JP2004094175A - 光学フィルタ、この光学フィルタを備える光学装置、およびプロジェクタ - Google Patents
光学フィルタ、この光学フィルタを備える光学装置、およびプロジェクタ Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】光学フィルタ500は、光源ランプから射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する液晶パネル441を備えるプロジェクタ1に用いられ、液晶パネル441の光路後段に配置される。光学フィルタ500は、基板と、この基板の光束入射面に形成され、屈折率の異なる2種類の薄膜を交互に積層した光学変換膜とを備え、波長500nm〜570nmの入射光束のうち30%以上を反射する。このため、反射型の光学フィルタ500を透過した光束を用いることにより、投写画像のコントラスト低下を防止しつつ、ビデオ信号に基づく投写画像を鮮明なものにできる。
【選択図】 図10
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルタ、この光学フィルタを備える光学装置、およびプロジェクタに関する。
【0002】
【背景技術】
従来から、プレゼンテーションやホームシアター等の分野において、プロジェクタが利用されている。このようなプロジェクタとしては、例えば、画質の向上等を目的として、光源から射出された光束を複数の色光に分離する色分離光学装置と、これらの分離された色光毎に画像情報に応じて変調する液晶パネル等の三枚の光変調装置と、これらの光変調装置で変調された色光を合成して射出するプリズム等の色合成光学装置と、この合成された色光を拡大投写する投写光学系とを備えたものがある。
【0003】
このようなプロジェクタは、机や台の上に載置して使用するため、観察しやすいように、投写領域を投写光学系の光軸よりもやや上方にずらした、いわゆる「あおり投写」を行う構成とされている。この「あおり投写」は、投写光学系の光軸に対して色合成光学装置の光束射出端面の中心軸をあおり方向とは反対側である下方側にずらすことにより実現できる。
【0004】
また、従来のプロジェクタでは、コンピュータから出力されたRGB信号に基づく画像を投写するデータプロジェクタとして利用する際に、投写画像に十分な明るさを付与することを目的として、光源には、緑色の波長帯(500nm〜570nm)に強い輝度スペクトルを有するものが利用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような光源を備えるプロジェクタを用いて、ビデオ信号(コンポジット信号やコンポーネント信号)に基づく画像を投写しようとすると、緑色の波長帯が強く現れることから、例えば、投写画像において、白色となる部分が緑色がかった白色になってしまうという問題があった。そこで、従来は、液晶パネルに供給されるビデオ信号のレベルを電気回路的な調整を行うことにより、緑色の波長帯(500nm〜570nm)を70%程度まで低減させる補正を行っていた。しかしながら、この場合には、ビデオ信号のダイナミックレンジが下がって、投写画像のコントラストが30%近く低下してしまうという問題があった。
【0006】
以上の問題を解決するため、光源からの光路中に所定のスペクトルを除去するノッチフィルタを挿脱可能に配置する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1には、ノッチフィルタの具体的な構成が開示されておらず、現実には、コントラストの低下を防止できないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−249098号公報
【0008】
本発明の目的は、ビデオ信号に基づく投写画像において、コントラストの低下を防止して鮮明な画像にできる光学フィルタ、光学装置、およびプロジェクタを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光学フィルタは、光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置を備える光学機器に用いられ、前記光変調装置の光路後段に配置される光学フィルタであって、基板と、この基板の光束入射面に形成され、屈折率の異なる2種類の薄膜を交互に積層した光学変換膜とを備え、波長500nm〜570nmの入射光束のうち30%以上を反射することを特徴とする。
【0010】
ここで、画像情報としては、ビデオ信号や、コンピュータからのRGB信号等が挙げられる。さらに、光源としては、メタルハライドランプ等の波長500nm〜570nmのスペクトルが強いもの等を採用できる。
【0011】
光学変換膜を構成する屈折率の異なる2種類の薄膜は、高屈折率膜と低屈折率膜として考えることができ、高屈折率膜の材料としては、五酸化タンタル(Ta2O5)や、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、二酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。低屈折率膜の材料としては、二酸化珪素(SiO2)等が挙げられる。また、光学変換膜の薄膜構成としては、波長500nm〜570nmの入射光束のうち30%以上を反射するように、各薄膜の厚さや材料を変えて調整できる。
【0012】
本発明によれば、光学フィルタを構成する屈折率の異なる2種類の薄膜を交互に積層した光学変換膜を備えることにより、一般に緑色光とされる波長500nm〜570nmの入射光束のうちの30%以上を反射する。このため、光学フィルタを透過した光束による画像では、前記波長帯の緑色成分が30%程度減少され、ビデオ信号に基づく投写画像を鮮明にできる。特に、白色において、緑がかった白色ではなく鮮明な白色を投写できる。この場合には、光学機器の光変調装置に供給されるビデオ信号のダイナミックレンジを小さくする必要がないので、投写画像のコントラストを十分に確保できる。
また、このような光学フィルタを光路上に出し入れすることにより、コンピュータから入力されるRGB信号にも対応でき、供給される画像情報に応じて、投写画像の色味を簡易に切り替えることができる。
【0013】
以上の光学フィルタにおいて、前記2種類の薄膜のうちの一方の薄膜は五酸化タンタルから構成され、他方の薄膜は二酸化珪素から構成できる。
この際、この光学フィルタにおいて、入射光束のうち、反射する光の設計波長λ(nm)に対して、五酸化タンタルの屈折率をn1、二酸化珪素の屈折率をn2として、前記光学変換膜の厚さは、0.66λn1/0.08λn2/0.79λn1/0.12λn2/0.76λn1/0.32λn2/0.62λn1/0.60λn2、の8層構成に設定された構成を採用できる。
