JP2004092758A - トルクリミッタ及びギヤドモータ - Google Patents
トルクリミッタ及びギヤドモータ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004092758A JP2004092758A JP2002253802A JP2002253802A JP2004092758A JP 2004092758 A JP2004092758 A JP 2004092758A JP 2002253802 A JP2002253802 A JP 2002253802A JP 2002253802 A JP2002253802 A JP 2002253802A JP 2004092758 A JP2004092758 A JP 2004092758A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- rotating body
- torque limiter
- tapered surface
- torque
- gear
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- One-Way And Automatic Clutches, And Combinations Of Different Clutches (AREA)
- Connection Of Motors, Electrical Generators, Mechanical Devices, And The Like (AREA)
Abstract
【課題】所定のスリップトルクを維持しつつ小型化を達成することのできるトルクリミッタ、及びそのようなトルクリミッタを備えたギヤドモータを提供する。
【解決手段】ギヤドモータのギヤボックス28内のトルクリミッタCにおいては、フリクションプレート(FP)80には、出力段キャリア70とこれに噛合するホールドプレート(HP)88とが皿バネ96の付勢力により圧接する。キャリア70とFP80との圧接は凸状テーパ面76aと凹状テーパ面84aとの接触面において達成され、HP88とFP80との圧接は凹状テーパ面92aと凸状テーパ面86aとの接触面において達成される。これにより、キャリア70とFP80との間及びHP88とFP80との間には大きな摩擦力が生じるため、キャリア70とFP80との間のスリップトルクは大きくなる。よって、所定のスリップトルクを維持しつつ小型化を達成し得る。
【選択図】 図2
【解決手段】ギヤドモータのギヤボックス28内のトルクリミッタCにおいては、フリクションプレート(FP)80には、出力段キャリア70とこれに噛合するホールドプレート(HP)88とが皿バネ96の付勢力により圧接する。キャリア70とFP80との圧接は凸状テーパ面76aと凹状テーパ面84aとの接触面において達成され、HP88とFP80との圧接は凹状テーパ面92aと凸状テーパ面86aとの接触面において達成される。これにより、キャリア70とFP80との間及びHP88とFP80との間には大きな摩擦力が生じるため、キャリア70とFP80との間のスリップトルクは大きくなる。よって、所定のスリップトルクを維持しつつ小型化を達成し得る。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、AV機器等で使用される小型モータ、特にはギヤドモータに適合させるためのトルクリミッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるこの種のトルクリミッタとしては、次のようなものが知られている。すなわち、ギヤドモータの出力軸に、フェルトが貼り付けられたフランジ部を設け、更に、外部に動力を伝達するためのギヤを回転自在に軸支させる。このギヤは、フェルトが貼り付けられたワッシャを介してコイルバネによりフランジ部側に付勢され、フェルトが貼り付けられたフランジ部に圧接する。これにより、ギヤドモータの出力軸の動力は、フランジ部側のフェルトとギヤとの間及びワッシャ側のフェルトとギヤとの間に生じる摩擦力によってギヤに伝達される。そして、何らかの原因によってギヤに過大なトルクが作用した場合には、摩擦力に抗してギヤドモータの出力軸が空転し、ギヤドモータ側のギヤ等の破損が防止される。なお、このような摩擦力を利用したトルクリミッタは、例えば特開平9−56117号公報に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなトルクリミッタにあっては、設置スペースを抑えるためにトルクリミッタを小型化すると、コイルバネやフランジ部等が小型化され、コイルバネによる付勢力やギヤの接触面の平均半径等が小さくなり、スリップトルク(トルクリミッタが伝達するトルクの上限値)が低下してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、所定のスリップトルクを維持しつつ小型化を達成することのできるトルクリミッタ、及びそのようなトルクリミッタを備えたギヤドモータを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るトルクリミッタは、同一の軸線上に配置された第1の回転体と第2の回転体との間に摩擦力を生じさせ、第1の回転体と第2の回転体との間でトルクの伝達及び遮断を行うトルクリミッタにおいて、軸線を中心とする環状の第1のテーパ面が設けられた第1の回転体と、第1のテーパ面と接触する環状の第2のテーパ面が設けられた第2の回転体と、第2の回転体を第1の回転体側に付勢して摩擦力を生じさせる付勢手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
このトルクリミッタにおいては、第2の回転体を付勢手段により第1の回転体側に付勢し、第1の回転体と第2の回転体とを圧接させて摩擦力を生じさせ、第1の回転体と第2の回転体との間でトルクの伝達及び遮断を行う。この第1の回転体と第2の回転体との圧接は、各回転体に設けられた環状の第1のテーパ面と第2のテーパ面との接触面において達成されるため、軸線方向に対して直交する平面同士で圧接する場合に比べ、第1の回転体と第2の回転体との間には大きな摩擦力が生じる。このように各回転体間の接触面にテーパ面を採用することによって、所定のスリップトルクを設定するにあたり、付勢手段による付勢力や各回転体間の接触面の平均半径を小さくすることができる。したがって、所定のスリップトルクを維持しつつトルクリミッタの小型化を達成することが可能になる。
【0007】
