JP2004107440A - 成形用ポリアミド系樹脂組成物およびその製造方法並びに成形体 - Google Patents

成形用ポリアミド系樹脂組成物およびその製造方法並びに成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】機械的強度が高く、摺動性および吸湿時における寸法安定性に優れた成形用ポリアミド系樹脂組成物およびその製造方法並びに成形体を提供すること。
【解決手段】成形用ポリアミド系樹脂組成物は、テトラメチレンジアミンを含むジアミンと、アジピン酸を含むジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂よりなる(a)成分10〜98質量%と、官能基で変性されてなる官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーよりなる(b)成分1〜40質量%と、板状無機化合物よりなる(c)成分1〜55質量%とを含有し、(a)成分、(b)成分および(c)成分を温度180〜350℃の条件により混合することによって製造され、また成形体は、前記成形用ポリアミド系樹脂組成物を成形用樹脂材料として射出成形法により成形することによって製造されたものである。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的強度が高く、摺動性に優れると共に、吸湿時の寸法安定性の良好な成形用ポリアミド系樹脂組成物およびその製造方法並びに成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
テトラメチレンジアミンを含むジアミンと、アジピン酸を含むジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂の代表的なものとしては、ポリアミド4,6樹脂が知られている。
このポリアミド4,6樹脂は、耐熱性、引張強さ等の機械的強度および耐薬品性に優れており、その上、結晶化速度が速いために成形サイクルを短くすることができ、また溶融粘度が低いために流動性が良好であることなどから射出成形性にも優れているため、自動車部品、電気・電子部品および機械部品などの分野で広く利用されている。
【0003】
而して、近年、従来金属が使用されてきた電気パワーステアリング用ギアをはじめとする各種ギアにおいて、軽量化および生産性向上を図る目的でその材質が金属から樹脂へと変更されてきており、このような各種ギアの材料として、優れた引張強さおよび射出成形性を有するポリアミド4,6樹脂の使用が検討されている。
【0004】
しかしながら、ポリアミド4,6樹脂は各種ギア用樹脂材料に必要とされる高い衝撃強度および摺動性を十分に有するものではなく、また、吸湿に伴って寸法が大きく変化してしまう、という問題がある。
また、その用途に必要とされる特性に応じてポリアミド4,6樹脂などのポリアミド樹脂に対して、例えばゴム質重合体などを配合してなる組成物が提案されているが(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、これらのポリアミド樹脂を含有する組成物によっても各種ギア用樹脂材料に必要とされる機械的強度、摺動性および吸湿時における寸法安定性を十分に得ることができない。
【0005】
【特許文献1】
特公平7−116358号公報
【特許文献2】
特開2001−106904号公報
【特許文献3】
特開2002−020618号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものであって、その目的は、機械的強度が高く、摺動性および吸湿時における寸法安定性に優れた成形用ポリアミド系樹脂組成物およびその製造方法並びに成形体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物は、テトラメチレンジアミンを含むジアミンと、アジピン酸を含むジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂よりなる(a)成分10〜98質量%と、官能基で変性されてなる官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーよりなる(b)成分1〜40質量%と、板状無機化合物よりなる(c)成分1〜55質量%とを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物においては、(a)成分を構成するポリアミド樹脂がポリアミド4,6樹脂からなることが好ましい。
【0009】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物においては、(b)成分を構成する官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーが無水マレイン酸基、エポキシ基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で変性されたエチレン・プロピレンエラストマーからなることが好ましい。
【0010】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物においては、(c)成分を構成する板状無機化合物が焼成カオリンからなることが好ましい。
【0011】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物の製造方法は、上記の成形用ポリアミド系樹脂組成物の製造方法であって、