【0014】
また、前記光学フィルタにおいて、入射光束のうち、反射する光の設計波長λ(nm)に対して、五酸化タンタルの屈折率をn1、二酸化珪素の屈折率をn2として、前記光学変換膜の厚さは、0.48λn1/0.58λn2/0.13λn1/0.10λn2/0.82λn1/0.40λn2/0.09λn1/0.24λn2/0.88λn1/0.12λn2/0.07λn1/0.34λn2、の12層構成に設定された構成も採用できる。
【0015】
ここで、設計波長λとしては、例えば、540nmとすることができる。また、五酸化タンタルの屈折率n1として2.10、二酸化珪素の屈折率n2として1.46とすることができる。
【0016】
以上のような膜厚および構成として設定することにより、入射光のうち500nm〜570nmの波長帯の緑色光を30%以上を反射させることが可能となる。このため、前述した場合と同様に、ビデオ信号に基づく投写画像を鮮明にできるとともに、光変調装置に供給されるビデオ信号のダイナミックレンジを小さくする必要がないので、投写画像のコントラストを十分に確保できる。
また、光学フィルタを光路に対して出し入れすることにより、コンピュータからのRGB信号にも対応でき、画像情報に応じた投写画像の色味の簡易な切り替えが可能となる。
【0017】
また、前記光学フィルタにおいて、前記2種類の薄膜のうちの一方の薄膜は二酸化ジルコニウムから構成され、他方の薄膜は二酸化珪素から構成することもできる。この際、この光学フィルタにおいて、入射光束のうち、反射する光の設計波長λ(nm)に対して、二酸化ジルコニウムの屈折率をn3、二酸化珪素の屈折率をn2として、前記光学変換膜の厚さは、0.66λn3/0.08λn2/0.79λn3/0.12λn2/0.76λn3/0.32λn2/0.62λn3/0.60λn2、の8層構成に設定された構成とすることができる。
【0018】
このような膜厚および構成とすることにより、前述同様に、ビデオ信号に基づく投写画像を鮮明にできるとともに、光変調装置に供給されるビデオ信号のダイナミックレンジを小さくする必要がないので、投写画像のコントラストを十分に確保できる。また、コンピュータからのRGB信号にも対応でき、画像情報に応じた投写画像の色味の簡易な切り替えが可能となる。
【0019】
本発明に係る光学フィルタは、光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置を備える光学機器に用いられ、前記光変調装置の光路後段に配置される光学フィルタであって、吸収剤が添加された基板として構成され、波長500nm〜570nmの入射光束のうち30%以上を吸収することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、吸収型の光学フィルタにより、一般に緑色光とされる波長500nm〜570nmの入射光のうち少なくとも30%を吸収するので、この吸収型の光学フィルタを透過した光束による画像では、前記波長帯の緑色成分が30%程度減少されビデオ信号に基づく投写画像を鮮明にできる。特に、白色において、緑がかった白色ではなく純粋な白色を投写できる。この際、光変調装置に供給されるビデオ信号のダイナミックレンジを小さくする必要がなく、投写画像のコントラストを十分に確保できる。
また、このような光学フィルタを光路に対して出し入れすること等により、コンピュータからのRGB信号にも対応でき、供給される画像情報に応じて投写画像の色味を簡易に切り替えることができる。
【0021】
また、反射型の光学フィルタでは、光学フィルタへの入射光の入射角度により反射特性が異なるため、投写画像に色むらを発生させる場合があるが、本発明では、吸収型の光学フィルタを用いたので、このような色むらの発生を防止できる。また、反射型の光学フィルタのように反射光の戻り光により、投写画像上にゴーストが発生する等の不具合も生じない。
【0022】
本発明に係る光学装置は、光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置で形成された光学像を拡大して投写する投写光学系と、以上の光学フィルタとを備えることを特徴とし、前述した光学フィルタと略同様の効果を奏することができる。
【0023】
以上の光学装置において、前記光学フィルタは、前記投写光学系から射出され該光学フィルタで反射された光が前記光変調装置の画像形成領域に戻らないように、光軸に対して傾斜していることが好ましい。
【0024】
ここで、光変調装置の透過面と光学フィルタの面とが略平行である場合には、光変調装置から射出され投写光学系で拡大された画像光が、光学フィルタで反射された後に、光変調装置の光束射出側面で反射され、再度、投写光学系および光学フィルタを通りスクリーン等に投写されることがある。この場合には、投写画像上にゴーストとして現れることがある。
【0025】
しかしながら、前述した構成によれば、光学フィルタが、投写光学系から射出され該光学フィルタで反射された光が光変調装置の画像形成領域に戻らないように、光軸に対して傾斜していることにより、投写画像でのゴーストの発生を防止できる。
【0026】
なお、光学フィルタを傾斜する方向は、左右方向および上下方向等のいずれの方向でもよく、特に限定されない。要するに、光学フィルタでの反射光が光変調装置の画像形成領域に戻らない角度であればよい。
【0027】
ここで、前記投写光学系は、あおり投写に用いられ、前記光学フィルタは、あおり方向側端縁が投写方向側に傾斜していることが好ましい。
この場合には、あおり投写の場合では光変調装置に対して投写光学系があおり方向にずれているため、光変調装置の透過面に対して光学フィルタのあおり方向側端縁を投写方向に前傾させた場合には、画像形成領域へ反射光が戻らないようにする角度を最小とすることができ、光学フィルタの調整が容易である。
【0028】
また、以上の光学装置において、前記投写光学系の光束射出側に取り付けられかつこの投写光学系の光軸に対して所定の傾斜角度で前記光学フィルタを保持する保持部材を備え、この保持部材には、前記投写光学系の操作レバーが係合される係合部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、保持部材を投写光学系の光束射出側に取り付け、係合部を投写光学系の操作レバーに係合させるだけで、光学フィルタを容易にあおり方向側の端部が光変調装置の透過面に対して投写方向に傾斜した姿勢とすることができる。
【0029】
本発明に係るプロジェクタは、前記光学フィルタまたは前記光学装置を備えることを特徴とし、前述の光学フィルタや光学装置と同様の効果を奏することができる。
【0030】
