JP2004100360A - ケーシング部材およびこれを用いた枠体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一方向に延在する基材3と、この基材の表面5に設けられた化粧材20とを備え、基材3は一方向に沿って形成され基材の裏面7に開口する溝9を有する。溝9の横断面は円弧状に形成され、この溝9に対応する基材3が曲げ可能であるように形成される。さらに、溝9の表面に合成ゴム材23が設けられる。合成ゴム材23は溝9の両縁からこの溝9の中央に向かって漸次厚くなるように形成される。このようにすると溝9に対応する部分で曲げられるときに、曲げ応力が集中する溝9の中央において合成ゴム材23が厚く形成され、中央から離れるにしたがって漸次薄く形成されるので、溝9に対応する部分の応力集中が緩和され滑らかな曲面に曲げられる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物の開口部に設けられる枠体と、これに用いられるケーシング部材に関するものである。枠体は、建物の内装用のドア、引戸、扉、障子あるいはふすまなどを取り付ける建具枠や、建物の外装用のドア、引戸、扉などの枠を含むものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のケーシング部材を用いる枠体としては、たとえば断面形状が矩形の枠体であって、その両側面にそれぞれケーシング部材が挿入される挿入溝が穿設された枠体において、この枠体の裏面と挿入溝を有する両側面との間に断面形状が矩形状の欠除部がそれぞれ形成され、挿入溝にケーシング部材の一方の端を挿入するものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、別の枠体として、建物の壁に形成された開口下地枠に取り付けられる枠体であって、この枠体は、左右の縦枠と、この縦枠の上に取り付けられる上枠とからなり、さらに、縦枠および上枠は、複数の取付調整部材を備える。ケーシング部材は、縦枠と上枠に形成された嵌合溝に、ケーシング部材に形成された嵌合突起を嵌合させることによって取り付けられるものである(特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
実用新案登録第3042300号公報(第5頁、第1図)
【特許文献2】
特開2002−4720号公報(第3頁、第4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のケーシング部材は、いずれにしても比較的剛性の大きい材料でL字状に成形されるものであるので、建物の開口部を形成する壁などにひずみやゆがみなどにより不陸があると、ケーシング部材を壁などに密着させて取り付けることが困難になる。ケーシング部材の取り付けが困難になると施工性が悪くなる。
【0006】
また、従来のケーシング部材は、L字状に形成されたものであるので、これを成形する際には角棒状の素材を削り出して形成する必要があり、材料歩留まりが良くないという問題があった。さらに、従来のケーシング部材は、形状が略L字状であるので、外観が単調なものしか得られず意匠性に欠けるおそれがあった。
【0007】
本発明は、開口部を形成する壁に不陸があっても取り付けることができることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、一方向に延在する基材と、この基材の一方の面に設けられた化粧材とを備える。基材は一方向に沿って形成され基材の他方の面に開口する溝を有する。さらに、溝の横断面は凹曲面状に形成され、この溝に対応する基材が曲げ可能であるように形成されてなることを特徴とする。
【0009】
このようにすることにより、基材はその他方の面に開口する溝を有し、この溝の横断面は凹曲面状に形成され、かつ溝に対応する基材部分が曲げ可能であるように形成される。したがって、基材は、その溝に対応する部分で化粧材とともに曲げることができる。この場合、溝の横断面は凹曲面状に形成されるので、溝に対応する部分で曲げられたケーシング部材の形状は凸曲面状に曲げられ、滑らかな曲面形状となり高級感のあるケーシング部材が得られる。
【0010】
また、溝に対応する基材部分は曲げ可能であるように形成されるので、柔軟性を有することになり、開口部を形成する壁にひずみやゆがみなどの不陸があっても、この不陸は溝に対応する基材および化粧材部分で吸収され、ケーシング部材を取り付けることができる。
【0011】