温度180〜350℃の条件により、(a)成分、(b)成分および(c)成分を混合することによって製造されるものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物の製造方法においては、温度180〜330℃の条件により、(a)成分および(b)成分を混合して得られる混合組成物と、(c)成分とを混合する工程を経ることが好ましい。
【0013】
本発明の成形体は、上記の成形用ポリアミド系樹脂組成物を成形用樹脂材料として射出成形法により成形することによって製造されたものであることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物は、特定のポリアミド樹脂よりなる(a)成分と、官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーよりなる(b)成分と、板状無機化合物よりなる(c)成分とを、各々特定の割合(ただし、(a)成分+(b)成分+(c)成分=100質量%)で含有してなるものである。
【0015】
<(a)成分>
(a)成分は、テトラメチレンジアミンを含むジアミンと、アジピン酸を含むジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂により構成されており、(イ)テトラメチレンジアミンとアジピン酸とを重縮合させることにより得られる「ポリアミド4,6樹脂」、(ロ)ポリテトラメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とする「共重合ポリアミド」が含まれる。
【0016】
(a)成分を構成するポリアミド樹脂としては、ポリアミド4,6樹脂が好ましい。
【0017】
(a)成分の製造方法は、特に限定されるものではなく、特開昭56−149430号公報、特開昭56−149431号公報、特開昭58−83029号公報、特開昭61−43631号公報等に記載されている方法を例示することができる。
【0018】
(a)成分の重合度も特に限定されるものではないが、25℃、90%蟻酸中、200mg/500mlにおける相対粘度が0.9以上の範囲、更に1.2以上の範囲、特に1.5以上の範囲となる重合度であることが好ましい。
【0019】
(a)成分のDSC測定による結晶融解のピーク温度(以下、「結晶融解温度」ともいう。)は、吸水率が0.1質量%以下の状態(以下、「乾燥状態」ともいう。)において、265℃以上、更に270℃以上、特に285℃以上であることが好ましい。
【0020】
(a)成分を得るために使用することのできる「テトラメチレンジアミン以外のジアミン」としては、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,8−オクタンジアミンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて、テトラメチレンジアミンと併用することができる。
【0021】
(a)成分を得るために使用されるジアミンのうち、テトラメチレンジアミンの割合は、通常50モル%以上とされ、好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは100モル%とされる。
【0022】
(a)成分を得るために使用することのできる「アジピン酸以外のジカルボン酸」としては、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて、アジピン酸と併用することができる。
【0023】
(a)成分を得るために使用されるジカルボン酸のうち、アジピン酸の割合は、通常50モル%以上とされ、好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは100モル%とされる。
【0024】
また、(a)成分を得るための反応系に、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの官能基を3個以上有する多価カルボン酸を混合し、これらの多価カルボン酸から誘導される単位を(a)成分に導入することもできる。
かかる多価カルボン酸の使用量は、最終的に得られる成形用ポリアミド系樹脂組成物の成形性が損なわれない範囲とされる。
【0025】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物における(a)成分の含有割合は、10〜98質量%、好ましくは15〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%とされる。
(a)成分の含有割合が10質量%未満である場合には、樹脂組成物においてポリアミド樹脂自体の有する特性が十分に発揮されずに良好な引張強さおよび摺動性を得ることができず、一方、(a)成分の含有割合が98質量%を超える場合には、樹脂組成物における他の構成成分の相対的な量が少なくなり、良好な衝撃強度、摺動性および吸湿時における寸法安定性を得ることができない。
【0026】
<(b)成分>
(b)成分は、官能基で変性された、例えばエチレン−プロピレンブロック共重合体などのエチレン・プロピレンエラストマーよりなる官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーにより構成されている。
【0027】
