JP2004092626A - 流体噴射弁の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】流体の噴射量の正確な計量ができるように、薄板に開けられた噴孔の流量制御による孔加工が容易にできる流体噴射弁の製造方法を提供する。
【解決手段】噴孔プレート28の噴孔28aから流体を噴射することにより流体の計量と噴射方向の決定を行なう流体噴射弁1の製造方法において、噴孔プレート28に噴孔28aの下孔を加工する下孔加工工程200と、噴孔28aの下孔と噴孔プレート28との稜線28Ue、28Leに砥粒を投射するショットブラスト加工工程300とを備えた噴孔加工方法であって、ショットブラスト加工工程300による砥粒を投射する期間を所定投射時間にすることで、噴孔28aから噴射する流体の計量に対応する所定の流体流量(目標流量)に調整する。なお、所定投射時間とは、所定稜線加工投射時間に、流量補正投射時間を加えた時間である。
【選択図】    図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体噴射弁の製造方法に関し、特に流体を噴射する噴孔の加工に係わる流体噴射弁の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体噴射弁としては、オリフィスとして配設された噴孔から噴射される流体の噴射量を正確に計量するため、そのオリフィスを精密に加工する必要がある。例えば自動車用内燃機関に用いられる燃料噴射弁において、微細噴孔を高精度に加工する方法として、流体研磨によって加工するものがある(特開平9−209876号公報)。
【0003】
特開平9−209876号公報によれば、メディアである油に数から数十μmの微細な砥粒を混ぜたスラリーを高圧で微細噴孔を通すことで噴孔のエッジを研削して噴孔の流量係数を増加させていく。さらに、加工しながらスラリー流量を検出することで目標とする噴孔の流量を狙うものである。
【0004】
なお、スラリーを高圧で噴孔を通すのは、噴孔内を研削しながら流れるスラリーの流速を高めることで研削効率の向上を図るためであって、流体研磨がなされる噴孔が小さくなる程、粘性等の影響から高圧が必要であるからである。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−209876号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の製造方法では、噴孔に高圧なスラリーを通すことで微細な噴孔の流体の噴射量の計量に係わる精密研削加工ができるが、噴孔が開けられている母材の剛性が小さいと変形、損傷等の影響を受ける可能性がある。
【0007】
このため、噴孔を開けられる母材に薄板を使用する点火式内燃機関の流体噴射弁の製造方法として適用するのは困難である。また、前加工でバリがある場合には、スラリーの流れが偏るためエッジが均等に加工され難く、場合によってはエッジに欠け等が発生する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、流体の噴射量の正確な計量ができるように、薄板に開けられた噴孔の流量制御による孔加工が容易にできる流体噴射弁の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1によると、弁ボディの先端部に形成された流体通路の出口に複数の噴孔を有する噴孔プレートを配設して、噴孔から流体を噴射する流体噴射弁の製造方法において、噴孔プレートに噴孔の下孔を加工する下孔加工工程と、噴孔プレートに砥粒を投射するショットブラスト加工工程とを備えた噴孔加工方法であって、ショットブラスト加工工程による砥粒を投射する期間を所定投射時間にすることで、噴孔から噴射する流体の計量に対応する所定の流体流量に調整する。
【0010】
すなわち、噴孔の下孔と噴孔プレートとの稜線に砥粒を投射するショットブラスト加工工程は、砥粒を被加工物である噴孔プレートに投射し、被加工物としての噴孔の稜線に前加工等にて生じたバリのバリ除去および被加工物の表面に砥粒の投射による凹凸処理を施すように噴孔の稜線に砥粒の投射してR面取りをするR面取り加工を行なうことが可能である。
【0011】
一方、噴孔内を流れる流体の流量を増減する手段としては、弁ボディの先端部に形成された流体通路の出口に配設される噴孔プレートの噴孔において、流体通路から流れる流体が流入する噴孔の入口形状を、流体摩擦損失の低減が図れる形状つまり噴孔入口の稜線を、R面取り加工による所定R寸法もしくは所定ダレ量にすることで、例えばR面取りを大きくすることで流体流量を増加することが可能である。
【0012】
これに対して本発明の流体噴射弁の製造方法では、噴孔プレートの噴孔の稜線に砥粒の投射して稜線に生じたバリの除去および稜線のR面取り加工が可能なショットブラスト加工工程における砥粒の投射期間を所定投射時間にするので、例えば噴孔入口の稜線に加工するR面取りを所定R寸法もしくは所定ダレ量にすることが可能である。したがって噴孔の稜線にR面取り加工がなされた所定R寸法もしくはダレ量に応じて、噴孔から噴射する流体の計量に対応する所定の流体流量に調整することが可能である。
【0013】
上記ショットブラスト加工工程は、請求項2に記載するように、噴孔プレートのうち、噴孔へ流体が流入する側の噴孔プレート上面に砥粒を投射する第1ショットブラスト工程と、流体が流出する側の噴孔プレート下面に砥粒を投射する第2ショットブラスト工程と、噴孔プレート上面に再び砥粒を投射する第3ショットブラスト工程とを備え、第3ショットブラスト工程にて投射する砥粒の投射時間を、所定投射時間に調節する。
【0014】
一般に、ショットブラスト加工は、被加工物に砥粒を投射してその砥粒の運動エネルギーを利用して被加工物の表面に凹凸処理を施したり、被加工物の稜線にR面取りまたはダレ加工等を行なうために用いる加工方法である。この種の加工方法を、弁ボディの先端部に配設される被加工物としての噴孔プレートに形成される噴孔の稜線のバリの除去およびこの稜線のR面取り加工に適用しようとすると、砥粒の投射当初は、噴孔プレートの母材に形成された噴孔の稜線と、この稜線に前加工等の加工過程で母材の損傷等に起因して生じたバリのうち、稜線に生じたバリを投射方向に倒しながら除去する。この砥粒投射を続けると、噴孔プレートの母材に形成された稜線自体を投射方向に曲げるに至る。さらに投射が継続されると、場合によっては、例えば稜線の根元から押し曲げられてしまって稜線が噴孔内に巻き込まれて、結果として稜線が単にダレているだけの状態となってしまう可能性がある。
【0015】
これに対して本発明の流体噴射弁の製造方法では、ショットブラスト加工工程として、噴孔プレートのうち、噴孔へ流体が流入する側の噴孔プレート上面に砥粒を投射する第1ショットブラスト工程と、流体が流出する側の噴孔プレート下面に砥粒を投射する第2ショットブラスト工程と、噴孔プレート上面に再び砥粒を投射する第3ショットブラスト工程とを備えるので、稜線自体、あるいは除去されずに残ったままのバリを有する稜線が噴孔内に巻き込まれる前に、砥粒の投射方向を反転すなわち第1ショットブラスト工程から第2ショットブラスト工程に切換えることで、稜線が噴孔内に巻き込まれることなく、稜線の曲がった部分およびバリを除去することが可能である。さらに、第2ショットブラスト工程では、第1ショットブラスト工程にて曲がった稜線を、第1ショットブラスト工程による砥粒投射方向とは逆方向から砥粒を投射することで、逆向きに曲げることが可能であり、従って稜線の曲がりの矯正が可能である。
【0016】
このため、投射の反転を繰返すことですなわち第3ショットブラスト工程で再び第1ショットブラスト工程の砥粒投射方向に戻すことによって、稜線の曲がりが矯正されるとともに、稜線のR面取り加工が可能である。
【0017】
したがって、稜線のR面取り加工が可能な第3ショットブラスト工程における砥粒の投射時間を所定投射時間に調節するので、噴孔の稜線に加工されるR面取りが所定R寸法または所定R寸法に相当するダレ量を形成することができる。
【0018】
本発明の請求項3によると、ショットブラスト加工工程は、第1ショットブラスト工程にて投射される砥粒によって噴孔プレート上面の稜線に生じたバリが流体噴射方向に曲げられ、第2ショットブラスト工程にて流体噴射方向とは逆方向に投射される砥粒によってバリを除去する。
【0019】
すなわち、第1ショットブラスト工程にて噴孔へ流体が流入する側の噴孔プレート上面に砥粒を投射するので、噴孔プレートの噴孔の流体上流から下流に流れる向きつまり流体噴射方向に、噴孔プレート上面の噴孔入口の稜線に生じたバリを曲げることが可能である。さらに、第2ショットブラスト工程にて第1ショットブラスト工程による砥粒投射方向とは逆方向から投射される砥粒つまり流体噴射方向とは逆方向に砥粒を投射するので、第1ショットブラスト工程にて噴射方向に曲がった稜線およびバリは、第2ショットブラスト工程による投射方向に対して立設された状態となることで剛性が上がるので、噴孔内を流れる砥粒の噴流の中心側にあるバリに対して砥粒の研磨作用を高めることが可能である。
【0020】
これにより、バリに対する砥粒投射による研磨作用が向上するので、稜線に生じたバリの除去が効率的にできる。
【0021】
したがって、噴孔から噴射する流体の流体損失要因となるバリを効率的に除去して消失させることができる。
【0022】
本発明の請求項4によると、所定投射時間は、稜線のバリ除去および所定R寸法のR面取りを行なう所定稜線加工投射時間に、所定稜線加工投射時間の経過時に計測した噴孔の流体流量と所定の流体流量との差に応じた流量補正投射時間を加えた時間である。
【0023】
すなわち、稜線のバリ除去および所定R寸法のR面取りを行なう所定稜線加工投射時間の経過時において、計測する噴孔の流体流量と目標流体流量としての所定の流体流量との差に応じた流量補正投射時間を所定稜線加工投射時間に加えた時間を所定投射時間とするので、例えば噴孔が形成されている噴孔プレート毎に噴孔の流体流量を目標流体流量に調整することができる。
【0024】
本発明の請求項5によると、砥粒を投射する流量補正投射時間とは、所定R寸法のR面取りが形成された稜線に、砥粒の再投射による所定稜線ダレ量を形成させることで、所定の流体流量に調整する時間である。
【0025】
すなわち、砥粒を投射する流量補正投射時間とは、所定の流体流量に調整する投射時間であって、所定R寸法のR面取りが形成された稜線に、所定稜線加工時間の経過時に計測した噴孔の流体流量と所定の流体流量との差に対応して、所定の流体流量となる所定稜線ダレ量の形成ができる時間である。したがって、所定R寸法のR面取りが形成された噴孔に砥粒を再投射する時間を、計測した噴孔の流体流量と所定の流体流量との差に対応した流量補正投射時間に設定することで、例えば噴孔が複数形成されている噴孔プレート毎に噴孔の流体流量を目標流体流量に調整することが容易にできる。
【0026】
本発明の請求項6によると、砥粒を投射する砥粒投射手段は、噴孔プレート上面および噴孔プレート下面の少なくとも一方に投射する時間を可変にする。
【0027】
すなわち、砥粒を投射する砥粒投射手段は、噴孔プレート上面および噴孔プレート下面つまり噴孔入口側稜線および噴孔出口側稜線に向けて投射する砥粒の投射時間をそれぞれ所定の投射時間に調節可能である。
【0028】
これにより、噴孔の稜線のバリ除去およびR面取り加工を行なうショットブラスト加工工程において、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程の各工程における砥粒の投射時間を、それぞれの砥粒投射による加工作用に応じて所望の投射時間に調節可能である。
【0029】
したがって、例えば第3ショットブラスト工程における砥粒の投射時間を、噴孔から噴射する流体の計量に対応する、つまり目標流体流量としての所定の流体流量に調整可能な所定の投射時間に調節することができる。
【0030】
本発明の請求項7によると、砥粒投射手段は、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程の各工程にて、独立して投射可能な手段であって、噴孔プレートを形成する母材としての帯状の薄板部材に、帯状の長手方向に噴孔プレートが所定間隔で連続的に配置され、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程に対応する砥粒投射手段が、帯状薄板部材を横断するように、往復移動が可能である。
【0031】
砥粒投射手段は、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程の各工程にて、独立して投射可能な手段であるので、噴孔プレートへの砥粒の投射方向が反転する第1ショットブラスト工程から第2ショットブラスト工程、または第2ショットブラスト工程から第3ショットブラスト工程へ切換える際に、砥粒投射手段または噴孔プレートを反転させる必要がない。このため、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程の各工程にて、それぞれの加工作用に応じた噴孔プレートへの砥粒投射が安定して行なうことが可能である。
【0032】
さらに、噴孔プレートを形成する母材としての帯状の薄板部材の長手方向に、噴孔プレートを所定間隔で連続的に配置するとともに、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程に対応する砥粒投射手段は、この帯状薄板部材を横断するように、往復移動が可能である。このため、砥粒投射手段として電磁弁等の開閉によって投射、遮断することで投射時間を調節する手段や投射面をシャッター等でシールすることで投射時間を調節する手段等と比較して、本発明の流体噴射弁の製造方法に係わる砥粒投射手段は、投射する砥粒流量等が意に反して変化することなく、帯状薄板部材を横断する移動時間に応じて、帯状薄板部材に配置された噴孔プレートを投射する時間つまり噴孔の稜線に砥粒投射する時間を安定して調節できる。
【0033】
したがって、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程の各工程にて、それぞれの加工作用に応じた投射時間に安定調節することが可能であるので、噴孔プレートの噴孔に形成される稜線に、バリ除去および所定R寸法のR面取り加工を行なうことが可能であるとともに、目標流体流量としての所定の流体流量に調整することが可能である。
【0034】
本発明の請求項8によると、帯状薄板部材は、長手方向に順送りされており、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程に対応する砥粒投射手段が、それぞれ、帯状薄板部材に配置される異なる噴孔プレートに砥粒を投射するように配置されている。
【0035】