さらに、溝の表面に軟質材を設けると良い。軟質材を溝の表面に設けることにより、溝に対応する基材および化粧材部分で曲げられるときに、少なくとも軟質材の内側(建物の壁側)は圧縮されるので、溝に対応する部分に発生する曲げ応力が緩和され滑らかな凸曲面に曲げられる。また、溝に対応する化粧材の基材側に軟質材が設けられることにより、このケーシング部材が曲げられ枠体と開口部を形成する壁との間に取り付けられたときに、このケーシング部材の曲げられた角に異物が衝突しても損傷が防止される。
【0012】
また、本発明は、一方向に延在する第1の基材および第2の基材を備え、第1の基材と第2の基材とを延在する方向が揃うように配置するとともに互いに離して位置させる。そして、第1の基材と第2の基材の同じ側の表面および第1の基材と第2の基材の間に化粧材を設け、これら第1の基材と第2の基材の間の化粧材の裏面に軟質材を設けてなることを特徴とする。
【0013】
このようにすることにより、第1の基材と第2の基材の間の化粧材および軟質材は柔軟性を有することになるので、第1の基材、第2の基材のそれぞれの取り付け面に不陸があっても、化粧材と軟質材の部分でこれを吸収するので取り付けることができる。さらに、このケーシング部材を第1の基材と第2の基材の間の化粧材および軟質材の部分で凸形状に曲げるときに、少なくとも軟質材の内側は圧縮され、局部的にかかる曲げ応力を緩和するので滑らかな曲面に曲げられる。さらに、この場合にも化粧材の裏に軟質材が設けられるので異物の衝突による損傷を防止する。
【0014】
また、本発明は、一方向に延在する基材と、この基材の一方の面に設けられた化粧材とを備える。さらに、基材は、一方向に沿って形成され基材の他方の面に開口する溝を有し、この溝の横断面は溝の両側面となる凹曲面と、この凹曲面に接続され溝の底となる平面とで形成される。そして、溝の表面に軟質材を設けてなることを特徴とする。
【0015】
このようにすることにより、溝に対応する基材部分は溝の中央に向かうにしたがって漸次薄く形成される。さらに、溝表面には軟質材が設けられるので、溝に対応する部分でケーシング部材が曲げられるときに化粧材および基材と同時に軟質材も曲げられる。この際、少なくとも軟質材の内側(表面側)は圧縮されるので局部的な曲げ応力が緩和され、滑らかな曲面に曲げられる。そして曲げられたケーシング部材の形状は、凸曲面状に曲げられ、丸みのある形状となり高級感のあるケーシング部材が得られる。
【0016】
また、溝に対応する化粧材、基材および軟質材は柔軟性を有することになるので、ケーシング部材が取り付けられる面に多少の不陸があっても、この不陸は溝に対応する化粧材、基材および軟質材部分で吸収される。さらに、軟質材は、このケーシング部材が枠体などに取り付けられたときに、このケーシング部材の曲がりの角への異物の衝突による損傷を防止する。
【0017】
また、本発明は、建物の開口部に設けられる枠体であって、この枠体の周方向に沿って開口面側に凹みが形成され、上記ケーシング部材の一方の側の基材の端側が凹みに挿入され、ケーシング部材が溝に対応する部分で曲げられるとともに、ケーシング部材の他方の側の基材が開口部を形成する壁に固定されてなることを特徴とする。このようにすることにより、ケーシング部材の一方の側の基材の端側を枠体の凹みに挿入するので、ケーシング部材の一方の側の基材の出入りの調整ができる。さらに、開口部を形成する壁に不陸があっても建物の開口部に取り付けることができる。さらに、上記ケーシング部材を用いた枠体は、意匠性が高まり高級感のある枠体が得られる。
【0018】
次に本発明を構成する各要件についてさらに詳しく説明する。本発明のケーシング部材は、建物の壁に設けられた開口部、あるいは部屋と部屋の間の開口部に設けられる枠体(建具枠)に用いられる。ケーシング部材は、枠体と開口部を形成する壁との間を覆うように設けられる。
【0019】
ケーシング部材を形成する基材は、一方向に延在するもので造作材としての形状に適したものとされる。また、基材は溝の左右に溝に対応する基材部分の厚みより大きい厚みを有する厚肉部分を有する。左右の厚肉部分は同じ厚みでも良いし、異なる厚みでも良い。さらに左右の厚肉部分の幅についても同じ幅でも良いし、異なる幅でも良い。要するに、基材の厚肉部分の厚みと幅は、枠体を形成する部材の厚みと幅、開口部を形成する壁の厚み、壁の幅木などの厚みと幅などを考慮して適宜のものとする。基材の厚肉部分の厚みは、たとえば3〜20mmの範囲から決められる。
【0020】
