JP3677381B2 - 配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁基体の表面に配線層を形成した配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気回路基板や半導体素子収納用パッケージ等に使用される配線基板はその配線層がMoーMn法等の厚膜形成技術を採用することによって形成されている。
【0003】
このMoーMn法は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)等の高融点金属から成る金属粉末に有機溶剤、溶媒を添加し、ペースト状となした金属ペーストを生もしくは焼結セラミツク体の外表面にスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布し、次にこれを還元雰囲気中で焼成し、高融点金属とセラミック体とを焼結一体化させる方法である。
【0004】
このMoーMn法によって配線層を形成した配線基板は、タングステンやモリブデン等から成る配線層の表面に金(Au)層をメッキ法等によって所定厚み(数μm)に被着させ、タングステンやモリブデンの耐蝕性を改善するとともに配線層の電気抵抗値を小さなものとしている。
【0005】
また、近時、電子機器の小型化に対応して配線基板も小型にして、かつ配線層を高密度に形成することが要求されるようになってきており、これに対応するために配線層を厚膜形成技術で形成するのに変えて微細配線が可能な薄膜形成技術で形成した配線基板も使用されるようになってきた。
【0006】
この配線層を薄膜形成技術で形成した配線基板は、絶縁基体上に、例えば、窒化タンタル(Ta2 N)やニッケル・クロム合金(NiCr)等から成る接着層と、ニッケル・クロム合金(NiCr)やチタン・タングステン合金(TiW)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)等から成る中間層と、金(Au)から成る主導体層をイオンプレーティング法やスパッタリング法、蒸着法、メッキ法等の薄膜形成技術を採用することによって順次被着させ、次に、これらの各層をフォトリソグラフィー技術で所定パターンに加工し、配線層となすことによって形成されている。
【0007】
なお、前記薄膜形成技術で形成された配線層は、接着層が配線層を絶縁基体に強固に接着させる作用をなし、中間層が接着層と主導体層の相互拡散を抑制するとともに主導体層を接着層に強固に接着させる作用をなしている。
【0008】
またかかる配線層が厚膜形成技術、あるいは薄膜形成技術で形成されている配線基板は配線層の表面を含む絶縁基体上面にSiO2 から成る保護膜が被着されており、該保護膜によって配線層に外力が印加されて断線が発生するのを防止するとともに隣接する配線層間に導体が付着して配線層間に短絡が発生するのを有効に防止するようになしている。
【0009】
このSiO2 から成る保護膜は配線層が形成されている絶縁基体の上面にスパッタリング法等を採用することによって所定の厚みに被着される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の配線基板においては、配線層の表面に形成されている金(Au)と保護膜を形成するSiO2 との密着強度が弱いこと、保護膜を形成するSiO2 中をH2 Oが移動し易いこと等から、例えば、配線基板を洗浄するために水中に浸漬した場合、SiO2 から成る保護膜中をH2 Oが移動して保護膜に体積膨張が起こり、保護膜が配線層より剥離してしまうという欠点を有していた。
【0011】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は配線層の表面に保護膜を強固に被着させ、該保護膜によって配線層に断線や隣接する配線層間に電気的短絡が発生するのを有効に防止することができる配線基板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、絶縁基体上に、表面に金層を有する配線層を形成した配線基板であって、前記配線層の表面がSiO2-X NX (0.25≦X≦0.65)から成る保護膜で被覆されていることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明は、前記保護膜の厚みが100乃至1000nmであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の配線基板によれば、保護膜をSiO2-X NX (0.25≦X≦0.65)で形成したことから、配線層と保護膜との間にAuーSi結合ができて両者は強固に接合する。同時にH2 Oが保護膜中を移動する経路となる膜中の原子、分子サイズの格子欠陥部分にNが固着され、経路をふさぐために膜中をH2 Oの分子が移動し難くなる。そのため配線基板を水中に浸漬しても保護膜中にH2 Oが入り込んで保護膜に体積膨張が発生することはなく、これによって配線層表面を保護膜で完全に保護することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に本発明の配線基板を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の配線基板の一実施例を示す断面図であり、1は絶縁基体、2は配線層である。