すなわち、噴孔プレートが所定間隔で連続的に配置される帯状薄板部材が帯状の長手方向に順送りされるとともに、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程に対応する砥粒投射手段が、それぞれ、帯状薄板部材に配置される異なる噴孔プレートに砥粒を投射するように配置されているので、同一の噴孔プレートにその各工程に対応する砥粒投射手段を配置して交互操作するものに比べて、本発明の製造方法に係わる製造装置として、複雑化することなく、簡素な製造システムが提供できる。
【0036】
本発明の請求項9によると、帯状薄板部材を長手方向に順送りするとは、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程に対応する砥粒投射手段による異なる噴孔プレートへの砥粒の投射が終了したとき、順送りする。
【0037】
このため、例えば第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程における砥粒の必要投射時間に対して、砥粒投射手段としての砥粒投射装置1台当たりのそれぞれ投射時間が略同じになるように、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程に対応する砥粒投射手段の配置数を適正に決定してやれば、第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程に対応する砥粒投射手段による異なる噴孔プレートへの投射するとともに順送りすることで、最終的に同一の噴孔プレートにおける第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程の投射が終了するサイクルタイムを早めることが可能である。
【0038】
本発明の請求項10によると、下孔加工工程は、パンチによるプレス加工によって有底孔を形成し、噴孔プレートの所定厚さ位置まで研削することによって、有底孔により押出された噴孔プレート表面の凸部の除去加工を行なう。
【0039】
噴孔プレートの噴孔の下孔を加工する下孔加工工程として、パンチによるプレス加工によって有底孔を形成し、噴孔プレートの所定厚さ位置まで研削することによって有底孔により押出された噴孔プレート表面の凸部の除去加工を行なう下孔加工工程を用いれば、噴孔の下孔形状を加工する放電加工等の除去加工に比較して、噴孔の加工が短時間にできるとともに、本発明の流体噴射弁の製造方法に係わるショットブラスト加工工程による噴孔から噴射する流体の計量に係わる目標流体流量としての所定の流体流量に調整可能な噴孔加工方法によって、有底孔により押出された噴孔プレート表面の凸部の除去加工を行なうときに生じる稜線の研削バリの除去と研削バリを除去した後のR面取り加工、および噴孔の流体流量を目標流体流量に調整することが確実にできる。
【0040】
本発明の請求項11によれば、有底孔は、有底孔の開口部へ向かって拡径するテーパ孔であって、有底孔の軸線が、噴孔プレートに直交する垂線に対して傾斜している。
【0041】
すなわち、噴孔プレートに貫通する噴孔を形成するための有底孔は、有底孔の開口部へ向かって拡径するテーパ孔であって、有底孔の軸線が、噴孔プレートに直交する垂線に対して傾斜している。
【0042】
本発明の流体噴射弁の製造方法を適用すれば、噴孔の形状がテーパ孔であって噴孔の軸線が噴孔プレートに対して傾斜しているもののように、噴孔プレートに形成される噴孔の稜線がテーパ孔もしくは噴孔軸線の傾斜等に起因してシャープエッジを有する噴孔において、稜線とバリの境界が形状的に明確でなくとも、稜線に投射する砥粒の投射方向の反転を繰返するショットブラスト加工工程による加工作用によって、バリの除去およびR面取り加工ができるとともに、稜線に投射する砥粒の投射時間を所定時間に調節することで噴孔の流体流量を目標流体流量に調整できる。
【0043】
本発明の請求項12では、噴孔から噴射される流体流量を計測する流量計測工程を有し、流量計測工程にて計測した流体流量に応じてショットブラスト加工工程の砥粒投射条件を補正することを特徴としている。
【0044】
ここで、本発明の砥粒投射条件とは、砥粒投射時間はもちろんのこと、砥粒投射流量、砥粒投射圧力、および砥粒投射手段と噴孔プレートとの距離等をも含む。
【0045】
本発明の請求項12によると、流量計測工程にて計測した流体流量に応じてショットブラスト加工工程の砥粒投射状態を補正するので、噴孔からの流体噴射量を所望の噴射量に調量するにあたり、容易かつ正確な調量が実現できる。
【0046】
また、本発明の請求項13のように、複数のショットブラスト工程のうち少なくとも一つのショットブラスト工程における砥粒投射状態を、流量計測工程にて計測した流体流量に応じて補正すると好適である。
【0047】
本発明の請求項14によると、下孔加工工程にて加工された下孔のバリ取りをするバリ取りショットブラスト工程と、このバリ取りショットブラスト工程にてバリ取りされた噴孔から噴射される流体流量を調量する流量調量ショットブラスト工程とを有し、この流量調量ショットブラスト工程の砥粒投射状態を、流量計測工程にて計測した流体流量に応じて補正するので、バリの確実な除去と流体噴射量の調量とを両立できる。
【0048】
なお、砥粒投射状態の補正については、本発明の請求項15のように、流量計測工程にて流体流量を計測した噴孔プレートに対するショットブラスト加工工程で行っても良いし、請求項16のように、流量計測工程にて流体流量を計測した噴孔プレートとは別の噴孔プレートに対するショットブラスト加工工程で行っても良い。
【0049】
本発明の請求項17によると、ショットブラスト加工工程は、噴孔プレートのうち、流体が流入する側と流体が流出する側のいずれか一方側の面に砥粒を投射する第1ショットブラスト工程と、噴孔プレートのうち他方側の面に砥粒を投射する第2ショットブラスト工程とを備えることを特徴としているので、噴孔プレートの表裏両方にショットブラスト加工を施すことにより、バリを確実に除去できる。
【0050】
本発明の請求項18によると、下孔加工工程はパンチによるプレス加工を有し、第1ショットブラスト工程では、パンチが噴孔プレートに入射する方向とは逆方向から砥粒を投射することを特徴としているので、下孔加工工程のプレス加工にて形成されたバリに対して、その曲がりの逆方向から砥粒を投射でき、その結果として、より効果的なバリ除去を実現できる。
【0051】
本発明の請求項19によると、本発明の流体噴射弁の製造方法は、噴孔プレートに配置される噴孔として、噴射方向を決定する噴孔軸線が流体噴射弁軸に対して傾斜しているもの、および噴射方向に拡径するもののいずれか一方の特徴を有する噴孔プレートを備えた流体噴射弁に好適である。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の流体噴射弁の製造方法を、内燃機関用燃料噴射弁の製造方法に適用して、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0053】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係わる製造装置の概略構成を表す模式図である。図2は、本実施形態の流体噴射弁の製造方法を表わす模式図であって、流体を噴射する噴孔の加工方法を示すブロック図である。図3は、図2中の第3ショットブラスト工程において、噴孔と噴孔プレートとの稜線に生じるバリの除去およびこの稜線のR面取り加工を行なう所定稜線加工投射時間に、この所定稜線加工投射時間の経過時に計測した噴孔の流体流量と目標流量としての所定の流体流量との差に応じた流量補正投射時間を加えた投射時間を噴孔プレート上面へ砥粒の投射をする加工方法を示すブロック図である。図4は、図2中のショットブラスト加工工程において、被加工物である噴孔プレートへ砥粒を投射することで、砥粒投射方向に曲がって倒れている倒れ状態となった稜線を表わす模式図である。図5は、本実施形態の流体噴射弁の製造方法に適用される燃料噴射弁を表わす断面図である。図6は、図5中の被加工物としての噴孔プレートを備える弁部周りを拡大した断面図である。図7は、図2中のショットブラスト加工工程において被加工物としての噴孔プレートへ砥粒を投射する加工過程を説明する模式図であって、図7(a)は、噴孔プレートの両面のうち一方方向のみに投射する場合の比較例を表わす模式図、図7(b)は、本発明の実施形態に係わる砥粒の投射方法であって、図7(a)の比較例中の所定投射時間経過後、噴孔プレート面へ投射する砥粒の投射方向の反転を繰返すことを表わす模式図である。図8は、図2中の第3ショットブラスト工程において、所定稜線加工投射時間の経過時において、計測する噴孔の流体流量と目標流量として所定の流体流量との差に応じた補正流量投射時間と、補正流量投射時間の砥粒投射によって形成される稜線ダレ量と、流量補正量との関係を表わすグラフである。なお、図9は、図2中に示すショットブラスト加工工程を各種噴孔形状に適用して形成される稜線ダレ部を表わす断面図である。
【0054】
(流体噴射弁の製造方法、その製造装置、および作用効果の概略)
図1に示すように、本発明の実施形態に係わる製造装置は、被加工物2としての噴孔プレート28(図5および図6参照)を加工するための砥粒を投射する砥粒噴射ノズル3と、砥粒噴射ノズル3に砥粒を供給する砥粒供給装置4と、砥粒噴射ノズル3から投射される砥粒の砥粒投射のオン−オフを行なう電磁弁5とを含んで構成されている。
【0055】
ここで、砥粒を投射する投射力源としては、図1に示すように、工場エアー等の圧縮性流体が用いられ、図示しない制御装置によって投射条件の設定が可能である。例えば投射条件としては、電磁弁5の開閉タイミングによる砥粒投射時間、投射力源としてエアによる投射圧力(言換えると、投射速度)、ショットブラスト加工を行なう砥粒の砥粒流量、および砥粒の投射を行なう砥粒投射ノズル3から投射対象の噴孔プレート28表面(詳しくは、図1では噴孔プレート上面28U)までの離間距離であるノズル距離等があり、少なくともいずれか一つをパラメータとして、噴孔28aと噴孔プレート28との稜線(以下、エッジと呼ぶ)に生じるバリの除去およびR面取り加工を行なうものである。
【0056】
被加工物2とは、流体噴射弁としての燃料噴射弁1を構成する噴孔プレート28であって、例えば薄板状もしくはカップ状等の形状に形成される完成品または製造工程途中のもの(詳しくは、例えばカップ形状にプレス抜き絞り加工する際の展開形状の状態)である。なお、この流体噴射弁としては、弁ボディ29の先端部に形成された流体通路の出口に複数の噴孔28aを有する噴孔プレート28を配して、この噴孔28aから流体を噴射することにより流体の計量と噴射方向の決定を行なうものであれば、いずれの流体噴射弁でもよい。
【0057】
砥粒投射手段としての砥粒噴射ノズル3は、投射対象の被加工物2の表面もしくは稜線としてのエッジ(詳しくは、本実施形態で説明する噴孔28aと、噴孔プレート28の両端面28U、28Lとで形成される稜線28Ue、28Le)に所定の砥粒の投射ができるものであって、制御装置を介して噴孔プレート28(詳しくは、噴孔28a)に砥粒を当てる個数の制御、もしくは制御装置を介して噴孔28aに当てる砥粒の運動エネルギーの制御が可能なものであればよい。
【0058】
なお、砥粒を当てる個数の制御とは、前述の投射条件のうち、砥石投射時間、砥石流量(詳しくは、単位時間当たりに投射する砥石の重量)を制御することであって、一方、砥粒の運動エネルギーの制御とは、ノズル距離、投射速度(投射圧力)を制御することである。
【0059】
ここで、砥粒の運動エネルギーの制御としてのノズル距離、または投射圧力による投射条件の制御は、流体の計量を行なう噴孔28aにおける流体の流量増加(詳しくは、例えば噴孔28aの孔径の拡大、あるいは噴孔28aの流体摩擦損失の低減(噴孔28aの入口側のエッジ28UeのR面取り加工に係わる所定R寸法の拡大等)等)に対して比例でないため、噴孔28aの流体の流量を所定の流体流量に調整する噴孔加工の制御方法として、噴孔加工による流体の流量を調整する制御性が良いとは言い難い(例えば、一般的な砥粒投射装置では、0.1Mpa以下の投射圧力での砥粒投射が不安定となり、精度がかえって低下する)。
【0060】
一方、砥粒を当てる個数の制御としての砥石投射時間、または砥石流量による投射条件の制御のうち、砥石流量による投射条件の制御は、例えば噴孔28aとして孔径がφ0.1mm程度の微細噴孔に砥粒を投射する場合、一般的な砥粒投射装置では、粒径が数ミクロン以下の砥粒による投射流量が不安定となり、精度がかえって低下する。
【0061】
また、砥石投射時間による投射条件の制御方法として、砥粒投射ノズル3に砥粒投射圧力を供給する電磁弁5をオン−オフ制御して投射時間を可変にする投射時間制御(以下、電磁弁5の開閉による投射時間制御と呼ぶ)では、例えば投射時間を短くしたい場合、投射力源としてのエアが圧縮性流体であることと、電磁弁5の開閉に係わる応答性とから、例えば数100ms以下の砥粒投射時間を電磁弁5のオン−オフ制御によって正確に調整することは困難である。
【0062】
したがって、ノズル距離、投射圧力、および砥石流量による投射条件の制御、および電磁弁5の開閉による投射時間制御は、いずれも砥粒またはエアの流れを不安定にさせるため、砥粒の投射量の安定性の面から加工の繰返し精度が劣化する可能性があるので、砥粒投射ノズル3の移動による投射時間制御が望ましい。詳しくは、砥粒投射ノズル3の移動による投射時間制御とは、投射対象としての被加工物2(詳しくは、噴孔プレート28の噴孔28a)に対して砥粒投射手段としての砥粒投射ノズル3を移動させることで投射時間を可変にする制御方法である。この砥粒投射ノズル3の移動による投射時間制御は、投射条件の制御方法として、制御性が良く(詳しくは、後述する図8参照)、従って噴孔加工の繰返し精度を高めることが可能である。例えば、投射時間に対して被加工物2である噴孔プレート28の噴孔28aの流体流量の増減が敏感である場合でも、投射対象としての被加工物2上を移動する砥粒投射ノズル3の移動速度を高めて1回当たりの投射時間を短縮することで、投射回数(以下、スキャン回数と呼ぶ)繰返し等による正確な投射時間調節に応じた高精度の噴孔加工が可能である。
【0063】
本発明では、砥粒の投射時間を一定にしておき、上述のノズル距離、投射圧力、および砥石流量などの投射条件を制御しても良いが、ここでは本実施形態に用いる砥粒投射手段としての砥石投射ノズル3は、この砥粒投射ノズル3の移動による投射時間制御により行なうものとして、以下説明する。
【0064】
なお、砥石投射ノズル3、砥粒供給装置4、電磁弁5は、いわゆるショットブラスト装置100を構成している。
【0065】
次に、本発明の流体噴射弁の製造方法について、図2および図3に従って以下説明する。
【0066】
図2および図3に示すように、流体噴射弁の製造方法は、噴孔プレート28に噴孔28aの下孔を加工する下孔加工工程200と、下孔加工工程200により形成された噴孔28aの下孔と噴孔プレート28とのエッジ(詳しくは、噴孔28aの入口側の噴孔プレート上面28Uと噴孔28aとで形成されるエッジ28Ue、および噴孔28aの出口側の噴孔プレート下面28Lと噴孔28aとで形成されるエッジ28Le(図1および図6参照))に生じるバリの除去およびこのエッジのR面取り加工を行なうショットブラスト加工工程300とを含んで構成されている。
