JP2004095806A - 分布帰還型半導体レーザ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】DFBレーザ101は、n型InP基板2表面に形成した回折格子102と、多重井戸構造のストライプ状の活性層5とを備えており、回折格子102の形成領域の境界を活性層5から充分、離間させるために、回折格子102の導波路方向に垂直な方向の長さWgを、活性層5の導波路方向に垂直な方向の長さ(活性層幅Wa)の30倍乃至60倍とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板上に、レーザ発振可能な活性層と、その活性層の近傍に導波路方向に沿って形成した回折格子とを備えた分布帰還型半導体レーザ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年急激に伸びている通信需要に対応するため、1本の光ファイバ中に異なる波長の光信号を伝送させることにより、光ファイバを新たに増設することなく大幅に通信容量を拡大できる波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)光通信システムが進展してきている。このWDM光通信システムには、発振波長(発振スペクトル)純度の高い光源が必要なため、単一波長出力が可能な分布帰還型(DFB:distributed feedback)半導体レーザが用いられる。この分布帰還型半導体レーザの分布帰還動作による単一波長出力動作は、半導体光導波路内部に周期的な屈折率変化を発生させる回折格子を導入することで実現され、回折格子の形状を最適なものにすることで単一波長発振をより安定させることは非常に重要である。尚、回折格子は、その周期に対応した波長の光のみを選択的に反射する特性を有しており、回折格子の周期で決まる特定の波長のみが回折格子により反射され、分布帰還型半導体レーザ内で相互作用(帰還)し増幅され定在波ができる。即ち、出力光の波長は回折格子の周期によって決定され単一波長出力が実現する。
【0003】
従来の分布帰還型半導体レーザ(以降、DFBレーザと呼ぶ)の一例を図2に示す。図2(a)は、DFBレーザを導波路方向に平行な面で切った要部断面図、図2(b)は、DFBレーザを導波路方向に垂直な面で切った要部断面図、図2(c)は、半導体基板表面に形成した回折格子の斜視図である。
【0004】
DFBレーザ1は、n型InP基板2表面に形成した多数本の凹凸のラインパタンから成る回折格子3と、その回折格子3を埋め込むように形成したn型InGaAsPから成るガイド層4と、その上に形成した多重井戸構造のストライプ状の活性層5と、その上に形成したp型InPから成るクラッド層6と、その上に形成したInGaAsPから成るキャップ層7と、表面及び裏面に形成したAuGe/Auなどから成るp側電極8,n側電極9と、前端面及び後端面に形成したα−Si(アモルファスシリコン)やTiO2(チタンオキサイド)から成る無反射コーティング膜10,後端面の反射コーティング膜11とで構成されている。
【0005】
次に、このDFBレーザ1の製造方法は、先ず、n型InP基板2上に回折格子3を形成する。回折格子3の形成方法は、n型InP基板2上にレジスト(図示せず)を塗布し、電子ビームでレジスト(図示せず)に回折格子パターンを直接描画する電子ビーム露光法及びウェットまたはドライエッチングを用いる。他の露光法としては、干渉露光法や、マスクのパターンを転写する方法があるが、電子ビーム露光法が、最も精密で微細な周期を形成でき、DFBレーザ1の製造に適している。ただし、描画スピードが遅くスループットの点で劣るため、通常、回折格子3をn型InP基板2の全面に形成せずに、実際にレーザ発振可能な活性層5に対応する部分及びその周辺にのみ局所的に形成するようにして描画距離及び描画時間の短縮を図っている。このため、ここでは、加工精度を考慮して回折格子3の導波路方向に垂直な方向の長さ(図中に回折格子長さWgとして示す)は、活性層5の導波路方向に垂直な方向の長さ(図中に活性層幅Waとして示す)よりも若干長めとするに留める。例えば、Wa=1.5μmに対してWg=5μm(約3倍))とする。また、回折格子3の周期(図中に周期Λとして示す)は、所望の出力波長が得られるような周期とする。尚、回折格子3の周期は、一定であってもよいし、周期の異なる位相シフト領域(図示せず)を有するものであってもよい。
