワール流などの形成に、上記気流の影響が及ばないようになる。よって、そうした場合には、燃焼室内の気流状態を、吸気行程初期とその中期以降との状況の違いに応じて容易且つ適切に変化させることができる。
【0015】
〔請求項2〕
請求項2に記載の発明は、燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、吸気ポートから前記燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部の流れを前記燃料噴射口の近傍に向かうように案内する気流制御手段を備えることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、吸気ポートから燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部が、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に向かうように流されるようになる。その結果、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流が形成され、燃料噴射弁から噴射された燃料が、噴射後、直ちに撹拌されるようになる。そのため、燃焼室内への吸気の導入量が未だ少ない吸気行程初期においても、噴射した燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進されるようになる。またこれにより、ピストン頂面への付着が抑制されるようにもなる。従って、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。更にその結果、燃料の噴射開始時期の早期化が許容されるため、排気中の炭化水素等の増大や燃料消費効率悪化といった噴射完了時期の遅延に伴う不具合を抑制することが可能にもなる。
【0017】
〔請求項3〕
請求項3に記載の発明は、燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、吸気ポートから前記燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部が集中して前記燃料噴射口の近傍に向かうように吸気を案内する気流制御手段を備えることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、吸気ポートから燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部が、集中して燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に向かうようになる。そのため、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に形成される局所的な気流をより強くすることができ、請求項2に記載の構成の効果をより確実に奏することができるようになる。
【0019】
〔請求項4〕
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記気流制御手段は、前記吸気ポートの開口外周の少なくとも前記燃料噴射口に隣接する側の近傍を覆うように形成された隔壁と、その隔壁の前記燃料噴射口に隣接する部分に形成された開口部とを備えてなることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、吸気ポートの開口からその外周に向かう吸気の流れが隔壁によって規制され、吸気が開口部に集中して燃料噴射口の近傍に向かうように流されるようになる。よって、燃料噴射弁の燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を、より確実に形成させることができる。
【0021】
〔請求項5〕
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記隔壁は、燃焼室頂面の前記吸気ポートの開口外縁に沿って形成されていることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、吸気ポートの開口外縁に沿って隔壁が設けられているため、燃料噴射口の近傍の局所的な強い気流を、より確実且つ容易に形成することができる。
【0023】
〔請求項6〕
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記隔壁は、吸気バルブ弁体の上面に、その外周に沿って形成されていることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、吸気バルブの弁体の上面、すなわち機関燃料室側とは反対側の面に隔壁が形成される。こうした構成によっても、燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成することができる。しかも、この場合には、燃焼室頂面につきだした部分を追加する必要がないため、吸気行程以外の燃焼室内での気流状態や燃料の燃焼状態などに与える影響を低く抑えることができる。
【0025】
〔請求項7〕
