JP7323089B1 - 負極活物質、二次電池および負極活物質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
非水電解質二次電池としては、主に、リチウムイオンを層間から放出するリチウムインターカレーション化合物を負極物質に用い、充放電時にリチウムイオンを結晶面間の層間に吸蔵放出できる。例えば黒鉛等の炭素質材料を負極活物質に用いた各種リチウムイオン電池の開発が進み、実用化もされている。
さらに、近年、各種電子機器および通信機器の小型化およびハイブリッド自動車等の急速な普及に伴い、これら機器等の駆動電源として、より高容量であり、かつサイクル特性や放電レート特性等の各種電池特性が更に向上した二次電池の開発が強く求められている。
例えば特許文献1および2はソフトカーボン粉末粒子の表層に担持されたナノ材料コーティングと、前記ナノ材料コーティングの外表面を被覆する導電性カーボン層を含むリチウムイオン二次電池負極材用ソフトカーボン材料を開示している。しかし、ナノ材料が担持されたソフトカーボンは、空隙が多く存在することが考えられる。空隙が多く存在すると充放電時にナノ材料と電解液の接触を抑制する効果が限られ、その結果、ナノ粒子上に電解液の分解反応が進み活物質の性能低下が回避できない場合がある。
即ち本発明は、初回放電容量、容量維持率および充放電容量が高く、またこれら特性のバランスに優れた二次電池を与える負極活物質を提供することを目的とする。
[1] 表面に凹凸部を有する主に黒鉛からなる粒状構造体と、前記粒状構造体の表面の少なくとも一部に、平均粒径が20nmから200nmのシリコン粒子がマトリクス相中に分散した表面層を有する負極活物質。
[2] 前記シリコン粒子は、フレーク状かつ結晶質であり、X線回折において2θが28.4°の結晶子サイズが40nm以下である前記[1]に記載の負極活物質。
[3] 前記粒状構造体の凹部内部への前記表面層の侵入深さが下記式(1)を満たす前記[1]または[2]に記載の負極活物質。
0.01≦B/A≦0.3 (1)
ただし、式(1)中、Aは前記粒状構造体の平均粒径、Bは前記表面層の凹部内部への侵入深さを表す。
[4] 前記粒状構造体は、3nmから300nmの範囲にある細孔径の積算細孔容積が0.001cm3/g以上である前記[1]から[3]のいずれかに記載の負極活物質。
[5] 前記黒鉛は、天然黒鉛あるいは人造黒鉛であり、平均粒径が1μmから25μm、比表面積が0.5m2/gから20m2/gである前記[1]から[4]のいずれかに記載の負極活物質。
[6] 前記表面層の質量が前記負極活物質の全質量を100%として1質量%から80質量%である前記[1]から[5]のいずれかに記載の負極活物質。
[7] 前記表面層はシリコンオキシカーバイド、非晶質炭素および前記シリコン粒子を含み、前記シリコン粒子が前記表面層の全質量を100質量%として、1から80質量%である前記[1]から[6]のいずれかに記載の負極活物質。
[8] 前記表面層は、更に窒素を含む前記[7]に記載の負極活物質。
[9] 前記シリコン粒子の粒径が、5nmから300nmにブロード分布している前記[1]から[8]のいずれかに記載の負極活物質。
[10] 前記粒状構造体の平均粒径が1μmから30μm、比表面積が1m2/gから30m2/gである前記[1]から[9]のいずれかに記載の負極活物質。
[11] 前記粒状構造体の表面に、さらに炭素被膜を有する前記[1]から[10]のいずれかに記載の負極活物質。
[12] 前記炭素被膜が負極活物質の全質量を100質量%として1質量%から10質量%である前記[11]に記載の負極活物質。
[13] 下記工程(1)から(3)を含む前記[1]から[13]のいずれかに記載の負極活物質の製造方法。
工程(1)表面層作製用前駆体を得る工程
工程(2)表面に凹凸を有する主に黒鉛からなる粒状構造体の表面に前記表面層作製用前駆体を塗布する工程
工程(3)不活性雰囲気中、焼成温度1000℃から1300℃で高温焼成して負極活物質を得る工程
[14] 前記[13]で得られる負極活物質の粉末を、化学気相蒸着装置内で、熱分解性炭素源ガスとキャリア不活性ガスのフローの中、700℃から1000℃の温度範囲にて炭素被膜で被覆する負極活物質の製造方法。
[15] 前記[1]から[14]のいずれかに記載の負極活物質を含む二次電池。
従来、リチウム二次電池の高容量化を目的に黒鉛より高い理論容量を有するシリコンの併用が検討されている。しかしながらシリコンは、リチウムの挿入に伴って最大約3から4倍まで体積が膨張して自壊することや、電極から剥離してしまうこと知られている。その結果、シリコンを含む活物質を負極に用いた場合、得られるリチウム二次電池のサイクル特性が低下することが知られている。