基材は、その一方の面に化粧材を設けることができれば特に限定されないが、合板、木質繊維板(MDFなど)、木削片板、単板積層板などの木質系、スチロール樹脂板、塩化ビニル樹脂板、強化プラスチック板、発泡スチロール樹脂板、発泡ウレタン樹脂板などの合成樹脂系、木質系や合成樹脂系の複合板およびそれらの積層板、あるいは石膏ボード、パーライト、セメント、珪酸カルシウムなどの無機質板、無機質材料と有機質材料の複合板などを使用できる。
【0021】
化粧材は、基材の一方の面に設けられるが、少なくともケーシング部材が曲げられて枠体と壁の間に取り付けられたときに露出する面には設けられる。こうすると、ケーシング部材が枠体と壁に固定されたときに、見える部分が化粧材で覆われ高級感を出すことができる。さらに、化粧材は、枠体の凹みに挿入されるケーシング部材の基材側端の側面まで設けられると良い。ケーシング部材が枠体の凹みに挿入されるときに剥離が防止される。
【0022】
化粧材の材料は、たとえば天然木材を切削して得られる天然突板、人工突板および不織布、紙、合成樹脂シートなどとしても良いし、可撓性を有する材料のシートに各種模様を印刷したものとしても良い。化粧材として用いる合成樹脂シートとしては、たとえばオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などを用いても良い。
【0023】
さらに、化粧材として、上記合成樹脂シートの間に紙を挟んで圧着した複合シート、合成樹脂を含浸させた含浸紙なども利用できる。さらに、これら化粧材に上塗りをしても良い。化粧材を基材に接着する接着剤は、熱可塑性接着剤、たとえば酢酸ビニル樹脂などに耐水性向上のために熱硬化性樹脂または尿素粉末などを混入させたものなどを用いることができる。化粧材の厚みは、たとえば0.05〜1mmの範囲で決められる。
【0024】
基材の一方の面に化粧材を設ける場合、化粧材は基材の一方の面に沿って、すなわち一方の面に凹部やV字状の溝が設けられる場合、これら凹部やV字状の溝の内面に対しても化粧材が設けられる。そして、化粧材は接着剤を介して貼着しても良いし、付着力または粘着力を有する熱可塑性樹脂などの流動性材料を基材に直接塗布して形成されても良い。
【0025】
基材の他方の面に開口する溝は、その横断面が凹曲面状であるが、凹曲面は特に限定されず、たとえば円弧面、楕円面、その他の曲面の一部などとしても良い。基材に上記溝を形成する場合、溝の底と化粧材の裏面との間に基材が残るように形成されても良いし、また溝の最下部が化粧材の裏面まで達するように形成されても良い。いずれにしても、溝に対応する基材部分は曲げ可能であるように肉厚が薄く形成されると良い。溝に対応して基材が残るように形成される場合、その厚みは、たとえば0.05〜1mmの範囲で曲げ易さ、曲げ形状、加工性などを考慮して選定される。
【0026】
軟質材は、弾力性を有する材料をはじめ、合成ゴム材や天然ゴム材あるいは気泡を有する発泡材や気泡を有しない未発泡材などで、たとえばスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・ブタジエン・ラバー(SBR)、シリコン樹脂などの軟質合成樹脂材が含まれる。凹曲面状に形成された基材の溝に軟質材を設ける方法は、たとえばホットメルト法、すなわちスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、シリコン樹脂などの熱可塑性樹脂を加熱溶融させた状態で塗布または流し込む方法でも良いし、スチレン・ブタジエン・ラバー(SBR)やシリコン樹脂などを酢酸ビニル樹脂などの軟質材用接着剤で貼着しても良い。
【0027】
溝の表面に軟質材を設ける場合、軟質材が溝の両縁からこの溝の中央に向かって漸次厚くなるように形成される場合は、ケーシング部材を溝に対応する部分で曲げるときに、曲げ応力が集中する溝の中央において軟質材が厚く形成され、中央から離れるにしたがって漸次薄く形成されるので、溝に対応する部分の応力集中が緩和され滑らかな曲面に曲げられる。
【0028】
ホットメルト法により熱可塑性樹脂の軟質材を基材の溝に塗布または流し込む際、化粧材自体が軟化して変質したり無用な皺、ひずみなどが発生しないように軟質材の塗布温度または流し込み温度を上げ過ぎないようにする。このことから、溝に基材が残されるように凹曲面状の溝が形成されると、残された基材が断熱の役目を果たし、溶融した熱可塑性樹脂の熱により基材の一方の面に設けられた化粧材を溶かしたり、軟化させて変質させたりすることを防止し、また化粧材の無用なひずみの発生を防止する。
【0029】
