JP2004107624A - ポリエステル樹脂、及びそれからなるフィルム - Google Patents

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Motohiro Munakata
宗像 基浩
Norio Kanbe
神戸 紀郎
Hiroo Yoshitoku
慶徳 簡夫
Yoshitaka Fujimori
藤森 義啓
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Abstract

【目的】フィルムや繊維等に成形するにおける破断や目ヤニの発生等の成形上の問題が抑制され、又、表面均一性に優れたフィルムや繊維等の成形体を得ることができるポリエステル樹脂、及びそれからなるフィルムを提供する。
【構成】テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応或いはエステル交換反応を経て重縮合させて得られたポリエステル樹脂であって、含有される最大径5μm以上の異種物質粒子の数が15個/g以下で、且つ、最大径10μm以上の異種物質粒子の数が1個/g以下であるポリエステル樹脂、及び該ポリエステル樹脂からなるフィルム。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含有される異種物質粒子の数が低減化され、特に、フィルムや繊維等に成形するにおける破断や目ヤニの発生等の成形上の問題が抑制され、又、表面均一性に優れたフィルムや繊維等の成形体を得ることができるポリエステル樹脂、及びそれからなるフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂は、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性、保香性、衛生性等に優れ、又、比較的安価で軽量であるために、フィルムや繊維、及びボトル等として広く用いられている。一方、近年、高速成形化に伴い、例えば、フィルムの破断、繊維の糸切れ、及び目ヤニの発生等の成形上の問題が顕在化すると共に、各種製品においてより高精度化、高速化、高級感等が求められるに伴い、フィルムや繊維等の表面外観が劣るとか、ビデオテープとして画像の乱れが生じるとか、液晶画面の表層として光散乱により画像が見にくくなるとか、或いは、コンデンサーフィルムとして絶縁破壊が生じる等の種々の問題が指摘されている。これらの問題は、樹脂製造時に用いられるアンチモン化合物等の触媒が反応中に生成したアンチモン等の金属やその他化合物等の触媒残渣等として樹脂中に粒子状に存在していることに起因すると考えられている。
【0003】
これに対して、含有される触媒残渣等の異種物質粒子の数を低減化し、これらの問題に解決を与える方法として、例えば、特開平11−152324号公報には、Sb化合物を重合触媒として重合した芳香族ポリエステルであり、該ポリエステル中のSb化合物の量がSb原子量換算で50〜400ppmであり、10μm以上の大きさの異物数がポリエステル1g当たり50個以下である芳香族ポリエステル、が提案されている。しかしながら、本発明者等の検討によると、ここに記載されるポリエステル樹脂では、依然として、前述の問題に解決を与え得る程には異種物質粒子数の低減化は十分とは言えず、市場の要求を十分に満足させ得るには到っていないことが判明した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の従来技術に鑑みてなされたもので、フィルムや繊維等に成形するにおける破断や目ヤニの発生等の成形上の問題が抑制され、又、表面均一性に優れたフィルムや繊維等の成形体を得ることができるポリエステル樹脂、及びそれからなるフィルムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、重縮合時に燐化合物を存在させると共に、特定の金属化合物を共存させ、且つ、それらの化合物間の量比、及び添加位置や添加順序等を規定することにより、重縮合性の低下を伴うことなくこれらの使用量を低減化できると共に、含有される異種物質粒子の粒径が従来公知のものに比べて小さく、その数も少ないポリエステル樹脂を得ることができることを見い出し、本発明に到達したもので、即ち、本発明は、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応或いはエステル交換反応を経て重縮合させて得られたポリエステル樹脂であって、含有される最大径5μm以上の異種物質粒子の数が15個/g以下で、且つ、最大径10μm以上の異種物質粒子の数が1個/g以下であるポリエステル樹脂、及び該ポリエステル樹脂からなるフィルム、を要旨とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応或いはエステル交換反応を経て重縮合させて得られたものである。
【0007】
ここで、テレフタル酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、炭素数1〜4程度のアルキルエステル、及びハロゲン化物等が挙げられる。又、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、及び、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びに、これらの炭素数1〜4程度のアルキルエステル、及びハロゲン化物、等が挙げられる。
【0008】
又、エチレングリコール以外のジオール成分としては、反応系内で副生するジエチレングリコールが挙げられ、その他のジオール成分としては、例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環式ジオール、及び、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等の芳香族ジオール、並びに、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物又はプロピレンオキサイド付加物、等が挙げられる。
【0009】
更に、前記ジオール成分及びジカルボン酸成分以外の共重合成分として、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ヘネイコサノール、オクタコサノール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、シュガーエステル等の三官能以上の多官能成分、等の一種又は二種以上が用いられていてもよい。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体が、ジカルボン酸成分の95モル%以上を占めるのが好ましく、98.5モル%以上を占めるのが更に好ましく、100モル%を占めるのが特に好ましい。又、エチレングリコールが、ジオール成分の95モル%以上を占めるのが好ましく、97モル%以上を占めるのが更に好ましく、98モル%以上を占めるのが特に好ましい。テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体及びエチレングリコールの占める割合が前記範囲未満では、ポリエステル樹脂としての機械的強度、耐熱性等が劣る傾向となる。
【0011】
そして、本発明のポリエステル樹脂は、含有される最大径5μm以上の異種物質粒子の数が15個/g以下で、且つ、最大径10μm以上の異種物質粒子の数が1個/g以下であるものであり、最大径5μm以上の異種質粒子の数は10個/g以下であるのが好ましく、5個/g以下であるのが更に好ましく、又、最大径10μm以上の異種物質粒子の数は0であるのが好ましい。これらの異種物質粒子の数が前記範囲超過では、フィルムや繊維等に成形するにおける破断や目ヤニの発生等の成形上の問題が生じ、又、成形体表面に突起として顕れ、表面均一性及び諸品質に優れたフィルムや繊維等の成形体を得ることが困難となる。
【0012】
尚、ここで、異種物質粒子とは、主として後述する重縮合触媒等の残渣等のポリエステル樹脂とは異種の物質が樹脂中に粒子状に分散して存在するものと考えられ、又、フィルムとしてブロッキング防止のために通常添加される、後述する無機質又は有機質粒子からなる滑剤等も、ここで言う異種物質粒子に含めるものとする。前記異種物質粒子の数は、ポリエステル樹脂を溶融成形して得たフィルムを、位相差顕微鏡で拡大して、画像処理装置にて最大径5μm以上及び最大径10μm以上の異種物質粒子の数をフィルム面積と厚み方向で計測し、ポリエステル樹脂1g当たりに換算して算出したものである。
