JP3900677B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却ファンを内蔵する車両用交流発電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転電機の一種である車両用交流発電機は、車両走行中にバッテリの補充電を行うとともに、エンジンの点火、照明、その他の各種電装品の電力を賄うものである。近年、車両の高級化等に伴って、車両用交流発電機の低騒音化が要求されている。
【0003】
ところで、車両用交流発電機の騒音の一つに冷却ファンを回転させたときに発生するファン騒音がある。回転子の軸方向端面に冷却ファンが固定された内扇式の車両用交流発電機においては、この回転子が収納されるフレームの吸入窓近傍においてファン騒音が発生することが知られており、この部分で生じるファン騒音を低減する従来技術としては、実開平3−21964号公報に開示された車両用充電発電機や特開平7−107704号公報に開示された車両用交流発電機がある。
【0004】
実開平3−21964号公報に開示された車両用充電発電機は、フロント側ハウジング(ブラケット)に形成された吸入窓の形状がハウジングの中心に対し非対称に設定されている。このため、回転子の軸方向端面に取り付けられたファンが回転した場合であっても吸気の周期的な圧力変動が生じにくく、この結果、回転次数比成分の発生を減少させ、吸気に起因するファン騒音を構成する周波数を広く分散させて風騒音の耳障り感を低減させることができ、しかもファン騒音のオーバーオール値も低減させることができる。
【0005】
また、特開平7−107704号公報に開示された車両用交流発電機は、フロント側ハウジングの吸入窓の外郭形状が四角形形状あるいは多角形形状に形成されている。このため、ファン騒音の次数成分が分散され、ファン騒音低減および不快音低減を図ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した実開平3−21964号公報に開示された車両用充電発電機は、フロント側ハウジングの吸入窓の形状がフレームの中心に対して非対称に設定されているため、吸入窓の形状が複雑になって、製品設計およびこれを製造するための型設計が煩雑になって、コスト高になるという問題がある。
【0007】
また、上述した特開平7−107704号公報に開示された車両用交流発電機は、フロント側ハウジングの吸入窓の外郭形状を多角形に形成しているため、円形に形成する場合に比べると、吸入窓全体の面積が小さくなり、風量が少なくなって冷却性能が低下するという問題があった。
このように、上述した従来の車両用交流発電機は、ファン騒音を低減するために吸入窓の形状が複雑になったり、風量が少なくなって冷却性能が低下しており、根本的な解決策とはいえなかった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、冷却風の吸入窓の形状が単純でしかも冷却性能を低下させることなく低騒音化が可能な車両用交流発電機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機は、ハウジングの冷却風の吸入窓に、径方向に対して傾斜した向きを有する斜行スポークが形成されている。このハウジングを界磁鉄心端面に冷却ファンが取り付けられた回転子と組み合わせて用いることにより、冷却ファンが回転してこの斜行スポークと重なる場合に一時的に重複面積が急激に増大することを防止して、冷却ファンが回転したときに生じる圧力変動を低減して低騒音化を図ることができる。また、ハウジングの吸入窓に形成されたスポークの方向を径方向に対して傾斜させただけであるため、吸入窓全体の形状が単純であり、設計や製造が容易となる。また、吸入窓の面積が減少することもないため、冷却性が低下することもない。
【0010】
特に、上述した斜行スポークの傾斜方向は、径方向に対して冷却ファンの傾斜方向と反対になるように設定することが好ましい。互いに反対向きに冷却ファンと斜行スポークの向きを設定することにより、冷却ファンと斜行スポークのそれぞれの対向部分が垂直に近い角度で交差することになるため重複面積を少なくすることができ、冷却ファンが回転したときに生じる圧力変動をさらに低減することができる。
