JP4146695B2 - 硬化性組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気中の湿気と反応してゴム状に硬化する硬化性組成物に関し、特に防汚性に優れ、かつ耐候性に優れた硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
反応性珪素基を含有する有機重合体をベースとし、耐候性に優れたシーリング材用組成物として、例えば、下記の特許文献1には、反応性珪素基含有オキシアルキレン重合体と、ベンゾトリアーゾル系紫外線吸収剤と、ヒンダートフェノール系酸化防止剤とを含有する硬化性組成物が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−287186号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記硬化性組成物の耐候性は、サンシャインウエザオメーターで測定された値で2000時間程度が限界であった。従って、必ずしも十分な耐候性を有するものとはいえなかった。
【0005】
他方、上記硬化性組成物を、シーリング材、例えば外壁の目地に使われるシーリング材などに用いた場合、防汚性に優れていることが求められている。しかしながら、上記先行技術に記載の硬化性組成物では、十分な防汚性を得ることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、防汚性及び耐候性に優れた硬化物を与えることを可能とする硬化性組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る硬化性組成物は、少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するビニル系重合体(a)100重量部と、ステアリルアミン0.1〜5重量部と、ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理された層状珪酸塩1〜10重量部とを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るシーリング材は、本発明の硬化性組成物からなることを特徴とする。
本発明に係る接着剤は、本発明の硬化性組成物からなることを特徴とする。
【0011】
以下、本発明の詳細を説明する。
(少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するビニル系重合体)
本発明で用いられる、少なくとも架橋可能な加水分解性シリル基を有するビニル系重合体(a)とは、例えば、1)架橋可能な加水分解性シリル基を有する開始剤を用いて重合を開始する方法、2)架橋可能な加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤を用いる方法、3)架橋可能な加水分解性シリル基を有する共重合性モノマーを用いる方法等により得ることができる。
【0012】
なお、上記ビニル系重合体には、主鎖及び側鎖に、モノマー全体の50重量%以下の範囲でウレタン結合あるいはシロキサン結合からなる単位を含んでいてもよい。
【0013】
上記ビニル系重合体(a)を製造する際に用いられるビニルモノマーとしては特に限定されないが、その具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルモノマーに含まれる東亜合成化学工業(株)製のアロニクスM−5700、東亜合成化学工業(株)のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5、ダイセル化学工業(株)製のPlaccel FA−1、Placcel FM−1、Placcel FM−4、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類などのα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸もしくはリン酸エステル類との縮合生成物たるリン酸エステル基含有ビニル系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル系化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など)、それらの酸無水物(無水マレイン酸など)またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのジエステルまたはハーフエステルなどの不飽和カルボン酸のエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドンなどのアミド基含有ビニル系化合物;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸などのその他のビニル系化合物が挙げられる。
【0014】
これらのビニル系モノマーは単独で用いてもよく、また2種以上併用してもよい。これらのビニル系モノマーを用いて、例えば、以下のような合成を行なうことにより、重合体が得られる。
【0015】
(1)特開昭54−36395号公報に記載されているように、アリル基を有する(メタ)アクリル基エステル系共重合体をVIII族遷移金属の存在下で、下記の一般式(1)で表わされるヒドロシリコン化合物と反応させる方法。
【0016】
【化1】
Figure 0004146695
【0017】
式中、Rは1価の炭化水素基及びハロゲン化された1価の炭化水素基の中から選ばれた基、aは0、1または2をそれぞれ示し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選ばれた基または原子を示す。
【0018】
