JP2004104955A - 車両用交流発電機 - Google Patents

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Abstract

【課題】冷却風の吸入口周辺で発生するファン騒音を低減することができる車両用交流発電機を提供すること。
【解決手段】車両用交流発電機1のフロント側ハウジング4は、4箇所の支持部420から軸受け収納部に延びた4本のスポーク430を有している。各スポーク430は、回転軸24を中心とした放射線に対して、外周側にいくほど回転子2の回転方向の上流側に傾斜している。この傾斜の角度αは、10°〜45°の範囲内で設定される。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却ファンを内蔵する車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両には、回転子の回転に伴って三相の固定子巻線に誘起された交流電圧を整流装置で整流することにより車載バッテリを充電する車両用交流発電機が搭載されている。最近の多くの車両用交流発電機の回転子には、発電によって発熱する固定子巻線を冷却するために、軸方向の端面に冷却ファンが取り付けられている。また、車両用交流発電機のハウジングには、回転軸とほぼ平行な向きに外部から内部に空気を吸い込む吸入口や、回転軸とほぼ垂直な向きに沿って内部から外部に向かって空気を排出する排気口が形成されている。回転子が回転駆動されるとこの回転子に取り付けられた冷却ファンも回転するため、ハウジングに設けられた吸入口から吸い込んだ冷却風によって固定子巻線を冷却するとともに、この冷却風をハウジングに設けられた排気口から排出している。
【0003】
このようにして回転子の冷却ファンで冷却風を吸い込むとともに排出して固定子巻線を冷却する際に、ハウジングの排気口の周辺で冷却風に乱れが生じて干渉音(以後、この干渉音を「ファン騒音」と称する)が発生したり、冷却風がハウジングの吸入口を通過する際にこの吸入口に形成された異物侵入防止用のリブの周辺で冷却風に乱れが生じてファン騒音が発生していた。
【0004】
ハウジングの排気口周辺で発生するファン騒音を低減する従来技術としては、冷却ファンの翼形状を変えたり、固定子巻線の巻装形態を変更してコイルエンド形状を変えたり、排気口形状を変える等の手法が知られている。これらの手法を一あるいは組み合わせて実施することにより、排気口周辺における冷却風の乱れを低減することが可能であり、これに伴ってファン騒音を低減することができる。
【0005】
また、ハウジングの吸入口周辺で発生するファン騒音を低減する従来技術としては、吸気口リブを放射線に対して回転子の回転方向とは逆方向側に25°〜35°傾斜させた車両用交流発電機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような形状の吸気口リブを形成することにより、吸気口を通過する冷却風の乱れを低減してファン騒音の発生を抑えている。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第WO00/16467号パンフレット(第8−15頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特許文献1に開示された従来方式では、車両用交流発電機の構造によっては、吸気口周辺で発生する冷却風の乱れを十分に低減できないおそれがあるという問題があった。例えば、上述したように吸気口に設けられたリブは、主にこの吸気口を介して内部に侵入する小石等の異物を排除するために設けられていて十分な強度を必要としないことから、軸受け収納部を中心に十字状に設けられていて十分な強度を必要とする4カ所のスポーク部分と比べると、軸方向に沿った長さが短く設定されている。したがって、このようなリブの形成方向を工夫しても、これに比べて軸方向の長さが十分に長いスポークに沿って冷却風が流れるため、ファン騒音低減の効果が少なくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、冷却風の吸入口周辺で発生するファン騒音を低減することができる車両用交流発電機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機は、回転軸に固定される界磁鉄心とこの界磁鉄心の軸方向端面に取り付けられる冷却ファンとを有する回転子と、回転子の外周に配置された固定子と、回転子を回転可能に支持するとともに冷却ファンによって発生する冷却風を内部に吸い込む複数の吸入口が形成されたハウジングとを備えており、ハウジングの一部であって、隣接する2つの吸入口の間に形成されて回転子を支持する径方向部材を、回転軸からの放射線に対して、外周側にいくほど回転子の回転方向の上流側に傾斜させている。