【0013】
又、本発明のポリエステル樹脂は、固有粘度(〔η〕)が、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒の溶液で30℃で測定した値として、0.55〜0.80dl/gであるのが好ましく、0.58〜0.68dl/gであるのが更に好ましい。固有粘度(〔η〕)が前記範囲未満では、フィルムや繊維等の成形体としての機械的強度、及び透明性等が不足する傾向となり、一方、前記範囲超過では溶融成形性が劣る傾向となる。
【0014】
又、本発明のポリエステル樹脂は、末端カルボキシル基量が60当量/トン以下であるのが好ましい。末端カルボキシル基量が前記範囲超過では、溶融熱安定性が低下し、成形時に樹脂の熱分解や着色が起こり易い傾向となる。
【0015】
又、本発明のポリエステル樹脂は、体積固有抵抗が1×106 〜1×1010Ω・cmであるのが好ましく、1×106 〜1×109 Ω・cmであるのが更に好ましく、1×107 〜5×108 Ω・cmであるのが特に好ましい。体積固有抵抗が前記範囲外では、フィルム等の高速成形性が低下する傾向となる。
【0016】
又、本発明のポリエステル樹脂は、色調として、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値が5以下であるのが好ましく、3以下であるのが更に好ましい。b値が前記範囲超過では、成形体としての色調が黄味がかる傾向となる。
【0017】
前述の如き、異種物質粒子の数が前記範囲であり、固有粘度(〔η〕)、末端カルボキシル基量、体積固有抵抗、及び色座標b値が前記の好ましい範囲を満足する本発明のポリエステル樹脂は、前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分とのエステル化反応或いはエステル交換反応後の重縮合が、燐化合物の存在下になされたものであるのが好ましく、その燐化合物に由来する燐原子としてのポリエステル樹脂中の含有量(P)が0.1ppm以上であるのが好ましく、2ppm以上であるのが更に好ましく、4ppm以上であるのが特に好ましく、又、40ppm以下であるのが好ましく、30ppm以下であるのが更に好ましく、15ppm以下であるのが特に好ましい。燐原子としての含有量(P)が前記範囲未満では、重縮合性は良好であり、異種物質粒子も少なくなるものの、末端カルボキシル基量の増加、体積固有抵抗の増大、及び色調の悪化等の問題が生じ易い傾向となり、一方、前記範囲超過では、重縮合性の低下、異種物質粒子の増加等の問題が生じ易い傾向となる。
【0018】
尚、ここで、燐化合物としては、具体的には、例えば、正燐酸、ポリ燐酸、及び、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(トリエチレングリコール)ホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、トリエチレングリコールアシッドホスフェート等の燐酸エステル等の5価の燐化合物、並びに、亜燐酸、次亜燐酸、及び、トリメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、エチルジエチルホスホノアセテート、トリフェニルホスファイト等の亜燐酸エステル、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属塩等の3価の燐化合物等が挙げられ、中で、5価の燐化合物の燐酸エステルが好ましく、トリメチルホスフェート、エチルアシッドホスフェートが特に好ましい。
【0019】
又、本発明のポリエステル樹脂は、重縮合が、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下になされたものであるのが好ましく、それらの化合物に由来する金属原子としての含有量(S)が0.1ppm以上であるのが好ましく、30ppm以上であるのが更に好ましく、60ppm以上であるのが特に好ましく、又、200ppm以下であるのが好ましく、150ppm以下であるのが更に好ましく、100ppm以下であるのが特に好ましい。これらの金属原子としての含有量(S)が前記範囲未満では、異種物質粒子は少なくなるものの、重縮合性の低下、末端カルボキシル基量の増加、及び色調の悪化等の問題が生じ易い傾向となり、一方、前記範囲超過では、異種物質粒子の増加等の問題が生じ易い傾向となる。
【0020】
又、本発明において、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物としては、アンチモン化合物が好ましく、そのアンチモン化合物に由来するアンチモン原子としての含有量(Sb)の、前記燐原子としての含有量(P)に対する比(Sb/P)が2以上であるのが好ましく、又、45以下であるのが好ましく、22.5以下であるのが更に好ましい。この比(Sb/P)が前記範囲外では、異種物質粒子数と、重縮合性、末端カルボキシル基量、体積固有抵抗、及び色調等とを両立させることが困難な傾向となる。
【0021】
尚、ここで、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、及びガリウム化合物としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ガリウムの酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等の化合物が挙げられる。又、ゲルマニウム化合物としては、具体的には、例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等が挙げられ、中で、二酸化ゲルマニウムが好ましい。又、アンチモン化合物としては、具体的には、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、メトキシアンチモン、トリフェニルアンチモン、アンチモントリスエチレングリコレート等が挙げられ、中で、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモントリスエチレングリコレートが好ましく、三酸化アンチモンが特に好ましい。
【0022】
又、本発明のポリエステル樹脂は、重縮合が、周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下になされたものであるのが好ましく、それらの化合物に由来する金属原子としての含有量(M)が0.1ppm以上であるのが好ましく、10ppm以上であるのが更に好ましく、20ppm以上であるのが特に好ましく、又、100ppm以下であるのが好ましく、70ppm以下であるのが更に好ましく、40ppm以下であるのが特に好ましい。これらの金属原子としての含有量(M)が前記範囲未満では、重縮合性の低下、体積固有抵抗の増大、及び色調の悪化等の問題が生じ易い傾向となり、一方、前記範囲超過では、末端カルボキシル基量の増加等の問題が生じ易い傾向となる。
【0023】
又、本発明において、周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物としては、マグネシウム化合物が好ましく、そのマグネシウム化合物に由来するマグネシウム原子としての含有量(Mg)の、前記燐原子としての含有量(P)に対する比(Mg/P)が1以上であるのが好ましく、又、15以下であるのが好ましく、7以下であるのが更に好ましい。この比(Mg/P)が前記範囲外では、異種物質粒子数と、重縮合性、末端カルボキシル基量、体積固有抵抗、及び色調等とを両立させることが困難な傾向となる。
【0024】
尚、ここで、周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトの化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、鉄、及びコバルト等の、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等、具体的には、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マンガン、水酸化マンガン、酢酸マンガン、安息香酸マンガン、塩化マンガン、マンガンメトキシド、マンガンアセチルアセトナート、酢酸第二鉄、蟻酸コバルト、酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、安息香酸コバルト、蓚酸コバルト、炭酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、コバルトアセチルアセトナート等が挙げられる。中で、マグネシウム化合物が好ましく、酢酸マグネシウムが特に好ましい。
