JP2004189977A - ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物全量基準で、(B)アイオノマー0.05〜15重量%、(C)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩0.005〜2重量%、及び(D)繊維状強化充填材0〜70重量%を含有することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物。
【選択図】 なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物およびその成形品に関する。さらに詳しくは、射出成形法によって成形品(製品)を製造する際の生産性に優れ、結晶化度の高い成形品が得られるポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物、およびそれから得られる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂(以下、PTTと略記する。)は、優れた弾性回復特性、耐薬品性などを有するため、繊維、カーペットなど多くの工業製品に使用されており、最近では、フィルム製造用の材料や、各種の工業部品製造用のエンジニアリングプラスチックとしての用途も検討されている。しかして、成形材料として使用する際には、その結晶化速度が重視される。PTT系樹脂は、同じポリエステル樹脂であるポリブチレンテレフタレート系樹脂に比べると、結晶化速度が遅いとの欠点がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
PTT系樹脂は成形時の結晶化速度が比較的遅いために、射出成形法によって製造した厚肉の成形品では、成形品の外表面側と内部側とで結晶化速度に差が生じる。成形品は全体として結晶化度が不均一になり、耐熱性、機械的特性、寸法安定性などが不均一となり、優れた成形品を得ることは困難である。このため、PTT系樹脂成形品の結晶化度を均一にし、かつ結晶化速度を速くさせたいという要請がある。
【0004】
成形品の結晶化度を均一にする方法の一つとして、熱可塑性樹脂が高温で結晶化速度が大きくなる性質を利用し、射出成形金型の温度を高くする方法がある。しかし、金型温度を高くする方法は、金型温度を高温とするための特別な装置が必要であるばかりでなく、成形サイクルが長くなり生産性が低下するという欠点がある。成形品の結晶化度を均一にする別の方法として、結晶核剤を添加する方法がある。ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下PETと略記する)の場合、結晶化速度を向上させるには、タルク等の微粉末やナトリウム塩等のアルカリ化合物の核剤を添加する事例が多い。特許文献1には、強化充填材を配合したPETに、エチレン・メタクリル酸共重合体のナトリウム塩等の炭化水素酸塩及びネオペンチルアルコールのジベンゾエート等のエステル等を添加した組成物が成形品表面の外観が改善されることが開示されている。また特許文献2には、同じくPETにp−ヒドロキシ安息香酸のジナトリウム塩を添加した組成物の結晶性状が改善されることが開示されている。
【0005】
而してPTT系樹脂の場合、一般的にタルク等の微粉末を添加する方法は、PTT系樹脂の結晶化促進効果が必ずしも十分ではなく、また低分子量のナトリウム塩等のアルカリ化合物結晶核剤を添加する場合、ナトリウム塩等のアルカリ化合物の結晶化促進効果はあるものの、PTT系樹脂の分解・溶融粘度低下を引き起こし、機械物性を低下させる。アイオノマーを結晶の核剤として使用する場合もあるが、PTT系樹脂の溶融粘度の増加や機械物性を低下させることがある。そのため、押出機によるコンパウンド製造時のストランド切れや、成形品製造時に成形品割れ、溶融粘度の増加から生じる成形困難、成形品の機械的強度低下などの問題が発生する怖れがあった。
