JP2004099732A - 酸素吸収性樹脂組成物 - Google Patents

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中尾 公隆
Makoto Sumiya
住谷 眞
Kaori Takahashi
高橋 香織
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Abstract

【目的】非鉄系酸素吸収性樹脂組成物の提供。
【解決手段】実質的に脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有しない水添スチレンブタジエンゴムおよびMn塩等の遷移金属触媒からなる樹脂組成物、または、これを他の熱可塑性樹脂中に分散してなる樹脂組成物。
【効果】乾燥状態を含めた広い湿度範囲において使用可能な透明脱酸素性フィルムに成形することができる。
【選択図】なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲において優れた酸素吸収能を有する樹脂組成物に関する。詳しくは、酸素酸化により変質あるいは劣化し易い製品、特に食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品、電子製品などの保存に適用できる酸素吸収性樹脂組成物に関する。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収性容器の本体材料もしくは蓋材として好適に使用することができるフィルム状の酸素吸収性単層体もしくは多層体としても利用される。
【0002】
【従来の技術】
食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品、電子製品に代表される、酸素の影響を受けて変質あるいは劣化し易い各種物品の酸素酸化を防止し長期に保存する目的で、これらを収納した包装容器や包装袋内の酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粉状または粒状の鉄粉やアスコルビン酸などの酸素吸収物を通気性の小袋に詰めたものである。
【0003】
近年は、より取扱いが容易で適用範囲が広く誤食の可能性が極めて小さいフィルム状の脱酸素体も利用されるようになってきた。
フィルム状の脱酸素体に関して、その酸素吸収性組成物およびフィルム構成について多くの提案がなされている。まず、樹脂に鉄粉やアスコルビン酸などの脱酸素剤を配合してフィルムやシート等に成形した脱酸素性多層体が知られている。(例えば、特許文献1参照。)炭素−炭素不飽和結合を有する有機化合物に適度に架橋した粒状の脱酸素成分を熱可塑性樹脂に分散させることも知られている。(例えば、特許文献2参照。)ポリアミドと金属触媒からなる層とポリエステルまたはポリオレフィンからなる層を積層した包装用障壁も知られている。(例えば、特許文献3参照。)エチレン性不飽和炭化水素と金属触媒からなる層を含む包装用フィルムも知られている。(例えば、特許文献4参照。)
【0004】
【特許文献1】
特開昭55−90535号公報
【特許文献2】
特開平11−347399号公報
【特許文献3】
特許第2991437(特表平2−500846)号公報
【特許文献4】
特許第3183704(特開平5−115776)号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、乾燥状態を含めた広い湿度範囲において使用可能で、酸素吸収性能に優れ、均一で透明なフィルムに成形することができ、酸素吸収後も包装材料としての強度を保つ、酸素吸収性樹脂組成物を提供することにある。
特に、鉄粉などの金属または金属化合物やアスコルビン酸を用いた市販の脱酸素剤は、その酸化には水分が必要であることから、脱酸素の対象となる系に水分が少ないときには、酸素吸収速度が極めて小さいという問題がある。これらの脱酸素剤を樹脂に配合した脱酸素剤組成物も、同様に乾燥系では脱酸素速度が極めて遅い。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を行った結果、水添スチレンブタジエンゴムと遷移金属触媒からなる酸素吸収性樹脂組成物が、均一で透明なフィルムに成形することができ、乾燥状態を含めた広い湿度範囲において優れた酸素吸収性能を有する非鉄系脱酸素剤を提供することを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、水添スチレンブタジエンゴムと、金属塩または金属酸化物からなる遷移金属触媒からなる酸素吸収性樹脂組成物である。遷移金属触媒として、マンガン塩等の遷移金属塩を担体に担持したものを使用することが出来る。
さらに他の熱可塑性樹脂を配合して、水添スチレンブタジエンゴムと、金属塩または金属酸化物からなる遷移金属触媒が、他の熱可塑性樹脂中に分散されてなる酸素吸収性樹脂組成物もまた、本発明の好ましい態様である。