(b)成分を構成する官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーとしては、無水マレイン酸基、エポキシ基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「特定官能基」ともいう。)で変性されてなるものが好ましく、特に無水マレイン酸基によって変性されてなるものであることが好ましい。
【0028】
官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーが特定官能基で変性されてなるものであることにより、成形用ポリアミド樹脂中における分散状態が良好(均一かつ微分散)となり、高い衝撃強さが得られると共に、成形された成形体表面における剥離現象の発生が防止されて成形体の表面外観が良好となる、という効果が得られる。
【0029】
官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーに係る特定官能基以外の官能基としては、例えばホルミル基、水酸基、エステル基、シラノール基、無水イタコン酸基、無水シトラコン酸基、ブテニル無水コハク酸基、テトラヒドロ無水フタール酸基等の酸無水物基などを挙げることができる。
【0030】
(b)成分の赤外線吸収スペクトル測定に基づいて算出される変性に係る官能基の濃度(以下、「官能基濃度」ともいう。)は、0.1〜10質量%であることが好ましい。
官能基濃度が0.1質量%未満である場合には、良好な衝撃強度および引張伸びが得ることができなくなるおそれがあり、一方、官能基濃度が10質量%を超える場合には、良好な衝撃強度を得ることができなくなるおそれがある。
【0031】
(b)成分の製造方法としては、(イ)必要に応じて過酸化物の存在下において、エチレン−プロピレンランダム共重合体に対して官能基を有する化合物(以下、「官能基含有化合物」ともいう。)を、例えば押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどを用い、温度150〜300℃の条件において混練することによって添加する手法、(ロ)官能基含有化合物の存在下において、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などの従来公知の重合法によってエチレン−プロピレンランダム共重合体を重合する手法、(ハ)トルエン、キシレンなどの有機溶剤中に、エチレン−プロピレンランダム共重合体と、官能基含有化合物とを溶解せしめ、この系に過酸化物を添加して50〜200℃に加熱して反応させる手法などを例示することができる。
【0032】
(b)成分を(イ)および(ハ)の製造方法によって得るために使用することのできる過酸化物としては、従来公知の有機過酸化物のすべてを挙げることができる。
有機過酸化物の具体例としては、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2′−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼンジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロルベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
これらの有機過酸化物のうち、(b)成分を得るための過酸化物としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3が好ましい。
【0033】
(b)成分を得るための過酸化物の使用量は、エチレン−プロピレンランダム共重合体100質量部に対して0.01質量部以上とされ、好ましくは0.05〜10質量部とされる。
【0034】
(b)成分を得るために使用される官能基含有化合物としては、例えばエポキシ基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物等の官能基を有するビニル化合物、カルボキシル基含有の連鎖移動剤、アミノ基含有の連鎖移動剤等の連鎖移動剤、カルボキシル基含有の重合開始剤等の重合開始剤などを挙げることができる。
【0035】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば下記一般式(1)〜(3)で表わされる不飽和グリシジルエステル類、不飽和グリシジルエーテル類、エポキシアルケン類およびp−グリシジルスチレン類などの不飽和エポキシ化合物が挙げられる。
【0036】
【化1】
Figure 2004107440
【0037】
【化2】
Figure 2004107440
【0038】
【化3】
Figure 2004107440
【0039】
エポキシ基含有不飽和化合物の具体例としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類、ブテンカルボン酸エステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチルペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、p−グリシジルスチレンなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