さらに、溝の両縁は、それぞれ他方の面位置から凹んで位置すると良く、たとえば段形状に凹ませる、あるいは溝の縁と他方の面位置とを傾斜面で接続すると良い。こうすることにより、ケーシング部材が凸形状に曲げられるときに、二つの基材の間の角度が小さな鋭角に曲げられる。さらに、ケーシング部材の溝に対応する部分が曲げられ、軟質材が圧縮されてはみ出しても、ケーシング部材の他方の面位置から外方に出ないので、ケーシング部材の他方の面を壁面に密着させて取り付けることができる。
【0030】
また、基材の一方の面に基材の他方の面に形成した溝に対応させて凹部を設けると良い。基材の一方の面に基材の一方向に沿って凹部を設けることにより、曲げられたケーシング部材の形状が多様化し、ケーシング部材の形状に変化を与えることができ、意匠性を高めることができる。さらに、基材の一方の面に一方向に沿った切欠きを設けると良い。切欠きは、ケーシング部材を固定する際に釘を打つ箇所として利用することができ、釘が目立たず外観がすっきりする。
【0031】
本発明は、基材の他方の面に開口する凹曲面状の溝を設けることによって、軟質材を設けなくても基材自体を滑らかに曲げることができるが、さらに凹曲面状の溝に軟質材を設けることにより基材自体の物理的、機械的特性のバラツキを吸収し確実に滑らかな曲面に曲げることができる。さらに、凹曲面状の溝は円弧面状の溝にすると製作上形成しやすい。
【0032】
基材としては、先に記した木質系、合成樹脂系あるいは木質系や合成樹脂系の複合積層板などを使用することができるが、特に、中質繊維板(MDF)に円弧状の溝を形成したものを使用すると良い。中質繊維板は、その表面の粗さが加熱溶融した軟質材を付着させるに適したものであり、かつ、この表面に円弧面状の溝を形成することにより滑らかに曲げることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るケーシング部材およびこれを用いた枠体の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図1〜7において、同一または同等部分には同一符号を付けて示す。
【0034】
図1は、本発明に係るケーシング部材の第1実施形態を示す断面図である。第1実施形態のケーシング部材1は、一方向(紙面に垂直な方向)に延在する基材3と、この基材3の表面(一方の面)5に設けられた化粧材20とを備える。
【0035】
基材3は、その一方の側に位置する厚肉部分3aと、他方の側に位置する厚肉部分3bと、これら二つの厚肉部分3a、3bの間に位置し円弧状の溝9を形成する溝対応基材部分3cとを有する。基材3の左側の厚肉部分3aの幅W1と右側の厚肉部分3bの幅W2とは同じになっているが、これに限定される必要はない。たとえば、厚肉部分3aの幅W1は20〜40mm、厚肉部分3bの幅W2は20〜60mmなどとされる。
【0036】
また、厚肉部分3aの厚みT1と厚肉部分3bの厚みT2とは同じに形成されても良いし、厚肉部分3bの厚みT2が厚肉部分3aの厚みT1より小さく形成されても良い。厚肉部分3aの厚みT1は12〜15mm、厚肉部分3bの厚みT2は9mmなどとされる。
【0037】
さらに、厚肉部分3aの端側の二つの縁4aは円弧面に形成される。厚肉部分3aの表面5側で、その端寄りには一方向に延びる断面V字状の切欠き15が形成される。一方、厚肉部分3bの表面5側には断面V字状の切欠きが形成されていない。また、厚肉部分3bの端側の二つの縁4bは角形に形成されるが、円弧面としても良い。
【0038】
さらに、基材の表面5の中央に一方向に沿って樋状の凹部18が形成される。凹部18は、溝9に対応させて形成され、溝9の中央と凹部18の中央とを一致させる。凹部18の開口縁は滑らかな曲面、たとえば円弧状に形成される。凹部18の幅Bと深さDは、このケーシング部材1が溝に対応する部分で曲げられたときに意匠性が高められるように考慮して決められる。
【0039】
基材3は、その裏面(他方の面)7の一方向に沿って形成された溝9を有する。溝9はこの基材の他方の面7に開口する。溝9の横断面は円弧状に形成され、溝9に対応する溝対応基材部分3cが曲げ可能であるように形成される。溝9の最下部10と化粧材20の裏面との間には溝対応基材部分3cが残るように形成される。溝対応基材部分3cの厚みは、たとえば0.1mmである。溝9の両縁には、それぞれ他方の面7位置から凹んで位置する段状部分14が形成される。
【0040】