【0006】
次に、その回折格子3上に有機金属気相成長法(MOVPE)を用いて、n型InGaAsPから成るガイド層4を回折格子3を埋め込む厚さまで結晶成長させ、次に、そのガイド層4上に活性層5を形成する。尚、活性層5は、n型InP基板2上の全面に形成した後にエッチングを施し、幅1.5μmのストライプ状のチャンネル導波路とする。次に、p型InPから成るクラッド層6、InGaAsPから成るキャップ層7を順次、結晶成長させる。次に、蒸着法またはスパッタ法で、表面及び裏面にp側電極8,n側電極9をそれぞれ形成する。その後、蒸着法またはスパッタ法で前端面及び後端面に無反射コーティング膜10,反射コーティング膜11をそれぞれ付着させ、DFBレーザ1が完成する。
【0007】
しかしながら、上述したように、n型InP基板2上に回折格子3を局所的に形成するため、導波路方向に沿った回折格子3の形成領域の両サイドには、必然的に、回折格子3の無い領域との境界ができる。そして、この回折格子3の形成領域の境界近傍には、以下の原因により、不所望な凹部(段差)12が形成されることがあった。
【0008】
以下、この凹部(段差)12が形成される理由を説明する。露光後のウェットエッチングの際に、n型InP基板2上のレジスト(図示せず)に回折格子パターンを描画した領域(回折格子3の形成領域)では、エッチャント(図示せず)は、n型InP基板2と反応し、その反応の進行に伴って徐々に劣化していく。一方、回折格子パターンが無い領域(回折格子3の無い領域)では、エッチャント(図示せず)は、n型InP基板2との反応が無いため劣化せずにフレッシュなまま存在する。このため、回折格子パターンが有る領域と無い領域でのエッチャント(図示せず)の劣化具合に差が生じ、回折格子3の形成領域の境界近傍には、このフレッシュなエッチャント(図示せず)が流れ込み、他の回折格子パターンが有る領域に比較して境界近傍のみエッチングレートが高くなり、不所望な凹部(段差)12が形成されることがあった。
【0009】
そして、この凹部(段差)12と、その上方に成長する活性層5とが充分離間されていないと、この凹部(段差)12の影響で活性層5に結晶歪が発生しやすくなり良好な単一波長出力が得られないおそれがあると言う問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、半導体基板上に局所的に回折格子を形成する際に、回折格子パターンの有る領域と無い領域とで、エッチャントの劣化具合に差が生じ、回折格子の形成領域の境界近傍に不所望な凹部(段差)が形成されることがあり、この凹部(段差)とその上方に成長する活性層とが、充分、離間されていないと、凹部(段差)の影響で活性層に結晶歪が発生しやすくなり良好な単一波長出力が得られなかったり、動作中に結晶歪から転移が発生し特性劣化が生じるおそれがあった。
【0011】
本発明の目的は、回折格子の形成領域の境界近傍に不所望な凹部(段差)が形成されても、その凹部(段差)が活性層に結晶歪を生じさせることがないように、回折格子の形成領域の境界と活性層とを充分、離間させ、良好な単一波長出力が得られる半導体レーザ及びその製造方法を提供することである。また、電子ビーム露光法を採用した場合の電子ビームの描画距離及び描画時間を考慮した回折格子の形成領域の境界と活性層とを離間させるべき適正値を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の分布帰還型半導体レーザは、半導体基板上に、レーザ発振可能な活性層と、活性層と中心線を一致させ活性層の近傍に導波路方向に沿って形成した回折格子とを備えた分布帰還型半導体レーザにおいて、回折格子の形成領域の境界近傍に生じる凹部が、活性層に結晶歪を生じさせないように、回折格子の形成領域の境界を活性層から離間したことを特徴とする分布帰還型半導体レーザである。
【0013】