酸無水物基含有不飽和化合物の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、クロロ無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタール酸などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの酸無水物基含有不飽和化合物のうち、(b)成分を得るための官能基含有化合物としては、無水マレイン酸が好ましい。
【0041】
カルボキシル基含有不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのカルボキシル基含有不飽和化合物のうち、(b)成分を得るための官能基含有化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸などが好ましい。
【0042】
アミノ基含有不飽和化合物としては、下記一般式(4)で表わされるアミノ基または置換アミノ基の少なくとも1種を有するビニル系単量体が挙げられる。
【0043】
【化4】
Figure 2004107440
【0044】
アミノ基含有不飽和化合物の具体例としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類、N−ビニルジエチルアミンおよびN−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類、アリルアミン、メタクリルアミンおよびN−メチルアリルアミンなどのアリルアミン系誘導体類、アクリルアミドおよびN−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体およびp−アミノスチレンなどのアミノスチレン類などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのアミノ基含有不飽和化合物のうち、(b)成分を得るための官能基含有化合物としては、工業的規模で経済的に入手できることから、アリルアミン、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピルおよびアミノスチレンなどが好ましい。
【0045】
カルボキシル基含有の連鎖移動剤の好ましい具体例としては、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、メルカプトプロピオン酸などが挙げられる。
【0046】
アミノ基含有の連鎖移動剤の具体例としては、メルカプトメチルアミン、β−メルカプトエチルアミン、γ−メルカプトプロピルアミン、N−(β−メルカプトエチル)−N−メチルアミン、N−(β−メルカプトエチル)−N−エチルアミン、N−(β−メルカトエチル)−N−フェニルアミン、N−(β−メルカプトエチル)−N−シクロヘキシルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)ジサルファイド、ビス−(2−アミノフェニル)ジサルファイド、ビス−(3−アミノフェニル)ジサルファイド、p−メルカプトアニリン、o−メルカプトアニリン、m−メルカプトアニリンおよびこれらの塩酸塩などが挙げられる。
これらのアミノ基含有不飽和化合物のうち、(b)成分を得るための官能基含有化合物としては、β−メルカプトエチルアミン、γ−メルカプトプロピルアミン、β−メルカプトエチルアミン塩酸塩、γ−メルカプトピロピルアミン塩酸塩およびビス−(4−アミノフェニル)ジサルファイドなどが好ましい。
【0047】
カルボキシル基含有の重合開始剤としては、従来公知のカルボキシル基含有アゾ化合物およびカルボキシル基含有パーオキサイド化合物のすべてが挙げられる。
カルボキシル基含有アゾ化合物の好ましい具体例としては、一般式(5)で表わされる化合物が挙げられ、特に好適な例としてアゾビスシアノ吉草酸、アゾビスシアノプロピオン酸などが挙げられる。
【0048】
【化5】
Figure 2004107440
【0049】
カルボキシル基含有パーオキサイドの好ましい具体例としては、サクシン酸パーオキサイドなどが挙げられる。
【0050】
アミノ基含有の重合開始剤の具体例としては、α,α′−アゾビス(γ−アミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)、α,α′−アゾビス(γ−メチルアミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)、α,α′−アゾビス(γ−エチルアミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)、α,α′−アゾビス(γ−プロピルアミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)、α,α′−アゾビス(γ−ジメチルアミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)、α,α′−アゾビス(γ−ジエチルアミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)、α,α′−アゾビス(γ−ジプロピルアミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)およびp−アミノベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
これらのアミノ基含有の重合開始剤のうち、(b)成分を得るための官能基含有化合物としては、α,α′−アゾビス(γ−アミノ−α,γ−ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0051】