【0008】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、透明にすることができる。したがって、透視性を有する包装材料として、好適である。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、脱酸素性能を有するフィルムにすることができ、この脱酸素性能を有するフィルムからなる層を含む脱酸素性多層体にすることができる。例えば、保存物品側にポリオレフィン等からなるヒートシール層を、外気側にガスバリヤー層を積層することにより、酸素吸収性容器用材料とすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、水添スチレンブタジエンゴムと、金属塩または金属酸化物からなる遷移金属触媒からなる酸素吸収性樹脂組成物である。
【0010】
本発明で使用する水添スチレンブタジエンゴムは、構成単位としてスチレン単位(−CH−CH(C)−)と水素化されたブタジエン単位(−CH−CH−CH−CH−および−CH−CH(C)−)を含有する共重合体である。スチレン単位と水素化されたブタジエン単位の配列は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。この水添スチレンブタジエンゴムは、スチレンブタジエンゴムの水素化反応により、ブタジエン単位の脂肪族炭素−炭素二重結合が実質的に存在しなくなる程度にまで水素添加して得られる。本発明で使用する実質的に脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有しない水添スチレンブタジエンゴムは、ポリエチレン系およびポリプロピレン系などの他の熱可塑性樹脂と混練した際に100nm程度以下の寸法で超微分散する性質を有する。
【0011】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、重量部当たり100mL/g以上の酸素を吸収し得る。かかる酸素吸収量は、水添スチレンブタジエンゴム中に微量に残存するかもしれない脂肪族炭素−炭素不飽和結合の等量数と比較にならないくらい大きな酸素吸収可能量である。酸素吸収の反応機構は明らかでないが、前記した事実は、本発明の酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収反応が、樹脂に残留する脂肪族炭素−炭素二重結合の酸化によるものでないことを示している。
【0012】
本発明で使用する遷移金属触媒は、遷移元素金属の塩や酸化物等の金属化合物である。遷移金属触媒の元素種としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好適であり、マンガン、鉄、コバルトが優れた触媒作用を示すので特に好適である。遷移元素金属の金属塩としては、遷移元素金属の鉱酸塩及び脂肪酸塩が含まれ、例えば、遷移元素金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩又は高級脂肪酸塩である。
【0013】
扱い易さの点から好ましい遷移金属触媒は、遷移元素金属の塩を担体に担持した担持触媒である。担体の種類は、特に限定されないが、ゼオライト、珪藻土、ケイ酸カルシウム類などを用いることができる。特に、触媒調製時および調製後の大きさが100μm程度の凝集体で、樹脂中に分散した際には380nm以下になる担体が、取扱い性が良く、樹脂に配合した際に透明な樹脂組成物を与えるので好ましい。このような担体として、合成ケイ酸カルシウム系化合物が例示される。遷移金属触媒の割合は、酸素吸収性能と物理強度と経済性から、組成物中の金属原子重量として0.001〜10wt%が好ましく、0.01〜1wt%が特に好ましい。
【0014】
本発明のもう一つの構成は、水添スチレンブタジエンゴムと、金属塩または金属酸化物からなる遷移金属触媒が、他の熱可塑性樹脂中に分散されてなることを特徴とする酸素吸収性樹脂組成物である。すなわち、水添スチレンブタジエンゴムと遷移金属触媒を他の熱可塑性樹脂中に分散したものである。該酸素吸収性樹脂組成物は、水添スチレンブタジエンゴムと遷移金属触媒を加熱混練した後に他の熱可塑性樹脂と加熱混練することにより、あるいは、水添スチレンブタジエンゴムと遷移金属触媒と他の熱可塑性樹脂を共に加熱混練することにより得られる。
【0015】
水添スチレンブタジエンゴムと遷移金属触媒が配合される他の熱可塑性樹脂は、加熱により軟化して塑性を示し成形できる樹脂であり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのポリ塩化樹脂、ポリスチレンなどの芳香族炭化水素樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド及びこれらの一種以上を含む樹脂組成物が例示される。
【0016】
酸素吸収性樹脂組成物中の水添スチレンブタジエンゴムの割合は、10〜100wt%から選ばれるが、酸素吸収性能と物理強度と経済性から該樹脂組成物中10〜60wt%が好ましい。遷移金属触媒の割合は、酸素吸収性能と物理強度と経済性から、組成物中の金属原子重量として0.001〜10wt%が好ましく、0.01〜1wt%が特に好ましい。
【0017】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、乾燥剤、吸着剤、抗菌剤、着色剤から選んだ一種以上と加熱混合することにより、酸素吸収機能と乾燥機能などの他の機能を併せ持つ組成物にすることができる。