【0011】
また、上述したハウジングには斜行スポークの他に径方向に沿った径方向スポークが形成されており、円周方向(回転方向)に隣接する径方向スポークの間に斜行スポークを配置することが好ましい。径方向スポークを組み合わせて用いることにより、ハウジングの強度(剛性)を高めることができ、しかも径方向スポークと斜行スポークとが交互に配置されることになるため、冷却ファンとこれらのスポークとの間で生じる圧力変動が不均一化され、ファン騒音の次数成分を分散させてさらなる低騒音化が可能になる。
【0012】
また、上述した径方向スポークの少なくとも一部には、固定子締結用のボルトが通る支持部に対応していることが好ましい。ボルトの締め付け時に発生するハウジングの歪みを少なくすることにより、発電時に固定子の微少振動で発生する磁気的な騒音を低減することができ、車両用交流発電機全体での騒音の発生をさらに抑えることができる。
【0013】
また、径方向スポークと斜行スポークとを組み合わせて用いる場合に、斜行スポークは、径方向スポークで区画された吸入窓の対角線に沿って形成することが好ましい。対角線に沿って形成することにより、傾斜の度合いを大きく設定することができ、冷却ファンと斜行スポークとが交差する角度をさらに大きくして、冷却ファン回転時に生じる圧力変動をさらに低減することができる。また、吸入窓の内周側と外周側を連結するように斜行スポークを形成することになるため、斜行スポークによってある程度の強度を確保することができる。このため、ハウジングの剛性が上がって、固定子の微少振動によって生じる磁気的な騒音を低減することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機(以後、「オルタネータ」と称する)は、ハウジングに設けられた冷却風の吸入窓に、回転子に取り付けられた冷却ファンとは反対向きに傾斜した斜行スポークを形成したことに特徴がある。以下、本発明を適用した一実施形態のオルタネータについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のオルタネータの全体構造を示す断面図である。また、図2はフロント側から見た本実施形態のオルタネータの正面図である。これらの図に示すように、オルタネータ1は、回転子2、固定子3、フロント側ハウジング4、リヤ側ハウジング5、ブラシ装置6、整流装置7、電圧調整装置8、プーリ9を含んで構成されている。
【0016】
回転子2は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した界磁巻線21を、それぞれが6個の爪部を有する界磁鉄心22、23によって、回転軸24を通して両側から挟み込んだ構造を有している。また、フロント側(プーリ9側)の界磁鉄心22の端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すために軸流式の冷却ファン25が溶接等によって取り付け固定されている。同様に、リヤ側の磁極鉄心23の端面には、リヤ側から吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すために遠心式の冷却ファン26が溶接等によって取り付けられている。
【0017】
また、回転軸24のリヤ側には界磁巻線21の両端に電気的に接続されたスリップリング27、28が形成されており、ブラシ装置6内のブラシ61、62をスリップリング27、28のそれぞれに押し当てた状態で組み付けることにより、整流装置7から界磁巻線21に対して励磁電流が流れるようになっている。
固定子3は、固定子コア31に形成された複数個のスロットに、3相の固定子巻線32が所定の間隔で巻き回されている。
【0018】
整流装置7は、3相の固定子巻線32の出力電圧である3相交流を整流して直流出力を得るためのものであり、所定の間隔で固定される正極側放熱板および負極側放熱板と、それぞれの放熱板に半田付け等によって取り付けられた複数個の整流素子とを含んで構成されている。
