JP2004107396A - 硬化性組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)と、エポキシ基含有シラン化合物と、ケチミン化合物からなり、必要に応じて少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)及び層状珪酸塩を含む硬化性組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気中の湿気と反応してゴム状に硬化する室温硬化性の組成物に関し、特に、硬化物の耐久性及び耐候性に優れた硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
反応性珪素基を含有する有機重合体をベースとした耐候性に優れたシーリング材用の硬化性組成物として、例えば下記特許文献1には、反応性珪素基含有オキシアルキレン重合体、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する硬化性組成物が開示されている。
【0003】
しかしながら、この硬化性組成物により得られる硬化物の耐候性は、サンシャインウエザオメーターで測定した値で2000時間程度が限界であり、必ずしも耐候性は十分ではなかった。また、上記硬化物の接着耐久性についても十分でなかった。下記特許文献2に記載のように、従来、変成シリコーン−エポキシの2液型接着剤を用いなければ、例えば、90℃温水試験などの厳しい試験において十分な接着耐久性を得ることはできなかった。
【0004】
他方、加水分解性シリル基を有する重合体を用いた室温硬化性組成物が下記特許文献3に開示されている。ここでは、主鎖がポリオキシアルキレンであり、末端に架橋可能な加水分解性シリル基を有する重合体100重量部と、エポキシ含有シラン化合物1〜10重量部と、加水分解性シリル基含有ケチミン化合物1〜10重量部とが配合されており、シーリング材としての物性を発現させることができるとともに、塩化ビニル鋼板などの難接着性の被着体に対して十分な接着性が得られるとされている。しかしながら、この室温硬化性組成物においても、硬化物の耐候性は十分でなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−287186号公報
【特許文献2】
特開平2−140269号公報
【特許文献3】
特許第2962642号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、耐候性及び接着耐久性に優れた硬化物を与える硬化性組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願の第1の発明は、少なくとも加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)、エポキシ基含有シラン化合物、及びケチミン化合物からなることを特徴とする硬化性組成物である。
【0008】
第1の発明では、好ましくは、さらにエポキシ化合物が配合される。
好ましくは、上記ケチミン化合物としては、加水分解性シリル基を含有するケチミン化合物が用いられる。
【0009】
第2の発明は、少なくとも加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)、エポキシ基含有シラン化合物、及びジアミン化合物からなることを特徴とする硬化性組成物である。
【0010】
第1,第2の発明では、上記ビニル系重合体(a)に加えて、主鎖が本質的にポリエーテル系重合体からなり、架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)が配合されてもよい。
【0011】
また、第1,第2の発明の特定の局面では、上記硬化性組成物に層状珪酸塩がさらに配合される。層状珪酸塩の配合により、硬化性組成物の硬化により得られた硬化物の耐候性が効果的に高められる。
【0012】
本願の第3の発明は、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)100重量部と、エポキシ基含有シラン化合物0.1〜10重量部と、加水分解性シリル基含有ケチミン化合物0.1〜10重量部と、層状珪酸塩0.1〜100重量部とからなることを特徴する硬化性組成物である。
【0013】
本願の第4の発明は、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)100重量部と、ジアミン化合物0.1〜10重量部と、層状珪酸塩0.1〜100重量部とからなることを特徴とする硬化性組成物である。
【0014】
本発明に係るシーリング材及び接着剤は、それぞれ第1〜第4の発明の硬化性組成物からなることを特徴とする。
以下、本発明の詳細を説明する。
【0015】
(第1,第2の発明)
ビニル系重合体(a)
少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)とは、1)架橋可能な加水分解性シリル基を有する開始剤を用いて重合を開始する方法、2)架橋可能な加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤を用いる方法、3)架橋可能な加水分解性シリル基を有するモノマーを共重合する方法等により得ることができる。
【0016】
なお、上記ビニル系重合体には、主鎖及び側鎖に、全体の50%以下の範囲でウレタン結合あるいはシロキサン結合からなる単位を含んでいてもよい。