【0010】
また、本発明の車両用交流発電機は、回転軸に固定される界磁鉄心とこの界磁鉄心の軸方向端面に取り付けられた冷却ファンとを有する回転子と、回転子の外周に配置された固定子と、回転子を回転可能に支持するとともに冷却ファンによって発生する冷却風を内部に吸い込む複数の吸入口が形成されたハウジングとを備えており、ハウジングの一部であって、回転子の回転方向に沿って配置された複数の吸入口とほぼ同じ径方向位置に形成された互いに軸方向長さが異なる複数種類の径方向部材の内、最も軸方向に長い径方向部材を、回転軸からの放射線に対して、外周側にいくほど回転子の回転方向の上流側に傾斜させている。
【0011】
冷却ファンの回転に伴って発生する冷却風の流れを観察すると、回転子の回転方向に沿った成分を有しており、強度の観点から回転軸方向に沿って長い径方向部材の傾斜方向、あるいは軸方向長さが異なる複数種類の径方向部材が形成されている場合には最も軸方向に長い径方向部材の傾斜方向を、この冷却風の流れに沿った向きに形成することにより、径方向部材近傍の吸入口周辺で発生するファン騒音を低減することが可能になる。
【0012】
また、上述した径方向部材の傾斜角を10°〜45°の範囲内で設定することが望ましい。実際に、径方向部材の角度を変更した車両用交流発電機を用いてファン騒音のレベルを測定した結果、この範囲内で傾斜角度を設定することにより、ファン騒音の良好な低減効果が得られることが確かめられた。
【0013】
また、上述した径方向部材は、回転子の回転方向の下流側に配置された面のみを傾斜させることが望ましい。このようにした場合であっても、吸入口周辺で冷却風の流れが乱れることを抑制することが可能になり、吸入口周辺で発生するファン騒音を低減することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の車両用交流発電機の正面図である。また、図2は本実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。これらの図に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、回転子2、固定子3、フロント側ハウジング4、リヤ側ハウジング5、ブラシ装置6、整流装置7、電圧調整器8、プーリ9等を含んで構成されている。
【0015】
回転子2は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した界磁巻線21を、それぞれが6個の爪部を有する界磁鉄心22、23によって、回転軸24を通して両側から挟み込んだ構造を有している。また、フロント側(プーリ9側)の界磁鉄心22の端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すために軸流式又は軸流式と遠心式を混合した冷却ファン25が溶接等によって取り付け固定されている。同様に、リヤ側の界磁鉄心23の端面には、リヤ側から吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すための遠心式の冷却ファン26が溶接等によって取り付け固定されている。
【0016】
回転軸24のリヤ側には界磁巻線21の両端に電気的に接続されたスリップリング27、28が形成されており、ブラシ装置6内のブラシ61、62をスリップリング27、28のそれぞれに押し当てた状態で組み付けることにより、整流装置7から界磁巻線21に対して励磁電流が流れるようになっている。
【0017】
固定子3は、固定子鉄心31に形成された複数個のスロットに、三相の固定子巻線32が所定間隔で巻き回されている。
整流装置7は、固定子3の三相の固定子巻線32の出力電圧である三相交流を整流して直流出力を得るためのものであり、所定の間隔で固定される正極側放熱板および負極側放熱板と、それぞれの放熱板に半田付け等によって取り付けられた複数個の整流素子とを含んで構成されている。
【0018】
フロント側ハウジング4およびリヤ側ハウジング5は、上述した回転子2および固定子3を収納しており、回転子2が回転軸24を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子2の界磁鉄心22、23の外側に所定の隙間を介して配置された固定子3が固定されている。この固定子3の固定は、回転子2の回転方向に沿って等間隔に設けられた4箇所の支持部420にボルト34を通して締め付けることにより行われる。
【0019】
電圧調整器8は、界磁巻線21に流す励磁電流を制御することにより車両用交流発電機1の出力電圧を調整するためのものであり、電気負荷と発電量とに応じて変化する出力電圧をほぼ一定に維持する。プーリ9は、エンジン(図示せず)の回転を車両用交流発電機1内の回転子2に伝えるためのものであり、回転軸24の一方端(スリップリング27等と反対側)にナット91によって締め付け固定されている。また、ブラシ装置6、整流装置7、電圧調整器8を覆うように、これらを保護するリヤカバー92が取り付けられている。
