JP2004099829A - フィラー含有スラリー組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フィラーをフェノール樹脂による表面処理が施された略真球状の酸化物微粒子とし、そのフィラーを有機溶媒に分散してフィラー含有スラリー組成物を構成する。フィラーを上記構成とすることで、フィラーどうしの凝集を効果的に抑制することができる。その結果、マトリクス樹脂におけるフィラーの分散性が向上し、凝集塊の発生が抑制される。また、フィラーとマトリクス樹脂との密着性が向上するため、マトリクス樹脂からのフィラーの脱落が抑制され、樹脂成形物の機械的強度等の特性が向上する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形の際、詳しくは溶媒に溶解した樹脂をその溶媒を飛散させることによって樹脂成形物を成形する際に用いられ、マトリクス樹脂中にフィラーを分散させるためのフィラー含有スラリー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機溶媒に溶解させた樹脂を用い、例えば塗工等を行うことで、被膜状の樹脂成形物を得るといった樹脂成形方法は、種々の目的、用途において、一般的に実施されている。かかる樹脂成形物を得る場合、マトリクスとなる樹脂中に、酸化物微粒子のフィラーを分散充填させて、成形物の機械的強度、耐熱性、非吸湿性等の諸特性を向上させている。
【0003】
酸化物微粒子フィラーをマトリクス樹脂に分散させる場合、従来は、有機溶媒で溶解されたマトリクス樹脂に直接酸化物微粒子フィラーを投入し、これを三本ロール等の混練機によって混練するといった方法で行っていた(例えば、特許文献1、2および3参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平06−302969号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平07−233275号公報
【0006】
【特許文献3】
特開2001−244387号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記方法では、フィラーである酸化物微粒子が小さい場合、フィラーをマトリクス樹脂中に均一に分散させることが困難であった。また、マトリクス樹脂中でフィラーが凝集し、凝集塊が存在してしまうという問題があった。マトリクス樹脂中にてフィラーが均一に分散しておらず、凝集塊が存在すると、樹脂成形物において機械的強度や耐熱性が充分でない部分が生じてしまう。また、基材表面に被膜状の樹脂成形物を形成した場合には、樹脂成形物中の凝集塊が脱落することにより、基材側の摩耗を増加させてしまうおそれもある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、マトリクス樹脂中にフィラーを均一に分散させることができ、マトリクス樹脂中で凝集塊が生じ難いフィラー含有スラリー組成物を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のフィラー含有スラリー組成物は、マトリクス樹脂中にフィラーが分散した樹脂成形物を成形する際に用いられ、該フィラーを含有するフィラー含有スラリー組成物であって、前記フィラーはフェノール樹脂による表面処理が施された略真球状の酸化物微粒子であり、該フィラーが有機溶媒に分散されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明者は、鋭意研究の結果、フィラーとなる酸化物微粒子の形態およびマトリクス樹脂中への投入の態様を適正なものとすることにより、フィラーの分散性を向上させ、凝集塊の発生を効果的に抑制し得るとの知見を得た。すなわち、本発明のフィラー含有スラリー組成物では、フィラーとして真球あるいは極めて真球に近い形状の酸化物微粒子を採用する。これにより、マトリクス樹脂におけるフィラーの分散性が向上する。