フロント側ハウジング4およびリヤ側ハウジング5は、上述した回転子2および固定子3を収納しており、回転子2が回転軸24を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子2の界磁鉄心22、23の外側に所定の隙間を介して配置された固定子3が固定されている。この固定子3の固定は、円周方向に等間隔に設けられた4箇所の支持部420にボルト34を通して締め付けることにより行われる。フロント側ハウジング4詳細形状については後述する。
【0019】
電圧調整装置8は、界磁巻線21に流す励磁電流を制御することによりオルタネータ1の出力電圧を調整するためのものであり、負荷が軽くて出力電圧が高くなる場合には、界磁巻線21に対する電圧の印加を断続することにより、オルタネータ1の出力電圧を所定値に維持する。プーリ9は、エンジン(図示せず)の回転をオルタネータ1内の回転子2に伝えるためのものであり、回転軸24の一方端(スリップリング27等と反対側)にナット91によって締め付け固定されている。また、ブラシ装置6、整流装置7および電圧調整装置8を覆うようにリヤカバー92が取り付けられている。
【0020】
上述した構造を有するオルタネータ1は、ベルト等を介してプーリ9にエンジンからの回転が伝えられると回転子2が所定方向に回転する。界磁巻線21に外部から励磁電圧を印加することにより界磁鉄心22、23のそれぞれの爪部が励磁され、固定子巻線32に3相交流電圧を発生させることができ、整流装置7の出力端子からは所定の直流電流が取り出される。以後、オルタネータ1自身の出力電圧が電圧調整装置8を介して界磁巻線21に印加されるため、外部から印加する励磁電圧が不要となる。
【0021】
また、上述した回転子2の回転に伴って、一方の界磁鉄心22の端面に取り付けられた冷却ファン25が回転するため、プーリ9側に設けられたフロント側ハウジング4の吸入窓440を介して冷却風がオルタネータ1内部に吸入され、この冷却風の軸方向成分によって界磁巻線21が冷却されるとともに、径方向成分によって固定子巻線32の前方端部が冷却される。同様に、他方の界磁鉄心23の端面に取り付けられた冷却ファン26も回転するため、リヤカバー92の吸入窓を介して吸入された冷却風が、整流装置7あるいは電圧調整装置8を冷却した後に、リヤ側ハウジング5の吸入窓を介して冷却ファン26まで導かれ、この冷却風が径方向に排出されるため、固定子巻線32の後方端部が冷却される。
【0022】
図3は、フロント側ハウジング4のみを抜き出してその正面図を示したものである。フロント側ハウジング4は、プーリ9に対向する位置にベアリング36を収納するベアリングボックス400と、オルタネータ1をエンジンブロック(図示せず)に取り付けるために使用される2本のステー410、412と、これらのステー410、412のそれぞれの根元部分近傍であって側面に等間隔に配置された4つの支持部420とを有している。各支持部420は、内周面に雌ネジ溝が形成されたボルト収納部を有しており、フロント側ハウジング4内に固定子3を収納した状態で、各支持部420のボルト収納部にボルト34を通して締め付けることにより、固定子3がフロント側ハウジング4に固定される。
【0023】
また、フロント側ハウジング4は、4つの支持部420のそれぞれとベアリングボックス400の外周面とを連結するように径方向に延びた4本の主スポーク430と、円周方向に隣接する2本の主スポーク430のほぼ中央であって径方向に延びた4本の補助スポーク432と、円周方向に隣接する主スポーク430と補助スポーク432との間であって径方向に対して所定の傾斜角度αを有する向きに形成された合計8本の斜行スポーク434とを有している。これらの主スポーク430、補助スポーク432、斜行スポーク434によって区画される空間が冷却風の吸入窓440として使用される。
【0024】
図4は、吸入窓440近傍の拡大図である。同図に示すように、斜行スポーク434は、主スポーク430とこれに隣接する補助スポーク432とを対向する2辺として区画されたほぼ四角形形状の吸入窓に、径方向に対して傾斜角度αとなるように形成されている。