【0020】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ9にエンジンからの回転が伝えられると回転子2が所定方向に回転する。このとき、界磁巻線21に励磁電圧を印加することにより界磁鉄心22、23のそれぞれの爪部が励磁され、固定子巻線32に三相交流電圧を発生させることができ、整流装置7の出力端子からは所定の直流電流が取り出される。
【0021】
また、上述した回転子2の回転に伴って、一方の界磁鉄心22の端面に取り付けられた冷却ファン25が回転するため、プーリ9側に設けられたフロント側ハウジング4の吸入口440を介して冷却風が車両用交流発電機1の内部に吸入され、この冷却風の軸方向成分によって界磁巻線21が冷却されるとともに、径方向成分によって固定子巻線32の前方のコイルエンドが冷却される。
【0022】
同様に、他方の界磁鉄心23の端面に取り付けられた冷却ファン26も回転するため、リヤカバー92の吸入口を介して吸入された冷却風が、整流装置7あるいは電圧調整器8を冷却した後に、リヤ側ハウジング5の吸入口を介して冷却ファン26まで導かれ、この冷却風が径方向に排出されるため、固定子巻線32の後方のコイルエンドが冷却される。
【0023】
次に、フロント側ハウジング4の詳細について説明する。フロント側ハウジング4は、プーリ9に対向する位置に軸受け36を収納する軸受け収納部400と、車両用交流発電機1をエンジンブロック(図示せず)に取り付けるために使用される2本のステー410、412と、これらのステー410、412のそれぞれの根元部分近傍であって側面に等間隔に配置された4つの支持部420とを有している。各支持部420は、内周面に雌ネジ溝が形成されたボルト収納部を有しており、フロント側ハウジング4内に固定子3を収納した状態で、各支持部420のボルト収納部にボルト34を通して締め付けることにより、固定子3がフロント側ハウジング4に固定される。
【0024】
また、フロント側ハウジング4は、4つの支持部420のそれぞれと軸受け収納部400の外周面とを連結するように径方向に延びた4本の径方向部材としてのスポーク430と、回転子2の回転方向に沿って隣接する2本のスポーク430の間に回転軸24を中心にほぼ放射状に形成された複数本のリブ432とを有している。これらのスポーク430とリブ432の間に形成される貫通した空間が冷却風の吸入口440として使用される。スポーク430は、軸受け収納部400に収納された軸受け36を介して回転子2を支持するためのものであり、エンジンから伝わる振動や駆動用ベルトから加わる行動力や張力に十分耐えるために、フロント側ハウジング4の周囲の面よりも軸方向前方に突出しており、図3に示すように、軸方向の長さがリブ432よりも長くなっている。
【0025】
図1に示すように、4本のスポーク430は、回転軸24を中心とした放射線に対して、外周側にいくほど回転子2の回転方向の上流側に傾斜している。この傾斜の角度αは、10°〜45°の範囲内で設定される。
図4は、本実施形態の車両用交流発電機1のファン騒音の低減効果を測定した結果を示す図である。図4において、横軸は車両用交流発電機1の回転数を、縦軸はdB単位で表したファン騒音をそれぞれ示している。測定は、全ての次数成分を含む「オーバーオール」と各次数成分の包絡線を示す「次数包絡」のそれぞれについて行った。なお、スポーク430を傾斜させた本実施形態のフロント側ハウジング4を用いた場合の測定結果を実線で示すとともに、比較のために、スポークの傾斜角αを0°にした従来形状のフロント側ハウジングを用いた場合の測定結果を点線で示した。
【0026】
図4に示すように、車両用交流発電機1の回転数のほぼ全域において、「オーバーオール」および「次数包絡」の両方についてファン騒音低減の効果が確認された。特に、5000〜12000rpmの範囲においては大幅なファン騒音の低減が実現された。
【0027】
図5は、本実施形態の車両用交流発電機1のファン騒音の低減効果をスポーク傾斜角をパラメータとして測定した結果を示す図である。図5において、横軸はスポーク430の傾斜角αを、縦軸は従来形状のフロント側ハウジングを用いた場合(αが0°のとき)を基準としてdB単位で表したファン騒音の低減効果をそれぞれ示している。なお、実線は「オーバーオール」に、点線は「次数包絡」にそれぞれ対応している。
【0028】
図5に示すように、スポーク430の傾斜角αを10°〜45°に設定した場合に良好なファン騒音低減が確認された。具体的には、「オーバーオール」の場合にはファン騒音が−3dB低減され、「次数包絡」の場合にはファン騒音が−2〜−4dBの範囲で低減された。
