JP2004087913A - 銅メッキセラミックス基板およびその製造方法ならびに銅メッキセラミックス基板を備えた熱電モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】下地金属膜と銅メッキ膜との間の密着力を高めて、半田付けや高温使用においても銅メッキ膜が膨れたり剥離することがない銅メッキセラミックス基板を提供する。
【解決手段】本発明の銅メッキセラミックス基板10は、セラミックス基板11の表面に真空成膜により形成された下地金属膜12と、この下地金属膜12の上に連続真空成膜により形成された銅スパッタ膜13と、この銅スパッタ膜13の上に形成された銅メッキ膜14とを備えようにしている。下地金属11をセラミックス基板上に真空成膜した場合、下地金属11が微粒子化して、セラミックス基板11表面の凹凸形状に沿って緻密に形成される。このため、セラミックス基板11と下地金属12との接触面積が大きくなるとともに、アンカー効果により密着力が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の銅メッキセラミックス基板10は、セラミックス基板11の表面に真空成膜により形成された下地金属膜12と、この下地金属膜12の上に連続真空成膜により形成された銅スパッタ膜13と、この銅スパッタ膜13の上に形成された銅メッキ膜14とを備えようにしている。下地金属11をセラミックス基板上に真空成膜した場合、下地金属11が微粒子化して、セラミックス基板11表面の凹凸形状に沿って緻密に形成される。このため、セラミックス基板11と下地金属12との接触面積が大きくなるとともに、アンカー効果により密着力が向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス基板の表面に銅メッキ膜が形成された銅メッキセラミックス基板に係り、特に、半田付け等における衝撃熱で、セラミックス基板と銅メッキ膜の膨れや剥離が生じにくい銅メッキセラミックス基板、および、その製造方法、ならびに、この銅メッキセラミックス基板を備えた熱電モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セラミックス基板上に配線用金属層を形成する方法として、セラミックス基板上に直接銅箔を接合する方法、セラミックス基板上に銀、金、銅、ニッケルなどの導電性ペーストを印刷法その他の方法で塗布する方法、セラミックス基板上にコバルト、ニオブ、タンタル、チタン、鉄−ニッケル−クロム合金、モリブデン、タングステンなどの金属薄膜を蒸着法などにより形成した後に、形成された金属薄膜に銅メッキを施す方法等が知られている。
【0003】
ここで、セラミックス基板上に直接銅箔を接合した銅セラミックス基板としては、図3に示すように、セラミックス基板31の表面に銅箔32を接着剤等により接着した銅セラミックス基板30が知られている。この銅セラミックス基板30においては、銅箔32を微細なパターンに形成すると、セラミックス基板31と銅箔32との密着強度が不足して、半田付けや高温使用において銅箔32が膨れたり剥離したりするという欠点があった。
【0004】
また、セラミックス基板上に導電性ペーストを塗布した導電セラミックス基板としては、図4に示すように、セラミックス基板41の表面に導電性ペースト42を塗布した導電セラミックス基板40が知られている。この導電セラミックス基板40においては、導電性ペースト42を構成する銀、金、銅、ニッケルなどの金属粒子の粒径が大きいために、導電性ペースト42を構成する金属粒子とセラミックス基板41の表面の凹凸部との接触面積が非常に小さいものとなる。このため、アンカー効果が劣るために、密着力は非常に弱くなって、半田付けや高温使用において導電性ペースト42が剥離したりするという欠点があった。また、導電性ペースト42は銀、金、銅、ニッケルなどの金属粒子以外に導電性を有さないバインダーを含有しているため、電気伝導性が低いという欠点もあった。
【0005】
さらに、セラミックス基板上に蒸着法などにより金属薄膜を形成した後に、銅メッキを施した銅メッキセラミックス基板としては、図5に示すように、セラミックス基板51の表面にクロムなどの金属からなる下地金属薄膜52を真空蒸着法などにより形成した後、この下地金属薄膜52の上に銅メッキ膜53を形成した銅メッキセラミックス基板50が知られている。この銅メッキセラミックス基板50においては、下地金属薄膜52を形成するクロムは真空蒸着により微粒子となるため、セラミックス基板51の表面の凹凸面との接触面積が格段に大きくなる。これにより、アンカー効果が強力となって、セラミックス基板51と下地金属薄膜52との密着力は向上する。
【0006】
しかしながら、クロムは親水性が強いのに対して銅は親油性が強いため、クロムと銅は互いに反発し合うこととなる。このため、クロムと銅の密着力が低下するので、クロムからなる下地金属薄膜上に直接、銅メッキを施すことは困難となる。また、空気中の酸素によりクロムは酸化されるため、銅メッキ膜との境界部には酸化膜が介在するようになる。これによっても、クロムと銅の密着力は低下することとなる。また、セラミックス基板に直接銅を蒸着すると、銅の粒子は大きいため、接触面積が小さくなって密着力が低下する。
【0007】
そこで、クロムからなる下地金属薄膜の上に金の薄膜層を形成し、この金の薄膜層の上に銅メッキ膜を形成した銅メッキセラミックス基板が、特開2001−130986号公報にて提案されるようになった。この特開2001−130986号公報にて提案された銅メッキセラミックス基板においては、図6に示すように、セラミックス基板61の表面にクロムなどの金属からなる下地金属薄膜62を真空蒸着法などにより形成した後、この下地金属薄膜62の上に金の薄膜層63を真空蒸着法などにより形成するようにしている。そして、この金の薄膜層63の上に銅メッキ膜64を形成して銅メッキセラミックス基板60を形成するようにしている。
【0008】
この場合は、金は非常に安定な金属であるため、大気中において酸化されないことに起因して、次工程の銅メッキ工程において金の薄膜層の上に析出される銅との間の密着力を低下させるような不純物を形成することがない。これにより、半田付けや高温使用において銅メッキ膜が膨れたり剥離することが防止できるようになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、金と銅とは異種金属であるために、金と銅との密着力は十分ではなく、半田付けや高温使用において銅メッキ膜が金の薄膜層から膨れたり剥離するという問題を生じた。また、下地金属膜となるクロムの薄膜層を形成した後、再度、金の薄膜層を形成するようにしている。このため、クロムの薄膜層の表面に不純物となる酸化膜が形成されるようになって、下地金属膜となるクロムと金の薄膜層との密着強度が低下するという問題も生じた。この結果、金の薄膜層が下地金属膜となるクロムの薄膜層から膨れたり剥離するという問題を生じた。
【0010】
また、単に、真空蒸着法により下地金属膜となるクロムをセラミックス基板に蒸着するだけであるため、下地金属膜となるクロムがセラミックス基板に拡散することがない。このため、下地金属膜となるクロムとセラミックス基板との間の密着強度も向上しないという問題も生じた。さらに、金の薄膜層を形成すると、金は高価な金属であるためにこの種の銅メッキセラミックス基板が高価になるという問題も生じた。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、下地金属膜と銅メッキ膜との間の密着力を高めて、半田付けや高温使用においても銅メッキ膜が膨れたり剥離することがない銅メッキセラミックス基板を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の銅メッキセラミックス基板は、セラミックス基板の表面に真空成膜により形成された下地金属膜と、この下地金属膜の上に連続真空成膜により形成された銅膜と、この銅膜の上に形成された銅メッキ膜とを備えようにしている。下地金属をセラミックス基板上に真空成膜した場合、下地金属が微粒子化して、セラミックス基板表面の凹凸形状に沿って緻密に形成される。このため、セラミックス基板と下地金属との接触面積が大きくなるとともに、アンカー効果により密着力が向上する。
【0013】