【0067】
すなわち、本発明の流体噴射弁の製造法は、この下孔加工工程200およびショットブラスト加工工程300を備えることで、流体噴射弁1を構成する被加工物といての噴孔プレート28の噴孔28aを形成(詳しくは幾何学的形成)することと、その幾何学的に形成された噴孔28aの形状を、噴孔28aを流れる流体(詳しくは、燃料)の流量が目標流量としての所定の流量となるように、整形することが可能である。
【0068】
特に、噴孔28a(詳しくは、下孔)と噴孔プレート28とで形成される稜線としてのエッジ28Ue、28Leに砥粒を投射するショットブラスト加工工程300は、砥粒を被加工物2である噴孔プレート28に投射することで、被加工物2としての噴孔28aのエッジ28Ue、28Leに前加工等(詳しくは、例えば下孔加工工程200における噴孔加工)にて生じたバリのバリ除去加工と、被加工物2の表面に砥粒の投射することで凹凸処理を施すように、噴孔のエッジ28Ue、Leに砥粒の投射してR面取りをするR面取り加工を行なうことが可能である。
【0069】
一方、噴孔28a内を流れる流体の流量を増減する手段としては、弁ボディ29の先端部に形成された流体通路の出口に配設される噴孔プレート28の噴孔28a(図5および図6参照)において、流体通路から流れる流体が流入する噴孔28aの入口形状を、流体摩擦損失の低減が図れる形状つまり噴孔28a入口側のエッジ28Ueを所定R寸法もしくは所定ダレ量にR面取りすることで、その所定R寸法等の大小に応じて流体流量の増減ができる。
【0070】
これに対して本発明の流体噴射弁の製造方法のショットブラスト加工工程300では、エッジ28Ue、28Leに生じたバリの除去をするとともに、エッジ28Ue、28LeにR面取りを施すことが可能な所定投射時間に、砥粒の投射期間を設定するので、例えば噴孔28aの入口側のエッジ28Ueに加工するR面取りを所定R寸法もしくは所定ダレ量に形成することが可能である。したがって噴孔28のエッジ28Ueに形成された所定R寸法もしくはダレ量に応じて、噴孔28aを流れる流体流量を所定の流体流量に調整することが可能である。
【0071】
ここで、エッジ28Ueに形成される所定ダレ量とは、噴孔プレート28の母材の先端部としてのエッジに、エッジ28Ueを形成する先端部の肉厚の範囲内で、略R面取りされるもの、もしくは、例えば噴孔28aを流れる流体流量と所定の流体流量との差から、エッジ28Ueの先端部の肉厚の範囲を超える所定R寸法に整形させることで流体流量の調整を図りたい場合、エッジ28Ueを流体噴射方向に曲げて倒れている倒れ状態(図4参照)に形成されるものである。
【0072】
以下、本発明の製造方法の特徴である下孔加工工程200およびショットブラスト加工工程300について、以下説明する。
【0073】
下孔加工工程200は、プレス加工、エンドミル加工、または放電加工等によって噴孔28aの下孔を加工後、噴孔28aの形状に形成するため、必要に応じて研削等によって除去加工を行なう。すなわち、下孔加工工程200において形成される噴孔28aの下孔は、幾何学的には噴孔28aの形状とはぼ同一である。ただし、この研削等の除去加工を行なう場合には、噴孔28aの下孔には、除去加工によってエッジ28Ue、28Leにバリが生じるため、後述のショットブラスト加工工程300によるエッジ28Ue、28Leのバリ除去がなされて、下孔は、幾何学的には噴孔28aの形状と同一となる。
【0074】
なお、下孔加工工程200における除去加工によるエッジ28Ue、28Leに生じるバリとは、例えば、第2の実施形態に係わる図8に示すプレス加工による噴孔28aの下孔加工であって、プレス加工後の研削による除去加工によって生じるエッジ28Ueのバリ、あるいは図10に示すエンドミル加工による下孔加工で、噴孔プレート28の両端面28U、Lを研削加工するとき生じるエッジ28Ue、28Leのバリである。
【0075】
なお、本実施形態に係わる下孔加工工程200は、以下プレス加工によって噴孔28aの下孔を加工したものとして、以下説明する。
【0076】
次に、ショットブラスト加工工程300は、エッジ28Ueにバリが生じる可能性がある噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射する第1ショットブラスト工程310と、後述するエッジ28Ueの倒れ状態(図4参照)が噴孔28a内に巻込まれる状態(図7(a5)、ないし図7(a6)参照)に至る前に砥粒の投射方向を反転させ、噴孔プレート下面28Lに砥粒を投射する第2ショットブラスト工程320と、さらに投射方向の反転を繰返して、再び噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射する第3ショットブラスト工程330とを含んで構成されている。なお、噴孔プレート上面28Uは、流体噴射弁としての燃料噴射弁1において流体が流入する側の端面であって、一方、噴孔プレート下面28Lは、流体が燃料噴射弁1の外部へ流出する側の端面である(図5および図6参照)。
【0077】
一般に、被加工物2へ砥粒を投射して被加工物を整形するショットブラスト加工は、被加工物の稜線に前加工等にて生じたバリ等の除去、あるいは被加工物の表面に砥粒を衝突させることによって凹凸処理を施す目的等に用いられる加工方法である。この種の加工方法を、流体噴射弁としての燃料噴射弁1を構成する噴射プレート28の噴孔28aのエッジ28Ue、28Leに適用しようとすると、図4に示すように、砥粒の投射当初は、砥粒が投射される噴孔プレート上面28(詳しくは噴孔28aの入口側)のエッジ28Ueと、このエッジ28Ueを形成する前加工等の加工過程(詳しくは、下孔加工工程200におけるプレス加工による下孔加工後の、研削等による除去加工)での噴孔プレート28の母材の損傷等に起因して生じたバリ(詳しくは、研削等による除去加工によって生じた研削バリ)のうち、エッジ28Ueに生じたバリを投射方向に倒しながら除去する(詳しくは、図7(a1)から図7(a3)参照)。この砥粒投射を続けると、噴孔プレート28の母材に形成されたエッジ28Ue自体を投射方向に曲げるに至る(図4、図7(a3)参照)。さらに投射が継続されると、場合によっては、エッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれてしまう可能性がある(詳しくは、図7(a5)、(a6)参照)。
【0078】
なお、噴孔プレート28の両端面のうち一方方向のみに砥粒を投射する場合の従来方法としての比較例(図7(a)参照)の詳細については、後述する。
【0079】
これに対して本発明の実施形態の流体噴射弁の製造方法では、ショットブラスト加工工程300は、噴孔プレート28の両端面28U、28Lのうち、噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射する第1ショットブラスト工程310、噴孔プレート下面28Lに砥粒を投射する第2ショットブラスト工程320、および再び噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射する第3ショットブラスト工程330を備える、すなわち砥粒の投射方向の反転を繰返す工程を備えている。
【0080】
このため、砥粒の投射当初(詳しくは、第1ショットブラスト工程310)において、エッジ28Ue自体、あるいは除去されずに残ったままのバリを有するエッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれる前に、第1ショットブラスト工程310から第2ショットブラスト工程320に切換えて投射方向を反転させることが可能である。これにより、第2ショットブラスト工程320にて、第1ショットブラスト工程310による砥粒投射方向とは逆方向から砥粒を投射するので、エッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれることなく、エッジの曲がった部分およびバリを除去することが可能である。
【0081】
さらに、第2ショットブラスト工程320にて砥粒投射方向を反転させることで、第1ショットブラスト工程310による砥粒の投射によって曲がったエッジを、砥粒投射方向の反転に起因して、逆向きに曲げ戻すことが可能であり、従ってエッジ28Ueの曲がりの矯正が可能である(図7(b)、ないし図7(c)参照)。
【0082】
しかも、第1ショットブラスト工程310、および第2ショットブラスト工程320による加工過程を通じて、エッジ28Ueに生じたバリの除去、および第1ショットブラスト工程310による砥粒の投射によって曲がったエッジ28Ueの矯正ができるとともに、第3ショットブラスト工程330にて、第1ショットブラスト工程310における砥粒投射方向に戻して噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射するので、噴孔入口側のエッジ28UeのR面取り加工(詳しくは、所定R寸法または所定ダレ量のR面取り)が可能である。したがって、第3ショットブラスト工程330の所定の投射時間による砥粒を投射することで、エッジ28Ueの仕上げ加工が可能である。
【0083】
なお、本発明の流体噴射弁の製造方法の特徴であるショットブラスト加工工程300、特にエッジ28Ueの仕上げ加工が可能な第3ショットブラスト工程330の詳細については、後述する。
【0084】
(流体噴射弁としての燃料噴射弁)
次に、本発明の実施形態の流体噴射弁の製造方法に適用される燃料噴射弁1について、図5および図6に従って以下説明する。
【0085】
図5および図6に示すように、本実施形態の被加工物2として適用される燃料噴射弁1は、内燃機関、特にガソリンエンジンに用いられ、内燃機関へ燃料噴射するものである。この燃料噴射弁1は、略円筒形状であり、弁部としての弁ボディ29、および弁部材(以下、ノズルニードルと呼ぶ)26と、電磁駆動部としてのスプール30に巻回されたコイル31、コイル31に通電して生じる電磁力による磁束が流れる磁気回路を形成する円筒部材14、およびこの磁束による吸引力によってノズルニードル26側の軸方向に移動可能なアーマチュア25、およびコイル31が通電されていないときにはノズルニードル26が弁ボディ29へ当接して閉弁するようにアーマチャ25を弁ボディ側に付勢する圧縮スプリング24とを含んで構成されている。
【0086】
まず、弁部としての弁ボディ29、およびノズルニードル26等について以下説明する。
【0087】
弁ボディ29は、円筒部材14の内壁にレーザ溶接により接合され、円筒部材14に固定されている。詳しくは、図6に示すように、弁ボディ29は、円筒部材14の磁性筒部14cに圧入、または挿入可能になっている。この磁性筒部材14cの内壁に挿入された弁ボディ29を、磁性筒部14cの外周側からこの外周に沿って全周溶接されている。
【0088】
この弁ボディ29の内周側には、ノズルニードル26が当接、離間する弁座29aが形成されている。詳しくは、図6に示すように、弁ボディ29の内周側には、内燃機関へ燃料噴射する燃料の燃料通路が形成されており、内燃機関側の下流から燃料上流に向かって、弁座としての円錐斜面29a、大径円筒壁面29b、円錐斜面29c、ノズルニードル26を摺動自在に支承する小径円筒壁面29d、円錐傾斜面29eが順に形成されている。この円錐傾斜面すなわち弁座29aは、燃料噴射方向に縮径し、後述するノズルニードル26の当接部26cが当接、離間することで当接部26cと弁座とが着座可能に配置されている。これにより、燃料噴射する燃料の連通、遮断を行なう弁装置としてのいわゆる開弁、閉弁が可能である。また、大径円筒壁面29bは、燃料溜り孔、つまりノズルニードル26と共に囲まれる燃料溜り室29fを形成しており、小径円筒壁面29dは、ノズルニードル26を摺動自在に支承するニードル支持孔を形成している。この小径円筒壁面29dにより形成されるニードル支持孔は、大径円筒壁面29bにより形成される燃料溜り孔より小径である。なお、円錐斜面29eは燃料上流に向かって拡径している。
【0089】
弁部材としてのノズルニードル26は、ステンレスからなる有底筒状体であって、ノズルニードル26の先端部には、弁座29aに当接、離間可能な当接部26cが形成されている。詳しくは、図6に示すように、ノズルニードル26は、先端部すなわち燃料噴射側が燃料上流側に比べて小径の円柱状に形成される小径柱体部26dと、弁ボディ29の内周(詳しくは、小径円筒壁面29d)に摺動自在に支承される大径柱体部26eから構成されており、この小径柱体部26dの燃料噴射側の端面は、面取りされて円錐傾斜面を形成しており当接部26cを構成している。これにより、当接部26cの径の大きさすなわちシート径は、小径円筒壁面29dのニードル支持孔の径より小さく形成される。一方、大径柱体部26eは、ノズルニードル26の燃料上流側に構成され、弁ボディ29の小径円筒壁面29dに摺動可能に収容されるよう、小径円筒壁面29dの内径よりやや小さい外径の円柱状に形成されている。これにより、大径柱体部26eの外周壁面と小径円筒壁面29dとが摺接するようにこれら壁面の間に所定の微小隙間が形成される。
【0090】
また、大径柱体部26eの大部分は、薄肉の円筒状に形成され、図6に示すように、その内周壁面26aには、燃料噴射側下流に流れる燃料の内部通路26fが形成されている。この内部通路26fは、大径柱体部26eの燃料上流側の端面を穿孔加工する等によって形成されるものであって、その穿孔深さは、弁座29aに着座するとき生じる衝撃にノズルニードル26の底部が耐えられるような深さに設定される。
【0091】
これにより、ノズルニードル26の軽量化と弁座29aに当接、離間する当接部26cの加工容易性が両立できる。
【0092】
なお、大径柱体部26eの内部通路には、下流側の弁座29aへ、すなわち燃料溜り室29fに連通するように、少なくとも1つの出口孔26bが設けられている。
【0093】
噴孔プレート28は、燃料噴射弁1の先端側に、薄板状に形成されており、中央部に複数の噴孔28aが形成されている。この噴孔28aは、噴孔軸線および噴孔配列等により噴射方向の決定と、噴孔の開口面積および後述の電磁駆動部による弁部の開弁期間によって噴孔から噴射する燃料噴射量の計量とができる。詳しくは、噴孔プレート28は、例えばステンレス鋼板等からなり、有底の筒状を有するいわゆるカップ形状に形成されている。この噴孔プレート28は、略円板状になる底部28bと、底部28bの周縁から立設され弁ボディ29の外周に圧入される円筒部28hとからなり、上述の如く底部28bには、中央部に複数の噴孔28aが形成されている。この噴孔プレート28をカップ状に形成する製造方法としては、プレス抜き絞り加工等を用いる。このため、噴孔28aの孔加工は、プレス抜き絞り加工の加工過程の絞り加工前、あるいはプレス加工前の展開形状の状態において行なうことが、製造上、加工性の観点から望ましい。
