JP2004091710A - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
熱可塑性樹脂組成物および成形品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004091710A JP2004091710A JP2002257248A JP2002257248A JP2004091710A JP 2004091710 A JP2004091710 A JP 2004091710A JP 2002257248 A JP2002257248 A JP 2002257248A JP 2002257248 A JP2002257248 A JP 2002257248A JP 2004091710 A JP2004091710 A JP 2004091710A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- resin composition
- thermoplastic resin
- molded article
- acid
- glass fiber
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Abstract
【目的】結晶化速度を改良し、成形品の生産性が高く、高品質の成形品が得られるポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物より製造される成形品を提供すること。
【構成】第1発明は、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%と、ガラス繊維0〜50重量%とを含有する熱可塑性樹脂組成物を要旨とし、第2発明は、第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物より製造されてなる成形品を要旨とする。
【効果】上記目的が達成される。
【図面】なし。
【構成】第1発明は、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%と、ガラス繊維0〜50重量%とを含有する熱可塑性樹脂組成物を要旨とし、第2発明は、第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物より製造されてなる成形品を要旨とする。
【効果】上記目的が達成される。
【図面】なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物および成形品に関する。さらに詳しくは、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂(以下、PTTと略称する)の結晶化速度を改良し、射出成形法によって成形品(製品)を製造する際の生産性に優れ、結晶化度の高い成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物、およびこの熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、PTT系樹脂は、優れた弾性回復特性、優れた耐薬品性などから繊維、カーペットなど多くの工業製品に使用されている。最近では、フィルム、シート製造用の材料や、各種の工業部品製造用のエンジニアリングプラスチックとしての用途も検討されている。しかし、成形材料として使用する際には、その結晶化速度が重視される。PTT系樹脂は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に比べると、依然として結晶化速度が遅いという欠点がある。
【0003】
PTT系樹脂は、成形時の結晶化速度が比較的遅いために、射出成形法によって製造した厚肉の成形品では、成形品の外表面側と内部側とで結晶化速度に差が生じる。成形品は全体として結晶化度が不均一になり、耐熱性、機械的特性、寸法安定性などが不均一となり、優れた成形品を得ることは困難である。このため、PTT系樹脂成形品の結晶化度を均一にし、かつ、結晶化速度を速くさせたいという要請がある。
【0004】
成形品の結晶化度を均一にする方法の一つとして、高温で結晶化速度が大きくなる性質を利用し、射出成形金型の温度を高くするという方法がある。しかし、金型温度を高くする方法は、金型温度を高温とするための特別な装置が必要であるばかりでなく、成形サイクルが長くなり生産性が低下するという欠点がある。
成形品の結晶化度を均一にする別の方法として、結晶核剤を添加する方法があるが、一般的に結晶化促進効果が必ずしも充分ではなく、場合によってはPTT系樹脂を分解させて溶融粘度の激しい低下、ひいては機械的物性の低下の原因となる。そのため、押出機によるコンパウンド製造時のストランド切れや、成形品製造時に成形品が割れるなどの問題が発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記課題を解決すべく鋭意研究を続けた結果完成することに至ったものである。すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.結晶化速度が速く、ハイサイクルクル成形も可能なPTT系樹脂組成物を提供すること。
2.優れた機械的物性を有するPTT系樹脂組成物製の成形品を提供すること。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1発明では、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%と、ガラス繊維0〜60重量%とを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0007】
さらに第2発明では、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%と、ガラス繊維0〜60重量%とを含む熱可塑性樹脂組成物を原料として、製造されたものであることを特徴とする、成形品を提供する。