【0018】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物の使用形態は、小片を通気性小袋に充填する他、均一で透明なフィルムに成形して、ラベル、カード、パッキングなどの形態の脱酸素体として用いることができる。また、ペレット状あるいはフィルム状その他の小片状に加工し、通気性小袋に入れた形態の脱酸素剤包装体として用いることができる。
【0019】
さらに、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、そのまま又は適当な包装材料と積層することにより、脱酸素性の包装材料として包装袋や包装容器の一部または全部に用いることができる。例えば、本発明の酸素吸収性樹脂組成物を脱酸素層とし、一方の側に酸素透過性が高く、かつ熱融着性を兼ね備えた熱可塑性樹脂を包装される内容物との隔離層として積層し、他方の側に酸素透過性が低い樹脂層、金属層又は金属酸化物層をガスバリヤー層として積層して、フィルム状の脱酸素性多層体とすることができる。脱酸素層の厚みは、300μm以下が好ましく、10〜200μmがより好ましい。
【0020】
特に、ポリオレフィン層/本発明の酸素吸収性樹脂組成物層/透明ガスバリヤー性樹脂層を基本構成とする脱酸素性多層体は、透明な脱酸素性包装材料として使用できる。透明ガスバリヤー性樹脂としては、シリカもしくはアルミナを蒸着したポリエステルもしくはポリアミド、MXD6、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデンを例示することができる。
【0021】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、空気中で酸素吸収活性を発揮するまでの誘導期を有する場合があるが、その誘導期は比較的短く、誘導期の後の酸素吸収速度が大きい。本発明の酸素吸収性樹脂組成物の使用雰囲気湿度に制限はなく、乾燥状態を含めた広い湿度範囲において使用可能である。特に、相対湿度70%以下の乾燥状態において酸素吸収性能に優れる。使用雰囲気湿度は、0〜55%が好ましく、0〜40%RHがより好ましい。
【0022】
市販の鉄系脱酸素剤やアスコルビン酸系脱酸素剤が、一般には、乾燥状態では酸素吸収活性が低下するのに対し、本発明の酸素吸収性樹脂組成物が乾燥状態で酸素吸収活性を発揮することは際だった特長である。したがって、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、乾燥状態にある物品の保存に特に好適である。
【0023】
【実施例】
以下に実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0024】
実施例1
トール油脂肪酸マンガン(東栄化工(株)製)を合成ケイ酸カルシウム(商品名「マイクロセルE」、セライト(株)製)に重量比1:1で含浸させた遷移金属触媒0.75重量部と、水添スチレンブタジエンゴム(商品名「DYNARON1320P」、日本合成ゴム(株)製、以下「HSBR」と略す)35重量部を混合し、ローラミキサーR60((株)東洋精機製)を用いて210℃で混練することにより酸素吸収性樹脂組成物Sを得た。この酸素吸収性樹脂組成物Sを径1〜3mmの顆粒状にし、その0.44gを通気性包材に包み、脱酸素剤包装体を得た。
【0025】
酸素吸収性能を以下のようにして測定した。脱酸素剤包装体1包を相対湿度60%の空気200mLと共に酸素非透過性袋に入れて密封し、25℃で保管した。袋内の酸素濃度をガスクロマトグラフで測定することにより求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物は、酸素をほとんど吸収しない誘導期が1日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度2.0mLO g−1 day−1で酸素吸収した。保管25日後の酸素非透過性袋内の酸素濃度は、0.1容量%未満であった。
【0026】
実施例2
実施例1で得た酸素吸収樹脂組成物S10.5重量部をポリプロピレン(商品名「ノバテックPP・FG3DF」、日本ポリケム(株)製)24.5重量部と混合し、ローラミキサーR60を用いて210℃で混練し、次いでプレス機を用いて180℃でプレスすることにより、平均厚み164μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム2を得た。
得られたフィルム2を5cm×6cmに切り取り、相対湿度60%の空気200mLと共に酸素非透過性袋に入れて密封し、25℃で保管した。その酸素吸収性能を実施例1と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、酸素をほとんど吸収しない誘導期が2日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度0.9mLO g−1 day−1で酸素吸収した。
【0027】
実施例3