本発明に係るトルクリミッタにおいては、付勢手段と第2の回転体との間に配置され、第1の回転体にその回転方向に保持されると共に、軸線を中心とする環状の第3のテーパ面が第2の回転体側に設けられた第3の回転体を備え、第2の回転体には、第3のテーパ面と接触する環状の第4のテーパ面が設けられていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、第2の回転体は、第1の回転体とその回転方向に保持された第3の回転体とに挟まれ、第2の回転体には、第1の回転体と第3の回転体とが圧接することになる。そして、第3の回転体と第2の回転体との圧接も、各回転体に設けられた環状の第3のテーパ面と第4のテーパ面との接触面において達成される。これにより、第1の回転体と第2の回転体との間及び第3の回転体と第2の回転体との間には大きな摩擦力が生じるため、第1の回転体と第2の回転体との間のスリップトルクは更に大きくなる。したがって、所定のスリップトルクを設定するにあたり、トルクリミッタの更なる小型化を達成することが可能になる。
【0009】
また、本発明に係るトルクリミッタにおいては、付勢手段は皿バネであることが好ましい。付勢手段として皿バネを用いれば、トルクリミッタの軸線方向における小型化が可能になる。更に、撓み量の変化に対する付勢力の変化を抑制することでき、スリップトルクの設定値にばらつきが生じるのを防止することが可能になる。
【0010】
さらに、本発明に係るギヤドモータは、上述したトルクリミッタを備えることが好ましい。上述したトルクリミッタをギヤドモータのギヤボックス内に内蔵することによって、ギヤドモータの小型化を図れる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るトルクリミッタをギヤドモータに適用した場合の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、ギヤドモータ10は、コアードモータからなると共に、筒形状の金属製モータケース12をもったモータ本体Aを備え、小型化が図られている。モータケース12の内壁面には、N,S極をもった永久磁石からなる固定子14が固定され、モータケース12の内部には、鉄芯にコイルが巻かれた回転子16が収容されている。この回転子16の中心(すなわち、軸線L上)には、軸受18,20により支持された回転軸22が固定され、この回転軸22の先端部はモータケース12の前端から突出している。更に、モータケース12内において、回転軸22の後端には整流子が固定され、この整流子には一対のブラシが摺動接触している。各ブラシの基端には板状の端子24が接続され、各端子24の後端側は、モータケース12の後端に固定されたブラケット26から外部に延在する。
【0013】
モータケース12の前端には、筒形状の金属製ギヤボックス28が固定され、このギヤボックス28内には、回転軸22の先端部が突出している。この回転軸22の先端部には、ギヤボックス28内に設けられた遊星歯車機構部Bの第1段目のピニオンギヤ30が固定され、このピニオンギヤ30には、3個数のプラネタリギヤ32が噛合している。各プラネタリギヤ32は、ギヤボックス28の内壁面に一体に形成されたインターナルギヤ34に噛合すると共に、軸線L上に位置する第2段目のキャリアギヤ36に一体に形成されたキャリア38に回転自在に取り付けられる。このキャリア38は、回転軸22の先端部によって回転自在に軸支されている。
【0014】
更に、キャリアギヤ36には、3個数のプラネタリギヤ40が噛合している。各プラネタリギヤ40は、インターナルギヤ34に噛合すると共に、軸線L上に位置する第3段目のキャリアギヤ42に一体に形成されたキャリア44に回転自在に取り付けられる。このキャリア44は、キャリアギヤ36の前端から突出するキャリア軸38aによって回転自在に軸支されている。同様に、遊星歯車機構部Bは、キャリアギヤ42とキャリア44とプラネタリギヤ46とにより第3段目を構成し、キャリアギヤ48とキャリア50とプラネタリギヤ52とにより第4段目を構成して、所望の減速を達成している。
【0015】
ギヤボックス28内において、遊星歯車機構部Bの第4段目にはトルクリミッタCが接続されている。このトルクリミッタCは、ギヤボックス28の前端に圧入された軸受54と遊星歯車機構部Bのキャリアギヤ48の前端から突出するキャリア軸50aとにより回転自在に支持される出力軸58を軸線L上に有し、この出力軸58と遊星歯車機構部Bとの間でトルクの伝達及び遮断を行う。
【0016】
図2及び図3に示すように、この出力軸58の嵌込み部60には、円柱面形状の周面60aを切欠く平面部60bが軸線Lを中心として90度毎に形成されている。この嵌込み部60の後端にはフランジ部62が形成され、嵌込み部60の前端には、嵌込み部60に対して若干縮径された縮径部64が形成されている。出力軸58は、この縮径部64において軸受54により支持される。更に、縮径部64の前端には、抜け止め用のEリング56が嵌め込まれるクビレ部66を介して、外部のギヤ等が取り付けられる軸端68が形成されている。なお、図2においては、軸線Lの右側と左側とに、軸線Lを中心として90度位相をずらした位置の断面が示されている。
【0017】
出力軸58のフランジ部62上には、出力段キャリア(第1の回転体)70が載置され、この出力段キャリア70は、出力軸58の嵌込み部60の周面60aと同等の径を有する軸穴72を介して、嵌込み部60により回転自在に支持されている。出力段キャリア70の後端側には、3本の支軸74が軸線Lを中心として120度毎に設けられ、各支軸74は、遊星歯車機構部Bの第4段目のプラネタリギヤ52を回転自在に支持する。したがって、出力段キャリア70は、プラネタリギヤ52の公転に伴い、遊星歯車機構部Bにより減速された速度で軸線Lを中心として回転する。また、出力段キャリア70の前端側には凸部76が形成され、この凸部76の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凸状テーパ面(第1のテーパ面)76aが形成されている。更に、この凸状テーパ面76aの周囲には、矩形状の嵌合歯78が軸線Lを中心として90度毎に形成されている。
【0018】
出力段キャリア70上には、焼結金属により形成されたフリクションプレート(第2の回転体)80が載置され、このフリクションプレート80は、出力軸58の嵌込み部60と同等の断面形状を有する軸穴82を介して、嵌込み部60により支持されている。これにより、フリクションプレート80は、軸線L方向においては嵌込み部60に対して摺動自在であり、軸線Lを中心とする回転方向においては嵌込み部60に保持される。フリクションプレート80の後端側には凹部84が形成され、この凹部84の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凹状テーパ面(第2のテーパ面)84aが形成されている。この凹状テーパ面84aの後端側部分は、凸状テーパ面76aの前端側部分と同等の縦断面形状であるため、フリクションプレート80と出力段キャリア70とは、凹状テーパ面84aと凸状テーパ面76aとにおいて接触する。また、フリクションプレート80の前端側には凸部86が形成され、この凸部86の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凸状テーパ面(第4のテーパ面)86aが形成されている。なお、フリクションプレート80は、焼結金属に限らず、所定の摩擦係数を有していれば、樹脂等、他の材料を用いて形成してもよい。