基材3の材質は、木質繊維板(MDFなど)などの木質系で形成される。さらに、基材の溝9の表面にはスチレン・ブタジエン・ラバーなどの合成ゴム材(軟質材)23が設けられる。合成ゴム材23の厚みは、溝9の両縁11から溝の中央9bに向かって漸次厚くなるように形成され、溝の中央9bにおいて最大となる。また、化粧材20としては、たとえばオレフィン樹脂などの合成樹脂シートが用いられ、その厚みは、たとえば0.1mmである。
【0041】
次に、図1を使って、ケーシング部材の製造方法を説明する。先ず、MDFなどの板状素材をルーターなどの切削機械を使用して加工する。すなわち、素材の長手方向(紙面に垂直な方向)に沿って表面側に樋状の凹部18と、V字状の切欠き15とを切削する。この際、厚肉部分3aの側面6aの各コーナー4aは円弧面状に成形される。
【0042】
次に、凹部18およびV字状の切欠き15を切削した仕掛基材の表面(一方の面)5に、オレフィン樹脂などの化粧材20を酢酸ビニル樹脂などの接着剤で貼着する。この場合、化粧材20は、厚肉部分3aの裏面7から側面6a、表面5および厚肉部分3aの表面に形成されたV字状の切欠き15、さらに凹部18、厚肉部分3bの表面5および側面6bの中間まで覆う。
【0043】
仕掛基材に化粧材20を貼着した後、表面の凹部18に対応する裏面位置に円弧状(凹曲面状)の溝9を切削加工する。溝9は仕掛基材の長手方向に延在する。さらに、溝の両縁11を溝9に沿って切削して段状部分14を形成することにより基材3が製造される。なお、溝9と段状部分14とを同時に切削加工しても良い。
【0044】
次に、基材の溝9の上に合成ゴム材を設ける。基材の溝9に合成ゴム材23を設ける方法は、たとえばホットメルト法、すなわちスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、シリコン樹脂などの熱可塑性樹脂を加熱溶融させたものを塗布または流し込み、固化させて設ける。このようにしてケーシング部材が製造される。
【0045】
以上の構造および製造方法によって製造されるケーシング部材1は、次のように作用する。すなわち、図1において、ケーシング部材1は、溝9に対応する化粧材20、溝対応基材部分3cおよび合成ゴム材23は曲げ可能であるように形成される。ケーシング部材1が、その溝に対応する部分で曲げられるとき、少なくとも合成ゴム材23の内側は圧縮されるので、溝9に対応する部分に発生する曲げ応力は緩和され滑らかな凸曲面状に曲げられ高級感のある形状が得られる。
【0046】
また、溝に対応する化粧材20、溝対応基材部分3cおよび合成ゴム材23は柔軟性を有するので、開口部を形成する壁にひずみやゆがみなどの不陸があっても、ケーシング部材1は、この不陸を溝9に対応する部分で吸収する。また、溝に対応する化粧材の基材側に溝対応基材部分3cおよび合成ゴム材23が設けられることにより、このケーシング部材1の角に異物が衝突しても損傷が防止される。
【0047】
化粧材20は、少なくともケーシング部材1が曲げられて枠体と壁に取り付けられたときに露出する面には設けられる。こうすると、ケーシング部材1が枠体と壁に固定されたときに、見える部分が化粧材20で覆われるので高級感を出すことができる。さらに、化粧材20は、ケーシング部材1が枠体の凹みに挿入される基材側はその側面6bまで設けられるので、枠体の凹みに挿入されるときに剥離が防止される。
【0048】
また、ホットメルト法により熱可塑性樹脂である合成ゴム材23を基材の溝9に塗布する際、溝に基材9が残されるように凹曲面状の溝9が形成されることにより、残された基材(溝対応基材部分3c)が断熱の役目を果たし、溶融した合成ゴム材23の熱により基材の表面に設けられた化粧材20を溶かしたり、軟化させて変質させたりすることを防止し、また化粧材20の無用なひずみの発生を防止する。
【0049】
さらに、溝の両縁11に段状部分14が設けられるので、ケーシング部材1が溝対応基材部分3cで曲げられたときに合成ゴム材23がはみ出しても、ケーシング部材の裏面7位置から外方に出ないので、ケーシング部材1の裏面7を壁面に密着させて取り付けることができる。
【0050】
また、基材の表面5に基材の裏面7に形成した溝9に対応させて凹部18を設けることにより、曲げられたケーシング部材1の形状が多様化するとともに、溝に対応する部分で曲げられたときに、ケーシング部材1の形状に変化を与えることができ、意匠性を高めることができる。さらに、基材の表面に一方向に沿ったV字状の切欠き15を設けることにより、ケーシング部材1を固定する際に釘を打つ箇所として利用することができ、釘が目立たず外観がすっきりする。