(2)特開昭57−179210号公報に記載されているように、ビニルモノマーを、アルコキシシリル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート及びメルカプト基を含有する連鎖移動剤の存在下で共重合させる方法。
【0019】
(3)特開昭59−78222号公報に記載されているように、ビニルモノマーを、2官能ラジカル重合性化合物及び連鎖移動剤としてのアルコキシシリル基を含有するメルカプタンの存在下で共重合させる方法。
【0020】
(4)特開昭60−23405号公報に記載されているように、ビニルモノマーを、重合開始剤としてアルコキシシリル基を含有するアゾビスニトリル化合物を使用して重合する方法。
【0021】
(5)特開平11−130931号公報に記載されているように、リビングラジカル重合法により、ビニル系重合体を製造する方法。
これらの重合体の中でも、主鎖が(メタ)アクリル酸とアルキル基の炭素数が1〜12のアルキル(メタ)アクリレートからなる(メタ)アクリレート系共重合体が、柔軟性の点から好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸とアルキル基の炭素数が2〜8のアルキル(メタ)アクリレートからなる共重合体である。また、架橋可能な加水分解性シリル基としては、メトキシシリル基及びエトキシシリル基などのアルコキシシリル基が反応後有害な副生成物を生成しないので好適である。
【0022】
ビニル系重合体(a)の分子量は特に限定されないが、数平均分子量が好ましくは1万〜15万であって、分子量分布Mw/Mnが3.0以下のビニル系重合体(a)が、作業性と硬化物の伸びとのバランスに優れている点で好ましい。
【0023】
なお、加水分解性シリル基は、下記の一般式(2)で表される。
【0024】
【化2】
Figure 0004146695
【0025】
(式中、R2は1価の炭化水素基、Yは加水分解性基、bは0,1,2の整数を意味する。Yとしてはアルコキシ基。)
【0026】
(少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するポリエーテル系重合体(c))
ポリエーテル系重合体(c)を添加することにより、硬化物の耐水性を高めたり、シーリング材を構成した場合のゴム弾性を高めることができる。
ビニル系重合体(a)及びポリエーテル系重合体(c)を併用する場合、その配合割合は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、ポリエーテル系重合体(c)0.1〜200重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜100重量部である。
【0027】
ポリエーテル系重合体(c)の配合割合が0.1重量部未満では、接着性改善効果が小さくなることがあり、200重量部を越えると、耐候性が低くなることがあり、かつ接着性向上効果がそれ程高くならないからである。
【0028】
ポリエーテル系重合体(c)とは、主鎖が本質的にポリエーテル系重合体であり、かつ末端に架橋可能な加水分解性シリル基を含有する重合体(c)とは、主鎖が本質的に、一般式〔−(R−O)n−、式中のRは炭素数1〜4であるアルキレン基を示す。〕で表される化学的に結合された繰り返し単位を含み、かつ末端に架橋可能な加水分解性シリル基を含有する重合体をさす。
【0029】
また、ポリエーテル系重合体(c)は、主鎖がポリエーテルと(メタ)アクリル酸エステルとからなる共重合体であってもよい。
上記重合体(c)は、例えば、末端にアリル基を有するポリアルキレンオキサイドをVIII族遷移金属の存在化で下記化学式(3)により表されるヒドロシランを反応させることによって合成される。
【0030】
【化3】
Figure 0004146695
【0031】
(式中R1は1価の炭化水素基及びハロゲン化された1価の炭化水素基から選択される基、aは0、1または2の整数、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基及びケトキシメート基より選択される原子または基を意味する。)上記重合体(c)の主鎖であるポリアルキレンオキサイドとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等が挙げられるが、室温硬化性組成物の硬化物が耐水性に優れ、かつシーリング材としての弾性を確保できるという点でポリプロピレンオキサイドが好ましい。
【0032】
上記架橋可能な加水分解性シリル基としては、反応後有害な副生成物を生成しない物が好ましく、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基等のアルコキシシリル基が挙げられる。
【0033】
ポリエーテル系重合体(c)の数平均分子量が小さくなると、硬化物の伸びが十分でなくなり、目地面に対する追従性が低下し、大きくなると硬化前の粘度が高くなり、配合工程の作業性が悪くなる。従って、好ましくは、数平均分子量は、4000〜30000であり、さらに好ましくは10000〜30000であり、かつ分子量分布は1.6以下が望ましい。
【0034】
上記ポリエーテル系重合体(c)としては、例えば、商品名「MSポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、MSポリマーS−203、S−303など、商品名「サイリルポリマー」(鐘淵化学工業社製)として、サイリルSAT−200、SAT−350、SAT−400や、商品名「エクセスター」(旭硝子社製)として、エクセスターESS−3620、ESS−3430、ESS−2420、ESS−2410などが市販されている。
【0035】
(融点が40〜75℃の範囲にある化合物)
本発明の硬化性組成物では、防汚性を高めるために、化合物(b)としてステアリルアミンが必須成分として含有されている。
【0039】