【0016】
前記絶縁基体1は配線層2を支持する支持部材として作用し、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ガラスセラミックス焼結体等の電気絶縁材料で形成されている。
【0017】
前記絶縁基体1は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合は、酸化アルミニウム,酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれをドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、しかる後、前記セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施し、所定形状となすとともに高温(約1600℃)で焼成することによって製作される。
【0018】
前記絶縁基体1の上面には複数個の配線層2が、例えば、薄膜形成技術を採用することによって所定パターンに被着形成されている。
【0019】
前記薄膜形成技術により形成される配線層2は接着層3と中間層4と主導体層5の3層構造を有しており、接着層3は絶縁基体1と配線層2との接着強度を上げる作用をなし、中間層4は接着層3と主導体層5との密着性を向上させるとともに接着層3と主導体層5との相互拡散を防止する作用を為す。
【0020】
前記配線層2の接着層3は、例えば窒化タンタル(Ta2 N)、ニッケル・クロム合金(NiCr)、クロム(Cr)等の材料から成り、蒸着法やイオンプレーティング法等の薄膜形成技術を採用することによって絶縁基体1上に20nm〜500nmの厚みに被着される。
【0021】
前記接着層3はその厚みが20nm未満となると配線層2を絶縁基体1上に強固に接着させることが困難となり、また500nmを超えると接着層3を薄膜形成技術により被着させる際、接着層3内に応力が発生するとともに内在し、該内在応力によって接着層3と絶縁基体1との接着強度が低下してしまうこととなる。従って、接着層3の厚みは20nm乃至500nmの範囲としておくことが好ましい。
【0022】
また前記接着層3の上面には中間層4が被着形成されており、該中間層4は、例えば、ニッケル・クロム合金(NiCr)やチタン・タングステン合金(TiW)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)等から成り、蒸着法やイオンプレーティング法、スバッタリング法等の薄膜形成技術により接着層3の上面に20nm乃至300nmの厚みに被着される。
【0023】
前記中間層4はその厚みが20nm未満であると接着層3と主導体層5との密着性が低下するとともに接着層3と主導体層5との相互拡散を有効に防止することができず、また300nmを超えるとと中間層4を薄膜形成技術により被着させる際、中間層4内に応力が発生するとともに内在し、該内在応力によって接着層3と中間層4との接着強度が低下してしまう。従って、中間層4の厚みは20nm乃至300nmの範囲としておくことが好ましい。
【0024】
更に前記中間層4の上面には主導体層5が蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法、メッキ法等の薄膜形成技術により被着されており、該主導体層5は主として電気を通す通路として作用をする。
【0025】
前記主導体層5は導通抵抗が極めて小さい金(Au)が使用されており、その厚みは200nm未満であると配線層2の導通抵抗が高くなって配線基板としては不向きとなるため200nm以上の厚みが好ましく、経済性を考慮すると1000nm乃至10000nmの範囲としておくことがより好適である。
【0026】
前記絶縁基体1上に形成されている配線層2は、これを構成する接着層3、中間層4及び主導体層5の各々が薄膜形成技術を採用することによって形成されているため配線層2の微細化が可能となり、小型の絶縁基体1上に配線層2を高密度に形成することができる。
【0027】
また前記絶縁基体1の上面には配線層2の表面を含んで保護膜6が被着されており、該保護膜6によって配線層2は外力が印加されても断線が発生することはなく、また隣接する配線層2間に導体が付着しても配線層2間に短絡が発生しないようになっている。
【0028】
前記保護膜6はSiO2-X NX (0.25≦X≦0.65)から成り、該SiO2-X NX (0.25≦X≦0.65)は配線層2の主導体層5を構成する金との間でAuーSi結合を形成して保護膜6を配線層2に強固に接合し、同時にH2 OがSiO2 膜中を移動する経路となる膜中の原子、分子サイズの格子欠陥部分にNが固着され、H2 Oの移動経路をふさぐために膜中をH2 O分子が移動し難くなる。そのため配線基板を水中に浸漬しても保護膜6中にH2 Oが入り込んで保護膜6に体積膨張が発生することはなく、これによって配線層2表面を保護膜6で完全に保護することが可能となる。