本負極活物質は表面に凹凸がある黒鉛を主成分とする粒状構造体を用い、前記本粒状構造体の表面の少なくとも一部にシリコン粒子がマトリクス相中に分散した表面層を有することで、黒鉛とシリコン粒子との強度が改良されたと考えられる。その結果、本負極活物質を用いた二次電池の初回放電容量、容量維持率および充放電容量が改良されたと考えられる。
主成分である黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボンまたはソフトカーボンのような非晶質炭素が挙げられる。黒鉛は初回放電容量または充放電容量の観点から、天然黒鉛または人造黒鉛が好ましい。
本粒状構造体は黒鉛以外にカーボンナノチューブや炭素繊維、または造粒工程時に用いられる少量なバインダーなどを含んでもよい。
なお平均粒径はレーザー回折式粒度分析計などを用いて測定することができるD50の値である。D50は、レーザー粒度分析計などを用い動的光散乱法により測定することができる。平均粒径は、粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となるときの粒子径である。以下、平均粒径とはD50のことである。
また比表面積は、窒素ガス吸着測定より、比表面積測定装置を用いてBETの式により求めたBET比表面積である。以下、比表面積とはBET比表面積のことである。
前記凹凸部は例えば本粒状構造体の表面を粗面化して形成してもよく、表面に複数の孔を形成することで凹凸部としてもよい。複数の孔を形成する場合、孔は開放孔であっても連通孔であってもよい。
凹凸部の断面形状は例えば、三角形、矩形、半円形、半楕円状形等の形状が挙げられ、これら形状が複数種、混じっていてもよい。
また前記本粒状構造体の比表面積は、1m2/gから30m2/gが好ましく、3m2/gから20m2/gがより好ましい。比表面積が前記範囲であると、表面層との密着性を維持するために適切な表面空隙を保つことができる。
前記積算細孔容積は0.01cm3/g以上がより好ましい。また積算細孔容積の上限値は、通常、0.5cm3/gである。
本シリコン粒子の平均粒径は前記D50の値である。本シリコン粒子の平均粒径は、サイクル性能改善の観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましい。また本シリコン粒子の平均粒径は、シリコンナノ粒子の良好な分散性を維持する観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。
シリコンの塊の粉砕に用いる粉砕機としては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどの粉砕機が例示できる。また、粉砕は有機溶剤を用いた湿式粉砕であってもよく、有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類などを好適に用いることができるが、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶剤も用いることができる。
シリコン粒子の粉砕条件を適切に制御することで平均粒径が前記範囲となるようにし、最後に分級等することで、本シリコン粒子が得られる。
マトリクス相がフリー炭素を含む構造を有している場合、フリー炭素は非晶質炭素が好ましい。
SiOxCy (2)
式(2)中、xはケイ素に対する酸素のモル比、yはケイ素に対する炭素のモル比を表す。
本負極活物質を二次電池に用いた場合、充放電性能と容量維持率とのバランスが優位になるという観点から、1≦x≦2が好ましく、1.1≦x≦1.8がより好ましく、1.2≦x≦1.7がさらに好ましい。
また、本負極活物質を二次電池に用いた場合、充放電性能と初回充放電効率のバランスとの観点から、1≦y≦20が好ましく、1.2≦y≦15がより好ましい。
マトリクス相を構成する化合物がケイ素、酸素、炭素および窒素を含む化合物の場合、マトリクス相は下記式(3)で表される化合物を含有するのが好ましい。
SiOxCyNz (3)
式(3)中、xおよびyは前記と同じ意味であり、zはケイ素に対する窒素のモル比を表す。
マトリクス相が前記式(3)で表される化合物を含む場合、本活物質を二次電池に用いた際の充放電性能や容量維持率の観点から、1≦x≦2、1≦y≦20、0≦z≦0.5が好ましく、1.1≦x≦1.8、1.2≦y≦15、0≦z≦0.4がより好ましい。