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、前記隔壁の高さは、前記燃焼室内への吸気バルブの最大リフト量よりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、吸気バルブのリフト量が隔壁の高さに達するまでは、燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流が形成される。一方、吸気バルブのリフト量がそれ以上となると、吸気が隔壁を乗り越えて流れるようになるため、吸気の流れを規制する隔壁を形成したことによる吸気の導入効率の低下が抑えられるようになる。従って、上記構成によれば、吸気行程初期には、燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成させながらも、吸気行程中期以降には、比較的多量の吸気の導入を許容することができるようになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態について図1〜図5を参照して説明する。
図1は、筒内噴射式内燃機関10の燃焼室15近傍の側部断面構造を示している。同図1に示されるように、筒内噴射式内燃機関10は、シリンダブロック11と、同シリンダブロック11の上面を覆うように設けられるシリンダヘッド12とを備えて構成されている。シリンダブロック11は、筒内噴射式内燃機関10の気筒数と同数のシリンダボア13(図1にはその一つのみを示す)を有し、各シリンダボア13には、上下動可能に配設されたピストン14がそれぞれ収容されている。また、シリンダボア13の内周面とピストン14の頂面とシリンダヘッド12の下面とにより区画される空間には、燃焼室15が形成されている。
【0028】
シリンダヘッド12の内部には、吸気通路の一部を構成する吸気ポート16と、排気通路の一部を構成する排気ポート17とが各気筒に2つずつ形成されている。またシリンダヘッド12の内部には、吸気ポート16及び排気ポート17を燃焼室15に対してそれぞれ開閉する吸気バルブ18、排気バルブ19が揺動可能に設けられている。ちなみに、同図1は、吸気ポート16及び排気ポート17の双方が閉じられた状態を示している。
【0029】
更に、シリンダヘッド12には、各気筒の燃焼室15にそれぞれ対応して点火プラグ20及び燃料噴射弁21が取り付けられている。燃料噴射弁21は、燃料噴射口22の形成された先端部を燃焼室15に露出させた状態で取り付けられている。
【0030】
図2は、こうしたシリンダヘッド12に形成される燃焼室15の頂面部分、すなわち燃焼室頂面15aの平面構造を示している。同図2に示されるように、燃焼室頂面15aには、吸気ポート16の開口16a、及び排気ポート17の開口17aがそれぞれ2つずつ、互いに隣り合う位置に形成されている。またそれら4つの開口16a、17aによって囲繞された燃焼室頂面15aの略中央には、点火プラグ20が取り付けられるプラグ取付孔20aが形成されている。更に燃焼室頂面15aの吸気ポート16の2つの開口16aの間には、燃料噴射弁21が取り付けられる噴射弁取付孔21aが形成されている。
【0031】
更に本実施形態の筒内噴射式内燃機関10には、そのシリンダヘッド12の燃焼室頂面15aに、吸気ポート16から燃焼室15内に導入される吸気を案内するための隔壁30が形成されている。また隔壁30は、吸気ポート16の各開口16aの外周の噴射弁取付孔21aに隣接する側の近傍を覆うように、各開口16aの外縁に沿ってそれぞれ形成されている。更に各隔壁30は、噴射弁取付孔21aに最も近接したその周方向中央で分断されている。そうした隔壁30の分断された部分は、燃料噴射弁21の燃料噴射口22に向けて吸気を流出させるための開口部31となっている。
【0032】
次に本実施形態での隔壁30の高さHの設定態様を、図3を併せ参照して説明する。図3には、この筒内噴射式内燃機関10の一気筒における吸気行程初期及びその前後のピストン位置の推移、及び吸気バルブ18のバルブリフト量の推移が示されている。
【0033】
同図3に示されるように、筒内噴射式内燃機関10のピストン14は、吸気行程に先立つ排気行程において、下死点から上死点に向けて上昇される。吸気バルブ18は、ピストン14が上死点の近傍の位置P1に上昇されるまでの期間aには閉弁されている。そしてピストン14が上記位置P1に達した排気行程末期から開弁され始め、その後、吸気バルブ18のバルブリフト量は増大されていく。
【0034】
ピストン14が上死点から下降され始めると、開弁された吸気バルブ18を介して吸気ポート16から燃焼室15内に吸気が導入され始め、吸気行程が開始される。ただし吸気行程の開始直後、すなわち吸気行程初期には、吸気バルブ18のバルブリフト量は小さく、またピストン14の下降速度も低いため、吸気の導入量は限られている。同図3では、吸気行程の開始からピストン14が位置P2に下降されるまでの期間bが、そうした吸気行程初期に相当している。
【0035】
ピストン14が上記位置P2まで下降された後の吸気行程中期(期間c)では、吸気バルブ18のバルブリフト量、及びピストン14の下降速度が十分に増大されるため、多量の吸気が導入されるようになる。なお、吸気バルブ18のバルブリフト量の増大は、ピストン14が上死点と下死点との中間付近に下降される時点まで続けられる。このときの最大となった吸気バルブ18のバルブリフト量を、すなわち全開時の吸気バルブ18のバルブリフト量を「最大リフト量」という。
【0036】
本実施形態では、上記のような吸気バルブ18のバルブリフト量の推移に対応して、上記隔壁30の高さHが設定されている。具体的には、隔壁30の高さHは、吸気行程初期が終わった時点の、すなわちピストン14が上記位置P2まで下降された時点の吸気バルブ18のバルブリフト量とほぼ一致するように設定されている。この筒内噴射式内燃機関10では、そうした隔壁30の高さHは、2〜3mmとなっている。
【0037】
