JP2004085644A - 電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】キャスト製膜法により容易に薄膜とすることが可能で、大量生産に向いており、しかも耐摩耗性に優れた電子写真感光体を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性基体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層のバインダー樹脂として、ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体とカーボネート前駆体物質とを反応させてなるポリエステルカーボネート樹脂であって、ジヒドロキシ化合物の1〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールであり、エステル基のモル量がエステル基とカーボネート基の合計モル量の3〜75モル%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリエステルカーボネート樹脂が使用されてなる電子写真感光体。
【選択図】 なし
【解決手段】導電性基体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層のバインダー樹脂として、ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体とカーボネート前駆体物質とを反応させてなるポリエステルカーボネート樹脂であって、ジヒドロキシ化合物の1〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールであり、エステル基のモル量がエステル基とカーボネート基の合計モル量の3〜75モル%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリエステルカーボネート樹脂が使用されてなる電子写真感光体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関するものである。更に詳しくは、特定のポリエステルカーボネート樹脂をバインダーとして使用した電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、電子写真技術は、その高速性、高画質である事等により、複写機、レーザープリンター、ファックス等に広く応用されている。
【0003】
この電子写真技術における電子写真感光体としては、従来は、セレン、セレン/テルル合金、セレン/砒素合金、硫化カドミウム等の無機系光導電性物質が主に用いられてきた。しかし、毒性、安全性、価格、生産性、等の点から、最近では、有機系光導電性物質を使用した電子写真感光体が開発されている。
【0004】
この有機系光導電性物質が低分子物質の場合、バインダー樹脂と混合して塗膜を形成する事が通常行われている。バインダー樹脂としてはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられてきている。これら各種樹脂の内、ポリカーボネート樹脂が比較的優れた特性を有しており、良く用いられている。バインダー樹脂として各種のポリカーボネート樹脂を用いる事が報告されており、例えば特開昭60−172044にはビスフェノールZからのポリカーボネート樹脂が、特開昭63−170647にはビスフェノールAからのポリカーボネート樹脂がそれぞれバインダー樹脂として使用する事が開示されている。
【0005】
これらの公知有機系光導電性物質(OPC)と各種バインダー樹脂とを使用する電子写真感光体(OPC感光体)においては、感度等の点では無機系光導電性物質を使用した電子写真感光体に匹敵するものが得られている。これらOPC感光体は、キャスト製膜法により容易に薄膜とする事が可能で、大量生産に向いており、価格も比較的安価である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、OPC感光体はこのように優れた性能があるものの、耐摩耗性がかなずしも満足できるものではなく、改善が要求されていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定ポリエステルカーボネート樹脂をバインダーとして用いた電子写真感光体は、良好な耐摩耗性を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明は、導電性基体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層のバインダー樹脂として、ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体とカーボネート前駆体物質とを反応させてなるポリエステルカーボネート樹脂であって、ジヒドロキシ化合物の1〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノールであり、エステル基のモル量がエステル基とカーボネート基の合計モル量の3〜75モル%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリエステルカーボネート樹脂を含有してなる電子写真感光体を提供するものである。
【0009】
本発明の電子写真感光体は導電性基体上に単一層の光導電層を有するものでも、機能分離した積層型のものでも良い。最近は、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層との二層からなる積層型の電子写真感光体が主流となっている。又、必要に応じて下引き層、保護層、接着層等を設けても良い。
【0010】
本発明の導電性基体とは、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等の金属材料や、又、表面にアルミニウム、パラジウム、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、フェノール樹脂、紙等が使用される。
【0011】
本発明の電荷発生層は公知の方法により、導電性基体上に形成される。電荷発生物質としては、例えば、アゾキシベンゼン系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンズイミダゾール系、多環式キノリン系、インジゴイド系、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系、メチン系等の有機顔料が使用できる。これらの電荷発生物質は、その微粒子をポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、各種セルロース等のバインダー樹脂に分散させた形で使用される。
【0012】