なお、前記x、yおよびzの測定は前記方法によって実施することが好ましいが、本活物質の局所的な分析を行い、それにより得られた含有比データの測定点数を多く取得して、本負極活物質全体の含有比を類推することでも可能である。局所的な分析としては、例えばエネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)や電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)が挙げられる。
非晶質炭素としては芳香族樹脂など有機物熱分解の炭素が挙げられる。
また表面層は前記に加えて窒素を含むのがSi-O―C骨格安定性の観点から好ましい。表面層が窒素を含む場合、マトリクス相は前記式(3)で表される化合物を含有するのが好ましい。
前記表面層は本シリコン粒子を10質量%以上含むのがより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。前記表面層は本シリコン粒子を80質量%以下含むのが好ましく、70質量%以下がより好ましい。
なお本負極活物質の全質量とは、本負極活物質を構成する本粒状構造体と表面層の合計質量である。前記マトリクス相が窒素を含む場合は、窒素も含む合計量である。本負極活物質が後述する被覆層を含む場合は、本負極活物質の全質量は前記に加えて被覆層の質量を含む合計量である。
0.01≦B/A≦0.3 (1)
ただし、式(1)中、Aは前記本粒状構造体の平均粒径、Bは前記表面層の前記凹部内部への侵入深さを表す。ここでAは前記D50であり、Bは粒子断面のSEM観察により測定される。
前記AとBは、粒状構造体強度と表面層密着性の観点から、下記式(4)を満たすのがより好ましく、下記式(5)を満たすのがさらに好ましい。
0.05≦B/A≦0.25 (4)
0.10≦B/A≦0.20 (5)
また本負極活物質は被覆材により表面が被覆されていてもよい。被覆材としては、電子伝導性、リチウムイオン伝導性、電解液の分解抑制効果が期待出来る物質が好ましい。
また本負極活物質の表面が前記被膜により被覆されている場合、負極活物質の化学安定性や熱安定性の改善の観点から、被膜の含有量は前記本負極活物質の全質量を100質量%として、1から30質量%が好ましく、3から25質量%がより好ましい。なお本負極活物質の全質量とは前記と同じである。
被膜が炭素の場合、炭素被膜の平均厚みは10nm以上300nm以下、または、炭素の含有量は本負極活物質の全量を100質量%として、1から10質量%が好ましい。本負極活物質の全量は前記と同じである。
炭素被膜の場合、前記ラマンスペクトルの散乱ピーク強度比I(Gバンド/Dバンド)は、0.9から1.1の範囲であるのが好ましい。BET法による比表面積は3.5m2/g以下、真密度は1.9g/cm3以上が好ましい。
具体的には、本負極活物質と有機結着剤と、必要に応じてその他の導電助剤などの成分を含んで構成されるスラリーを集電体銅箔上へ薄膜状に塗付して負極とすることができる。また、前記のスラリーに黒鉛など炭素材料を加えて負極を作製することもできる。
炭素材料としては、天然黒鉛、人工黒鉛、ハードカーボンまたはソフトカーボンのような非晶質炭素などが挙げられる。
かかる範囲において、本負極活物質は、化学安定性が高く、水性バインダーも採用することができる点で、実用化面においても取り扱い容易である。
工程(1)表面層作製用前駆体を得る工程
工程(2)表面に凹凸を有する主に黒鉛からなる粒状構造体の表面に前記表面層作製用前駆体を塗布する工程
工程(3)不活性雰囲気中、焼成温度1000℃から1300℃で高温焼成して負極活物質を得る工程
マトリクス相にシリコン粒子が分散している前記表面層を与える表面層作成用前駆体は以下の方法で作成される。
シリコン粒子は例えば、有機溶媒を用い、シリコン塊を湿式粉末粉砕装置にて粉砕して得られる。有機溶媒においてシリコン塊の粉砕を促進させるために分散剤を用いても良い。シリコン塊としては市販のシリコン粉体や大粒径のシリコン粒子等が用いられる。
湿式粉砕装置としては、特に限定されるものでなく、ローラーミル、高速回転粉砕機、容器駆動型ミル、ビーズミルなどが挙げられる。
湿式粉砕ではシリコン粒子が本シリコン粒子の粒径となるまで粉砕するのが好ましい。
湿式ビーズミル装置を用いて、分散剤添加量、ビーズ径、回転数、粉砕時間など複数粉砕条件の制御が挙げられる。
上述方法によりポリシロキサン化合物が得られる。
