JP2004099355A - グラファイト粉末、その製造方法及びそれからなる電池用導電材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】DBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)と該モード径の半値幅(ΔD50)について下記式(1)を満足するグラファイト粉末である。
ΔD50/DCPモード径≧0.8 (1)
さらに、平均一次粒子径が10〜100nmであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)が50〜500nmであることが好適であり、好ましくはカーボンブラックを誘導炉中で誘導加熱して黒鉛化させて製造される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性に優れたグラファイト粉末とその製造方法に関する。また、そのグラファイト粉末からなる電池用導電材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン酸型や固体高分子型の燃料電池は、プロトン通過膜を挟む形で、触媒層、ガス拡散層及びセパレータ層の各層から構成される。これらの各層は電気を通す必要があることから、導電性を有する材料を原料として使用して形成される。燃料電池の電解質として使用されるリン酸や「ナフィオン」等の高分子化合物は腐食性を有するために、これらの各層に金属材料を使用するのは困難な場合が多く、炭素系材料が導電性材料として広く使用されている。
【0003】
例えば、触媒層においては白金触媒の担持性に優れて導電性も有するカーボンブラックが使用されることが多く、ガス拡散層では炭素繊維が使用されることが多い。また、セパレータでは黒鉛を粉砕してフェノール樹脂等のバインダーに混合して成形したものが使用されることが多い。
【0004】
しかしながら、触媒層で使用されるカーボンブラックは、燃料電池の反応によって生成する水によって表面が覆われるため、電池の発電効率が低下する。またカーボンブラック自体の導電性はグラファイト等に比べると十分ではなく、特にアグリゲート同士の接触が不十分な場合には抵抗値がさらに上昇する。また、ガス拡散層で使用される炭素繊維は、反応で生成する水によって目詰まりを形成しやすい。これに対して、撥水処理を施したり、フッ素系樹脂などの撥水材を併用したりする場合があるが、その場合には導電性が低下することになる。さらに、セパレータで使用される黒鉛粉末は、ミクロンオーダー以下のサイズに粉砕することが困難であるため、バインダー量が少ないと空隙を生じやすく、これがガスのリークの原因になる。逆にバインダー量を増やし過ぎたのでは、電気抵抗が増加してしまうことになる。
【0005】
電池用の炭素材料として、カーボンブラックを加熱して黒鉛化したグラファイト粉末を使用することが提案されている。国際公開第01/92151号パンフレット(特許文献1)には、一次粒径が100nm以下で、X線結晶子面間隔C0が0.680nm未満(002面間隔が3.40Å未満)の炭素紛が記載されている。当該炭素紛は固体高分子型燃料電池の触媒担体として使用される。当該パンフレットには、原料として使用されるカーボンブラックがハイストラクチャーなものの方が、導電性付与の効果が大きいことが記載されている。ホウ素化合物とともに加熱することで黒鉛化を進行させやすいことも記載されており、黒鉛化のための熱処理炉としては、アチソン炉、高周波炉及び固体黒鉛発熱体を用いた炉などが例示されている。また、特開2000−273351号公報(特許文献2)には、カーボンブラックとホウ素化合物等からなる黒鉛化促進物質とを加熱して得られた黒鉛化カーボンブラックをリン酸型燃料電池の触媒担体に用いることが記載されている。これにより電解質に濡れにくく耐食性に優れた触媒担体を提供できることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第01/92151号パンフレット
(請求の範囲、第7〜8頁)
【特許文献2】
特開2000−273351号公報(特許請求の範囲、第3頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1及び2に記載されているように、カーボンブラックを黒鉛化することによって、導電性が改善され、電解質に濡れにくく耐食性に優れたグラファイト粉末が提供される。しかしながら、それでもなお導電性の改善は十分ではなく、より高度な導電性が要求されている。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高度な導電性を有するグラファイト粉末とその製造方法を提供することを目的とするものである。また、そのグラファイト粉末からなる電池用導電材料を提供することを目的とするものである。さらに、カーボンブラックが充填された発熱体を誘導炉中に配置して誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、DBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)と該モード径の半値幅(ΔD50)について下記式(1)を満足するグラファイト粉末を提供することによって解決される。
ΔD50/DCPモード径≧0.8 (1)
【0010】