【0019】
フリクションプレート80上には、ホールドプレート(第3の回転体)88が載置され、このホールドプレート88は、出力軸58の嵌込み部60の周面60aと同等の径を有する軸穴90を介して、嵌込み部60により回転自在に支持されている。ホールドプレート88の後端側には凹部92が形成され、この凹部92の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凹状テーパ面(第3のテーパ面)92aが形成されている。この凹状テーパ面92aの後端側部分は、凸状テーパ面86aの前端側部分と同等の縦断面形状であるため、ホールドプレート88とフリクションプレート80とは、凹状テーパ面92aと凸状テーパ面86aとにおいて接触する。更に、凹状テーパ面92aの周囲には、矩形状の嵌合歯94が軸線Lを中心として90度毎に形成され、この嵌合歯94は、出力段ギヤ70の嵌合歯78と噛合する。これにより、ホールドプレート88は、軸線L方向においては嵌込み部60に対して摺動自在であり、軸線Lを中心とする回転方向においては出力段キャリア70に保持される。
【0020】
ホールドプレート88上には、出力軸58の嵌込み部60に支持された皿バネ(付勢手段)96が載置され、この皿バネ96は、嵌込み部60の周面60aに圧入されたストッパ98によって圧縮された状態で保持される。したがって、フリクションプレート80及びホールドプレート88は、皿バネ96により出力段キャリア70側に付勢され、これにより、フリクションプレート80に、出力段キャリア70とホールドプレート88とが圧接することになる。このように、フリクションプレート80等を付勢するための付勢手段として皿バネ96を用いるため、トルクリミッタCの軸線L方向における小型化が可能になる。更に、撓み量の変化に対する付勢力の変化を抑制することでき、スリップトルクの設定値にばらつきが生じるのを防止することが可能になる。なお、設置スペース等に応じて、スプリングバネ等、他の付勢手段を採用してもよい。
【0021】
以上のギヤドモータ10においては、モータ本体Aの回転軸22が回転すると、この回転軸22の動力は、遊星歯車機構部Bを介してトルクリミッタCの出力段キャリア70に伝達され、出力段キャリア70及びこれに噛合するホールドプレート88が所定の減速比で回転する。この出力段キャリア70及びホールドプレート88の動力は、出力段キャリア70とフリクションプレート80との間及びホールドプレート88とフリクションプレート80との間に生じる摩擦力によってフリクションプレート80に伝達され、フリクションプレート80及び出力軸58が所定の減速比で回転する。
【0022】
そして、何らかの原因によって外部から出力軸58に過大なトルクが作用し、出力軸58の回転が強制的に停止させられるような事態が発生した場合には、次のようにトルクリミッタCが機能する。すなわち、出力軸58の停止に伴ってフリクションプレート80が停止するが、出力段キャリア70及びホールドプレート88は、フリクションプレート80との間に生じている摩擦力に抗して回転し続ける。これにより、モータ本体A及び遊星歯車機構部Bは空転状態となるため、遊星歯車機構部Bの各構成部品に衝撃力が加わって、各構成部品が破損するようなことが防止される。
【0023】
このトルクリミッタCにおいては、出力段キャリア70とフリクションプレート80との圧接は、凸状テーパ面76aと凹状テーパ面84aとの接触面において達成され、ホールドプレート88とフリクションプレート80との圧接は、凹状テーパ面92aと凸状テーパ面86aとの接触面において達成される。このため、出力段キャリア70とフリクションプレート80との間及びホールドプレート88とフリクションプレート80との間には、軸線L方向に対して直交する平面同士で圧接する場合に比べ大きな摩擦力が生じる。これにより、トルクリミッタCのスリップトルクを設定するにあたり、皿バネ96による付勢力やフリクションプレート80等における接触面の平均半径を小さくすることができる。したがって、所定のスリップトルクを維持しつつ、皿バネ96、出力段キャリア70、フリクションプレート80及びホールドプレート88等を小型化することができ、トルクリミッタCのギヤボックス28への内蔵が可能になる。更に、皿バネ96による付勢力を小さくすることができるため、ストッパ98の出力軸58への固定は、Eリング等を用いることにより出力軸58への溝加工をすることなく、圧入という簡易な方法によって達成することができ、トルクリミッタCの低コスト化が可能になる。
【0024】
なお、トルクリミッタCにおいては、出力段キャリア70に凸状テーパ面76aを形成し、フリクションプレート80に凹状テーパ面84aを形成したが、出力段キャリア70に凹状テーパ面を形成し、フリクションプレート80に凸状テーパ面を形成して、両者を接触させてもよい。同様に、ホールドプレート88に凹状テーパ面92aを形成し、フリクションプレート80に凸状テーパ面86aを形成したが、ホールドプレート88に凸状テーパ面を形成し、フリクションプレート80に凹状テーパ面を形成して、両者を接触させてもよい。そして、これらのテーパ面の形成角度を急峻にするほど、各回転体(フリクションプレート80等)間に生じる摩擦力が大きくなるため、設定すべきスリップトルクに応じて各回転体におけるテーパ面の形成角度を決定すればよい。
【0025】
また、トルクリミッタCは、ホールドプレート88を設けずに、例えば、フリクションプレート80上に皿バネ96を直接載置した構成を採ってもよい。この場合にも、凸状テーパ面76aと凹状テーパ面84aとの接触によって、出力段キャリア70とフリクションプレート80との間には、軸線L方向に対して直交する平面同士で圧接する場合に比べ大きな摩擦力が生じる。したがって、設定すべきスリップトルクによってはホールドプレート88を設けなくとも、そのスリップトルクを維持しつつ、トルクリミッタCの更なる小型化を達成することが可能になる。
【0026】
次に、本発明に係るトルクリミッタの他の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、図4においては、軸線Lの右側と左側とに、軸線Lを中心として90度位相をずらした位置の断面が示されている。また、以下の説明において、上記実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