【0094】
次に、電磁駆動部としてのコイル31、円筒部材14、アーマチュア25、および圧縮スプリング24等について以下説明する。なお、この電磁駆動部は、通電することで燃料噴射弁1の弁部を開弁、閉弁させるものであればよく、詳しくは、弁部を構成する弁ボディ29の弁座29aと、弁座29aに当接、離間する当接部26cを有するノズルニードル26とを当接、離間によって閉弁、開弁させるとともに、開弁期間を可変にすることで噴孔28aから噴射される流体の流量が調整可能なものであれば、いずれの電磁駆動部の構成でもよい。
【0095】
コイル31は、図5に示すように、樹脂製のスプール30の外周に巻回されており、このコイル31の端部には電気的に接続するターミナル12が設けられている。なお、このスプール30は、後述の円筒部材14の外周に装着されており、また、円筒部材14の外周に形成された樹脂モールド13の外壁から突出るように、コネクタ部16が設けられており、このターミナル12がコネクタ部16に埋設されている。
【0096】
円筒部材14は、磁性部と非磁性部からなるパイプ材であり、例えば複合磁性材で形成されている。円筒部材14の一部を加熱して非磁性化することにより、図5に示す円筒部材14を、下方の燃料噴射側から上流に向かって、磁性筒部14c、非磁性筒部14b、および磁性筒部14aの順に形成している。なお、円筒部材14の内周には、アーマチュア収容孔14eが設けれており、非磁性筒部14bと磁性筒部14cとの境界近傍に、後述のアーマチュア25が収容されている。
【0097】
また、コイル31に通電して生じる電磁力による磁束が流れる磁気回路を形成する円筒部材14の外周には、図5に示すように、磁性部材23、樹脂モールド15、磁性部材18が設けられている。詳しくは、磁性部材23がコイル13の外周を覆っており、磁性部材18はコイル31の燃料上流側に、リブ17を避けるよう、例えば扇状に設けられている。樹脂モールド15は磁性部材18,23の外周に形成され、樹脂モールド13と結合している。
【0098】
これにより、コイル31に通電して生じる電磁力による磁束が、磁性筒部14a、後述の吸引部材22、後述のアーマチュア25、磁性筒部14c、磁性部材23、および磁性部材18の順に流れる磁気回路を構成している。
【0099】
アーマチュア25は、磁性ステンレス等の強磁性材料からなる段付きの筒状体であって、ノズルニードル26に固定されている。これにより、コイル31に通電すると、コイル31に発生した電磁力による磁束が、吸引部材22を介してアーマチュア25に作用することで、アーマチュア25と共にノズルニードル26を、吸引部材22側の軸方向、つまり弁座29aから遠ざかる方向へ移動可能である。アーマチュア25の内部空間25eは、ノズルニードル26の内部通路26fとお互いに連通する構成となっている。
【0100】
吸引部材22は、磁性ステンレス等の強磁性材料からなる円筒体であって、円筒部材14の内周に圧入等により固定されている。
【0101】
圧縮スプリング24は、吸引部材22の内周に配置されたアジャスティングパイプ21の端面と、アーマチュア25の内部空間25fを形成する段差部であるスプリング座25cとの間に挟まれることで、コイル31が通電されていないときには、アーマチュア25に固定されたノズルニードル26を弁ボディ29へ当接(詳しくは、当接部26cを弁座29aへ当接)させ閉弁させるように、アーマチャ25を弁ボディ29側へ所定の付勢力にて付勢する。
【0102】
なお、アジャスティングパイプ21は、吸引部材22の内周に圧入固定され、このアジャスティングパイプ21の圧入量により圧縮スプリング24の付勢力を所定の付勢力に調整できる。
【0103】
なお、円筒部材14の燃料噴射側には、弁ボディ29および噴孔プレート28が収容されている。一方、円筒部材14の上方には、図5に示すようなフィルタ11が取付けられており、このフィルタ11によって、燃料噴射弁9の燃料上流から流入する燃料中に含まれる異物の除去が可能である。
【0104】
ここで、上述の構成を有する燃料噴射弁1の作動について以下説明する。
【0105】
電磁駆動部のコイル31に通電すると、コイル31には電磁力を生じる。このとき、磁気回路を構成するアーマチャ25と吸引部材22とにおいて、吸引部25には、アーマチュア25を吸引する吸引力が発生する。これにより、アーマチャ25に固定されたノズルニードル26が、弁ボディ29の弁座29aから離間する。よって、弁ボディ29とノズルニードル26が開弁され、燃料噴射弁1の上流側から流入している燃料が、噴孔28aを通して、内燃機関へ噴射される。一方、通電を停止すると、コイル31に生じていた電磁力が消失するので、アーマチャ25を吸引部材22側へ吸引していた吸引力もなくなる。このため、アーマチュア25に付勢している圧縮スプリング24によって、ノズルニードル26が、弁ボディ29の弁座29aに当接する方向に押圧される。よって、弁ボディ29とノズルニードル26が閉弁され、内燃機関へ噴射によって流出される燃料が遮断される。
【0106】
これにより、燃料噴射弁1は、通電期間、すなわち開弁期間を可変にすることにより、噴孔28aを介して、内燃機関へ噴射される燃料噴射量(言換えると、流体としての燃料の流量)を調整できる。
【0107】
(流体噴射弁の製造方法および作用効果の詳細)
本発明の流体噴射弁の製造方法は、前述の図2に示す如く、噴孔プレート28に噴孔28a(詳しくは、噴孔28aの下孔)を加工する下孔加工工程200と、噴孔28aと噴孔プレート28とで形成されるエッジ28Ue、28Leに生じるバリの除去およびこのエッジ28Ue、28LeのR面取り加工を行なうショットブラスト加工工程300とを含んで構成されている。
【0108】
(ショットブラスト加工工程における噴孔形状の幾何学的形成に係わる加工方法)
ショットブラスト加工工程300は、下孔加工工程200がプレス加工、エンドミル加工、または放電加工等のいずれの加工方法による噴孔28aの下孔加工であっても、ショットブラスト加工工程300は、噴孔プレート28の両端面28U、28Lのうち、噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射する第1ショットブラスト工程310、噴孔プレート下面28Lに砥粒を投射する第2ショットブラスト工程320、および再び噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射する第3ショットブラスト工程330を備えるので、比較的安価なショトブラスト装置100を用いて、噴孔28aの形状および噴孔プレート28に対する噴孔軸線の角度等の噴孔28aの諸元に係わらず、精度よく、噴孔28aと噴孔プレート28とで形成されるエッジ28Ue、28Leに生じるバリの除去およびこのエッジ28Ue、28Leを所定のR寸法にR面取り加工する流体噴射弁の製造が可能である。なお、本発明の実施形態を、噴孔28aの各種形状に適用した実施例については、第2の実施形態の説明にて後述する。
【0109】
なお、φ0.1mm程度の微細噴孔のエッジのバリ除去およびR面取りをする加工方法としては、非接触加工方法である電解に代表される電気加工、いわゆる放電加工による形成方法も有効であるが、設備費、ランニングコスト等の加工費が、ショットブラスト加工等の機械加工による形成方法に比べて高い。しかも、放電加工を行なう工具である電極とワークとしての噴孔28aとの距離が数十ミクロンと大きいため、R面取り加工にて所定R寸法、特にミクロン単位のR寸法制御が困難である。
【0110】
ここで、内燃機関用燃料噴射弁としての流体噴射弁1を構成する噴孔プレート28aの諸元(形状、噴孔軸線方向)について説明する。近年、内燃機関の性能向上、排気ガス清浄化の要求から、燃料噴射弁1、すなわち噴孔28aから噴射される燃料噴霧を微粒化させる必要がある。このため、噴孔プレート28上に複数配置される噴孔28aの噴孔配置、もしくは噴孔の偏向方向すなわち噴孔軸線の傾斜方向を改良することで、燃料噴射弁1の先端側にある噴孔プレート28上面に配置された噴孔28aの入口に、燃料流速を向上させるものが多数提案されている。これら提案された燃料噴射弁では、噴孔28aに流入する燃料の流速を向上させることで、噴射燃料の運動エネルギーの増加、つまり燃料噴霧の微粒化を図ることが可能である。しかしながら、噴孔28aへ流入する流速が向上したとしても、噴孔28a内を流体としての燃料が流れるときに生じる流体損失を十分低減させる配慮がなされていなければ、噴孔28a内を流れる際に流体損失によって燃料の流速が低下する可能性がある。
【0111】
すなわち、エッジ28Ue、28Leは、燃料流量および方向性、噴霧パターンに寄与する重要な形状要因であって、その形状(例えば、エッジに生じたバリ等のよる噴孔面積の低下等)によっては、噴孔28a内を流れる燃料が縮流したり、流れが不安定となって燃料流速を低下させる等の弊害が発生する可能性がある。このため、エッジ28Ue、28Le(特に、燃料が流入する噴孔28aの入口側のエッジ28Ue)は、バリがなく安定したエッジの形状が求められるとともに、燃料噴射中でのバリ脱落等によるエッジ形状の時系列変化を起さないものが求められる。
【0112】
これに対して、本発明の実施形態では、従来製造方法のように噴孔プレート28の両端面のうち一方方向のみに砥粒を投射するのではなく、砥粒の投射方向の反転を繰返すので、噴孔プレート28の両端面28U、28Lのうち、まず、噴孔28aの入口側のエッジ28Ueを有する噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射して所定投射時間(以下、第1の所定投射時間と呼ぶ)経過後、砥粒投射方向を反転させる(詳しくは、第1ショットブラスト工程310から第2ショットブラスト工程320へ切換える)させることができる。なお、第1の所定投射時間とは、エッジ28Ueの倒れ状態(図3の模式図参照)が、エッジ28Ue自体、あるいは除去されずに残ったままのバリを有するエッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれる状態となる前の倒れ状態を維持できる砥粒投射時間である。
【0113】
これにより、第1ショットブラスト工程310にて、エッジ28Ueに生じたバリを投射方向に倒しながら除去することができるとともに、エッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれる状態となる砥粒投射時間が経過する前に、第1の所定投射時間経過後、砥粒投射方向を反転させて第2ショットブラスト工程320へ切換えるので、エッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれることなく、エッジの曲がった部分およびバリの除去加工が継続可能である。
【0114】
さらに、第2ショットブラスト工程320にて砥粒投射方向を反転させることで、第1ショットブラスト工程310による砥粒の投射によって曲がったエッジを、砥粒投射方向の反転に起因して、逆向きに曲げ戻すことが可能であり、従ってエッジ28Ueの曲がりの矯正が可能である。これにより、例えば下孔加工加工200にて、幾何学的に噴孔28aとはぼ同一の形状に加工された噴孔28aの下孔を、エッジ28Ueに生じたバリの除去と、エッジ28Ueの曲がりの矯正によるエッジ形状の安定化の両立が図れる噴孔28aに形成できるとともに、エッジ28Ueの整形加工ができる(詳しくは、後述する図11参照)。
【0115】
なお、この第2ショットブラスト工程320にて、噴孔28aの出口側のエッジ28Leを有する噴孔プレート上面28Lに砥粒を投射するので、エッジ28Leに生じたバリを投射方向に倒しながら除去することができる(詳しくは、後述する図13参照)。
【0116】
なお、本実施形態の製造装置100に係わる砥粒投射手段としての砥粒投射ノズル3は、投射対象としての被加工物である噴孔プレート28の噴孔28に砥粒を投射する投射条件を制御する制御方法として、砥粒投射ノズル3の移動による砥粒投射時間の制御がなされているので、噴孔プレート上面28U、噴孔プレート下面28Lの少なくとも一方に投射する時間を可変にすることができる。これにより、噴孔28aのエッジ28Ue、28Leのバリ除去およびR面取り加工を行なうショットブラスト加工工程300において、第1ショットブラスト工程310、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330の各工程における砥粒投射時間を、それぞれの砥粒投射による加工作用に応じて所定の投射時間に調整可能である。
【0117】
ここで、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330における砥粒投射時間を、それぞれ、所定の投射時間が経過する第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間に設定すれば、第2ショットブラスト工程320において、第2の所定投射時間にてエッジ28Leに生じたバリを投射方向に倒しながら除去するとともにエッジ28LeのR面取り加工が可能であり、また、第3の所定投射時間にて、例えば第2ショットブラスト工程320にて曲がりの矯正がなされたエッジ28Ueに、所定R寸法または所定R寸法に相当のダレ量のR面取り加工が可能である。
【0118】
次に、本実施形態の流体噴射弁の製造方法を用いて、燃料噴射弁1を構成する噴孔プレート28の噴孔28aの噴孔加工、特にエッジ28Ueに生じたバリの除去加工およびエッジ28Ueに所定R寸法のR面取り加工をする加工について、実験検証したので、以下図7(b)に従って説明する。なお、図7は、噴孔28のエッジ周りを拡大した電子顕微鏡写真を時系列的に紙面の左から右に並べた模式的に描いた模式図であり、図7中の図7(a)は、比較例であって、噴孔プレートの両面のうち一方方向のみに投射する従来方法を示す模式図、また、図7(b)は、本発明の製造方法に係わる砥粒の投射方法であって、図7(a)の比較例中の所定の投射時間(詳しくは、第1の所定投射時間)経過後、噴孔プレート面へ投射する砥粒の投射方向の反転を繰返すことを表わす模式図である。
【0119】
ここで、図7(a)および図4に示すように、噴射方向を決定する噴孔軸線が流体噴射弁1の軸に対して傾斜しているいわゆる斜め孔や、噴射方向に対して噴孔aの孔径が拡径するいわゆるテーパ孔等の形状を有する噴孔28aにおいては、噴孔プレート28と噴孔28aと形成されるエッジ28Ue、28Leには、噴孔プレート28と噴孔28a内周の交線が鈍角に形成される側のエッジ部分と、逆に鋭角に形成される側のエッジ部分とが生じる。この鋭角に形成される側に形成されるエッジ部分は、先端が薄いエッジいわゆるシャープエッジに形成されので、鈍角に形成される側のエッジ部分に比べて、先端が薄い分だけ、エッジを形成する噴孔プレート28の母材の剛性が低下している。このため、鋭角側のエッジ部分は、剛性の小さいシャープエッジに起因して、バリが完全に除去されずにエッジの倒れ状態(図4および図7参照)が発生する可能性がる。なお、鈍角側のエッジ部分(以下、鈍角エッジとよぶ)は、エッジを形成する母材に剛性があるので、剛性のないバリは除去され、剛性のある鈍角エッジは倒れ状態になることなく、R面取り加工が可能である。したがって、ショットブラスト加工を用いてバリがなく安定したエッジの形状を有する噴孔28aに整形しようとする場合には、このシャープエッジの加工処理が問題となる。