但し、この傾斜方向はこの斜行スポーク434に近接する側の冷却ファン25先端部の傾斜方向と反対になるようにする必要がある。冷却ファン25と斜行スポーク434とが対向する部分に着目した場合に、冷却ファン25先端部の傾斜方向は、外周側にいくにしたがって回転方向に対して後退するようにその傾斜角度βが設定される。これに対し、斜行スポーク434の傾斜方向は、外周側にいくにしたがって回転方向に対して前進するように、すなわち径方向を挟んで冷却ファン25先端部の傾斜方向と反対になるように傾斜角度αが設定される。
【0025】
また、斜行スポーク434の傾斜角度αは、25°〜65°の範囲に含まれるように設定することが好ましい。斜行スポーク434は、冷却ファン25先端部分とほぼ直角に交わる方が好ましいが、斜行スポーク434の傾斜角度αを極端に小さくあるいは大きく設定すると、斜行スポーク434と主スポーク430とで挟まれた吸入窓440Aおよび斜行スポーク434と補助スポーク432とで挟まれた吸入窓440Bの各面積に大きな偏りが生じ、吸入抵抗の増大や異物混入の点から好ましくない。
【0026】
また、強度に着目すると、斜行スポーク434は、ベアリングボックス400の外周面450と、この外周面450に対向する周方向壁面452を連結するように形成することが好ましい。しかも、上述したように吸入窓440A、440Bの面積の偏りをできるだけ少なくするためには、主スポーク430とこれに隣接する補助スポーク432とを対向する2辺として区画されたほぼ四角形形状の吸入窓の対角線に沿うように斜行スポーク434を形成することが好ましい。このような位置に斜行スポーク434を形成することにより、フロント側ハウジング4全体の剛性を高めることができる。なお、主スポーク430と補助スポーク432によってフロント側ハウジング4に充分な剛性を持たせることができる場合には、斜行スポーク434の一方端が主スポーク430あるいは補助スポーク432の途中位置と交差するように斜行スポーク434を形成するようにしてもよい。
【0027】
また、図5は図4のV−V線断面図である。図5に示すように、主スポーク430、補助スポーク432、斜行スポーク434は、フロント側ハウジング4の内周面がほぼ同一面となるように設定されている。各スポークの内周面を冷却ファン25の先端部分に近づけることにより、冷却風の吸入抵抗を少なくすることができる。また、主スポーク430、補助スポーク432、斜行スポーク434のそれぞれの軸方向高さは、主スポーク430、補助スポーク432、斜行スポーク434の順で低くなるように設定されている。フロント側ハウジング4の剛性を高めるためには、主スポーク430の断面積を増すことが最も有効であるが、吸入窓440A、440Bの面積を確保することも考慮して、主スポーク430の軸方向高さが最も高く設定されている。また、フロント側ハウジング4の剛性を高めるために次に有効なのは、補助スポーク432の断面積を増すことであるため、主スポーク430の次に補助スポーク432の軸方向高さが高くなるように設定されている。したがって、斜行スポーク434の軸方向高さは、最も低くなるように設定される。このように、剛性アップへの寄与の度合いが少ないスポークの高さを低く設定することにより、できるだけ冷却風の通風抵抗を低減することができる。
【0028】
上述したように本実施形態のオルタネータ1は、界磁鉄心22の端面に冷却ファン25が取り付けられた回転子2を備えており、この回転子2を回転可能に支持するフロント側ハウジング4の吸入窓440に斜行スポーク434が形成されている。径方向に対して所定の傾斜角度を有する斜行スポーク430が形成されているため、回転子2とともに冷却ファン25が回転した際に、冷却ファン25の先端部分と斜行スポーク434とが同時に重なる面積を少なくすることができ、冷却ファン25の回転によって生じる圧力変動を低減することができる。
【0029】
図6は、斜行スポークを用いた場合の圧力変動を示す図である。同図において、横軸は冷却ファン25を回転させた場合の回転方向に沿った位置を示しており、「A」および「C」が斜行スポーク434が形成された位置に対応し、「B」がその間の補助スポーク432が形成された位置に対応している。また、縦軸は、冷却ファン25の先端部分近傍の圧力を示している。なお、斜行スポーク434が形成された本実施形態のフロント側ハウジング4を用いた場合の圧力変動を実線で示すとともに、比較のために、本実施形態の斜行スポーク434を補助スポーク432に置き換えた従来型のフロント側ハウジングを用いた場合の圧力変動を点線で示した。