【0025】
又、本発明のポリエステル樹脂は、重縮合が、周期表第4A族のチタン族元素の化合物の共存下になされたものであるのが好ましく、それらの化合物に由来する金属原子(T)としての含有量が0.1ppm以上であるのが好ましく、0.5ppm以上であるのが更に好ましく、1ppm以上であるのが特に好ましく、又、10ppm以下であるのが好ましく、6ppm以下であるのが更に好ましく、3ppm以下であるのが特に好ましい。これらの金属原子(T)としての含有量が前記範囲未満では、重縮合性の低下等の問題が生じ易い傾向となり、一方、前記範囲超過では、色調の悪化等の問題が生じ易い傾向となる。
【0026】
尚、ここで、周期表第4A族のチタン族元素、即ち、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、の化合物としては、これら元素の酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、及びハロゲン化物等が挙げられ、中で、チタン化合物が好ましく、そのチタン化合物として、具体的には、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素若しくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、臭化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、六フッ化チタン酸アンモニウム、チタンアセチルアセトナート等が挙げられ、中で、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウムが好ましく、テトラ−n−ブチルチタネートが特に好ましい。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂は、前記テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応或いはエステル交換反応を経て、好ましくは、前記燐化合物の存在下、更には、前記アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下、又は/及び、前記周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下、又は/及び、前記周期表第4A族のチタン族元素からなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下に重縮合させることにより得られたものであるが、その製造方法は、基本的には、ポリエステル樹脂の慣用の製造方法による。即ち、前記テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、必要に応じて用いられる共重合成分等と共に、スラリー調製槽に投入して攪拌下に混合して原料スラリーとなし、エステル化反応槽で常圧〜加圧下、加熱下で、エステル化反応させ、或いは、エステル交換触媒の存在下にエステル交換反応させた後、得られたエステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物としてのポリエステル低分子量体を重縮合槽に移送し、前記化合物の存在下に、常圧から漸次減圧としての減圧下、加熱下で、溶融重縮合させる。これらは、連続式、回分式のいずれの方法も採り得る。
【0028】
ここで、エステル化反応による場合、原料スラリーの調製は、テレフタル酸を主成分とするシカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分、及び必要に応じて用いられる共重合成分等とを、ジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比を、好ましくは1.02〜2.0、更に好ましくは1.03〜1.7の範囲として混合することによりなされる。
【0029】
又、エステル化反応は、単一のエステル化反応槽、又は、複数のエステル化反応槽を直列に接続した多段反応装置を用いて、エチレングリコールの還流下、且つ、反応で生成する水と余剰のエチレングリコールを系外に除去しながら、エステル化率(原料ジカルボン酸成分の全カルボキシル基のうちジオール成分と反応してエステル化したものの割合)が、通常90%以上、好ましくは93%以上に達するまで行われる。又、得られるエステル化反応生成物としてのポリエステル低分子量体の数平均分子量は500〜5,000であるのが好ましい。
【0030】
エステル化反応における反応条件としては、複数のエステル化反応槽の場合、第1段目のエステル化反応槽における反応温度を、通常240〜270℃、好ましくは245〜265℃、大気圧に対する相対圧力を、通常5〜300kPa(0.05〜3kg/cm2 G)、好ましくは10〜200kPa(0.1〜2kg/cm2 G)とし、最終段における反応温度を、通常250〜280℃、好ましくは255〜275℃、大気圧に対する相対圧力を、通常0〜150kPa(0〜1.5kg/cm2 G)、好ましくは0〜130kPa(0〜1.3kg/cm2 G)とする。尚、各段におけるエステル化率は、その増加量が等しくなるようにするのが好ましい。尚、単一のエステル化反応槽による場合には、前記最終段における反応条件が採られる。
【0031】
尚、前記エステル化反応は、重縮合時に存在させる前記化合物をエステル化反応において添加して行うこととしてもよく、又、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム、或いは、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム等の塩基性化合物等を少量添加しておくことにより、エチレングリコールからのジエチレングリコールの副生を抑制することができる。
【0032】
又、エステル交換反応による場合、エステル交換反応は、単一のエステル交換反応槽、又は、複数のエステル交換反応槽を直列に接続した多段反応装置を用いて、エチレングリコールの還流下、且つ、反応で生成するエステル由来のアルコール成分と余剰のエチレングリコールを系外に除去しながら、エステル交換率(原料ジカルボン酸エステル成分由来の全カルボキシル基のうちジオール成分と反応してエステル交換したものの割合)が、通常99%以上、好ましくは99.5%以上に達するまで行われる。又、得られるエステル交換反応生成物としてのポリエステル低分子量体の数平均分子量は300〜2,000であるのが好ましい。
【0033】
エステル交換反応における反応条件としては、複数のエステル交換反応槽の場合、第1段目のエステル交換反応槽における反応温度を、通常180〜230℃、好ましくは180〜220℃、大気圧に対する相対圧力を、通常5〜300kPa(0.05〜3kg/cm2 G)、好ましくは10〜200kPa(0.1〜2kg/cm2 G)とし、最終段における反応温度を、通常250〜280℃、好ましくは255〜275℃、大気圧に対する相対圧力を、通常0〜150kPa(0〜1.5kg/cm2 G)、好ましくは0〜130kPa(0〜1.3kg/cm2 G)とする。尚、単一のエステル交換反応槽による場合には、エステル交換反応槽における反応温度を、通常150〜280℃、好ましくは150〜250℃、大気圧に対する相対圧力を、通常0〜50kPa(0〜0.5kg/cm2 G)、好ましくは0〜10kPa(0〜0.1kg/cm2 G)、更に好ましくは0〜5kPa(0〜0.05kg/cm2 G)としてエステル交換反応を行う。
【0034】
又、溶融重縮合は、連続式、回分式のいずれの方法も採り得るが、連続式の場合は、複数の溶融重縮合槽を直列に接続した、例えば、第1段目が攪拌翼を備えた完全混合型の反応器、第2段及び第3段目が攪拌翼を備えた横型プラグフロー型の反応器からなる多段反応装置を用いて、減圧下に、副生するエチレングリコールを系外に留出させながら行われる。
【0035】