DBP吸収量は、グラファイト粉末中のアグリゲートを葡萄の房に例えたときに、葡萄の房の中の空隙部分の体積に対応するパラメータである。DBP吸収量の大きいグラファイト粉末は、この空隙部分に電解質や樹脂などのマトリックス成分を多量に吸収することができる。そのため、アグリゲート内部に多量のマトリックス成分を吸蔵することができ、マトリックス成分の配合量が多くてもアグリゲート相互間での接触の機会が多くなり、結果として組成物全体としての導電性が向上する。DBP吸収量が小さすぎる場合には、アグリゲート相互間にマトリックス成分が介在することになって、十分な導通経路を形成しにくくなる。逆に、DBP吸収量が大きすぎる場合にはアグリゲートが相互に絡まりやすくなり、グラファイト粉末をマトリックス中に均質に分散させることが困難になってしまう。したがって、DBP吸収量が一定範囲内にあることが重要である。
【0011】
ストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)は、前記同様にグラファイト粉末中のアグリゲートを葡萄の房に例えたときに、葡萄の房全体を丸めた時の径に対応するパラメータである。DCPモード径の半値幅(ΔD50)をDCPモード径で割った値が大きいということは、アグリゲートの寸法の分布が大きく、幅広い寸法のアグリゲートを含んでいるということである。(ΔD50)/(DCPモード径)の値が小さく、同じような寸法のアグリゲートから構成されるグラファイト粉末をマトリックス成分に配合した際には、アグリゲートの分散性が十分でなく、(ΔD50)/(DCPモード径)の値の大きいグラファイト粉末を用いることで、均一な分散が容易になる。均一に分散される結果として、組成物全体としての均質な導電通路が確保できて導電性が向上する。比較的低粘度の液体中に分散させる場合に分散性は悪化しやすく、そのような液体中で分散させる操作が要求されることの多い燃料電池の用途においてこの点は重要である。
【0012】
以上のように、本発明のグラファイト粉末は、DBP吸収量が一定範囲内の値であり、しかも(ΔD50)/(DCPモード径)の値が一定値以上であることが重要であり、これによってマトリックス中に分散させた時に、高度な導電性を示すことができるものである。
【0013】
このとき、平均一次粒子径が10〜100nmであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)が50〜500nmであることが好適である。すなわち、比較的小さい一次粒子が多数凝集した形のアグリゲート構造を有していることが好適である。これによってアグリゲート相互間の導電通路が効率的に形成されやすくなる。
【0014】
また、グラファイト結晶の002面間隔(d002)が3.48Å以下であることが、粒子そのものの導電性を改善でき、撥水性も改善されて好適である。さらに、金属、ホウ素及びケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有することが、導電性をさらに向上させることができて好適である。
【0015】
本発明のグラファイト粉末は、それを0.3g/cm3の密度に圧縮成形して得られるペレットの電気抵抗が1Ω・cm以下であることが、導電材料、特に電池用導電材料として使用する際に有用である。
【0016】
上記課題は、カーボンブラックを加熱して黒鉛化させるグラファイト粉末の製造方法であって、該グラファイト粉末のDBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)と該モード径の半値幅(ΔD50)について下記式(1)を満足することを特徴とするグラファイト粉末の製造方法を提供することによっても解決される。
ΔD50/DCPモード径≧0.8 (1)
【0017】
このとき、カーボンブラックを誘導炉中で誘導加熱して黒鉛化させることが好適である。誘導加熱する方法を採用することによって、カーボンブラックのアグリゲート構造を破壊することなく効率的に黒鉛化することが可能だからである。また、上記グラファイト粉末の製造方法において、カーボンブラックと、金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素の単体又は該元素を含有する化合物とを混合して加熱することも好適である。
【0018】
上記グラファイト粉末からなる電池用導電材料が、本発明の好適な実施態様である。より具体的には、燃料電池用触媒担体、燃料電池用ガス拡散層又は燃料電池用セパレータが特に好適な実施態様である。
【0019】
また、本発明は、カーボンブラックが充填された発熱体を誘導炉中に配置して誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法であって、以下のような特徴を有するものである。第1に、前記発熱体の周囲を炭素材料の粉体又は粒体からなる断熱材で覆って誘導加熱するものである。第2に、50000Hz以下の周波数の交流電流を印加して誘導加熱するものである。第3に、発熱体に充填されたカーボンブラックの嵩密度を0.35g/cm3以下にして誘導加熱するものである。第4に、電流の印加を開始してから10分以内にカーボンブラックの温度が1850℃を超えるような昇温速度で誘導加熱するものである。これらの製造方法において得られるグラファイト粉末は、前述のような特定のグラファイト粉末に限定されない。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は、DBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)と該モード径の半値幅(ΔD50)について下記式(1)を満足するグラファイト粉末である。
ΔD50/DCPモード径≧0.8 (1)
【0021】