【0006】
【非特許文献1】
H. H. Chuah, Crystallization Kineticsof Poly(Trimethylene Terephthlate), Polymer Engineering & Science, 41 (2000) 308.
【特許文献1】
特開昭54−158452号公報
【特許文献2】
特公平7―64971号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、ぞの目的は、結晶化速度が速く、ハイサイクル成形も可能で、PTT系樹脂の本来の溶融粘度を大きく変化させずに、成形時に好適な流動性を有し、優れた機械的物性を有する成形品が得られるPTT系樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため検討を重ね、本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は(A)ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物全量基準で、(B)アイオノマー0.05〜15重量%、(C)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩0.005〜2重量%、及び(D)繊維状強化充填材0〜70重量%を含有することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物及びそれから得られる成形品に存する。
【0009】
【発明の実施の態様】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においてPTT系樹脂とは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と1,3−プロパンジオールとを主成分として重縮合反応により得られる重合体または共重合体を意味する。この重合体には、テレフタル酸の一部を他のジカルボン酸類またはそのエステル形成性誘導体類と置換したものでもよく、1,3−プロパンジオールの一部を他のジオール類および/またはトリオール類と置換したものでもよい。エステル形成性誘導体としては、エステル特にジメチルテレフタレートが好ましい。
【0010】
テレフタル酸の一部を置換できるジカルボン酸類としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類およびそれらのエステル誘導体類が挙げられる。テレフタル酸の一部を置換する他のジカルボン酸類の使用量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%未満である。
【0011】
1,3−プロパンジオールの一部を置換できるジオール類としては、炭素数2〜20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類などが挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオールなどが挙げられる。トリオール類としては、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。1,3−プロパンジオールの一部を置換する他のジオール類および/またはトリオール類の使用量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0012】
PTT系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、通常の製造方法、例えば、溶融重縮合反応、固相重縮合反応またはこれらを組合せた方法などによって製造できる。例えば、テレフタル酸、または、テレフタル酸と他のジカルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体と、1,3−プロパンジオール、または、1,3−プロパンジオールと他のジオール類および/またはトリオール類とを、触媒の存在下に加熱反応させ得られるテレフタル酸のグリコールエステルを、触媒の存在下で所定の重合度まで重合反応させる方法によって製造することができる。
本発明に使用されるPTT系樹脂は、メチレンクロライドとトリフルオロ酢酸の混合溶媒(重量比で1対1)を用いて、30℃で測定した時の固有粘度が、0.4〜1.6の範囲のものが好ましく、0.6〜1.3のものが特に好ましい。
【0013】
本発明に使用される(B)アイオノマーとは、エチレンなどのオレフィンおよび/またはスチレンと、不飽和カルボン酸との共重合体であって、そのカルボキシル基の少なくとも一部が、金属イオンで中和されたものをいう。アイオノマーを構成する共重合体は、オレフィン成分および/またはスチレン成分が80〜99モル%、不飽和カルボン酸成分(塩を含む)が1〜20モル%のものであり、中でも好ましいのは前者が80〜95モル%で、後者が5〜20モル%のものである。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。これら共重合体は、これに含まれるカルボキシル基の少なくとも一部が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属などの金属イオンによって中和されたものである。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウムなどが挙げられ、遷移金属としては、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などが挙げられる。好ましくはアルカリ金属が挙げられ、中でもナトリウムが最も好ましい。その中和度は少なくともカルボキシル基の10モル%以上、好ましくは40〜100モル%である。
【0014】