【0120】
以下、図7に示す比較例(図7(a)参照)および本実施形態の製造方法(図7(b)参照)は、このシャープエッジに着目してエッジの加工過程を説明する。
【0121】
まず、比較例である一方投射方向のみに投射する従来方法を、図7(a)に従って以下説明する。
【0122】
図7(a)の左上段側には、砥粒投射手段としての砥粒投射ノズル3の加工条件としての砥粒の投射方向を示し、その下段側には、図4中のVII方向すなわち噴孔プレート下面28Lからみたエッジ28Ue周りの模式図であって、最左の模式図は、下孔加工工程200にて形成された噴孔28a(詳しくは下孔)を示し、図7(a1)から図7(a6)へ右から左に進むに随って一方投射方向のみに投射(詳しくは、噴孔プレート上面28Uへの砥粒投射)する投射時間が経過したときのエッジ28Ue周りの状態を示す。なお、この投射時間経過過程は、説明の簡略化のため、不等間隔にて撮影された電子顕微鏡写真撮影のエッジ28Ue周りの模式図で表わしている。また、図7(a4)から図7(a6)の噴孔プレート下面28Lからみたエッジ28Ue周りの模式図については、その上段側に、図4に対応する噴孔プレート28の断面におけるエッジ28Ue周りの模式図を示している。
【0123】
図7(a1)から図7(a6)に示すように、エッジ28Ue(詳しくは、シープエッジ)は、砥粒投射当初は、剛性のないバリいわゆる薄バリを倒し(図7(a1)、図7(a2)参照)、この砥粒投射を続けると、薄バリが除去される(図7(a1)から図7(a3)の加工進展過程を参照)。このとき、剛性のない薄バリに比べて剛性が高く、先細りのシャープエッジ28Ueの先端部の剛性と区別がつき難いバリについては、除去されずにエッジ28Ueとともに倒れる(図7(a3)参照)。さらに砥粒投射が継続されると、砥粒投射時間に応じて、砥石投射方向にエッジ28Ueが倒れ込んだ倒れ状態の倒れ度合いが徐々に大きくなっていく(図7(a4)から図7(a6)の加工進展過程を参照)。このとき、この砥粒投射時間が長すぎると、エッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれてしまう結果に至る(図7(a5)、図7(a6)参照)。
【0124】
このエッジ28Ueが噴孔28a内に巻き込まれる状態(以下、エッジ巻き込み状態と呼ぶ)となると、燃料噴射弁1の燃料噴射中に応力腐食割れ等によって、噴孔28a内に巻き込まれる状態となったエッジの一部がかけてしまう等の噴孔28aの損傷が生じる可能性がある。このため、噴射中でのバリ脱落等によるエッジ形状の時系列変化を起さない流体噴射弁1を提供する製造方法として好ましくない。
【0125】
これに対して、本発明の流体噴射弁1の製造方法を、図7(b)に従って以下説明する。
【0126】
図7(b)に示すように、第1ショットブラスト工程310にて、第1の所定投射時間経過するまで砥粒を噴孔プレート上面28Uに投射すると、エッジ28Ueは、エッジ巻き込み状態となる前の倒れ状態となる(図7(b1)参照)。
【0127】
次に、この第1の所定投射時間経過時に、第1ショットブラスト工程310から第2ショットブラスト工程320に切換えて砥粒投射方向を反転させと、第1ショットブラスト工程310にて砥粒投射方向に曲がって倒れたエッジ28Ueに向けて逆方向から砥粒投射を行なうので、図7(b2)に示すように、曲がったエッジ28Ueの矯正が可能である。
【0128】
なお、第2ショットブラスト工程320にて投射する第2の所定投射時間がわずかに長くなってしまった場合において、エッジ28Ueの先端側が、第2ショットブラスト工程320における反転した砥粒投射方向、つまり紙面の上向き方向に起因して、生じた反転した倒れ状態の倒れ度合いが小さい(図7(b2)参照)範囲で、第2の所定投射時間のずれを抑えることができれば、再び第1ショットブラスト工程310にて投射した砥粒投射方向に戻す第3ショットブラスト工程330にて、エッジ28Ueの形状を完全に矯正できる(図7(a3)参照)。
【0129】
したがって、第1ショットブラスト工程310にてバリの除去を行ない、第2ショットブラスト工程320にてエッジ28Ueの曲げ(詳しくは、倒れ状態の倒れ度合い)を小さくしながら、第1ショットブラスト工程310にて除去されずに残ったバリを有するエッジ28Ueを削り、第3ショットブラスト工程330にて微細なエッジ28Ueの曲がりを整形する仕上げ加工が可能である。
【0130】
言換えると、第1ショットブラスト工程310においては、研削バリが生じる可能性がある噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射する第1の所定投射時間は、バリを除去するバリ除去投射時間と、除去されずに残ったバリを有するエッジ28Ueを砥粒投射方向に曲げてエッジ28Ueの倒れ状態を形成させる倒れ状態形成投射時間とを加えた投射時間が必要である。次に、第2ショットブラスト工程320における第2の所定投射時間は、第1ショットブラスト工程310にて大部分のバリは除去されてしまっているため、第1の所定投射時間と同等かそれ以下の投射時間に設定すればよい(詳しくは、第1ショットブラスト工程310にて砥粒投射方向に曲がって倒れたエッジ28Ueを矯正させる投射時間)。さらに、第3ショットブラスト工程330における第3の所定投射時間は、場合によっては生じる第2ショットブラスト工程320の砥粒投射によるエッジ28Ueの反転した倒れ状態を再度矯正し直す仕上げ加工投射時間であればよいので、第2の所定投射時間と同様に、第1の所定投射時間と同等かそれ以下の投射時間に設定すればよい。
【0131】
このため、第1の所定投射時間は、短すぎるとバリが完全に除去できず、逆に長すぎると、エッジ28Ueの倒れ状態の度合いに起因して、第2ショットブラスト工程320における投射方向を反転させた砥粒投射によっても除去しきれない可能性があるので、最適な投射時間が存在する。すなわち、図7(a)の加工進展過程におけるエッジ28Ueの形成状態で表わすと、第1の所定投射時間は、図7(a2)から図7(a4)の加工進展過程で、投射方向を反転させる第2ショットブラスト工程320に切換える投射時間であればよく、望ましくは、エッジ28Ueの倒れが開始する図7(a3)に示す加工進展過程で、第2ショットブラスト工程320に切換える投射時間であるとよい。
【0132】
なお、投射する砥粒については、粒度が10〜20μm程度(噴孔28aの孔詰りから最小孔径の1/5以下程度)が望ましい。また、砥粒の材料としては、研磨作用が高く鋭利刃を持つものが好ましく、例えばセラミック材(SiC)等を用いるとよい。
【0133】
なお、本発明の製造方法を用いて被加工物2の噴孔プレート28の噴孔28aの噴孔加工をすると、噴孔プレート28の両端面である噴孔プレート上面28U、噴孔プレート下面28Lとも、それぞれのエッジ28Ue、28Leのバリ除去と、エッジ28Ue、28Leが安定した形状つまり安定した噴孔28aの形状が形成されることが可能である。
【0134】
(ショットブラスト加工工程における、幾何学的に形成された噴孔の形状を、目標流体流量としての所定の流体流量に調整する流体力学的整形に係わる加工方法)
まず、上述の幾何学的形成に係わる製造方法から、噴孔28aのエッジ28Ueに生じたバリを除去し、このエッジ28UeをR面取りすることで所定R寸法にするために要する投射時間は、砥粒の投射方向の反転を繰返すショットブラスト加工工程300の総投射時間、つまり第1の所定投射時間、第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間を加算した累積時間である(以下、この累積時間を、所定エッジ加工投射時間と呼ぶ)。この所定エッジ加工投射時間は、幾何学的に形成する所定R寸法の大小に応じて長短し、つまり第3ショットブラスト工程330におけるエッジ28Ueの仕上げ加工投射時間が長短する。
【0135】
このため、図2に示すショットブラスト加工工程300の加工最終段階にて、所定エッジ加工投射時間の経過時に、図示しない流体流量を計測する流体流量計測手段を用いて、幾何学的に形成された噴孔28aの流体流量を計測し、かつこの計測された流体流量と目標流体流量との差を求めて、その差に応じて新たな投射条件の設定としての流量補正投射時間だけ、噴孔28aの入口側のエッジ28Ueが形成されている噴孔プレート28Uへ砥粒の投射を追加することで、噴孔28aの入口部の流体力学的整形に係わる噴孔加工を行なう。
【0136】
なお、砥粒の投射方向の反転を繰返すショットブラスト加工工程300の終段の工程は、図2に示すように、噴孔プレート28Uへ砥粒投射する第3ショットブラスト工程330であるため、第3ショットブラスト工程330を、図3に示すような工程を具備するものにすればよい。
【0137】
これにより、ショットブラスト加工工程300は、所定エッジ加工投射時間と流量補正投射時間を加えた所定の砥粒投射時間だけ、被加工物2の噴孔プレート28の両端面28U、28Lに投射することで、噴孔28aの形状、特に噴孔入口側のエッジ28Ue形状の幾何学的形成と、この幾何学的に形成された噴孔28aの流体流量と目標流量の差に応じて、噴孔入口部のエッジ28Ueの流体力学的整形とを行なうことができる。
【0138】
詳しくは、第3ショットブラスト工程330は、図3に示すように、エッジ形成仕上げ加工工程331と、流量補正量判定工程332と、流量補正整形工程333とを含んで構成されている。エッジ形成仕上げ加工工程331では、幾何学的形成に係わる加工方法で説明した第3の所定砥粒投射時間(詳しくは、仕上げ加工投射時間)だけ砥粒投射することで、噴孔28aの形状、特に噴孔入口側のエッジ28Ue形状を幾何学的に形成する。次に、流量補正量判定工程332では、流体流量計測手段をを備え、第3の所定砥粒投射時間が経過時に、流体流量計測手段をを用いて幾何学的に形成された噴孔28aの流体流量を計測した後、その流体流量と目標流量の差に応じて新たな投射条件の設定としての流量補正投射時間を算出する。さらに、流量補正整形工程333では、流量補正量判定工程332にて算出された流量補正投射時間だけ砥粒投射することで、目標流量を満足する噴孔入口部を流体力学的整形する、つまりエッジ28Ueを所定R寸法もしくは所定ダレ量に形成することが可能である。
【0139】
なお、流量補正量判定工程332にて、幾何学的に形成された噴孔28aの流体流量の計測と、目標流量を満足する噴孔入口部の流体力学的整形に必要な流量補正投射時間を算出する構成で説明したが、流量補正量判定工程332で単に噴孔28aの流体流量の計測を計測だけをし、流量補正整形工程333にて、目標流量を満足する噴孔入口部の流体力学的整形に必要な流量補正投射時間を算出し、かつその流量補正投射時間だけ砥粒投射する構成でもよい。
【0140】
なお、本実施形態に係わる第3ショットブラスト工程330は、、エッジ形成仕上げ加工工程331と、流量補正量判定工程332と、流量補正整形工程333とを備え、流量補正量判定工程332にて、幾何学的に形成された噴孔28aの流体流量の計測と、目標流量を満足する噴孔入口部の流体力学的整形に必要な流量補正投射時間を算出する構成からなるものとして、以下説明する。
【0141】
次に、流量補正量判定工程332にて行なう目標流量を満足する噴孔入口部の流体力学的整形に必要な流量補正投射時間を算出方法について、以下図8および図9に従って説明する。図8は、図2および図3中の第3ショットブラスト工程において、計測する噴孔の流体流量と目標流量として所定の流体流量との差に応じた補正流量投射時間と、補正流量投射時間の砥粒投射によって形成される稜線ダレ量と、流量補正量との関係を表わすグラフである。図9は、図2および図3中に示すショットブラスト加工工程を各種噴孔形状に適用して形成される稜線ダレ部を表わす断面図である。
【0142】
図4に示す噴孔28aの流体流量に対する投射時間の関係を表わす特性図において、ショットブラスト加工工程300(詳しくは、第3ショットブラスト工程330)による噴孔プレート上面28Uへを砥粒投射を行なうことで、投射時間とともに、仕上げ加工されるエッジ28UeのR面取り加工の所定R寸法もしくはエッジダレ量としての所定ダレ量が増加していく。そこで、横軸をダレ量で表わし、縦軸に噴孔28aの流体流量および投射時間を表わす。
【0143】
なお、説明の簡略化のため、横軸の原点は、第3の所定砥粒投射時間の経過後において、噴孔28aの形状、特にエッジ28Ueが所定R寸法がR=0となる状態を表わし、この第3の所定砥粒投射時間の増加によって幾何学的に形成されるエッジ28Ueの所定R寸法は、所定ダレ量に対応するものとして説明する。このダレ量は、前述の如く、エッジ28Ueの先端部の肉厚の範囲を超える所定R寸法に整形させることで流体流量の調整を図りたい場合、エッジ28Ueを流体噴射方向に曲げて倒れている倒れ状態(図4参照)となるため、便宜的に、幾何学的に形成されるエッジ28Ueの所定R寸法も、ダレ量に読み換えるるものである。
【0144】
したがって、この所定ダレ量は、エッジ28Ueを形成する噴孔プレート28の母材の機械的強度等から制限される許容倒れ量から、許容ダレ量の範囲内で、流量補正投射時間だけ投射するものとする。
【0145】
図8に示すように、幾何学的に形成されるエッジ28Ueの所定R寸法が小さいと、流量補正投射時間分の再投射したい場合、投射時間に対する流量変化の影響が高く敏感であり(図8中の▲1▼参照)、所定R寸法が大きくなる程、鈍感となる(図8中の▲2▼参照)。
【0146】
ここで、噴孔28aを流量補正投射時間だけ第3ショットブラスト工程330にて再投射する際、目標流量が、所定ダレ量の小さな▲1▼付近の領域内にある場合には、ダレ量のばらつきにより流量は図8中の▲1▼のようにばらつく。このダレ量のばらつきは、投射時間の精度や加工の不安定性により発生し易い。一方、目標流量が、所定ダレ量の大きな▲2▼付近の領域内にある場合には、同じダレ量のばらつきが存在しても、流量のばらつきは図8中の▲2▼となり、図8中の▲1▼のばらつきに比べて非常に小さくできる。
【0147】
そこで、噴孔加工に係わる噴孔28a間の流量ばらつきを低減を図る場合には、第3ショットブラスト工程330での前工程であるエッジ形成仕上げ加工工程331にて、目標流量がなるべく所定ダレ量の大きい領域で当てはまるように、所定R寸法にエッジ28Ueを形成する、つまり下孔加工工程200にて噴孔28aの下孔を小さく開けておくことで容易となる。しかしながら、この加工方法では、噴孔28aの加工に係わる時間、つまり投射時間が長くなるという欠点がある。