そして、上記形状の酸化物微粒子にはフェノール樹脂による表面処理が施されている。つまり、フィラーは、核となる上記酸化物微粒子と、その表面に形成されたフェノール樹脂層とから構成されている。酸化物微粒子の表面にフェノール樹脂層を形成することで、フィラーどうしの凝集を効果的に抑制することができる。その結果、マトリクス樹脂におけるフィラーの分散性がより向上し、凝集塊の発生も抑制される。また、フィラーとなる酸化物微粒子の表面に、フェノール樹脂がコーティングされているため、フィラーとマトリクス樹脂との密着性が向上する。このため、マトリクス樹脂からのフィラーの脱落が抑制され、形成される樹脂成形物の機械的強度等の特性がより向上する。
【0011】
また、本発明のフィラー含有スラリー組成物は、上記フィラーが有機溶媒に分散されてなる。つまり、本発明のフィラー含有スラリー組成物を用いれば、フィラーを直接マトリクス樹脂に添加するのではなく、フィラーを一旦有機溶媒に分散させたスラリーの形態でマトリクス樹脂と混合させることができる。その結果、マトリクス樹脂へフィラーを均一に分散させることができる。さらに、フィラーとなる酸化微粒子には、フェノール樹脂による表面処理が施されているため、フィラーを分散させたスラリーは、フィラーの含有割合が高くてもその粘性が低い。そのため、スラリー中のフィラー含有量を多くすることができる。また、マトリクス樹脂との混合作業における作業性も良好となる。さらにまた、スラリーを長期間保存した場合であっても、フィラーの沈降やケーキ(沈殿凝集体)の発生が抑制され、保存特性に優れたスラリー組成物となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明のフィラー含有スラリー組成物の実施形態について詳しく説明する。なお、以下の実施形態は例示に過ぎず、本発明のフィラー含有スラリー組成物は、下記実施形態に限定されるものではない。本発明のフィラー含有スラリー組成物は、下記実施形態を始めとして、当業者が行い得る種々の改良、変更を施した態様で実施することができる。
【0013】
〈フィラー〉
本発明のフィラー含有スラリー組成物におけるフィラーは、酸化物微粒子を核とする。微粒子を構成する酸化物は、その種類が特に限定されるものではない。例えば、SiO2(シリカ)、Al2O3(アルミナ)、TiO2(チタニア)、ZrO2(ジルコニア)等の単一金属の酸化物を始めとして、SiO2−Al2O3、SiO2−TiO2、SiO2−ZrO2等の複合酸化物を用いればよい。また、フィラーを、一種の酸化物微粒子で構成するだけでなく、二種以上の酸化物微粒子を混合した混合物として構成してもよい。
【0014】
樹脂成形物の機械的強度、耐熱性の向上といった目的でフィラーを使用する場合、比較的安価なことをを考慮すれば、SiO2、Al2O3、あるいはこれらの複合酸化物を用いることが望ましい。特に、樹脂成形物の耐摩耗性を向上させることを考慮した場合には、フィラーはAl2O3の微粒子とすることが望ましい。また、最も安価であり、酸およびアルカリによる腐食に強く化学的に安定であり、さらに電子部品等の用途に供される場合に要求される低誘電率であること等を考慮すれば、フィラーはSiO2の微粒子とすることが望ましい。
【0015】
上記酸化物微粒子は、略真球状の粒子形状をなす。略真球状とは、真球あるいは極めて真球に近い球であり、具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の結果、観測される長径に対する短径の比が、0.7以上となるような球形の粒子を意味する。かかる粒子がその数において全粒子の95%以上となるような粉末を用いて、本発明のスラリー組成物を調製すればよい。
【0016】
略真球状の酸化物微粒子は、その合成方法が特に限定されるものではないが、VMC(Vaperized Metal Combution)法によって合成されたものであることが望ましい。VMC法とは、酸素を含む雰囲気内においてバーナーにより化学炎を形成し、この化学炎中に目的とする酸化物微粒子の一部を形成する金属粉末を粉塵雲が形成される程度の量投入し、爆燃を起こさせて酸化物微粒子を合成する方法である。