そして、真空成膜した下地金属膜の上に真空を破らずに連続的に銅膜が成膜されているため、下地金属膜の表面が酸化されたり不純物が付着したりすることがない。これにより、下地金属膜と銅膜との界面における密着力も向上する。そして、この真空成膜した銅膜の上に配線用導体としての銅メッキ膜を形成しているので、これらの銅膜と銅メッキ膜とは同一金属であるため、これらの間の密着力は高くなる。これにより、セラミックス基板と下地金属膜との界面、下地金属膜と銅膜との界面および銅膜と銅メッキ膜との界面は強固に結合していることとなる。さらに、金を使用する必要がないので、安価な銅メッキセラミックス基板が得られる。
【0014】
この場合、下地金属膜の膜厚が300Å未満であるとセラミックス基板と下地金属膜との密着力が向上しないため、下地金属膜の膜厚は300Å以上であるのが望ましい。また、銅膜の膜厚が2000Å未満であると下地金属膜と銅膜との密着力が向上しないため、銅膜の膜厚は2000Å以上であるのが望ましい。
なお、下地金属膜はクロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケルーリン合金(NiP)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co)、インバー(Fe−36%Ni)、コバール(Fe−Ni−Co)から選択される金属またはこれらの合金、あるいはこれらの複合層で形成されているのが望ましい。
また、セラミックス基板としては、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミナ(AlN)、炭化珪素(SiC)、酸化ベリウム(BeO)、窒化シリコン(Si3N4)のいずれかから選択して用いるのが望ましい。
【0015】
また、本発明の銅メッキセラミックス基板の製造方法は、セラミックス基板の表面に下地金属膜を真空成膜法により形成する下地金属膜形成工程と、下地金属膜を形成する際の真空状態を保持したままで下地金属膜の上に銅膜を連続真空成膜法により形成する銅膜形成工程と、成膜された銅膜をホトリソグラフィーにより所定の配線パターンにパターンニングするホトリソグラフィー工程と、所定の配線パターンにパターンニングされた銅膜の上に銅メッキ膜を形成する銅メッキ膜形成工程とを備えるようにしている。
【0016】
このように、下地金属膜と銅膜を連続真空成膜すると、下地金属膜と銅膜の界面に酸化物や不純物が介在することがなくなるので、密着強度が高い銅メッキセラミックス基板が得られるようになる。また、下地金属膜と銅膜は、ホトリソグラフィー技術を用いて所定の導体パターンにパターンニングされるので、微細な配線を形成することが可能になる。
【0017】
この場合、銅メッキ膜形成工程の後に真空中にて150℃以上の温度で10分間以上加熱する熱処理工程を備えるようにすると、下地金属膜がセラミックス基板の焼結助剤などからなる粒界に拡散するようになるため、セラミックス基板と下地金属膜との密着力がさらに高くなる。また、熱処理により各金属膜が形成される際に生じた応力が緩和されるようになるので、さらに密着力が高くなる。なお、真空成膜法としは、スパッタリング法、真空蒸着法、有機金属気相法(MOCVD法)、レーザアブレージョン法、イオンプレーティング法のいずれかの方法であるのが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明の一実施の形態を図1に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。なお、図1は本発明の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【0019】
1.銅メッキセラミックス基板
本発明の銅メッキセラミックス基板10は、図1に示すように、アルミナ基板(例えば、96%Al2O3)11の表面にスパッタリング法からなる真空成膜により形成されたクロム(Cr)からなる下地金属膜12と、このクロムからなる下地金属膜12の上に、スパッタリング法からなる連続真空成膜により形成された銅(Cu)スパッタ膜13と、この銅スパッタ膜13の上に形成された銅メッキ膜14とを備えている。
【0020】
ついで、上述のように構成される銅メッキセラミックス基板10の製造方法を以下に説明する。まず、96%Al2O3からなるアルミナ基板(例えば、厚みが0.3mmで、幅が76.2mmで、長さが76.2mmのもの)11を用意し、これを洗浄液で充分に洗浄した後、乾燥させた。一方、図示しない連続真空スパッタリング装置を用意し、このスパッタリング装置内の所定の位置に、洗浄、乾燥した96%Al2O3からなるアルミナ基板11を配置した。この後、スパッタリング装置内に連結された真空ポンプを作動して、スパッタリング装置内を真空状態(例えば、9.3×10−5Pa)に保持した。
【0021】
ついで、スパッタリング装置内にアルゴン(Ar)ガスを導入した後、スパッタリング装置内の所定の位置に配置されたCrターゲットとアルミナ基板11との間に直流高電圧を印加した。これにより、イオン化したアルゴンはターゲット(Cr)に衝突して、はじき飛ばされたターゲット物質(Cr)はアルミナ基板11付着して成膜されることとなる。ついで、ターゲット物質(Cr)が成膜されたアルミナ基板11を所定の位置に移動させた後、再度、スパッタリング装置内を真空状態(例えば、9.3×10−5Pa)に保持した。
【0022】
この後、スパッタリング装置内にアルゴン(Ar)ガスを、再度、導入した後、スパッタリング装置内の所定の位置に配置されたCuターゲットとアルミナ基板11との間に直流高電圧を印加した。これにより、イオン化したアルゴンはターゲット(Cu)に衝突して、はじき飛ばされたターゲット物質(Cu)はアルミナ基板11に付着して成膜されることとなる。この結果、アルミナ基板11の表面にCrからなる下地金属膜12が成膜され、このCrからなる下地金属膜12の上にCuスパッタ膜13が連続成膜されることとなる。
【0023】
この場合、下地金属膜12の上にCuスパッタ膜13が成膜される際には、真空状態が保持されたまま連続真空成膜がなされることとなるので、下地金属膜12の上に酸化膜や不純物層が形成されることはない。ついで、この基板11をスパッタリング装置内から取り出した。そして、Cuスパッタ膜13が成膜された基板11に所定の導体パターンが形成されるようにホトリソグラフィー技術によりレジストをパターンニングした。ついで、図示しないメッキ槽内に配置して、レジストがパターンニングされていないCuスパッタ膜13上に銅メッキを施した。
【0024】
これにより、Crからなる下地金属膜12の上にCuスパッタ膜13が形成され、かつCuスパッタ膜13の上にCuメッキ膜14が形成されることとなる。この場合、Cuメッキ膜14の上にさらにニッケルメッキあるいは金メッキを施すようにすると、Cuメッキ膜14の耐食性が向上する。ついで、先に塗布したレジストを除去した後、レジストが除去された部位のCuスパッタ膜13および下地金属膜12をエッチングにより除去した。この後、この基板11を150℃の温度で30分間熱処理した。これにより、図1に模式的に示す銅メッキセラミックス基板10が得られることとなる。
【0025】
ここで、Crからなる下地金属膜12の膜厚が300Åで、Cuスパッタ膜13の膜厚が2000Åで、Cuメッキ膜14の膜厚が40Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例1の基板A1とした。同様に、基板A1とCuスパッタ膜13とCuメッキ膜14の膜厚が等しく、下地金属膜12の膜厚が250Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例2の基板A2とし、下地金属膜12の膜厚が200Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例3の基板A3とした。また、基板A1と下地金属膜12とCuメッキ膜14の膜厚が等しく、Cuスパッタ膜13の膜厚が1500Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例4の基板A4とし、Cuスパッタ膜13の膜厚が1000Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例5の基板A5とした。