本発明のグラファイト粉末の製造方法は特に限定されるものではないが、通常、カーボンブラックを加熱して黒鉛化させることによって製造される。カーボンブラックは、現在容易に入手可能なナノメータ・オーダーの粒子サイズの炭素質微粒子であって、粒子径や会合状態、表面状態など、目的に合わせて各種の銘柄の入手が容易である。具体的には、ファーネスブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。カーボンブラックは通常平均一次粒子径が500nm以下の炭素質粒子である。
【0022】
本発明において原料として使用されるカーボンブラックの種類は特に限定されるものではなく、黒鉛化した後の物性が前記条件を満足するものであれば良い。黒鉛化の前後でDBP吸収量、DCPモード径及びΔD50の値はある程度変化するものの、それほど大きく変化しない場合が多いので、原料のカーボンブラックとしても、グラファイト粉末同様に、DBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつ式(1)を満足するカーボンブラックであることが好適である。また、グラファイト粉末同様に、平均一次粒子径が10〜100nmであり、かつDCPモード径が50〜500nmであるカーボンブラックが好適である。
【0023】
このようなカーボンブラックとしては、ファースト・エクストルーディング・ファーネス・ブラック(FEF)、スーパー・アブレーション・ファーネス・ブラック(SAF)及びハイ・アブレーション・ファーネス・ブラック(HAF)などが好適なものとして挙げられる。これらの種類のカーボンブラックであって、しかも製造時にそのアグリゲートの寸法の分布を大きくするように条件を調整しながら製造したものが特に好適に使用される。
【0024】
カーボンブラックを黒鉛化(グラファイト化)する方法は特に限定されるものではないが、不活性雰囲気下において高温で加熱して黒鉛化させることができる。通常1700℃以上、好適には1850℃以上、より好適には2000℃以上の温度で加熱することでカーボンブラックを黒鉛化することができる。カーボンブラックを不活性雰囲気下において加熱する方法は特に限定されず、アチソン炉で加熱する方法、誘導加熱する方法、黒鉛抵抗炉で加熱する方法などを例示することができる。
【0025】
中でも、誘導炉中で誘導加熱して黒鉛化させるグラファイト粉末の製造方法が好適である。誘導加熱とは、時間的に変化する磁界が導体中に誘起する誘導電流によって物質を温度上昇させ、これによって加熱する方法である。すなわち、誘導電流を流すことのできるような誘導炉中でカーボンブラックを誘導加熱することで、カーボンブラックを黒鉛化するものである。
【0026】
例えば、アチソン炉中で加熱するような場合には、カーボンブラックに直接通電して発熱させるために、ある程度圧縮して充填する必要があり、しかも発熱時に熱膨張することもあって、アグリゲートが高度に発達したハイストラクチャー構造を維持しながら黒鉛化させることが必ずしも容易ではない。これに対し、誘導加熱の場合には、発熱体である容器中に低い嵩密度で充填した状態のままで加熱しても十分な加熱が可能であるから、本発明のようにハイストラクチャー構造を有するグラファイト粉末を製造するのに特に適している。誘導加熱する際に充填されるカーボンブラックの嵩密度は0.35g/cm3以下であることが好ましく、0.25g/cm3以下であることがより好ましい。また通常0.05g/cm3以上である。
【0027】
黒鉛化に使用される誘導炉の構造は特に限定されるものではないが、銅線等の導体から形成されるコイルの内側に導体からなる発熱体を配置し、コイルに交流電流を流すことで加熱するような構成が挙げられる。この構成においては、コイルに特定の周波数を有する電流を流すことで、コイル内で磁界がその周波数に対応して変化し、それによって発熱体中を誘導電流が流れ、発熱体が発熱するものである。本発明では高温に耐える発熱体である必要があることから、かかる発熱体がカーボン製であることが好適である。また、原料のカーボンブラックは微粉末であることからこれを入れることのできる容器の形状の発熱体を使用することが好適である。
【0028】
このとき、原料のカーボンブラックが充填された発熱体の周囲を断熱材で覆うことが好ましい。断熱材としては、アルミナやケイ砂などの耐熱性無機材料を使用することもできるが、炭素材料からなる粉体又は粒体、特にカーボンブラックを断熱材として利用することが好ましい。カーボンブラックを断熱材として使用することで、十分な断熱効果が得られるとともに、カーボン製の発熱体の損傷を防止することができる。カーボンブラックを黒鉛化するには1700℃以上、好適には2000℃以上の高温にすることが必要であるが、このような高温の下で断熱材としてアルミナやケイ砂を使用したのでは、アルミナやケイ砂が還元されながらカーボン製発熱体が酸化されることになり、アルミナやケイ砂がカーボン製発熱体に付着してしまい、カーボン製発熱体の耐久性が低下する。断熱剤として使用するカーボンブラックの種類は特に限定されるものではない。
【0029】
印加する電流の周波数は特に限定されるものではなく、いわゆる低周波から高周波に至る広範囲の周波数の交流電流を使用することができる。なかでも50000Hz以下の周波数の電流を印加することが好適である。50000Hzを超える周波数の場合には、カーボンブラックの容器でもあるカーボン製発熱体の肉厚を厚くすることが困難であり、取り扱いにくい面がある。より好適には10000Hz以下である。一方、印加する電流の周波数は通常50Hz以上であり、好適には500Hz以上である。印加する電力は、充填するカーボンブラックの量などによって適宜調整される。前述のように断熱構造を採用するなどすれば、比較的低電力を印加しても迅速に温度を上昇させることができる。電力の印加開始から10分以内、より好適には8分以内に、1850℃を超えるまで、より好適には2000℃以上までカーボンブラックの温度が上昇するような条件で加熱することが好ましい。