【0017】
VMC法の作用について説明すれば以下のようになる。まず容器中に反応ガスである酸素を含有するガスを充満させ、この反応ガス中化学炎を形成する。次いでこの化学炎に金属粉末を投入し高濃度(500g/m3以上)の粉塵雲を形成する。すると、化学炎により金属粉末表面に熱エネルギが与えられ、金属粉末の表面温度が上昇し、金属粉末表面から金属の蒸気が周囲に広がる。この金属蒸気が酸素ガスと反応して発火し火炎を生じる。この火炎により生じた熱は、さらに金属粉末の気化を促進し、生じた金属蒸気と反応ガスが混合され、連鎖的に発火伝播する。このとき金属粉末自体も破壊して飛散し、火炎伝播を促す。燃焼後に生成ガスが自然冷却されることにより、酸化物微粒子の雲ができる。得られた酸化物微粒子は、電気集塵器等により帯電させて捕獲することができる。
【0018】
VMC法は粉塵爆発の原理を利用するものであり、瞬時に大量の酸化物微粒子が得られ、その微粒子は、略真球の形状をなす。例えば、SiO2微粒子を得る場合にはSi粉末を投入、Al2O3微粒子を得る場合にはAl粉末を投入すればよい。投入する粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、微粒子の粒径を調整することが可能である。0.001〜0.1μmというサブミクロンオーダーの粒径を持つ超微粒子をも容易に合成可能である。
【0019】
本発明のフィラー含有スラリー組成物におけるフィラーは、その粒子径が特に限定されるものではない。目的とする樹脂成形物の特性に応じ、種々の平均粒子径の酸化物微粒子粉末を採用することができる。一般的には、平均粒子径において、0.005μm以上20μm以下の酸化物微粒子粉末を用いて、スラリー組成物を調製すればよい。平均粒子径が0.1μm以上の酸化物微粒子粉末を用いるとより好適である。本スラリー組成物の利点が、マトリクス樹脂におけるフィラーの均一な分散であることに鑑みれば、0.1μm以上5μm以下の平均粒子径を有する酸化物微粒子粉末をフィラーに採用する場合に、その利点を充分に活用することが可能となる。
【0020】
本発明のフィラー含有スラリー組成物におけるフィラーは、上記酸化物微粒子にフェノール樹脂による表面処理が施されたものである。表面処理に用いられるフェノール樹脂は、その製造方法により、ノボラック型とレゾール型とに分けられる。前者は酸触媒により乾式法で製造されたものであり、後者は塩基触媒により湿式法で製造されたものである。表面処理の対象となる酸化物微粒子の種類やマトリクス樹脂の種類等により、いずれかを選択すればよい。特に、マトリクス樹脂として、ポリアミドイミド、ポリイミド、およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種が採用される場合には、ノボラック型のフェノール樹脂により表面処理されたものが好適となる。
【0021】
フェノール樹脂による表面処理は、既に公知の方法に従って行えばよい。例えば、酸化物微粒子粉末とフェノール樹脂とを所定量秤量し、それらをミキサー等を用いて混合すればよい。ここで、表面処理の際に用いるフェノール樹脂の質量は、酸化物微粒子の質量を100wt%とした場合の5wt%以下とすることが望ましい。フェノール樹脂の質量を5wt%より多くすると、フィラーに含まれるフェノール樹脂の量が増加する。その結果、フィラーをマトリクス樹脂中に分散して樹脂成形物を成形した場合に、樹脂成形物の特性に影響を及ぼすおそれがあるからである。3wt%以下とするとより好適である。また、酸化物微粒子に対する表面処理の効果を充分に発揮させるためには、フェノール樹脂の質量を、酸化物微粒子の質量の1wt%以上とすることが望ましい。なお、表面処理の際に採用された酸化物微粒子とフェノール樹脂との質量比は、そのままフィラーを構成する両者の質量比となる。したがって、本発明のフィラー含有スラリー組成物におけるフィラーは、酸化物微粒子に対するフェノール樹脂の質量が、酸化物微粒子の質量を100wt%とした場合の5wt%以下であることが望ましい。