【0008】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてPTT系樹脂とは、テレフタル酸またはエステル形成性誘導体とプロピレングリコールとを主成分とし、重縮合反応により得られる重合体または共重合体を意味する。この重合体には、テレフタル酸の一部を他のジカルボン酸類またはそのエステル誘導体類と置換したものでもよく、プロピレングリコールの一部を他のジオール類および/またはトリオール類と置換したものでもよい。エステル形成性誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0009】
テレフタル酸の一部を置換できるジカルボン酸類としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類およびそれらのエステル誘導体類が挙げられる。
【0010】
プロピレングリコールの一部を置換できるジオール類としては、炭素数2〜20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類などが挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオールなどが挙げられる。トリオール類としては、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0011】
テレフタル酸の一部を置換する際に他のジカルボン酸類の使用量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%未満である。また、プロピレングリコールの一部を置換する際の他のジオール類および/またはトリオール類の使用量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%未満である。
【0012】
本発明に係る樹脂組成物を構成するPTT系樹脂は、通常の製造方法、例えば、溶融重縮合反応、固相重縮合反応、またはこれらを組合せた方法などによって製造できる。例えば、テレフタル酸、または、テレフタル酸と他のジカルボン酸またはそれらのエステル誘導体と、プロピレングリコール、または、プロピレングリコールと他のジオール類および/またはトリオール類とを、触媒の存在下に加熱反応させ得られるテレフタル酸のグリコールエステルを、触媒の存在下で所定の重合度まで重合反応させる方法によって製造することができる。
【0013】
PTT系樹脂は、メチレンクロライドとトリフルオロ酢酸とを、重量比で1対1として混合した混合溶液を用いて、30℃の温度で測定したときの固有粘度が、少なくとも0.4〜1.6の範囲のものが好ましく、0.6〜1.3のものが特に好ましい。
【0014】
本発明に係る樹脂組成物は、上記PTT系樹脂に、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩が配合されてなる。本発明において、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩とは、パラヒドロキシ安息香酸のカルボン酸基およびヒドロキシ基の両方がアルカリ金属イオンに中和されたものを含む化合物のことをいう。ここにアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、中でもナトリウムが最も好ましい。その中和度は少なくとも30%以上、好ましくは70〜100%である。
【0015】
パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩の樹脂組成物に対する含有量は、使用原料のPTT自体の固有粘度、これに含有させる成分を混合した後のPTT固有粘度の指標、および達成すべき結晶化速度の度合によって、適宜変更できるが、本発明に係る樹脂組成物全体に対して0.005〜3重量%の範囲で選ぶものとする。含有量が0.005重量%未満では、結晶化促進効果が不充分であり、また3重量%を超えると、結晶化促進効果が飽和するだけでなく、樹脂組成物の機械的物性が低下することがあり、いずれも好ましくない。含有量の好ましい範囲は0.005〜1.2重量%であり、より好ましくは0.01〜0.6重量%である。
【0016】
本発明に用いるガラス繊維の種類には特に制限はなく、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、S−2ガラスなどのガラス繊維を挙げることができる。これらの中で、アルカリ分が少なく電気的特性が良好な、Eガラス製のガラス繊維が特に好適である。
【0017】
ガラス繊維の平均繊維径には特に制限はないが、1〜100μmの範囲のものが好ましい。平均繊維径1μm未満のガラス繊維は、製造が容易でなく、コスト高になるおそれがあり、ガラス繊維の平均繊維径が100μmを超えると、ガラス繊維の引張強度が低下するおそれがあり、いずれも好ましくない。平均繊維径は、上記範囲の中では2〜50μmが好ましく、3〜30μmがより好ましく、5〜20μmが特に好ましい。
【0018】
ガラス繊維の平均繊維長に特には制限はないが、0.1〜20mmの範囲が好ましい。ガラス繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、ガラス繊維による補強効果が十分に発揮されない恐れがあり、ガラス繊維の平均繊維長が20mmを超えると、PTTとの溶融混練や、PTT樹脂組成物の成形が困難になる恐れがある。平均繊維長は、上記範囲の中では1〜10mmがより好ましい。
【0019】
ガラス繊維を含有させると、成形品は寸法安定性、剛性などに優れたものとなり、好ましい。ガラス繊維は、樹脂組成物全体に対して0〜60重量%の範囲で選ぶのが好ましい。ガラス繊維の含有量が60重量%を超えると、溶融混練や成形が困難になるおそれがある。ガラス繊維含有量の好ましい範囲は、5〜50重量%であり、より好ましくは10〜45重量%である。
【0020】
ガラス繊維は、表面処理剤による処理がなされたものが好ましい。表面処理剤でガラス繊維の表面を処理することにより、PTTとガラス繊維との界面に、強固な接着または結含が生じ、PTTからガラス繊維に応力が伝達されて、ガラス繊維による補強効果を発揮する。表面処理剤には特に制限がなく、例えば、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシランなどのクロロシラン系化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン系化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物や、アクリノレ系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などを挙げることができる。