【0026】
また、アルミナ基板11の上に直接、膜厚が2000ÅのCuスパッタ膜13を形成し、このCuスパッタ膜13の上に膜厚が40ÅのCuメッキ膜14を形成した銅メッキセラミックス基板10を比較例1の基板Xとした。さらに、アルミナ基板11の上に膜厚が300ÅのCrからなる下地金属膜12を形成し、この下地金属膜12の上に直接、膜厚が40ÅのCuメッキ膜14を形成した銅メッキセラミックス基板10を比較例2の基板Yとした。ついで、これらの各基板A1,A2,A3,A4,A5,X,Yを用いて、ピール強度試験(引き剥がし試験)を行うと下記の表1に示すような結果が得られた。
【0027】
なお、ピール強度試験は、銅メッキセラミックス基板10のアルミナ基板11の上に形成された下地金属膜12および(または)Cuスパッタ膜13を介して形成されたCuメッキ膜14を基板11から直角方向に所定の速度で、アルミナ基板11または下地金属膜12またはCuスパッタ膜13から引き剥がした(ピール)ときの破壊強度(kN/m)を測定する試験を示しており、この数値が大きい場合は、アルミナ基板11と下地金属膜12とCuスパッタ膜13とCuメッキ膜14との接合が強固であることを意味する。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1の結果から明らかなように、基板X(アルミナ基板11上に下地金属膜12を形成しないで、直接、Cuスパッタ膜13を形成し、この上にCuメッキ膜14を形成したもの)、および基板Y(アルミナ基板11上に下地金属膜12を形成し、この上に直接Cuメッキ膜14を形成したもの)はピール強度が小さいことが分かる。これに対して、アルミナ基板11上に下地金属膜12が形成した後、この上にCuスパッタ膜13を形成し、さらにCuメッキ膜14を形成した基板A1,A2,A3,A4,A5はピール強度が大きいことが分かる。
【0030】
このことから、アルミナ基板11上に下地金属膜12を形成し、かつこの上にCuスパッタ膜13を形成し、さらにこれらの上にCuメッキ膜14を形成する必要があることが分かる。この場合、基板A2,A3のように下地金属膜12の膜厚が250Å以下であるとピール強度が小さく、また、基板A4,A5のようにCuスパッタ膜13の膜厚が1500Å以下であるとピール強度が小さくなるので、基板A1のように下地金属膜12の膜厚が300Å以上で、Cuスパッタ膜13の膜厚が2000Å以上にするのが望ましい。
【0031】
2.セラミックス基板材料の検討
上述した例においては、セラミックス基板としてアルミナ(96%Al2O3)基板11を用いる例について説明したが、他のセラミックス基板材料を用いた場合のピール強度との関係についても検討した。ここで、セラミックス基板材料として窒化アルミニウム(AlN)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Bとした。同様に、炭化ケイ素(SiC)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Cとした。
【0032】
同様に、酸化ベリリウム(BeO)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Dとした。同様に、窒化ケイ素(Si3N4)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Eとした。ついで、これらの各基板B,C,D,Eを用いて、上述と同様にこれらの各基板B,C,D,Eのピール強度を測定すると下記の表2に示すような結果が得られた。なお、下記の表2には、上述した基板A1の結果についても併せて示している。
【0033】
【表2】
【0034】
上記表2の結果から明らかなように、アルミナ(96%Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ベリリウム(BeO)、窒化ケイ素(Si3N4)などのセラミックス基板材料に関わりなく、ピール強度が大きい銅メッキセラミックス基板10が得られることが分かる。このことから、セラミックス基板材料としては、アルミナ(96%Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ベリリウム(BeO)、窒化ケイ素(Si3N4)などから適宜選択して用いればよいということができる。
【0035】
3.下地金属膜の検討
また、上述した例においては、下地金属膜12を形成する金属としてクロム(Cr)を用いる例について説明したが、Cr以外の金属についても検討した。ここで、下地金属膜12を形成する金属としてチタン(Ti)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Fとした。同様に、タングステン(W)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Gとした。同様に、ニッケルリン合金(NiP)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Hとした。
【0036】
同様に、ニオブ(Nb)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Iとした。同様に、モリブデン(Mo)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Jとした。同様に、アルミニウム(Al)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Kとした。同様に、スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Lとした。
【0037】
同様に、インバー(Fe−36%Ni)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Mとした。同様に、コバール(Fe−Ni−Co)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Nとした。ついで、これらの各基板F,G,H,I,J,K,L,M,Nを用いて、上述と同様にこれらの各基板F,G,H,I,J,K,L,M,Nのピール強度を測定すると下記の表3に示すような結果が得られた。なお、下記の表3には、上述した基板A1の結果についても併せて示している。
【0038】
【表3】
【0039】
上記表3の結果から明らかなように、下地金属膜12を形成する金属としてCr,Ti,W,NiP,Nb,Mo,Al,スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co),インバー(Fe−36%Ni),コバール(Fe−Ni−Co)を用いると、ピール強度が大きい銅メッキセラミックス基板10が得られることが分かる。このことから、下地金属膜12を形成する金属としては、Cr,Ti,W,NiP,Nb,Mo,Al,スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co),インバー(Fe−36%Ni),コバール(Fe−Ni−Co)などから適宜選択して用いればよいということができる。あるいは、これらの金属に限ることなく、これらの金属の合金もしくはこれらの金属の複合層を形成するようにしても良い。
【0040】
4.熱処理温度の検討
また、上述した例においては、銅メッキ後に150℃の温度で30分間熱処理する例について説明したが、熱処理温度と熱処理時間の熱処理条件についても以下に検討した。ここで、銅メッキ後に、250℃の温度で30分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Oとした。同様に、250℃の温度で10分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Pとした。同様に、150℃の温度で60分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Qとした。
【0041】