本発明に使用される(C)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩とは、パラヒドロキシ安息香酸のカルボキシル基およびヒドロキシ基の少なくとも一部がアルカリ金属イオンで中和されたものを含む化合物のことをいう。好ましくは、カルボキシル基及びヒドロキシ基の双方が中和されたものであり、その中和度はカルボキシル基及びヒドロキシ基の合計量の少なくとも30モル%以上、好ましくは70〜100モル%である。塩を形成するアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、中でもナトリウムが最も好ましい。
【0015】
本発明樹脂組成物中の(B)アイオノマーと(C)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩含有量は、使用原料のPTTの初期固有粘度、目指す混合後のPTT固有粘度の指標および達成すべき結晶化速度の度合いによって、適宜変更できるが、本発明に係る樹脂組成物全体に対して、アイオノマーが0.05〜15重量%、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩が0.005〜2重量%の範囲から選ばれる。アイオノマーの含有量が0.05重量%以下、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩の含有量が0.005重量%未満では、結晶化促進効果が不充分である。アイオノマーの含有量が15重量%以上、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩の含有量が2重量%を超えると、結晶化促進効果が飽和するだけでなく、樹脂組成物の機械的物性が著しく低下することがあり、いずれも好ましくない。特にパラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩が容易にPTTを分解させる性質をもっており、その添加量を適宜に抑えるべきである。本発明組成物中のアイオノマーの好ましい含有量は、0.05〜15重量%、より好ましくは、0.1〜10重量%、更に好ましくは、0.1〜5重量%である。また、パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩の好ましい含有量は、0.005〜2重量%、より好ましくは0.01〜1重量%、更に好ましくは0.03〜0.6重量%である。
【0016】
本発明樹脂組成物は、上記(A)〜(C)の成分を必須として含有するが、さらに、(D)繊維状強化充填材を含有することが好ましい。本発明に使用される(D)繊維状強化充填材は、樹脂の強化に使用される繊維状の充填材であり、例えば、ガラス繊維やカーボン繊維、セラミック繊維等が挙げられ、好ましくはガラス繊維である。ガラス繊維としては、特に制限はなく、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、S−2ガラスなどのガラス繊維を挙げることができる。これらの中で、アルカリ分が少なく、電気的特性が良好なEガラスのガラス繊維を特に好適に用いることができる。本発明に用いるガラス繊維の平均繊維径に特に制限はないが、1〜100μmであることが好ましく、2〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが特に好ましい。平均繊維径1μm未満のガラス繊維は、製造が容易でなく、コスト高になるおそれがある。ガラス繊維の平均繊維径が100μmを超えると、ガラス繊維の引張強度が低下するおそれがある。本発明に用いるガラス繊維の平均繊維長に特に制限はないが、0.1〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましい。ガラス繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、ガラス繊維による補強効果が十分に発現しないおそれがある。ガラス繊維の平均繊維長が20mmを超えると、PTTとの溶融混練や、PTT樹脂組成物の成形が困難になるおそれがある。
本発明樹脂組成物は(D)繊維状強化充填材を含有することにより、成形品は寸法安定性、剛性などに優れたものとなる。繊維状強化充填材は樹脂組成物全体に対して0〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜45重量%の範囲で含有させることができる。繊維状強化充填材の含有量が70重量%を超えると、溶融混練や成形が困難になるおそれがある。
【0017】
繊維状強化充填材は、表面処理剤による処理がなされていることが好ましい。表面処理剤で処理することにより、PTTと繊維状強化充填材との界面に強固な接着又は結合が生じ、PTTから繊維状強化充填材に応力が伝達されて、繊維状強化充填材による補強効果が発現する。使用する表面処理剤に特に制限はなく、例えば、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシランなどのクロロシラン系化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン系化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物や、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などを挙げることができる。