【0021】
ガラス繊維は、収束剤による処理がなされたものが好ましい。ガラス繊維を収束剤によって処理することにより、ガラス繊維の取り扱い作業性を向上し、ガラス繊維の損傷を防ぐことができる。使用できる収束剤には特に制限がなく、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂エマルジョンなどを挙げることができる。
【0022】
本発明に係る樹脂組成物には、必要に応じて、PTT系樹脂以外の熱可塑性樹脂を添加することができる。また、必要に応じて、クルク、アイオノマー、他の有機金属塩などの結晶核剤を添加することができる。さらに、必要に応じて、カーボン繊維、マイカ、ウィスカーなどの補強材、ガラスビーズ、タルクなどの充填剤、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物などの臭素系化合物や、リン酸エステル、フォスフアゼンなどのリン系化合物などの難燃剤を含有させることができる。またさらに、必要に応じて、本発明に係る樹脂組成物の特性を向上させるための衝撃強度改良材、相溶化成分などのほか、樹脂組成物の効果を損なわない種類の種々の添加剤、例えば、離型剤、滑剤、酸化防止剤などの安定剤、着色剤、紫外線吸取剤を含有させることができる。離型剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して好ましくは0.05〜1重量%である。
【0023】
本発明に係る樹脂組成物を製造するには、溶融混練する方法によることができ、一般に使用されているバンバリーミキサー、押出機、各種のニーダーなどの混練装置によって溶融混練することができる。なお、本発明に係る樹脂組成物を製造する際の構成成分の混練順序は、特に制限されるものではなく、(1)各成分を所定量秤量して混合した混合物とし、得られた混合物を一度に混練する方法、(2)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩を、押出機のシリンダーのサイドフィーダー部分から供給する方法、などのいずれの方法によってもよい。
【0024】
本発明に係る樹脂組成物は、フィルム、シート製造用の材料や、各種の工業部品製造用のエンジニアリングプラスチック材料として使用可能である。適用できる成形方法は、射出成形法、押出成形法、回転成形法、中空成形法、圧縮成形法など、熱可塑性樹脂製の成形材料から成形品を製造する際に適用される成形法が、適用できる。本発明に係る樹脂組成物は、成形品製造時に溶融粘度の低下が少なく、結晶化速度が速く、金型温度を低温に設定して成形でき、成形品製造時の生産性が向上するので、射出成形法で製造するのが好ましい。得られる成形品は、機械的物性が優れたものとなる。成形品としては、OA機器部品、家庭電化製品の部品、さらには、ドアミラースティ、ドアハンドル、ルーフレール、ワイパーアームなどの自動車関連部品が挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これら記載例に限定されるものではない。
【0026】
以下に記載の例で使用した原材料は、次のような特性を有するものである。
(1)A成分:ポリトリメチレンテレフタレート(PTT、シェルケミカルズ社製、商品名:コルテラCP509200)であり、メチレンクロライドとトリフルオロ酢酸とを重量比で1対1で混合した混合物を溶媒とし、温度30℃で測定した際の固有粘度が0.92のものである。
(2)B成分:低分子量ポリエチレン(離型剤、三井化学社製、商品名:HW100P)である。
(3)C成分:パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウム(竹本油脂社製、商品名:MKP−315)である。
(4)D成分:安息香酸ナトリウム(結晶核剤、和光純薬社製、試薬)である。
(5)E成分:ガラス繊維(補強材、日本電気硝子社製、商品名:ECS03T−187/PL)である。
【0027】
[実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例6]
<樹脂組成物の調製>
上記A成分〜E成分を、表−1に記載した割合で秤量し、ブレンダーで混合して混合物とし、得られた混合物を、30mmφの二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30C)を使用し、樹脂組成物の実質温度を270℃として溶融混練してペレット化した。得られたペレットを用いて、射出成形法により成形品を製造した。機械的物性の評価試験用の試験片は、上記のペレットを乾燥機によって120℃の温度で4時間以上乾燥したあと、射出成形機(日本製鋼所社製、型式:J75ED)によって、シリンダー温度を250℃とし、E成分(ガラス繊維)が配合されていない樹脂組成物では金型温度を80℃、E成分が配合されている樹脂組成物では金型温度を20℃にそれぞれ設定して成形した。
【0028】
【表1】
【0029】
<各種評価試験>
上記方法で調製した試験片について、以下に記載の方法で評価試験を行い、結果を表−1に記載した。
(a)結晶化温度{Tc(℃)}:結晶化速度の指標として、結晶化温度{Tc(℃)}を測定した。ペレットから試料を調製し、示差熱量計(セイコー電子工業社製、DSC200)により、室温から20℃/分の速度で昇温して、280℃で3分間保持した後、20℃/分の速度で冷却して、降温過程における結晶化ピーク温度を測定した。Tc(℃)が高いものほど、結晶化速度が速い。
【0030】
(b)溶融粘度(Pa・s):東洋精機製キャピログラフを使用し、270℃の温度でずり速度γ=912s−1に対応する、ペレットの溶融粘度を測定した。
(c)引張強度(MPa)と引張伸度(%):ASTM−D638に準拠して測定した。(d)曲げ弾性率(GPa):ASTM−D790に準拠して測定した。