連続式の溶融重縮合における反応条件としては、複数の重縮合槽の場合、第1段目の重縮合槽における反応温度を、通常250〜290℃、好ましくは260〜280℃、絶対圧力を、通常65〜1.3kPa(500〜10Torr)、好ましくは26〜2kPa(200〜15Torr)とし、最終段における反応温度を、通常265〜300℃、好ましくは270〜295℃、絶対圧力を、通常1.3〜0.013kPa(10〜0.1Torr)、好ましくは0.65〜0.065kPa(5〜0.5Torr)とする。中間段における反応条件としては、それらの中間の条件が選択され、例えば、3段反応装置においては、第2段における反応温度を、通常265〜295℃、好ましくは270〜285℃、絶対圧力を、通常6.5〜0.13kPa(50〜1Torr)、好ましくは4〜0.26kPa(30〜2Torr)とする。
【0036】
一方、回分式の場合は、通常、エステル化反応槽或いはエステル交換反応槽とそれに直列に接続された重縮合槽からなる反応装置を用いて、減圧下に、副生するエチレングリコールを系外に留出させながら行われる。
【0037】
回分式の溶融重縮合における反応条件としては、重縮合槽における反応温度を、通常220〜300℃、好ましくは220〜295℃の範囲で漸次昇温し、絶対圧力を、漸次減圧して、最終圧力を、通常1.3〜0.013kPa(10〜0.1Torr)、好ましくは0.65〜0.065kPa(5〜0.5Torr)とする。
【0038】
本発明において、重縮合時における、前記燐化合物、前記アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物、前記周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物、及び、前記周期表第4A族のチタン族元素からなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物、の反応系への添加は、前記各化合物をエチレングリコール等のアルコールや水等の溶液として行うのが好ましく、各化合物の添加時期は、以下によるのが好ましい。
【0039】
前記燐化合物は、エステル化反応においては、連続式の場合、エステル化率が90%未満の段階で添加されるのが好ましく、具体的には、スラリー調整槽、又は、多段エステル化反応装置における第1段目の反応槽に添加されるのが好ましく、スラリー調整槽に添加されるのが特に好ましい。一方、回分式の場合には、上記添加法の外、エステル化反応終了後に添加されてもよい。又、エステル交換反応反応においては、連続式及び回分式共に、通常、エステル交換反応終了後に添加される。
【0040】
又、前記アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物は、エステル化反応及びエステル交換反応共に、エステル化率或いはエステル交換率が90%以上のエステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物に対して添加されるのが好ましく、連続式の場合、具体的には、当該エステル化率に達した多段エステル化反応装置における最終段のエステル化反応槽、或いは、当該エステル交換率に達した多段エステル交換反応装置における最終段のエステル交換反応槽か、溶融重縮合槽への移送段階のエステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物に添加されるのが好ましく、溶融重縮合槽への移送段階のエステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物に添加されるのが特に好ましい。又、回分式の場合には、具体的には、当該エステル化率或いはエステル交換率に達した時点でエステル化反応槽或いはエステル交換反応槽か、エステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物を移送した後の溶融重縮合槽に添加されるのが好ましい。
【0041】
又、前記周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物は、エステル化反応においては、エステル化率が90%以上のエステル化反応生成物に対して添加されるのが好ましく、連続式の場合、具体的には、当該エステル化率に達した多段エステル化反応装置における2段目若しくは最終段のエステル化反応槽に添加されるのが好ましい。又、回分式の場合、具体的には、当該エステル化率に達した時点でエステル化反応槽に添加されるか、エステル化反応生成物を移送した後の溶融重縮合槽に添加されるのが好ましい。尚、エステル交換反応においては、連続式及び回分式共に、エステル交換反応開始前に添加されるのが好ましい。
【0042】
又、前記周期表第4A族のチタン族元素からなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物は、エステル化反応においては、エステル化率が90%以上のエステル化反応生成物に対して添加されるのが好ましく、連続式の場合、具体的には、当該エステル化率に達した多段エステル化反応装置における最終段のエステル化反応槽か、溶融重縮合槽への移送段階のエステル化反応生成物に添加されるのが好ましい。又、回分式の場合、具体的には、当該エステル化率に達した時点でエステル化反応槽に添加されるか、エステル化反応生成物を移送した後の溶融重縮合槽に添加されるのが好ましい。尚、エステル交換反応においては、連続式及び回分式共に、エステル交換反応終了後に添加されるのが好ましく、溶融重縮合槽に添加されるのが特に好ましい。尚、該化合物の添加は、前記周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の添加より後でなされるのが好ましく、溶融重縮合槽への移送段階以降のエステル化反応生成物或いはエステル交換反応生成物に添加されるのが特に好ましい。
【0043】
前記溶融重縮合により得られた樹脂は、いずれの方法においても、通常、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断してペレット状、チップ状等の粒状体とされ、本発明のポリエステル樹脂が得られる。
【0044】
又、必要に応じて、更に高重合度化を目的として、この溶融重縮合後の粒状体を、例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、大気圧に対する相対圧力として、通常100kPa(1kg/cm2 G)以下、好ましくは20kPa(0.2kg/cm2 G)以下の加圧下で通常5〜30時間程度、或いは、絶対圧力として、通常6.5〜0.013kPa(50〜0.1Torr)、好ましくは1.3〜0.065kPa(10〜0.5Torr)の減圧下で通常1〜20時間程度、通常190〜230℃、好ましくは195〜225℃の温度で加熱することにより、固相重縮合させてもよい。
【0045】
その際、固相重縮合に先立って、不活性ガス雰囲気下、又は、水蒸気雰囲気下或いは水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で、通常120〜200℃、好ましくは130〜190℃で、1分〜4時間程度加熱することにより、樹脂粒状体表面を結晶化させることが好ましい。
【0046】
又、更に、前述の如き溶融重縮合又は固相重縮合により得られた樹脂を、通常、40℃以上の温水に10分以上浸漬させる水処理、或いは、60℃以上の水蒸気又は水蒸気含有ガスに30分以上接触させる水蒸気処理等の処理を施すとか、又は、有機溶剤による処理、或いは、各種鉱酸、有機酸、燐酸等の酸性水溶液による処理、或いは、第1A族金属、第2A族金属、アミン等のアルカリ性水溶液若しくは有機溶剤溶液による処理を施すことにより、重縮合に用いた触媒を失活させることもできる。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂は、例えば、押出成形によってシートに成形した後、熱成形することによってトレイや容器等に成形し、或いは、該シートを二軸延伸してフィルム等とし、包装資材等として有用なものとなる。又、押出成形等によってフィラメント状に成形した後、延伸、或いは紡糸等を施すことにより繊維としても有用なものとなる。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂の前記成形体への成形は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、核剤、可塑剤、着色剤等の、ポリエステル樹脂に通常用いられる添加剤を添加し、常法に従ってなされる。