【0030】
上述のような方法を用いて誘導炉中で誘導加熱してカーボンブラックを黒鉛化する方法は、導電性に優れた前述のグラファイト粉末を製造するのに好適な方法である。しかしながら、これらの誘導加熱方法は、他の種類のグラファイト粉末を製造する場合にも有用な方法である。すなわち、これらの誘導加熱方法によって黒鉛化されるカーボンブラックは特に限定されるものではなく、各種のカーボンブラックを原料として各種のグラファイト粉末を製造することができる。
【0031】
カーボンブラックが黒鉛化されることで、X線回折測定において、結晶構造に由来するピークが観察されるようになる。そして、黒鉛化が進行するにしたがって、格子間距離が短くなる。グラファイトの002回折線は黒鉛化の進行とともに広角側にシフトするが、この回折線の回折角2θが格子間距離(平均面間隔)に対応している。本発明においては格子間距離d(d002)が3.48Å以下であるグラファイトとすることが好適である。格子間距離d(d002)は、より好適には3.46Å以下である。格子間距離が3.48Åを越える場合は、黒鉛化が不十分であり、導電性が不十分となる場合がある。黒鉛化の進行に伴って、カーボンブラック表面に存在していた親水性の官能基が消失するので、黒鉛化することによって撥水性も改善される。
【0032】
こうして得られたグラファイト粉末は、DBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)と該モード径の半値幅(ΔD50)について下記式(1)を満足するグラファイト粉末である。
ΔD50/DCPモード径≧0.8 (1)
【0033】
本発明のグラファイト粉末のDBP吸収量は80〜200ml/100gである。DBP吸収量が80ml/100g未満の場合には、アグリゲート相互間にマトリックス成分が介在することになって、十分な導通経路を形成しにくくなる。好適には100ml/100g以上である。逆に、DBP吸収量が200ml/100gを超える場合にはアグリゲートが相互に絡まりやすくなり、グラファイト粉末をマトリックス中に均質に分散させることが困難になってしまう。好適には180ml/100g以下である。
【0034】
また、本発明のグラファイト粉末は、上記式(1)を満足するものである。(ΔD50)/(DCPモード径)の値が0.8未満の場合には、電解質や樹脂などのマトリックス成分中に、グラファイト粉末が均一に分散できず、全体としての均質な導電通路が確保できにくく、結果として導電性が低下することになる。(ΔD50)/(DCPモード径)の値は、好適には0.85以上である。また、通常(ΔD50)/(DCPモード径)の値は2以下の値をとる。
【0035】
複数の種類のカーボンブラックを混合して黒鉛化したり、複数の種類のグラファイト粉末を混合したりして(ΔD50)/(DCPモード径)の値を0.8以上に調整することも可能である。しかしながら、単一の種類のカーボンブラックを黒鉛化して得られたグラファイト粉末でありながら、幅広い寸法のアグリゲートを含んでいるものの方が、導電性の観点からは好ましい。
【0036】
本発明のグラファイト粉末の平均一次粒子径が10〜100nmであることが好適である。平均一次粒子径が比較的小さいグラファイト粉末を使用することによって、導電通路の数を増やすことが可能である。平均一次粒子径はより好適には50nm以下である。また、本発明のグラファイト粉末の、ストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)が50〜500nmであることも好適である。DCPモード径はより好適には100nm以上である。すなわち、比較的小さい一次粒子が多数凝集した形のアグリゲート構造を有していることが特に好適であり、これによってアグリゲート相互間の導電通路が効率的に形成されやすくなる。
【0037】
本発明のグラファイト粉末は、金属、ホウ素及びケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有することが好ましい。グラファイト粉末にこのような炭素以外の元素を含有させ、いわば「複合グラファイト粉末」とすることで、グラファイト粉末の導電性がさらに改善される場合がある。また、これらの元素を存在させることで黒鉛化の進行を促進できる場合もある。
【0038】
ここで、グラファイト粉末が含有する、金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素の具体例としては、ホウ素、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、バナジウム、タングステンなどの元素が挙げられる。なかでも、ホウ素、ケイ素、チタン、ジルコニウムの各元素を含有させることによって比較的安価に導電性の向上が達成される。
【0039】
グラファイト粉末中での各元素の存在の仕方は特に限定されるものではなく、粒子内部に含有されていても良いし、粒子表面を覆うような形で含まれていても良い。また各元素が含有される形態は特に限定されないが、好適には炭化物として含有される。このような炭化物としてはB4C、TiCあるいはSiCなどが例示される。
【0040】
炭化物はグラファイト粉末の中で、適宜グラファイトを構成する炭素原子と結合するような形で含まれている。このようなグラファイト粉末の状態はX線回折によって分析可能である。例えば、グラファイトの結晶に対応するピークの他に、例えばTiCあるいはB4Cといった化合物の結晶に対応するピークが観察される。
【0041】
