JP2004091685A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

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Shigemitsu Suzuki
鈴木 茂光
Kazuhiro Tanaka
田中 一宏
Naoya Iwamura
岩村 尚哉
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Abstract

【課題】本発明は、かかる問題点に鑑み、鏡面鮮明性、表面平滑性に優れる光反射用成形品、なかでもランプリフレクター(照明装置用反射鏡)に好適なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)脂肪酸エステル、および(C)ポリオレフィンを配合してなり、(B)成分と(C)成分の合計は、(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部であり、(B)成分および(C)成分の合計に対する(B)成分の比率が10〜90重量%、(C)成分の比率が90〜10重量%であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた表面外観を有する成形品が得られるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物及び成形体に関するものであり、さらに詳しくは、鏡面鮮明性、表面平滑性に優れる光反射用成形品、なかでもランプリフレクター(照明装置用反射鏡)に好適なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す。)は優れた耐熱性、剛性、寸法安定性、および難燃性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などに広く使用されている。特に近年、ランプリフレクターでは、生産性の良さ及び軽量化の観点から熱可塑性樹脂化が進められており、優れた熱剛性を有するPPS樹脂が検討されている。
【0003】
しかしながら、ランプリフレクター等の鏡面を有する成形品に使用する場合、鏡面部分における高い鮮明性、平滑性、及び熱剛性が同時に要求され、PPS樹脂組成物においてもそれらの両立は困難である。特に、アルミニウム等の金属を表面に被覆させて鏡面を形成する際、樹脂を成形後何も表面を処理せずに該金属を蒸着等により被覆させると、成形時に発生したガスの表面付着、表面に形成された充填材に起因する微細な凹凸、あるいは金型転写性が良過ぎて表面に形成された金型に起因する微細な凹凸等により十分な鏡面鮮明性、表面平滑性が得られない問題があり、これらを満足できるPPS樹脂組成物は未だ得られていないのが現状である。
【0004】
この高い鏡面鮮明性、表面平滑性の向上を目的にこれまでにいくつかの検討がなされている。例えば、特開平10−237302号公報、特開平2001−98151号公報には、ポリアリーレンサルファイド樹脂に特定の充填材を配合することにより鏡面鮮明性と熱剛性に優れる組成物が開示されているが、かかる充填材を単に使用するのみでは、樹脂を成形後何も表面処理せずに、樹脂鏡面上にアルミニウム金属を蒸着により被覆させると、ガスの表面付着、微細な凹凸により、樹脂鏡面が薄く曇り十分といえるものではなかった。特開平2001−354855号公報には、ポリアリーレンサルファイド樹脂に脂肪酸の金属塩を配合する組成物が開示されているが、樹脂を成形後何も表面処理せずに、樹脂鏡面上にアルミニウム金属を蒸着により被覆させると、ガスの表面付着、微細な凹凸により、樹脂鏡面が薄く曇るものしか得られなかった。
【0005】
一方目的は異なるが、特公平5−18353号公報、特許第3151823号公報には、ポリアリーレンサルファイド樹脂に特定の脂肪酸エステルを配合することにより金型離型性に優れる組成物が開示されている。しかしながら、これらの組成物は金型転写性が良過ぎて表面に形成された金型に起因する微細な凹凸により、樹脂を成形後何も表面処理せずに、樹脂鏡面上にアルミニウム金属を蒸着により被覆させると、樹脂鏡面が薄く曇り十分といえるものではなかった。また、充填材として炭酸カルシウムを用いた場合、強度、靭性が低下し、金型離型時にスプルーが金型に残る、あるいは製品にひび、割れが生じ十分といえるものではなかった。さらに、特開昭54−47752号公報、特公平5−40777号公報、特開平2002−12762号公報には、ポリアリーレンサルファイド樹脂にエチレンポリマーを配合することにより金型離型性に優れる組成物が開示されているが、金型デポジットが多く連続生産性が十分といえるものではなかった。また、金型転写性が良過ぎて表面に形成された金型に起因する微細な凹凸により、樹脂を成形後何も表面処理せずに、樹脂鏡面上にアルミニウム金属を蒸着により被覆させると、樹脂鏡面が薄く曇り十分といえるものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題点に鑑み、鏡面鮮明性、表面平滑性に優れる光反射用成形品、なかでもランプリフレクター(照明装置用反射鏡)に好適なポリフェニレンスルフィド樹脂組成物および成形体を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、脂肪酸エステル、ポリオレフィン含有PPS樹脂組成物において、脂肪酸エステルとポリオレフィンを一定範囲内の比率・配合量にすることにより、優れた鏡面鮮明性、表面平滑性が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)脂肪酸エステル、および(C)ポリオレフィンを配合してなり、(B)成分と(C)成分の合計は、(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部であり、(B)成分および(C)成分の合計に対する(B)成分