(b)成分のDSC測定によるガラス転移温度は、−30℃以下、更に−40℃以下であることが好ましい。
【0052】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物における(b)成分の含有割合は、1〜40質量%、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは5〜25質量%とされる。
(b)成分の含有割合が1質量%未満である場合には、良好な引張伸び、摺動性および吸湿時における寸法安定性を得ることができず、一方、(b)成分の含有割合が40質量%を超える場合には、樹脂組成物における他の構成成分の相対的な量が少なくなり、良好な引張強さおよび摺動性を得ることができない。
【0053】
<(c)成分>
(c)成分は、板状無機化合物により構成されてなり、具体的には、焼成カオリン、モンモリロナイトなどのクレー、マイカなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
(c)成分を構成する板状無機化合物としては、焼成カオリンが好ましい。
【0055】
(c)成分の形状が板状であることにより、高い機械強度と、良好な摺動性および吸湿時における寸法安定性が得られる。
【0056】
(c)成分の板厚は、10μm以下、好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.1μm以下0.3nm以上であり、アスペクト比(短径に対する長径の割合)は、1〜200、好ましくは3〜170とされる。
また、(c)成分の平均径は、通常、0.05〜800μmであることが好ましい。
【0057】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物における(c)成分の含有割合は、1〜55質量%、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜45質量%とされる。
(c)成分の含有割合が1質量%未満である場合には、良好な吸湿時における寸法安定性を得ることができず、一方、(c)成分の含有割合が55質量%を超える場合には、樹脂組成物における他の構成成分の相対的な量が少なくなり、良好な機械的強度(引張強度、引張伸びおよび衝撃強さ)および摺動性を得ることができない。
【0058】
<その他の成分>
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物には、要求される特性などに応じて、その成形性および物性を損なわない限りにおいて、上記(a)成分、(b)成分および(c)成分合計100質量%に対して、当該(a)成分、(b)成分および(c)成分以外の任意成分を添加含有させることができる。
かかる任意成分としては、顔料、染料、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、疎水性ゼオライト、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛などを例示することができる。
【0059】
また、本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物の耐熱性を向上させることを目的として、ヨウ化銅等の銅化合物、ヨウ化カリウム、芳香族アミン化合物、ヒンダードフェノール化合物、有機リン化合物、硫黄化合物等の酸化防止剤あるいは熱安定剤を添加含有させることができる。
【0060】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分および(c)成分と、必要に応じて含有されるその他の成分とを混合することによって製造することができる。
【0061】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物を製造するための構成成分の混合は、温度180〜350℃の混合条件により行うことが必要とされ、温度250〜320℃の混合条件により行うことが好ましい。
混合条件が180℃未満である場合には、構成成分((a)成分および(b)成分、特に(a)成分)の溶融が不十分となるために構成成分を均一に混合することができず、一方、混合条件が350℃を超える場合には、構成成分((a)成分および(b)成分)の熱分解が起こるために目的とする成形用ポリアミド系樹脂組成物を得ることができない。
【0062】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物の構成成分を混合する方法としては、(イ)すべての構成成分の全量を一括して混合する手法、(ロ)一部の構成成分を1回または複数回に分けて混合した後、この混合系に対して残りの構成成分を1回または複数回に分けて投入して混合する手法、(ハ) すべての構成成分の一部を1回または複数回に分けて混合した後、この混合系に対してすべての構成成分の残部を1回または複数回に分けて投入して混合する手法などを例示することができる。
【0063】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物の構成成分を混合するために使用する混合機としては、押出機、ニーダー、ロール、ブラベンダー、バンバリーミキサー、連続ニーダーを挙げることができ、これらを組み合わせて使用することも可能である。これらのうち、押出機が好ましく、特に二軸押出機が好ましい。