金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有するグラファイト粉末を製造するに際し、カーボンブラックと、金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素の単体とを加熱するグラファイト粉末の製造方法が好適である。元素単体と加熱することで燃焼合成による炭化物生成時の発熱を利用して反応を進めることができるからである。具体的には、カーボンブラックとホウ素、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、チタン及びジルコニウムから選ばれる少なくとも一種以上の元素の単体とを加熱するグラファイト粉末の製造方法が好適である。これらの元素は炭化物を生成することが可能であり、この反応熱を用いて自己燃焼合成方法により合成が可能だからである。自己の反応熱を利用できるために、黒鉛化の進行が容易である。特に前述のような誘導加熱方法と組み合わせることで、より効果的に黒鉛化が進行する。
【0042】
例えば、ホウ素と炭素との燃焼合成の反応式、及びチタンと炭素との燃焼合成の反応式はそれぞれ以下の式のとおりである。
4B+xC→B4C+(x−1)C
Ti+xC→TiC+(x−1)C
これらの反応はいずれも発熱反応であり、自己燃焼合成が可能である。
【0043】
金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有するグラファイト粉末を製造するに際し、カーボンブラックと金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素のアルコラートとを加熱、特に誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法も燃焼合成による発熱が利用できて好適である。単体であると発火しやすく危険な元素の場合にアルコラートとすることで取り扱いを容易にでき、粉塵爆発等の危険性が少なくなるからである。
【0044】
ここでいうアルコラートはアルコールの水酸基の水素を金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素で置換したものであり、M(OR)nで表されるものである。ここでMとしては1〜4価、好適には2〜4価の元素が使用されるが、好ましい元素としてマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、ケイ素が例示される。nは元素Mの価数に対応し、1〜4の整数、好適には2〜4の整数である。またRは有機基であれば特に限定されないが、好適には炭素数1〜10のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等を例示できる。これらのアルコラートの一種類のみを用いても良いし、複数種のアルコラートを併用しても良い。また、元素単体や酸化物等とアルコラートを併せて用いても良い。
【0045】
金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有するグラファイト粉末を製造するに際し、カーボンブラックと金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素の酸化物と、該酸化物を還元する金属とを加熱、特に誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法も燃焼合成による発熱が利用できて好適である。このような組み合わせによって、金属が酸化物を還元し、酸化物を構成していた元素をグラファイトに含有させることができる。例えば、カーボンブラック、アルミニウム及び酸化ホウ素を加熱すると、まず酸化ホウ素がアルミニウムによって還元されてホウ素単体となり、これがカーボンブラックと反応して、炭化ホウ素が得られる。化学式で示すと以下のとおりである。
4Al+2B2O3+xC→2Al2O3+B4C+(x−1)C
また、カーボンブラック、アルミニウム及び酸化チタンとを反応させた場合の化学式は次のとおりである。
4Al+3TiO2+xC→2Al2O3+3TiC+(x−3)C
これらの反応も発熱反応であり、燃焼合成が可能であり、炉内の温度をそれほど高温にしなくても黒鉛化が可能である。
【0046】
上記のような製造方法によって製造される本発明のグラファイト粉末は良好な導電性を有している。具体的には、グラファイト粉末を0.3g/cm3の密度に圧縮成形して得られるペレットの電気抵抗が1Ω・cm以下であることが好ましい。より好適には0.8Ω・cm以下である。図1に示すように、充填密度に関わらず、良好な導電性を示すことから、電解質や樹脂などのマトリックス成分に配合した際においても、より少ない配合量で、より良好な導電性が得られるのである。
【0047】
本発明のグラファイト粉末は、各種用途に使用可能である。特に導電性に優れていることから、導電材料として好適に使用される。導電材料の例としては、各種電極、導電塗料、キャパシタ材料、導電性接着剤、電磁波シールド材などが挙げられるが、導電性に優れ、電解質に対する耐性や、撥水性が良好な点などから電池用導電材料として特に好適に使用される。
【0048】
本発明のグラファイト粉末からなる電池用導電材料は、各種の一次電池及び二次電池の導電材料として使用することができる。例えば、電極、電極活性物質、触媒担体などとして使用される。中でも燃料電池用の導電材料として使用することが好適である。
【0049】
燃料電池の触媒担体として使用する場合には、導電性に優れるのみならず、粒子径が小さくストラクチャーの発達した本発明のグラファイト粉末は、白金などの触媒微粒子を担持しやすい。また、反応によって生成した水が付着しにくくて、電池性能の低下が防止できる。さらに触媒微粒子を担持させる際には、通常水/アルコール混合溶液などの低粘度液体に分散させて担持させることが多いが、このような場合においても、撥水性は有しながらも、例えば超音波振動を加えるなどすれば、均一に分散させることが比較的容易である。