の比率が10〜90重量%、(C)成分の比率が90〜10重量%であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(2)(B)脂肪酸エステルが、ステアリン酸のエステル、モンタン酸のエステルから選択される少なくとも1種である上記(1)記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(3)(C)ポリオレフィンがポリエチレンである上記(1)〜(2)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(4)さらに(D)充填材を(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、50〜250重量部を配合してなる上記(1)〜(3)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(5)(D)充填材が、(D1)炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸から選ばれた一種以上の非繊維状充填材である上記(1)〜(4)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(6)(D)充填材が、(D2)繊維状充填材である上記(1)〜(5)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(7)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が樹脂温度320℃、せん断速度10000sec−1における溶融粘度が130Pa・sec以下である上記(1)〜(6)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(8)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物がその表面の少なくとも一部に金属被覆が形成される成形体用である上記(1)〜(7)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
(9)上記(1)〜(8)いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いて製造された成形体。
(10)成形体がその表面の少なくとも一部に金属被覆が形成されたものである上記(1)〜(9)いずれか記載の成形体である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す。)とは、下記構造式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0009】
【化1】
Figure 2004091685
【0010】
耐熱性の点から、好ましくは上記構造式で示される繰り返し単位含む重合体を70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体である。またPPSはその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
【0011】
【化2】
Figure 2004091685
【0012】
本発明で用いられるPPSの溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、測定温度316℃、荷重5000g、滞留時間5min、オリフィス径2.095mm、オリフィス長さ8.00mmの条件にて、JIS K7210に準じて測定したMFRが通常1〜10000g/10min、好ましくは100〜8000g/10min、さらに好ましくは500〜5000g/10minであるのがよい。
【0013】
かかる特性を満たすPPS樹脂は、特公昭45−3368号公報で代表される製造方法により得られる比較的分子量の小さな重合体を得る方法、或いは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などの公知の方法によって製造できる。
【0014】
上記により得られたPPS樹脂は、そのまま使用してもよく、また空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下或は減圧下での熱処理、また、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄を施した上で使用することも可能である。
【0015】
有機溶媒で洗浄する場合、用いる有機溶媒としてはPPSを分解する作用を有しないものであれば特に制限はない。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエ−テル、ジプロピルエ−テル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パ−クロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パ−クロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、ペンタノ−ル、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、フェノ−ル、クレゾ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ルなどのアルコ−ル・フェノ−ル系溶媒、及びベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0016】