【0049】
特に、本発明のポリエステル樹脂は、フィルム、就中、二軸延伸フィルムとして好適であり、その成形法としては、ポリエステル樹脂をフィルム若しくはシート状に溶融押出しし、冷却ドラムにより急冷して未延伸フィルム若しくはシートとなし、次いで、該未延伸フィルム若しくはシートを予熱後、縦方向に延伸し、引き続いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法、或いは、縦横方向に同時に二軸延伸する同時二軸延伸法等、従来公知の方法が採られる。その際の延伸倍率は、縦方向及び横方向共、通常2〜6倍の範囲とされ、又、必要に応じて、二軸延伸後、熱固定及び/又は熱弛緩される。尚、二軸延伸フィルムとしての厚みは、通常1〜300μm程度とされる。
【0050】
尚、前記二軸延伸フィルム等のフィルムにおいては、表面のブロッキング防止のために無機質又は有機質粒子からなる滑剤が添加されるのが好ましく、その無機質粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、シリカ、タルク、チタニア、カオリン、マイカ、ゼオライト等、及びそれらのシランカップリング剤、又はチタネートカップリング剤等による表面処理物が、又、有機質粒子としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、架橋樹脂等が、それぞれ挙げられる。又、これら滑剤の粒子径は、平均粒子径が0.05〜4.0μmの範囲にあるのが好ましく、且つ、最大粒子径が4.5μm以下であるのが好ましく、4.0μm以下であるのが更に好ましく、3.0μm以下であるのが特に好ましい。又、それら滑剤の添加量は、通常0.001〜2.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%程度であり、樹脂への添加方法は、特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂製造時のエステル化反応或いはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前に重合系に添加するのが好ましい。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂は、二軸延伸フィルムとしたときの該フィルム表面における突起の数が、以下の(1)、及び(2)を満足するものであるのが好ましい。
(1)高さ0.54μm以上の突起数が24個/20cm2 以下。
(2)高さ0.81μm以上の突起数が4個/20cm2 以下。
【0052】
又、前記(1)における高さ0.54μm以上の突起数は、10/20cm2 以下であるのが更に好ましく、又、前記(2)における高さ0.81μm以上の突起数は、1個/20cm2 以下であるのが更に好ましい。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例1(連続式エステル化法)
スラリー調製槽、及びそれに直列に接続された2段のエステル化反応槽、及び2段目のエステル化反応槽に直列に接続された3段の溶融重縮合槽からなる連続式重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールを重量比で865:485の割合で連続的に供給すると共に、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対して燐原子としての含有量(P)が9ppmとなる量で連続的に添加して、攪拌、混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力50kPa(0.5kg/cm2 G)、平均滞留時間4時間に設定され、反応生成物が存在する第1段目のエステル化反応槽に供給し、次いで、第1段目のエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で260℃、相対圧力5kPa(0.05kg/cm2 G)、平均滞留時間1.5時間に設定された第2段目のエステル化反応槽に連続的に移送して、更にエステル化反応させた。その際、第2段目に設けた上部配管を通じて、酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してマグネシウム原子としての含有量(Mg)が30ppmとなる量で連続的に添加した。尚、以下に示す方法により測定した第1段目、及び第2段目のエステル化率は、各々、85%、95%であった。
【0055】
<エステル化率>
試料を重水素化クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール(重量比7/3)の混合溶媒に濃度3重量%で溶解させた溶液について、核磁気共鳴装置(日本電子社製「JNM−EX270型」)にて、 1H−NMRを測定して各ピークを帰属し、末端カルボキシル基量(Aモル/試料トン)をピークの積分値から計算し、以下の式により、テレフタル酸単位の全カルボキシル基のうちエステル化されているものの割合としてのエステル化率(E%)を算出した。
エステル化率(E)=〔1−A/{(1000000/192.2)×2}〕×100
【0056】
引き続いて、前記で得られたエステル化反応生成物を溶融重縮合槽に移送する際、その移送配管中のエステル化反応生成物に、テトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してチタン原子としての含有量(Ti)が2ppmとなる量で、更に、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してアンチモン原子としての含有量(Sb)が90ppmとなる量で、連続的に添加しつつ、270℃、絶対圧力2.6kPa(20Torr)に設定された第1段目の溶融重縮合槽、次いで、278℃、絶対圧力0.5kPa(4Torr)に設定された第2段目の溶融重縮合槽、次いで、280℃、絶対圧力0.3kPa(2Torr)に設定された第3段目の溶融重縮合槽に連続的に移送して、得られるポリエステル樹脂の固有粘度(〔η〕)が0.65dl/gとなるように各重縮合槽における滞留時間を調整して溶融重縮合させ、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してチップ状粒状体としたポリエステル樹脂を製造した。
【0057】
得られたポリエステル樹脂について、金属原子含有量、最大径5μm以上及び10μm以上の異種物質粒子数、固有粘度、末端カルボキシル基量、体積固有抵抗、及び色調を、以下に示す方法により測定し、結果を表1に示した。
【0058】
<金属原子含有量>
樹脂試料2.5gを、硫酸存在下に過酸化水素で常法により灰化、完全分解後、蒸留水にて50mlに定容したものについて、プラズマ発光分光分析装置(JOBIN YVON社製ICP−AES「JY46P型」)を用いて定量し、ポリエステル樹脂中のppm量に換算した。尚、樹脂中に滑剤が含有されている場合には、予め樹脂を溶媒に溶解し、未溶解の滑剤を遠心分離した後、上澄み液の溶媒を蒸発、乾固させたものについて定量した。
【0059】
<異種物質粒子の粒径及びその数>
樹脂試料10kgを、熱風乾燥機中、180℃、2時間で結晶化及び乾燥させて水分量を100ppm以下とした後、40mm径の一軸押出機中に金属繊維焼結フィルター(95%カット濾過精度25μm)を内蔵し、80mm径の4条スパイラル環状ダイを備えたチューブラーフィルム成形機により、樹脂温度285℃、押出速度8kg/時間で溶融押出し、60mm径の冷却リングで冷却してチューブラー成形することにより、厚み210μm、折り幅10cmのチューブラーフィルムを得た。そのチューブラーフィルムの内面を検鏡試料とし、位相差顕微鏡(ニコン社製「OPTIPHOT XF−Ph型」、対物レンズは40Xを使用)の三眼鏡筒にCCDカメラを装着し、ディスプレイ上での倍率を1,000倍、視野範囲を50.0mm×70.0mmとし、これを介して、画像処理装置(日本アビオニクス社製「SPICCA0−II型」)に濃淡画像として入力した。次いで、フィルムの表面及び裏面に焦点を合わせてフィルム厚み範囲を確認した後、画像処理装置で濃淡画像の蓄積入力モードで表面から裏面までフォーカススキャンしながら画像を取り込み、画像処理装置で認識される粒子の周上の2点間の直線距離の最大値を最大径とし、その最大径5μm以上及び10μm以上の粒子個数をカウントする操作を、異なる視野で3回繰り返して行い、その個数の平均値を1gのフィルム重量当たりに換算した。