本発明に用いる繊維状強化充填材は、収束剤による処理がなされていることが好ましい。例えば、ガラス繊維の場合、収束剤で処理することにより、ガラス繊維の取り扱い作業性を向上し、ガラス繊維の損傷を防ぐことができる。使用する収束剤に特に制限はなく、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂エマルジョンなどを挙げることができる。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物の樹脂成分は、PTT系樹脂を主成分とするが、PTT系樹脂以外の熱可塑性樹脂を添加することができる。必要に応じて、更にタルク、他の有機金属塩等の結晶核剤を添加することや、マイカ、ウィスカーなどの補強材、ガラスビーズ、タルクなどの充填剤、難燃剤、例えば臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物などの臭素化系化合物やリン酸エステル、フォスファゼンなどのリン系化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物等を含有させることができる。また、必要に応じて、本発明に係る樹脂組成物の効果を損なわない種類の種々の樹脂添加剤、例えば、離型剤、滑剤、酸化防止剤などの安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、分子鎖末端の変性剤など、樹脂組成物の特性を向上させるための衝撃強度改良材、相溶化成分などを含有させることができる。離型剤の含有量は、樹脂組成物全体に対して好ましくは0.05〜1重量%である。
【0019】
本発明に係る樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではなく、(A)〜(C)成分、及び必要に応じて配合される他の成分を混合し、溶融混練すれば良い。溶融混練には、一般に使用されているバンバリーミキサー、押出機、各種のニーダーなどの混練装置を使用することができる。なお、本発明に係る樹脂組成物を製造する際の構成成分の混練順序は、特に制限されるものではなく、(1)各成分を所定量秤量して混合した混合物を一度に混練する方法、(2) アイオノマーやパラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩、ガラス繊維等を押出機のサイドフィーダーから供給する方法、などのいずれの方法によってもよい。
【0020】
本発明に係る樹脂組成物は、フィルム製造用の材料や、各種の工業部品製造用のエンジニアリングプラスチック材料として使用可能である。本発明樹脂組成物の成形に適用できる成形方法は、射出成形法、押出成形法、回転成形法、中空成形法、圧縮成形法など、熱可塑性樹脂製の成形材料から成形品を製造する際に適用される成形法が、何れも適用できる。本発明に係る樹脂組成物は、成形品製造時に溶融粘度の低下が少なく、結晶化速度が速く、金型温度を低温に設定して成形でき、成形品製造時の生産性が向上するので、射出成形法で製造するのが好ましい。得られる成形品は、機械的物性が優れたものとなる。成形品としては、例えば、OA機器部品、家庭電化製品の部品、ドアミラーステイ、ドアハンドル、ルーフレール、ワイパーアーム等の自動車関連部品などが挙げられる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、これら記載例に限定されるものではない。
以下に記載の例で使用した原材料は以下の通りである。
【0022】
<原材料>
(1)A成分:ポリトリメチレンテレフタレート(PTT);シェルケミカルズ社製、商品名:コルテラCP509200、固有粘度0.92[メチレンクロライド−トリフルオロ酢酸(重量比1対1)混合溶媒中、温度30℃で測定。]
(2)B成分: アイオノマー(エチレン・メタクリル酸共重合体がナトリウムイオンで中和されたもの);三井デュポン社製、商品名:HIMILAN1707。
(3)C成分:パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウム;竹本油脂社製、商品名:MKP−315。
(4)D成分:ガラス繊維;日本電気硝子社製、商品名:ECS03T−187/PL。
(5)E成分:離型剤(低分子量ポリエチレン);三井化学社製、商品名:HW100P。
【0023】
実施例1〜実施例2、比較例1〜比較例6
<樹脂組成物の調製>
(A)〜(C)及び(E)の成分を、表−1に記載の処方で秤量し、タンブラーで10分間混合した。次いで、その混合物とガラス繊維(D成分)を、30mmφの二軸押出機(日本製鋼所(株)製、型式:TEX30C)を使用し、バレル設定温度を250℃として溶融混練してペレット化した。その時、混合物とガラス繊維とは、別々のホッパーから供給された。
得られたペレットにつき、結晶化温度を測定した。また、このペレットを乾燥機によって120℃の温度で6時間以上乾燥したあと、射出成形機(日本製鋼所(株)製、型式:J75ED)によって、シリンダー温度を250℃、金型温度を80℃に設定して、ASTMに準拠した機械的物性評価用の試験片を成形した。この試験片を用いて、下記の評価試験方法により、測定した物性値を表−2に示した。
【0024】
<各種評価試験>
(a)結晶化速度:樹脂組成物ペレットを試料とし、示差熱量計(セイコー電子工業社製、DSC200U)により、室温から20℃/分の速度で昇温して、280℃で3分間保持した後、20℃/分の速度で冷却して、降温過程における結晶化ピーク温度を測定し、結晶化温度Tc(℃)とした。結晶化速度の指標として、Tc(℃)は高いものが好ましい。
【0025】
(b)溶融粘度(Pa・s):東洋精機製キャピログラフを使用し、270℃の温度で、ずり速度γ=912s−1に対応する、ペレットの溶融粘度を測定した。
(c)引張強度(MPa):ASTM−D638に準拠して測定した。
(d)曲げ強度(MPa):ASTM−D790に準拠して測定した。
(e)アイゾット衝撃強度(J/m):ASTM−D−256に準拠し、ノッチ付きの1/8”試験片について測定した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
表2より、次のことが明らかとなる。
(i)アイオノマーとパラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムの両方が配合されている実施例1および実施例2の樹脂組成物のTcは、結晶核剤であるこれら2成分が配合されていない比較例1の樹脂組成物のTc(178.3℃)に比べて、それぞれ13.6℃および16.2℃高く、結晶化速度が速くなっている。また、実施例1,2の組成物はアイオノマーのみが配合された樹脂組成物(比較例2、比較例3および比較例4)やパラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムのみが配合された樹脂組成物(比較例5)に比べても、Tcがより高く、結晶化速度が速くなっている。