【0030】
斜行スポーク434と冷却ファン25の先端部分とが重なる場合には、これらが所定の角度をもって交差するため重複部分の面積が小さくなって、瞬間的な圧力の上昇を抑えることができる。但し、斜行スポーク434の代わりに補助スポーク432を用いた場合に比べて、広範囲にわたって冷却ファン25の先端部分と斜行スポーク434とが交差することになるため、圧力が高くなる範囲は広くなる。
【0031】
このように、斜行スポーク434が形成されたフロント側ハウジング4を用いることにより、冷却ファン25を回転させた際の圧力変動を抑えることができるとともに、斜行スポーク434の位置における圧力と主スポーク430や補助スポーク432の位置における圧力とを異ならせて圧力変動の不均一化を図り、冷却ファン25によって生じるファン騒音の次数成分を下げることができ、ファン騒音の低騒音化を図ることができる。
【0032】
図7は、斜行スポークを用いた本実施形態のオルタネータ1のファン騒音を測定した結果を示す図である。同図において、横軸はオルタネータ回転数を、縦軸はdB単位で表したファン騒音をそれぞれ示している。測定は、全ての次数成分を含む「オーバーオール」と各次数成分の包絡線を示す「次数包絡」のそれぞれについて行った。なお、斜行スポーク434が形成された本実施形態のフロント側ハウジング4を用いた場合の測定結果を実線で示すとともに、比較のために、斜行スポーク434を補助スポーク432に置き換えた従来型のフロント側ハウジングを用いた場合の測定結果を点線で示した。
【0033】
図7に示すように、比較的高い回転数においてファン騒音低減の効果が確認された。特に、「次数包絡」については高回転域の所定範囲において大幅なファン騒音の低減が実現された。これは、主スポーク430や補助スポーク432の間に斜行スポーク434を配置したために圧力変動が不均一化し、次数成分が分散されたためであると考えられる。
【0034】
ところで、上述した斜行スポーク434は、径方向に対して一定の傾斜角度αを有するように直線状に形成されているが、途中で傾斜方向を変えて「くの字」型に形成するようにしてもよい。
図8は、斜行スポークをくの字型に形成した変形例を示す図である。同図に示すフロント側ハウジング4Aは、図3に示したフロント側ハウジング4に対して斜行スポークの形状を変更した点が異なっている。斜行スポーク434Aは、径方向に対する2段階の傾斜角度が設定されており、固定子の回転方向に対して後退する側に隣接する吸気窓440Cに突出させることにより、この斜行スポーク434Aに隣接する2つの吸気窓440C、440Dの面積がほぼ同じになるように設定されている。
【0035】
このように、斜行スポーク434Aの傾斜方向を2段階に設定してその形状をくの字型とすることにより、吸入窓440C、440Dの面積の偏りをなくすことができ、一方の面積が極端に小さくなる場合に比べて吸入抵抗の低減を図ることができる。また、吸入窓440C、440Dの面積が均一化されることにより、侵入可能な異物の大きさが小さくなるため、異物の排除能力を高めることができる。
【0036】
また、上述した斜行スポーク434、434Aは、径方向に対して所定の角度を有し、軸方向については回転軸24と平行になるように形成されていたが、軸方向についても傾斜を付けるようにしてもよい。
図9は、斜行スポークを軸方向に対して傾斜させた変形例を示す図であり、斜行スポーク近傍の部分的な拡大図が示されている。また、図10は図9のX−X線断面図である。
【0037】
図9および図10に示すように、斜行スポーク434Bは、軸方向に対して所定角度傾斜しており、冷却ファン25との対向面から遠ざかるにしたがって、回転方向に対して後退する向きに傾斜している。一般に、回転子2を回転させたときに吸入される冷却風は、この斜行スポーク434Bの傾斜方向と同じ向きに流れることが知られている。すなわち、冷却風の吸入方向に合わせて斜行スポーク434Bの軸方向に対する傾斜方向を決めることにより、斜行スポーク434Bが存在することによる吸入抵抗の増大を極力低減することができ、冷却性能の低下を防止することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、図8に示したフロント側ハウジング4Aに含まれる斜行スポーク434Aは、途中で1回折り曲げてくの字型に形成したが、2回以上折り曲げたり、全体を滑らかな曲線形状に形成するようにしてもよい。また、図9に部分的に示したフロント側ハウジングでは、斜行スポーク434Bのみを軸方向に対して傾斜させたが、主スポーク430や補助スポーク432についても同様に軸方向に対して傾斜させてもよい。