トルクリミッタDは、ギヤドモータと外部のギヤとの間でトルクの伝達及び遮断を行うものであり、図4に示すように、軸線L上において、ギヤドモータの出力軸102が後端側から圧入され接続されるフリクション軸104を有している。このフリクション軸104には、円柱面形状の周面104aを切欠く平面部104bが軸線Lを中心として90度毎に形成され、フリクション軸104の後端にはフランジ部106が形成されている。このフランジ部106上には、外部のギヤに噛合するギヤ(第1の回転体)108が載置され、このギヤ108は、フリクション軸104の周面104aと同等の径を有する軸穴110を介して、フリクション軸104により回転自在に支持されている。ギヤ108の前端側には凸部112が形成され、この凸部112の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凸状テーパ面(第1のテーパ面)112aが形成されている。更に、この凸状テーパ面112aの周囲には、矩形状の嵌合歯114が軸線Lを中心として90度毎に形成されている。
【0028】
フリクション軸104において、ギヤ108上には、上述のトルクリミッタCと同様に、フリクションプレート80、ホールドプレート88、皿バネ96及びストッパ98が配置されている。これにより、ギヤ108とフリクションプレート80との圧接は、凸状テーパ面112aと凹状テーパ面84aとの接触面において達成される。また、ホールドプレート88の嵌合歯94は、ギヤ108の嵌合歯114と噛合するため、ホールドプレート88は、軸線Lを中心とする回転方向においてギヤ108に保持される。
【0029】
以上のトルクリミッタDにおいては、ギヤドモータの出力軸102が回転すると、この出力軸102の回転に伴ってフリクションプレート80も回転する。このフリクションプレート80の動力は、フリクションプレート80とホールドプレート88との間及びフリクションプレート80とギヤ108との間に生じる摩擦力によってギヤ108に伝達され、更に、ギヤ108に噛合する外部のギヤに伝達される。そして、何らかの原因によって外部からギヤ108に過大なトルクが作用し、ギヤ108の回転が強制的に停止させられるような事態が発生した場合には、次のようにトルクリミッタDが機能する。すなわち、ギヤ108の停止に伴って、これに噛合するホールドプレート88が停止するが、フリクションプレート80は、ギヤ108及びホールドプレート88との間に生じている摩擦力に抗して回転し続ける。これにより、フリクション軸104及びこれに接続されたギヤドモータの回転軸102は空転状態となるため、ギヤドモータ側のギヤ等に衝撃力が加わって、ギヤ等が破損するようなことが防止される。
【0030】
このトルクリミッタDにおいても、上述のトルクリミッタCと同様に、ギヤ108とフリクションプレート80との接触面及びホールドプレート88とフリクションプレート80との接触面にテーパ面を採用することによって、トルクリミッタDのスリップトルクを設定するにあたり、皿バネ96による付勢力やフリクションプレート80等における接触面の平均半径を小さくすることができる。したがって、所定のスリップトルクを維持しつつトルクリミッタDの小型化を達成することができ、トルクリミッタDの設置スペースの縮小化が可能になる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るトルクリミッタは、同一の軸線上に配置された第1の回転体と第2の回転体との間に摩擦力を生じさせ、第1の回転体と第2の回転体との間でトルクの伝達及び遮断を行うトルクリミッタにおいて、軸線を中心とする環状の第1のテーパ面が設けられた第1の回転体と、第1のテーパ面と接触する環状の第2のテーパ面が設けられた第2の回転体と、第2の回転体を第1の回転体側に付勢して摩擦力を生じさせる付勢手段とを備えたことによって、所定のスリップトルクを維持しつつ小型化を達成することができる。
【0032】
また、本発明に係るギヤドモータは、上述したトルクリミッタを備えることによって、トルクリミッタをギヤドモータのギヤボックス内に内蔵し、ギヤドモータの小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るトルクリミッタを適用したギヤドモータの一実施形態を示す断面
図である。
【図2】
図1に示すギヤドモータに適用したトルクリミッタの拡大断面図である。
【図3】
図1に示すギヤドモータに適用したトルクリミッタの分解斜視図である。
【図4】
本発明に係るトルクリミッタの他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
10…ギヤドモータ、58,102…出力軸、70…出力段キャリア(第1の回転体)、76a,112a…凸状テーパ面(第1のテーパ面)、80…フリクションプレート(第2の回転体)、84a…凹状テーパ面(第2のテーパ面)、86a…凸状テーパ面(第4のテーパ面)、88…ホールドプレート(第3の回転体)、92a…凹状テーパ面(第3のテーパ面)、96…皿バネ(付勢手段)、104…フリクション軸、108…ギヤ(第1の回転体)、A…モータ本体、B…遊星歯車機構部、C,D…トルクリミッタ、L…軸線。
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、AV機器等で使用される小型モータ、特にはギヤドモータに適合させるためのトルクリミッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるこの種のトルクリミッタとしては、次のようなものが知られている。すなわち、ギヤドモータの出力軸に、フェルトが貼り付けられたフランジ部を設け、更に、外部に動力を伝達するためのギヤを回転自在に軸支させる。このギヤは、フェルトが貼り付けられたワッシャを介してコイルバネによりフランジ部側に付勢され、フェルトが貼り付けられたフランジ部に圧接する。これにより、ギヤドモータの出力軸の動力は、フランジ部側のフェルトとギヤとの間及びワッシャ側のフェルトとギヤとの間に生じる摩擦力によってギヤに伝達される。そして、何らかの原因によってギヤに過大なトルクが作用した場合には、摩擦力に抗してギヤドモータの出力軸が空転し、ギヤドモータ側のギヤ等の破損が防止される。なお、このような摩擦力を利用したトルクリミッタは、例えば特開平9−56117号公報に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなトルクリミッタにあっては、設置スペースを抑えるためにトルクリミッタを小型化すると、コイルバネやフランジ部等が小型化され、コイルバネによる付勢力やギヤの接触面の平均半径等が小さくなり、スリップトルク(トルクリミッタが伝達するトルクの上限値)が低下してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、所定のスリップトルクを維持しつつ小型化を達成することのできるトルクリミッタ、及びそのようなトルクリミッタを備えたギヤドモータを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るトルクリミッタは、同一の軸線上に配置された第1の回転体と第2の回転体との間に摩擦力を生じさせ、第1の回転体と第2の回転体との間でトルクの伝達及び遮断を行うトルクリミッタにおいて、軸線を中心とする環状の第1のテーパ面が設けられた第1の回転体と、第1のテーパ面と接触する環状の第2のテーパ面が設けられた第2の回転体と、第2の回転体を第1の回転体側に付勢して摩擦力を生じさせる付勢手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