同様に、150℃の温度で10分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Rとした。同様に、100℃の温度で60分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Sとした。さらに、銅メッキ後に熱処理しなかった銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを比較例3の基板Zとした。ついで、これらの各基板O,P,Q,R,S,Zを用いて、上述と同様にこれらの各基板O,P,Q,R,S,Zのピール強度を測定すると下記の表4に示すような結果が得られた。なお、下記の表4には、上述した基板A1の結果についても併せて示している。
【0042】
【表4】
【0043】
上記表4の結果から明らかなように、銅メッキ後に熱処理を行わなかった基板Zのピール強度が極めて小さいことが分かる。また、銅メッキ後に熱処理を行っても、基板Sのように熱処理温度が低かったり、あるいは基板R,Pのように熱処理時間が短かった場合は、ピール強度がそれほど向上しないことが分かる。これに対して、基板O,Q,A1のように、熱処理温度が150℃以上で、熱処理時間が30分以上であると、ピール強度が向上することが分かる。
【0044】
これは、銅メッキ後に熱処理を行うと、Crからなる下地金属が96%Al2O3基板11の焼結助剤(例えば、CaO,MgO,SiO2)からなる粒界に拡散するために、基板11と下地金属膜12との間の密着力が高まったためと考えられる。また、熱処理により下地金属膜12と銅スパッタ膜13との間の応力、および銅スパッタ膜13と銅メッキ膜14との間の応力が緩和されて、さらに密着力が向上したと考えられる。一方、熱処理温度が低かったり、熱処理時間が短かった場合は、下地金属の基板11中への拡散が不十分であったり、応力緩和が不十分なために、密着力が十分でなく、ピール強度が向上しなかったと考えられる。
【0045】
5.熱電モジュール
ついで、上述のようにして作製された銅メッキセラミックス基板10を用いて熱電モジュール20を作製する一例を図2に基づいて以下に説明する。なお、図2は本実施の形態の熱電モジュールを模式的に示す図であり、図2(a)は表面に銅メッキ膜よりなる導電パターンが形成された銅メッキセラミックス基板を示す上面図である。また、図2(b)はこれらの一対の銅メッキセラミックス基板の間にP型半導体化合物素子とN型半導体化合物素子とを接合して形成した熱電モジュールの要部を模式的に示す断面図である。
【0046】
本実施の形態の熱電モジュール20は、図2に示すように、一対のセラミックス基板21,21と、P型半導体化合物素子25と、N型半導体化合物素子26とから構成されている。セラミックス基板21は、上述した銅メッキセラミックス基板10と同様に形成されたものであって、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミナ(AlN)、炭化珪素(SiC)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化ケイ素(Si3O4)などのセラミックス基板21の上に、Cr,Ti,W,NiP,Nb,Mo,Al,スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co),インバー(Fe−36%Ni),コバール(Fe−Ni−Co)などの金属あるいは合金からなる下地金属膜22が形成されている。
【0047】
また、この下地金属膜22の上には、これと連続する真空成膜によりCuスパッタ膜23が形成されており、このCuスパッタ膜23の上に、ホトリソグラフィー技術により所定の導体パターンが形成されるようにレジストがパターンニングされて、レジストがパターンニングされていないCuスパッタ膜23上に銅メッキ膜24が形成されて、レジストが除去された後、レジストが除去された部位のCuスパッタ膜23および下地金属膜22をエッチングにより除去されて、図2に模式的に示す導体パターンが形成されている。この場合、Cuメッキ膜24の上にニッケルメッキあるいは金メッキを施すと耐食性が向上する。なお、この基板21も150℃以上の温度で30分以上の時間だけ熱処理されている。
【0048】
ここで、P型半導体化合物素子25およびN型半導体化合物素子26の両端部にはニッケルメッキが施されている。この場合、P型半導体化合物素子25の端部と、N型半導体化合物素子26の端部と、銅メッキ膜24よりなる導体パターンとは融点(Tm)が約240℃であるSnSb合金ハンダからなる接合材27によりハンダ付けされて接合されている。これにより、P型半導体化合物素子25とN型半導体化合物素子26とは交互に配置され、多数の銅メッキ膜24からなる導体パターンとによりP,N,P,Nの順に電気的に直列に接続された熱電モジュール20あるいは電子クーラー(TEC:Thermo Electric Cooler)が構成されることとなる。
【0049】
【発明の効果】
上述したように、本発明の銅メッキセラミックス基板10においては、セラミックス基板11の表面に真空成膜により形成された下地金属膜12と、この下地金属膜12の上に連続真空成膜により形成された銅膜13と、この銅膜13の上に形成された銅メッキ膜14とを備えているので、セラミックス基板11表面の凹凸形状に沿って微粒子化した下地金属膜12が緻密に形成されることとなる。このため、セラミックス基板11と下地金属12との接触面積が大きくなるとともに、アンカー効果により密着力が向上する。また、連続真空成膜により下地金属膜12の上に銅膜13が形成されているので、下地金属膜12の表面が酸化されたり不純物が付着したりすることがない。
【0050】
これにより、下地金属膜12と銅膜13との界面における密着力も向上するとともに、この連続真空成膜による銅膜13と導体パターンとしての銅メッキ膜14とは同一金属であるので、これらの銅膜13と銅メッキ膜14との界面の密着力も高くなる。この結果、セラミックス基板11と下地金属膜12との界面、下地金属膜12と銅膜13との界面および銅膜13と銅メッキ膜14との界面はそれぞれ強固に結合した基板となる。そして、金を使用する必要がないので、結果として、セラミックス基板に形成された各金属膜がセラミックス基板から剥離することがない銅メッキセラミックス基板を安価に得られるようになる。
【0051】
なお、上述した実施の形態においては、下地金属膜および銅膜を形成する真空成膜法としてスパッタリング法を適用する例について説明したが、真空成膜法としては、スパッタリング法以外に、真空蒸着法、有機金属気相法(MOCVD法)、レーザアブレージョン法、イオンプレーティング法等の他の真空成膜法を適用して下地金属膜および銅膜を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の熱電モジュールを模式的に示す図であり、図2(a)は表面に銅メッキ膜よりなる導電パターンが形成された銅メッキセラミックス基板を示す上面図であり、図2(b)はこれらの一対の銅メッキセラミックス基板の間にP型半導体化合物素子とN型半導体化合物素子とを接合して形成した熱電モジュールの要部を模式的に示す断面図である。
【図3】従来例の銅セラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図4】従来例の導電セラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図5】従来例の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図6】従来例の他の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
10…銅メッキセラミックス基板、11…アルミナ基板、12…下地金属膜、13…銅スパッタ膜、14…銅メッキ膜、20…熱電モジュール、21…セラミックス基板、22…下地金属膜、23…銅スパッタ膜、24…銅メッキ膜、25…P型半導体化合物素子、26…N型半導体化合物素子、27…接合材(ハンダ)