ビニル系重合体(a)を製造する際に用いられるビニルモノマーについては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルモノマーに含まれる東亜合成化学工業株式会社製のアロニクスM−5700、東亜合成化学工業株式会社製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5、ダイセル化学工業株式会社製のPlaccel FA−1、Placcel FM−1、Placcel FM−4、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸もしくはリン酸エステル類との縮合生成物たるリン酸エステル基含有ビニル系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル系化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など)、それらの酸無水物(無水マレイン酸など)またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトンアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他のビニル系化合物が挙げられる。
【0017】
上記ビニルモノマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上併用されてもよい。
上記ビニルモノマーを用いて、例えば、以下の合成によりビニル系重合体(a)が得られる。
【0018】
(1)特開昭54−36395号公報に記載されているように、アリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をVIII族遷移金属の存在下で、下記一般式で表わされるヒドロシリコン化合物と反応させる方法。
【0019】
【化1】
【0020】
式中、Rは1価の炭化水素基及びハロゲン化された1価の炭化水素基の中から選ばれた基、aは0,1または2をそれぞれ示し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選ばれた基または原子を示す。
【0021】
(2)特開昭57−179210号公報に記載されているように、ビニルモノマーを、アルコキシシリル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート及びメルカプト基を含有する連鎖移動剤の存在下で共重合させる方法。
【0022】
(3)特開昭59−78222号公報に記載されているように、ビニルモノマーを、2官能ラジカル重合性化合物及び連鎖移動剤としてアルコキシシリル基を含有するメルカプタンの存在下で共重合させる方法。
【0023】
(4)特開昭60−23405号公報に記載されているように、ビニルモノマーを、重合開始剤としてアルコキシシリル基を含有するアゾビスニトリル化合物を使用して重合する方法。
【0024】
(5)特開平11−130931号公報に記載されているように、リビングラジカル重合法により、ビニル系重合体を製造する方法。
これらの共重合体の中でも、主鎖が(メタ)アクリル酸とアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからなる共重合体が、柔軟性の点から好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸とアルキル基の炭素数が2〜8のアルキル(メタ)アクリレートからなる共重合体である。また、架橋可能な加水分解性シリル基としては、メトキシシリル及びエトキシシリル基などのアルコキシシリル基が反応後有害な副生成物を生成しないので好適である。
【0025】
ビニル系重合体(a)の分子量が小さ過ぎると、硬化物がもろくなることがあり、大き過ぎると、作用性が悪くなることがある。従って、ビニル系重合体(a)の平均数分子量は、好ましくは、1万〜15万であり、分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)が3以下のものが、作業性と硬化物の伸びとのバランスに優れている点で好ましい。
【0026】
エポキシ基含有シラン化合物
エポキシ基含有シラン化合物とは、1個以上のエポキシ基と、加水分解性シリル基とを有する化合物を意味する。このようなエポキシ基含有シラン化合物としての例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。エポキシ基含有シラン化合物の配合量は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、あるいはビニル系重合体(a)及びポリエーテル系重合体(b)の合計100重量部に対し、0.1〜10重量部の範囲が好ましい。0.1重量部未満では、接着性が不十分となることがあり、10重量部を超えると、貯蔵安定性が悪くなることがある。
【0027】
ケチミン化合物
本発明で用いられるケチミン化合物は、特に限定されず、中でも好ましくは加水分解性シリル基含有ケチミン化合物が好ましい。
【0028】
加水分解性シリル基含有ケチミン化合物とは、以下の式(2)で示される化合物である。
【0029】
【化2】
【0030】
式(2)において、R1、R2、R4及びR5は炭素数1〜5のアルキル基、R3は炭素数1〜10アルキレン基を表わす。xは2または3である。
上記ケチミン化合物は、水分のない状態では安定に存在するが、水分の存在下では、1級アミンを生成するため、エポキシ基と反応する硬化剤として作用する。
【0031】
上記ケチミン化合物の具体例としては、例えば、3−トリエトキシシリル(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンなどが挙げられる。商品名としては、チッソ社製「S340」、信越化学社製「KBE−9103」等が挙げられる。
【0032】
上記ケチミン化合物の配合割合は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、またはビニル系重合体(a)及びポリエーテル系重合体(b)の合計100重量部に対し、0.1〜10重量部であることが望ましい。0.1重量部未満では接着性が不十分となり、10重量部を超えると貯蔵安性が悪くなることがある。
【0033】
エポキシ化合物
第1の発明において、エポキシ化合物は、硬化性組成物の硬化物の接着力を高めるために配合されており、エポキシ化合物は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、あるいはビニル系重合体(a)とポリエーテル系重合体(b)との合計100重量部に対し、0.5〜20重量部の割合で配合されることが好ましい。0.5重量部未満では、接着力が十分に高まらず、20重量部より多い場合には、硬化性組成物としての貯蔵安定性が低くなることがある。