本発明に係るフィルタは、光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置で形成された光学像を拡大してあおり投写する投写光学系とを備える光学装置に用いられるフィルタであって、以上の光学フィルタと、前記投写光学系の光束射出側に取り付けられこの投写光学系の光軸に対して所定の傾斜角度で前記光学フィルタを保持する保持部材とを備え、この保持部材には、前記投写光学系の操作レバーが係合される係合部が設けられていることを特徴とし、前述の光学フィルタおよび保持部材と同様の効果を奏することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.プロジェクタの主な構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学機器としてのプロジェクタ1を上方から見た斜視図である。図2は、プロジェクタ1を下方から見た斜視図である。
図1または図2に示すように、プロジェクタ1は、射出成形によって成形された略直方体状の外装ケース2を備える。この外装ケース2は、プロジェクタ1の本体部分を収納する合成樹脂製の筐体であり、アッパーケース21と、ロアーケース22とを備え、これらのケース21,22は、互いに着脱自在に構成されている。
【0032】
アッパーケース21は、図1,2に示すように、プロジェクタ1の上面、側面、前面、および背面をそれぞれ構成する上面部21A、側面部21B、前面部21Cおよび背面部21Dを含んで構成される。
同様に、ロアーケース22も、図1,2に示すように、プロジェクタ1の下面、側面、前面、および背面をそれぞれ構成する下面部22A、側面部22B、前面部22C、および背面部22Dを含んで構成される。
【0033】
従って、図1,2に示すように、直方体状の外装ケース2において、アッパーケース21およびロアーケース22の側面部21B,22B同士が連続的に接続されて直方体の側面部分210が構成され、同様に、前面部21C,22C同士の接続で前面部分220が、背面部21D,22D同士の接続で背面部分230が、上面部21Aにより上面部分240が、下面部22Aにより下面部分250がそれぞれ構成される。
【0034】
図1に示すように、上面部分240において、その前方側には操作パネル23が設けられ、この操作パネル23の近傍には音声出力用のスピーカ孔240Aが形成されている。
【0035】
前方から見て右側の側面部分210には、2つの側面部21B,22Bを跨る開口211が形成されている。ここで、外装ケース2内には、後述するメイン基板51と、インターフェース基板52とが設けられており、この開口211に取り付けられるインターフェースパネル53を介して、メイン基板51に実装された接続部51Bと、インターフェース基板52に実装された接続部52Aとが外部に露出している。これらの接続部51B,52Aにおいて、プロジェクタ1には外部の電子機器等が接続される。
【0036】
前面部分220において、前方から見て右側で、前記操作パネル23の近傍には、2つの前面部21C,22Cを跨ぐ円形状の開口221が形成されている。この開口221に対応するように、外装ケース2内部には、投写光学系としての投写レンズ46が配置されている。この際、開口221から投写レンズ46の先端部分が外部に露出しており、この露出部分の一部であるレバー46Aを介して、投写レンズ46のフォーカス操作が手動で行えるようになっている。また、図1,2では図示しないが、投写レンズ46先端には、後述するフィルタ530が取り付けられる(図11参照)。
【0037】
前面部分220において、前記開口221の反対側の位置には、排気口222が形成されている。この排気口222には、安全カバー222Aが形成されている。
【0038】
図2に示すように、背面部分230において、背面から見た右側には矩形状の開口231が形成され、この開口231からインレットコネクタ24が露出するようになっている。
【0039】
下面部分250において、下方から見て右端側の中央位置には矩形状の開口251が形成されている。開口251には、この開口251を覆うランプカバー25が着脱自在に設けられている。このランプカバー25を取り外すことにより、図示しない光源ランプの交換が容易に行えるようになっている。
【0040】
また、下面部分250において、下方から見て左側で背面側の隅部には、一段内側に凹んだ矩形面252が形成されている。この矩形面252には、外部から冷却空気を吸入するための吸気口252Aが形成されている。矩形面252には、この矩形面252を覆う吸気口カバー26が着脱自在に設けられている。吸気口カバー26には、吸気口252Aに対応する開口26Aが形成されている。開口26Aには、図示しないエア光学フィルタが設けられており、内部への塵埃の侵入が防止されている。
【0041】
さらに、下面部分250において、後方側の略中央位置にはプロジェクタ1の脚部を構成する後脚2Rが形成されている。また、下面部22Aにおける前方側の左右の隅部には、同じくプロジェクタ1の脚部を構成する前脚2Fがそれぞれ設けられている。つまり、プロジェクタ1は、後脚2Rおよび2つ前脚2Fにより3点で支持されている。
2つの前脚2Fは、それぞれ上下方向に進退可能に構成されており、プロジェクタ1の前後方向および左右方向の傾き(姿勢)を調整して、投写画像の位置調整ができるようになっている。
【0042】
また、図1,2に示すように、下面部分250と前面部分220とを跨るように、外装ケース2における前方側の略中央位置には、直方体状の凹部253が形成されている。この凹部253には、該凹部253の下側および前側を覆う前後方向にスライド自在なカバー部材27が設けられている。このカバー部材27により、凹部253には、プロジェクタ1の遠隔操作を行うための図示しないリモートコントローラ(リモコン)が収納される。
【0043】
ここで、図3,4は、プロジェクタ1の内部を示す斜視図である。具体的には、図3は、図1の状態からプロジェクタ1のアッパーケース21を外した図である。図4は、図3の状態から制御基板5を外した図である。
【0044】
外装ケース2には、図3,4に示すように、背面部分に沿って配置され、左右方向に延びる電源ユニット3と、この電源ユニット3の前側に配置された平面視略L字状で光学系としての光学ユニット4と、これらのユニット3,4の上方および右側に配置される制御部としての制御基板5とを備える。これらの各装置3〜5によりプロジェクタ1の本体が構成されている。
【0045】
電源ユニット3は、電源31と、この電源31の下方に配置された図示しないランプ駆動回路(バラスト)とを含んで構成される。
電源31は、前記インレットコネクタに接続された図示しない電源ケーブルを通して外部から供給された電力を、前記ランプ駆動回路や制御基板5等に供給するものである。