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス基板の表面に銅メッキ膜が形成された銅メッキセラミックス基板に係り、特に、半田付け等における衝撃熱で、セラミックス基板と銅メッキ膜の膨れや剥離が生じにくい銅メッキセラミックス基板、および、その製造方法、ならびに、この銅メッキセラミックス基板を備えた熱電モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、セラミックス基板上に配線用金属層を形成する方法として、セラミックス基板上に直接銅箔を接合する方法、セラミックス基板上に銀、金、銅、ニッケルなどの導電性ペーストを印刷法その他の方法で塗布する方法、セラミックス基板上にコバルト、ニオブ、タンタル、チタン、鉄−ニッケル−クロム合金、モリブデン、タングステンなどの金属薄膜を蒸着法などにより形成した後に、形成された金属薄膜に銅メッキを施す方法等が知られている。
【0003】
ここで、セラミックス基板上に直接銅箔を接合した銅セラミックス基板としては、図3に示すように、セラミックス基板31の表面に銅箔32を接着剤等により接着した銅セラミックス基板30が知られている。この銅セラミックス基板30においては、銅箔32を微細なパターンに形成すると、セラミックス基板31と銅箔32との密着強度が不足して、半田付けや高温使用において銅箔32が膨れたり剥離したりするという欠点があった。
【0004】
また、セラミックス基板上に導電性ペーストを塗布した導電セラミックス基板としては、図4に示すように、セラミックス基板41の表面に導電性ペースト42を塗布した導電セラミックス基板40が知られている。この導電セラミックス基板40においては、導電性ペースト42を構成する銀、金、銅、ニッケルなどの金属粒子の粒径が大きいために、導電性ペースト42を構成する金属粒子とセラミックス基板41の表面の凹凸部との接触面積が非常に小さいものとなる。このため、アンカー効果が劣るために、密着力は非常に弱くなって、半田付けや高温使用において導電性ペースト42が剥離したりするという欠点があった。また、導電性ペースト42は銀、金、銅、ニッケルなどの金属粒子以外に導電性を有さないバインダーを含有しているため、電気伝導性が低いという欠点もあった。
【0005】
さらに、セラミックス基板上に蒸着法などにより金属薄膜を形成した後に、銅メッキを施した銅メッキセラミックス基板としては、図5に示すように、セラミックス基板51の表面にクロムなどの金属からなる下地金属薄膜52を真空蒸着法などにより形成した後、この下地金属薄膜52の上に銅メッキ膜53を形成した銅メッキセラミックス基板50が知られている。この銅メッキセラミックス基板50においては、下地金属薄膜52を形成するクロムは真空蒸着により微粒子となるため、セラミックス基板51の表面の凹凸面との接触面積が格段に大きくなる。これにより、アンカー効果が強力となって、セラミックス基板51と下地金属薄膜52との密着力は向上する。
【0006】
しかしながら、クロムは親水性が強いのに対して銅は親油性が強いため、クロムと銅は互いに反発し合うこととなる。このため、クロムと銅の密着力が低下するので、クロムからなる下地金属薄膜上に直接、銅メッキを施すことは困難となる。また、空気中の酸素によりクロムは酸化されるため、銅メッキ膜との境界部には酸化膜が介在するようになる。これによっても、クロムと銅の密着力は低下することとなる。また、セラミックス基板に直接銅を蒸着すると、銅の粒子は大きいため、接触面積が小さくなって密着力が低下する。
【0007】
そこで、クロムからなる下地金属薄膜の上に金の薄膜層を形成し、この金の薄膜層の上に銅メッキ膜を形成した銅メッキセラミックス基板が、特開2001−130986号公報にて提案されるようになった。この特開2001−130986号公報にて提案された銅メッキセラミックス基板においては、図6に示すように、セラミックス基板61の表面にクロムなどの金属からなる下地金属薄膜62を真空蒸着法などにより形成した後、この下地金属薄膜62の上に金の薄膜層63を真空蒸着法などにより形成するようにしている。そして、この金の薄膜層63の上に銅メッキ膜64を形成して銅メッキセラミックス基板60を形成するようにしている。
【0008】
この場合は、金は非常に安定な金属であるため、大気中において酸化されないことに起因して、次工程の銅メッキ工程において金の薄膜層の上に析出される銅との間の密着力を低下させるような不純物を形成することがない。これにより、半田付けや高温使用において銅メッキ膜が膨れたり剥離することが防止できるようになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、金と銅とは異種金属であるために、金と銅との密着力は十分ではなく、半田付けや高温使用において銅メッキ膜が金の薄膜層から膨れたり剥離するという問題を生じた。また、下地金属膜となるクロムの薄膜層を形成した後、再度、金の薄膜層を形成するようにしている。このため、クロムの薄膜層の表面に不純物となる酸化膜が形成されるようになって、下地金属膜となるクロムと金の薄膜層との密着強度が低下するという問題も生じた。この結果、金の薄膜層が下地金属膜となるクロムの薄膜層から膨れたり剥離するという問題を生じた。
【0010】
また、単に、真空蒸着法により下地金属膜となるクロムをセラミックス基板に蒸着するだけであるため、下地金属膜となるクロムがセラミックス基板に拡散することがない。このため、下地金属膜となるクロムとセラミックス基板との間の密着強度も向上しないという問題も生じた。さらに、金の薄膜層を形成すると、金は高価な金属であるためにこの種の銅メッキセラミックス基板が高価になるという問題も生じた。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、下地金属膜と銅メッキ膜との間の密着力を高めて、半田付けや高温使用においても銅メッキ膜が膨れたり剥離することがない銅メッキセラミックス基板を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の銅メッキセラミックス基板は、セラミックス基板の表面に真空成膜により形成された下地金属膜と、この下地金属膜の上に連続真空成膜により形成された銅膜と、この銅膜の上に形成された銅メッキ膜とを備えようにしている。下地金属をセラミックス基板上に真空成膜した場合、下地金属が微粒子化して、セラミックス基板表面の凹凸形状に沿って緻密に形成される。このため、セラミックス基板と下地金属との接触面積が大きくなるとともに、アンカー効果により密着力が向上する。
【0013】
そして、真空成膜した下地金属膜の上に真空を破らずに連続的に銅膜が成膜されているため、下地金属膜の表面が酸化されたり不純物が付着したりすることがない。これにより、下地金属膜と銅膜との界面における密着力も向上する。そして、この真空成膜した銅膜の上に配線用導体としての銅メッキ膜を形成しているので、これらの銅膜と銅メッキ膜とは同一金属であるため、これらの間の密着力は高くなる。これにより、セラミックス基板と下地金属膜との界面、下地金属膜と銅膜との界面および銅膜と銅メッキ膜との界面は強固に結合していることとなる。さらに、金を使用する必要がないので、安価な銅メッキセラミックス基板が得られる。
【0014】
この場合、下地金属膜の膜厚が300Å未満であるとセラミックス基板と下地金属膜との密着力が向上しないため、下地金属膜の膜厚は300Å以上であるのが望ましい。また、銅膜の膜厚が2000Å未満であると下地金属膜と銅膜との密着力が向上しないため、銅膜の膜厚は2000Å以上であるのが望ましい。
なお、下地金属膜はクロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケルーリン合金(NiP)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co)、インバー(Fe−36%Ni)、コバール(Fe−Ni−Co)から選択される金属またはこれらの合金、あるいはこれらの複合層で形成されているのが望ましい。
また、セラミックス基板としては、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミナ(AlN)、炭化珪素(SiC)、酸化ベリウム(BeO)、窒化シリコン(Si3N4)のいずれかから選択して用いるのが望ましい。
【0015】