【0060】
<固有粘度>
凍結粉砕した樹脂試料0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度(c)を1.0g/dlとして、110℃で30分間で溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、原液との相対粘度(ηrel )を測定し、この相対粘度(ηrel )−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求め、同じく濃度(c)を0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比(ηsp/c)を求め、これらの値より、濃度(c)を0に外挿したときの比(ηsp/c)を固有粘度〔η〕(dl/g)として求めた。
【0061】
<末端カルボキシル基量>
チップを粉砕した後、熱風乾燥機にて140℃で15分間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した試料から、0.1gを精秤して試験管に採取し、ベンジルアルコール3mlを加えて、乾燥窒素ガスを吹き込みながら195℃、3分間で溶解させ、次いで、クロロホルム5mlを徐々に加えて室温まで冷却した。この溶液にフェノールレッド指示薬を1〜2滴加え、乾燥窒素ガスを吹き込みながら攪拌下に、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液で滴定し、黄色から赤色に変じた時点で終了とした。又、ブランクとして、ポリエステル樹脂試料抜きで同様の操作を実施し、以下の式によって酸価を算出した。
【0062】
酸価(当量/トン)=(A−B)×0.1×f/W
〔ここで、Aは、滴定に要した0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Bは、ブランクでの滴定に要した0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の量(μl)、Wは、ポリエステル樹脂試料の重量(g)、fは、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の力価である。〕
【0063】
尚、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の力価(f)は、試験管にメタノール5mlを採取し、フェノールレッドのエタノール溶液を指示薬として1〜2滴加え、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液0.4mlで変色点まで滴定し、次いで、力価既知の0.1Nの塩酸水溶液を標準液として0.2ml採取して加え、再度、0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液で変色点まで滴定した。(以上の操作は、乾燥窒素ガス吹き込み下で行った。)以下の式によって力価(f)を算出した。
力価(f)=0.1Nの塩酸水溶液の力価×0.1Nの塩酸水溶液の採取量(μl)/0.1Nの苛性ソーダのベンジルアルコール溶液の滴定量(μl)
【0064】
<体積固有抵抗>
樹脂試料15gを、内径20mm、長さ180mmの枝付き試験管に入れ、管内を十分に窒素置換した後、160℃のオイルバス中に浸漬し、管内を真空ポンプで1Torr以下として4時間真空乾燥し、次いで、オイルバス温度を285℃に昇温して樹脂試料を溶融させた後、窒素復圧と減圧を繰り返して混在する気泡を取り除いた。この溶融体の中に、面積1cm2 のステンレス製電極2枚を5mmの間隔で並行に(相対しない裏面を絶縁体で被覆)挿入し、温度が安定した後に、抵抗計(ヒューレット・パッカード社製「MODEL HP4329A」)で直流電圧100Vを印加し、そのときに抵抗値を体積固有抵抗(Ω・cm)とした。
【0065】
<色調>
樹脂試料を、内径36mm、深さ15mmの円柱状の粉体測色用セルに充填し、測色色差計(日本電色工業社製「ND−300A」)を用いて、JIS Z8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値を、反射法により測定セルを90度ずつ回転させて4箇所測定した値の単純平均値として求めた。
【0066】
一方、得られたポリエステル樹脂から、異種物質粒子数の測定におけると同様にしてチューブラー成形により未延伸フィルムを成形し、引き続いて、二軸延伸機(T.M.Long社製)を用いて、未延伸フィルムを92℃で2分間予熱した後、20,000%/分の延伸速度で、縦方向4.0倍、横方向3.5倍の延伸倍率で同時二軸延伸し、延伸後、92℃で1分間の熱固定を行うことにより、二軸延伸フィルムを成形した。
【0067】
得られた二軸延伸フィルムについて、以下に示す方法で、フィルム表面の突起数を観察し、以下に示す基準で評価し、結果を表1に示した。
<二軸延伸フィルム表面の突起数>
二軸延伸フィルムをSUS製角形金枠に張設し、真空蒸着機内でアルミ蒸着した後、表面に無作為に2.0cm×2.5cmの枠をマーキングし、その面積内における粗大突起数を、ハロゲンランプの白色光にGフィルターをかけて光源とした二光束顕微鏡にて観察した。粗大突起は、干渉縞が閉じた等高線として観察され、突起高さが大きくなるに従いその等高線の本数が多くなる。本発明においては、突起高さが0.54μm、及び0.81μmの各等高線の本数により以下の区分で突起数をカウントし、20cm2 のフィルム面積当たりに換算した。
(1)等高線数が2本以上の高さ0.54μm以上の突起数。
(2)等高線数が3本以上の高さ0.81μm以上の突起数。
【0068】
<二軸延伸フィルム表面の評価>
◎;高さ0.54μm以上の突起が10個/20cm2 以下で、且つ、高さ0.81μm以上の突起が1個/20cm2 以下。
○;高さ0.54μm以上の突起が24個/20cm2 以下で、且つ、高さ0.81μm以上の突起が4個/20cm2 以下。
△;高さ0.54μm以上の突起が48個/20cm2 以下で、且つ、高さ0.81μm以上の突起が10個/20cm2 以下。
×;高さ0.54μm以上の突起が48個/20cm2 超過、又は、高さ0.81μm以上の突起が10個/20cm2 超過。
【0069】
更に、得られた二軸延伸フィルムについて、以下に示す方法で、磁気テープとしてのドロップアウト性を以下の基準に従って評価し、結果を表1に示した。
【0070】
<磁気テープのドロップアウト性>
磁性微粉末200重量部、ポリウレタン樹脂30重量部、ニトロセルロース10重量部、塩化ビニル−酢酸セルロース共重合体10重量部、レシチン5重量部、シクロヘキサン100重量部、メチルイソブチルケトン100重量部、及びメチルエチルケトン300重量部を、ボールミルにて48時間混合した分散液に、ポリイソシアネート化合物5重量部を加えて磁性塗料とし、これを二軸延伸フィルムの片面に塗布し、十分に乾燥固化する前に磁気配向させた後、乾燥させることにより、膜厚1.8μmの磁性層を形成した。次いで、この磁性層を有する二軸延伸フィルムに、鏡面仕上げの金属製ロールとポリエステル系複合樹脂製ロールとから構成されるスーパーカレンダーを用いてカレンダー処理を施した後、1/2インチ幅にスリットしてビデオテープを作製し、ビデオデッキにより、4.4メガヘルツの信号を記録した後、該ビデオテープを常速にて再生し、その際、ドロップアウトカウンター(大倉インダストリー社製「IDC2」)にてドロップアウト数を約20分間測定し、以下の基準でドロップアウト性を評価した。
○;良好。
△;実用に耐えない程ではないが、不良。
×;不良であり実用に耐えない。
【0071】
実施例2(連続式エステル化法)
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物、テトラブチルチタネート、及び三酸化アンチモンの添加量を表1に示すように変えた外は、実施例1におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0072】
実施例3(連続式エステル化法)
エチルアシッドホスフェートに代えて正燐酸を用いた外は、実施例1におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0073】
実施例4(回分式エステル化法)