本発明の電荷輸送層は、電荷発生層上に公知の方法により、本発明のポリエステルカーボネート樹脂をバインダー樹脂として、電荷輸送物質を分散させる事により形成される。電荷輸送物質としては、例えば、ポリテトラシアノエチレン;2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン系化合物;ジニトロアントラセン等のニトロ化合物;無水コハク酸;無水マレイン酸;ジブロモ無水マレイン酸;トリフェニルメタン系化合物;2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物;ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物;1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物;4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のアミン誘導体;1、1ービス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン等の共役不飽和化合物;4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物;縮合多環式化合物等が挙げられる。上記電荷輸送物質は単独で使用しても、複数種併用しても良い。
【0013】
本発明のポリエステルカーボネートを作る際の原料であるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(構造式(3)に示す。)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール以外のジヒドロキシ化合物(構造式(1)及び(2)に示す。)、及び芳香族ジカルボン酸またはその誘導体は、純度が99%以上に精製されたものが好ましい。純度が低いものは、黄着色度が大きくなり、反応性も低下し重合の制御が困難となる。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
(式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシル基、炭素数6から10のシクロアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から10のシクロアルコキシル基または炭素数6から10のアリールオキシ基を表す。また、pおよびqは置換基数を表し、0から4の整数である。Xは、−C(R3 )(R4 )−、−O−、−CO−、−S−、−SO−または−SO2 −であり、R3 およびR4 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1から10のアルキル基または炭素数6から12のアリール基であり、R3 とR4 とが結合して脂肪族環を形成していても良い。)
【0016】
【化5】
(式中、R5 およびR6 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシル基、炭素数6から10のシクロアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から10のシクロアルコキシル基または炭素数6から10のアリールオキシ基を表す。また、rおよびsは置換基数を表し、0から4の整数である。)
【0017】
構造式(3)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールには、それぞれ構造異性体および立体異性体が存在するが、本発明で用いる場合は、ある特定の異性体を単独で用いても差し支えないし、各々の異性体が任意の比率で混ざった混合物を用いて差し支えない。本発明において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールは特に断らない限り構造式(3)で表される全ての異性体の混合物であり、純度とは、全ての異性体の和を全量で除したものを言う。
【0018】
また、本発明にかかわるポリエステルカーボネート樹脂に使用されるジヒドロキシ化合物は、その1〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールであるが、残りの99〜0モル%には上記構造式(1)および/または(2)のジヒドロキシ化合物が用いられる。構造式(3)から誘導される構成単位のみでも使用可能であるが、構造式(1)および/または(2)から誘導される構成単位を加えることにより、硬度の調整が可能となる。すなわち、構造式(3)から誘導される構成単位で得られる樹脂よりも更に硬度が必要な場合、構造式(1)および/または(2)から誘導される構成単位を加えることにより、硬度を上げることが可能となる。しかしながら、必要以上に構造式(1)および/または(2)から誘導される構成単位を加えると、Tgの上昇を招き、重合後反応器から樹脂を取り出すことが困難になるため、添加量には上限がある。
【0019】
上記トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールと併用する他のジヒドロキシ化合物としては構造式(1)および/または構造式(2)に示されるが、構造式(1)としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好適に使用される。
【0020】
また、構造式(2)としては、例えば9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン等が用いられる。特に9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好適に使用される。
【0021】
芳香族ジカルボン酸又はその誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4′−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,3′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、トリメチル−3−フェニルインダン−4,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が特に好ましい。またこれらの誘導体としては、酸クロライドやエステル類が挙げられる。
【0022】
芳香族ジカルボン酸成分の使用量は、得られるポリエステルカーボネート樹脂中のエステル基の含量がエステル基とカーボネート基の合計モル数に対して3〜75モル%になる量である。即ち、ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数に対する芳香族ジカルボン酸成分の使用モル数が3〜75モル%になる量である。芳香族ジカルボン酸成分の使用量が上記量より少ないと得られる樹脂成形品の耐磨耗性が劣るようになり、上記量より多いと成形性が低下し、いずれも本発明の目的が達成されない。
【0023】
本発明のポリエステルカーボネートは、ビスフェノールAとカーボネート前駆体物質からポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とジアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。
【0024】
カーボネート前駆体物質としては、例えばホスゲンや、ジフェニールカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリールカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
【0025】
ホスゲン法とエステル交換法では、原料の1 つであるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールの反応性を考慮した場合、エステル交換法の方が好ましい。
【0026】