(e)衝撃強度(J/m):ASTM−D−256に準拠し、ノッチ付きの1/8”試験片についてアイゾット衝撃強度を測定した。
【0031】
【表2】
【0032】
表2より、次のことが明らかとなる。
(1)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例1、実施例2および実施例3)のTcは、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物のTc(179.0℃)に比べて高い。また、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例2、比較例3)に比べ、Tcがより高くなっている。
(2)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例1、実施例2および実施例3)の溶融粘度は、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物に比べて低下しているが、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例2、比較例3)に比べ、低下の度合いが少ない。また、結晶化速度の向上化や粘度低下に伴う破断点伸びと耐衝撃の項目を除き、強度的に結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物と同等レベルにある。
【0033】
【表3】
【0034】
表3より、次のことが明らかとなる。
(3)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例4、実施例5、および実施例6)のTcは、結晶核剤が配合されていない比較例4の樹脂組成物のTc(180.1℃)に比べて高い。また、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例5、比較例6)に比べて、Tcがより効果的に高まっている。
(4)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例1、実施例2および実施例3)の溶融粘度は、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物に比べて低下しているが、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例5、比較例6)に比べ、その低下の度合いがより少ない。また、結晶核剤が配合されていない比較例4の樹脂組成物に比べ、機械物性の引張強度が大幅に改善されている。比較例4(核剤無添加)は結晶化不十分で、非晶質が多いため、引張強度が低く、アイゾット衝撃強度が高いと推定される。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、PTT系樹脂にパラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩を配合しているので、成形時の結晶化速度が速く、十分にかつ均一に結晶化させることができ、優れた機械的物性を有する成形品が得られる。
2.本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、従来の結晶核剤を配合した樹脂組成物に比べて成形時の結晶化速度が速く、低温の金型を使用した成形、ハイサイクル成形などが可能で、成形品を能率良く製造することができる。
3.本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、成形品製造時に溶融粘度低下が少なく、PTT系樹脂自体の優れた機械的特性が犠牲にならない。
4.本発明の第2発明に係る成形品は、成形品は全体として結晶化度が均一になり、耐熱性、機械的物性、寸法安定性などに優れ、商品価値の高いものとなる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物および成形品に関する。さらに詳しくは、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂(以下、PTTと略称する)の結晶化速度を改良し、射出成形法によって成形品(製品)を製造する際の生産性に優れ、結晶化度の高い成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物、およびこの熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、PTT系樹脂は、優れた弾性回復特性、優れた耐薬品性などから繊維、カーペットなど多くの工業製品に使用されている。最近では、フィルム、シート製造用の材料や、各種の工業部品製造用のエンジニアリングプラスチックとしての用途も検討されている。しかし、成形材料として使用する際には、その結晶化速度が重視される。PTT系樹脂は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に比べると、依然として結晶化速度が遅いという欠点がある。
【0003】
PTT系樹脂は、成形時の結晶化速度が比較的遅いために、射出成形法によって製造した厚肉の成形品では、成形品の外表面側と内部側とで結晶化速度に差が生じる。成形品は全体として結晶化度が不均一になり、耐熱性、機械的特性、寸法安定性などが不均一となり、優れた成形品を得ることは困難である。このため、PTT系樹脂成形品の結晶化度を均一にし、かつ、結晶化速度を速くさせたいという要請がある。
【0004】
成形品の結晶化度を均一にする方法の一つとして、高温で結晶化速度が大きくなる性質を利用し、射出成形金型の温度を高くするという方法がある。しかし、金型温度を高くする方法は、金型温度を高温とするための特別な装置が必要であるばかりでなく、成形サイクルが長くなり生産性が低下するという欠点がある。
成形品の結晶化度を均一にする別の方法として、結晶核剤を添加する方法があるが、一般的に結晶化促進効果が必ずしも充分ではなく、場合によってはPTT系樹脂を分解させて溶融粘度の激しい低下、ひいては機械的物性の低下の原因となる。そのため、押出機によるコンパウンド製造時のストランド切れや、成形品製造時に成形品が割れるなどの問題が発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記課題を解決すべく鋭意研究を続けた結果完成することに至ったものである。すなわち、本発明の目的は次のとおりである。