【0148】
これに対して、本発明の流体噴射弁の製造方法に係わる砥粒投射手段3の砥粒投射ノズルによる移動による投射時間制御は、制御性がよく、繰返し精度を高めることが可能な制御方法であるから、投射時間を短く、しかも高精度に狙えるので、下孔加工にて下孔を噴孔28aと同一になるように加工し、エッジ形成仕上げ加工工程331における幾何学的形成されたエッジ28Ueの所定R寸法を小さく形成することで、目標流量が所定ダレ量の小さい領域▲2▼ないし▲1▼での整形加工が可能である。
【0149】
なお、流体噴射弁1を構成する噴孔プレート28には、一般に噴孔28aが複数配置されているが、上記噴孔28aの流体流量と目標流量の差の判定は、噴孔プレート28に形成される噴孔28a毎に行なってもよいし、その噴孔28aが複数配置された噴孔プレート28毎に行なってもよい。
【0150】
なお、噴孔プレート28単位で目標流量の差の判定する加工方法では、流体噴射弁1から噴射する総流体流量(詳しくは、燃料噴射量を満足する燃料流量)を目標燃料流量に調整できるとともに、噴孔28a毎に目標流量との差を判定する製造システムに比べて、流体流量計測手段の装置を複雑化することなく、簡素な製造システムを提供できる。
【0151】
なお、目標流量を満足するように流量補正投射時間だけ砥粒投射することで噴孔入口部の流体力学的整形が行われる稜線ダレとしてのダレとは、噴孔28aの入口側のエッジ28Ueの所定R寸法もしくは所定ダレ量であればよく、図8に示すテーパ傾斜孔(図9(d)参照)に限らず、テーパ垂直孔(図9(b)参照)、円筒傾斜孔(図9(c)参照、および、円筒垂直孔(図9(d)参照)等の各種の噴孔形状のエッジ28Ueのいずれにも適用できる。
【0152】
(第2の実施形態)
第1の実施形態で説明した砥粒投射手段3は、砥粒投射による加工の繰返し精度の面から、砥粒を投射する投射条件としてのノズル距離、または投射圧力等を可変にする砥粒の運動エネルギーの制御と、砥粒流量、または砥粒投射時間等を可変にする砥粒の個数を制御するもののうち、砥粒投射ノズル3の移動による投射時間制御を用いたが、第2の実施形態では、砥粒投射ノズル3の移動による投射時間制御(詳しくは、第1ショットブラスト工程310、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330における砥粒投射時間を、それぞれ第1の所定投射時間、第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間を可変にする制御方法)による生産容易性の向上を図る目的で、以下の特徴を有する。
【0153】
これにより、目標流量を満足するように流量補正投射時間だけ砥粒投射することで、噴孔入口部の流体力学的整形が行われるエッジ28Ueの所定ダレ量の形成が、生産容易性の向上が図れるとともに、下孔加工工程200およびショットブラスト加工工程300による噴孔加工に要する加工時間の短縮化が図れ、従って生産性の向上が可能である。
【0154】
図10は、本実施形態に係わる製造方法であって、噴孔と噴孔プレートとの稜線に生じるバリの除去およびこの稜線を所定R寸法もしくは所定ダレ量にR面取り加工を行なうショットブラスト加工工程を表わす模式図である。図11は、本実施形態に係わる製造工程のうち、図10中に示すショットブラスト加工工程の前工程である下孔加工工程を表わす模式図である。図12は、図10中に示すショットブラスト加工工程を、各種噴孔形状に適用して稜線のバリの除去およびR面取り加工を行なう場合の加工過程を説明する模式図であって、図12(b)から図12(d)は本発明の実施形態を好適に適用できる噴孔形状の加工過程を示す模式図、図12(a)は、比較例であって、従来方法が適用可能な噴孔形状の加工過程を示す模式図である。
【0155】
第1に、図7および図10に示すように、砥粒投射手段としての砥粒投射ノズル3は、ショットブラスト加工工程300にて投射対象の被加工物2としての噴孔プレート28の噴孔28aに対して、砥粒の投射方向の反転を繰返す各工程(詳しくは、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330)に対応する砥粒投射ノズル31、32、33をそれぞれ備えている。
【0156】
このため、例えば、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330の各工程におけるそれぞれの投射時間に対応する第1の所定投射時間、第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間に合せて一つの砥粒投射ノズルで順次投射する必要はなく、第1の所定投射時間、第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間のそれぞれの砥粒投射が同時に開始され、各工程に対応する被加工物の状態(例えば、第2シャットブラスト工程320を行なう被加工物2は、第1ショットブラスト工程310における加工が終了したもの)に応じた所定の投射時間だけ、各砥粒投射ノズル31、32、33によって独立投射可能である。
【0157】
これにより、砥粒投射手段3は、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330の各工程にて、独立して投射可能な手段であるので、噴孔プレート28への砥粒の投射方向が反転する第1ショットブラスト工程310から第2シャットブラスト工程320へ切換え、および第2シャットブラスト工程320から第3ショットブラスト工程330へ切換える際に、砥粒投射手段自身である砥粒投射ノズル3または噴孔プレート28を反転させる必要がない。このため、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330の各工程にて、それぞれの加工作用に応じた被加工物2(詳しくは、噴孔プレート28の噴孔28a)への砥粒投射が安定して行なうことが可能である。
【0158】
第2に、被加工物2としての噴孔プレート28は、例えばプレス抜き絞り加工するカップ形状の噴孔プレート28の如く、噴孔プレート28の展開形状である外形形状をプレス抜き等する前に、図10に示すような噴孔プレート28を形成する母材としての帯状の薄板部材2aに、帯状の長手方向に展開形状として噴孔プレート28が所定間隔で連続的に配置されている。なお、この帯状薄板部材2aは、シート状のステンレス鋼の圧延材等を用いる。
【0159】
これにより、独立投射可能な砥粒投射手段(詳しくは、砥粒投射ノズル31、32、33)3が、それぞれ、被加工物としての帯状薄板部材2aを長手方向に対して直角に横断するように、往復移動ができる(図10参照)。
【0160】
このため、例えば砥粒投射手段3の砥粒の個数を制御する制御方法として、電磁弁5等の開閉によって投射、遮断する電磁弁5の開閉による投射時間制御や、砥粒投射ノズル3の投射面を図示しないシャッター等でシールすることで投射時間を調節する手段等と比較して、本発明の流体噴射弁の製造方法に係わる砥粒投射手段3は、投射する砥粒流量が意に反して変化することく、帯状薄板部材2aを横断する移動時間に応じて、帯状薄板部材2aに配置された噴孔プレート28を投射する時間つまり噴孔28aのエッジ28Ue、28Leに砥粒投射する時間を安定して調節できる。
【0161】
したがって、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330の各工程にて、それぞれの加工作用に応じた所定の投射時間(詳しくは、第1の所定投射時間、第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間)に安定調節することが可能であるので、噴孔プレート28aの噴孔28aに形成されるエッジ28Ue、Leに、バリ除去および所定R寸法のR面取り加工を行なうことが容易にできる。
【0162】
なお、この帯状薄板部材2aは、ショットブラスト加工工程300の前工程である下孔加工工程200において、図10に示すように、噴孔28a(詳しくは、下孔)の下孔加工がなされていれば、帯状薄板部材2aの横断方向には、噴孔プレート28の展開形状が一つ、ないし複数配置されていてもよい。
【0163】
また、この噴孔プレート28が形成される帯状薄板部材2aを、下孔加工工程200、およびショットブラスト加工工程300に続けて、例えばカップ形状の噴孔プレート28にプレス抜き絞り加工等するプレス加工工程(図示せず)を直結して工程配置することが可能であり、噴孔プレート28の形成に係わる生産性向上が図れる。
【0164】
第3に、被加工物である帯状薄板部材2aは、長手方向に順送りされており、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330に対応する砥粒投射手段3としての砥粒投射ノズル31,32,33が、それぞれ、帯状薄板部材2aに配置される異なる噴孔プレート28に砥粒を投射するように配置されている。
【0165】
すなわち、噴孔プレート28が所定間隔で連続的に配置される帯状薄板部材2aが帯状の長手方向に順送りされるとともに、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330に対応する砥粒投射手段3が、それぞれ、帯状薄板部材2aに配置される異なる噴孔プレート28に砥粒を投射するように配置されている。
【0166】
これにより、同一の噴孔プレート28にその各工程310,320,330に対応する砥粒投射手段3を配置して交互操作するものに比べて、本発明の製造方法に係わる製造装置は、複雑化することなく、簡素な製造システムが提供できる。
【0167】
ここで、帯状薄板部材2aを長手方向に順送りするとは、第1ショットブラスト工程310、第2シャットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330に対応する砥粒投射手段3(詳しくは、その各工程に対応する砥粒投射ノズル31,32,33)による異なる噴孔プレート28への砥粒の投射が終了したとき、順送りすることである。
【0168】
このため、例えば第1ショットブラスト工程310、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330における砥粒の必要投射時間(詳しくは、第1の所定投射時間、第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間)に対して、砥粒投射手段3としての砥粒投射ノズルの1台当たりのそれぞれ投射時間が略同じになるように、その各工程310、320,330に対応する砥粒投射ノズルの数を適正に決定してやれば、第1ショットブラスト工程310、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330に対応する砥粒投射手段3による異なる噴孔プレート28への投射するとともに順送りすることで、結果として、同一の噴孔プレート28における各工程310,320,330の投射が全て終了するサイクルタイムを早めることが可能である。
【0169】
例えば、第2ショットブラスト工程320における第2の所定投射時間が主に第1ショットブラスト工程310にて砥粒投射方向に曲がって倒れたエッジ28Ueを矯正させる第2の所定投射時間、第3ショットブラスト工程330が主にエッジ28Ueの倒れ状態を再矯正し直す仕上げ加工をする第3の所定投射時間であるのに比べて、第1ショットブラスト工程310における第1の所定投射時間は、バリ除去投射時間と、エッジ28Ueの倒れ状態を形成させる倒れ状態形成投射時間とを加えた投射時間が必要であるので、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330に対応する砥粒投射ノズル32,33をそれぞれ一つとし、第1ショットブラスト工程310に対応する砥粒投射ノズル31を二つとする。これにより、第1の所定投射時間、第2の所定投射時間、および第3の所定投射時間を略同一になるようにして、ショットブラスト加工工程300のサイクルタイムを早めることが可能である。したがって、本発明の流体噴射弁の製造方法、特に噴孔28aの加工方法の生産性が向上できる。
【0170】
第4に、本実施形態に係わる製造工程のち、ショットブラスト加工工程300の前工程である下孔加工工程200は、、図11に示すように、加工治具6であるパンチ61によるプレス加工によって有底孔を形成し、噴孔プレート28の所定厚さ位置まで研削することによって、有底孔により押出された噴孔プレート28表面の凸部28abの除去加工を行なうことで噴孔28a(詳しくは、噴孔28aの下孔)を形成する特徴を有する。図11は、本実施形態に係わる製造工程のうち、図10中に示すショットブラスト加工工程の前工程である下孔加工工程を表わす模式図である。
【0171】
これにより、噴孔プレート28の噴孔28aの下孔を加工する下孔加工工程200として、パンチ61によるプレス加工によって有底孔を形成し、噴孔プレート28の所定厚さ位置まで研削することによって有底孔により押出された噴孔プレート28表面の凸部28abの除去加工を行なう下孔加工工程を用いれば、放電加工による下孔加工方法と比較して、噴孔28aの加工時間が短縮できるとともに、本発明の流体噴射弁の製造方法に係わるショットブラスト加工工程300による噴孔28aのエッジ28Ue、28Leに生じるバリの除去およびこのエッジ28Ue、28LeにR面取りを加工する噴孔加工方法によって、有底孔により押出された噴孔プレート28表面(詳しくは、噴孔プレート上面28U)の凸部28abの除去加工を行なうときに生じるエッジ28Ueの研削バリの除去と、研削バリを除去した後のR面取り加工が確実にできる。
【0172】
詳しくは、図11に示すように、下孔加工工程200は、プレス加工工程210と、研削加工工程250を含んで構成されている。
【0173】
このプレス加工工程210に係わる加工装置(詳しくは加工治具)6は、被加工物2としての噴孔28aの加工前の噴孔プレート28の展開形状(詳しくは、帯状薄板部材2a)を搭載するダイス62と、先端部形状が帯状薄板部材2a表面に直交する垂線2jに対して第1の傾斜角θ1および第2の傾斜角θ2(θ1<θ2)を有する略円錐台形状を備えたパンチ61と、パンチ61の中心線が垂線2jに対して傾斜するようにパンチ61を摺動自在に支持する支持孔を有するパンチガイド63とを備えている。
【0174】
なお、この加工装置としては、パンチ61の先端部形状が帯状薄板部材2a表面に直交する垂線2jに対して第1の傾斜角θ1および第2の傾斜角θ2を有し、かつ噴孔28aとして、噴射方向を決定する噴孔軸線が流体噴射弁軸に対して傾斜しているもの、および噴射方向に拡径するものの少なくともいずれか一方の特徴を有する噴孔プレートの下孔加工を行なう場合には、例えばパンチ61の第1の傾斜角θ1がパンチガイド63の内周の摺動面に沿う形状等に構成することで、パンチ61の先端部に加わる側方力をパンチガイド63の内面で受けることができる構造が望ましい。これにより、従来方法のプレス孔抜き加工のような破断面が生じることなく、噴孔28a(詳しくは有底孔)の内面全域わたって均一な面形状を得ることができる。