上記分布帰還型半導体レーザの製造方法は、半導体基板上に、レーザ発振可能な活性層を形成する工程と、活性層と中心線を一致させ活性層の近傍に導波路方向に沿った回折格子を形成する工程とを含む分布帰還型半導体レーザの製造方法において、回折格子の形成領域の境界近傍に生じる凹部が、活性層に結晶歪を生じさせないように、回折格子の形成領域の境界を活性層から離間したことを特徴とする分布帰還型半導体レーザの製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の分布帰還型半導体レーザ(以降、DFBレーザと呼ぶ)の一例を図1に示す。図1(a)は、DFBレーザを導波路方向に平行な面で切った要部断面図、図1(b)は、DFBレーザを導波路方向に垂直な面で切った要部断面図、図1(c)は、半導体基板表面に形成した回折格子の斜視図である。尚、図2と同一部分には同一符号を付す。
【0015】
DFBレーザ101は、n型InP基板2表面に形成した多数本の凹凸のラインパタンから成る回折格子102と、その回折格子102を埋め込むように形成したn型InGaAsPから成るガイド層4と、その上に形成した多重井戸構造のストライプ状の活性層5と、その上に形成したp型InPから成るクラッド層6と、その上に形成したInGaAsPから成るキャップ層7と、表面及び裏面に形成したAuGe/Auなどから成るp側電極8,n側電極9と、前端面及び後端面に形成したα−Si(アモルファスシリコン)やTiO2(チタンオキサイド)から成る無反射コーティング膜10,後端面の反射コーティング膜11とで構成されている。また、回折格子102の形成領域の境界近傍には、従来技術で説明した原因により、不所望な凹部(段差)12が形成されている。
【0016】
次に、このDFBレーザ101の製造方法は、先ず、n型InP基板2上に回折格子102を形成する。回折格子102の形成方法は、n型InP基板2上にレジスト(図示せず)を塗布し、電子ビームでレジスト(図示せず)に回折格子パターンを直接描画する電子ビーム露光法及びウェットエッチングを用いる。他の露光法としては、干渉露光法や、マスクのパターンを転写する方法があるが、電子ビーム露光法が、最も精密で微細な周期を形成でき、DFBレーザ101の製造に適している。ただし、描画スピードが遅くスループットの点で劣るため、通常、回折格子102をn型InP基板2の全面に形成せずに、実際にレーザ発振可能な活性層5に対応する部分及びその周辺にのみ局所的に形成するようにして描画距離及び描画時間の短縮を図っている。このため、ここでは、電子ビームの描画距離及び描画時間を極力、増加させないように考慮し、かつ、凹部(段差)12が活性層5に結晶歪を生じさせないように、回折格子102の形成領域の境界を活性層5から充分、離間させるために、回折格子102の導波路方向に垂直な方向の長さ(図中に回折格子長さWgとして示す)を、活性層5の導波路方向に垂直な方向の長さ(図中に活性層幅Waとして示す)の30倍乃至60倍とする。例えば、Wa=1.5μmに対してWg=70μm(約47倍)とする。また、回折格子102の周期(図中に周期Λとして示す)は、所望の出力波長が得られるような周期とする。尚、回折格子102の周期は、一定であってもよいし、周期の異なる位相シフト領域(図示せず)を有するものであってもよい。
【0017】
次に、その回折格子102上に有機金属気相成長法(MOVPE)を用いて、n型InGaAsPから成るガイド層4を回折格子102を埋め込む厚さまで結晶成長させ、次に、そのガイド層4上に活性層5を形成する。尚、活性層5は、n型InP基板2上の全面に形成した後にエッチングを施し、幅1.5μmのストライプ状のチャンネル導波路とする。次に、p型InPから成るクラッド層6、InGaAsPから成るキャップ層7を順次、結晶成長させる。次に、蒸着法またはスパッタ法で、表面及び裏面にp側電極8,n側電極9をそれぞれ形成する。その後、蒸着法またはスパッタ法で前端面及び後端面に無反射コーティング膜10,反射コーティング膜11をそれぞれ付着させ、DFBレーザ1が完成する。
【0018】
このようにすると、回折格子102の形成領域の境界近傍に不所望な凹部(段差)12が形成されても、凹部(段差)12と活性層5とは充分、離間しているため、凹部(段差)12の影響で活性層5に結晶歪が生じることがない。さらに、望ましくは、回折格子102の導波路方向に垂直な方向の長さWgを、活性層5の導波路方向に垂直な方向の長さ(活性層幅Wa)の40倍乃至50倍とすると、さらに、電子ビームの描画距離及び描画時間を短縮でき、かつ、活性層5に結晶歪が発生するおそれを軽減できる。