また、本発明の銅メッキセラミックス基板の製造方法は、セラミックス基板の表面に下地金属膜を真空成膜法により形成する下地金属膜形成工程と、下地金属膜を形成する際の真空状態を保持したままで下地金属膜の上に銅膜を連続真空成膜法により形成する銅膜形成工程と、成膜された銅膜をホトリソグラフィーにより所定の配線パターンにパターンニングするホトリソグラフィー工程と、所定の配線パターンにパターンニングされた銅膜の上に銅メッキ膜を形成する銅メッキ膜形成工程とを備えるようにしている。
【0016】
このように、下地金属膜と銅膜を連続真空成膜すると、下地金属膜と銅膜の界面に酸化物や不純物が介在することがなくなるので、密着強度が高い銅メッキセラミックス基板が得られるようになる。また、下地金属膜と銅膜は、ホトリソグラフィー技術を用いて所定の導体パターンにパターンニングされるので、微細な配線を形成することが可能になる。
【0017】
この場合、銅メッキ膜形成工程の後に真空中にて150℃以上の温度で10分間以上加熱する熱処理工程を備えるようにすると、下地金属膜がセラミックス基板の焼結助剤などからなる粒界に拡散するようになるため、セラミックス基板と下地金属膜との密着力がさらに高くなる。また、熱処理により各金属膜が形成される際に生じた応力が緩和されるようになるので、さらに密着力が高くなる。なお、真空成膜法としは、スパッタリング法、真空蒸着法、有機金属気相法(MOCVD法)、レーザアブレージョン法、イオンプレーティング法のいずれかの方法であるのが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明の一実施の形態を図1に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。なお、図1は本発明の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【0019】
1.銅メッキセラミックス基板
本発明の銅メッキセラミックス基板10は、図1に示すように、アルミナ基板(例えば、96%Al2O3)11の表面にスパッタリング法からなる真空成膜により形成されたクロム(Cr)からなる下地金属膜12と、このクロムからなる下地金属膜12の上に、スパッタリング法からなる連続真空成膜により形成された銅(Cu)スパッタ膜13と、この銅スパッタ膜13の上に形成された銅メッキ膜14とを備えている。
【0020】
ついで、上述のように構成される銅メッキセラミックス基板10の製造方法を以下に説明する。まず、96%Al2O3からなるアルミナ基板(例えば、厚みが0.3mmで、幅が76.2mmで、長さが76.2mmのもの)11を用意し、これを洗浄液で充分に洗浄した後、乾燥させた。一方、図示しない連続真空スパッタリング装置を用意し、このスパッタリング装置内の所定の位置に、洗浄、乾燥した96%Al2O3からなるアルミナ基板11を配置した。この後、スパッタリング装置内に連結された真空ポンプを作動して、スパッタリング装置内を真空状態(例えば、9.3×10−5Pa)に保持した。
【0021】
ついで、スパッタリング装置内にアルゴン(Ar)ガスを導入した後、スパッタリング装置内の所定の位置に配置されたCrターゲットとアルミナ基板11との間に直流高電圧を印加した。これにより、イオン化したアルゴンはターゲット(Cr)に衝突して、はじき飛ばされたターゲット物質(Cr)はアルミナ基板11付着して成膜されることとなる。ついで、ターゲット物質(Cr)が成膜されたアルミナ基板11を所定の位置に移動させた後、再度、スパッタリング装置内を真空状態(例えば、9.3×10−5Pa)に保持した。
【0022】
この後、スパッタリング装置内にアルゴン(Ar)ガスを、再度、導入した後、スパッタリング装置内の所定の位置に配置されたCuターゲットとアルミナ基板11との間に直流高電圧を印加した。これにより、イオン化したアルゴンはターゲット(Cu)に衝突して、はじき飛ばされたターゲット物質(Cu)はアルミナ基板11に付着して成膜されることとなる。この結果、アルミナ基板11の表面にCrからなる下地金属膜12が成膜され、このCrからなる下地金属膜12の上にCuスパッタ膜13が連続成膜されることとなる。
【0023】
この場合、下地金属膜12の上にCuスパッタ膜13が成膜される際には、真空状態が保持されたまま連続真空成膜がなされることとなるので、下地金属膜12の上に酸化膜や不純物層が形成されることはない。ついで、この基板11をスパッタリング装置内から取り出した。そして、Cuスパッタ膜13が成膜された基板11に所定の導体パターンが形成されるようにホトリソグラフィー技術によりレジストをパターンニングした。ついで、図示しないメッキ槽内に配置して、レジストがパターンニングされていないCuスパッタ膜13上に銅メッキを施した。
【0024】
これにより、Crからなる下地金属膜12の上にCuスパッタ膜13が形成され、かつCuスパッタ膜13の上にCuメッキ膜14が形成されることとなる。この場合、Cuメッキ膜14の上にさらにニッケルメッキあるいは金メッキを施すようにすると、Cuメッキ膜14の耐食性が向上する。ついで、先に塗布したレジストを除去した後、レジストが除去された部位のCuスパッタ膜13および下地金属膜12をエッチングにより除去した。この後、この基板11を150℃の温度で30分間熱処理した。これにより、図1に模式的に示す銅メッキセラミックス基板10が得られることとなる。
【0025】
ここで、Crからなる下地金属膜12の膜厚が300Åで、Cuスパッタ膜13の膜厚が2000Åで、Cuメッキ膜14の膜厚が40Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例1の基板A1とした。同様に、基板A1とCuスパッタ膜13とCuメッキ膜14の膜厚が等しく、下地金属膜12の膜厚が250Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例2の基板A2とし、下地金属膜12の膜厚が200Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例3の基板A3とした。また、基板A1と下地金属膜12とCuメッキ膜14の膜厚が等しく、Cuスパッタ膜13の膜厚が1500Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例4の基板A4とし、Cuスパッタ膜13の膜厚が1000Åになるように形成した銅メッキセラミックス基板10を実施例5の基板A5とした。
【0026】
また、アルミナ基板11の上に直接、膜厚が2000ÅのCuスパッタ膜13を形成し、このCuスパッタ膜13の上に膜厚が40ÅのCuメッキ膜14を形成した銅メッキセラミックス基板10を比較例1の基板Xとした。さらに、アルミナ基板11の上に膜厚が300ÅのCrからなる下地金属膜12を形成し、この下地金属膜12の上に直接、膜厚が40ÅのCuメッキ膜14を形成した銅メッキセラミックス基板10を比較例2の基板Yとした。ついで、これらの各基板A1,A2,A3,A4,A5,X,Yを用いて、ピール強度試験(引き剥がし試験)を行うと下記の表1に示すような結果が得られた。
【0027】
なお、ピール強度試験は、銅メッキセラミックス基板10のアルミナ基板11の上に形成された下地金属膜12および(または)Cuスパッタ膜13を介して形成されたCuメッキ膜14を基板11から直角方向に所定の速度で、アルミナ基板11または下地金属膜12またはCuスパッタ膜13から引き剥がした(ピール)ときの破壊強度(kN/m)を測定する試験を示しており、この数値が大きい場合は、アルミナ基板11と下地金属膜12とCuスパッタ膜13とCuメッキ膜14との接合が強固であることを意味する。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1の結果から明らかなように、基板X(アルミナ基板11上に下地金属膜12を形成しないで、直接、Cuスパッタ膜13を形成し、この上にCuメッキ膜14を形成したもの)、および基板Y(アルミナ基板11上に下地金属膜12を形成し、この上に直接Cuメッキ膜14を形成したもの)はピール強度が小さいことが分かる。これに対して、アルミナ基板11上に下地金属膜12が形成した後、この上にCuスパッタ膜13を形成し、さらにCuメッキ膜14を形成した基板A1,A2,A3,A4,A5はピール強度が大きいことが分かる。
【0030】