スラリー調製槽、及びそれに直列に接続されたエステル化反応槽、及びエステル化反応槽に直列に接続された溶融重縮合槽からなる回分式重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールを重量比で865:485の割合で供給し、攪拌、混合することによりスラリーを調製し、次いで、このスラリーのうち樹脂100重量部に当たるスラリーを、予め40重量部のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを装填し、窒素雰囲気下で250℃、相対圧力5kPa(0.05kg/cm2 G)に設定されたエステル化反応槽に5時間かけて移送し、エステル化率95%となるまでエステル化反応させた。そのエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で250℃、相対圧力5kPa(0.05kg/cm2 G)に設定された溶融重縮合槽に移送した後、滑剤として、遠心沈降式粒度分布測定器(島津製作所社製「SA−CP4L」)で測定した平均粒子径2.3μm、最大粒子径4.0μmのシリカを、生成ポリエステル樹脂に対して500ppmとなる量で添加し、次いで、酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してマグネシウム原子としての含有量(Mg)が35ppmとなる量で、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対して燐原子としての含有量(P)が15ppmとなる量で、テトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してチタン原子としての含有量(Ti)が1ppmとなる量で、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してアンチモン原子としての含有量(Sb)が100ppmとなる量で、順次添加した。次いで、溶融重縮合槽を漸次昇温且つ漸次減圧し、最終温度280℃、最終圧力2Torrとして重縮合反応を進行させ、所定の攪拌動力に到達した後、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してチップ状粒状体としたポリエステル樹脂を製造した。得られたポリエステル樹脂チップについて、実施例1におけると同様にして評価し、結果を表1に示した。
【0074】
実施例5〜8(回分式エステル化法)
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物、テトラブチルチタネート、及び三酸化アンチモンの添加量、並びに滑剤の種類及び添加量を表1に示すように変えた外は、実施例4におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0075】
実施例9(回分式エステル化法)
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物、テトラブチルチタネート、及び三酸化アンチモンの添加量を表1に示すように変えたこと、並びに滑剤を添加しなかったことの外は、実施例4におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0076】
実施例10(回分式エステル交換法)
エステル交換反応槽、及びエステル交換反応槽に直列に接続された溶融重縮合槽からなる回分式重合装置を用い、ジメチルテレフタレート100重量部とエチレングリコール70重量部とをエステル交換反応槽に供給し、エステル交換触媒として酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してマグネシウム原子としての含有量(Mg)が100ppmとなる量で添加し、エステル交換反応させ、更にトリメチルホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対して燐原子としての含有量(P)が30ppmとなる量で添加してエステル交換反応を実質的に終了させた。引き続いて、得られたエステル交換反応生成物を溶融重縮合槽に移送した後、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してアンチモン原子としての含有量(Sb)が80ppmとなる量で添加し、更にテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を生成ポリエステル樹脂に対してチタン原子としての含有量(Ti)が4ppmとなる量で添加し、高温減圧下で常法に従って3時間12分かけて溶融重縮合させ、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してチップ状粒状体としたポリエステル樹脂を製造した。得られたポリエステル樹脂チップについて、実施例1におけると同様に評価し、結果を表1に示した。
【0077】
実施例11(回分式エステル交換法)
エステル交換反応生成物を溶融重縮合槽に移送した後、滑剤としてシリカ(平均粒子径2.3μm、最大粒子径4.0μm)を生成ポリエステル樹脂に対して500ppmとなる量で添加した外は、実施例10と同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0078】
実施例12(回分式エステル化法)
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物、テトラブチルチタネート、及び三酸化アンチモンの添加量を表1に示すように変えたこと、並びに滑剤を添加しなかったことの外は、実施例4におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0079】
比較例1(連続式エステル化法)
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物、テトラブチルチタネート、及び三酸化アンチモンの添加量を表1に示すように変えた外は、実施例1におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0080】
比較例2〜3(連続式エステル化法)
テトラブチルチタネートを添加しなかったこと、酢酸マグネシウム4水和物と三酸化アンチモンとを、両者の混合物としてエステル化反応生成物の溶融重縮合槽への移送配管中のエステル化反応生成物に添加したこと、及び、エチルアシッドホスフェートも含む添加量を表1に示すように変えたこと、の外は、実施例1におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0081】
比較例4(連続式エステル化法)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込み口、及び生成物取り出し口を備えた第1エステル化反応槽、及び、反応槽内を二分割し、その第1槽目と第2槽目の各々に攪拌装置、分縮器、原料仕込み口、及び生成物取り出し口を備えた第2エステル化反応槽よりなる3段の完全混合槽型の連続反応装置を用い、その第1エステル化反応槽内の反応生成物が存在する系内に、テレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比を1.7に調整したスラリーを連続的に供給すると共に、別の仕込み口より、酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してマグネシウム原子としての含有量(Mg)が20ppmとなる量で連続的に添加し、常圧、255℃にて平均滞留時間4時間でエステル化反応させ、次いで、反応生成物を第2エステル化反応槽の第1槽目に移送し、その第1槽目からオーバーフロー方式で第2槽目に移送し、その際、第1槽目に、正燐酸のエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対して燐原子としての含有量(P)が5ppmとなる量で、更に、第2槽目に19ppmとなる量で、連続的に添加し、それぞれ、常圧、260℃にて平均滞留時間2.5時間でエステル化反応させた。
【0082】