【0050】
燃料電池のガス拡散層に使用する場合には、導電性に優れる上に、反応によって生成した水が付着しにくく、電池性能の低下が防止できる。このとき、炭素繊維と併用しても良い。
【0051】
また、燃料電池のセパレータに使用する場合にも、例えばフェノール樹脂などのマトリックス中への良好な分散が可能であることから、ガスのリークを防止しながら良好な導電性を発揮することができる。このとき、粒径の大きい黒鉛粉末と併用して、黒鉛粉末間のマトリックス樹脂の導電性を改善するようにしても良い。
【0052】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
実施例中、各種の分析方法、評価方法は以下の方法に従って行った。
【0053】
(1)平均一次粒子径
透過型電子顕微鏡を用いて、270000倍の倍率で試料を撮影した。得られた写真から、直径の数平均値を得た。このとき、試料の粒子が会合している場合には、それらを別個の粒子であると考えて、平均一次粒子径(nm)を得た。
【0054】
(2)DBP吸収量
JIS K6217の9項「DBP吸収量」のA法に規定された方法によって測定して、DBP吸収量(ml/100g)を得た。
【0055】
(3)ストークス領域での遠心沈降粒子径(DCPモード径)
Brookhaven社製ディスク遠心光沈降分析装置を使用して測定した。カーボンブラックあるいはグラファイト粉末25mgに日本油脂株式会社製界面活性剤「ディスパノールLS100」を0.1ml加えて練り合わせてペースト状にしてから10体積%エタノール水溶液50mlを加え、ガラス棒で撹拌した後、超音波振動を3分間かけて調製した試料を使用した。スピン液は10体積%エタノール水溶液を使用し、ディスク回転数4500rpmで測定した。自動測定プログラムによってDCPモード径及びΔD50の値を得た。ここで、粒子径分布チャートのピークの位置の粒径がDCPモード径であり、当該ピークの半値幅がΔD50である。
【0056】
(4)グラファイト格子間距離の算出方法
対象となるグラファイト粉末を粉末X線回折装置を用いて測定した。測定波長λは、銅のKα線の波長である1.5418Åである。X線回折測定で得られた結晶ピークのうち、2θの値が26°付近にある大きなピークが、グラファイトの002面に相当するピークである。これから、グラファイトの格子間距離d(Å)を、以下の式によって算出した。
d=λ/2sinθ
【0057】
(5)圧縮試料の電気抵抗
グラファイト粉末を圧縮して直径37mm、高さ4mmのペレットを成形した。このとき、加圧条件を変えて充填密度の異なる複数のペレットを成形して、それぞれの電気抵抗(Ω・cm)を測定した。電気抵抗は三菱化学株式会社製4点式抵抗計(ロレスタAPMCP−T400)を用いて測定した。比較のために、出発原料のひとつであるカーボンブラック「ニテロン#3350」も同様に測定した。
【0058】
実施例1
出発原料のカーボンブラックとして、新日化カーボン株式会社製「ニテロン#3350」を使用した。当該カーボンブラックは、オイルファーネス法により製造されたハイストラクチャーカーボンブラックで、ハイ・アブレーション・ファーネス・ブラック(HAF)という種類のものである。平均一次粒子径が38nm、DBP吸収量が164ml/100g、DCPモード径が193nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が169nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は0.87である。この原料88gを外径120mm、内径100mm、高さ80mmの円筒状カーボンルツボ中に、厚さ5mm、直径100mmのカーボン製の円板でルツボの上下に蓋をするようにして充填した。充填時の嵩密度は0.16g/cm3であった。
【0059】
このルツボを誘導炉中に設置し、2150Hz、48kWの電力を10分間印加した。このときのカーボンブラックの温度変化を、カーボンブラック中に挿入したタングステン/レニウム熱電対で測定した結果を図2に示す。約6分で2000℃まで温度上昇していることがわかる。2000℃を超えると熱電対の精度が低下してノイズ発生が激しくなるので、7分までのデータをグラフに記載している。
【0060】
得られたグラファイト粉末のX線回折測定を行ったところ、グラファイト構造に由来するピークが観察され、グラファイト002面間隔に相当する回折線から算出される格子間距離は3.41Åであった。このグラファイト粉末は、一次粒子径が35nm、DBP吸収量が118ml/100g、DCPモード径が170nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が155nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は0.91であった。原料のカーボンブラックの物性を表1に、得られたグラファイト粉末の物性を表2に、それぞれまとめて示す。得られたグラファイト粉末を圧縮して充填密度の異なる複数のペレットを成形し、その電気抵抗を測定した。その結果を表3及び図1にまとめて示す。
【0061】
実施例2
出発原料として新日化カーボン株式会社製「ニテロン#3350」96.6重量%と、ホウ素粉末3.4重量%の混合物を使用した以外は実施例1と同様にして原料をルツボに充填した。このルツボを実施例1と同様の中周波誘導炉中に設置し、2150Hz、38kWの電力を10分間印加した。
【0062】