上記化合物(b)は、40〜75℃の温度で、固体と液体との間の温度範囲となる。従って、例えば、本発明に係る硬化性組成物を硬化させてシーリング材を構成した場合、周囲温度により上記化合物(b)がシーリング材の外表面に適度に染み出す。他方、上記化合物(b)は、水により容易に洗い流される。従って、表面に染み出した化合物(b)が、外表面の汚れと付着もしくは吸着し、雨水や洗浄水などにより容易に洗い流される。従って、シーリング材の外表面の防汚性が効果的に高められる。
【0040】
中でも、化合物(b)として、親水部及び疎水部を併せ持つものが好ましい。この場合には、疎水性の汚れが疎水部で吸着され、親水部の作用により雨や洗浄水により容易に流され得る。このような親水部及び疎水部を併せ持つ化合物(b)としては、ステアリルアミンが用いられる
【0041】
なお、融点が40℃未満の化合物では、シーリング材などの使用温度範囲で液状であることが多く、硬化物から染み出しが激しく起こり、逆に防汚性を低下ささせることがある。また、融点が75℃を超えると、硬化性組成物を製造する段階で均一に化合物を分散させるために加熱しなければならず、そのためベースとなるビニル系重合体(a)などの劣化が生じることがある。
【0042】
上記化合物(b)の配合割合は、ビニル系重合体(a)100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲に限定される。0.1重量部未満では、汚れ防止の効果が少なくなり、5重量部を超えると、硬化性組成物の硬化が速くなり過ぎ、硬化時間が短くなり、作業性が低下する。
【0043】
(紫外線吸収剤及び/または光安定剤)
本発明に係る室温硬化性組成物では、耐候性を高めるために、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のような紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミンなどの光安定剤が配合されてもよい。加えて、用途に応じて、顔料や難燃剤等が添加されてもよい。
【0044】
紫外線吸収剤及び/または光安定剤が配合されている場合、耐候性が高められるが、上述した通り、層状珪酸塩がさらに配合されている場合には、層状珪酸塩自体による紫外線吸収作用による耐候性向上効果だけでなく、層状珪酸塩によって紫外線吸収剤及び/または光安定剤のブリードアウトが抑制され、より一層耐候性を高めることができる。
【0045】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の公知の紫外線吸収剤が挙げられ、中でもベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が紫外線吸収性能が高いので好ましい。上記紫外線吸収剤を配合する場合には、上記ビニル系重合体(a)、またはビニル系重合体(a)及びポリエーテル系重合体(c)からなるベース樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部、より好ましくは、0.5〜10重量部配合されているのが好ましい。0.1重量部よりも少ないと耐候性の向上効果が不十分であることがあり、20重量部を越えると、呈色によりシーリング材としての外観を損なう等の問題を生じる。
【0046】
上記光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤が用いられる。ヒンダードアミン系光安定剤は、一般に紫外線吸収剤と併用すると優れた効果を発揮する。上記ヒンダードアミン系光安定剤(以下、光安定剤)の中でも、下記一般式(4)で示される構造を有する基を分子中に有するものが、層状珪酸塩と併用すると特に著しい効果がある。
【0047】
【化4】
Figure 0004146695
【0048】
このようなヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)イミノ}]等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0049】
(層状珪酸塩)
本発明で好ましくは用いられる層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。本発明で用いられる層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。中でも、モンモリロナイト、膨潤性マイカが好ましい。上記層状珪酸塩は天然物または合成物のいずれであってもよく、これらの1種または2種以上を用い得る。
【0050】
上記層状珪酸塩としては、下記式により定義される形状異方性効果が大きいスメクタイト類や膨潤性マイカを用いることが、硬化性組成物の機械強度向上やガスバリヤ性向上の点からより好ましい。なお、層状珪酸塩の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を図1に模式的に示す。
【0051】
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶端面(B)の面積
図2に示すように、上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンとは、結晶表面上のナトリウム、カルシウム等のイオンであり、これらのイオンは、カチオン性物質とイオン交換性を有するので、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に捕捉(インターカレート)することができる。
【0052】
上記層状珪酸塩の陽イオン交換容量としては特に限定されないが、50〜200ミリ等量/100gであるのが好ましい。50ミリ等量/100g未満であると、イオン交換により結晶層間に捕捉(インターカレート)できるカチオン性界面活性剤の量が少なくなるので、層間が十分に非極性化されないことがある。一方、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の層間の結合力が強固となり、層状珪酸塩の各層を構成している結晶薄片間の距離を増大し難くなることがある。