ポリシロキサン化合物としては、例えば、セラネート(登録商標)シリーズ(有機・無機ハイブリッド型コーティング樹脂;DIC株式会社製)やコンポセランSQシリーズ(シルセスキオキサン型ハイブリッド;荒川化学工業株式会社製)が挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えばスミライトレジンシリーズ(レゾール型フェノール樹脂,住友ベークライト株式会社製)が挙げられる。
得られた懸濁液を脱溶媒と乾燥を経て表面層作製用前駆体が得られる。ポリシロキサン化合物と炭素源樹脂を含む混合物は、ポリシロキサン化合物と炭素源樹脂とが均一に混合した状態であることが好ましい。前記混合は分散・混合の機能を有する装置を用いて行われる。例えば、攪拌機、超音波ミキサー、プリミックス分散機などが挙げられる。有機溶媒を溜去することを目的とする脱溶剤と乾燥の作業では、乾燥機、減圧乾燥機、噴霧乾燥機などを用いることができる。
工程(2)では前記本粒状構造体の表面に前記工程(1)で得られた表面層作製用前駆体を塗布する。
塗布方法は例えば、前記表面層作成用前期体を含むスラリーに前記本粒状構造体を添加し混合後、脱溶媒と乾燥を行う方が挙げられる。混合、脱溶媒、乾燥については前記工程(1)と同じである。
なお孔形成剤とは、前記成形後、焼成、エッチング、洗浄等により成形体から除去されることで成形体に孔を形成するために用いられるものである。孔形成剤の除去方法により孔形成剤の材質は適宜選定されるが、例えば、耐酸性または耐アルカリ性に劣る銅等の金属、焼成温度が黒鉛より低い無機物、熱分解容易な有機物が挙げられる。
工程(3)は、上記工程(2)で得られた表面層作製用前駆体が塗布された本粒状構造体を不活性雰囲気中、温度1000℃から1300℃で高温焼成することで本負極活物質が得られる。焼成により熱分解可能な有機成分を完全分解させ、その他の主成分を焼成条件の精密制御により本負極活物質に適した焼成物となる。具体的にいうと、原料のポリシロキサン化合物および炭素源樹脂が高温処理のエネルギーによってケイ素-酸素-炭素骨格とフリー炭素に転化される。
本活物質は前記方法により負極として用い、前記負極を有する二次電池とすることができる。
本活物質および本活物質を負極に含む二次電池は前記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。
また本負極活物質の製造方法は前記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてもよい。
尚、本発明の実施例で用いるハーフセルは、負極に本発明のケイ素含有活物質を主体とする構成とし、対極に金属リチウムを用いた簡易評価を行っているが、これはより活物質自体のサイクル特性を明確に比較するためである。
150mlの小型ビーズミル装置の容器中に60%の充填率で粒径が0.1mmから0.2mmのジルコニアビーズおよび100mlのメチルエチルケトン溶媒(MEK)を入れた。その後、平均粒径が5μmのシリコン粉体(市販品)とカチオン性分散剤液(ビックケミー・ジャパン株式会社:BYK145)を入れ、表1に記載の条件下にてビーズミル湿式粉砕を行い、固形物濃度が30質量%の濃い褐色液体状のシリコンスラリーSi1からSi6を得た。TEM観察でシリコン粉砕品の形態およびサイズを確認し、表1に示したように、それぞれをSi1、Si2、Si3、Si4、Si5およびSi6とした。
黒鉛1から7は、表2に示した平均粒径が2.5μmから15μmの範囲にある200gの球状黒鉛粉末に表2に記載の平均粒径を有する200gの銅粒子を加えて、卓上ミキサーで30分間混合後、成型機にて表2に示したように40から80MPaの圧力で円柱状に成型した。成型物を乳鉢で粉砕し、粉砕物を10質量%の硫酸溶液に24時間、室温で浸漬し、銅を溶解除去した。混合液を濾過後、110 ℃、12時間にて減圧乾燥して黒鉛粉末表面に空隙を付与した。
黒鉛表面上の凹凸深度はSEMによる断面観察にて計測し、光散乱型粒径測定装置や比表面積測定装置を用いて黒鉛粒子の平均粒径と比表面積および細孔容積などを求めた。結果を表2に示した。
黒鉛10は平均粒径2.5μmの球状黒鉛粉末と平均粒径が1μmの銅粒子を成型機にて70MPaの圧力で円柱状に成型後、上記の条件下にて銅を溶解除去して空隙付与を行った。
黒鉛1から10の空隙付与の条件を表2に示した。
(メチルトリメトキシシランの縮合物の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート、冷却管および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、1,421質量部のメチルトリメトキシシラン(以下、「MTMS」と略記する。)を仕込み、60℃まで昇温した。次いで、前記反応容器中に0.17質量部のiso-プロピルアシッドホスフェート(SC有機化学株式会社製「Phoslex A-3」)と207質量部の脱イオン水との混合物を5分間で滴下した後、80℃の温度で4時間撹拌して加水分解縮合反応させた。