【0029】
なお、スポーク430の傾斜角αが大きくなるほど吸入口440の面積が小さくなるため、吸入面積の減少の程度を少なく保ちつつファン騒音低減の効果を得ようとした場合には、傾斜角αを10°〜25°の範囲内で設定することが望ましいと考えられる。
【0030】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1では、フロント側ハウジング4の支持部420から軸受け収納部400に向けて延びる4本のスポーク430を、従来構造のように回転軸24を中心とした放射線に沿った向きに形成するのではなく、この放射線に対して、外周側にいくほど回転子2の回転方向の上流側に傾斜させている。これにより、吸入口440周辺で生じる冷却風の乱れを最小限に抑制することができ、吸入口周辺で発生するファン騒音を低減することが可能になる。特に、実験によると、放射線に対するスポーク430の傾斜角αを10°〜45°の範囲内で設定することにより、ファン騒音の良好な低減効果が得られることが明らかになった。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、4本のスポーク430の全てを傾斜させたが、その一部のみについて傾斜させるようにしてもよい。図6は、3本のスポーク430が傾斜した車両用交流発電機の正面図である。このように、一部のスポーク430を傾斜させただけでも、従来構造の車両用交流発電機に対してファン騒音低減の効果がある。
【0032】
また、上述した実施形態では、4本のスポーク430の全体を傾斜させたが、回転方向に沿った両方の側面の内、下流側の側面のみを傾斜させるようにしてもよい。図7は、一方の側面のみを傾斜させたスポークを有する車両用交流発電機の正面図である。このように、各スポーク430Aの2つの側面の内の回転方向に沿った下流側の側面のみを傾斜させてもファン騒音低減の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の正面図である。
【図2】本実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。
【図3】回転子の回転方向に沿ったスポークとリブの断面の展開図である。
【図4】本実施形態の車両用交流発電機のファン騒音の低減効果を測定した結果を示す図である。
【図5】本実施形態の車両用交流発電機のファン騒音の低減効果をスポーク傾斜角をパラメータとして測定した結果を示す図である。
【図6】3本のスポークが傾斜した車両用交流発電機の正面図である。
【図7】一方の側面のみを傾斜させたスポークを有する車両用交流発電機の正面図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 回転子
3 固定子
4 フロント側ハウジング
5 リヤ側ハウジング
6 ブラシ装置
7 整流装置
8 電圧調整器
9 プーリ
400 軸受け収納部
420 支持部
430 スポーク
432 リブ
440 吸入口

Claims (4)

  1. 回転軸に固定される界磁鉄心とこの界磁鉄心の軸方向端面に取り付けられる冷却ファンとを有する回転子と、前記回転子の外周に配置された固定子と、前記回転子を回転可能に支持するとともに前記冷却ファンによって発生する冷却風を内部に吸い込む複数の吸入口が形成されたハウジングとを備えた車両用交流発電機において、
    前記ハウジングの一部であって、隣接する2つの前記吸入口の間に形成されて前記回転子を支持する径方向部材を、前記回転軸からの放射線に対して、外周側にいくほど前記回転子の回転方向の上流側に傾斜させたことを特徴とする車両用交流発電機。
  2. 回転軸に固定される界磁鉄心とこの界磁鉄心の軸方向端面に取り付けられた冷却ファンとを有する回転子と、前記回転子の外周に配置された固定子と、前記回転子を回転可能に支持するとともに前記冷却ファンによって発生する冷却風を内部に吸い込む複数の吸入口が形成されたハウジングとを備えた車両用交流発電機において、
    前記ハウジングの一部であって、前記回転子の回転方向に沿って配置された前記複数の吸入口とほぼ同じ径方向位置に形成された互いに軸方向長さが異なる複数種類の径方向部材の内、最も軸方向に長い前記径方向部材を、前記回転軸からの放射線に対して、外周側にいくほど前記回転子の回転方向の上流側に傾斜させたことを特徴とする車両用交流発電機。
  3. 請求項1または2において、
    前記径方向部材の傾斜角を10°〜45°の範囲内で設定することを特徴とする車両用交流発電機。
  4. 請求項1〜3のいずれかにおいて、
    前記径方向部材は、前記回転子の回転方向の下流側に配置された面のみを傾斜させることを特徴とする車両用交流発電機。
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