【0053】
上記層状珪酸塩は、上記ビニル系重合体(a)100重量部に対して1〜10重量部に限定される。0.1重量部未満では硬化物の耐候性向上や難燃化などの作用が発現され難く、100重量部を越えると、硬化性組成物の粘度が高くなり作業性、生産性が低下することがある。
【0055】
上記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で存在しているものを含んで分散しているものが好ましい。平均層間距離が3nm以上であり、5層以下で分散していると、硬化性組成物の耐候性、難燃性の性能発現に有利となる。
【0056】
なお、本明細書において、層状珪酸塩の平均層間距離とは、微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離であり、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影により、すなわち、広角X線回折測定法により算出できるものである。3nm以上に層間が開裂し、5層以下で存在しているものを含んで分散している状態は、層状珪酸塩の積層体の一部または全てが分散していることを意味しており、層間の相互作用が弱まっていることによる。
【0057】
さらに、層状珪酸塩の平均層間距離が6nm以上であると、難燃性、機械物性、耐熱性等の機能発現に特に有利である。平均層間距離が6nm以上であると、層状珪酸塩の結晶薄片層が層毎に分離し、層状珪酸塩の相互作用がほとんど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の樹脂中での分散状態が剥離安定化の方向に進行する。すなわち、層状珪酸塩が1枚づつ薄片状に乖離した状態で硬化性組成物中に安定化されて存在することとなる。
【0058】
層状珪酸塩の分散状態としては、ベースとなる樹脂中において層状珪酸塩の薄片状結晶が高度に分散していることが好ましい。より具体的には、層状珪酸塩の10重量%以上が5層以下で存在している状態に分散されていることが好ましく、より好ましくは、層状珪酸塩の20重量%以上が5層以下の状態で存在していることが望ましい。さらに、分散している薄片状結晶の積層数が5層以下であれば、層状珪酸塩の添加による効果が良好に得られるが、3層以下であればより好ましく、単層状に分散していることがさらに望ましい。
【0059】
本発明の層状珪酸塩は、ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理された層状珪酸塩である。4級アンモニウム塩で処理することにより、層状珪酸塩の上記ベース樹脂中への分散性を向上させることができるからである。また、4級アンモニウム塩は上記有機重合体の架橋反応に対する触媒作用があることが知られており、層状珪酸塩と共に上記ベース樹脂中に分散することにより分散性の向上と共に硬化速度を促進させることも可能となる。
【0061】
層状珪酸塩の分散には各種攪拌機を用いることができるが、分散しにくい場合には3本ロール等の高剪断がかかる装置を用いて分散を行うと所望の分散状態を得やすい場合がある。
【0062】
本発明に係る室温硬化性組成物には、上記の成分以外に、硬化触媒、シランカップリング剤、可塑剤、脱水剤、垂れ防止剤、充填剤等が適宜添加されていてもよい。
【0063】
上記硬化触媒は、架橋可能な加水分解性シリル基の湿気硬化反応を促進する目的で添加される。上記硬化触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の錫カルボン酸塩類、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルの反応物、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類、オクチル酸鉛等が挙げられる。上記硬化触媒は1種のみが用いられてもよく、あるいは2種以上併用されてもよい。
【0064】
上記硬化触媒が少なくなると硬化速度が低下し、また多くなると硬化速度が速くなりすぎて作業性が低下するため、添加量は重合体(a)100重量部または重合体(a)及び(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。
【0065】
上記シランカップリング剤は、引っ張り物性を調整する目的で添加される。この例としては、1分子中にシラノール基を1個有するシリコン化合物が挙げられ、例えば、トリフェニルシラノール、トリアルキルシラノール、ジアルキルフェニルシラノール、ジフェニルアルキルシラノール等が挙げられる。
【0066】
同様に、加水分解して1分子中にシラノール基を1個有する化合物を生成するシリコン化合物も有効である。例えば、トリフェニルメトキシシラン、トリアルキルメトキシシラン、ジアルキルフェニルメトキシシラン、ジフェニルアルキルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリアルキルエトキシシラン等が挙げられる。上記シランカップリング剤は1種のみが用いられてもよく、あるいは2種類以上併用されてもよい。
【0067】
上記可塑剤は硬化後の伸び物性を高めたり、低モジュラス化する目的で添加される。上記可塑剤として、例えば、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪酸一塩基酸、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル等が挙げられる。上記可塑剤は単独または2種類以上併用してもよい。
【0068】