【0029】
前記保護膜6はスパッタリング法によって、具体的にはN2 を含有するAr雰囲気中にSiO2 ターゲットを配置し、次にSiO2 ターゲットにプラズマで励起したAr原子を当ててSiO2 を飛散させるとともN2 を反応させてSiO2-X NX (0.25≦X≦0.65)を生成させ、これを絶縁基体1上面に堆積させることによって配線層2の表面を含む絶縁基体1上に形成される。またSiO2-X NX のX値はAr雰囲気中のN2 濃度を可変することによって0.25〜0.65の範囲に可変される。
【0030】
なお、前記SiO2-X NX から成る保護膜6はX値が0.25>XとなるとNの濃度が低いために、H2 Oが保護膜6中を移動する経路となる膜中の原子、分子サイズの格子欠陥部分をNの固着で十分にふさぐことができず、その結果、配線基板を水分中に浸漬したとき保護膜6に体積膨張が起こって保護膜6が配線層2より剥離してしまい、またX>0.65となると保護膜6の内部応力が高くなり、その応力によって保護膜6の配線層2に対する被着強度が低下し、保護膜6が配線層2より剥離し易いものとなってしまう。従って、前記SiO2-X NX から成る保護膜6はX値が0.25≦X≦0.65の範囲に特定される。
【0031】
また前記保護膜6はその厚みが100nm未満であると、保護膜6の電気絶縁性が低下して配線層2を電気的に保護することが困難となり、また1000nmを超えると内部応力が高くなり、その応力によって保護膜6の配線層2に対する被着強度が低下し、保護膜6が配線層2より剥離し易いものとなってしまう。従って、前記保護膜6はその厚みを100nm乃至1000nmの範囲としておくことが好ましい。
【0032】
かくして上述の配線基板によれば、絶縁基板1上の配線層2に半導体素子やコンデンサ等の電子部品を半田等を介して接続すれば、各電子部品は配線層2を介して電気的に接続されることとなる。
【0033】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、上述の実施例では配線層2を接着層3、中間層4、主導体層5の3層構造から成る薄膜形成技術により形成したもので説明したがこれを表面に金層を有する厚膜形成技術により形成したものであってもよい。
【0034】
(実験例)
次に本発明の作用効果を下記に示す実験例に基づき説明する。
まず酸化アルミニウム質焼結体から成る絶縁基体上に、スパッタリング法により、厚さ100nmのニッケル・クロム層と、厚さ500nmの金層を順次被着させ、しかる後、フォトリソグラフィー技術によって幅200μm、長さ1000μmの帯状のパターンに加工し、配線層を形成する。
【0035】
次に配線層が形成されている絶縁基体の上面全体にスパッタリング法により、厚さが500nmで、X値が表1に示す値のSiO2-X NX から成る保護膜を被着させ、試料を各々、500個作成した。
次に、各試料を水中に10分間浸漬した後、保護膜にテープを密着強度558g/cm2 で張り付け、しかる後、テープを垂直方向に引っ張り、保護膜が剥がれたものの数を数え、剥がれ率を算出した。
【0036】
その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1より明らかなように、SiO2-X NX から成る保護膜のX値が0.25≦X≦0.65であると保護膜の剥がれ率が40%以下となり、特にX値を0.30≦X≦0.50とすると保護膜の剥がれ率が8%以下の極めて優れたものとなる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の配線基板によれば、保護膜をSiO2-X NX (0.25≦X≦0.65)で形成したことから、配線層と保護膜との間にAuーSi結合ができて両者は強固に接合する。同時にH2 Oが保護膜中を移動する経路となる膜中の原子、分子サイズの格子欠陥部分にNが固着され、経路をふさぐために膜中をH2 Oの分子が移動し難くなる。そのため配線基板を水中に浸漬しても保護膜中にH2 Oが入り込んで保護膜に体積膨張が発生することはなく、これによって配線層表面を保護膜で完全に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・絶縁基板
2・・・・配線層
6・・・・保護膜
Claims (2)
- 絶縁基体上に、表面に金層を有する配線層を形成した配線基板であって、前記配線層の表面がSiO2-X NX (0.25≦X≦0.65)から成る保護膜で被覆されていることを特徴とする配線基板。
- 前記保護膜の厚みが100乃至1000nmであることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
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1997
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