前記ランプ駆動回路は、光学ユニット4を構成する図3,4では図示しない光源ランプに、電源31から供給された電力を供給するものであり、前記光源ランプと電気的に接続されている。このようなランプ駆動回路は、例えば、基板に配線することにより構成できる。
【0046】
電源31および前記ランプ駆動回路は、略平行に上下に並んで配置されており、これらの占有空間は、プロジェクタ1の背面側で左右方向に延びている。
また、電源31および前記ランプ駆動回路は、左右側が開口されたアルミニウム等の金属製のシールド部材31Aによって周囲を覆われている。
シールド部材31Aは、冷却空気を誘導するダクトとしての機能に加えて、電源31や前記ランプ駆動回路で発生する電磁ノイズが、外部へ漏れないようにする機能も有している。
【0047】
制御基板5は、図3に示すように、ユニット3,4の上側を覆うように配置されCPUや接続部51B等を含むメイン基板51と、このメイン基板51の下側に配置され接続部52Aを含むインターフェース基板52とを備える。
この制御基板5では、接続部51B,52Aを介して入力された画像情報に応じて、メイン基板51のCPU等が、後述する光学装置を構成する液晶パネルの制御を行う。メイン基板51は、金属製のシールド部材51Aによって周囲を覆われている。
【0048】
〔2.光学ユニットの詳細な構成〕
ここで、図5は、光学ユニット4を示す分解斜視図である。図6は、光学ユニット4を模式的に示す図である。
光学ユニット4は、図6に示すように、光源装置411を構成する光源ランプ416から射出された光束を光学的に処理して画像情報に対応した光学像を形成し、この光学像を拡大して投射するユニットであり、インテグレータ照明光学系41と、色分離光学系42と、リレー光学系43と、光学装置本体44と、投写光学系としての投写レンズ46と、これらの光学部品41〜44,46を収納する合成樹脂製のライトガイド47(図5)とを備える。なお、光学装置本体44と投写レンズ46とにより、請求項に記載の光学装置が構成されている。
【0049】
インテグレータ照明光学系41は、光学装置本体44を構成する3枚の液晶パネル441(赤、緑、青の色光毎にそれぞれ液晶パネル441R,441G,441Bとする)の画像形成領域をほぼ均一に照明するための光学系であり、光源装置411と、第1レンズアレイ412と、第2レンズアレイ413と、偏光変換素子414と、重畳レンズ415とを備える。
【0050】
光源装置411は、放射光源としての光源ランプ416と、リフレクタ417とを備え、光源ランプ416から射出された放射状の光線をリフレクタ417で反射して平行光線とし、この平行光線を外部へと射出する。光源ランプ416には、メタルハライドランプを採用している。なお、高圧水銀ランプ以外に、高圧水銀ランプやハロゲンランプ等も採用できる。また、リフレクタ417には、放物面鏡を採用している。なお、放物面鏡の代わりに、平行化凹レンズおよび楕円面鏡を組み合わせたものを採用してもよい。なお、光源ランプ416については、後で詳述する。
【0051】
第1レンズアレイ412は、光軸方向から見てほぼ矩形状の輪郭を有する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。各小レンズは、光源ランプ416から射出される光束を、複数の部分光束に分割している。各小レンズの輪郭形状は、液晶パネル441の画像形成領域の形状とほぼ相似形をなすように設定されている。たとえば、液晶パネル441の画像形成領域のアスペクト比(横と縦の寸法の比率)が4:3であるならば、各小レンズのアスペクト比も4:3に設定する。
【0052】
第2レンズアレイ413は、第1レンズアレイ412と略同様な構成を有しており、小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ413は、重畳レンズ415とともに、第1レンズアレイ412の各小レンズの像を液晶パネル441上に結像させる機能を有する。
【0053】
偏光変換素子414は、第2レンズアレイ413と重畳レンズ415との間に配置される。このような偏光変換素子414は、第2レンズアレイ413からの光を1種類の偏光光に変換するものであり、これにより、光学装置本体44での光の利用効率が高められている。
【0054】
具体的に、偏光変換素子414によって1種類の偏光光に変換された各部分光は、重畳レンズ415によって最終的に光学装置本体44の液晶パネル441上にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネル441を用いたプロジェクタ1では、1種類の偏光光しか利用できないため、他種類のランダムな偏光光を発する光源ランプ416からの光束の略半分が利用されない。このため、偏光変換素子414を用いることにより、光源ランプ416から射出された光束を全て1種類の偏光光に変換し、光学装置本体44での光の利用効率を高めている。なお、このような偏光変換素子414は、たとえば特開平8−304739号公報に紹介されている。
【0055】
色分離光学系42は、2枚のダイクロイックミラー421,422と、反射ミラー423とを備え、ダイクロイックミラー421、422によりインテグレータ照明光学系41から射出された複数の部分光束を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する機能を有している。
【0056】
リレー光学系43は、入射側レンズ431と、リレーレンズ433と、反射ミラー432、434とを備え、色分離光学系42で分離された色光である赤色光を液晶パネル441Rまで導く機能を有している。
【0057】
この際、色分離光学系42のダイクロイックミラー421では、インテグレータ照明光学系41から射出された光束のうち、赤色光成分と緑色光成分とは透過し、青色光成分は反射する。ダイクロイックミラー421によって反射した青色光は、反射ミラー423で反射し、フィールドレンズ418を通って、青色用の液晶パネル441Bに到達する。このフィールドレンズ418は、第2レンズアレイ413から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の液晶パネル441G、441Rの光入射側に設けられたフィールドレンズ418も同様である。
【0058】
また、ダイクロイックミラー421を透過した赤色光と緑色光のうちで、緑色光は、ダイクロイックミラー422によって反射し、フィールドレンズ418を通って、緑色用の液晶パネル441Gに到達する。一方、赤色光は、ダイクロイックミラー422を透過してリレー光学系43を通り、さらにフィールドレンズ418を通って、赤色光用の液晶パネル441Rに到達する。