【0034】
上記エポキシ化合物としては特に限定されないが、エポクロルヒドリン−ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポクロルヒドリン−ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m−アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジントリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンなどの多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などの不飽和重合体のエポキシ化合物などが用いられ得る。なお、これらに限定されず、一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。
【0035】
ジアミン化合物
第2の発明で用いられるジアミン化合物としては特に限定されないが、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、メタフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、トリメチルヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。ジアミン化合物は、、好ましくは、ビニル系重合体(a)またはビニル系重合体(a)及びポリエーテル系重合体(b)の合計からなるベース樹脂100重量部に対し、0.1〜20重量部の割合で添加される。0.1重量部未満では、接着性が十分でないことがあり、20重量部を越えると貯蔵安定性が低下することがある。
【0036】
ポリエーテル系重合体(b)
第1,第2の発明で必要に応じて添加される、本質的に主鎖がポリエーテル系重合体であり、加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)としては、主鎖がポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン及びポリオシキブチレンなどのポリオキシアルキレンからなり、末端に架橋可能な加水分解性シリル基を有する重合体が挙げられる。
【0037】
上記ポリエーテル系重合体(b)を配合することにより硬化物の耐水性が高められ、シーリング材として用いた際に、より高い弾性を発現させることができる。
【0038】
ポリエーテル系重合体(b)の分子量が小さ過ぎると、硬化物の伸びが十分でなくなり、シーリング材として用いた際に、例えば、目地面に対する追随性が低下することがあり、大き過ぎると、硬化前の粘度が高くなり過ぎ、配合に際しての作業性が低下することがある。従って、ポリエーテル系重合体(b)の平均数分子量は、好ましくは、10000〜30000であり、分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)が1.6以下のものが、作業性と硬化物の伸び及びバランスに優れているため望ましい。
【0039】
ポリエーテル系重合体(b)は、例えば、鐘淵化学工業社製、商品名MSポリマーとして、MSポリマーS−203、S−303など、サイゲルポリマーとして、サイゲルSAT−200、SAT−350、SAT−400、旭ガラス社製、商品名エクセスターとして、エクセスターESS−3620、ESS3430、ESS2420、ESS2410などが市販されている。ポリエーテル系重合体(b)の製造方法としては、例えば、末端に加水分解性のアリル基を有するポリオキシアルキレンを、VIII遷移金属の存在下で、下記の式(3)
【0040】
【化3】
【0041】
(式中、R1は1価の炭化水素基及びハロゲン化1価炭化水素基から選択される基を示し、aは、0、1または2の整数、xはハロゲン原子と、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選択される原子または基を示す)で示される水素化珪素化合物と反応させることにより得られる。
【0042】
上記ポリエーテル系重合体(b)は、必要に応じて添加されるが、その配合割合は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、10〜200の範囲が望ましい。10重量部未満の場合には、接着性向上等の効果が十分でないことがあり、200重量部を超えると、耐候性が悪くなることがある。
【0043】
層状珪酸塩
本発明で用いられる層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。本発明で用いられる層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。中でも、モンモリロナイト、膨潤性マイカが好ましい。上記層状珪酸塩は天然物または合成物のいずれであってもよく、これらの1種または2種以上を用い得る。
【0044】
上記層状珪酸塩としては、下記式により定義される形状異方性効果が大きいスメクタイト類や膨潤性マイカを用いることが、硬化性組成物の機械強度向上やガスバリヤ性向上の点からより好ましい。なお、層状珪酸塩の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を図1に模式的に示す。
【0045】
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶端面(B)の面積
図2に示すように、上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンとは、結晶表面上のナトリウム、カルシウム等のイオンであり、これらのイオンは、カチオン性物質とイオン交換性を有するので、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に捕捉(インターカレート)することができる。