このトルクリミッタにおいては、第2の回転体を付勢手段により第1の回転体側に付勢し、第1の回転体と第2の回転体とを圧接させて摩擦力を生じさせ、第1の回転体と第2の回転体との間でトルクの伝達及び遮断を行う。この第1の回転体と第2の回転体との圧接は、各回転体に設けられた環状の第1のテーパ面と第2のテーパ面との接触面において達成されるため、軸線方向に対して直交する平面同士で圧接する場合に比べ、第1の回転体と第2の回転体との間には大きな摩擦力が生じる。このように各回転体間の接触面にテーパ面を採用することによって、所定のスリップトルクを設定するにあたり、付勢手段による付勢力や各回転体間の接触面の平均半径を小さくすることができる。したがって、所定のスリップトルクを維持しつつトルクリミッタの小型化を達成することが可能になる。
【0007】
本発明に係るトルクリミッタにおいては、付勢手段と第2の回転体との間に配置され、第1の回転体にその回転方向に保持されると共に、軸線を中心とする環状の第3のテーパ面が第2の回転体側に設けられた第3の回転体を備え、第2の回転体には、第3のテーパ面と接触する環状の第4のテーパ面が設けられていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、第2の回転体は、第1の回転体とその回転方向に保持された第3の回転体とに挟まれ、第2の回転体には、第1の回転体と第3の回転体とが圧接することになる。そして、第3の回転体と第2の回転体との圧接も、各回転体に設けられた環状の第3のテーパ面と第4のテーパ面との接触面において達成される。これにより、第1の回転体と第2の回転体との間及び第3の回転体と第2の回転体との間には大きな摩擦力が生じるため、第1の回転体と第2の回転体との間のスリップトルクは更に大きくなる。したがって、所定のスリップトルクを設定するにあたり、トルクリミッタの更なる小型化を達成することが可能になる。
【0009】
また、本発明に係るトルクリミッタにおいては、付勢手段は皿バネであることが好ましい。付勢手段として皿バネを用いれば、トルクリミッタの軸線方向における小型化が可能になる。更に、撓み量の変化に対する付勢力の変化を抑制することでき、スリップトルクの設定値にばらつきが生じるのを防止することが可能になる。
【0010】
さらに、本発明に係るギヤドモータは、上述したトルクリミッタを備えることが好ましい。上述したトルクリミッタをギヤドモータのギヤボックス内に内蔵することによって、ギヤドモータの小型化を図れる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るトルクリミッタをギヤドモータに適用した場合の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、ギヤドモータ10は、コアードモータからなると共に、筒形状の金属製モータケース12をもったモータ本体Aを備え、小型化が図られている。モータケース12の内壁面には、N,S極をもった永久磁石からなる固定子14が固定され、モータケース12の内部には、鉄芯にコイルが巻かれた回転子16が収容されている。この回転子16の中心(すなわち、軸線L上)には、軸受18,20により支持された回転軸22が固定され、この回転軸22の先端部はモータケース12の前端から突出している。更に、モータケース12内において、回転軸22の後端には整流子が固定され、この整流子には一対のブラシが摺動接触している。各ブラシの基端には板状の端子24が接続され、各端子24の後端側は、モータケース12の後端に固定されたブラケット26から外部に延在する。
【0013】
モータケース12の前端には、筒形状の金属製ギヤボックス28が固定され、このギヤボックス28内には、回転軸22の先端部が突出している。この回転軸22の先端部には、ギヤボックス28内に設けられた遊星歯車機構部Bの第1段目のピニオンギヤ30が固定され、このピニオンギヤ30には、3個数のプラネタリギヤ32が噛合している。各プラネタリギヤ32は、ギヤボックス28の内壁面に一体に形成されたインターナルギヤ34に噛合すると共に、軸線L上に位置する第2段目のキャリアギヤ36に一体に形成されたキャリア38に回転自在に取り付けられる。このキャリア38は、回転軸22の先端部によって回転自在に軸支されている。
【0014】
更に、キャリアギヤ36には、3個数のプラネタリギヤ40が噛合している。各プラネタリギヤ40は、インターナルギヤ34に噛合すると共に、軸線L上に位置する第3段目のキャリアギヤ42に一体に形成されたキャリア44に回転自在に取り付けられる。このキャリア44は、キャリアギヤ36の前端から突出するキャリア軸38aによって回転自在に軸支されている。同様に、遊星歯車機構部Bは、キャリアギヤ42とキャリア44とプラネタリギヤ46とにより第3段目を構成し、キャリアギヤ48とキャリア50とプラネタリギヤ52とにより第4段目を構成して、所望の減速を達成している。
【0015】
ギヤボックス28内において、遊星歯車機構部Bの第4段目にはトルクリミッタCが接続されている。このトルクリミッタCは、ギヤボックス28の前端に圧入された軸受54と遊星歯車機構部Bのキャリアギヤ48の前端から突出するキャリア軸50aとにより回転自在に支持される出力軸58を軸線L上に有し、この出力軸58と遊星歯車機構部Bとの間でトルクの伝達及び遮断を行う。
【0016】
図2及び図3に示すように、この出力軸58の嵌込み部60には、円柱面形状の周面60aを切欠く平面部60bが軸線Lを中心として90度毎に形成されている。この嵌込み部60の後端にはフランジ部62が形成され、嵌込み部60の前端には、嵌込み部60に対して若干縮径された縮径部64が形成されている。出力軸58は、この縮径部64において軸受54により支持される。更に、縮径部64の前端には、抜け止め用のEリング56が嵌め込まれるクビレ部66を介して、外部のギヤ等が取り付けられる軸端68が形成されている。なお、図2においては、軸線Lの右側と左側とに、軸線Lを中心として90度位相をずらした位置の断面が示されている。
【0017】