得られたグラファイト粉末のX線回折測定を行ったところ、グラファイト構造に由来するピークが観察され、グラファイト002面間隔に相当する回折線から算出される格子間距離は3.45Åであった。また、B4Cに由来する2θ=22.2°、23.5°及び37.8°のピークも観察された。このグラファイト粉末は、一次粒子径が37nm、DBP吸収量が108ml/100g、DCPモード径が175nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が152nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は0.87であった。得られたグラファイト粉末の物性を表2にまとめて示す。得られたグラファイト粉末を圧縮して充填密度の異なる複数のペレットを成形し、その電気抵抗を測定した。その結果を表3及び図1にまとめて示す。また、得られたグラファイト粉末を55℃における飽和水蒸気中に3時間暴露した後の水分率は0.0重量%であり、室内に60日間放置した後の水分率も0.0重量%であり、水分を付着あるいは吸収しないことが明らかになった。
【0063】
実施例3
出発原料として新日化カーボン株式会社製「ニテロン#3350」82重量%と、ケイ素粉末18重量%の混合物を使用した以外は実施例1と同様にして原料をルツボに充填した。このルツボを実施例1と同様の中周波誘導炉中に設置し、2150Hz、40kWの電力を6分間印加した。
【0064】
得られたグラファイト粉末のX線回折測定を行ったところ、グラファイト構造に由来するピークが観察され、グラファイト002面間隔に相当する回折線から算出される格子間距離は3.43Åであった。また、SiCに由来する、2θ=35.8°、41.4°及び60.0°のピークも観察された。このグラファイト粉末は、一次粒子径が38nm、DBP吸収量が120ml/100g、DCPモード径が170nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が155nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は0.91であった。得られたグラファイト粉末の物性を表2に、まとめて示す。
【0065】
比較例1
実施例1において、出発原料のカーボンブラックとして、新日化カーボン株式会社製「ニテロン#3350」を使用する代わりに、新日化カーボン株式会社製「HTC#20」を使用した以外は実施例1と同様にして原料をルツボに充填した。「HTC#20」は、オイルファーネス法により製造されたファインサーマル(FT)という種類のカーボンブラックで、平均一次粒子径が82nm、DBP吸収量が30ml/100g、DCPモード径が186nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が192nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は1.03である。このルツボを実施例1と同様の中周波誘導炉中に設置し、2150Hz、48kWの電力を10分間印加した。
【0066】
得られたグラファイト粉末のX線回折測定を行ったところ、グラファイト構造に由来するピークが観察され、グラファイト002面間隔に相当する回折線から算出される格子間距離は3.40Åであった。このグラファイト粉末は、一次粒子径が72nm、DBP吸収量が28ml/100g、DCPモード径が180nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が175nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は0.97であった。原料のカーボンブラックの物性を表1に、得られたグラファイト粉末の物性を表2に、それぞれまとめて示す。得られたグラファイト粉末を圧縮して充填密度の異なる複数のペレットを成形し、その電気抵抗を測定した。その結果を表3及び図1にまとめて示す。
【0067】
比較例2
実施例1において、出発原料のカーボンブラックとして、新日化カーボン株式会社製「ニテロン#3350」を使用する代わりに、新日化カーボン株式会社製「ニテロン#300」を使用した以外は実施例1と同様にして原料をルツボに充填した。「ニテロン#300」は、オイルファーネス法により製造されたインターミディエート・スーパー・アブレーション・ファーネス(ISF)という種類のカーボンブラックで、平均一次粒子径が24nm、DBP吸収量が115ml/100g、DCPモード径が82nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が61nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は0.74である。このルツボを実施例1と同様の中周波誘導炉中に設置し、2150Hz、38kWの電力を10分間印加した。
【0068】
得られたグラファイト粉末のX線回折測定を行ったところ、グラファイト構造に由来するピークが観察され、グラファイト002面間隔に相当する回折線から算出される格子間距離は3.41Åであった。このグラファイト粉末は、一次粒子径が22nm、DBP吸収量が108ml/100g、DCPモード径が76nm、当該モード径の半値幅(ΔD50)が58nmのものであり、(ΔD50)/(DCPモード径)の値は0.76であった。原料のカーボンブラックの物性を表1に、得られたグラファイト粉末の物性を表2に、それぞれまとめて示す。得られたグラファイト粉末を圧縮して充填密度の異なる複数のペレットを成形し、その電気抵抗を測定した。その結果を表3及び図1にまとめて示す。
【0069】
比較例3