なお、赤色光にリレー光学系43が用いられているのは、赤色光の光路の長さが他の色光の光路長さよりも長いため、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ431に入射した部分光束をそのまま、フィールドレンズ418に伝えるためである。なお、リレー光学系43には、3つの色光のうちの赤色光を通す構成としたが、これに限らず、例えば、青色光を通す構成としてもよい。
【0059】
光学装置本体44は、入射された光束を画像情報に応じて変調してカラー画像を形成するものであり、色分離光学系42で分離された各色光が入射される3つの入射側偏光板442と、各入射側偏光板442の後段に配置される光変調装置としての液晶パネル441R,441G,441Bと、各液晶パネル441R,441G,441Bの後段に配置される射出側偏光板443と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム444と、投写レンズ46の光路後段に配置される反射型光学フィルタ500とを備える。
【0060】
液晶パネル441R,441G,441Bは、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として用いたものである。
光学装置本体44において、色分離光学系42で分離された各色光は、これら3枚の液晶パネル441R,441G,441B、入射側偏光板442、および射出側偏光板443によって画像情報に応じて変調されて光学像を形成する。
【0061】
入射側偏光板442は、色分離光学系42で分離された各色光のうち、一定方向の偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収するものであり、サファイアガラス等の基板に偏光膜が貼付されたものである。また、基板を用いずに、偏光膜をフィールドレンズ418に貼り付けてもよい。
射出側偏光板443も、入射側偏光板442と略同様に構成され、液晶パネル441(441R,441G,441B)から射出された光束のうち、所定方向の偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである。また、基板を用いずに、偏光膜をクロスダイクロイックプリズム444に貼り付けてもよい。
これらの入射側偏光板442および射出側偏光板443は、互いの偏光軸の方向が直交するように設定されている。
【0062】
クロスダイクロイックプリズム444は、射出側偏光板443から射出され、各色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成するものである。
クロスダイクロイックプリズム444には、赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが、4つの直角プリズムの界面に沿って略X字状に設けられ、これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成される。
【0063】
〔3.光源ランプのスペクトル特性〕
図7は、光源ランプ416のスペクトル特性を示す図である。
図7に示すように、波長440nm近傍(500nm〜570nm)に青色光を示すスペクトルのピークが現れ、波長550nm近傍(500nm〜570nm)に緑色光を示すスペクトルのピークが現れ、波長580nm近傍に赤色光を示すスペクトルのピークが現れている。赤色光の強度は、緑色光の強度に対して約70%程度である。青色光の強度は、緑色光の強度に対して約90%程度である。
【0064】
〔4.反射型の光学フィルタの構成〕
図8は、反射型の光学フィルタ500の層構成を示す断面図である。
図8に示すように、反射型の光学フィルタ500は、青板ガラスまたは白板ガラス等からなるガラス基板510と、このガラス基板510の表面に対して、蒸着等により、屈折率の異なる2種類の薄膜である高屈折率層521および低屈折率層522が交互に8層に積層された光学変換膜としての多層膜520とを備える。第8層は、投写レンズ46からの光束入射側に位置する。なお、図示を省略しているが、ガラス基板510の裏面には、反射防止膜が形成されている。
【0065】
多層膜520を構成する高屈折率層521は、五酸化タンタル(Ta2O5)から構成されている。低屈折率層522は、二酸化珪素(SiO2)から構成されている。多層膜520は、ガラス基板510側の第1層から第8層まで下記の厚さで構成されている。なお、反射する光の設計波長λ=540(nm)とする。五酸化タンタルの屈折率n1=2.10である。また、二酸化珪素の屈折率n2=1.46である。
【0066】
第1層:厚さ0.66λn1(1697)nm、五酸化タンタル層
第2層:厚さ0.08λn2(296)nm、二酸化珪素層
第3層:厚さ0.79λn1(2031)nm、五酸化タンタル層
第4層:厚さ0.12λn2(444)nm、二酸化珪素層
第5層:厚さ0.76λn1(1954)nm、五酸化タンタル層
第6層:厚さ0.32λn2(1184)nm、二酸化珪素層
第7層:厚さ0.62λn1(1594)nm、五酸化タンタル層
第8層:厚さ0.60λn2(2219)nm、二酸化珪素層
【0067】
図9は、反射型の光学フィルタ500の透過率特性を示す図である。
このような反射型の光学フィルタ500から射出された画像光は、図9に示すような透過率特性を有している。すなわち、500nm〜570nmの波長帯の光束の透過率が70%以下となっている。すなわち、この波長帯の光束の30%以上を反射するということである。
【0068】
〔5.光学装置および投写レンズの配置〕
図10は、液晶パネル441(441G)と、クロスダイクロイックプリズム444と、投写レンズ46と、反射型の光学フィルタ500との配置を示す模式図である。図10において、投写レンズ46は、いわゆる「あおり投写」に使用されるものであり、クロスダイクロイックプリズム444の光束射出端面の中心軸Aは、投写レンズ46の光軸Bに対して、あおり方向(図10中上方向)とは反対側の下方側にずれて配置されている。
また、クロスダイクロイックプリズム444の光束入射端面の入射光束中心軸Aは、液晶パネル441の画像形成領域の入射光束中心軸Cに対して、あおり方向側にずれた位置に配置されている。
【0069】
投写レンズ46は、樹脂製等の鏡筒460内の光路の照明光軸上に5枚4群として構成された1群レンズ461、2群レンズ462、3群レンズ463、および4群レンズ464を備える。
1群レンズ461は、あおり方向に拡大投写するための非球面レンズとされた凹レンズである。2群レンズ462は、光束を調整する凸レンズである。3群レンズ463は、凹レンズ463Aと入射側が非球面レンズとされた凸レンズ463Bとが貼り合わされたバルサムレンズである。4群レンズ464は、画像光をのみこむ凸レンズである。