このことから、アルミナ基板11上に下地金属膜12を形成し、かつこの上にCuスパッタ膜13を形成し、さらにこれらの上にCuメッキ膜14を形成する必要があることが分かる。この場合、基板A2,A3のように下地金属膜12の膜厚が250Å以下であるとピール強度が小さく、また、基板A4,A5のようにCuスパッタ膜13の膜厚が1500Å以下であるとピール強度が小さくなるので、基板A1のように下地金属膜12の膜厚が300Å以上で、Cuスパッタ膜13の膜厚が2000Å以上にするのが望ましい。
【0031】
2.セラミックス基板材料の検討
上述した例においては、セラミックス基板としてアルミナ(96%Al2O3)基板11を用いる例について説明したが、他のセラミックス基板材料を用いた場合のピール強度との関係についても検討した。ここで、セラミックス基板材料として窒化アルミニウム(AlN)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Bとした。同様に、炭化ケイ素(SiC)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Cとした。
【0032】
同様に、酸化ベリリウム(BeO)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Dとした。同様に、窒化ケイ素(Si3N4)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Eとした。ついで、これらの各基板B,C,D,Eを用いて、上述と同様にこれらの各基板B,C,D,Eのピール強度を測定すると下記の表2に示すような結果が得られた。なお、下記の表2には、上述した基板A1の結果についても併せて示している。
【0033】
【表2】
【0034】
上記表2の結果から明らかなように、アルミナ(96%Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ベリリウム(BeO)、窒化ケイ素(Si3N4)などのセラミックス基板材料に関わりなく、ピール強度が大きい銅メッキセラミックス基板10が得られることが分かる。このことから、セラミックス基板材料としては、アルミナ(96%Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ベリリウム(BeO)、窒化ケイ素(Si3N4)などから適宜選択して用いればよいということができる。
【0035】
3.下地金属膜の検討
また、上述した例においては、下地金属膜12を形成する金属としてクロム(Cr)を用いる例について説明したが、Cr以外の金属についても検討した。ここで、下地金属膜12を形成する金属としてチタン(Ti)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Fとした。同様に、タングステン(W)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Gとした。同様に、ニッケルリン合金(NiP)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Hとした。
【0036】
同様に、ニオブ(Nb)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Iとした。同様に、モリブデン(Mo)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Jとした。同様に、アルミニウム(Al)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Kとした。同様に、スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Lとした。
【0037】
同様に、インバー(Fe−36%Ni)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Mとした。同様に、コバール(Fe−Ni−Co)を用いること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Nとした。ついで、これらの各基板F,G,H,I,J,K,L,M,Nを用いて、上述と同様にこれらの各基板F,G,H,I,J,K,L,M,Nのピール強度を測定すると下記の表3に示すような結果が得られた。なお、下記の表3には、上述した基板A1の結果についても併せて示している。
【0038】
【表3】
【0039】
上記表3の結果から明らかなように、下地金属膜12を形成する金属としてCr,Ti,W,NiP,Nb,Mo,Al,スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co),インバー(Fe−36%Ni),コバール(Fe−Ni−Co)を用いると、ピール強度が大きい銅メッキセラミックス基板10が得られることが分かる。このことから、下地金属膜12を形成する金属としては、Cr,Ti,W,NiP,Nb,Mo,Al,スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co),インバー(Fe−36%Ni),コバール(Fe−Ni−Co)などから適宜選択して用いればよいということができる。あるいは、これらの金属に限ることなく、これらの金属の合金もしくはこれらの金属の複合層を形成するようにしても良い。
【0040】
4.熱処理温度の検討
また、上述した例においては、銅メッキ後に150℃の温度で30分間熱処理する例について説明したが、熱処理温度と熱処理時間の熱処理条件についても以下に検討した。ここで、銅メッキ後に、250℃の温度で30分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Oとした。同様に、250℃の温度で10分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Pとした。同様に、150℃の温度で60分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Qとした。
【0041】
同様に、150℃の温度で10分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Rとした。同様に、100℃の温度で60分間熱処理すること以外は、上述と同様にして銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを基板Sとした。さらに、銅メッキ後に熱処理しなかった銅メッキセラミックス基板10を作製し、これを比較例3の基板Zとした。ついで、これらの各基板O,P,Q,R,S,Zを用いて、上述と同様にこれらの各基板O,P,Q,R,S,Zのピール強度を測定すると下記の表4に示すような結果が得られた。なお、下記の表4には、上述した基板A1の結果についても併せて示している。
【0042】
【表4】
【0043】
上記表4の結果から明らかなように、銅メッキ後に熱処理を行わなかった基板Zのピール強度が極めて小さいことが分かる。また、銅メッキ後に熱処理を行っても、基板Sのように熱処理温度が低かったり、あるいは基板R,Pのように熱処理時間が短かった場合は、ピール強度がそれほど向上しないことが分かる。これに対して、基板O,Q,A1のように、熱処理温度が150℃以上で、熱処理時間が30分以上であると、ピール強度が向上することが分かる。
【0044】
これは、銅メッキ後に熱処理を行うと、Crからなる下地金属が96%Al2O3基板11の焼結助剤(例えば、CaO,MgO,SiO2)からなる粒界に拡散するために、基板11と下地金属膜12との間の密着力が高まったためと考えられる。また、熱処理により下地金属膜12と銅スパッタ膜13との間の応力、および銅スパッタ膜13と銅メッキ膜14との間の応力が緩和されて、さらに密着力が向上したと考えられる。一方、熱処理温度が低かったり、熱処理時間が短かった場合は、下地金属の基板11中への拡散が不十分であったり、応力緩和が不十分なために、密着力が十分でなく、ピール強度が向上しなかったと考えられる。
【0045】
5.熱電モジュール