洗浄温度についても特に制限はなく、通常、常温〜300℃程度が選択される。酸水溶液で洗浄する場合、用いる酸としてはPPSを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、ケイ酸、炭酸及びプロピル酸などが挙げられる。また、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネ−ト基などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも可能である。
【0017】
本発明で用いる(B)脂肪酸エステルは、脂肪酸とアルコールとのエステル結合による化合物(ただし化合物中にリンを含むものは除く)である。脂肪酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オキシカルボン酸などが挙げられ、これらは飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。炭素数が10〜40の脂肪酸が好ましく、特にステアリン酸、モンタン酸が好ましい。アルコールとしては、ブタノール、オクタノールなどの一価アルコールとエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールが挙げられ、多価アルコールが好ましく、特にエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。好ましい脂肪酸エステルの具体例としては、エチレングリコールジステアレート、グリセリントリステアレート、トリメチロールプロパントリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ポリペンタエリスリトールステアレート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレートオリオマなどが挙げられ、特に好ましい例としてエチレングリコールジモンタネート、トリメチロールプロパントリモンタネート、ジペンタエリスリトールアジピックステアレートオリゴマなどが挙げられる。
【0018】
かかる脂肪酸エステルとしては、通常クラリアントジャパン(株)製“Licowax”E、クラリアントジャパン(株)製“Licomont”ET 132、コグニスジャパン(株)製“Loxiol“VPN960などとして市販されているものを使用することができる。
【0019】
本発明で用いる(C)ポリオレフィンとしては、α−オレフィンの(共)重合体が挙げられるが、特に制限はなく、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンのいずれも用い得るが、高密度ポリエチレンが好ましい。
【0020】
この他酸化ポリエチレンワックスなどを用いることができる。この酸価ポリエチレンワックスは、エチレンの重合により製造されたものでも、高分子量のポリエチレンを熱分解して製造したものもよい。
【0021】
本発明で用いるポリオレフィンの重量平均分子量に特に制限はないが、100〜1000000であるものが好ましく、特に1000〜500000の範囲にあるものが好ましい。
【0022】
かかるポリオレフィンとしては、通常三井化学(株)製“ハイゼックス”3300FPU、クラリアントジャパン(株)製“Licolub”H22、クラリアントジャパン(株)製“Licowax”PED520などとして市販されているものを使用することができる。
【0023】
上記(B)脂肪酸エステル、および(C)ポリオレフィンの合計の配合量は(A)PPS樹脂100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。(B)成分、および(C)成分の配合量が少な過ぎると微細な凹凸、金型離型時の剥離痕の付着により鏡面鮮明性が不十分となる傾向にある。また、金型離型性が十分でないため、金型離型時にスプルーが金型に残る、あるいは製品にひび、割れが生じ好ましくはない。(B)成分、および(C)成分の配合量が多過ぎると成形時に発生したガスの表面付着により鏡面鮮明性が不十分となる傾向にある。また、強度、靭性が低下し、金型離型時にスプルーが金型に残る、あるいは製品にひび、割れが生じ好ましくはない。
【0024】
上記(B)脂肪酸エステルおよび(C)ポリオレフィンの比率は、(B)成分および(C)成分の合計100重量%に対する(B)成分の比率10〜90重量%、(C)成分の比率90〜10重量%であり、鏡面鮮明性、表面平滑性、離型性、強度、靭性、金型デポジットのバランスを得る上で(B)成分が15〜85重量%、(C)成分が85〜15重量%であることが好ましく、(B)成分が20〜80重量%、(C)成分が80〜20重量%であることがより好ましい。(B)成分の比率が多過ぎても少な過ぎても鏡面鮮明性、表面平滑性、離型性、強度、靭性が不十分の傾向にあり好ましくない。
【0025】
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物にはさらに優れた鏡面鮮明性、表面平滑性と熱剛性のバランスを得る目的で(D)充填材を配合することが好ましい。
【0026】
上記(D)充填材としては、特に制限はなく、非繊維状、繊維状のものを使用することができる。さらにこれらは2種以上を併用して使用することもできる。
【0027】
(D1)非繊維状充填材は鏡面鮮明性、表面平滑性と熱剛性のバランスを得るのに有効である。上記(D1)非繊維状充填材としては、粒状、板状、不定形状など繊維状以外のいずれの形状であってもよい。非繊維状充填材の具体例としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、湿式法ホワイトカーボン、ワラステナイト、ゼオライト、アルミナシリケート無水ケイ酸、含水ケイ酸などのケイ酸塩とケイ酸、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、などの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、グラファイト、カーボンブラック、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、ドロマイトなどが挙げられる。好ましいものとしては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ、湿式法ホワイトカーボン、ワラステナイト、ゼオライト、アルミナシリケート無水ケイ酸、含水ケイ酸などのケイ酸塩とケイ酸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、などの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩などが挙げられる。とりわけ好ましいものとしては、炭酸カルシウムが挙げられる。さらにこれらは2種以上を併用して使用することもできる。