【0064】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物を製造する方法の好ましい形態としては、温度180〜330℃の条件により、先ず(a)成分と、(b)成分を混合して混合組成物を得、次いで得られた混合組成物と、(c)成分とを混合する工程を経る手法が挙げられる。この手法によれば、(a)成分と(b)成分とをより均一に混合することができるため、高い衝撃強さが得られると共に、射出成形法により成形された成形体の表面外観が良好となる射出成形性に優れた成形用ポリアミド樹脂組成物が得られる、という利点がある。
【0065】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物は、任意の成形方法、例えば、射出成形、圧縮成形、真空成形、シート成形、フィルム成形、インジェクションプレス成形、ブロー成形、異型押出成形、二色成形、サーモエジェクト成形、インサート成形、アウトサート成形、ダブルインジェクション成形等によって成形することができる。
【0066】
本発明の成形体は、上記の成形用ポリアミド系樹脂組成物を成形用樹脂材料として射出成形法により成形することによって製造されたものである。
【0067】
本発明の成形体を得るための射出成形機としては、種々の公知の射出成形機を用いることができ、また、射出成形機に取り付けられる射出成形用金型としては、公知の鋼材よりなり、成形すべき成形体の形状に応じた種々の構造を有するものを使用することができる。
射出成形処理を行う成形条件は、用いられる射出成形機の種類、成形すべき成形体の形状などに応じて異なるが、通常、樹脂温度は、180〜350℃の範囲とすること好ましく、金型温度は、30〜200℃の範囲とすることが好ましい。
また、射出成形法によって成形を行う際には、成形用樹脂材料中に含まれている水分などの揮発成分を除去するために、例えば熱風乾燥機、除湿乾燥機、真空乾燥機、流動層乾燥機、不活性ガス循環式乾燥機などを用いて乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥処理においては、乾燥温度は、60〜110℃の範囲とすることが好ましく、乾燥時間は、2〜24時間とすることが好ましい。
【0068】
更に、射出成形法によって得られた射出成形体に対しては、公知の二次加工を行うことができる。
具体的に、二次加工の例としては、例えば反射防止加工、ハードコート加工、接着加工、熱融着加工、超音波融着加工、電磁融着加工、コロナ放電加工、切削、表面パターン圧着、表面切削、塗装、めっき、真空蒸着、スパッタリング、パターン印刷などが挙げられる。
【0069】
以上のような成形用ポリアミド系樹脂組成物および成形体は、機械的強度が高く、優れた摺動性および吸湿時における寸法安定性を有するものであることから、例えば従来金属が使用されてきた電気パワーステアリング用ギアをはじめとする各種ギアに好適に用いることができ、また、この他にも、例えば電機・電子、車輛、家電、建築、サニタリー、スポーツ、雑貨などの幅広い分野で使用することができる。具体的には、コネクター、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICやLEDのハウジング、ベアリングリテーナー、スプリングホルダー、チェーンテンショナー、ワッシャー、ウォームホイール、ベルト、フィルター、各種ハウジング、オートテンショナー及びウエイトローラー、ブレーカーパーツ、クラッチパーツなどが挙げられる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例における「部」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
【0071】
〔調製例a1〕
(a)成分として、1,4−テトラメチレンジアミンとアジピン酸とを重縮合してなるポリアミド4,6樹脂を用意した。これを「(a−1)成分」とする。この(a−1)成分は、90%蟻酸中、200mg/50ml(25℃)で測定した相対粘度が2.01であり、DSC測定した乾燥状態における結晶融解温度が295℃である。
【0072】
〔調製例a2〕
(a)成分として、前記(a−1)成分とは重合度の異なるポリアミド4,6樹脂を用意した。これを「(a−2)成分」とする。
この(a−2)成分は、90%蟻酸中、200mg/50ml(25℃)で測定した相対粘度が1.58であり、DSC測定した乾燥状態における結晶融解温度が295℃である。
【0073】
〔調製例a3〕
(a)成分として、前記(a−1)成分および前記(a−2)成分とは重合度の異なるポリアミド4,6樹脂を用意した。これを「(a−3)成分」とする。この(a−3)成分は、90%蟻酸中、200mg/50ml(25℃)で測定した相対粘度が0.83であり、DSC測定した乾燥状態における結晶融解温度が290℃である。
【0074】
〔調製例b1〕
エチレン−プロピレンランダム共重合体「EP912P」(JSR(株)製)100質量部と、無水マレイン酸「クリスタルMAN」(日本油脂(株)製)1質量部と、過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン「カヤヘキサAD」(化薬アクゾ(株)製)0.05質量部とを二軸押出機に投入し、当該二軸押出機のシリンダー温度を230℃として反応を行った後、未応の無水マレイン酸を加熱真空除去した。その後、反応生成物を押出してペレット化し、冷却、乾燥することにより、無水マレイン酸基で変性されたエチレン・プロピレンエラストマー(以下、「(b−1)成分」ともいう。)を得た。