1.結晶化速度が速く、ハイサイクルクル成形も可能なPTT系樹脂組成物を提供すること。
2.優れた機械的物性を有するPTT系樹脂組成物製の成形品を提供すること。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第1発明では、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%と、ガラス繊維0〜60重量%とを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0007】
さらに第2発明では、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%と、ガラス繊維0〜60重量%とを含む熱可塑性樹脂組成物を原料として、製造されたものであることを特徴とする、成形品を提供する。
【0008】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてPTT系樹脂とは、テレフタル酸またはエステル形成性誘導体とプロピレングリコールとを主成分とし、重縮合反応により得られる重合体または共重合体を意味する。この重合体には、テレフタル酸の一部を他のジカルボン酸類またはそのエステル誘導体類と置換したものでもよく、プロピレングリコールの一部を他のジオール類および/またはトリオール類と置換したものでもよい。エステル形成性誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0009】
テレフタル酸の一部を置換できるジカルボン酸類としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類およびそれらのエステル誘導体類が挙げられる。
【0010】
プロピレングリコールの一部を置換できるジオール類としては、炭素数2〜20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類などが挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオールなどが挙げられる。トリオール類としては、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0011】
テレフタル酸の一部を置換する際に他のジカルボン酸類の使用量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%未満である。また、プロピレングリコールの一部を置換する際の他のジオール類および/またはトリオール類の使用量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%未満である。
【0012】
本発明に係る樹脂組成物を構成するPTT系樹脂は、通常の製造方法、例えば、溶融重縮合反応、固相重縮合反応、またはこれらを組合せた方法などによって製造できる。例えば、テレフタル酸、または、テレフタル酸と他のジカルボン酸またはそれらのエステル誘導体と、プロピレングリコール、または、プロピレングリコールと他のジオール類および/またはトリオール類とを、触媒の存在下に加熱反応させ得られるテレフタル酸のグリコールエステルを、触媒の存在下で所定の重合度まで重合反応させる方法によって製造することができる。
【0013】
PTT系樹脂は、メチレンクロライドとトリフルオロ酢酸とを、重量比で1対1として混合した混合溶液を用いて、30℃の温度で測定したときの固有粘度が、少なくとも0.4〜1.6の範囲のものが好ましく、0.6〜1.3のものが特に好ましい。
【0014】
本発明に係る樹脂組成物は、上記PTT系樹脂に、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩が配合されてなる。本発明において、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩とは、パラヒドロキシ安息香酸のカルボン酸基およびヒドロキシ基の両方がアルカリ金属イオンに中和されたものを含む化合物のことをいう。ここにアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、中でもナトリウムが最も好ましい。その中和度は少なくとも30%以上、好ましくは70〜100%である。
【0015】
パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩の樹脂組成物に対する含有量は、使用原料のPTT自体の固有粘度、これに含有させる成分を混合した後のPTT固有粘度の指標、および達成すべき結晶化速度の度合によって、適宜変更できるが、本発明に係る樹脂組成物全体に対して0.005〜3重量%の範囲で選ぶものとする。含有量が0.005重量%未満では、結晶化促進効果が不充分であり、また3重量%を超えると、結晶化促進効果が飽和するだけでなく、樹脂組成物の機械的物性が低下することがあり、いずれも好ましくない。含有量の好ましい範囲は0.005〜1.2重量%であり、より好ましくは0.01〜0.6重量%である。
【0016】
本発明に用いるガラス繊維の種類には特に制限はなく、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、S−2ガラスなどのガラス繊維を挙げることができる。これらの中で、アルカリ分が少なく電気的特性が良好な、Eガラス製のガラス繊維が特に好適である。
【0017】
ガラス繊維の平均繊維径には特に制限はないが、1〜100μmの範囲のものが好ましい。平均繊維径1μm未満のガラス繊維は、製造が容易でなく、コスト高になるおそれがあり、ガラス繊維の平均繊維径が100μmを超えると、ガラス繊維の引張強度が低下するおそれがあり、いずれも好ましくない。平均繊維径は、上記範囲の中では2〜50μmが好ましく、3〜30μmがより好ましく、5〜20μmが特に好ましい。
【0018】