実施例1〜3で出発原料として使用したカーボンブラックである新日化カーボン株式会社製「ニテロン#3350」を圧縮して充填密度の異なる複数のペレットを成形し、その電気抵抗を測定した。その結果を表3及び図1にまとめて示す。また、「ニテロン#3350」を55℃における飽和水蒸気中に3時間暴露した後の水分率は0.2重量%であり、室内に60日間放置した後の水分率は0.8重量%であり、一定量の水分を付着あるいは吸収していることが明らかになった。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
以上の結果から、DBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつDCPモード径と該モード径の半値幅について式(1)を満足する実施例1のグラファイト粉末は、優れた導電性を有していることが明らかになった。そして、さらにホウ素元素を含有する実施例2のグラファイト粉末は、さらに優れた導電性を有していることもわかった。これに対し、DBP吸収量が80ml/100g未満である比較例1のグラファイト粉末は、実施例1及び2に比べて導電性が低下している。また、(ΔD50)/(DCPモード径)の値が0.8未満である比較例2のグラファイト粉末も、実施例1及び2に比べて導電性が低下している。さらに、実施例1〜3の原料であるカーボンブラックの導電性は、黒鉛化されていないためにさらに低い導電性を示していた。
【0074】
【発明の効果】
本発明のグラファイト粉末は、高度な導電性を有しており、特に電解質や樹脂などのマトリックス成分中に分散した状態において、良好な導電性を発揮することができる。したがって、電池用導電材料、特に燃料電池用導電材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】グラファイト粉末の充填密度に対する電気抵抗を示したグラフである。
【図2】実施例1において誘導加熱しているときのカーボンブラックの温度変化を示したグラフである。
Claims (14)
- DBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)と該モード径の半値幅(ΔD50)について下記式(1)を満足するグラファイト粉末。
ΔD50/DCPモード径≧0.8 (1) - 平均一次粒子径が10〜100nmであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)が50〜500nmである請求項1記載のグラファイト粉末。
- グラファイト結晶の002面間隔(d002)が3.48Å以下である請求項1又は2記載のグラファイト粉末。
- 金属、ホウ素及びケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有する請求項1〜3のいずれか記載のグラファイト粉末。
- グラファイト粉末を0.3g/cm3の密度に圧縮成形して得られるペレットの電気抵抗が1Ω・cm以下である請求項1〜4のいずれか記載のグラファイト粉末。
- カーボンブラックを加熱して黒鉛化させるグラファイト粉末の製造方法であって、該グラファイト粉末のDBP吸収量が80〜200ml/100gであり、かつストークス領域での遠心沈降粒子径のモード径(DCPモード径)と該モード径の半値幅(ΔD50)について下記式(1)を満足することを特徴とするグラファイト粉末の製造方法。
ΔD50/DCPモード径≧0.8 (1) - カーボンブラックを誘導炉中で誘導加熱して黒鉛化させる請求項6記載のグラファイト粉末の製造方法。
- カーボンブラックと、金属、ホウ素及びケイ素から選ばれる少なくとも1種以上の元素の単体又は該元素を含有する化合物とを混合して加熱する請求項6又は7記載のグラファイト粉末の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか記載のグラファイト粉末からなる電池用導電材料。
- 燃料電池用触媒担体、燃料電池用ガス拡散層又は燃料電池用セパレータに用いられる請求項9記載の電池用導電材料。
- カーボンブラックが充填された発熱体を誘導炉中に配置して誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法であって、該発熱体の周囲を炭素材料の粉体又は粒体からなる断熱材で覆って誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法。
- カーボンブラックが充填された発熱体を誘導炉中に配置して誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法であって、50000Hz以下の周波数の交流電流を印加して誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法。
- カーボンブラックが充填された発熱体を誘導炉中に配置して誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法であって、発熱体に充填されたカーボンブラックの嵩密度を0.35g/cm3以下にして誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法。
- カーボンブラックが充填された発熱体を誘導炉中に配置して誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法であって、電流の印加を開始してから10分以内にカーボンブラックの温度が1850℃を超えるような昇温速度で誘導加熱するグラファイト粉末の製造方法。
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