【0022】
また、上記表面処理により形成されたフェノール樹脂層の厚さは、1nm以上1000nm以下であることが望ましい。1nm未満の場合には、表面処理の効果が充分に発揮され難いからである。反対に、1000nmを超えると、フィラーをマトリクス樹脂中に分散して樹脂成形物を成形した場合に、樹脂成形物の特性に影響を及ぼすおそれがあるからである。
【0023】
〈有機溶媒〉
本発明のフィラー含有スラリー組成物において、上記フィラーを分散させる有機溶媒は、その種類が特に限定されるものではない。目的とする樹脂成形物の成形において、マトリクス樹脂を溶解させる溶媒に応じ適切なものを選択して採用すればよい。例えば、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、MEK、アセトン、メチルセロソルブ、DMSO、DMF、シクロヘキサノン、酢酸エチル、THF、IPA、エーテル、塩化メチレン、キシレンといった一般的な有機溶媒の他、エポキシ希釈剤、スチレン、アクリルモノマー、酸無水物等が使用でき、その適用範囲は広い。
【0024】
〈スラリー組成物の調製〉
本発明のフィラー含有スラリー組成物を調製する場合、フィラーとなる上記酸化物微粒子の粉末を、上記有機溶媒に分散して行えばよい。分散は、三本ロール、ボールミル、超音波分散機、各種ミキサー、ニーダー等の機器を使用して行えばよい。なお、スラリー組成物の変性を防ぐため、窒素雰囲気下等の非酸化性雰囲気下で調製を行うことが望ましい。
【0025】
調製したスラリー組成物の粘性も、調製の一つの目安となる。粘度が低すぎる場合は、スラリー組成物中のフィラーの含有量が少ないため、同じ量のフィラーを得るために多くのスラリー組成物を要することとなる。これは、調製したスラリー組成物の輸送等の効率を悪化させる一因となる。逆に、粘度が高すぎる場合は、マトリクス樹脂との混合作業における作業性が悪化する。
【0026】
適正な粘度は、E型粘度計を用いて、25℃で行った測定において、10〜2000cpsとなる範囲である。なお、簡易的に粘度を測定する方法として、25mLのメスピペットからスラリー組成物が自由落下して流出する時間を測定する方法を採用すればよい。その値によれば、25〜50秒間でスラリー組成物が完全に流出するように、スラリー組成物を調製することが望ましい。
【0027】
なお、後に詳しく説明するが、保存時におけるフィラーの沈降、ケーキ(沈殿凝集体)の形成をより充分に抑制するためには、沈降防止剤を添加するのが望ましい。この場合、スラリーの粘度は若干高めとなる。上記範囲内において、E型粘度計による粘度で100cps以上、メスピペットによる方法によれば35秒間以上で完全に流出するような粘度に調製すればよい。
【0028】
上述したような作業性、保存性等を考慮する場合、スラリー組成物中のフィラーの含有割合は、具体的には、スラリー全体を100wt%とした場合に、30wt%以上95wt%以下とすることが望ましい。より良好な上記作業性を達成するためには、90wt%以下とすることがより望ましい。また、本発明のフィラー含有スラリー組成物では、表面処理が施された酸化物微粒子フィラーを採用するため、他のフィラーを採用する場合に比べて、スラリー組成物の粘性は低い。したがって、フィラーの含有割合を高めることができ、その点から50wt%以上とすることがより好ましく、70wt%以上の極めて高濃度なスラリー組成物であっても、充分な作業性が担保される。
【0029】
〈沈降防止剤〉
本発明のフィラー含有スラリー組成物は、必要に応じて、フィラーの沈降をより抑制するための沈降防止剤が添加された態様を採用することができる。本発明のフィラー含有スラリー組成物は、表面処理が施された略真球状の酸化物微粒子をフィラーとして用いているため、長期間保存した場合のフィラーの沈降によるフィラーの凝集、ケーキの形成は抑制されている。しかし、酸化物微粒子の種類等によっては、沈降防止剤を添加することにより、フィラーの凝集等をより確実に抑制できる場合もある。この沈降防止剤は、スラリー組成物の粘性を調整することで、詳しくは粘度を若干上げることにより、フィラーの凝集等の抑制を図るものである。