ガラス繊維の平均繊維長に特には制限はないが、0.1〜20mmの範囲が好ましい。ガラス繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、ガラス繊維による補強効果が十分に発揮されない恐れがあり、ガラス繊維の平均繊維長が20mmを超えると、PTTとの溶融混練や、PTT樹脂組成物の成形が困難になる恐れがある。平均繊維長は、上記範囲の中では1〜10mmがより好ましい。
【0019】
ガラス繊維を含有させると、成形品は寸法安定性、剛性などに優れたものとなり、好ましい。ガラス繊維は、樹脂組成物全体に対して0〜60重量%の範囲で選ぶのが好ましい。ガラス繊維の含有量が60重量%を超えると、溶融混練や成形が困難になるおそれがある。ガラス繊維含有量の好ましい範囲は、5〜50重量%であり、より好ましくは10〜45重量%である。
【0020】
ガラス繊維は、表面処理剤による処理がなされたものが好ましい。表面処理剤でガラス繊維の表面を処理することにより、PTTとガラス繊維との界面に、強固な接着または結含が生じ、PTTからガラス繊維に応力が伝達されて、ガラス繊維による補強効果を発揮する。表面処理剤には特に制限がなく、例えば、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシランなどのクロロシラン系化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン系化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物や、アクリノレ系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などを挙げることができる。
【0021】
ガラス繊維は、収束剤による処理がなされたものが好ましい。ガラス繊維を収束剤によって処理することにより、ガラス繊維の取り扱い作業性を向上し、ガラス繊維の損傷を防ぐことができる。使用できる収束剤には特に制限がなく、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂エマルジョンなどを挙げることができる。
【0022】
本発明に係る樹脂組成物には、必要に応じて、PTT系樹脂以外の熱可塑性樹脂を添加することができる。また、必要に応じて、クルク、アイオノマー、他の有機金属塩などの結晶核剤を添加することができる。さらに、必要に応じて、カーボン繊維、マイカ、ウィスカーなどの補強材、ガラスビーズ、タルクなどの充填剤、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物などの臭素系化合物や、リン酸エステル、フォスフアゼンなどのリン系化合物などの難燃剤を含有させることができる。またさらに、必要に応じて、本発明に係る樹脂組成物の特性を向上させるための衝撃強度改良材、相溶化成分などのほか、樹脂組成物の効果を損なわない種類の種々の添加剤、例えば、離型剤、滑剤、酸化防止剤などの安定剤、着色剤、紫外線吸取剤を含有させることができる。離型剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して好ましくは0.05〜1重量%である。
【0023】
本発明に係る樹脂組成物を製造するには、溶融混練する方法によることができ、一般に使用されているバンバリーミキサー、押出機、各種のニーダーなどの混練装置によって溶融混練することができる。なお、本発明に係る樹脂組成物を製造する際の構成成分の混練順序は、特に制限されるものではなく、(1)各成分を所定量秤量して混合した混合物とし、得られた混合物を一度に混練する方法、(2)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩を、押出機のシリンダーのサイドフィーダー部分から供給する方法、などのいずれの方法によってもよい。
【0024】
本発明に係る樹脂組成物は、フィルム、シート製造用の材料や、各種の工業部品製造用のエンジニアリングプラスチック材料として使用可能である。適用できる成形方法は、射出成形法、押出成形法、回転成形法、中空成形法、圧縮成形法など、熱可塑性樹脂製の成形材料から成形品を製造する際に適用される成形法が、適用できる。本発明に係る樹脂組成物は、成形品製造時に溶融粘度の低下が少なく、結晶化速度が速く、金型温度を低温に設定して成形でき、成形品製造時の生産性が向上するので、射出成形法で製造するのが好ましい。得られる成形品は、機械的物性が優れたものとなる。成形品としては、OA機器部品、家庭電化製品の部品、さらには、ドアミラースティ、ドアハンドル、ルーフレール、ワイパーアームなどの自動車関連部品が挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これら記載例に限定されるものではない。
【0026】
以下に記載の例で使用した原材料は、次のような特性を有するものである。
(1)A成分:ポリトリメチレンテレフタレート(PTT、シェルケミカルズ社製、商品名:コルテラCP509200)であり、メチレンクロライドとトリフルオロ酢酸とを重量比で1対1で混合した混合物を溶媒とし、温度30℃で測定した際の固有粘度が0.92のものである。
(2)B成分:低分子量ポリエチレン(離型剤、三井化学社製、商品名:HW100P)である。
(3)C成分:パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウム(竹本油脂社製、商品名:MKP−315)である。
(4)D成分:安息香酸ナトリウム(結晶核剤、和光純薬社製、試薬)である。
(5)E成分:ガラス繊維(補強材、日本電気硝子社製、商品名:ECS03T−187/PL)である。
【0027】
[実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例6]
<樹脂組成物の調製>
上記A成分〜E成分を、表−1に記載した割合で秤量し、ブレンダーで混合して混合物とし、得られた混合物を、30mmφの二軸押出機(日本製鋼所社製、型式:TEX30C)を使用し、樹脂組成物の実質温度を270℃として溶融混練してペレット化した。得られたペレットを用いて、射出成形法により成形品を製造した。機械的物性の評価試験用の試験片は、上記のペレットを乾燥機によって120℃の温度で4時間以上乾燥したあと、射出成形機(日本製鋼所社製、型式:J75ED)によって、シリンダー温度を250℃とし、E成分(ガラス繊維)が配合されていない樹脂組成物では金型温度を80℃、E成分が配合されている樹脂組成物では金型温度を20℃にそれぞれ設定して成形した。