【0046】
上記層状珪酸塩の陽イオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200ミリ等量/100gであるのが好ましい。50ミリ等量/100g未満であると、イオン交換により結晶層間に捕捉(インターカレート)できるカチオン性界面活性剤の量が少なくなるので、層間が十分に非極性化されないことがある。一方、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の層間の結合力が強固となり、層状珪酸塩の各層を構成している結晶薄片間の距離を増大し難くなることがある。
【0047】
上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で存在しているものを含んで分散しているものが好ましい。平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で分散していると、硬化性組成物の耐候性、難燃性の性能発現に有利となる。
【0048】
なお、本明細書において、層状珪酸塩の平均層間距離とは、微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離であり、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影により、すなわち、広角X線回折測定法により算出できるものである。3nm以上に層間が開裂し、5層以下で存在しているものを含んで分散している状態は、層状珪酸塩の積層体の一部または全てが分散していることを意味しており、層間の相互作用が弱まっていることによる。
【0049】
さらに、層状珪酸塩の平均層間距離が6nm以上であると、難燃性、機械物性、耐熱性等の機能発現に特に有利である。平均層間距離が6nm以上であると、層状珪酸塩の結晶薄片層が層毎に分離し、層状珪酸塩の相互作用がほとんど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の樹脂中での分散状態が剥離安定化の方向に進行する。すなわち、層状珪酸塩が1枚づつ薄片状に乖離した状態で硬化性組成物中に安定化されて存在することとなる。
【0050】
層状珪酸塩の分散状態としては、ベースとなる樹脂、すなわちビニル系重合体(a)中またはビニル系重合体(a)とポリエーテル系重合体(b)との混合物中において層状珪酸塩の薄片状結晶が高度に分散していることが好ましい。より具体的には、層状珪酸塩の10重量%以上が5層以下で存在している状態に分散されていることが好ましく、より好ましくは、層状珪酸塩の20重量%以上が5層以下の状態で存在していることが望ましい。さらに、分散している薄片状結晶の積層数が5層以下であれば、層状珪酸塩の添加による効果が良好に得られるが、3層以下であればより好ましく、単層状に分散していることがさらに望ましい。
【0051】
本発明の層状珪酸塩は、4級アンモニウム塩で処理されてなる層状珪酸塩であることが好ましい。4級アンモニウム塩で処理することにより、層状珪酸塩の上記ベース樹脂中への分散性を向上させることができるからである。また、4級アンモニウム塩は上記有機重合体の架橋反応に対する触媒作用があることが知られており、層状珪酸塩と共に上記ベース樹脂中に分散することにより分散性の向上と共に硬化速度を促進させることも可能となる。
【0052】
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。上記の中でも、良好な分散性が得られることから、炭素数6以上のアルキル鎖またはポリオキシアルキレン鎖を有する4級アルキルアンモニウムイオン塩が好ましい。
【0053】
層状珪酸塩の分散には各種攪拌機を用いることができるが、分散しにくい場合には3本ロール等の高剪断がかかる装置を用いて分散を行うと所望の分散状態を得やすい場合がある。
【0054】
第1,第2の発明の硬化性組成物における層状珪酸塩の配合割合は、好ましくは、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、あるいはビニル系重合体(a)及びポリエーテル系重合体(b)の合計100重量部に対し、0.1〜200重量部である。より好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。層状珪酸塩の配合割合が0.1重量部未満では、耐候性向上効果が小さくなり、200重量部を越えると硬化性組成物の粘度が高くなり過ぎ、作業性及び生産性が低下することがある。また、200重量部を越えると、コストが高くなり、実用性が低下する恐れがある。
【0055】
層状珪酸塩を分散させるには、各種攪拌機を用いることができるが、分散し難い場合には、3段ロールなどの高剪断が係る装置を用いて分散を行うことが望ましく、それによって所望の分散状態を実現することができる。
【0056】
(第3,第4の発明)
第3の発明では、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)100重量部、エポキシ含有シラン化合物0.1〜10重量部、加水分解性シリル基含有ケチミン化合物0.1〜10重量部及び層状珪酸塩0.1〜100重量部が必須成分として配合される。ここで、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)としては、前述した第1の発明で任意に用いられるポリエーテル系重合体(b)を用いることができる。また、エポキシ含有シラン化合物及び加水分解性シリル基含有ケチミン化合物についても、第1の発明において説明したものと同様ののを用いることができる。従って、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)、エポキシ基含有シラン化合物及び加水分解性シリル基含有ケチミン化合物の説明については、第1の発明の説明を援用することとする。
【0057】