【0028】
(D2)繊維状充填材は鏡面鮮明性、表面平滑性と熱剛性のバランスをさらに向上させる目的で使用するのが好ましく、特に上記(D1)非繊維状充填材と併用することが、より一層優れた効果を奏する点で好ましい。上記(D2)繊維状充填材としては、特に制限はなく、柱状、針状のものを使用することができる。
【0029】
上記(D2)繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維(ワラステナイト繊維)、硫酸カルシウム繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維などが挙げられる。好ましいものとしては、炭酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維(ワラステナイト繊維)、硫酸カルシウム繊維が挙げられる。好ましいものとしては、炭酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維(ワラステナイト繊維)、チタン酸カリウム繊維、硼酸アルミニウムウィスカが挙げられる。とりわけ好ましいものとしては、ケイ酸カルシウム繊維(ワラステナイト繊維)が挙げられる。さらにこれらは2種以上を併用して使用することもできる。
【0030】
なかでも(D2)繊維状充填材の形状は、特に、アスペクト比:L(平均繊維長)/D(平均繊維径)が1.5/1以上、かつD(平均繊維径)が7μm以下であることが好ましく、より好ましくはアスペクト比が2/1〜100/1の範囲で、かつD(平均繊維径)が6μm以下であり、より好ましくはアスペクト比が2.5/1〜30/1の範囲で、かつD(平均繊維径)が5μm以下の範囲内である場合には、鏡面鮮明性、表面平滑性と熱剛性のバランスをさらに向上させる上で好ましい。
【0031】
上記(D2)の形状は、走査型電子顕微鏡を用いて繊維を観察し、そのなかの任意の1000本を測定したものである。
【0032】
上記(D)充填材の配合量は(A)PPS樹脂100重量部に対して、通常50〜250重量部、好ましくは70〜200重量部、より好ましくは80〜180重量部である。上記範囲内である場合には、鏡面鮮明性、表面平滑性と熱剛性のバランスを得る上で好ましい。また、(D1)非繊維状充填材および(D2)繊維状充填材を併用する場合の各成分の比率は(D1)および(D2)成分の合計に対し、(D1)30〜99重量%、(D2)70〜1重量%であることが好ましく、特に(D1)50〜95重量%、(D2)50〜5重量%であることが好ましい。
【0033】
さらに、本発明のPPS樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物、アミノ基含有アルコキシシラン化合物、ウレイド基含有アルコキシシラン化合物、イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物などの有機シラン化合物、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重宿合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。
【0034】
本発明で用いられる樹脂組成物の調製方法は特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリ−ミキサ−、ニ−ダ−、ミキシングロ−ルなど通常公知の溶融混合機に供給して280〜450℃の温度で混練する方法などを例として挙げることができる。また、原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練しさらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。 本発明のPPS樹脂組成物において特に高度な鏡面鮮明性が必要とされる場合、通常、キャピラリーとしてL(長さ)/D(径)=10/1(mm)を用い、測定温度320℃、滞留時間8minの条件で測定し、累乗関数による近似式より、せん断速度10000sec−1における溶融粘度の算出値が130Pa・sec以下となるように調整されることが好ましい。なかでも溶融粘度は110Pa・sec以下であることが好ましく、100Pa・sec以下であることがさらに好ましい。下限に特に制限はないが、30Pa・sec以上であることが好ましい。樹脂温度320℃、せん断速度10000sec−1における溶融粘度が130Pa・secを越えるとせん断発熱により発生するガスの表面付着が多くなり、鏡面鮮明性が不十分となる傾向にある。かかる溶融粘度範囲のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、(A)PPS樹脂のMFRが500〜5000g/10minの範囲、(D)充填材の配合量を(A)PPS100重量部に対し、180重量部以下とすることにより、製造することができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、吹込成形、射出圧縮成形など各種公知の成形法により成形することが可能であり、なかでも射出成形により成形することが好ましい。