【0070】
反射型の光学フィルタ500は、液晶パネル441の透過面と平行な軸、すなわち、投写レンズ46の光軸Bに直交する鉛直方向の軸Dに対して、あおり方向側の端部500Aが、投写方向つまり図8中の左方向に角度θだけ前傾している。つまり、液晶パネル441の透過面に対して、反射型光学フィルタ500の面が角度θだけ前傾していることになる。なお、角度θは、通常は4°程度である。これにより液晶パネル441の画像形成領域に反射光が戻らないようになっている。
【0071】
図11は、フィルタ530を示す斜視図である。図12は、フィルタ530を示す断面図である。
以上の光学フィルタ500は、フィルタ530に取り付けられて用いられる。具体的には、フィルタ530は、円板状に加工された光学フィルタ500と、この光学フィルタ500の外周部を保持する円筒状の保持部材531とを備えている。この保持部材531は、光学フィルタ500を軸方向に直交する面に対して角度θだけ前傾した状態で保持するものであり、投写レンズ46の光束射出側である先端に嵌め込まれるようになっている。また、保持部材531の投写レンズ46側端部には係合部としての切欠き532が形成されている。
フィルタ530を投写レンズ46先端に取り付けると、保持部材531の軸と投写レンズ46の光軸とが一致し、光学フィルタ500は、投写レンズ46の光軸に対して所定角度で傾斜した状態、つまり液晶パネル441の透過面に対して角度θだけ前傾した状態となる。この際、切欠き532に投写レンズ46のレバー46Aを挿入することにより、切欠き532とレバー46Aとが係合し、フィルタ530のあおり方向に対する向きが固定される。なお、投写レンズ46の焦点を調整するために、レバー46Aを図11中左右方向に多少移動しても、フィルタ530の向きは略一定に保たれることになる。
【0072】
また、反射型の光学フィルタ500は、プロジェクタ1の制御基板に入力された入力信号に基づいて、投写レンズ46の光路後段に反射型の光学フィルタ500を配置するか否かについて切り替えを行う構成としてもよい。この切り替えは、入力信号に基づいて自動的に切り替えられる、なお、このような切り替えに限らず、投写画像の画質の設定時に切り替えたり、使用者が自ら手動で切り替えたりする構成とすることができる。
【0073】
このようなプロジェクタ1において、光源から射出された光束は、液晶パネル441で画像情報に応じて変調されて光学像として形成される。この光学像は、クロスダイクロイックプリズム444の光束入射端面からそれぞれ入射され合成される。この合成光は、光束射出側端面から射出され、投写レンズ46に飲み込まれる。
【0074】
次に、投写レンズ46において、クロスダイクロイックプリズム444から射出された合成光は、4群レンズ464に入射した後に、バルサムレンズである3群レンズ463で色収差の補正がなされ、第2レンズ462で光量調整されてから、非球面レンズである1群レンズ461で歪曲補正をしながら、あおり方向へ拡大投写される。
【0075】
この後、反射型の光学フィルタ500において、投写レンズ46から投写された光束は、500nm〜570nmの波長帯の光束のうち30%を反射し、残りの70%の光束および他の波長帯の光束はそのまま透過する。反射型の光学フィルタ500で反射された反射光は、一部が投写レンズ46内に戻されるが、液晶パネル441の画像形成領域には入射されないようになっている。なお、反射光のうち投写レンズ46に戻らない分については、当然液晶パネル441には戻らないことになる。
【0076】
〔6.第1実施形態の効果〕
本実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)反射型の光学フィルタ500により、一般に緑色光とされる波長500nm〜570nmの入射光のうち少なくとも30%を反射するので、この反射型の光学フィルタ500を透過した光束による投写画像において緑色成分が30%程度減少され、ビデオ信号に基づく投写画像を鮮明にできる。特に、白色において、緑がかった白色ではなく純粋な白色を投写できる。この際、液晶パネル441に供給されるビデオ信号のダイナミックレンジを小さくする必要がないので、投写画像のコントラストも十分に確保できる。
【0077】
(2)反射型の光学フィルタ500を光路から出し入れ等することにより、コンピュータから入力されるRGB信号にも対応できる。このため、供給される画像情報(ビデオ信号,RGB信号)に応じて投写画像の色味を簡易に切り替えることができる。このような切り替えは、自動でも手動でもよい。
【0078】
(3)反射型の光学フィルタ500での反射光が液晶パネル441の画像形成領域に戻らないように、反射型の光学フィルタ500を光軸に対して所定の角度だけ傾斜させたので、光学フィルタ500での反射光に基づく投写画像でのゴーストの発生を確実に防止できる。
【0079】
(4)前述した傾斜として、光学フィルタ500のあおり方向側の端部を投写方向に傾斜(前傾)させたので、液晶パネル441に対して投写レンズ46があおり方向にずれているため、液晶パネル441の透過面に対する反射型の光学フィルタ500の傾斜角度を最も小さくすることができる。このため、反射型の光学フィルタ500の姿勢調整を容易に実現できる。
【0080】
(5)フィルタ530を光学フィルタ500と保持部材531とで構成したので、このフィルタ530を投写レンズ46先端に嵌め込み、切欠き531に投写レンズ46のレバー46Aを挿入するだけで、光学フィルタ500を、容易に、あおり方向側の端部が液晶パネル441に対して投写方向に傾斜した姿勢とすることができる。
【0081】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るプロジェクタは、前記第1実施形態に係るプロジェクタ1とは、その反射型の光学フィルタの構成のみが相違し、その他の構成については、第1実施形態と略同一である。このため、説明を省略または簡略する。
【0082】
具体的には、第2実施形態に係るプロジェクタを構成する反射型の光学フィルタは、前記第1実施形態の反射型の光学フィルタ500とは、高屈折率層521の材料が相違しており、高屈折率層521は、二酸化ジルコニウム(ZrO2)から構成されており、低屈折率層522の材料は同じである。なお、反射する光の設計波長λ=540(nm)とする。二酸化ジルコニウムの屈折率n3=2.05である。また、二酸化珪素の屈折率n2=1.46である。具体的には下記の通りである。また、第2実施形態では、第1実施形態のガラス基板510の裏面に形成された反射防止膜は形成されていない。
【0083】
第1層:厚さ0.66λn3(1739)nm、二酸化ジルコニウム層