【0051】
第1実施形態のケーシング部材1は、基材の裏面7に開口する円弧面状の溝9を設けることによって、合成ゴム材23を設けずに溝対応基材部分3c自体を滑らかに曲げることができるが、さらに円弧面状の溝9に合成ゴム材23を設けることにより基材自体の物理的、機械的特性のバラツキを吸収し確実に滑らかな曲面に曲げることができる。さらに、基材3として中質繊維板(MDF)を採用し、これに円弧面状の溝9を形成したものを使用することにより、中質繊維板は、その表面の粗さが合成ゴム材23を付着させるに適したものであり、かつ、この表面に円弧面状の溝9を形成することにより滑らかに曲げることができる。
【0052】
図2は、第1実施形態のケーシング部材1を用いた枠体27をドア52とともに示す横断面図である。図3は、図2の縦断面図である。枠体27は、建物の壁41に形成された開口部40に設けられるもので、正面の形状が矩形に形成される。壁41は、たとえば柱44と、この柱44に固定された胴縁46と、この胴縁46に固定された石膏ボードなどの表面板48とで形成される。枠体27は、柱44に固定され両側に位置する縦枠32と、梁45に固定され上側に位置する鴨居34と、床に固定され下側に位置する敷居36と、縦枠32の中央に取り付けられた戸当たり38とを有する。符号52は扉を示すが、扉52を軸支する丁番は図示されていない。
【0053】
ケーシング部材1は、上記枠体27の二つの開口面側に取り付けられるが、枠体27は、その周方向、すなわち縦枠32の長手方向および鴨居34の長手方向に沿って開口面側に凹み30が形成される。凹み30は枠体の二つの開口面(前側と後側)に形成される。上記ケーシング部材1は、その厚肉部分3bの端側が凹み30に挿入され、ケーシング部材1が溝9に対応する部分で曲げられるとともに、ケーシング部材の厚肉部分3a側が、そのV字状切欠き15位置で釘などで壁41に固定される。因みに、敷居36には凹み30は設けられていない。
【0054】
このようにすることにより、本枠体27は、壁面42にひずみ、反り、凹凸などにより不陸があっても建物の開口部40に取り付けることができる。さらに、上記ケーシング部材1を使用することにより枠体27としての意匠性が高まり高級感のある枠体27が得られる。なお、図3において、縦枠32に取り付けられたケーシング部材の図示は省略されている。
【0055】
図4は、本発明に係るケーシング部材の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態のケーシング部材1は、第1実施形態のケーシング部材と同様に、基材3の長手方向に沿って形成された溝9を有し、この溝9はこの基材の裏面(他方の面)7に開口する。溝9の横断面は円弧面状(凹曲面状)に形成され、溝9に対応する溝対応基材部分3cが曲げ可能であるように形成される。溝の最下部10は、化粧材20の裏面に至り、この部分の基材の厚さは0である。円弧面状の溝9には合成ゴム材(軟質材)23を設けることができる。合成ゴム材23の厚みは、溝の縁11から溝の中央9bに向かって漸次厚くなり、中央9bにおいては最大の厚みとなる。また、溝の両縁11は、それぞれ他方の面7位置から凹んで位置し、段状部分14が形成される。
【0056】
第1実施形態のケーシング部材1と同様に、第2実施形態のケーシング部材1においても、ホットメルト法により熱可塑性樹脂である合成ゴム材23を溝に塗布または流し込む際、合成ゴム材23の熱により化粧材自体が軟化して変質したり無用な皺、ひずみなどが発生しないような温度とする。図4におけるその他の構造と作用、ならびにこの部材の製造方法は、図1〜3に示した第1実施形態のケーシング部材と同じであるので、その説明を省略する。
【0057】
図5は、本発明に係るケーシング部材の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態のケーシング部材1は、一方向(紙面に垂直な方向)に延在させた第1の基材8aおよび第2の基材8bを備える。さらに、第1の基材8aと第2の基材8bとを延在する方向が揃うように配置するとともに互いに離して位置させ、第1の基材8aと第2の基材8bの同じ側の表面8cおよび第1の基材8aと第2の基材8bの間に化粧材20を設ける。
【0058】
そして、第1の基材8aと第2の基材8bの間の化粧材の裏面8dにスチレン・ブタジエン・ラバーなどの合成ゴム材(軟質材)23を設ける。合成ゴム材23の厚みは、その両縁より中央24に向かって漸次薄くし、中央24において最も薄くする。第1の基材8aと第2の基材8bとの間の距離Eは、ケーシング部材の使用箇所や意匠性を考慮して適宜の大きさとする。第1の基材の端8eの表面側角は円弧状に形成されるが、第2の基材の端8fの角は直角状に形成され、第2の基材8b側が枠体側に固定される。