【0039】
また、上述した各実施形態のフロント側ハウジングに含まれる斜行スポーク434、434A、434Bは、冷却ファン25と対向する部分と、これと反対にプーリ9側に近接する部分とがほぼ同じ形状に形成されているが、ファン騒音を低減するために特に必要なのは冷却ファン25に対向する部分の形状等であるため、それ以外の部分の形状等については適宜変更が可能である。例えば、プーリ9側に接近するにしたがって径方向に近づくように、斜行スポーク434等を軸方向に沿ってねじるようにしてもよい。
【0040】
また、上述した各実施形態では、フロント側ハウジング4の吸気窓に斜行スポークを形成する場合を説明したが、リヤ側ハウジング5の吸気窓にスポークを形成する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のオルタネータの全体構造を示す断面図である。
【図2】図1に示したオルタネータの正面図である。
【図3】フロント側ハウジングの正面図である。
【図4】フロント側ハウジングの吸入窓近傍の拡大図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】斜行スポークを用いた場合の圧力変動を示す図である。
【図7】斜行スポークを有するフロント側ハウジングが含まれるオルタネータのファン騒音の測定結果を示す図である。
【図8】斜行スポークをくの字型に形成した変形例を示す図である。
【図9】斜行スポークを軸方向に対して傾斜させた変形例を示す図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【符号の説明】
1 オルタネータ
2 回転子
3 固定子
4 フロント側ハウジング
5 リヤ側ハウジング
22、23 界磁鉄心
24 回転軸
25、26 冷却ファン
430 主スポーク
432 補助スポーク
434 斜行スポーク
440 吸入窓

Claims (4)

  1. 回転軸に固定される界磁鉄心と前記界磁鉄心の軸方向端面に取り付けられる冷却ファンとを有する回転子と、前記回転子を回転可能に支持するベアリングボックス(400)を有するハウジングとを備えた車両用交流発電機であって
    この車両用交流発電機をエンジンブロックに取り付けるために使用されるステー(410、412)とこのステーのそれぞれの根元部分近傍であって側面に配置された支持部(420)とを有し、
    この支持部のそれぞれとベアリングボックスの外周面とを連結するように径方向に延びた主スポーク(430)と、円周方向に隣接する2本の主スポーク430のほぼ中央であって径方向に延びた補助スポーク(432)と、円周方向に隣接する主スポーク(430)と補助スポーク(432)との間であって径方向に対して所定の傾斜角度αを有する向きに形成された斜行スポーク(434)とを有しており、
    この斜行スポークを前記ハウジングの冷却風の吸入窓に設けることを特徴とする車両用交流発電機。
  2. 請求項1において、
    前記斜行スポークの前記対向面での傾斜方向は、前記対向面に近接する前記冷却ファンの傾斜方向に対して、前記径方向を挟んで反対となるように設定されることを特徴とする車両用交流発電機。
  3. 請求項1もしくは2において、
    前記主スポークは、固定子締結用のボルトが通る前記ハウジングの支持部に対応していることを特徴とする車両用交流発電機。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
    前記主スポークと補助スポークとで区画された前記吸入窓の対角線に沿って前記斜行スポークを形成することを特徴とする車両用交流発電機。
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