エステル交換法によりポリエステルカーボネート樹脂を製造する場合には、触媒として、塩基性化合物として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機塩類、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシドなどの化合物、4級アンモニウムヒドロキサイドおよびそれらの塩、アミン類等の含窒素化合物が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0027】
このようなアルカリ金属化合物として具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0028】
また、アルカリ土類金属化合物として具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0029】
また、含窒素化合物として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルアリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基性塩等が用いられる。
【0030】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、通常10−9〜10−3モルの比率で、好ましくは10−7〜10−5モルの比率で用いられる。
【0031】
エステル交換法においては、前記触媒の存在下に、前記トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールと芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとジアリールカーボネートとを混合するか、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール及びビスフェノール類と芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとジアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。また芳香族ジカルボン酸またはそのエステルと任意のジヒドロキシ化合物とを反応させ、次いでその他のジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させても良い。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また圧力は最終で好ましくは0.2kPa以下にして、エステル交換反応により生成した該ジアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜10時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく。また、所望に応じ、分子量調節剤、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。これらの方法は公知であり、具体的には、特開2000−30286に記載されている方法などを用いることができる。
【0032】
ホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下において、前記ジヒドロキ化合物と芳香族ジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとホスゲンを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられが、酸結合剤は溶液として用いられる。また、溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレンなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を、また重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加えることが好ましい。また、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノールなど分岐化剤を小量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0033】
これらの反応で合成されたポリエステルカーボネート樹脂は、電子写真感光体製造で使用される溶液流延法、キャスト法、スプレー法、浸漬塗布法(ディップ法)等の公知湿式成形で容易に成形可能である。湿式成形で成形された電子写真感光体が十分な膜強度を得るためには極限粘度が0.3〜2.0dl/gであることが好ましく、さらに成膜性と膜強度を重視した場合、0.4〜1.5dl/gであることが好ましい。
【0034】
電荷発生層及び電荷輸送層は、上記の電荷発生物質、又は、電荷輸送物質を、それぞれバインダー樹脂と、適当な溶媒に溶解させ、その溶液を浸漬塗布法やスプレー法等により塗布し、乾燥させる事により形成できる。この溶媒としては、ハロゲン系有機溶媒と非ハロゲン系溶媒の2種類に大別できるが、一般的に可燃性が少ないハロゲン系溶媒が多用される。近年は、安全性や環境保全の観点から、非ハロゲン系溶媒が使用される比率が大きくなっており、本発明で用いられるポリエステルカーボネート樹脂も非ハロゲン系溶媒の多くに良溶である。
【0035】
非ハロゲン系溶媒ではベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、エチルセロソルブ等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等が挙げられる。またハロゲン系溶媒としては塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、これらの溶媒は非ハロゲン、ハロゲンを問わず単独で使用しても良く、又は、2種以上を併用し混合用溶媒として使用しても良い。
【0036】
電荷発生物質とバインダー樹脂の混合比は、10:1〜1:20の範囲内が好ましい。この電荷発生層の厚さは、0.01〜20μm、好ましくは0.1〜2μmが好適である。
【0037】
電荷輸送物質とバインダー樹脂との混合比は、10:1〜1:10の範囲内が好ましい。この電荷輸送層の厚さは、2〜100μm、好ましくは5〜30μmが好適である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって具体的に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール35.33g(0.18モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン22.83g(0.10モル)、テレフタル酸ジメチル15.53g(0.08モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、および炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ミリリットル四ッ口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下180℃に加熱し30分間攪拌した。その後、減圧度を150mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行ない、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行なった。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、昇温終了の40分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を0.15kPa以下とした。その後、105℃/hrの速度で235℃まで昇温し合計6時間攪拌下で反応を行い、反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み常圧に戻し、生成したポリエステルカーボネートを取り出した。