上記脱水剤は保存中における水分除去の目的で添加される。上記脱水剤として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のシラン化合物、及びオクタデシルイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リシンエステルトリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートオクタン等のイソシアネート化合物が挙げられる。上記脱水剤は単独または2種類以上併用してもよい。
【0069】
上記脱水剤が少なくなると、貯蔵時に増粘しゲル化することから貯蔵安定性が低下し、また多くなると施工後の硬化時間が長くなるため、添加量は重合体(a)100重量部または重合体(a)及び(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。
【0070】
上記垂れ防止剤は被着体への塗布時における垂れ防止の目的で添加される。上記垂れ防止剤としては、例えば、水添ヒマシ油誘導体、脂肪酸アマイドワックス、ステアリル酸アルミニウム、ステアリル酸バリウム等が添加されてもよい。上記垂れ防止剤は単独または2種類以上併用しもよい。
【0071】
上記充填剤は硬化物の補強の目的で添加される。上記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、含水珪酸、無水珪酸、珪酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック等が挙げられる。上記充填剤は単独または2種類以上併用してもよい。
【0072】
(シーリング材及び接着剤)
本発明に係る硬化性組成物は、一液型であるため、適用が容易であり、かつ大気中の湿気と反応して硬化した硬化物が良好なゴム弾性を有する。従って、本発明に係る硬化性組成物は、シーリング材、特に弾性シーリング材や接着剤に好適に用いられる。
【0073】
また、本発明に係る硬化性組成物は、上記のように化合物(b)の配合により防汚性に優れているため、外壁用シーリング材、構造物用接着剤などの外表面に表れる部分に用いられるシーリング材や接着剤に好適に用いられる。
【0074】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0075】
なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
重合体の合成は、特開平11−100433号公報に記載の比較合成例1及び合成例1と同様にして、下記重合体A及び重合体Bを得た。
【0076】
(ポリマー合成例1)
架橋性シリル素基含有モノマーを用いた架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)の合成(重合体A)
トルエン400g、アクリル酸ブチル385g、メタクリル酸メチルジメトキシプロピル15g及びアゾビスイソブチロニトリル6gを1Lフラスコ中で窒素バブリングしながら105℃で7時間重合した。トルエンを留去することにより架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)が得られた。この重合体Aの粘度は74Pa・s(23℃)であり、数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により8500、分子量分布は2.5であった。また、1H−NMR分析より求めた重合体Aの1分子当りの平均の水酸基の個数は1.4であった。
【0077】
(ポリマー合成例2)
末端に架橋性シリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)の合成(重合体B)
50mLのフラスコに臭化第一銅0.63g、ペンタメチルジエチレントリアミン0.76g、アセトニトリル5mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.78g及びアクリル酸ブチル44.7gを仕込み、凍結脱気を行った後、窒素雰囲気下で70℃で6時間反応させた。活性アルミナのカラムを通して銅触媒を除去し、精製することにより、末端にブロモ基を有する重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)で23600、分子量分布は1.1であった。
【0078】
窒素雰囲気下、200mLフラスコに上記で得た末端にブロモ基を有する重合体34g、ペンテン酸カリウム1.0g及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)34mLを仕込み、70℃で4時間反応させた。反応混合液中の未反応のペンテン酸カリウム及び生成した臭化カリウムを水抽出により除去し、末端にアルケニル基を有する重合体を得た。この末端にアルケニル基を有する重合体と、等重量(30.5g)の珪酸アルミニウムとをトルエンに混合し、100℃で攪拌した。4時間後、珪酸アルミニウムを濾過し、濾液の揮発分を減圧下で加熱して留去することによって重合体を精製した。得られた重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)で24800、分子量分布は1.1であった。また、1H−NMR分析より求めた重合体1分子当りのアルケニル基の個数は1.5であった。
【0079】
200mlの耐圧反応管に上記で得た末端にアルケニル基を有する重合体21g、メチルジメトキシシラン0.94ml、オルトギ酸メチル0.13ml及び白金ビス(ジビニルテトラメチルジシロキサン)2×10-4モルを仕込み、100℃で4時間反応させ、末端に架橋性シリル基を有する重合体Bを得た。得られた重合体Bの粘度は、100Pa・s(23℃)であり、数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)で25400、分子量分布は1.2であった。また、1H−NMR分析より求めた重合体Bの1分子当りの架橋性シリル基の個数は1.5であった。