上記の加水分解縮合反応によって得られた縮合物を、温度40から60℃及び40から1.3kPaの減圧下で蒸留し前記反応過程で生成したメタノールおよび水を除去することによって、数平均分子量1,000から5000のMTMSの縮合物を含有する有効成分が70質量%の液を1,000質量部得た。なお、「40から1.3kPaの減圧下」とは、メタノールの留去開始時の減圧条件が40kPaで、最終的に1.3kPaとなるまで減圧する条件をいう。また、前記有効成分とは、MTMS等のシランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)を、縮合反応後の実収量(質量部)で除した値〔シランモノマーのメトキシ基が全て縮合反応した場合の理論収量(質量部)/縮合反応後の実収量(質量部)〕により算出したものである。
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、150質量部のブタノール(以下、「BuOH」とも記す。)、105質量部のフェニルトリメトキシシラン(以下、「PTMS」とも記す。)、277質量部のジメチルジメトキシシラン(以下、「DMDMS」とも記す。)を仕込んで80℃まで昇温した。
次いで、同温度で21質量部のメチルメタアクリレート(以下、「MMA」とも記す。)、4質量部のブチルメタアクリレート(以下、「BMA」とも記す。)、3質量部の酪酸(以下、「BA」とも記す。)、2質量部のメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「MPTS」とも記す。)、3質量部のBuOHおよび0.6質量部のブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(以下、「TBPEH」とも記す。)を含有する混合物を、前記反応容器中へ6時間で滴下した。滴下終了後、更に同温度で20時間反応させて加水分解性シリル基を有する数平均分子量が10,000のビニル重合体(a2-1)の有機溶剤溶液を得た。
次いで、この液に合成例1で得られた472質量部のMTMSの縮合物(a1)と80質量部の脱イオン水を添加し、同温度で10時間撹拌して加水分解縮合反応させたものを、合成例1と同様の条件で蒸留することによって生成したメタノールおよび水を除去した。次いで、250質量部のBuOHを添加し、不揮発分が60.1質量%の硬化性樹脂組成物(1)を1,000質量部得た。
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、150質量部のBuOH、249質量部のPTMS、263質量部のDMDMSを仕込んで80℃まで昇温した。次いで、同温度で18質量部のMMA、14質量部のBMA、7質量部のBA、1質量部のアクリル酸(以下、「AA」とも記す。)、2質量部のMPTS、6質量部のBuOHおよび0.9質量部のTBPEHを含有する混合物を、前記反応容器中へ5時間で滴下し、滴下終了後、更に同温度で10時間反応させて加水分解性シリル基を有する数平均分子量が20,100のビニル重合体(a2-2)の有機溶剤溶液を得た。
次いで、この液に76質量部の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、231質量部の前記MTMSの縮合物、56質量部の脱イオン水を添加し、同温度で15時間撹拌して加水分解縮合反応させたものを、前記と同様の条件で蒸留することによって生成したメタノールおよび水を除去し、次いで、250質量部のBuOH を添加し、不揮発分が60.0質量%の硬化性樹脂組成物(2)を1,000質量部得た。
上記合成例3のように作製した平均分子量が3500のポリシロキサン樹脂(硬化性樹脂(1))および平均分子量が3000のフェノール樹脂を焼成後の組成重量比がSiOC/Cが50/50となるように樹脂固形物重量構成比の45/55で加え、高温焼成後の生成物中にシリコン粒子含有量を50重量%となるように合成例1で得られたSi3のシリコンスラリーと、適量のメチルエチルケトン溶媒を添加して撹拌機中にて十分に混合させた。その結果、固形物濃度が10質量%のシリコン粒子含有樹脂混合懸濁液得た。100質量部の前記シリコン粒子含有樹脂混合懸濁液に上記合成例2で処理した黒鉛2を高温焼成後に94質量%になるように入れて、十分に混合後に120℃のオイルバス中、窒素フォロー条件下にて脱溶媒を行った。その後、真空乾燥機を用いて110℃で減圧乾燥を10時間行い、最後に窒素雰囲気中で1100℃、4時間、高温焼成して黒色固形物の複合粒子を得た。遊星型ボールミルで粉砕後に活物質を作製した。平均粒径はD50で約16μmであり、BET法による比表面積は3.1m2/gであった。Cu-Kα線による粉末X線回折(XRD)の測定結果によりSi(111)結晶面に帰属される回折ピークである2θが28.4°の半値幅に基づき、シェラー式により求めた、結晶子サイズは21nmであった。