得られた(b−1)成分について、赤外線吸収スペクトル測定に基づいてグラフトされた無水マレイン酸の濃度を官能基濃度として算出し、またDSC測定によってガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
〔調製例b2〕
調製例b1において、エチレン−プロピレンランダム共重合体「EP912P」100質量部に代えてエチレン−プロピレンランダム共重合体「EP961P」(JSR(株)製)100質量部を用い、無水マレイン酸「クリスタルMAN」(日本油脂(株)製)を1.5質量部用いたこと以外は調製例b1と同様の手法により無水マレイン酸基で変性されたエチレン・プロピレンエラストマー(以下、「(b−2)成分」ともいう。)を得た。
得られた(b−2)成分について、調製例b1と同様の手法により官能基濃度およびガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
〔調製例b3〕
比較用(b)成分として、エチレン−プロピレンランダム共重合体「EP912P」(JSR(株)製)を用意した。これを「(b−3)成分」とする。
この(b−3)成分について、DSC測定によってガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
Figure 2004107440
【0078】
〔調製例c1〕
(c)成分として、焼成カオリン「トランスリンク T445」(ENGELHARD社製、形状:板状、アスペクト比:20、平均径:1.4μm)を用意した。これを「(c−1)成分」とする。
【0079】
〔調製例c2〕
比較用(c)成分として、ワラストナイト「NYGLOS 5」(NYCO社製、形状:針状)を用意した。これを「(c−2)成分」とする。
【0080】
〔調製例c3〕
比較用(c)成分として、炭酸カルシウム(形状:粒状)を用意した。これを「(c−3)成分」とする。
【0081】
<実施例1>
温度250〜320℃の条件により、混合機として二軸押出機「TEM−37BS」(TOSHIBA社製)を用い、先ず(a−1)成分60部と、(b−1)成分10部とを均一に混合して混合組成物を得、次いで得られた混合組成物全量と、(c−1)成分30部とを均一に混合する手法(以下、「方法1」ともいう。)によってポリアミド系樹脂組成物(以下、「ポリアミド系樹脂組成物(1)」ともいう。)を得た。
得られたポリアミド系樹脂組成物(1)を成形樹脂材料とし、射出成形機を用いて所定の試験片(性能評価用の試験片)を作製し、当該試験片を用いて、ポリアミド系樹脂組成物(1)における機械的強度(引張強度、引張伸びおよびシャルピー衝撃強さ)を測定すると共に、摺動性および吸湿時における寸法安定性を評価した。結果を表2に示す。
なお、測定ないし評価方法は以下のとおりである。
【0082】
(1)引張強さおよび引張伸び:
ISO 527−1Aに準拠して測定した。
【0083】
(2)シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)
ISO 179/1eAに準拠して温度23℃の測定条件で測定した。
【0084】
(3)摺動性:
「鈴木式摩擦磨耗試験機」を用い、相手材を炭素鋼(S45C)とし、面圧0.1〔MPa〕、速度50cm/secの条件で往復摺動試験を行い、試験開始から11時間経過後の実振幅に基づいて動摩擦係数を測定した。
【0085】
(4)吸湿時における寸法安定性:
射出成形機を用いて外測寸法が100mm×10mm×4mmの試験片を成形した。
この試験片の成形直後における成形時の樹脂材料の流動方向(以下、単に「流動方向」ともいう。)および当該流動方向に垂直な方向(以下、単に「垂直方向」ともいう。)における各寸法(以下、「成形直後寸法」ともいう。)を測定した。その後、この試験片を温度50℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に48時間放置した後に再度測定した流動方向および垂直方向の各寸法の成形直後寸法からの変化率を算出し、これによって寸法安定性を評価した。
【0086】
<実施例2〜5および比較例1〜9>
各々、下記表2に示す処方に従ったこと以外は実施例1と同様にして、ポリアミド系樹脂組成物(以下、各々、「ポリアミド系樹脂組成物(2)〜(5)および比較用ポリアミド系樹脂組成物(1)〜(9)」ともいう。)を得た。
得られたポリアミド系樹脂組成物(2)〜(5)および比較用ポリアミド系樹脂組成物(1)〜(9)の各々における機械的強度の測定、摺動性および寸法安定性の評価を実施例1と同様の手法によって行った。結果を表2に示す。
【0087】
<実施例6>
温度250〜320℃の条件により、混合機として二軸押出機「TEM−37BS」(TOSHIBA社製)を用い、(a−1)成分60部と、(b−2)成分10部と、(c−1)成分30部とを一括して均一に混合する手法(以下、「方法2」ともいう。)により、ポリアミド系樹脂組成物(以下、「ポリアミド系樹脂組成物(6)」ともいう。)を得た。
得られたポリアミド系樹脂組成物(6)における機械的強度の測定、摺動性および吸湿時における寸法安定性の評価を実施例1と同様の手法によって行った。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
Figure 2004107440
【0089】
表2に示す結果から、下記(1)〜(10)に示すことが理解される。