第3の発明では、ポリエーテル系重合体(b)100重量部に対し、エポキシ基含有シラン化合物が0.1〜10重量部の割合で配合されている。このエポキシ基含有シラン化合物の配合割合が0.1重量部未満では、接着性が不十分となり、10重量部より多くなると、硬化性組成物の貯蔵安定性が悪くなるからである。また、上記ケチミン化合物は、ポリエーテル系重合体(b)100重量部に対し、0.1〜10重量部の割合で配合される。0.1重量部未満では、接着性が不十分であり、10重量部より高くなると、硬化性組成物の貯蔵安定性が悪くなる。
【0058】
第3の発明では、層状珪酸塩が上記ポリエーテル系重合体(b)100重量部に対し、0.1〜100重量部の割合で配合されている。層状珪酸塩は、耐候性を高めるために配合されており、配合割合が0.1重量部未満では、耐候性を高める効果が得られず、100重量部を越えると硬化性組成物の粘度が高くなり過ぎ、配合に際しての作業性や生産性が低下し、かつコストが高くつく。
【0059】
第4の発明では、上記ポリエーテル系重合体(b)100重量部に対し、エポキシ基含有シラン化合物0.1〜10重量部、ジアミン化合物0.1〜10重量部及び層状珪酸塩0.1〜10重量部が配合される。
【0060】
少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)及びエポキシ基含有シラン化合物は、第1の発明において説明されたポリエーテル系重合体(b)及びエポキシ基含有シラン化合物と同様であるため、第1の発明の項の説明を援用することとする。
【0061】
ジアミン化合物としては、第2の発明の場合と同様のジアミン化合物が用いられる。
上記ジアミン化合物の配合割合が0.1重量部未満では、接着性が十分でなく、10重量部を越えると貯蔵安定性が低下する。
【0062】
層状珪酸塩の配合割合が0.1〜100重量部とされているのは、0.1重量部未満では耐候性を高める効果が十分ではなく、100重量部を越えると粘度が高くなり過ぎ、配合に際しての作業性が低下し、生産性が低下し、かつコストが高くつくからである。
【0063】
(その他)
本発明(第1〜第4の発明)の硬化性組成物には、耐候性を向上させるために各種紫外線吸収剤及びまたは光安定剤を配合することが好ましい。層状珪酸塩との併用により、層状珪酸塩が各種紫外線吸収剤や光安定剤のブリードアウトを抑制するように作用するため、硬化物中にこれらが長期にわたって保持されるためである。
【0064】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の公知の紫外線吸収剤が挙げられ、中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が紫外線吸収性能が高いので好ましい。上記紫外線吸収剤を配合する場合には、上記ビニル系重合体(a)またはポリエーテル系重合体(b)、あるいはこれらを併用すると共にその双方からなるベース樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部配合されているのが好ましい。0.5重量部よりも少ないと耐候性の向上効果が不十分であることがあり、10重量部を越えると、呈色によりシーリング材としての外観を損なう等の問題を生じる。
【0065】
上記光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤が用いられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、一般に紫外線吸収剤と併用すると優れた効果を発揮する。上記ヒンダードアミン系光安定剤(以下、光安定剤)の中でも、下記一般式(4)で示される構造を有する基を分子中に有するものが、層状珪酸塩と併用すると特に著しい効果がある。このようヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0066】
【化4】
【0067】
第1〜第4の発明に係る硬化性組成物では、必要に応じて、可塑剤、硬化触媒、脱水剤、充填剤及びたれ防止剤などを配合してもよい。
【0068】
(1)可塑剤
可塑剤は硬化物の伸びを高めたり、低モジュラスト化するため使用されるものであり、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジべンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類;リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ可塑剤類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;塩素化パラフィン、ポリブタジエン、イソパラフィンなどが挙げられる。
これらの可塑剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。好ましくは、数平均分子量(Mn)500〜30000のポリプロピレングリコールが用いられる。
上記可塑剤の配合量は、上記ベースとなる樹脂100重量部に対して、80重量部以上が好ましい。80重量部よりも多くなると、塗装性が低下する。
【0069】
(2)硬化触媒
上記硬化触媒は、加水分解性シリル基の湿気硬化反応を促進するために使用されるものであり、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン塩;他の酸性触媒及び塩基性触媒などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
(3)脱水剤
上記脱水剤は、硬化性組成物の保存時における侵入水分を除去するために使用されるものであり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメチルシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシラン化合物類;オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等の加水分解性エステル化合物類が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
(4)各種の充填剤