【0019】
尚、上記では、回折格子102の上方に活性層5を形成する構成のDFBレーザ101で説明したが、活性層5の上方に回折格子102を形成する構成のDFBレーザ101であってもよい。
【0020】
【発明の効果】
本発明の分布帰還型半導体レーザ及びその製造方法によると、回折格子の導波路方向に垂直な方向の長さを充分長くして、回折格子の形成領域の境界と、活性層とを充分、離間してあるので、回折格子の形成領域の境界近傍に不所望な凹部(段差)が生じても、その凹部(段差)の影響で活性層に結晶歪が生じることを防止できる。また、電子ビーム露光法を採用した場合の電子ビームの描画距離及び描画時間を考慮した回折格子の導波路方向に垂直な方向の長さとして、回折格子の導波路方向に垂直な方向の長さを、活性層の導波路方向に垂直な方向の長さの30乃至60倍、望ましくは、40乃至50倍とすると好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分布帰還型半導体レーザの要部断面図と回折格子の斜視図
【図2】従来の分布帰還型半導体レーザの要部断面図と回折格子の斜視図
【符号の説明】
1 従来の分布帰還型半導体レーザ(DFBレーザ)
2 n型InP基板
3 従来の回折格子
4 ガイド層
5 活性層
6 クラッド層
7 キャップ層
8 p側電極
9 n側電極
10 無反射コーティング膜
11 反射コーティング膜
12 凹部
101 本発明の分布帰還型半導体レーザ(DFBレーザ)
102 本発明の回折格子
Λ 回折格子の周期
Wa 活性層の導波路方向に垂直な方向の長さ(活性層幅)
Wg 回折格子の導波路方向に垂直な方向の長さ
Claims (7)
- 半導体基板上に、レーザ発振可能な活性層と、前記活性層と中心線を一致させ前記活性層の近傍に導波路方向に沿って形成した回折格子とを備えた分布帰還型半導体レーザにおいて、前記回折格子の形成領域の境界近傍に生じる凹部が、前記活性層に結晶歪を生じさせないように、前記回折格子の形成領域の境界を前記活性層から離間したことを特徴とする分布帰還型半導体レーザ。
- 前記回折格子の導波路方向に垂直な方向の長さを、前記活性層の導波路方向に垂直な方向の長さの30倍乃至60倍としたことを特徴とする請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ。
- 前記回折格子の導波路方向に垂直な方向の長さを、前記活性層の導波路方向に垂直な方向の長さの40倍乃至50倍としたことを特徴とする請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ。
- 半導体基板上に、レーザ発振可能な活性層を形成する工程と、前記活性層と中心線を一致させ前記活性層の近傍に導波路方向に沿った回折格子を形成する工程とを含む分布帰還型半導体レーザの製造方法において、前記回折格子の形成領域の境界近傍に生じる凹部が、前記活性層に結晶歪を生じさせないように、前記回折格子の形成領域の境界を前記活性層から離間したことを特徴とする分布帰還型半導体レーザの製造方法。
- 前記回折格子の前記導波路方向に垂直な方向の長さを、前記活性層の前記導波路方向に垂直な方向の長さの30倍乃至60倍としたことを特徴とする請求項4に記載の分布帰還型半導体レーザの製造方法。
- 前記回折格子の前記導波路方向に垂直な方向の長さを、前記活性層の前記導波路方向に垂直な方向の長さの40倍乃至50倍としたことを特徴とする請求項4に記載の分布帰還型半導体レーザの製造方法。
- 前記回折格子の形成方法は、電子ビーム露光及びエッチングを用いることを特徴とした請求項4に記載の分布帰還型半導体レーザの製造方法。
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- 2002-08-30 JP JP2002254232A patent/JP2004095806A/ja not_active Withdrawn
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