出力軸58のフランジ部62上には、出力段キャリア(第1の回転体)70が載置され、この出力段キャリア70は、出力軸58の嵌込み部60の周面60aと同等の径を有する軸穴72を介して、嵌込み部60により回転自在に支持されている。出力段キャリア70の後端側には、3本の支軸74が軸線Lを中心として120度毎に設けられ、各支軸74は、遊星歯車機構部Bの第4段目のプラネタリギヤ52を回転自在に支持する。したがって、出力段キャリア70は、プラネタリギヤ52の公転に伴い、遊星歯車機構部Bにより減速された速度で軸線Lを中心として回転する。また、出力段キャリア70の前端側には凸部76が形成され、この凸部76の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凸状テーパ面(第1のテーパ面)76aが形成されている。更に、この凸状テーパ面76aの周囲には、矩形状の嵌合歯78が軸線Lを中心として90度毎に形成されている。
【0018】
出力段キャリア70上には、焼結金属により形成されたフリクションプレート(第2の回転体)80が載置され、このフリクションプレート80は、出力軸58の嵌込み部60と同等の断面形状を有する軸穴82を介して、嵌込み部60により支持されている。これにより、フリクションプレート80は、軸線L方向においては嵌込み部60に対して摺動自在であり、軸線Lを中心とする回転方向においては嵌込み部60に保持される。フリクションプレート80の後端側には凹部84が形成され、この凹部84の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凹状テーパ面(第2のテーパ面)84aが形成されている。この凹状テーパ面84aの後端側部分は、凸状テーパ面76aの前端側部分と同等の縦断面形状であるため、フリクションプレート80と出力段キャリア70とは、凹状テーパ面84aと凸状テーパ面76aとにおいて接触する。また、フリクションプレート80の前端側には凸部86が形成され、この凸部86の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凸状テーパ面(第4のテーパ面)86aが形成されている。なお、フリクションプレート80は、焼結金属に限らず、所定の摩擦係数を有していれば、樹脂等、他の材料を用いて形成してもよい。
【0019】
フリクションプレート80上には、ホールドプレート(第3の回転体)88が載置され、このホールドプレート88は、出力軸58の嵌込み部60の周面60aと同等の径を有する軸穴90を介して、嵌込み部60により回転自在に支持されている。ホールドプレート88の後端側には凹部92が形成され、この凹部92の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凹状テーパ面(第3のテーパ面)92aが形成されている。この凹状テーパ面92aの後端側部分は、凸状テーパ面86aの前端側部分と同等の縦断面形状であるため、ホールドプレート88とフリクションプレート80とは、凹状テーパ面92aと凸状テーパ面86aとにおいて接触する。更に、凹状テーパ面92aの周囲には、矩形状の嵌合歯94が軸線Lを中心として90度毎に形成され、この嵌合歯94は、出力段ギヤ70の嵌合歯78と噛合する。これにより、ホールドプレート88は、軸線L方向においては嵌込み部60に対して摺動自在であり、軸線Lを中心とする回転方向においては出力段キャリア70に保持される。
【0020】
ホールドプレート88上には、出力軸58の嵌込み部60に支持された皿バネ(付勢手段)96が載置され、この皿バネ96は、嵌込み部60の周面60aに圧入されたストッパ98によって圧縮された状態で保持される。したがって、フリクションプレート80及びホールドプレート88は、皿バネ96により出力段キャリア70側に付勢され、これにより、フリクションプレート80に、出力段キャリア70とホールドプレート88とが圧接することになる。このように、フリクションプレート80等を付勢するための付勢手段として皿バネ96を用いるため、トルクリミッタCの軸線L方向における小型化が可能になる。更に、撓み量の変化に対する付勢力の変化を抑制することでき、スリップトルクの設定値にばらつきが生じるのを防止することが可能になる。なお、設置スペース等に応じて、スプリングバネ等、他の付勢手段を採用してもよい。
【0021】
以上のギヤドモータ10においては、モータ本体Aの回転軸22が回転すると、この回転軸22の動力は、遊星歯車機構部Bを介してトルクリミッタCの出力段キャリア70に伝達され、出力段キャリア70及びこれに噛合するホールドプレート88が所定の減速比で回転する。この出力段キャリア70及びホールドプレート88の動力は、出力段キャリア70とフリクションプレート80との間及びホールドプレート88とフリクションプレート80との間に生じる摩擦力によってフリクションプレート80に伝達され、フリクションプレート80及び出力軸58が所定の減速比で回転する。
【0022】
そして、何らかの原因によって外部から出力軸58に過大なトルクが作用し、出力軸58の回転が強制的に停止させられるような事態が発生した場合には、次のようにトルクリミッタCが機能する。すなわち、出力軸58の停止に伴ってフリクションプレート80が停止するが、出力段キャリア70及びホールドプレート88は、フリクションプレート80との間に生じている摩擦力に抗して回転し続ける。これにより、モータ本体A及び遊星歯車機構部Bは空転状態となるため、遊星歯車機構部Bの各構成部品に衝撃力が加わって、各構成部品が破損するようなことが防止される。
【0023】
このトルクリミッタCにおいては、出力段キャリア70とフリクションプレート80との圧接は、凸状テーパ面76aと凹状テーパ面84aとの接触面において達成され、ホールドプレート88とフリクションプレート80との圧接は、凹状テーパ面92aと凸状テーパ面86aとの接触面において達成される。このため、出力段キャリア70とフリクションプレート80との間及びホールドプレート88とフリクションプレート80との間には、軸線L方向に対して直交する平面同士で圧接する場合に比べ大きな摩擦力が生じる。これにより、トルクリミッタCのスリップトルクを設定するにあたり、皿バネ96による付勢力やフリクションプレート80等における接触面の平均半径を小さくすることができる。したがって、所定のスリップトルクを維持しつつ、皿バネ96、出力段キャリア70、フリクションプレート80及びホールドプレート88等を小型化することができ、トルクリミッタCのギヤボックス28への内蔵が可能になる。更に、皿バネ96による付勢力を小さくすることができるため、ストッパ98の出力軸58への固定は、Eリング等を用いることにより出力軸58への溝加工をすることなく、圧入という簡易な方法によって達成することができ、トルクリミッタCの低コスト化が可能になる。
【0024】