第2層:厚さ0.08λn2(296)nm、二酸化珪素層
第3層:厚さ0.79λn3(2081)nm、二酸化ジルコニウム層
第4層:厚さ0.12λn2(444)nm、二酸化珪素層
第5層:厚さ0.76λn3(2002)nm、二酸化ジルコニウム層
第6層:厚さ0.32λn2(1184)nm、二酸化珪素層
第7層:厚さ0.62λn3(1633)nm、二酸化ジルコニウム層
第8層:厚さ0.60λn2(2219)nm、二酸化珪素層
本第2実施形態においても、前記第1実施形態の(1)〜(5)と同様の効果を奏することができる。
【0084】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るプロジェクタは、前記第1実施形態に係るプロジェクタ1とは、その反射型の光学フィルタの構成のみが相違し、その他の構成については、第1実施形態と略同一である。このため、第1実施形態と同一または相当構成品には同じ符号を付し、説明を省略または簡略する。
図13は、反射型の光学フィルタ501の層構成を示す断面図である。
図13に示すように、反射型光学フィルタ600は、前記ガラス基板510と、このガラス基板510の表面に対して、蒸着等により、高屈折率層521および低屈折率層522が交互に12層に積層された光学変換膜としての多層膜610とを備える。なお、図示を省略しているが、ガラス基板510の裏面には、反射防止膜が形成されている。
【0085】
多層膜610において、高屈折率層521は、五酸化タンタル(Ta2O5)から構成され、低屈折率層522は、二酸化珪素(SiO2)から構成されている。多層膜610は、ガラス基板510側の第1層から第12層まで下記の厚さで構成されている。なお、反射する光の設計波長λ=500(nm)とする。五酸化タンタルの屈折率n1=2.10である。また、二酸化珪素の屈折率n2=1.46である。
【0086】
第1層:厚さ0.48λn1(1143)nm、五酸化タンタル層
第2層:厚さ0.58λn2(1986)nm、二酸化珪素層
第3層:厚さ0.13λn1(310)nm、五酸化タンタル層
第4層:厚さ0.10λn2(342)nm、二酸化珪素層
第5層:厚さ0.82λn1(1952)nm、五酸化タンタル層
第6層:厚さ0.40λn2(1370)nm、二酸化珪素層
第7層:厚さ0.09λn1(214)nm、五酸化タンタル層
第8層:厚さ0.24λn2(822)nm、二酸化珪素層
第9層:厚さ0.88λn1(2095)nm、五酸化タンタル層
第10層:厚さ0.12λn2(411)nm、二酸化珪素層
第11層:厚さ0.07λn1(167)nm、五酸化タンタル層
第12層:厚さ0.34λn2(1164)nm、二酸化珪素層
【0087】
図14は、反射型の光学フィルタ600の透過率特性を示す図である。
このような反射型の光学フィルタ600から射出された合成光は、図14に示すような透過率特性を有している。すなわち、500nm〜570nmの波長帯の光束の透過率が70%以下となっている。すなわち、この波長帯の光束の30%以上を反射するということである。
また、この反射型の光学フィルタ600は、図10と同様に前傾した状態で配置されている。本第3実施形態においても、前記第1実施形態の(1)〜(5)と同様の効果を奏することができる。
【0088】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係るプロジェクタは、前記第1実施形態に係るプロジェクタ1とは、光学フィルタの構成が相違し、その他の構成については、第1実施形態と略同一である。このため、第1実施形態と同一または相当構成品には同じ符号を付し、説明を省略または簡略する。
図15は、本実施形態に係るプロジェクタ1Aにおいて、液晶パネル441(441G)と、クロスダイクロイックプリズム444と、投写レンズ46と、吸収型の光学フィルタ700との配置を示す模式図である。
【0089】
図15に示すように、プロジェクタ1Aには、前記第1実施形態の反射型光学フィルタの替わりに、吸収型の光学フィルタ700が配置されている。この吸収型の光学フィルタ700は、ガラス基板の内部に添加剤である吸収剤が添加されて構成されたものであり、入射光束のうち、500nm〜570nmの波長帯の光束を30%以上吸収するものである。また、吸収型の光学フィルタ700は、前記第1実施形態の反射型光学フィルタのように傾斜した配置とはなっていない。
【0090】
〔7.第4実施形態の効果〕
第4実施形態によれば、前記第1実施形態の(1)、(2)および(5)に加えて、下記のような効果を奏することができる。
(6)プロジェクタ1Aに吸収型の光学フィルタ700を用いたので、入射光の入射角度には影響されないから、入射光における入射角度の違いによる色むらの発生を確実に防止できる。
【0091】
(7)反射型の光学フィルタを用いた場合とは異なり、反射光の戻り光によって投写画像上にゴーストが発生する等の不具合が生じない。また、光学フィルタを傾ける必要もなく、構造を簡素化できる。
【0092】
〔8.実施形態の変形〕
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第1〜第3実施形態において、反射型の光学フィルタ500,501,600を8層または12層として構成したが、このような層構成には限定されず、波長500nm〜570nmの入射光のうちの30%以上を反射する構成であればよい。この際、高屈折率層の材料としては、五酸化タンタルまたは二酸化ジルコニウムには限定されず、二酸化チタン等のその他の材料であってもよい。さらに、低屈折率層の材料としては、二酸化珪素以外の材料であってもよい。
【0093】
また、反射型の光学フィルタを傾斜させていたが、傾斜させなくてもよい。さらに、反射型の光学フィルタのあおり方向側の端部である上端部を投写方向に傾斜させるようにしたが、下端部を投写方向に傾斜させたり、左右側の端部を投写方向に傾斜させたりすることができ、傾斜の方向は特に限定されない。
さらに、光学装置をプロジェクタに組み込んだが、これに限らず、その他の光学機器に組み込んでもよい。
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、反射型の光学フィルタにより、一般に緑色光とされる波長500nm〜570nmの入射光のうちの30%以上を反射するので、この反射型の光学フィルタを透過した光束による画像では、前記波長帯の緑色成分が30%程度減少されビデオ信号に基づく投写画像を鮮明にできるという効果がある。
この際、光変調装置に供給されるビデオ信号のダイナミックレンジを小さくする必要がないので、投写画像のコントラストを確保できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクタを上方から見た斜視図である。