【0059】
第3実施形態のケーシング部材1は、第1の基材8aと第2の基材8bの間の化粧材20および合成ゴム材23は柔軟性を有することになるので、ケーシング部材1が曲げられて、枠体に取り付けられたときに、第1の基材8a、第2の基材8bのそれぞれの取り付け面に不陸があっても、第1の基材8aと第2の基材8bの間の化粧材20と合成ゴム材23の部分でこれを吸収するので枠体に取り付けることができる。
【0060】
さらに、このケーシング部材1が第1の基材8aと第2の基材8bの間の化粧材20および合成ゴム材23の部分で凸形状に曲げられるときに、少なくとも合成ゴム材23の内側は圧縮され、局部的にかかる曲げ応力が緩和されるので滑らかな曲面に曲げられる。さらに、この場合にも化粧材20の裏に合成ゴム材23が設けられるので化粧材20の表面への異物の衝突による損傷を防止する。図5に示した第3実施形態において、その他の部分の構造と作用は、図1〜3に示した第1実施形態の場合と同じであるのでその説明を省略する。
【0061】
図6は、本発明に係るケーシング部材の第4実施形態を示す断面図である。第4実施形態のケーシング部材1は、長手方向(一方向、紙面に垂直な方向)に延在する基材3と、この基材3の一方の面5に設けられた化粧材20とを備える。基材3は、長手方向に沿って形成された溝9を有し、溝9はこの基材の裏面(他方の面)7に開口する。溝9の横断面は溝9の両側面となる円弧面(凹曲面)12と、この円弧面12に接続され溝9の底となる平面13とで形成される。溝9の底と化粧材20の裏面(基材側の面)21との間に基材3dが残るように形成され、溝対応基材部分3dの部分は曲げ可能であるように形成される。溝9の両縁11には、それぞれ基材の裏面(他方の面)7位置から凹んで位置する段状部分14が形成される。
【0062】
さらに、基材3は、その一方の側に位置する厚肉部分3aと、他方の側に位置する厚肉部分3bと、これら二つの厚肉部分3a、3bの間に位置し溝9を形成する溝に対応する溝対応基材部分3dとを有する。基材3の左側の厚肉部分3aの幅W1と右側の厚肉部分3bの幅W2とは同じ大きさに形成されるが、これに限定される必要はない。
【0063】
また、厚肉部分3aの一方の面5側には長手方向に延びる断面V字状の切欠き15が形成される。さらに、厚肉部分3aの側面6の角は円弧状に形成されるが、厚肉部分3bの側面6の角は直角状に形成され、厚肉部分3bの側が枠体側に固定される。
【0064】
さらに、溝9の表面にはスチレン・ブタジエン・ラバーなどの合成ゴム材(軟質材)23が設けられる。基材3は、木質繊維板(MDFなど)などで形成され、その厚みは用途、意匠性、施工性などを考慮して適宜のものが選択されるが、たとえば9mmのものが使用される。また、化粧材20としては、たとえばオレフィン樹脂などの合成樹脂シートが用いられ、その厚みは、たとえば0.1mmである。
【0065】
第4実施形態のケーシング部材1は、溝9に対応する基材3dと合成ゴム材23の合計厚みFが溝の中央9bに向かうにしたがって漸次薄く形成される。さらに、溝9表面には合成ゴム材23が設けられるので、溝9に対応する部分でケーシング部材1が曲げられるときに化粧材20および基材3と同時に合成ゴム材23も曲げられる。この際、少なくとも合成ゴム材23の内側(表面側)は圧縮されるので局部的な曲げ応力が緩和され、滑らかな曲面に曲げられる。そして曲げられたケーシング部材1の形状は、凸曲面状に曲げられ、丸みのある形状となり高級感のあるケーシング部材1が得られる。
【0066】
また、溝9に対応する化粧材20、基材3および合成ゴム材23は柔軟性を有することになるので、ケーシング部材1が取り付けられる枠体などに多少の不陸があっても、この不陸は溝9に対応する化粧材20、基材3および合成ゴム材23部分で吸収される。したがって、ケーシング部材1を枠体などに使用することができる。さらに、合成ゴム材23は、このケーシング部材1が枠体などに取り付けられたときに、このケーシング部材1の曲がりの角への異物の衝突による損傷を防止する。図6に示した第4実施形態において、その他の部分の構造と作用は、図1〜3に示した第1実施形態の場合と同じであるのでその説明を省略する。
【0067】