フルセルの評価は、正極材料としてLiCoO2を正極活物質、集電体としてアルミ箔を用いた単層シートを用いて、正極膜を作製し、400mAh/gの放電容量設計値にて黒鉛粉体と活物質粉末を混合して負極膜を作製した。非水電解質には六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比で1/1として混合液に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いたラミ型リチウムイオン二次電池を作製した。ラミ型リチウムイオン二次電池を室温下、テストセルの電圧が4.2Vに達するまで1.2mA(正極基準で0.25c)の定電流で充電を行い、4.2Vに達した後は、セル電圧を4.2V に保つように電流を減少させて充電を行い、放電容量を求めた。25℃で300 サイクル後の容量維持率が91%であった。結果を表3に示す。
実施例1と同じように、固形物濃度が10質量%である100質量部の合成例1で得られたSi3のシリコン粒子含有樹脂混合懸濁液に合成例2で処理した黒鉛2の添加量を表3に記載のように、焼成後に90質量%から50質量%になるように調整し、十分に混合後に120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表3に示した。
平均分子量が3200の硬化性樹脂(2)を用いて固形物濃度が10質量%の100質量部の合成例1で得られたSi3のシリコン粒子含有樹脂混合懸濁液に合成例2で処理した黒鉛1(実施例10)、黒鉛3(実施例11)、黒鉛4(実施例12)、黒鉛5(実施例13)、黒鉛6(実施例14)、黒鉛7(実施例15)、黒鉛8(実施例16)および黒鉛3(実施例17)を焼成後にそれぞれ85質量%になるように入れた。十分に混合後、120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表4に示した。
固形物濃度が10質量%の100質量部の合成例1で得られたSi1(実施例18)、Si2(実施例19)およびSi4(実施例20)のシリコン粒子含有樹脂混合懸濁液に合成例2で処理した黒鉛2を高温焼成にそれぞれ85質量%になるように入れて、十分に混合した。その後、120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。その後、活物質の粉末のそれぞれ25gを化学気相蒸着装置(CVD、ディスクロータリキルン、高砂工業株式会社)の反応容器に入れて、アセチレンの流量を0.3L/min、窒素の流量を0.7L/minとして混合ガスフロー中、900℃で反応時間を1時間、2時間および3時間と変更して炭素被膜を行った。熱分析結果によると炭素被膜量はそれぞれ2%、4%および8%となった。得られた炭素被膜活物質の性状および二次電池の評価結果を表4に示す。
D50の平均粒径が50nmである市販単分散球状のシリコン粒子(Alfa Aesar社製)を用いて、実施例1と同様な条件下にて固形物濃度が10質量部含有する樹脂混合懸濁液を調製した。100質量部の上記樹脂混合懸濁液に合成例2で処理した黒鉛2を高温焼成後に85質量%になるように入れて、十分に混合後に120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表4に示した。
前記合成例1で得られたSi3のシリコン粒子を用いて、実施例1と同様な条件下にて固形物濃度が10質量部含有する樹脂混合懸濁液を調製した。100質量部の上記樹脂混合懸濁液に合成例2で処理した黒鉛9を高温焼成後に85質量%になるように入れて、十分に混合後に120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表4に示した。
固形物濃度が10質量%である100質量部の合成例1で得られたSi3のシリコン粒子含有樹脂混合懸濁液に合成例2で処理した黒鉛10を高温焼成後に85質量%になるように入れて、十分に混合後に120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表4に示した。