【図2】前記プロジェクタを下方から見た斜視図である。
【図3】図1の状態からアッパーケースを外した状態を示す斜視図である。
【図4】図3の状態から制御基板を外した斜視図である。
【図5】前記プロジェクタの光学ユニットを示す分解斜視図である。
【図6】前記光学ユニットを模式的に示す図である。
【図7】前記プロジェクタの光源ランプのスペクトル特性を示す図である。
【図8】前記プロジェクタの反射型の光学フィルタの層構成を示す断面図である。
【図9】前記プロジェクタの反射型の光学フィルタの透過率特性を示す図である。
【図10】前記プロジェクタの液晶パネルと、クロスダイクロイックプリズムと、投写レンズと、前記反射型の光学フィルタとの配置を示す模式図である。
【図11】前記プロジェクタのフィルタを示す斜視図である。
【図12】前記プロジェクタのフィルタを示す断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る反射型の光学フィルタの層構成を示す断面図である。
【図14】第3実施形態の前記反射型の光学フィルタの透過率特性を示す図である。
【図15】本発明の第4実施形態において、前記プロジェクタの液晶パネルと、クロスダイクロイックプリズムと、投写レンズと、前記反射型の光学フィルタとの配置を示す模式図である。
【符号の説明】
1,2 プロジェクタ(光学機器)
44 光学装置
46 投写レンズ(投写光学系)
416 光源ランプ(光源)
441(441R,441G,441B) 液晶パネル(光変調装置)
500,501,600 反射型の光学フィルタ
500A 端部(あおり方向側端縁)
510 ガラス基板(基板)
520,610 多層膜(光学変換膜)
521 高屈折率層(2種類の薄膜の一方の薄膜)
522 低屈折率層(2種類の薄膜の他方の薄膜)
530 フィルタ
531 保持部材
700 吸収型の光学フィルタ
Claims (13)
- 光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置を備える光学機器に用いられ、前記光変調装置の光路後段に配置される光学フィルタであって、
基板と、この基板の光束入射面に形成され、屈折率の異なる2種類の薄膜を交互に積層した光学変換膜とを備え、波長500nm〜570nmの入射光束のうち30%以上を反射することを特徴とする光学フィルタ。 - 請求項1に記載の光学フィルタにおいて、
前記2種類の薄膜のうちの一方の薄膜は五酸化タンタルから構成され、他方の薄膜は二酸化珪素から構成されていることを特徴とする光学フィルタ。 - 請求項2に記載の光学フィルタにおいて、
入射光束のうち、反射する光の設計波長λ(nm)に対して、五酸化タンタルの屈折率をn1、二酸化珪素の屈折率をn2として、
前記光学変換膜の厚さは、0.66λn1/0.08λn2/0.79λn1/0.12λn2/0.76λn1/0.32λn2/0.62λn1/0.60λn2、の8層構成に設定されていることを特徴とする光学フィルタ。 - 請求項2に記載の光学フィルタにおいて、
入射光束のうち、反射する光の設計波長λ(nm)に対して、五酸化タンタルの屈折率をn1、二酸化珪素の屈折率をn2として、
前記光学変換膜の厚さは、0.48λn1/0.58λn2/0.13λn1/0.10λn2/0.82λn1/0.40λn2/0.09λn1/0.24λn2/0.88λn1/0.12λn2/0.07λn1/0.34λn2、の12層構成に設定されていることを特徴とする光学フィルタ。 - 請求項1に記載の光学フィルタにおいて、
前記2種類の薄膜のうちの一方の薄膜は二酸化ジルコニウムから構成され、他方の薄膜は二酸化珪素から構成されていることを特徴とする光学フィルタ。 - 請求項5に記載の光学フィルタにおいて、
入射光束のうち、反射する光の設計波長λ(nm)に対して、二酸化ジルコニウムの屈折率をn3、二酸化珪素の屈折率をn2として、
前記光学変換膜の厚さは、0.66λn3/0.08λn2/0.79λn3/0.12λn2/0.76λn3/0.32λn2/0.62λn3/0.60λn2、の8層構成に設定されていることを特徴とする光学フィルタ。 - 光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置を備える光学機器に用いられ、前記光変調装置の光路後段に配置される光学フィルタであって、
吸収剤が添加された基板として構成され、波長500nm〜570nmの入射光束のうち30%以上を吸収することを特徴とする光学フィルタ。 - 光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置で形成された光学像を拡大して投写する投写光学系と、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光学フィルタとを備えることを特徴とする光学装置。
- 請求項8に記載の光学装置において、
前記光学フィルタは、前記投写光学系から射出され該光学フィルタで反射された光が前記光変調装置の画像形成領域に戻らないように、光軸に対して傾斜していることを特徴とする光学装置。 - 請求項9に記載の光学装置において、
前記投写光学系は、あおり投写に用いられ、
前記光学フィルタは、あおり方向側端縁が投写方向に傾斜していることを特徴とする光学装置。 - 請求項10に記載の光学装置において、
前記投写光学系の光束射出側に取り付けられかつこの投写光学系の光軸に対して所定の傾斜角度で前記光学フィルタを保持する保持部材を備え、
この保持部材には、前記投写光学系の操作レバーが係合される係合部が設けられていることを特徴とする光学装置。 - 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光学フィルタ、または請求項8〜請求項11のいずれかに記載の光学装置を備えることを特徴とするプロジェクタ。
- 光源から射出された光束を、画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置と、この光変調装置で形成された光学像を拡大してあおり投写する投写光学系とを備える光学装置に用いられるフィルタであって、
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光学フィルタと、前記投写光学系の光束射出側に取り付けられこの投写光学系の光軸に対して所定の傾斜角度で前記光学フィルタを保持する保持部材とを備え、
この保持部材には、前記投写光学系の操作レバーが係合される係合部が設けられていることを特徴とするフィルタ。
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