引き続いて、得られたエステル化反応生成物を、攪拌装置、分縮器、原料仕込み口、及び生成物取り出し口を備えた2段の重縮合槽を備えた溶融重縮合槽に移送し、その際、移送配管中のエステル化反応生成物に、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してアンチモン原子としての含有量(Sb)が80ppmとなる量で、更に、テトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してチタン原子としての含有量(Ti)が3ppmとなる量で、連続的に添加しつつ、270℃、減圧下に滞留時間3時間19分で溶融重縮合させ、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してチップ状粒状体としたポリエステル樹脂を製造した。得られたポリエステル樹脂チップについて、実施例1におけると同様に評価し、結果を表1に示した。
【0083】
比較例5(回分式エステル化法)
スラリー調製槽、及びそれに直列に接続されたエステル化反応槽、及びエステル化反応槽に直列に接続された溶融重縮合槽からなる回分式重合装置を用い、スラリー調製槽に、テレフタル酸とエチレングリコールを重量比で865:485の割合で供給し、攪拌、混合することによりスラリーを調製し、このスラリーに酢酸マグネシウム4水和物のエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してマグネシウム原子としての含有量(Mg)が30ppmとなる量で添加した。次いで、このスラリーのうち樹脂100重量部に当たるスラリーを、予め40重量部のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを装填し、窒素雰囲気下で250℃、相対圧力5kPa(0.05kg/cm2 G)に設定されたエステル化反応槽に5時間かけて移送し、エステル化率95.2%となるまでエステル化反応させた。そのエステル化反応生成物を、窒素雰囲気下で250℃、相対圧力5kPa(0.05kg/cm2 G)に設定された溶融重縮合槽に移送した後、エチルアシッドホスフェートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対して燐原子としての含有量(P)が9ppmとなる量で、テトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してチタン原子としての含有量(Ti)が3ppmとなる量で、三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液を、生成ポリエステル樹脂に対してアンチモン原子としての含有量(Sb)が100ppmとなる量で、順次添加した。次いで、溶融重縮合槽を漸次昇温且つ漸次減圧し、最終温度280℃、最終圧力2Torrとして重縮合反応を進行させ、所定の攪拌動力に到達した後、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してチップ状粒状体としたポリエステル樹脂を製造した。得られたポリエステル樹脂チップについて、実施例1におけると同様にして評価し、結果を表1に示した。
【0084】
比較例6(回分式エステル化法)
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物、テトラブチルチタネート、三酸化アンチモン、及び滑剤の添加量を表1に示すように変えた外は、実施例4におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0085】
比較例7(回分式エステル交換法)
エチルアシッドホスフェート、酢酸マグネシウム4水和物、テトラブチルチタネート、三酸化アンチモン、及び滑剤の添加量を表1に示すように変えた外は、実施例11におけると同様にしてポリエステル樹脂チップを製造し、同様に評価し、結果を表1に示した。
【0086】
【表1】
Figure 2004107624
【0087】
【表2】
Figure 2004107624
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルムや繊維等に成形するにおける破断や糸切れ、及び目ヤニの発生等の成形上の問題が抑制され、又、表面均一性に優れたフィルムや繊維等の成形体を得ることができるポリエステル樹脂、及びそれからなるフィルムを提供することができる。

Claims (13)

  1. テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応或いはエステル交換反応を経て重縮合させて得られたポリエステル樹脂であって、含有される最大径5μm以上の異種物質粒子の数が15個/g以下で、且つ、最大径10μm以上の異種物質粒子の数が1個/g以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
  2. 燐化合物の存在下に重縮合されたものであり、その燐化合物に由来する燐原子としての含有量(P)が0.1〜40ppmである請求項1に記載のポリエステル樹脂。
  3. アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下に重縮合されたものであり、それらの化合物に由来する金属原子としての含有量(S)が0.1〜200ppmである請求項2に記載のポリエステル樹脂。
  4. アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、及びアンチモンからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物がアンチモン化合物であり、そのアンチモン化合物に由来するアンチモン原子としての含有量(Sb)の、燐原子としての含有量(P)に対する比(Sb/P)が2〜45である請求項3に記載のポリエステル樹脂。
  5. 周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下に重縮合されたものであり、それらの化合物に由来する金属原子としての含有量(M)が0.1〜100ppmである請求項2乃至4のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
  6. 周期表第1A族の金属元素、周期表第2A族の元素、マンガン、鉄、及びコバルトからなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物がマグネシウム化合物であり、そのマグネシウム化合物に由来するマグネシウム原子としての含有量(Mg)の、燐原子としての含有量(P)に対する比(Mg/P)が1〜15である請求項5に記載のポリエステル樹脂。
  7. 周期表第4A族のチタン族元素からなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物の共存下に重縮合されたものであり、それらの化合物に由来する金属原子としての含有量(T)が0.1〜10ppmである請求項2乃至6のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
  8. 周期表第4A族のチタン族元素からなる群より選択された少なくとも1種の元素の化合物がチタン化合物であり、そのチタン化合物に由来するチタン原子としての含有量(Ti)が0.5〜10ppmである請求項7に記載のポリエステル樹脂。
  9. 燐化合物が燐酸エステルである請求項2乃至8のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
  10. 固有粘度が0.55〜0.80dl/g、末端カルボキシル基量が60当量/トン以下、体積固有抵抗が1×106 〜1×1010Ω・cmである請求項1乃至9のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
  11. 二軸延伸フィルムとしたときの該フィルム表面における高さ0.54μm以上の突起の数が、以下の(1)及び(2)を満足する請求項1乃至10のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
    (1)高さ0.54μm以上の突起数が24個/20cm2 以下。
    (2)高さ0.81μm以上の突起数が4個/20cm2 以下。
  12. 請求項1乃至11のいずれかに記載のポリエステル樹脂からなるフィルム。
  13. ポリエステル樹脂が、最大粒子径4.5μm以下の無機質又は有機質粒子からなる滑剤を0.001〜2.0重量%含有する請求項12に記載のフィルム。
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