JP2007145967A - 繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物およびこれを成形してなる樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
機械的性質を向上させた繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物およびこれを成形してなる樹脂成形品、具体的には特に、ブレーカー用部品を提供する。
【解決手段】
(A)ポリエステル樹脂100重量部に対し、
(B)少なくともアミノシランとノボラック型エポキシ樹脂とを配合してなる表面処理剤で処理された繊維状充填剤10〜150重量部、
(C)エポキシ化合物を0.1〜3重量部、
(D)難燃剤 1〜50重量部、
を含む繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
例えばブレーカー用材料として満足しなければならない特性として、UL94試験における難燃規格がV−2以上、IEC695−2−1のグローワイヤー試験のGWFI(Glow−Wire Flammability Temperature)において1.6mm厚みで960℃を合格すること、UL746Bの耐トラッキング試験におけるCTI(Comparative Tracking Index)が3mm厚みで好ましくは500V以上などの要求事項がある。これらの要求事項を満足するため大量の難燃剤の配合が行われており、機械的強度バランスが、難燃剤無配合の材料に比べて悪化する状況になっている。
本発明に用いる(C)エポキシ化合物は、(A)ポリエステル樹脂と、(B)繊維状充填剤の集束剤に含まれるノボラック型エポキシ樹脂の両方に対して、反応性や親和性を有する。よって、(A)ポリエステル樹脂と(B)ガラス繊維との密着性が向上し、本発明のガラス繊維強化ポリエステル樹脂組成物は、大幅な強度向上を実現したものである。
上述のとおり、表面処理された繊維やエポキシ化合物をポリエステル樹脂に添加することは、従来から採用されている技術ではあるが、一方の使用では機械的強度が充分ではなかった。しかしながら、驚くべきことに、上記のように両者を併用することにより、機械的強度等の諸性質が同時に著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
(A)ポリエステル樹脂100重量部に対し、
(B)少なくともアミノシランとノボラック型エポキシ樹脂とを配合してなる表面処理剤で処理された繊維状充填剤10〜150重量部、
(C)エポキシ化合物を0.1〜3重量部、
(D)難燃剤 1〜50重量部、
を含む繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物、及びこれを成形してなる樹脂成形品に存する。
本発明に用いる(A)ポリエステル樹脂としては、公知のポリエステル樹脂を用いることができる。好ましくは、ジカルボン酸またはその誘導体と、ジオールとからなるポリエステル樹脂である。 ジカルボン酸またはその誘導体としては、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、および、脂肪族ジカルボン酸、ならびに、これらの低級アルキルまたはグリコールのエステルが好ましく、芳香族ジカルボン酸またはこの低級アルキルあるいはグリコールのエステルがより好ましく、テレフタル酸またはこの低級アルキルエステルがさらに好ましい。これらは、1種または2種以上を併用しても良い。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、オクトフタル酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等が好ましい例として挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましい例として挙げられる。 脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸等が好ましい例として挙げられる。
脂環式ジオールとしては、好ましくは、炭素数2〜20の脂環式ジオールであり、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロールおよび1,4−シクロヘキサンジメチロール等を好ましい例として挙げることができる。 芳香族ジオールとしては、キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等を好ましい例として挙げることができる。 これらは、1種または2種以上を併用しても良い。
なお、本発明でいうPBT樹脂とは、テレフタル酸が全ジカルボン酸成分の50モル%以上を占め、1,4−ブタンジオールが全ジオールの50重量%以上を占めることをいう。さらに、本発明の(A)ポリエステル樹脂としては、機械的性質、耐熱性の点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、70モル%以上のものが好ましく、90モル%以上がより好ましい。一方、ジオール単位中のテトラメチレングリコールの割合は、70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
また、(A)ポリエステル樹脂は、原料供給またはポリマーの払い出し形態について、回分法および連続法のいずれの方法で製造してもよい。さらに、初期のエステル化反応またはエステル交換反応を連続操作で行って、それに続く重縮合を回分操作で行ったり、逆に、初期のエステル化反応またはエステル交換反応を回分操作で行って、それに続く重縮合を連続操作で行う方法もある。