続いて、以上説明したように構成された本実施形態の作用を、図4を併せ参照して説明する。図4には、こうした隔壁30が開口16aの外縁に形成された吸気ポート16近傍の断面構造が示されている。なお、同図(a)には、吸気バルブ18が全閉されている上記期間aの状態が示されている。また同図(b)には、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さに達する前の上記期間bの状態が、すなわち吸気行程初期の状態が示されている。更に同図(c)には、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さHを超えた後の上記期間cの状態が、すなわち吸気行程中期の状態が示されている。
【0038】
さて、吸気バルブ18が開弁され、ピストン14が上死点から下降され始めると、吸気ポート16から燃焼室15内への吸気の導入が開始される。このとき、吸気ポート16を通過した吸気は、吸気バルブ18の弁体と同吸気ポート16の開口16aとの間の隙間から周囲に広がるように流出しようとする。
【0039】
ただし、この筒内噴射式内燃機関10では、吸気行程初期(期間b)には、吸気ポート16の開口16aの周囲にあってその燃料噴射弁21の燃料噴射口22に隣接する側の近傍では、吸気バルブ18の弁体と開口16aとの間に形成されるはずの隙間が隔壁30によって塞がれている。これにより開口16aの外周側への流出が規制された吸気の多くは、同図(b)に矢印で示されるように、隔壁30の周方向中央に形成された開口部31に向かい、その開口部31から流出される。こうして開口部31から流出される吸気は、その開口部31にて絞られることで流速が高められている。そのため、この筒内噴射式内燃機関10では、吸気行程初期に、燃料噴射弁21の燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流が形成されるようになる。なお、そうした吸気行程初期での吸気の導入態様は、図2にも矢印で示されている。このように本実施の形態では、この隔壁30及び開口部31によって上記気流制御手段が構成されている。
【0040】
こうした吸気行程初期に燃料噴射弁21から燃料噴射が行われると、燃料は、燃料噴射口22から噴射された後、その近傍に形成された強い気流によって、直ちに撹拌されるようになる。そのため、吸気の導入量の少ない吸気行程初期であれ、噴射した燃料の微粒化や気化、空気との混合が好適に促進されるようになる。また、これにより、ピストン14が上死点近傍に位置する吸気行程初期であれ、噴射した燃料のピストン14の頂面への付着が好適に抑制されるようにもなる。
【0041】
一方、吸気行程中期(期間c)には、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さHを超えるため、同図(c)に示すように、吸気バルブ18の弁体はその全周に亘って開かれた状態となる。よって吸気ポート16を通って開口16aまで送られた吸気は、隔壁30の設けられた側にも流出可能となり、燃焼室15内への多量の吸気導入が許容されるようになる。また、これにより、例えばタンブル流やスワール流などのような吸気行程中期の燃焼室15内での気流形成に、隔壁30が与える影響が好適に抑制されるようにもなる。
【0042】
以上のように本実施形態では、隔壁30により形成される気流によって、噴射燃料の微粒化や気化、空気との混合が促進され、またピストン14の頂面に対する燃料付着も抑制されるため、PMの増加やスモークの発生といった吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化を好適に抑制することができる。そしてその結果として、排気エミッション性能を好適に維持可能な燃料噴射開始時期の限界を排気行程側に拡げることができるようにもなる。
【0043】
また、こうした燃料噴射開始時期の早期化に伴い、高回転全負荷運転時の筒内噴射式内燃機関10の出力性能が向上されるようにもなる。以下にその理由を、図5を参照して説明する。
【0044】
筒内噴射式内燃機関では、吸気行程中に燃料を噴射させると、その燃料の気化潜熱によって燃焼室内の吸気を冷却してその密度を高めることで、機関全負荷運転時の体積効率を向上することができる。そうした体積効率向上には、吸気行程のうちでも、より多量の吸気が導入されている時期に燃料噴射を実施することが好ましい。そこで、同図(a)に示されるように、燃料噴射期間の中央を、吸気導入量が最大となる時期、すなわち最大吸気時期と一致させるように燃料噴射期間を設定すれば、そうした燃料の気化潜熱による体積効率の向上効果を最大限に享受できるようになる。
【0045】
なお、高回転運転時には機関サイクルの周期が短くなるため、噴射される燃料の量は同一でも、クランク角単位の燃料噴射期間は、すなわち噴射完了までのクランクシャフトの回転角は大きくなる。そこで、そうした高回転運転時に、燃料噴射期間の中央を最大吸気時期と一致させるように燃料噴射期間を設定すれば、同図(b)に示されるように、噴射開始時期が、スモークの発生を許容レベル内に維持可能な噴射開始時期の限界、すなわちスモーク発生限界よりも早い時期となることがある。従って、そうした場合には、同図(c)に示されるように、噴射開始時期をスモーク発生限界以降とすべく、燃料噴射期間全体を圧縮行程側にずらさざるを得なくなり、上記のような体積効率の向上効果を最大限に享受することはできなくなってしまう。
【0046】
その点、本実施形態の筒内噴射式内燃機関10では、上記のように吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化を抑えられるため、スモーク発生限界は従来よりも排気行程側となっている。その結果、高回転全負荷運転時においても、同図(b)に示されるような体積効率向上に最適な燃料噴射時期の設定が許容されやすくなる。またそうした最適な設定ができない場合にも、最適な時期からの燃料噴射時期のずれを比較的少なくすることができる。従って、本実施形態の筒内噴射式内燃機関10では、排気エミッションの悪化を抑えながらも、燃料の気化潜熱による体積効率の向上効果をより多く享受することができるようになり、高回転全負荷運転時の出力性能が向上されるようになる。