【0080】
(実施例1、2,比較例1〜3
表1に示した配合量となるように重合体AもしくはB、ステアリルアミン、充填剤、可塑剤、脱水剤、接着性付与剤、シラノール縮合触媒、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び層状珪酸塩を、外部から湿気が入らないように密封された混合攪拌機で減圧下で均一に混合し、実施例1、2及び比較例1〜3の各硬化性組成物を得た。
【0081】
なお、各成分の詳細は以下の通りである。
(a)ベース樹脂
・重合体A
・重合体B
(b)充填剤
炭酸カルシウム(白石工業社製、品番:CCR、予め110℃で減圧乾燥したもの)
酸化チタン(石原産業社製、品番:R−820)
(c)可塑剤
ポリプロピレングリコール(三井化学社製、ジオール3000、Mn=3000)
(d)その他の添加成分
脱水剤(ビニルトリメトキシシラン、チッソ社製、商品名:サイラエースS210)
接着性付与剤(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製、KBM−603)
シラノール縮合触媒(ジブチル錫ジラウレート)
ヒンダードアミン系光安定剤(三共社製、品番:サノールLS770)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャリティーケミカル社製、品番:チヌビン327)
層状珪酸塩(ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理された膨潤性フッ素雲母、コープケミカル社製、商品名:ソマシフMPE−100)
【0082】
(実施例及び比較例の評価)
各硬化性組成物について、▲1▼耐候性及び▲2▼耐汚染性を以下の要領で評価した。
▲1▼耐候性
各硬化性組成物を50mm×150mm(厚み1mm)のステンレス板に厚み0.5mmとなるように塗布し硬化養生した後、下記の条件で光照射を行ない、表面状態を目視観察により評価した。
【0083】
・光照射条件
試験装置:岩崎電気社製アイスーパーUVテスター「SUV−F11型」
UV強度:100mW/cm2
限定波長:295nm〜450nm
ブラックパネル温度:63℃
照射距離:235mm(光源と試料間)
上記試験装置により300時間光照射毎に、目視観察により、表面にクラックのないものを〇、表面にクラックの発生したものを×と判定した。
【0084】
▲2▼耐汚染性
▲1▼で作製された試験板を、露天に1ヶ月放置し、1ヶ月後の色差の変化を色差計により測定した。色差の変化が3以下である場合を○、色差の変化が3を超える場合×を付した。
【0085】
【表1】
Figure 0004146695
【0086】
【発明の効果】
本発明に係る硬化性組成物では、少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するビニル系重合体(a)100重量部と、ステアリルアミン0.1〜5重量部と、ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理された層状珪酸塩1〜10重量部とを含有するため、大気中の湿気とビニル系重合体(a)が反応して硬化し、ゴム弾性を有する硬化物を与える。そして、ステアリルアミンが配合されているため、ステアリルアミンが硬化物表面に適度に染み出し、他方、ステアリルアミンが水により容易に洗い流される。従って、表面に染み出したステアリルアミンが、表面の汚れを付着し、雨水や洗浄水により容易に洗い流されるため、硬化物の表面の耐汚染性が効果的に高められる。
【0087】
加えて、少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するビニル系重合体(a)は、少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するポリエーテル系重合体のみからなる硬化性組成物に比べて、耐候性に優れた硬化物を与える。
【0088】
よって、本発明によれば耐汚染性及び耐候性に優れた硬化物を与えることを可能とする硬化性組成物を提供することができ、本発明の硬化性組成物は、外壁用シーリング材や外壁用接着剤などに用いられたときに大きな効果を発揮する。
【0090】
上記ビニル系重合体(a)の主鎖が本質的に(メタ)アクリル酸エステル系重合体である場合には、硬化物の柔軟性を高めることがてき、弾性シーリング材や弾性接着剤として好適な硬化性組成物を提供することができる。
【0091】
紫外線吸収剤や光安定剤がさらに配合されている場合には、これらの作用により、硬化物の耐候性がより一層高められる。
層状珪酸塩がさらに配合されている場合には、層状珪酸塩自体の作用により、耐候性が高められ、さらに紫外線吸収剤及び光安定剤と層状珪酸塩とが配合されている場合には、層状珪酸塩により紫外線吸収剤及び光安定剤のブリードアウトが抑制され、より一層耐候性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】層状珪酸塩の薄片状結晶の結晶表面(A)及び結晶端面(B)を説明するための模式図。
【図2】層状珪酸塩の層間の交換性陽イオンを説明するための模式図。

Claims (3)

  1. 少なくとも架橋可能な加水分解性のシリル基を有するビニル系重合体(a)100重量部と、ステアリルアミン0.1〜5重量部と、ポリオキシプロピレンジエチル4級アンモニウム塩で有機処理された層状珪酸塩1〜10重量部とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
  2. 請求項1に記載の硬化性組成物からなることを特徴とするシーリング材。
  3. 請求項1に記載の硬化性組成物からなることを特徴とする接着剤。
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