【0029】
(ii)実施例1および実施例2の樹脂組成物の溶融粘度(214.2Pa・Secと203.3Pa・Sec)は、比較例1の溶融粘度(204.0Pa・Sec)とほぼ同じであり、(B)、(C)成分を含有する実施例の組成物の流動性が、これらが配合されていない比較例1の樹脂組成物の固有流動性を保っていることがわかる。これに対して、(B)アイオノマーのみが配合されている比較例2、比較例3及び比較例4の溶融粘度の値は、それぞれ223.1、226.9と230.8Pa・Secと高く、流動性が、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物の流動性より悪くなっている。また、パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムのみが配合されている樹脂組成物(比較例5、比較例6)は、溶融粘度の値がそれぞれ170.6と136.8Pa・Secであり、分解による分子量の低下が著しいことが分かる。PTTにアイオノマーを添加することにより、溶融粘度が高くなるのは、アイオノマーに残っているカルボン酸とPTT末端の水酸基との反応による分子架橋や、アイオノマーのカルボン酸ナトリウムとPTTの末端反応基とのイオン架橋などの原因と考えられる。本発明は、アイオノマーとパラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムとを併用することにより、架橋による粘度の上昇と分解による粘度の低下が相殺し、PTTの流動性をあまり変えずに結晶化速度を向上せしめることができる。
【0030】
(iii)アイオノマーとパラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムの両方が配合されてなる実施例1、2の樹脂組成物の機械物性は、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物の機械物性をほぼ維持している。これに対して、アイオノマーまたはパラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムの何れかが単独配合されている比較例2〜6の樹脂組成物の機械物性は、結晶核剤が配合されていない比較例1の樹脂組成物の有する本来の機械物性より低下している。引張強度、曲げ強度、アイゾット衝撃強度のいずれの項目か、または全部の項目が低い値になっている。アイオノマーが単独に混合されている樹脂組成物の機械物性の低下については、アイオノマーとPTTとの非相溶性やエチレン基からなるアイオノマーの固有の相対的に低い機械物性に起因すると考えられる。パラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムをPTTに添加すると、PTTを分解し、機械物性を低下させる傾向が大きい。一方、アイオノマーとパラヒドロキシ安息香酸ジナトリウムとを併用した場合には、両方を少量しか添加しなくても結晶化が促進し、その効果がこれら核剤添加による機械物性の低下を相殺している。
【0031】
【発明の効果】
PTT系樹脂にアイオノマー及びパラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩の両方を配合した本発明の樹脂組成物は、PTT系樹脂自体の流動性を維持し、同時にPTT系樹脂の固有の優れた機械的特性を損なわずに、結晶化速度を著しく促進することができる。そして、結晶化速度の向上により、結晶化が十分にかつ均一に進行した優れた成形品を低温の金型を使用した成形やハイサイクル成形でも能率良く製造することができる。
本発明に係わる成形品は、全体として結晶化度が均一になり、耐熱性、機械的物性、寸法安定性などに優れ、商品価値の高いものとなる。
Claims (4)
- (A)ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する樹脂組成物であって、該樹脂組成物全量基準で、(B)アイオノマー0.05〜15重量%、(C)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩0.005〜2重量%、及び(D)繊維状強化充填材0〜70重量%を含有することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- (B)アイオノマーが、オレフィンおよび/またはスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、そのカルボキシル基の少なくとも一部が、金属イオンで中和されたものである請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- (C)パラヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩が、そのヒドロキシ基及び、またはカルボキシル基の合計量の少なくとも30モル%がアルカリ金属塩を形成しているものである請求項1または2に記載されたポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- 請求項1〜3の何れかに記載のポリトリメチレンテレフタレート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
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- 2002-12-13 JP JP2002362330A patent/JP2004189977A/ja active Pending
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