充填剤は硬化後の組成物の補強を目的として使用されるものであり、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、ガラスバルーン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種が併用されてもよい。
【0072】
(5)たれ防止剤
上記たれ防止剤としては、例えば、水添ひまし油、脂肪族ビスアマイド、ヒュームドシリカ等のたれ防止剤が挙げられる。
【0073】
本発明の硬化組成物には、さらに必要に応じて、老化防止剤、顔料、溶剤、香料等を配合することができる。
【0074】
【発明の実施の形態】
以下、具体的な実施例を挙げることにより本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
重合体の合成は、特開平11−100433号公報に記載の比較合成例1及び合成例1と同様にして、下記重合体A及び重合体Bを得た。
【0075】
(ポリマー合成例1)
架橋性シリル基含有モノマーを用いた架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)の合成(重合体A)
トルエン400g、アクリル酸ブチル385g、メタクリル酸メチルジメトキシプロピル15g及びアゾビスイソブチロニトリル6gを1Lフラスコ中で窒素バブリングしながら105℃で7時間重合した。トルエンを留去することにより架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)が得られた。この重合体Aの粘度は74Pa・s(23℃)であり、数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により8500、分子量分布は2.5であった。また、1H−NMR分析より求めた重合体Aの1分子当りの平均の水酸基の個数は1.4であった。
【0076】
(ポリマー合成例2)
末端に架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)の合成(重合体B)
50mLのフラスコに臭化第一銅0.63g、ペンタメチルジエチレントリアミン0.76g、アセトニトリル5mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.78g及びアクリル酸ブチル44.7gを仕込み、凍結脱気を行った後、窒素雰囲気下で70℃で6時間反応させた。活性アルミナのカラムを通して銅触媒を除去し、精製することにより、末端にBr基を有する重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)で23600、分子量分布は1.1であった。
【0077】
窒素雰囲気下、200mLフラスコに上記で得た末端にBr基を有する重合体34g、ペンテン酸カリウム1.0g及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)34mLを仕込み、70℃で4時間反応させた。反応混合液中の未反応のペンテン酸カリウム及び生成した臭化カリウムを水抽出により除去し、末端にアルケニル基を有する重合体を得た。この末端にアルケニル基を有する重合体と、等重量(30.5g)の珪酸アルミニウムとをトルエンに混合し、100℃で攪拌した。4時間後、珪酸アルミニウムを濾過し、濾液の揮発分を減圧下で加熱して留去することによって重合体を精製した。得られた重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)で24800、分子量分布は1.1であった。また、1H−NMR分析より求めた重合体1分子当りのアルケニル基の個数は1.5であった。
【0078】
200mlの耐圧反応管に上記で得た末端にアルケニル基を有する重合体21g、メチルジメトキシシラン0.94ml、オルトギ酸メチル0.13ml及び白金ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)2×10−4モルを仕込み、100℃で4時間反応させ、末端に架橋性シリル基を有する重合体Bを得た。得られた重合体Bの粘度は、100Pa・s(23℃)であり、数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)で25400、分子量分布は1.2であった。また、1H−NMR分析より求めた重合体Bの1分子当りの架橋性シリル基の個数は1.5であった。
【0079】
(他に用意した材料)
[充填剤]
・炭酸カルシウム(白石工業社製「CCR」)
・酸化チタン(石原工業社製「R−820」)
[その他]
・ビニルトリメトキシシラン(脱水剤、チッソ社製「サイラエースS210」)
・ジブチル錫ジラウレート(シラノール縮合触媒)
・サノールLS770(ヒンダードアミン系光安定剤、三共社製)
・チヌビン327(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
・ソマシフMPE−100(ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理した膨潤性フッ素雲母、コープケミカル社製)
・エピコート828(ジャパンエポキシ製ビスフェノールA型エポキシ化合物)
・エポキシ基含有シラン化合物、信越化学社製、KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
・加水分解性シリル基含有ケチミン化合物、信越化学社製、KBE−9103(3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン
【0080】
(実施例1〜4、比較例1,2)
重合体AもしくはB、エポキシ基含有シラン化合物、ケチミン化合物、エポキシ化合物、充填剤、可塑剤、脱水剤、接着性付与剤、シラノール縮合触媒、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及び層状珪酸塩を下記の表1に示す配合となるように、外部から湿気が入らないように密封された混合攪拌機で減圧下で均一に混合して硬化性組成物を得た。
【0081】