この重合体の塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における極限粘度は0.70dl/gであった。
【0040】
次に、アルミニウムを厚さ約50nm蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、τ型銅フタロシアニン10部とフェノキシ樹脂5部、ポリビニルブチラール樹脂5部、ジメトキシエタン100部とを混合し、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行なった塗布液を用いて塗布し、乾燥し、厚さ約0.5μmの電荷発生層を設けた。次に、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾンを50部、上記合成重合により得られたポリエステルカーボネート樹脂を50部、テトラヒドロフランを350部、使用した塗布液を作製し、上記電荷発生層上に塗布し、風乾後100℃、8時間乾燥し、厚さ約20μmの電荷輸送層を設けて、積層型電子写真感光体を作製した。
この電子写真感光体の評価を、(株)川口電気製作所製EPA−8100静電気帯電試験装置にて、帯電特性を調べた。また、耐摩耗性については、東洋精機製作所株式会社製テーバ摩耗試験機を用いて削れ量を測定し、結果を表1に示した。
【0041】
実施例2
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール25.5g(0.13モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン18.3g(0.08モル)、テレフタル酸ジメチル1.9g(0.01モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0042】
実施例3
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール29.4g(0.15モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン34.2g(0.15モル)、テレフタル酸ジメチル19.4g(0.10モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0043】
実施例4
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール35.3g(0.18モル)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン37.8g(0.10モル)、テレフタル酸ジメチル15.5g(0.08モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0044】
実施例5
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール25.5g(0.13モル)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン30.3g(0.08モル)、テレフタル酸ジメチル1.9g(0.01モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0045】
比較例1
実施例1のポリカーボネート樹脂の代わりに、市販のBPZ型ホモポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学(株)製、商品名:ユーピロンPCZ、極限粘度0.78dl/g)を用いて、実施例1と同様の評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0046】
比較例2
実施例1のポリカーボネート樹脂の代わりに、市販のBPA型ホモポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学(株)製、商品名:ユーピロンE−2000、極限粘度0.61dl/g)を用いて、実施例1と同様の評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
〔表1の記号説明〕
TCDDM:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール
BPA :2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BCFL :9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン
DMT :テレフタル酸ジメチル
極限粘度:20℃、0.5%ジクロロメタン溶液、ハギンス定数0.45で測定。
初期電位:DC帯電器にて50μA電流が流入するよう調整した時の初期帯電量(−V)
残留電位:露光(除電10Lux)後、4秒後の残留電位(−V)。
摩耗量 :荷重300g、CS−17 輪、1000回転後のテーバ摩耗試験を行なった際の摩耗量(mg)
【0049】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール及び芳香族ジカルボン酸又はその誘導体より誘導されたポリエステルカーボネート樹脂をバインダー樹脂に使用することにより、電子写真感光体の帯電特性を維持したまま耐摩耗性が向上する。そのため電子写真画像の安定化や感光体寿命の延長効果が期待できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関するものである。更に詳しくは、特定のポリエステルカーボネート樹脂をバインダーとして使用した電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、電子写真技術は、その高速性、高画質である事等により、複写機、レーザープリンター、ファックス等に広く応用されている。
【0003】
この電子写真技術における電子写真感光体としては、従来は、セレン、セレン/テルル合金、セレン/砒素合金、硫化カドミウム等の無機系光導電性物質が主に用いられてきた。しかし、毒性、安全性、価格、生産性、等の点から、最近では、有機系光導電性物質を使用した電子写真感光体が開発されている。
【0004】
この有機系光導電性物質が低分子物質の場合、バインダー樹脂と混合して塗膜を形成する事が通常行われている。バインダー樹脂としてはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられてきている。これら各種樹脂の内、ポリカーボネート樹脂が比較的優れた特性を有しており、良く用いられている。バインダー樹脂として各種のポリカーボネート樹脂を用いる事が報告されており、例えば特開昭60−172044にはビスフェノールZからのポリカーボネート樹脂が、特開昭63−170647にはビスフェノールAからのポリカーボネート樹脂がそれぞれバインダー樹脂として使用する事が開示されている。