【0030】
沈降防止剤には、マトリクス樹脂を構成する一部の樹脂を用いることができる。具体的には、ポリアミドイミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレーイミドトリアジン(BT)樹脂、シアノエステル樹脂、ポリアミク酸、無水マレー酸共重合体およびその誘導体から選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。マトリクス樹脂に応じて適切なものを採用すればよい。沈降防止剤は、スラリー組成物の調製時に添加し、有機溶媒に溶解させればよい。なお、沈降防止剤の添加量は、上述したように、スラリー組成物の粘度を目安とし、適切な量を決定すればよい。
【0031】
〈マトリクス樹脂中への分散および成形物の成形〉
本発明のフィラー含有スラリー組成物は、樹脂成形物の成形においてマトリクス樹脂中にフィラーを分散させる用途に供される。具体的には、マトリクス樹脂を有機溶媒に溶解した溶液中に、本発明のスラリー組成物を添加し、均一に混合すればよい。かかる簡便な作業により、マトリクス樹脂中に均一にフィラーが分散した樹脂成形物を成形可能なフィラー含有樹脂を調製することができる。
【0032】
マトリクス樹脂はその種類が特に限定されるものではない。本発明のフィラー含有スラリー組成物は、熱硬化性あるいは熱可塑性樹脂に幅広く適用可能である。利用可能なマトリクス樹脂を具体的に例示すれば、ポリアミドイミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、シアノエステル樹脂、BT樹脂、ポリオレフィン等を挙げることができる。なかでも、マトリクス樹脂として、ポリアミドイミド、ポリイミド、およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種を採用した場合には、マトリクス樹脂におけるフィラーの分散性の向上や、凝集塊の抑制といった本発明の効果がより発揮される。
【0033】
フィラーを分散させて調製された上記フィラー含有樹脂は、例えば、スプレー、ロールコータ、スピンコータ、キャスティング、ディッピング等の方法によりコーティングし、溶媒を蒸散させた後、硬化させ、被膜状の樹脂成形物とすることができる。これら被膜状の樹脂成形物は、電子部品、接着剤、耐熱膜、保護膜等の種々の用途に供することができる。
【0034】
【実施例】
上記実施形態に基づいて本発明のフィラー含有スラリー組成物を調製した。調製された本発明のフィラー含有スラリー組成物を用いて、マトリクス樹脂中にフィラーを分散させ、その樹脂から形成された樹脂成形物の耐摩耗性を評価した。以下、フィラー含有スラリー組成物の調製、および樹脂成形物の耐摩耗性の評価について述べる。
【0035】
〈フィラー含有スラリー組成物の調製〉
酸化物微粒子として、VMC法で合成した平均粒子径0.7μmのAl2O3真球微粒子(アドマテックス製:アドマファインAO−502)を準備した。上記Al2O3真球微粒子100重量部とノボラック型フェノール樹脂2重量部とを混合し、Al2O3真球微粒子の表面にノボラック型フェノール樹脂がコーティングされたフィラーを作製した。このフィラー60重量部とN−メチル−2ピロリドン(NMP)40重量部とを、窒素雰囲気にて、攪拌機で予備混合して粗スラリーを調製した。次いで、この粗スラリーを分散機にて分散させ、フィラーが均一に分散したスラリー組成物を調製した。本スラリー組成物中のフィラーの含有割合は、約60wt%とした。なお、調製されたスラリー組成物は、湿式分級機により5μm以上の粗大粒子を除去した後、下記耐摩耗性試験に使用した。
【0036】
〈樹脂成形物の耐摩耗性評価〉
(1)成形した樹脂成形物
上記スラリー組成物を用いて、フィラーをマトリクス樹脂に分散させたフィラー含有樹脂を調製し、その樹脂により実際に被膜状の樹脂成形物を成形した。まず、上記スラリー組成物18重量部とポリアミドイミド30重量部とを混合し、充分に攪拌することによりフィラー含有樹脂を調製した。このフィラー含有樹脂を基材表面にスクリーン印刷し、溶媒を蒸発させた後、180℃の温度下3時間かけて硬化させ、厚さ20μmの樹脂被膜を得た。