なお、炭酸カルシウムについては、予め110℃で減圧乾燥したものを使用した。
上記実施例及び比較例で得られた硬化性組成物について下記の要領で性能評価を行った。
結果を下記の表1に示した。
【0082】
(1)耐候性
各硬化性組成物を50mm×150mm×厚み1mmのステンレス板に厚み0.5mmとなるように塗布し、23℃で168時間硬化・養生した後、下記の条件で光照射を行い、表面状態を目視観察により評価した。
【0083】
・光照射条件
試験装置: 岩崎電気社製アイスーパーUVテスター「SUV−F11型」
UV強度:100mW/cm2
限定波長:295nm〜450nm
ブラックパネル温度:63℃
照射距離:235mm(光源と試料間)
上記試験装置により300時間光照射後に、目視観察により、表面にクラックの無いものを○、表面にクラックの発生したものを×と判定した。
【0084】
(2)接着耐久性
モザイクタイルと窯業系サイディング材を各硬化性組成物を用いて接着し、「有機接着剤を利用した外装タイル・石張りシステム用接着剤の品質基準案」に基づいて温度23±2℃、50±5RH%で672時間養生後、老化試験としてアルカリ温水試験を下記の要領で行った後、引張試験を行った。判定基準として、接着強度が0.4N/mm2以上を満たすものを○とした。
【0085】
アルカリ温水試験…60±2℃の水酸化カルシウムを飽和水溶液中で168時間浸漬した。
【0086】
【表1】
【0087】
(実施例5,6及び比較例3)
主鎖がポリオキシプロピレンであり、末端にジメトキシシラン基を有する重合体(旭ガラス社製:商品名「エクセスター2410」分子量17000)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東芝シリコン社製:商品名「TSL8350」)、式(4)で示されるケチミン化合物(チッソ社製、商品名「S340」)、並びに層状珪酸塩(コープケミカル社製、商品名:ソマシフMPE−100)を用いた。
【0088】
【化5】
【0089】
さらにジブチル錫ラウリルレート、ビニルトリメトキシシラン、N−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(東芝シリコーン社製、商品名:「TSL8340」)及び他の添加剤として、炭酸カルシウム、酸化チタンフタル酸ジオクチルを用意した。さらに、紫外線吸収剤としてチヌビン327、光安定剤としてサノールLS770を用意した。
【0090】
上記各種成分を、下記の表2に示す組成に従って、混合攪拌機で均一に混合することにより、室温硬化性組成物を得た。
実施例5及び6並びに比較例3で得た室温硬化性組成物について、以下の要領で、接着性試験、引張強度試験及び耐候性試験を行った。
【0091】
(接着性試験)
被着体として、アルミニウム板及び塩化ビニル鋼板を用い、JIS A5758に基づくH型試験片を作製し、23℃及び60%相対湿度で2週間養生した後、50mm/分の速度で引張試験を行い、接着性を評価した。
【0092】
(引張強度試験)
厚さ2mmの室温硬化性組成物のシートを、23℃及び60%相対湿度で1週間養生した後、JIS K6301に準拠し、3号ダンベル試験片で50mm/分の速度で引張試験を行い、伸び率を評価した。
【0093】
(耐候性試験)
接着剤に、顔料(NV−6−2129、日本ピグメント社製)を下記の表2に示す割合で配合した。1mm厚のアルミニウム板上に、硬化性組成物を厚み0.1mm厚に塗布し、20℃及び相対湿度55%の相対湿度で14間養生し、耐候性試験片を得た。この試験片を、サンシャインウエザロメーターで4000時間照射し、照射前後の表面を観察した。観察は、クラックの有無及び色彩について行い、照射前後の色差(ΔE)として耐候性を評価した。ΔEが小さいほど耐候性に優れていることを示す。
【0094】
【表2】
【0095】
表2から明らかなように、層状珪酸塩の配合により、比較例3に比べて、実施例5,6では、耐候性が大幅に改善したことがわかる。
【0096】
(実施例7及び比較例4)
N,N’−ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンを、3−グリシドキシプロピルメトキシシラン及びケチミン化合物に代えて用いたことを除いては、実施例5及び6並びに比較例3と同様にして、下記の表3の比較例4及び実施例7に示す組成の各室温硬化性組成物を得た。
【0097】
このようにして得られた室温硬化性組成物について、実施例5及び6と同様にして、接着性試験、引張強度試験及び耐候性試験を行った。結果を下記の表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
表3から明らかなように、実施例7の硬化性組成物では、アルミニウム及び塩化ビニル鋼板に対しては十分な接着性を示し、かつ良好なゴム弾性を有しており、かつ比較例4に比べて耐候性が高められている。
【0100】
【発明の効果】
第1の発明に係る硬化性組成物では、少なくとも加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)と、エポキシ基含有シラン化合物と、ケチミン化合物とが配合されているため、大気中において室温で硬化が進行する。ビニル系重合体(a)は、加水分解性シリル基を含有するポリエーテル系重合体(b)に比べて耐候性に優れた硬化物を与える。また、エポキシ基含有シラン化合物及びケチミン化合物の配合により硬化物の接着耐久性が高められる。よって、ゴム状の硬化物であって、耐候性及び接着耐久性に優れた硬化物を得ることができる。
【0101】
従って、第1の発明によれば、屋外で用いられるシーリング材などに好適な硬化性組成物を提供することができる。
エポキシ化合物がさらに配合されている場合には、硬化物の接着力が高められる。
【0102】
第1の発明において、ケチミン化合物として、加水分解性シリル基含有ケチミンシラン化合物を用いた場合には、湿気硬化速度をより一層高めることができる。
【0103】