【0036】
上記成形体は鏡面鮮明性、表面平滑性が優れるため、成形体の表面の少なくとも一部に金属被膜が形成された成形品とする場合、優れた表面外観が得られるため特に有用である。かかる金属被膜は成形体の表面に直接形成されていてもよくまた、表面をUV処理、コロナ放電処理、プラズマ処理した後、金属被膜を形成してもよい。さらに、成形体の表面上にアンダーコートまたは耐熱性が良好な透明保護膜(例えば、塗装タイプのトップコート、プラズマ重合膜、蒸着膜等)を形成した後、金属被膜を形成してもよく、また、表面をUV処理、コロナ放電処理、プラズマ処理し、アンダーコートまたは耐熱性が良好な透明保護膜(例えば、塗装タイプのトップコート、プラズマ重合膜、蒸着膜等)を形成した後、金属被膜を形成してもよい。さらに、金属被膜の上に耐熱性が良好な透明保護膜(例えば、塗装タイプのトップコート、プラズマ重合膜、蒸着膜等)を形成してもよい。
【0037】
本発明の樹脂組成物および成形体は、鏡面鮮明性、表面平滑性に優れることから外観、鏡面性を要求される各種機器部品等に特に好適に使用することができる。また、好ましい態様においてはさらに熱剛性にも優れていることから外観および熱剛性を要求される部品、特にランプリフレクター(照明装置用反射鏡)、ダウンライトカバー(照明器具などの反射体)、光ディスク、記憶媒体基板、記憶媒体、鏡等の光反射用成形品、なかでもランプリフレクター(照明装置用反射鏡)に極めて適している。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0039】
実施例および比較例の中で述べられる鏡面鮮明性、溶融粘度、荷重たわみ温度、引張強度、引張伸びは各々次の方法に従って測定した。
【0040】
[鏡面鮮明性の評価]
シリンダー温度320℃、金型温度150℃、金型鏡面部分の面粗度0.03sの条件で成形した鏡面角板(70mm×100mm×3mm厚)を日立(株)製真空蒸着装置にて、アルミを蒸着し、目視で確認して、鏡面に曇りがないものを優、曇りがあるものを不可とした。
【0041】
[溶融粘度の測定]
150℃の雰囲気で3時間予備乾燥したペレットを東洋精機(株)製キャピログラフ1Bにて、キャピラリーとしてL(長さ)/D(径)=10/1(mm)を用い、測定温度320℃、滞留時間8minの条件で測定し、累乗関数による近似式より、せん断速度10000sec−1における溶融粘度を算出した。
【0042】
[荷重たわみ温度(DTUL)の測定]
シリンダー温度320℃、金型温度150℃にて、7mm(幅)×6.5mm(厚み)×126mm(長さ)の曲げ試験片を成形し、低荷重(0.45MPa)の条件下でASTMD648に準じて測定したものである。この値が高いほど熱剛性が優れていることになる。
【0043】
[引張強度、引張伸びの測定]
シリンダー温度320℃、金型温度150℃にて、ASTMD638に準じたASTM1号ダンベルを成形し、23℃の温度条件下で測定したものである。この値が高いほど強度、靭性が優れていることになる。
【0044】
[参考例]
(PPSの製造)
攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.205kg(2.5モル)およびNMP5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.719kg(25.3モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。冷却後、反応生成物を温水で5回洗浄し、次に100℃に加熱されNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに熱湯で数回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾過のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥して、MFR1000(g/10min)のPPSを得た。
【0045】
なお、上記MFRは測定温度316℃、荷重5000g、滞留時間5min、オリフィス径2.095mm、オリフィス長さ8.00mmの条件にて、JISK7210に準じて測定した。
【0046】
[実施例および比較例で用いた配合材]
脂肪酸エステル(B)
B−1:エチレングリコールジモンタネート(クラリアントジャパン(株)製:Licowax E)
B−2:トリメチロールプロパントリモンタネート(クラリアントジャパン(株)製:Licomont ET 132)
B−3:ジペンタエリスリトールアジピックステアレートオリゴマ(コグニスジャパン(株)製:Loxiol VPN960)
ポリオレフィン(C)
C−1:ポリエチレン(三井化学(株)製:ハイゼックス3300FPU)
C−2:酸化分岐ポリエチレン(クラリアントジャパン(株)製:Licolub H22)
充填材(D)
非繊維状充填材(D1)
D1−1:沈降炭酸カルシウム、平均粒径0.9μm(白石工業(株)製:Vigot−HT)
D1−2:重質炭酸カルシウム、平均粒径1.2μm(丸尾カルシウム(株)製:カルテックス5)
繊維状充填材(D2)
D2−1:ワラステナイト、平均繊維長(L)15μm、平均繊維径(D)2.9μm(大塚化学(株)製:バイスタルK)
実施例1〜12
前述のようにして用意したPPS、脂肪酸エステル(B)、ポリオレフィン(C)、非繊維状充填材(D1)、繊維状充填材(D2)を表1に示す割合でドライブレンドした後、350℃の押出条件に設定したスクリュ−式押出機により溶融混練後ペレタイズした。得られたペレットを乾燥後、前述した方法で所定の特性評価用試験片を得た。得られた試験片およびペレットについて、前述した方法で鏡面鮮明性、溶融粘度、荷重たわみ温度、引張強度、引張伸びを測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
ここで得られた樹脂組成物および成形体は、鏡面鮮明性、表面平滑性に優れ、ランプリフレクターとして好適なものであった。