図7は、本発明に係るケーシング部材の第5実施形態を示す断面図である。第5実施形態のケーシング部材1において、基材3は、その長手方向(一方向)に沿って形成された溝9を有し、溝9はこの基材の裏面(他方の面)7に開口する。溝9の横断面は、溝9の両側面となる円弧面12と、この円弧面12に接続され溝9の底となる平面13とで形成される。溝9の底は、化粧材20の裏面21に至るとともに、溝9の表面には合成ゴム材(軟質材)23が設けられる。因みに、溝9は、その底と化粧材20の裏面との間に基材が残るように形成されても良い。合成ゴム材23の厚みは、少なくとも平面13の範囲(略幅B)においては溝の中央9bが最も小さく、中央9bから離れるにしたがって漸次大きくなる。
【0068】
さらに、ケーシング部材1は、基材の表面5側の長手方向(一方向)に沿って樋状の凹部18が形成される。凹部18は、溝9に対応させて基材の表面5側に形成され、溝9の中央と凹部18の中央が一致するように形成される。凹部18の開口縁は滑らかな曲面、たとえば円弧面状に形成される。凹部18の幅Bと深さDは、このケーシング部材1が曲げられたときに意匠性が高まるように考慮して決められる。図7におけるその他の部分の構造と作用は、図6に示した第4実施形態の縁材の構造および作用と同じであるので、その説明を省略する。
【0069】
以上この発明を図示の実施形態について詳しく説明したが、それを以ってこの発明をそれらの実施形態のみに限定するものではなく、この発明の精神を逸脱せずして種々改変を加えて多種多様の変形をなし得ることは云うまでもない。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、開口部を形成する壁に不陸があっても取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るケーシング部材の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態のケーシング部材を用いた枠体をドアとともに示す横断面図である。
【図3】図2の縦断面図である。
【図4】本発明に係るケーシング部材の第2実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係るケーシング部材の第3実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係るケーシング部材の第4実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明に係るケーシング部材の第5実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング部材
3 基材
5 表面(一方の面)
7 裏面(他方の面)
8a 第1の基材
8b 第2の基材
9 溝
12 円弧面(凹曲面)
13 平面
14 段状部分
20 化粧材
23 合成ゴム材(軟質材)
27 枠体
30 凹み
40 開口部
42 壁面
Claims (5)
- 一方向に延在する基材と、該基材の一方の面に設けられた化粧材とを備え、前記基材は前記一方向に沿って形成され該基材の他方の面に開口する溝を有し、該溝の横断面は凹曲面状に形成され、該溝に対応する前記基材が曲げ可能であるように形成されてなるケーシング部材。
- 請求項1において、前記溝の表面に軟質材を設けてなるケーシング部材。
- 一方向に延在する第1の基材および第2の基材を備え、前記第1の基材と前記第2の基材とを延在する方向が揃うように配置するとともに互いに離して位置させ、前記第1の基材と前記第2の基材の同じ側の表面および前記第1の基材と第2の基材の間に化粧材を設け、該第1の基材と第2の基材の間の化粧材の裏面に軟質材を設けてなるケーシング部材。
- 一方向に延在する基材と、該基材の一方の面に設けられた化粧材とを備え、前記基材は、前記一方向に沿って形成され該基材の他方の面に開口する溝を有し、該溝の横断面は該溝の両側面となる凹曲面と、該凹曲面に接続され前記溝の底となる平面とで形成され、該溝の表面に軟質材を設けてなるケーシング部材。
- 建物の開口部に設けられる枠体であって、該枠体の周方向に沿って開口面側に凹みが形成され、請求項1ないし4のいずれかに記載のケーシング部材の一方の側の基材の端側が前記凹みに挿入され、該ケーシング部材が前記溝に対応する部分で曲げられるとともに、該ケーシング部材の他方の側の基材が前記開口部を形成する壁に固定されてなる枠体。
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