【0028】
【表1】
【0029】
<各種評価試験>
上記方法で調製した試験片について、以下に記載の方法で評価試験を行い、結果を表−1に記載した。
(a)結晶化温度{Tc(℃)}:結晶化速度の指標として、結晶化温度{Tc(℃)}を測定した。ペレットから試料を調製し、示差熱量計(セイコー電子工業社製、DSC200)により、室温から20℃/分の速度で昇温して、280℃で3分間保持した後、20℃/分の速度で冷却して、降温過程における結晶化ピーク温度を測定した。Tc(℃)が高いものほど、結晶化速度が速い。
【0030】
(b)溶融粘度(Pa・s):東洋精機製キャピログラフを使用し、270℃の温度でずり速度γ=912s−1に対応する、ペレットの溶融粘度を測定した。
(c)引張強度(MPa)と引張伸度(%):ASTM−D638に準拠して測定した。(d)曲げ弾性率(GPa):ASTM−D790に準拠して測定した。
(e)衝撃強度(J/m):ASTM−D−256に準拠し、ノッチ付きの1/8”試験片についてアイゾット衝撃強度を測定した。
【0031】
【表2】
【0032】
表2より、次のことが明らかとなる。
(1)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例1、実施例2および実施例3)のTcは、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物のTc(179.0℃)に比べて高い。また、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例2、比較例3)に比べ、Tcがより高くなっている。
(2)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例1、実施例2および実施例3)の溶融粘度は、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物に比べて低下しているが、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例2、比較例3)に比べ、低下の度合いが少ない。また、結晶化速度の向上化や粘度低下に伴う破断点伸びと耐衝撃の項目を除き、強度的に結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物と同等レベルにある。
【0033】
【表3】
【0034】
表3より、次のことが明らかとなる。
(3)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例4、実施例5、および実施例6)のTcは、結晶核剤が配合されていない比較例4の樹脂組成物のTc(180.1℃)に比べて高い。また、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例5、比較例6)に比べて、Tcがより効果的に高まっている。
(4)パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムが配合されてなる樹脂組成物(実施例1、実施例2および実施例3)の溶融粘度は、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物に比べて低下しているが、同重量比の安息香酸ナトリウムが混合されてなる樹脂組成物(比較例5、比較例6)に比べ、その低下の度合いがより少ない。また、結晶核剤が配合されていない比較例4の樹脂組成物に比べ、機械物性の引張強度が大幅に改善されている。比較例4(核剤無添加)は結晶化不十分で、非晶質が多いため、引張強度が低く、アイゾット衝撃強度が高いと推定される。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、PTT系樹脂にパラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩を配合しているので、成形時の結晶化速度が速く、十分にかつ均一に結晶化させることができ、優れた機械的物性を有する成形品が得られる。
2.本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、従来の結晶核剤を配合した樹脂組成物に比べて成形時の結晶化速度が速く、低温の金型を使用した成形、ハイサイクル成形などが可能で、成形品を能率良く製造することができる。
3.本発明の第1発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、成形品製造時に溶融粘度低下が少なく、PTT系樹脂自体の優れた機械的特性が犠牲にならない。
4.本発明の第2発明に係る成形品は、成形品は全体として結晶化度が均一になり、耐熱性、機械的物性、寸法安定性などに優れ、商品価値の高いものとなる。
Claims (2)
- ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%とガラス繊維0〜60重量%とを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
- ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物全体に対して、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属化合物塩0.005〜3重量%と、ガラス繊維0〜60重量%とを含む熱可塑性樹脂組成物を原料として、製造されたものであることを特徴とする、成形品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002257248A JP2004091710A (ja) | 2002-09-03 | 2002-09-03 | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002257248A JP2004091710A (ja) | 2002-09-03 | 2002-09-03 | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004091710A true JP2004091710A (ja) | 2004-03-25 |