【0048】
比較例1
脂肪酸エステル(B)およびポリオレフィン(C)の配合量が範囲未満の以外は、実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンドした後、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
脂肪酸エステル(B)およびポリオレフィン(C)の配合量が範囲未満の場合、ここで得られた樹脂組成物および成形体は、金型転写性が良過ぎて表面に形成された金型に起因する微細な凹凸により、鏡面に曇りが生じた。結果として、鏡面鮮明性の低いものであり実用レベルではなかった。
【0050】
比較例2
脂肪酸エステル(B)およびポリオレフィン(C)の配合量が範囲を越える以外は、実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンドした後、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0051】
脂肪酸エステル(B)およびポリオレフィン(C)の配合量が範囲を越える場合、ここで得られた樹脂組成物および成形体は、成形時に発生したガスの表面付着により、鏡面に曇りが生じた。結果として、鏡面鮮明性の低いものであり実用レベルではなかった。
【0052】
比較例3〜8
脂肪酸エステル(B)またはポリオレフィン(C)を単独で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンドした後、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0053】
脂肪酸エステル(B)またはポリオレフィン(C)を単独で用いた場合、ここで得られた樹脂組成物および成形体は、金型転写性が良過ぎて表面に形成された金型に起因する微細な凹凸により、鏡面に曇りが生じた。結果として、鏡面鮮明性の低いものであり実用レベルではなかった。
【0054】
比較例9〜10
脂肪酸エステル(B)およびポリオレフィン(C)の比率が範囲外以外は、実施例1と同様にして、表2に示す割合でドライブレンドした後、溶融混練、ペレタイズ、成形、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
脂肪酸エステル(B)およびポリオレフィン(C)の比率が範囲外の場合、ここで得られた樹脂組成物および成形体は、金型転写性が良過ぎて表面に形成された金型に起因する微細な凹凸により、鏡面に曇りが生じた。結果として、鏡面鮮明性の低いものであり実用レベルではなかった。
【0056】
【表1】
Figure 2004091685
【0057】
【表2】
Figure 2004091685
【0058】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物および成形体は、鏡面鮮明性、表面平滑性に優れていることから外観を要求される部品、その表面に金属被膜が形成される成形品、特に光反射用成形品、なかでもランプリフレクター(照明装置用反射鏡)に極めて適している。

Claims (10)

  1. (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B)脂肪酸エステル、および(C)ポリオレフィンを配合してなり、(B)成分と(C)成分の合計は、(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部であり、(B)成分および(C)成分の合計に対する(B)成分の比率が10〜90重量%、(C)成分の比率が90〜10重量%であるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. (B)脂肪酸エステルが、ステアリン酸のエステル、モンタン酸のエステルから選択される少なくとも1種である請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. (C)ポリオレフィンがポリエチレンである請求項1〜2いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. さらに(D)充填材を(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、50〜250重量部を配合してなる請求項1〜3いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. (D)充填材が、(D1)炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、ケイ酸から選ばれた一種以上の非繊維状充填材である請求項1〜4いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. (D)充填材が、(D2)繊維状充填材である請求項1〜5いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物が樹脂温度320℃、せん断速度10000sec−1における溶融粘度が130Pa・sec以下である請求項1〜6いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  8. ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物がその表面の少なくとも一部に金属被覆が形成される成形体用である請求項1〜7いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いて製造された成形体。
  10. 成形体がその表面の少なくとも一部に金属被覆が形成されたものである請求項9記載の成形体。
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