【0047】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態では、燃焼室頂面15aに隔壁30を形成することで、吸気行程初期に、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成している。そのため、吸気行程初期に燃料噴射口22から噴射される燃料は、噴射後、直ちに撹拌されて、微粒化や気化が促進されるとともに、空気との混合も促進される。また、これにより、燃料のピストン14頂面への付着が抑制されるようにもなる。従って、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。
【0048】
(2)本実施の形態では、吸気ポート16の開口16aのうち、燃料噴射口22に隣接する側の近傍のみに隔壁30を設けている。そのため、隔壁30によってその流れを規制されない吸気はそのまま燃焼室15内に放出されるようになり、吸気導入効率の低下を抑制することができる。
【0049】
(3)本実施の形態では、隔壁30を燃焼室頂面15aの吸気ポート16の開口16a外縁に沿って形成している。そのため、燃料噴射口22近傍への局所的な強い気流をより確実且つ容易に形成することができる。
【0050】
(4)本実施の形態では、隔壁30の高さHを吸気行程初期の吸気バルブ18のバルブリフト量に合わせて設定している。そのため、吸気バルブ18のバルブリフト量が隔壁30の高さHに達するまでは、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流が形成される。一方、吸気バルブ18のバルブリフト量がそれ以上となると、吸気が隔壁30を乗り越えて流れるようになるため、吸気の流れを規制する隔壁30を形成したことによる吸気の導入効率の低下が抑えられるようになる。従って、吸気行程初期には、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成させながらも、吸気行程中期には、比較的多量の吸気の導入を許容することができるようになる。
【0051】
(5)本実施の形態では、燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができるため、燃料噴射時期をより早期に設定することが可能となる。そのため、高回転全負荷運転時の筒内噴射式内燃機関10の出力性能を向上することができる。
【0052】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、次のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、隔壁30の高さHを吸気行程初期のバルブリフト量に設定したが、この高さHは任意である。少なくとも、吸気行程初期において、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができれば、上記(1)〜(3)に記載のものと同様の効果を得ることはできる。
【0053】
・上記実施の形態では、隔壁30を吸気ポート16の開口16aの外縁のうち燃料噴射口22に隣接する側の近傍のみに設けるとともに、開口部31を隔壁30の最も燃料噴射口22に近い部分に設けている。こうした隔壁30の態様は、これに限らず適宜変更しても良い。例えば、図6に示されるように、開口16aの外縁を囲むように隔壁30を形成するとともに、燃料噴射口22に最も近い部分に、すなわち燃焼室頂面15aの噴射弁取付孔21aに最も近い部分に、開口部31を形成するようにしてもよい。このようにした場合でも、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができるため、吸気行程初期の燃料噴射を、排気エミッションの悪化を好適に抑制しながら実施することができる。
【0054】
・また、隔壁の態様は、開口16aの外縁を囲むものに限られず、例えば、図7に示されるようにしてもよい。すなわち、吸気ポート16の2つの開口16aの間を横切り、燃料噴射口22の噴射弁取付孔21aから点火プラグ20のプラグ取付孔20aまで伸びる隔壁40と、燃焼室頂面15aの外縁に沿ってその内側に、開口16aから噴射弁取付孔21aまで伸びる隔壁50とを形成する。そして、この隔壁40と隔壁50とによって開口部45を形成する。このような構成によっても、一部の吸気が燃料噴射口22へ案内されるため、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができる。
【0055】
・上記実施の形態では、隔壁30は、燃焼室頂面15aに設けられていたが、隔壁30は、例えば図8に示されるように、吸気バルブ18の弁体18aの上面にその外周に沿って形成するようにしても良い。こうした構成によっても、燃料噴射口22の近傍に局所的な強い気流を形成することができる。しかも、この場合には、吸気バルブ18が開かれたときのみ気流が形成されるため、吸気行程以外の燃焼室15内での気流状態や燃料の燃焼状態などに与える影響を低く抑えることができる。
【0056】