本発明に用いる(B)繊維状充填剤(以下、単に「繊維」ということがある。)は、アミノシランとエポキシ樹脂とを配合してなる表面処理剤で処理された繊維である。これは例えば、アミノシランをカップリング剤として用い、これとエポキシ樹脂とを配合した表面処理剤(以下、集束剤ということがある。)を塗布等によって繊維表面に付着させたものである。
付着させる方法としては、例えば、特開2001−172055号公報、特開昭53−106749号公報等に記載の様に、(A)ポリエステル樹脂等との混練前に処理してもよいし、また混練時に他の成分と同時に混練して表面処理してもよい。この様に表面処理することで少なくとも繊維表面の一部に集束剤が付着し、本発明のポリエステル樹脂組成物の機械的性質および耐加水分解性が向上する。即ち、アミノシランカップリング剤の無機官能基は繊維表面と、アミノシランの有機官能基はエポキシ樹脂のグリシジル基と、エポキシ樹脂のグリシジル基はポリエステル樹脂と、それぞれ反応性に富み、繊維とエポキシ樹脂との界面接着力が向上する。
尚、本発明の繊維強化ポリエステル樹脂組成物において、上述した処理剤が繊維表面に付着しているか否かは、例えば、本発明の繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物の破断面をTEM等により観察することで判断できる。例えば破断面近傍に於いて、ガラス繊維等の繊維表面から樹脂が剥離せずに残っている(繊維表面の平滑性が低い)場合には、処理剤が繊維に付着していると言うことが出来る。
本発明に用いるアミノシランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。集束剤中のアミノ系シランカップリング剤の含有量は、0.1〜8重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
ガラス繊維はとしては、例えば、長繊維タイプ(ロービング)や短繊維タイプ(チョップドストランド)などから選択して用いることができる。繊維径は、6〜16μmが好ましく、6〜13μmがより好ましく、6〜11μmがさらに好ましい。このような繊維径のものを採用することにより、機械的性質をより効果的に改善することができる。
本発明に用いる(C)エポキシ化合物は、特に定めるものではなく、従来公知の任意のものを使用できる。用いるエポキシ化合物としては、例えば、単官能性、二官能性または多官能性の何れでも、さらに、これらの2種類以上の混合物でもよい。特に、二官能性以上のエポキシ化合物、すなわち、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。(C)エポキシ化合物の分子量は、100〜10000のものが好ましい。また、(C)エポキシ化合物は、アルコール、フェノール系化合物またはカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応から得られるグリシジル化合物、あるいは、脂環式エポキシ化合物等が好ましい例として挙げることができる。
グリシジルエーテルは、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテルおよびアリルグリシジルエーテル等が好ましい。ジグリシジルエーテルは、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびビスフェノールAジグリシジルエーテル等が好ましい。脂肪酸グリシジルエステルは、安息香酸グリシジルエステルおよびソルビン酸グリシジルエステル等が好ましい。ジグリシジルエステルは、アジピン酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステルおよびオルトフタル酸ジグリシジルエステル等が好ましい。脂環式ジエポキシ化合物は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等が好ましい。グリシジルイミド化合物は、N−グリシジルフタルイミド等が好ましい。これらの中でも、中でも、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応から得られるグリシジルエーテル化合物、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。さらに、エポキシ当量が100〜200g/eqのビスフェノールAグリシジルエーテルが好ましい。
本発明の繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物に、第4成分として配合される(D)難燃剤は、既知のプラスチック用難燃剤や難燃助剤が使用可能であり、具体的には、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃助剤、リン系難燃剤(ポリリン酸メラミンなど)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミンなど)、金属水酸化物(水酸化マグネシウムなど)である。ハロゲン系難燃剤とアンチモン系難燃助剤の組み合わせが少量の配合で効果が発揮されるので好ましく使用できる。ハロゲン系難燃剤は、分子中にハロゲン原子を有する難燃剤をいい、特に臭素含有率が20重量%以上のものが好ましい。より具体的には、ハロゲン系難燃剤は、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレートおよびブロム化イミドが好ましく、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレートおよび臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン系樹脂がより好ましい。