なお、トルクリミッタCにおいては、出力段キャリア70に凸状テーパ面76aを形成し、フリクションプレート80に凹状テーパ面84aを形成したが、出力段キャリア70に凹状テーパ面を形成し、フリクションプレート80に凸状テーパ面を形成して、両者を接触させてもよい。同様に、ホールドプレート88に凹状テーパ面92aを形成し、フリクションプレート80に凸状テーパ面86aを形成したが、ホールドプレート88に凸状テーパ面を形成し、フリクションプレート80に凹状テーパ面を形成して、両者を接触させてもよい。そして、これらのテーパ面の形成角度を急峻にするほど、各回転体(フリクションプレート80等)間に生じる摩擦力が大きくなるため、設定すべきスリップトルクに応じて各回転体におけるテーパ面の形成角度を決定すればよい。
【0025】
また、トルクリミッタCは、ホールドプレート88を設けずに、例えば、フリクションプレート80上に皿バネ96を直接載置した構成を採ってもよい。この場合にも、凸状テーパ面76aと凹状テーパ面84aとの接触によって、出力段キャリア70とフリクションプレート80との間には、軸線L方向に対して直交する平面同士で圧接する場合に比べ大きな摩擦力が生じる。したがって、設定すべきスリップトルクによってはホールドプレート88を設けなくとも、そのスリップトルクを維持しつつ、トルクリミッタCの更なる小型化を達成することが可能になる。
【0026】
次に、本発明に係るトルクリミッタの他の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、図4においては、軸線Lの右側と左側とに、軸線Lを中心として90度位相をずらした位置の断面が示されている。また、以下の説明において、上記実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
トルクリミッタDは、ギヤドモータと外部のギヤとの間でトルクの伝達及び遮断を行うものであり、図4に示すように、軸線L上において、ギヤドモータの出力軸102が後端側から圧入され接続されるフリクション軸104を有している。このフリクション軸104には、円柱面形状の周面104aを切欠く平面部104bが軸線Lを中心として90度毎に形成され、フリクション軸104の後端にはフランジ部106が形成されている。このフランジ部106上には、外部のギヤに噛合するギヤ(第1の回転体)108が載置され、このギヤ108は、フリクション軸104の周面104aと同等の径を有する軸穴110を介して、フリクション軸104により回転自在に支持されている。ギヤ108の前端側には凸部112が形成され、この凸部112の側面には、軸線Lを中心として環状であり且つ前側に向かって先細りの凸状テーパ面(第1のテーパ面)112aが形成されている。更に、この凸状テーパ面112aの周囲には、矩形状の嵌合歯114が軸線Lを中心として90度毎に形成されている。
【0028】
フリクション軸104において、ギヤ108上には、上述のトルクリミッタCと同様に、フリクションプレート80、ホールドプレート88、皿バネ96及びストッパ98が配置されている。これにより、ギヤ108とフリクションプレート80との圧接は、凸状テーパ面112aと凹状テーパ面84aとの接触面において達成される。また、ホールドプレート88の嵌合歯94は、ギヤ108の嵌合歯114と噛合するため、ホールドプレート88は、軸線Lを中心とする回転方向においてギヤ108に保持される。
【0029】
以上のトルクリミッタDにおいては、ギヤドモータの出力軸102が回転すると、この出力軸102の回転に伴ってフリクションプレート80も回転する。このフリクションプレート80の動力は、フリクションプレート80とホールドプレート88との間及びフリクションプレート80とギヤ108との間に生じる摩擦力によってギヤ108に伝達され、更に、ギヤ108に噛合する外部のギヤに伝達される。そして、何らかの原因によって外部からギヤ108に過大なトルクが作用し、ギヤ108の回転が強制的に停止させられるような事態が発生した場合には、次のようにトルクリミッタDが機能する。すなわち、ギヤ108の停止に伴って、これに噛合するホールドプレート88が停止するが、フリクションプレート80は、ギヤ108及びホールドプレート88との間に生じている摩擦力に抗して回転し続ける。これにより、フリクション軸104及びこれに接続されたギヤドモータの回転軸102は空転状態となるため、ギヤドモータ側のギヤ等に衝撃力が加わって、ギヤ等が破損するようなことが防止される。
【0030】
このトルクリミッタDにおいても、上述のトルクリミッタCと同様に、ギヤ108とフリクションプレート80との接触面及びホールドプレート88とフリクションプレート80との接触面にテーパ面を採用することによって、トルクリミッタDのスリップトルクを設定するにあたり、皿バネ96による付勢力やフリクションプレート80等における接触面の平均半径を小さくすることができる。したがって、所定のスリップトルクを維持しつつトルクリミッタDの小型化を達成することができ、トルクリミッタDの設置スペースの縮小化が可能になる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るトルクリミッタは、同一の軸線上に配置された第1の回転体と第2の回転体との間に摩擦力を生じさせ、第1の回転体と第2の回転体との間でトルクの伝達及び遮断を行うトルクリミッタにおいて、軸線を中心とする環状の第1のテーパ面が設けられた第1の回転体と、第1のテーパ面と接触する環状の第2のテーパ面が設けられた第2の回転体と、第2の回転体を第1の回転体側に付勢して摩擦力を生じさせる付勢手段とを備えたことによって、所定のスリップトルクを維持しつつ小型化を達成することができる。
【0032】
また、本発明に係るギヤドモータは、上述したトルクリミッタを備えることによって、トルクリミッタをギヤドモータのギヤボックス内に内蔵し、ギヤドモータの小型化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るトルクリミッタを適用したギヤドモータの一実施形態を示す断面
図である。
【図2】
図1に示すギヤドモータに適用したトルクリミッタの拡大断面図である。
【図3】
図1に示すギヤドモータに適用したトルクリミッタの分解斜視図である。
【図4】
本発明に係るトルクリミッタの他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
10…ギヤドモータ、58,102…出力軸、70…出力段キャリア(第1の回転体)、76a,112a…凸状テーパ面(第1のテーパ面)、80…フリクションプレート(第2の回転体)、84a…凹状テーパ面(第2のテーパ面)、86a…凸状テーパ面(第4のテーパ面)、88…ホールドプレート(第3の回転体)、92a…凹状テーパ面(第3のテーパ面)、96…皿バネ(付勢手段)、104…フリクション軸、108…ギヤ(第1の回転体)、A…モータ本体、B…遊星歯車機構部、C,D…トルクリミッタ、L…軸線。
Claims (4)