・上記実施の形態では、燃焼室頂面や吸気バルブの弁体等に設けられた隔壁によって、吸気行程初期に燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成するようにしている。ただし、隔壁等以外の他の手段によってそうした気流を形成しても、吸気行程初期の燃料噴射に伴う排気エミッションの悪化を好適に抑制することは可能である。例えば、次のような空気噴射弁を設けることによっても、そうした気流を形成することができる。すなわち、図9に示されるように、空気噴射弁60を、燃焼室頂面15aに形成された燃料噴射口22に近接するように形成する。空気噴射弁60及び燃料噴射弁21は、筒内噴射式内燃機関10の各種制御を実行する電子制御装置61に信号線を介して接続されている。電子制御装置61には、上死点センサ62やクランク角センサ63が接続され、それら各センサの検出信号が入力されるようにもなっている。
【0057】
空気噴射弁60の制御手段である電子制御装置61は、図10に示されるように、ピストン14が上死点付近に位置し、吸気バルブ18が開放される吸気行程初期(期間b)に、空気噴射弁60の空気噴射圧を高め、空気を燃料噴射弁21の燃料噴射口22に向けて噴射する。そしてそれにより、燃料噴射口22から噴射される燃料は、噴射後、直ちに撹拌されて、微粒化や気化が促進されるようになり、空気との混合も促進される。従って、こうした構成によっても、上記(1)、(4)、(5)に記載のものと同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、こうした空気噴射弁60の空気噴射を、吸気行程初期から吸気行程中期にかけて行うとともに、その空気噴射圧を、同図10に一点鎖線で示されるように、吸気行程初期に限って高めるようにしても良い。その場合にも、吸気行程初期に燃料噴射口22近傍に局所的な強い気流が形成されるため、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
次に、上記各実施形態から把握できる他の技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記気流制御手段は、前記燃料噴射弁に隣接して形成されて前記燃料噴射口近傍に空気を噴射する空気噴射弁と、吸気行程初期に高圧の空気を噴射させるように前記空気噴射弁を制御する制御手段と、を備えてなる請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の筒内噴射式内燃機関の燃焼室近傍の側部断面図。
【図2】同実施形態のシリンダヘッドの燃焼室頂面部分の平面図。
【図3】同実施形態のピストン位置とバルブリフト量の推移を示すグラフ。
【図4】同実施形態の吸気ポート近傍の側部断面図。
【図5】同実施形態のバルブリフト量と燃料噴射期間との関係を示すグラフ。
【図6】同実施形態の変形例1の燃焼室頂面の平面図。
【図7】同実施形態の変形例2の燃焼室頂面の平面図。
【図8】同実施形態の変形例3の吸気バルブの弁体部分の斜視図。
【図9】同実施形態の変形例4の燃焼室近傍の側部断面図。
【図10】同変形例4の吸気行程中の機関運転状態と空気噴射圧との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
10…筒内噴射式内燃機関、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…シリンダボア、14…ピストン、15…燃焼室、15a…燃焼室頂面、16…吸気ポート、16a…開口、17…排気ポート、17a…開口、18…吸気バルブ、18a…弁体、19…排気バルブ、20…点火プラグ、20a…プラグ取付孔、21…燃料噴射弁、21a…噴射弁取付孔、22…燃料噴射口、30…隔壁、31…開口部、40…隔壁、45…開口部、50…隔壁、60…空気噴射弁、61…電子制御装置、62…上死点センサ、63…クランク角センサ。
Claims (7)
- 燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、
吸気行程初期に、前記燃焼室内の前記燃料噴射口の近傍に局所的な強い気流を形成させる気流制御手段を備える
ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関。 - 燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、
吸気ポートから前記燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部の流れを前記燃料噴射口の近傍に向かうように案内する気流制御手段を備える
ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関。 - 燃料噴射弁の燃料噴射口から燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内噴射式内燃機関において、
吸気ポートから前記燃焼室内に導入される吸気の少なくとも一部が集中して前記燃料噴射口の近傍に向かうように吸気を案内する気流制御手段を備える
ことを特徴とする筒内噴射式内燃機関。 - 前記気流制御手段は、前記吸気ポートの開口外周の少なくとも前記燃料噴射口に隣接する側の近傍を覆うように形成された隔壁と、その隔壁の前記燃料噴射口に隣接する部分に形成された開口部とを備えてなる請求項3に記載の筒内噴射式内燃機関。
- 前記隔壁は、燃焼室頂面の前記吸気ポートの開口外縁に沿って形成されている請求項4に記載の筒内噴射式内燃機関。
- 前記隔壁は、吸気バルブの弁体の上面に、その外周に沿って形成されている請求項4に記載の筒内噴射式内燃機関。
- 前記隔壁の高さは、前記燃焼室内への吸気バルブの最大リフト量よりも小さく形成されている請求項5又は6に記載の筒内噴射式内燃機関。
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