Family
ID=32062187
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002257248A Pending JP2004091710A (ja) | 2002-09-03 | 2002-09-03 | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004091710A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012176937A1 (en) * | 2011-06-22 | 2012-12-27 | Yazaki Corporation | Molded article |
-
2002
- 2002-09-03 JP JP2002257248A patent/JP2004091710A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012176937A1 (en) * | 2011-06-22 | 2012-12-27 | Yazaki Corporation | Molded article |
JP2013006906A (ja) * | 2011-06-22 | 2013-01-10 | Yazaki Corp | 成形品 |
CN103649200A (zh) * | 2011-06-22 | 2014-03-19 | 矢崎总业株式会社 | 模制品 |
CN103649200B (zh) * | 2011-06-22 | 2015-05-20 | 矢崎总业株式会社 | 模制品 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2411471B1 (en) | Polyester blends | |
KR20170054382A (ko) | 올레핀-말레산 무수물 공중합체들을 이용한 엔지니어링 플라스틱들의 변성 | |
EP1957581B1 (en) | Poly(trimethylene terephthalate)/poly(alpha-hydroxy acid) molded, shaped articles | |
JP2003020389A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物 | |
WO2014178271A1 (ja) | ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及び成形体 | |
KR102169415B1 (ko) | 폴리사이클로헥실렌디메틸렌 테레프탈레이트 수지 조성물 | |
JP2007145967A (ja) | 繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物およびこれを成形してなる樹脂成形品 | |
KR100846861B1 (ko) | 폴리에스테르 수지 조성물 | |
JP6806596B2 (ja) | 樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物および樹脂ベルト成形体 | |
JP7088915B2 (ja) | 樹脂ベルト材料用熱可塑性ポリエステルエラストマ樹脂組成物および樹脂ベルト成形体 | |
JP2004091710A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 | |
JP2004189977A (ja) | ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物および成形品 | |
EP2652005B1 (en) | Poly(butylene terephthalate) ester compositions, methods of manufacture, and articles thereof | |
JP3626589B2 (ja) | ポリエステル系ブロックポリマー | |
JP2003327806A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 | |
JP3040578B2 (ja) | ポリエステル樹脂組成物 | |
JP3322674B1 (ja) | 機械的物性に優れた飽和ポリエステルの製造方法 | |
WO2004092266A1 (ja) | 生分解性芳香族ポリエステルブレンド組成物から作製される射出成形品およびその製造方法 | |
KR101249577B1 (ko) | 고 고유점도의 난연성 폴리에스테르 수지 및 그 제조방법 | |
JP2004331967A (ja) | 生分解性芳香族ポリエステルブレンド組成物から作製される射出成形品およびその製造方法 | |
CN117120546A (zh) | 阻燃性热塑性聚酯弹性体树脂组合物及由其得到的成型品 | |
CN117083319A (zh) | 热塑性聚酯弹性体、含有该弹性体的树脂组合物及由它们获得的成形品 | |
JP2000186190A (ja) | ポリエステル系重合体組成物 | |
JPH0651836B2 (ja) | ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の射出成形方法 | |
JPH06145479A (ja) | ポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040927 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060810 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060829 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20070116 |