- 同一の軸線上に配置された第1の回転体と第2の回転体との間に摩擦力を生じさせ、前記第1の回転体と前記第2の回転体との間でトルクの伝達及び遮断を行うトルクリミッタにおいて、
前記軸線を中心とする環状の第1のテーパ面が設けられた前記第1の回転体と、
前記第1のテーパ面と接触する環状の第2のテーパ面が設けられた前記第2の回転体と、
前記第2の回転体を前記第1の回転体側に付勢して前記摩擦力を生じさせる付勢手段とを備えたことを特徴とするトルクリミッタ。 - 前記付勢手段と前記第2の回転体との間に配置され、前記第1の回転体にその回転方向に保持されると共に、前記軸線を中心とする環状の第3のテーパ面が前記第2の回転体側に設けられた第3の回転体を備え、
前記第2の回転体には、前記第3のテーパ面と接触する環状の第4のテーパ面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトルクリミッタ。 - 前記付勢手段は皿バネであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトルクリミッタ。
- 請求項1から請求項3のいずれかに記載されたトルクリミッタを備えたギヤドモータ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002253802A JP2004092758A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | トルクリミッタ及びギヤドモータ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002253802A JP2004092758A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | トルクリミッタ及びギヤドモータ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004092758A true JP2004092758A (ja) | 2004-03-25 |
Family
ID=32059706
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002253802A Pending JP2004092758A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | トルクリミッタ及びギヤドモータ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004092758A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103023200A (zh) * | 2012-12-28 | 2013-04-03 | 台州巨力工具有限公司 | 一种变电机旋转为短幅直线往复运动机构 |
WO2013155294A1 (en) * | 2012-04-11 | 2013-10-17 | Flodesign Wind Turbine Corp. | Shrouded fluid turbine with hybrid active and passive yaw system having torque limiting mechanism |
JP2017196972A (ja) * | 2016-04-26 | 2017-11-02 | 本田技研工業株式会社 | モータ動力伝達装置 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002253802A patent/JP2004092758A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013155294A1 (en) * | 2012-04-11 | 2013-10-17 | Flodesign Wind Turbine Corp. | Shrouded fluid turbine with hybrid active and passive yaw system having torque limiting mechanism |
CN103023200A (zh) * | 2012-12-28 | 2013-04-03 | 台州巨力工具有限公司 | 一种变电机旋转为短幅直线往复运动机构 |
JP2017196972A (ja) * | 2016-04-26 | 2017-11-02 | 本田技研工業株式会社 | モータ動力伝達装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4864582B2 (ja) | トルク自動切替装置 | |
CN100529380C (zh) | 具有支撑拨叉支点部分的可靠支点支架的起动机 | |
EP0753686A3 (en) | One-way clutch mechanism of torque converter | |
JP2010007713A (ja) | 弾性軸継手及び電動式パワーステアリング装置 | |
JP2004092758A (ja) | トルクリミッタ及びギヤドモータ | |
JP2007139029A (ja) | 電動アクチュエータ | |
JP2003028254A (ja) | 電動式車輪駆動装置 | |
WO2017150206A1 (ja) | ギヤドモータ | |
JP2019140875A (ja) | 減速機付きモータ | |
JP2000211537A (ja) | 電動式パワ―ステアリング装置 | |
JPH08322195A (ja) | 減速機付モータの軸受構造 | |
JP2004120850A (ja) | 減速機構付モータ | |
JP4632234B2 (ja) | 変速機の出力軸支持構造 | |
JP2006125325A (ja) | スタータ | |
JP4466625B2 (ja) | スタータ | |
JP2010048352A (ja) | クラッチ機構、クラッチ付減速機、および減速機付モータ | |
JP2018173135A (ja) | クラッチ、およびそれを備えたアクチュエータ | |
JP2000108056A (ja) | 電動工具 | |
JPH04117151A (ja) | マイクロモータ | |
JP2005030490A (ja) | 摩擦ローラ式減速機付きモータ減速機 | |
JP4715108B2 (ja) | 伝動装置の打音防止機構 | |
JP2003319607A (ja) | リニアアクチュエータ | |
JP2536296Y2 (ja) | 減速機構付駆動モータ | |
JP2006132230A (ja) | 自動車用電動ドア開閉装置 | |
JP2004169722A (ja) | トルクリミッタ機能付き減速装置 |