より好ましくは、溶融混練によるものであり、この場合の加熱温度は、通常230〜290℃である。さらに、混練り時の分解を抑制する為、前記の熱安定剤を用いるのが好ましい。各成分は、付加的成分を含め、混練機に一括でフィードしても順次フィードしてもよい。また、付加的成分を含め各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合したものを用いてもよい。ガラス繊維などの繊維状強化充填材は、押出機の途中から樹脂が溶融した後に添加することにより、破砕を避け、高い特性を発揮させることが出来る。
アミノシランカップリング剤とノボラック型エポキシ樹脂を含む集束剤が付着したガラス繊維は、特開2001−172055号公報に記載の方法に従って作製した。
具体的には、フェノールノボラックタイプエポキシ樹脂4重量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン1重量%、ウレタン系エマルジョン2重量%および脱イオン水93重量%からなる集束剤を作製し、その後、ガラス繊維ストランドに塗布した。このストランドを3mmに切断した。得られたガラス繊維チョップドストランドに対する集束剤の付着量は0.7重量%であった。このようにして得られたガラス繊維は後述の(B−1)であり、フェノールノボラックタイプエポキシ樹脂の代わりにビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂を使用したものが(B−2)である。
上記方法によって得られたガラス繊維、エポキシ化合物などの多官能化合物および難燃剤を下記実施例および比較例に示す比率でポリエステル樹脂に配合し、2軸押出機にて常法に従って混練し、ペレット化した。この樹脂組成物について、住友重機械(株)製射出成型機(型式SG−75MIII)を使用して、シリンダ温度250℃、金型温度80℃の条件で、機械的物性測定用試験片および電気特性測定用試験片を成形し、下記の試験方法により性能評価を行った。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 ノバデュラン5008、固有粘度[η]=0.85)
(B−1)GF1:アミノシランカップリング剤およびノボラックタイプエポキシ樹脂を含有する集束剤が付着したガラス繊維(繊維径13μm)
(B−2)GF2:アミノシランカップリング剤およびビスフェノールAタイプエポキシ樹脂を含有する集束剤が付着したガラス繊維(繊維径13μm)
(C−1)ビスフェノールAのジグリシジルエーテル エポキシ当量:185g/eq(旭電化社製 アデカサイザー EP−17)
(C−2)トリレンジイソシアネート (和光純薬工業社製)
(C−3)ピロメリット酸無水物 (和光純薬工業社製)
(D−1)ペンタブロモベンジルポリアクリレート(ブロムケム・ファーイースト社製 FR−1025)
(D−2)臭素化ポリカーボネートオリゴマー(三菱ガス化学社製 FR−53)
(D−3)テトラブロモビスフェノールA−テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル・コポリマー(阪本薬品工業社製 SR−T5000)
(D−4)臭素化ポリスチレン(マナック社製 プラセフティ1200Z)
(D−5)三酸化アンチモン(森六社製 MIC−3)
(1)引張強度および引張伸度
ISO527に準拠して測定した。強度および伸度の単位は、それぞれMPa、%とした。
(2)曲げ強度および曲げ弾性率
ISO178に準拠して測定した。強度および弾性率の単位は、いずれもMPaとした。
(3)シャルピー衝撃強度
ISO179に準拠して測定した。ノッチ付き強度で、単位は、KJ/m2とした。
(4)難燃性
5×1/2×1/32(インチ)の大きさの試験片を用い、試験法UL−94規格に準じて行った。
(5)GWFI
厚さ1.6mmの試験片を用い、試験法IEC60695−2−12に準拠して測定した。960℃において基準を満足すれば合格とした。また熱棒を離した後の炎の最大高さおよび燃焼時間を示す。
(6)CTI
厚さ1.6mmの試験片を用い、試験法UL946Bに準拠して測定した。なお、印加電圧は50V単位でおこなった。
また、電気電子部品として代表的な成形品であるブレーカー用部品に必要とされる難燃性などの特性を確保しており、機械的強度の改善とあいまって電気電子部品の薄肉化に有効であることがわかる。
Claims (7)
- (A)ポリエステル樹脂100重量部に対し、
(B)少なくともアミノシランとノボラック型エポキシ樹脂とを配合してなる表面処理剤で処理された繊維状充填剤10〜150重量部、
(C)エポキシ化合物を0.1〜3重量部、
(D)難燃剤 1〜50重量部、
を含む繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物。 - 前記(C)エポキシ化合物が、多官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(C)エポキシ化合物が、エポキシ当量100〜200g/eqのビスフェノールAグリシジルエーテルであることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(A)ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物。
- 前記(B)繊維状充填剤が、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の繊維強化難燃ポリエステル樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
- ブレーカー用部品であることを特徴とする、請求項6に記載の樹脂成形品。
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