【0175】
したがって、プレス加工210によって形成された有底孔の内面のうち、孔内周となる噴孔28aの内周28ahはそのままにし、研削加工工程250にて、有底孔により押出された噴孔プレート28表面の凸部28abを、砥石9等による研削加工によって除去するので、製造コストを低減させるとともに、生産性を向上できる噴孔28aの加工方法、つまり流体噴射弁の製造方法を提供できる。
【0176】
なお、この凸部28abは、流体噴射弁1の噴霧微粒化の観点から噴孔プレート上面28Uに形成されている。研削加工工程250にて噴孔プレート上面28Ueが研削される際に、噴孔28aの入口側のエッジ28Ueに図8に示す研削バリが発生する場合がある。
【0177】
このため、本発明の実施形態に係わるショットブラスト加工工程300では、第1ショットブラスト工程310にて投射される砥粒によって噴孔プレート上面28Uのエッジ28Ueに生じたバリが砥粒投射方向つまり流体噴射方向に曲げられ、第2ショットブラスト工程320にて流体噴射方向とは逆方向に投射される砥粒によってバリを確実に除去することができる。
【0178】
詳しくは、第1ショットブラスト工程310では、噴孔28a入口側の噴孔プレート上面28Uに砥粒を投射するので、噴孔28a入口側のエッジ28Ueに生じたバリを、噴孔プレート28の噴孔28aの流体上流から下流に流れる向き(図5参照)つまり流体噴射方向に曲げることが可能である。さらに、第1ショットブラスト工程310による砥粒投射方向とは逆方向から投射される第2ショットブラスト工程320では、第1ショットブラスト工程310にて噴射方向に曲がったエッジ28Ueが、第2ショットブラスト工程320による投射方向に対して立設された状態となることで剛性が上げられる。よって、噴孔28a内を流れる砥粒の噴流の中心側にあるバリ28Ueに対して砥粒の研磨作用を高めることが可能である。したがって、バリ28Ueに対する砥粒投射による研磨作用が向上するのでエッジ28Ueに生じたバリの除去が効率的にできる。
【0179】
第5に、本実施形態の流体噴射弁の製造方法に係わる噴孔加工方法として、本発明の特徴である投射方向の反転を繰返すシャットブラスト加工工程300は、図12に示すように、各種噴孔28aの形状に適用してエッジ28Ue、28Leのバリ除去およびR面取り加工が好適に行なうことができる。図12は、図10中に示すショットブラスト加工工程を、各種噴孔形状に適用して稜線のバリの除去およびR面取り加工を行なう場合の加工過程を説明する模式図であって、図12(b)から図12(d)は本発明の実施形態を好適に適用できる噴孔形状の加工過程を示す模式図、図12(a)は、比較例であって、従来方法が適用可能な噴孔形状の加工過程を示す模式図である。
【0180】
まず、従来方法が適用可能な噴孔形状としては、図12(a)に示す噴孔プレート28面に対して円筒垂直に開けられたいわゆる円筒垂直孔28aのみ、バリが生じているエッジ28Uの噴孔プレート上面28Uのみに砥粒を投射する(つまり、投射方向の反転を繰返すシャットブラスト加工工程300のうち、第1ショットブラスト工程310による砥粒投射を行なう)ことで、エッジ28Ueのバリ除去およびR面取り加工が可能である。
【0181】
なお、この円筒垂直孔28aが従来方法を適用できるのは、噴孔プレートの母材によって直角なるエッジが形成されているので、直角の、言換えると鈍角側のエッジ28Ueは、剛性があるため、このエッジ28Ueに砥粒の投射を行なう第1ショットブラスト工程310の一方方向のみの砥粒投射によって、剛性のないバリは除去され、母材のエッジ28Ueはショットブラストの押しつぶし作用によりR面取り加工できるからである。
【0182】
しかしながら、流体噴射弁1の流体の噴射方向の決定を行なう噴孔28aは、所望の噴射方向に流体噴射するように噴孔28aの軸線を、流体噴射弁1の軸線つまり噴孔プレート28(詳しくは、被加工物2としての帯状薄板部材2a)面に対する垂線2jに対して、傾斜させる必要がある(以下、噴孔28aの軸線の傾斜化と呼ぶ)。また、流体噴霧の微粒化等の目的で噴孔28a内の流体速度を向上を図りたい場合、噴孔28の孔径を流体噴射方向に向って拡径する等する必要がある(以下、噴孔28aのテーパ孔化と呼ぶ)。
【0183】
このため、ほとんどの噴孔28aは、噴孔28aの軸線の傾斜化、もしくはテーパ孔化を図る目的で、円筒垂直孔28a(図12(a)参照)以外の、図12(b)から図12(d)に示す噴孔28の形状が採用される。ここで、図12(b)は、テーパ孔化を図る形状であって、円筒垂直孔を流体噴射方向に向って拡径したいわゆるテーパ垂直孔であり、図12(c)は、噴孔28aの軸線の傾斜化を図る形状であって、垂線2jに対して噴孔軸線を傾斜させたいわゆる円筒傾斜孔であり、図12(d)は、噴孔28aの軸線の傾斜化およびテーパ孔化を図る目的で、垂線2jに対して噴孔軸線を傾斜させるとともに、流体噴射方向に向って拡径したいわゆるテーパ傾斜孔を示す。なお、第2の実施形態で説明した噴孔28aの形状は、図12(d)に示すテーパ傾斜孔に相当し、図11に示すプレス加工工程210における有底孔は、有底孔の開口部へ向って拡径する噴孔aの内周28ahを有するテーパ孔であって、有底孔の軸線つまり噴孔28aの噴孔軸線が、噴孔プレート28(詳しくは、被加工物2の帯状薄板部材2a)に直交する垂線2jに対して傾斜している。
【0184】
これらの噴孔28aの形状では、鈍角側のエッジ部と鋭角側のエッジいわゆるシャープエッジ部とを有するエッジ28Ueであるので、エッジの先端が先細となっている剛性の低下したシャープエッジ部に対して、このシャープエッジ部に生じるバリを除去しながら、バリ除去に要した砥粒投射時間によって生じるシープエッジ部の曲がりを矯正する必要がある。
【0185】
図12(b)から図12(d)に示すように、いずれの噴孔28aの形状を有する噴孔プレート28においても、本実施形態のショットブラスト加工工程300では、砥粒投射方向の反転を繰返す工程(詳しくは、第1ショットブラスト工程310、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330)を備えるので、噴孔プレート28の両端面28U、28Lに形成されるエッジ28Ue、28Leのうち、噴孔プレート上面28Uのエッジ28Ueに生じるバリの除去およびこのエッジ28Ueの所定R寸法のR面取り加工を行なうことができる。
【0186】
詳しくは、エッジ28Ueに投射する砥粒の投射方向の反転を繰返するショットブラスト加工工程300の終段である第3ショットブラスト工程330において、再び第1ショットブラスト工程310と同じ砥粒投射方向からエッジ28Ueを投射する方向に戻すことによって、エッジ28Ueの曲がりが再矯正されるとともに、エッジ28UeのR面取りを所定R寸法に加工することができる。例えば、第1ショットブラスト工程310における第3の所定投射時間を、第2ショットブラスト320による反転した砥粒投射によって生じる場合があるエッジ28Ueの反転した倒れ状態を再度矯正し直す仕上げ加工投射時間と、エッジ28Ueを所定R寸法にR面取り加工するR面取り投射時間とを加えた投射時間に設定すればよい。
【0187】
また、図12(c)、図12(d)に示すように、噴孔プレート下面28Lの噴孔28aの出口側のエッジ28Le、特にシャープエッジ部分は、第2ショットブラスト320における噴孔プレート下面28Lへの砥粒投射によって、エッジ28LeのR面取り加工ができる。なお、エッジ28LeのR面取り加工も、第2ショットブラスト320における第2の所定投射時間を所定値に設定することで、所定R寸法のR面取り可能であることは言うまでもない。
【0188】
したがって、本発明の流体噴射弁の製造方法を適用すれば、噴孔プレート28に形成される噴孔28aのがテーパ孔もしくは噴孔軸線の傾斜等に起因してシャープエッジを有する噴孔28aにおいて、エッジ28Ue、28Leとバリの境界が形状的に明確でなくとも、エッジ28Ue、28Leに投射する砥粒の投射方向の反転を繰返するショットブラスト加工工程300による加工作用によって、バリの除去およびR面取り加工ができる。
【0189】
(変形例)
第1の変形例としては、第2の実施形態で説明したプレス加工(詳しくは、プレス加工工程210)を備えた下孔加工工程200に換えて、図13に示すようなエンドミル加工(詳しくは、エンドミル加工工程220)を備えた下孔加工工程200とする製造方法としてもよい。図13は、第1の変形例に係わる製造方法であって、下孔加工工程をエンドミル加工を用いて行なう場合において、稜線のバリの除去およびR面取り加工を行なう加工過程を示す模式図である。
【0190】
詳しくは、図13に示すように、第1の変形例に係わる下孔加工工程200は、エンドミル加工工程220と、研削加工工程250とを備える。なお、第1の変形例の燃料噴射弁の製造方法としてのショットブラスト加工工程300は、第2の実施形態と略同じであるので詳細説明は省略する。
【0191】
ここで、図13に示すように、エンドミル加工工程220は、第2の実施形態で説明したプレス加工工程210に比較すると、エンドミル7の加工によって形成される噴孔28aの両エッジ28Ue、28Leとも、エンドミル加工による切削に起因した切削バリ等の母材の損傷が生じる可能性がある。
【0192】
このため、研削加工工程250では、噴孔プレート28の両端面28U、28Lとも研削加工することで、損傷のない噴孔28aの内周、特にエッジ28Ue、28Leを形成する必要がある。このとき、両端面28U、28Lを研削する際、薄バリ等が発生するので、ショットブラスト加工工程300では、両エッジ28Ue、28Leに生じるバリの除去加工およびエッジ28Ue、28LeのR面取り加工を行なう必要がある。ここで、エッジ28LeのR面取り加工は、第2の実施形態と同様に、第2ショットブラスト320における第2の所定投射時間を所定値に設定することで、所定R寸法のR面取り可能である。
【0193】
したがって、エンドミル加工による下孔加工工程200であっても、本発明の流体噴射弁の製造方法に係わるショットブラスト加工工程300を適用すれば、噴孔プレート28の両端面28U、28Lの両エッジ28Ue、28Leに生じるバリの除去および両エッジ28Ue、28LeのR面取り加工ができる。
【0194】
第2の変形例としては、第2の実施形態で説明したプレス加工(詳しくは、プレス加工工程210)を備えた下孔加工工程200に換えて、図14に示すような放電加工(詳しくは、放電加工工程230)を備えた下孔加工工程200とする製造方法としてもよい。図14は、第2の変形例に係わる製造方法であって、下孔加工工程を放電加工を用いて行なう場合において、稜線のバリの除去およびR面取り加工を行なう加工過程を示す模式図である。
【0195】
詳しくは、図14に示すように、第2の変形例に係わる下孔加工工程200は、放電加工工程230からなる。なお、第2の変形例の燃料噴射弁の製造方法としてのショットブラスト加工工程300は、第2の実施形態と略同じであるので詳細説明は省略する。
【0196】
ここで、図14に示すように、放電加工工程230は、非接触加工方法である電極8により噴孔28aが加工されるので、噴孔28aと電極8との間に数十ミクロン程度の離間距離が生じる。したがって、電極8等による放電加工を行なうことで、意に反したエッジ28Ue、28Leのダレが発生する可能性があっても、バリが生じることはない。このため、放電加工工程230を備えた下孔加工工程200では、研削加工工程250は不要である。
【0197】
放電加工による下孔加工工程200であっても、図14に示すようなシャープエッジ部分を有するエッジ28Ue、28Leであれば、エッジ28Ue、28Leの先端が先細となるシャープエッジに起因して、エッジ28Ue、28Leとバリの区別が形状的に不明確となるので、本発明のショットブラスト加工工程300を適用すれば、流体力学的(詳しくは、流体摩擦損失となる)にバリ相当のエッジ28Ue、28Leの先端部を除去し、エッジ28Ue、28Leに所定R寸法のR面取り加工が可能である。
【0198】
なお、上述した実施形態では、第1ショットブラスト工程にて噴孔プレートの流入側に砥粒を投射し、第2ショットブラスト工程にて噴孔プレートの流出側に砥粒を投射し、第3ショットブラスト工程にて噴孔プレートの流入側に砥粒を投射しているが、これに限らず、例えば、第1ショットブラスト工程にて噴孔プレートの流出側に砥粒を投射し、第2ショットブラスト工程にて噴孔プレートの流入側に砥粒を投射し、第3ショットブラスト工程にて噴孔プレートの流出側に砥粒を投射しても良い。
【0199】
また、上述の実施形態では、第1ショットブラスト工程の砥粒投射方向を、下孔加工工程におけるプレス加工のパンチ61、エンドミドル加工のエンドミドル7、および放電加工の電極8の各入射方向と逆方向にしているが、これに限らず、例えば、上記砥粒投射方向と上記入射方向とを同じにしても良い。
【0200】
また、上述の実施形態では、カップ状の噴孔プレート28の展開形状を配置したものとして、帯状薄板部材2aを説明したが、これに限らず、帯状薄板部材2aを切断して板状の噴孔プレートを形成しても良いし、所望の形状に成形された噴孔プレートに対してショットブラスト加工を施しても良い。
【0201】
また、各ショットブラスト工程において、噴孔プレートに対する砥粒投射方向を同じにしておき、各ショットブラスト工程にて噴孔プレートを裏返すようにしても良い。
【0202】
また、上述した実施形態では、3回のショットブラスト工程(第1ショットブラスト工程、第2ショットブラスト工程、および第3ショットブラスト工程)を有しているが、裏表2回のショットブラスト工程(第1ショットブラスト工程と第2ショットブラスト工程)だけでも良いし、4回以上のショットブラスト工程を有していても良い。
【0203】
ここで、4回のショットブラスト工程を有する変形例について、図15を用いて説明する。
【0204】
図15に示す通り、本変形例の製造工程は、大きく分けて下孔加工工程400、バリ取り工程500、流量調量工程600からなっている。
【0205】
下孔加工工程400は、パンチ61によって噴孔プレート28に有底孔を形成するプレス工程410と、噴孔プレート28の所定厚さ位置まで研削することによって、この有底孔により押出された噴孔プレート28表面の凸部28ab(図11参照)の除去加工を行う研削工程420とを有する。なお、プレス工程410においてパンチ61が噴孔プレート28を貫通するようにし、研削工程420を省略しても良い。
【0206】