【0037】
(2)耐摩耗性試験および耐摩耗性評価
上記樹脂被膜の耐摩耗性を調べるため、樹脂被膜が形成された基材を切り出してブロック状の試験片を準備した(サンプルNO.#11)。この試験片をブロックオンリング試験機に設置し、持重45N、回転数20rpmにて90分間リングを回転させて、リングと接した樹脂被膜の摩耗量を測定した。樹脂被膜の摩耗量の測定結果を図1に示す。なお、図1には、比較のため、シランカップリング剤により表面処理を施したAl2O3真球微粒子をNMPに分散させたスラリー組成物を用いて成形した樹脂被膜(サンプルNO.#21)、および表面処理が施されていないAl2O3真球微粒子をNMPに分散させたスラリー組成物を用いて成形した樹脂被膜(サンプルNO.#22)についての試験結果をも併せて示す。
【0038】
図1に示すように、#11の樹脂被膜は、#21および#22の樹脂被膜と比較して、摩耗量が5μm程度と小さくなった。この結果から、フェノール樹脂による表面処理が施された酸化物微粒子をフィラーとするスラリー組成物を用いて樹脂成形物を成形すると、その樹脂成形物は耐摩耗性に優れることがわかる。つまり、酸化物微粒子にフェノール樹脂による表面処理を施すことで、フィラーの分散性が向上し、凝集塊の発生が効果的に抑制されると結論付けることができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明のフィラー含有スラリー組成物は、フェノール樹脂による表面処理が施された略真球状の酸化物微粒子を有機溶媒に分散させたものである。このような構成の本発明のフィラー含有スラリー組成物を用いることで、マトリクス樹脂中にフィラーを均一に分散させることができ、マトリクス樹脂中での凝集塊の発生も抑制することができる。そのため、形成された樹脂成形物の機械的強度等の特性が向上する。また、本発明のフィラー含有スラリー組成物は、フィラー濃度が高くても低粘性であることから、フィラー含有量を多くすることができ、マトリクス樹脂との混合作業における作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各樹脂被膜における摩耗量の測定結果を示す。
Claims (8)
- マトリクス樹脂中にフィラーが分散した樹脂成形物を成形する際に用いられ、該フィラーを含有するフィラー含有スラリー組成物であって、
前記フィラーはフェノール樹脂による表面処理が施された略真球状の酸化物微粒子であり、該フィラーが有機溶媒に分散されてなるフィラー含有スラリー組成物。 - 前記フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂である請求項1に記載のフィラー含有スラリー組成物。
- 前記表面処理の際に用いられたフェノール樹脂の質量は、該酸化物微粒子の質量を100wt%とした場合の5wt%以下である請求項1に記載のフィラー含有スラリー組成物。
- 前記酸化物微粒子は、VMC(Vaperized Metal Combution)法によって合成されたものである請求項1に記載のフィラー含有スラリー組成物。
- 前記酸化物微粒子の平均粒子径は、0.1μm以上20μm以下である請求項1に記載のフィラー含有スラリー組成物。
- 前記酸化物微粒子は、アルミナである請求項1に記載のフィラー含有スラリー組成物。
- スラリー全体を100wt%とした場合に、30wt%以上95wt%以下の割合で前記フィラーが含有された請求項1に記載のフィラー含有スラリー組成物。
- 前記マトリクス樹脂は、ポリアミドイミド、ポリイミド、およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のフィラー含有スラリー組成物。
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