D50の平均粒径が15μmの球状の黒鉛を用いて、粒径分布や比表面積の測定を実施後、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表4に示した。
固形物濃度が10質量%である100質量部の合成例1で得られたSi5のシリコン粒子含有樹脂混合懸濁液にD50の平均粒径が15μmの市販の黒鉛粒子を高温焼成後に85質量%になるように入れて、十分に混合した。その後に120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表4に示した。
固形物濃度が10質量%である100質量部の合成例1で得られたSi6のシリコン粒子含有樹脂混合懸濁液にD50の平均粒径が15μmの市販の黒鉛粒子を高温焼成後に85質量%になるように入れて、十分に混合した。その後に120℃のオイルバス中、窒素ガスフロー条件下にて脱溶媒を行った。その他の条件は、実施例1と同様にして活物質を得た。得られた活物質を含む負極活物質を用いた二次電池の評価を行った。結果を表4に示した。
表3および表4中、各評価方法は以下のとおりである。
D50:レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン・パナリティカル社製、マスターサイザー3000)を用いて測定した。
比表面積:比表面積測定装置(BELJAPAN社製、BELSORP-mini)を用いて窒素吸着測定より、BET法で測定した。29Si-NMR:JEOL RESONANCE社製、JNM-ECA600を用いた。
積算細孔容積:水銀ポロヒーター(島津製作所Micromeritic製オートポアIV9520)で測定した。
比表面積:比表面測定装置(BELSORP VAC3、マイクロトラック・ベル社製)で測定した。
Claims (14)
- 表面に凹凸部を有する主に黒鉛からなる粒状構造体と、前記粒状構造体の表面の少なくとも一部に、平均粒径が20nmから200nmのシリコン粒子がマトリクス相中に分散した表面層を有し、
前記粒状構造体の凹部内部への前記表面層の侵入深さが下記式(1)を満たす負極活物質。
0.01≦B/A≦0.3 (1)
(ただし、式(1)中、Aは前記粒状構造体の平均粒径、Bは前記表面層の凹部内部への侵入深さを表す。) - 前記シリコン粒子は、フレーク状かつ結晶質であり、X線回折において2θが28.4°の結晶子サイズが40nm以下である請求項1に記載の負極活物質。
- 前記粒状構造体は、3nmから300nmの範囲にある細孔径の積算細孔容積が0.001cm3/g以上である請求項1または2に記載の負極活物質。
- 前記黒鉛は、天然黒鉛あるいは人造黒鉛であり、平均粒径が1μmから25μm、比表面積が0.5m2/gから20m2/gである請求項1または2に記載の負極活物質。
- 前記表面層の質量が前記負極活物質の全質量を100%として1質量%から80質量%である請求項1または2に記載の負極活物質。
- 前記表面層はシリコンオキシカーバイド、非晶質炭素および前記シリコン粒子を含み、前記シリコン粒子が前記表面層の全質量を100質量%として、1から80質量%である請求項1または2に記載の負極活物質。
- 前記表面層は、更に窒素を含む請求項6に記載の負極活物質。
- 前記シリコン粒子の粒径が、5nmから300nmの範囲に分布している請求項1または2に記載の負極活物質。
- 前記粒状構造体の平均粒径が1μmから30μm、比表面積が1m2/gから30m2/gである請求項1または2に記載の負極活物質。
- 前記粒状構造体の表面に、さらに炭素被膜を有する請求項1または2に記載の負極活物質。
- 前記炭素被膜が負極活物質の全質量を100質量%として1質量%から10質量%である請求項10に記載の負極活物質。
- 下記工程(1)から(3)を含む請求項1または2に記載の負極活物質の製造方法。
工程(1)表面層作製用前駆体を得る工程
工程(2)表面に凹凸を有する主に黒鉛からなる粒状構造体の表面に前記表面層作製用前駆体を塗布する工程
工程(3)不活性雰囲気中、焼成温度1000℃から1300℃で高温焼成して負極活物質を得る工程 - 請求項12で得られる負極活物質の粉末を、化学気相蒸着装置内で、熱分解性炭素源ガスとキャリア不活性ガスのフローの中、700℃から1000℃の温度範囲にて炭素被膜で被覆する負極活物質の製造方法。
- 請求項1または2に記載の負極活物質を含む二次電池。
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