バリ取り工程500は、第1ショットブラスト工程510、第2ショットブラスト工程520、および第3ショットブラスト工程530からなり、これら第1〜第3ショットブラスト工程510〜530により砥粒を投射することによって、下孔のバリ取りを施す。なお、これら第1〜第3ショットブラスト工程510〜530では、上述した実施形態と同様、各工程にてそれぞれ噴孔プレート28に対して表裏交互に砥粒を投射するようになっている。
【0207】
流量調量工程600は、第3ショットブラスト工程530が完了した噴孔プレート28に対し、その噴孔から噴射される流体流量を計測する流量計測工程610と、この流量計測工程610にて計測した流体流量に応じて再度ショットブラスト加工を施す第4ショットブラスト工程620とからなっている。
【0208】
第4ショットブラスト工程620では、流量計測工程610にて計測した流体流量と、内燃機関側の要求により予め設定された目標流量との差に応じて砥粒投射時間を算出し、この算出した砥粒算出時間だけ噴孔プレート28に砥粒を投射するようになっている。もちろん、砥粒投射時間に限らず、砥粒の投射流量、圧力、速度、ノズル距離等の投射条件を算出し、これらを制御しても良いのはもちろんのことである。
【0209】
なお、本例では、第1〜4ショットブラスト工程のそれぞれに対応するよう、噴孔プレート28の順送り方向において、4基の砥粒投射ノズル(図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0210】
そして、第1〜3ショットブラスト工程後、流量計測工程610にて流量計測された噴孔プレートは、第4ショットブラスト工程620に対応する4基目の砥粒投射ノズルを通過する時に、上述の通り補正された砥粒投射時間にて砥粒が投射される。
【0211】
なお、砥粒投射時間の補正については、流量計測工程610にて流量計測された噴孔プレート28(以下、ワークとする)に対する補正だけに限らない。つまり、流量計測されたワークとは別のワークに対する砥粒投射時間を補正しても良い。例えば、流量計測された先行ワークの計測流量結果を、後続ワークの砥粒投射時間に反映するようにしても良い。
【0212】
また、計測流量に応じたショットブラスト加工(つまり、請求項14の流量調量ショットブラスト)は、表裏向きを変えて複数回行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる製造装置の概略構成を表す模式図である。
【図2】第1の実施形態の流体噴射弁の製造方法を表わす模式図であって、流体を噴射する噴孔の加工方法を示すブロック図である。
【図3】図2中の第3ショットブラスト工程において、噴孔と噴孔プレートとの稜線に生じるバリの除去およびこの稜線のR面取り加工を行なう所定稜線加工投射時間に、この所定稜線加工投射時間の経過時に計測した噴孔の流体流量と目標流量としての所定の流体流量との差に応じた流量補正投射時間を加えた投射時間を噴孔プレート上面へ砥粒の投射をする加工方法を示すブロック図である。
【図4】図2中のショットブラスト加工工程において、被加工物である噴孔プレートへ砥粒を投射することで、砥粒投射方向に曲がって倒れている倒れ状態となった稜線を表わす模式図である。
【図5】第1の実施形態の流体噴射弁の製造方法に適用される燃料噴射弁を表わす断面図である。
【図6】図5中の被加工物としての噴孔プレートを備える弁部周りを拡大した断面図である。
【図7】図2中のショットブラスト加工工程において被加工物としての噴孔プレートへ砥粒を投射する加工過程を説明する模式図であって、図7(a)は、噴孔プレートの両面のうち一方方向のみに投射する場合の比較例を表わす模式図、図7(b)は、本発明の実施形態に係わる砥粒の投射方法であって、図7(a)の比較例中の所定投射時間経過後、噴孔プレート面へ投射する砥粒の投射方向の反転を繰返すことを表わす模式図である。
【図8】図2および図3中の第3ショットブラスト工程において、計測する噴孔の流体流量と目標流量として所定の流体流量との差に応じた補正流量投射時間と、補正流量投射時間の砥粒投射によって形成される稜線ダレ量と、流量補正量との関係を表わすグラフである。
【図9】図2および図3中に示すショットブラスト加工工程を各種噴孔形状に適用して形成される稜線ダレ部を表わす断面図である。
【図10】第2の実施形態に係わる製造方法であって、噴孔と噴孔プレートとの稜線に生じるバリの除去およびこの稜線を所定R寸法もしくは所定ダレ量にR面取り加工を行なうショットブラスト加工工程を表わす模式図である。
【図11】第2の実施形態に係わる製造工程のうち、図7中に示すショットブラスト加工工程の前工程である下孔加工工程を表わす模式図である。
【図12】図10中に示すショットブラスト加工工程を、各種噴孔形状に適用して稜線のバリの除去およびR面取り加工を行なう場合の加工過程を説明する模式図であって、図12(b)から図12(d)は本発明の実施形態を好適に適用できる噴孔形状の加工過程を示す模式図、図12(a)は、比較例であって、従来方法が適用可能な噴孔形状の加工過程を示す模式図である。
【図13】第1の変形例に係わる製造方法であって、下孔加工工程をエンドミル加工を用いて行なう場合において、稜線のバリの除去およびR面取り加工を行なう加工過程を示す模式図である。
【図14】第2の変形例に係わる製造方法であって、下孔加工工程を放電加工を用いて行なう場合において、稜線のバリの除去およびR面取り加工を行なう加工過程を示す模式図である。
【図15】第3の変形例に係わる製造工程を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 流体噴射弁
2 被加工物としての流体噴射弁1を構成する噴孔プレート28
2a 噴孔プレート28の展開形状が配置されている帯状薄板部材
2j 噴孔プレート28面に対する垂線
3 砥粒投射手段としての砥粒投射ノズル
31、32、33 独立投射可能な砥粒投射手段(第1ショットブラスト工程310、第2ショットブラスト工程320、および第3ショットブラスト工程330に対応する砥粒投射ノズル)
4 砥粒供給装置
5 電磁弁
6、(61、62、63) 加工治具(パンチ、ダイ、パンチガイド)
7 エンドミル加工のエンドミル
8 放電加工の電極
9 研削加工の砥石
11 フィルタ
14 円筒部材
22 吸引部材
24 圧縮スプリング
25 アーマチュア
26 ノズルニードル(弁部材)
26c 当接部
26e 大径柱体部(薄肉の円筒状体)
28 噴孔プレート
28a 噴孔
28ah、28ab (下孔加工工程200のプレス加工工程210における有底孔の)噴孔の孔内周、パンチ61による有底孔によって噴孔プレート28の表面に押出された凸部
28U、28L (流体が流入する側の)噴孔プレート上面、(流体が流出する側の)噴孔プレート下面
28Ue、28Le 噴孔28aの入口側のエッジ(稜線)、噴孔28aの出口側のエッジ(稜線)
29 弁ボディ
29a 弁座
29d 小径円筒壁面(ニードル支持孔)
31 コイル
100 ショットブラスト装置
200 下孔加工工程
210、220、230 プレス加工工程、エンドミル加工工程、放電加工工程
250 研削加工工程
300 ショットブラスト加工工程
310、320、330 第1ショットブラスト工程、 第2ショットブラスト工程、 第3ショットブラスト工程
331、332、333 エッジ形成仕上げ加工工程、流量補正量判定工程、流量補正整形工程

Claims (19)

  1. 弁ボディの先端部に形成された流体通路の出口に複数の噴孔を有する噴孔プレートを配設して、該噴孔から流体を噴射する流体噴射弁の製造方法において、
    前記噴孔プレートに前記噴孔の下孔を加工する下孔加工工程と、
    前記噴孔プレートに砥粒を投射するショットブラスト加工工程とを備えた噴孔加工方法であって、
    前記ショットブラスト加工工程による前記砥粒を投射する期間を所定投射時間にすることで、前記噴孔から噴射する流体の計量に対応する所定の流体流量に調整することを特徴とする流体噴射弁の製造方法。
  2. 前記ショットブラスト加工工程は、前記噴孔プレートのうち、前記噴孔へ流体が流入する側の噴孔プレート上面に砥粒を投射する第1ショットブラスト工程と、流体が流出する側の噴孔プレート下面に前記砥粒を投射する第2ショットブラスト工程と、前記噴孔プレート上面に再び前記砥粒を投射する第3ショットブラスト工程とを備え、
    前記第3ショットブラスト工程にて投射する前記砥粒の投射時間を、前記所定投射時間に調節することを特徴とする請求項1に記載の流体噴射弁の製造方法。
  3. 前記ショットブラスト加工工程は、前記第1ショットブラスト工程にて投射される前記砥粒によって前記噴孔プレート上面の稜線に生じたバリが流体噴射方向に曲げられ、前記第2ショットブラスト工程にて流体噴射方向とは逆方向に投射される前記砥粒によって前記バリを除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体噴射弁の製造方法。
  4. 前記所定投射時間は、前記稜線のバリ除去および所定R寸法のR面取りを行なう所定稜線加工投射時間に、前記所定稜線加工投射時間の経過時に計測した前記噴孔の流体流量と前記所定の流体流量との差に応じた流量補正投射時間を加えた時間であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流体噴射弁の製造方法。
  5. 前記砥粒を投射する前記流量補正投射時間とは、前記所定R寸法のR面取りが形成された前記稜線に、前記砥粒の再投射による所定稜線ダレ量を形成させることで、前記所定の流体流量に調整する時間であることを特徴とする請求項4に記載の流体噴射弁の製造方法。
  6. 前記砥粒を投射する砥粒投射手段は、前記噴孔プレート上面および前記噴孔プレート下面の少なくとも一方に投射する時間を可変にすることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の流体噴射弁の製造方法。
  7. 前記砥粒投射手段は、前記第1ショットブラスト工程、前記第2ショットブラスト工程、および前記第3ショットブラスト工程の各工程にて、独立して投射可能な手段であって、
    前記噴孔プレートを形成する母材としての帯状の薄板部材に、前記帯状の長手方向に前記噴孔プレートが所定間隔で連続的に配置され、
    前記第1ショットブラスト工程、前記第2ショットブラスト工程、および前記第3ショットブラスト工程に対応する前記砥粒投射手段が、前記帯状薄板部材を横断するように、往復移動が可能であることを特徴とする請求項6に記載の流体噴射弁の製造方法。
  8. 前記帯状薄板部材は、前記長手方向に順送りされており、
    前記第1ショットブラスト工程、前記第2ショットブラスト工程、および記第3ショットブラスト工程に対応する前記砥粒投射手段が、それぞれ、前記帯状薄板部材に配置される異なる前記噴孔プレートに前記砥粒を投射するように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の流体噴射弁の製造方法。
  9. 前記帯状薄板部材を長手方向に順送りするとは、前記第1ショットブラスト工程、前記第2ショットブラスト工程、および記第3ショットブラスト工程に対応する前記砥粒投射手段による前記異なる前記噴孔プレートへの前記砥粒の投射が終了したとき、順送りすることであることを特徴とする請求項8に記載の流体噴射弁の製造方法。
  10. 前記下孔加工工程は、パンチによるプレス加工によって有底孔を形成し、前記噴孔プレートの所定厚さ位置まで研削することによって、前記有底孔により押出された前記噴孔プレート表面の凸部の除去加工を行なうことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の流体噴射弁の製造方法。
  11. 前記有底孔は、前記有底孔の開口部へ向かって拡径するテーパ孔であって、前記有底孔の軸線が、前記噴孔プレートに直交する垂線に対して傾斜していることを特徴とする請求項10に記載の流体噴射弁の製造方法。
  12. 弁ボディの先端部に形成された流体通路の出口に複数の噴孔を有する噴孔プレートを配設して、該噴孔から流体を噴射する流体噴射弁の製造方法において、
    前記噴孔プレートに前記噴孔の下孔を加工する下孔加工工程と、
    前記噴孔プレートに砥粒を投射するショットブラスト加工工程とを備えた噴孔加工方法であって、
    前記噴孔から噴射される流体流量を計測する流量計測工程を有し、
    前記流量計測工程にて計測した流体流量に応じて前記ショットブラスト加工工程の砥粒投射条件を補正することを特徴とする流体噴射弁の製造方法。
  13. 前記ショットブラスト加工工程は、複数のショットブラスト工程からなり、
    これらショットブラスト工程のうち少なくとも一つのショットブラスト工程における砥粒投射条件を、前記流量計測工程にて計測した流体流量に応じて補正することを特徴とする請求項12に記載の流体噴射弁の製造方法。
  14. 前記ショットブラスト加工工程は、前記下孔加工工程にて加工された下孔のバリ取りをするバリ取りショットブラスト工程と、このバリ取りショットブラスト工程にてバリ取りされた噴孔から噴射される流体流量を調量する流量調量ショットブラスト工程とからなり、
    この流量調量ショットブラスト工程の砥粒投射条件を、前記流量計測工程にて計測した流体流量に応じて補正することを特徴とする請求項12または13に記載の流体噴射弁の製造方法。
  15. 前記砥粒投射条件の補正は、前記流量計測工程にて流体流量を計測した噴孔プレートに対するショットブラスト加工工程で行うことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の流体噴射弁の製造方法。
  16. 前記砥粒投射条件の補正は、前記流量計測工程にて流体流量を計測した噴孔プレートとは別の噴孔プレートに対するショットブラスト加工工程で行うことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の流体噴射弁の製造方法。
  17. 前記ショットブラスト加工工程は、前記噴孔プレートのうち、流体が流入する側と流体が流出する側のいずれか一方側の面に砥粒を投射する第1ショットブラスト工程と、前記噴孔プレートのうち他方側の面に砥粒を投射する第2ショットブラスト工程とを備えることを特徴とする請求項1または12に記載の流体噴射弁の製造方法。
  18. 前記下孔加工工程はパンチによるプレス加工を有し、
    前記第1ショットブラスト工程では、前記パンチが前記噴孔プレートに入射する方向とは逆方向から砥粒を投射することを特徴とする請求項17に記載の流体噴射弁の製造方法。
  19. 前記噴孔は、流体の噴射方向を決定する噴孔軸線が流体噴射弁軸に対して傾斜しているもの、および前記噴射方向に拡径するもののいずれか一方の特徴を有することを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の流体噴射弁の製造方法。
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