(1)実施例1〜6に係る樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分および(c)成分を特定の割合で含有してなるものであるので、機械的強度(引張強さ、引張伸び、衝撃強さ)が高く、摺動性および吸湿時における寸法安定性に優れている。
【0090】
(2)比較例1に係る樹脂組成物は、(a)成分の含有割合が過小であるので、引張強さが低く、摺動性にも劣るものである。
(3)比較例2に係る樹脂組成物は、(a)成分の含有割合が過大であると共に、(b)成分および(c)成分の含有割合が過小であるので、摺動性および吸湿時における寸法安定性に劣るものである。
(4)比較例3に係る樹脂組成物は、(b)成分の含有割合が過小であるので、引張伸びが低く、摺動性および吸湿時における寸法安定性(垂直方向)にも劣るものである。
(5)比較例4に係る樹脂組成物は、(b)成分の含有割合が過大であるので、引張強さが低く、摺動性にも劣るものである。
(6)比較例5に係る樹脂組成物は、(b)成分に代えて官能基を含有していない比較用(b)成分が含有されているので、引張伸びおよび衝撃強さが低いものである。
(7)比較例6に係る樹脂組成物は、(c)成分の含有割合が過小であるので、吸湿時における寸法安定性に劣るものである。
(8)比較例7に係る樹脂組成物は、(c)成分の含有割合が過大であるので、機械的強度が低く、摺動性にも劣るものである。
【0091】
(9)比較例8に係る樹脂組成物は、(c)成分に代えてその形状が針状である比較用(c)成分が含有されているので、引張伸びが低く、吸湿時における寸法安定性(垂直方向)にも劣るものである。
(10)比較例9に係る樹脂組成物は、(c)成分に代えてその形状が粒状である比較用(c)成分が含有されているので、機械的強度が低く、吸湿時における寸法安定性にも劣るものである。
【0092】
また、実施例1〜5に係る樹脂組成組成物は、(a)成分および(b)成分を混合して得られた混合組成物と、(c)成分とを混合する工程を経ることによって製造されたものであるので、一層高い衝撃強さと共に、優れた射出成形性が得られることが確認された。
【0093】
【発明の効果】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物は、特定のポリアミド樹脂よりなる(a)成分と、官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーよりなる(b)成分と、板状無機化合物よりなる(c)成分とを、各々特定の割合で含有してなるものであるため、機械的強度が高く、摺動性および吸湿時における寸法安定性にも優れている。
【0094】
本発明の成形用ポリアミド系樹脂組成物の製造方法によれば、上記の成形用ポリアミド系樹脂組成物を確実に得ることができる。
【0095】
本発明の成形体によれば、上記の成形用ポリアミド系樹脂組成物を成形用樹脂材料として射出成形法により成形することによって製造されたものであるため、高い機械的強度と共に、優れた摺動性および吸湿時における寸法安定性を得ることができる。

Claims (7)

  1. テトラメチレンジアミンを含むジアミンと、アジピン酸を含むジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミド樹脂よりなる(a)成分10〜98質量%と、官能基で変性されてなる官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーよりなる(b)成分1〜40質量%と、板状無機化合物よりなる(c)成分1〜55質量%とを含有することを特徴とする成形用ポリアミド系樹脂組成物。
  2. (a)成分を構成するポリアミド樹脂がポリアミド4,6樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の成形用ポリアミド系樹脂組成物。
  3. (b)成分を構成する官能基変性エチレン・プロピレンエラストマーが無水マレイン酸基、エポキシ基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基で変性されたエチレン・プロピレンエラストマーからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形用ポリアミド系樹脂組成物。
  4. (c)成分を構成する板状無機化合物が焼成カオリンからなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の成形用ポリアミド系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の成形用ポリアミド系樹脂組成物の製造方法であって、
    温度180〜350℃の条件により、(a)成分、(b)成分および(c)成分を混合することによって製造されるものであることを特徴とする成形用ポリアミド系樹脂組成物の製造方法。
  6. 温度180〜330℃の条件により、(a)成分および(b)成分を混合して得られる混合組成物と、(c)成分とを混合する工程を経ることを特徴とする請求項5に記載の成形用ポリアミド系樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の成形用ポリアミド系樹脂組成物を成形用樹脂材料として射出成形法により成形することによって製造されたものであることを特徴とする成形体。
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