トール油脂肪酸マンガン2重量部を合成ケイ酸カルシウム(マイクロセルE)1重量部に含浸させた遷移金属触媒、水添スチレンブタジエンゴム(DYNARON1320P)及びポリプロピレン(ノバテックPP・FG3DF)を0.16対10.5対24.5(触媒×1、HSBR30wt%)の重量比で混合し、ローラミキサーR60を用いて210℃で混練し、次いでプレス機を用いて180℃でプレスすることにより、平均厚み135μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム3を得た。
得られたフィルム3の酸素吸収性能を実施例2と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、誘導期が3日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度1.0mLO g−1 day−1で酸素吸収した。保管50日後の酸素非透過性袋内の酸素濃度は、0.1容量%未満であった。
【0028】
実施例4〜6
実施例3の遷移金属触媒と水添スチレンブタジエンゴムとポリプロピレンの配合重量比を0.32対10.5対24.5(触媒×2;実施例4)、0.8対10.5対24.5(触媒×5;実施例5)、または1.6対10.5対24.5(触媒×10;実施例6)に変えて混合し、実施例3と同様の方法で、平均厚み135μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム4〜6を得た。これらのフィルム3〜5の酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。遷移金属触媒の含有量が増大するに従い酸素吸収活性が増大した。
【0029】
実施例7〜10
実施例3の遷移金属触媒と水添スチレンブタジエンゴムとポリプロピレンの配合重量比を0.16対3.5対31.5(HSBR10wt%;実施例7)、0.16対7対28(HSBR20wt%;実施例8)、0.16対14対21(HSBR40wt%;実施例9)、または0.16対17.5対17.5(HSBR50wt%;実施例10)に変えて混合し、実施例3と同様の方法で、平均厚み135μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム7〜10を得た。これらのフィルム7〜10の酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。水添スチレンブタジエンゴムの含有量が増大するに従い酸素吸収活性が増大した。
【0030】
実施例11〜15
実施例3で得られた酸素吸収性樹脂組成物の小片5cm×6cmを、200mLの空気と、乾燥剤又は各種調湿剤と共に酸素非透過性袋に入れて密封し、25℃で保管した。袋内の相対湿度が0%または38%、52%、80%、100%に維持されていることをガスクロマトグラフィーで確認した。それぞれの湿度における酸素吸収性樹脂組成物フィルムの酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。
この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、広い湿度範囲で優れた酸素吸収性能を有し、特に乾燥状態で酸素吸収活性が高かった。
【0031】
実施例16
トール油脂肪酸マンガンを合成ゼオライト(商品名「トヨエスタ」、東ソー(株)製)に重量比1:1.5で含浸させた遷移金属触媒と水添スチレンブタジエンゴムとポリプロピレンの配合重量比を0.27対10.5対24.5(触媒×1、HSBR 30wt%)に代えた他は実施例3と同様にすることにより、平均厚み146μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム16を得た。このフィルム16の酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、誘導期が3日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度1.1mLO g−1 day−1で酸素吸収した。
【0032】
実施例17
トール油脂肪酸マンガンを珪藻土(商品名「ラヂオライト#100」、昭和化学工業(株)製)に重量比1:2で含浸させた遷移金属触媒と水添スチレンブタジエンゴムとポリプロピレンの配合重量比を0.33対10.5対24.5(触媒×1、HSBR 30wt%)に代えた他は実施例3と同様にすることにより、平均厚み141μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム17を得た。このフィルム17の酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、誘導期が3日あり、その後、一定の速度で酸素吸収した。樹脂組成物重量当たりの酸素吸収速度は、0.8mLO g−1 day−1であった。
【0033】
実施例18
粉末状塩化マンガンと水添スチレンブタジエンゴム(DYNARON1320P)とポリプロピレン(ノバテックPP FG3DF)を重量比0.10対10.5対24.5で混合し、実施例3と同様の方法で平均厚み184μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム18を得た。このフィルム18の酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、誘導期が3日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度0.9mLO g−1 day−1で酸素吸収した。