第2の発明に係る硬化性組成物では、少なくとも加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)、エポキシ基含有シラン化合物及びジアミン化合物からなるため、大気中の湿気により室温で硬化が進行する。ビニル系重合体(a)は、加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)に比べて耐候性に優れた硬化物を与える。また、エポキシ基含有シラン化合物及びジアミン化合物の配合により、硬化物の接着耐久性が高められる。よって、ゴム状の硬化物であって、耐候性及び接着耐久性に優れた硬化物を得ることができる。
【0104】
従って、第2の発明によれば、屋外で用いられるシーリング材などに好適な硬化性組成物を提供することができる。
第1,第2の発明において、少なくとも加水分解性シリル基を含有するポリエーテル系重合体(b)が含まれている場合には、ビニル系重合体(a)に加えてポリエーテル系重合体(b)を用いることにより、硬化物の耐水性やゴム弾性を高めることができ、用途に適した硬化性組成物を容易に提供することができる。
【0105】
第1,第2の発明において、層状珪酸塩がさらに含まれている場合には、層状珪酸塩の添加により、耐候性をより一層高めることができる。
特に、ビニル系重合体(a)100重量部またはビニル系重合体(a)及びポリエーテル系重合体(b)の合計100重量部に対し、層状珪酸塩が0.1〜200重量部の割合で配合されている場合には、層状珪酸塩の分散により耐候性が効果的に高められる。また、紫外線吸収剤や光安定剤がさらに含有されている場合には、層状珪酸塩の配合により、これらのブリードアウトが抑制され、それによって、耐候性は著しく高められる。
【0106】
第3の発明に係る硬化性組成物では、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)、エポキシ含有シラン化合物、加水分解性シリル基含有ケチミン化合物及び層状珪酸塩が上記特定の割合で配合されているため、室温で放置することにより、大気中の水分と反応して、ゴム状の硬化物が得られる。そして、この硬化物はアルミニウムなどの被着体だけでなく、塩化ビニル鋼板などの難被着性の被着体に対しても高い接着性を示す。また、硬化物自体が十分な伸び性を保有する。加えて、層状珪酸塩が上記特定の割合で配合されているため、耐候性においても優れている。
【0107】
同様に、第4の発明に係る硬化性組成物では、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)と、エポキシ基含有シラン化合物と、ジアミン化合物と、層状珪酸塩とが上記特定の割合で配合されているため、室温で放置することにより大気中の水分と反応して、硬化物を与える。この硬化物は、アルミニウムなどの被着体だけでなく、塩化ビニル鋼板などの難接着性の被着体に対しても高い接着性を示す。また、硬化物自体が十分な伸び性を保有する。加えて、層状珪酸塩が上記特定の割合で配合されているため、硬化物の耐候性においても優れている。
【0108】
第1〜第4の発明に係る硬化性組成物において、紫外線吸収剤及び光安定剤が含まれている場合には、紫外線吸収剤及び光安定剤の作用により、耐候性が高められ、さらに層状珪酸塩が配合されている場合には、層状珪酸塩により紫外線吸収剤及び光安定剤のブリードアウトが抑制されるので耐候性がより一層高められる。
【0109】
第1〜4の発明に係る硬化性組成物からなるシーリング材や接着剤は、第1〜4の硬化性組成物により構成されているので、大気中において湿気により硬化し、耐候性に優れたゴム状の硬化物を与えるため、各種弾性シーリング材や弾性接着剤として好適に用いれらる。
【図面の簡単な説明】
【図1】層状珪酸塩の薄片状結晶の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を説明するための模式図。
【図2】層状珪酸塩の層間を模式的に示す図。
Claims (10)
- 少なくとも加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)、エポキシ基含有シラン化合物、及びケチミン化合物からなることを特徴とする硬化性組成物。
- さらにエポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
- ケチミン化合物が、加水分解性シリル基含有ケチミンシラン化合物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
- 少なくとも加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)、エポキシ基含有シラン化合物、及びジアミン化合物からなることを特徴とする硬化性組成物。
- 少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)がさらに含まれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 層状珪酸塩がさらに含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
- 少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)100重量部、エポキシ基含有シラン化合物0.1〜10重量部、加水分解性シリル基含有ケチミン化合物0.1〜10重量部、及び層状珪酸塩0.1〜100重量部からなる硬化性組成物。
- 少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するポリエーテル系重合体(b)100重量部、エポキシ基含有シラン化合物0.1〜10重量部、ジアミン化合物、0.1〜20重量部、及び層状珪酸塩0.1〜100重量部からなる硬化性組成物。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなることを特徴とするシーリング材。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性組成物からなることを特徴とする接着剤。
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