ついで、上述のようにして作製された銅メッキセラミックス基板10を用いて熱電モジュール20を作製する一例を図2に基づいて以下に説明する。なお、図2は本実施の形態の熱電モジュールを模式的に示す図であり、図2(a)は表面に銅メッキ膜よりなる導電パターンが形成された銅メッキセラミックス基板を示す上面図である。また、図2(b)はこれらの一対の銅メッキセラミックス基板の間にP型半導体化合物素子とN型半導体化合物素子とを接合して形成した熱電モジュールの要部を模式的に示す断面図である。
【0046】
本実施の形態の熱電モジュール20は、図2に示すように、一対のセラミックス基板21,21と、P型半導体化合物素子25と、N型半導体化合物素子26とから構成されている。セラミックス基板21は、上述した銅メッキセラミックス基板10と同様に形成されたものであって、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミナ(AlN)、炭化珪素(SiC)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化ケイ素(Si3O4)などのセラミックス基板21の上に、Cr,Ti,W,NiP,Nb,Mo,Al,スーパーインバー(Fe−32%Ni−5%Co),インバー(Fe−36%Ni),コバール(Fe−Ni−Co)などの金属あるいは合金からなる下地金属膜22が形成されている。
【0047】
また、この下地金属膜22の上には、これと連続する真空成膜によりCuスパッタ膜23が形成されており、このCuスパッタ膜23の上に、ホトリソグラフィー技術により所定の導体パターンが形成されるようにレジストがパターンニングされて、レジストがパターンニングされていないCuスパッタ膜23上に銅メッキ膜24が形成されて、レジストが除去された後、レジストが除去された部位のCuスパッタ膜23および下地金属膜22をエッチングにより除去されて、図2に模式的に示す導体パターンが形成されている。この場合、Cuメッキ膜24の上にニッケルメッキあるいは金メッキを施すと耐食性が向上する。なお、この基板21も150℃以上の温度で30分以上の時間だけ熱処理されている。
【0048】
ここで、P型半導体化合物素子25およびN型半導体化合物素子26の両端部にはニッケルメッキが施されている。この場合、P型半導体化合物素子25の端部と、N型半導体化合物素子26の端部と、銅メッキ膜24よりなる導体パターンとは融点(Tm)が約240℃であるSnSb合金ハンダからなる接合材27によりハンダ付けされて接合されている。これにより、P型半導体化合物素子25とN型半導体化合物素子26とは交互に配置され、多数の銅メッキ膜24からなる導体パターンとによりP,N,P,Nの順に電気的に直列に接続された熱電モジュール20あるいは電子クーラー(TEC:Thermo Electric Cooler)が構成されることとなる。
【0049】
【発明の効果】
上述したように、本発明の銅メッキセラミックス基板10においては、セラミックス基板11の表面に真空成膜により形成された下地金属膜12と、この下地金属膜12の上に連続真空成膜により形成された銅膜13と、この銅膜13の上に形成された銅メッキ膜14とを備えているので、セラミックス基板11表面の凹凸形状に沿って微粒子化した下地金属膜12が緻密に形成されることとなる。このため、セラミックス基板11と下地金属12との接触面積が大きくなるとともに、アンカー効果により密着力が向上する。また、連続真空成膜により下地金属膜12の上に銅膜13が形成されているので、下地金属膜12の表面が酸化されたり不純物が付着したりすることがない。
【0050】
これにより、下地金属膜12と銅膜13との界面における密着力も向上するとともに、この連続真空成膜による銅膜13と導体パターンとしての銅メッキ膜14とは同一金属であるので、これらの銅膜13と銅メッキ膜14との界面の密着力も高くなる。この結果、セラミックス基板11と下地金属膜12との界面、下地金属膜12と銅膜13との界面および銅膜13と銅メッキ膜14との界面はそれぞれ強固に結合した基板となる。そして、金を使用する必要がないので、結果として、セラミックス基板に形成された各金属膜がセラミックス基板から剥離することがない銅メッキセラミックス基板を安価に得られるようになる。
【0051】
なお、上述した実施の形態においては、下地金属膜および銅膜を形成する真空成膜法としてスパッタリング法を適用する例について説明したが、真空成膜法としては、スパッタリング法以外に、真空蒸着法、有機金属気相法(MOCVD法)、レーザアブレージョン法、イオンプレーティング法等の他の真空成膜法を適用して下地金属膜および銅膜を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の熱電モジュールを模式的に示す図であり、図2(a)は表面に銅メッキ膜よりなる導電パターンが形成された銅メッキセラミックス基板を示す上面図であり、図2(b)はこれらの一対の銅メッキセラミックス基板の間にP型半導体化合物素子とN型半導体化合物素子とを接合して形成した熱電モジュールの要部を模式的に示す断面図である。
【図3】従来例の銅セラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図4】従来例の導電セラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図5】従来例の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【図6】従来例の他の銅メッキセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
10…銅メッキセラミックス基板、11…アルミナ基板、12…下地金属膜、13…銅スパッタ膜、14…銅メッキ膜、20…熱電モジュール、21…セラミックス基板、22…下地金属膜、23…銅スパッタ膜、24…銅メッキ膜、25…P型半導体化合物素子、26…N型半導体化合物素子、27…接合材(ハンダ)
Claims (7)
- セラミックス基板の表面に銅メッキ膜が形成された銅メッキセラミックス基板であって、
前記セラミックス基板の表面に真空成膜により形成された下地金属膜と、
前記下地金属膜の上に連続真空成膜により形成された銅膜と、
前記銅膜の上に形成された銅メッキ膜とを備えたことを特徴とする銅メッキセラミックス基板。 - 前記下地金属膜の膜厚は300Å以上であることを特徴とする請求項1に記載の銅メッキセラミックス基板。
- 前記銅膜の膜厚は2000Å以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅メッキセラミックス基板。
- セラミックス基板の表面に銅メッキ膜を形成した銅メッキセラミックス基板の製造方法であって、
前記セラミックス基板の表面に下地金属膜を真空成膜法により形成する下地金属膜形成工程と、
前記下地金属膜を形成する際の真空状態を保持したままで前記下地金属膜の上に銅膜を連続真空成膜法により形成する銅膜形成工程と、
前記成膜された銅膜をホトリソグラフィーにより所定の導体パターンにパターンニングするホトリソグラフィー工程と、
前記所定の導体パターンにパターンニングされた銅膜の上に銅メッキ膜を形成する銅メッキ膜形成工程とを備えたことを特徴とする銅メッキセラミックス基板の製造方法。 - 前記銅メッキ膜形成工程の後に真空中にて150℃以上の温度で10分間以上加熱する熱処理工程を備えたことを特徴とする請求項4に記載の銅メッキセラミックス基板の製造方法。
- 前記真空成膜法はスパッタリング法、真空蒸着法、有機金属気相法(MOCVD法)、レーザアブレージョン法、イオンプレーティング法のいずれかであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の銅メッキセラミックス基板の製造方法。
- 請求項1から請求項3のいずれかに記載された銅メッキセラミックス基板を一対備えて、該一対の銅メッキセラミックス基板の間に複数のP型半導体化合物素子とN型半導体化合物素子とを備えた熱電モジュールであって、
前記一対の電極基板の間にP型半導体化合物素子とN型半導体化合物素子を交互に配列して、前記電極基板の表面にそれぞれ形成された導体パターンを介して前記P型半導体化合物素子と前記N型半導体化合物素子とが電気的に直列に接続されていることを特徴とする熱電モジュール。
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