【0034】
実施例19
塩化マンガン四水和物0.2重量部を水1重量部に溶解させ、合成ケイ酸カルシウム(マイクロセルE)0.5重量部に含浸させた後、乾燥して得た遷移金属触媒と水添スチレンブタジエンゴム(DYNARON1320P)とポリプロピレン(ノバテックPP FG3DF)を重量比0.35対10.5対24.5で混合し、実施例3と同様の方法で平均厚み128μmの透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム19を得た。このフィルム19の酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、誘導期が8日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度0.8mLO g−1 day−1で酸素吸収した。
【0035】
実施例20
ステアリン酸コバルトと水添スチレンブタジエンゴムとポリプロピレンを重量比0.31対10.5対24.5でを混合し、実施例3と同様の方法で透明な酸素吸収性樹脂組成物フィルム20を得た。このフィルム20の酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。この酸素吸収性樹脂組成物フィルムは、誘導期が2日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度3.3mLO g−1 day−1で酸素吸収した。
【0036】
比較例1
実施例3の遷移金属触媒を除いた場合、すなわち、水添スチレンブタジエンゴムとポリプロピレンのみを重量比10.5対24.5で混合し、実施例2と同様の方法で透明なフィルム状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物フィルムの酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。この遷移金属触媒を含まない樹脂組成物は酸素を吸収しなかった。
【0037】
比較例2
実施例10の水添スチレンブタジエンゴムを除いた場合、すなわち遷移金属触媒とポリプロピレンのみを重量比0.16対35で混合し、実施例3と同様の方法で透明なフィルム状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物フィルムの酸素吸収性能を実施例3と同様に求め、結果を表1に示した。この樹脂組成物フィルムは、誘導期が30日あり、その後、樹脂組成物重量当たり一定の酸素吸収速度0.03mLO g−1 day−1で酸素吸収した。
【0038】
【表1】
Figure 2004099732
【0039】
【発明の効果】
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収を開始するまでの誘導期が比較的短く、その後の酸素吸収速度が大きく、かつ、乾燥状態を含めた広い湿度範囲において使用可能であるので、酸素吸収性能に優れた脱酸素剤となる。使用形態は、通気性小袋に充填して脱酸素剤とする他、均一で透明な脱酸素性フィルムに成形することができる。
【0040】
水添スチレンブタジエンゴムと遷移金属触媒が他の熱可塑性樹脂中に分散された酸素吸収性樹脂組成物においては、前記効果に加えて成形性及び強度が改善される。
本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、脱酸素剤の内容物あるいは脱酸素フィルムの酸素吸収層として、食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品、電子製品などの保存および品質保持の分野において極めて高い価値を有する。

Claims (8)

  1. 水添スチレンブタジエンゴムと、金属塩または金属酸化物からなる遷移金属触媒からなる酸素吸収性樹脂組成物。
  2. 遷移金属触媒が遷移金属塩を担体に担持したものであることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物。
  3. 遷移金属塩がマンガン塩であることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物。
  4. 水添スチレンブタジエンゴムと、金属塩または金属酸化物からなる遷移金属触媒が、他の熱可塑性樹脂中に分散されてなることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収性樹脂組成物。
  5. 透明であることを特徴とする請求項1又は4記載の酸素吸収性樹脂組成物。
  6. 請求項1又は4記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる脱酸素性のフィルム。
  7. 請求項1又は4記載の酸素吸収性樹脂組成物からなる脱酸素層を含む脱酸素性多層体。
  8. 請求項1又は4記載の酸素吸収性樹脂組成物を使用することを特徴とする物品包装体の脱酸素保存方法。
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