【0005】
これらの公知有機系光導電性物質(OPC)と各種バインダー樹脂とを使用する電子写真感光体(OPC感光体)においては、感度等の点では無機系光導電性物質を使用した電子写真感光体に匹敵するものが得られている。これらOPC感光体は、キャスト製膜法により容易に薄膜とする事が可能で、大量生産に向いており、価格も比較的安価である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、OPC感光体はこのように優れた性能があるものの、耐摩耗性がかなずしも満足できるものではなく、改善が要求されていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定ポリエステルカーボネート樹脂をバインダーとして用いた電子写真感光体は、良好な耐摩耗性を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明は、導電性基体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層のバインダー樹脂として、ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体とカーボネート前駆体物質とを反応させてなるポリエステルカーボネート樹脂であって、ジヒドロキシ化合物の1〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノールであり、エステル基のモル量がエステル基とカーボネート基の合計モル量の3〜75モル%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリエステルカーボネート樹脂を含有してなる電子写真感光体を提供するものである。
【0009】
本発明の電子写真感光体は導電性基体上に単一層の光導電層を有するものでも、機能分離した積層型のものでも良い。最近は、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層との二層からなる積層型の電子写真感光体が主流となっている。又、必要に応じて下引き層、保護層、接着層等を設けても良い。
【0010】
本発明の導電性基体とは、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等の金属材料や、又、表面にアルミニウム、パラジウム、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、フェノール樹脂、紙等が使用される。
【0011】
本発明の電荷発生層は公知の方法により、導電性基体上に形成される。電荷発生物質としては、例えば、アゾキシベンゼン系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンズイミダゾール系、多環式キノリン系、インジゴイド系、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系、メチン系等の有機顔料が使用できる。これらの電荷発生物質は、その微粒子をポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、各種セルロース等のバインダー樹脂に分散させた形で使用される。
【0012】
本発明の電荷輸送層は、電荷発生層上に公知の方法により、本発明のポリエステルカーボネート樹脂をバインダー樹脂として、電荷輸送物質を分散させる事により形成される。電荷輸送物質としては、例えば、ポリテトラシアノエチレン;2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン系化合物;ジニトロアントラセン等のニトロ化合物;無水コハク酸;無水マレイン酸;ジブロモ無水マレイン酸;トリフェニルメタン系化合物;2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物;ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物;1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物;4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のアミン誘導体;1、1ービス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン等の共役不飽和化合物;4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物;縮合多環式化合物等が挙げられる。上記電荷輸送物質は単独で使用しても、複数種併用しても良い。
【0013】
本発明のポリエステルカーボネートを作る際の原料であるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール(構造式(3)に示す。)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール以外のジヒドロキシ化合物(構造式(1)及び(2)に示す。)、及び芳香族ジカルボン酸またはその誘導体は、純度が99%以上に精製されたものが好ましい。純度が低いものは、黄着色度が大きくなり、反応性も低下し重合の制御が困難となる。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
(式中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシル基、炭素数6から10のシクロアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から10のシクロアルコキシル基または炭素数6から10のアリールオキシ基を表す。また、pおよびqは置換基数を表し、0から4の整数である。Xは、−C(R3 )(R4 )−、−O−、−CO−、−S−、−SO−または−SO2 −であり、R3 およびR4 は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1から10のアルキル基または炭素数6から12のアリール基であり、R3 とR4 とが結合して脂肪族環を形成していても良い。)
【0016】
【化5】
(式中、R5 およびR6 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシル基、炭素数6から10のシクロアルキル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数6から10のシクロアルコキシル基または炭素数6から10のアリールオキシ基を表す。また、rおよびsは置換基数を表し、0から4の整数である。)
【0017】
構造式(3)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールには、それぞれ構造異性体および立体異性体が存在するが、本発明で用いる場合は、ある特定の異性体を単独で用いても差し支えないし、各々の異性体が任意の比率で混ざった混合物を用いて差し支えない。本発明において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールは特に断らない限り構造式(3)で表される全ての異性体の混合物であり、純度とは、全ての異性体の和を全量で除したものを言う。
【0018】
また、本発明にかかわるポリエステルカーボネート樹脂に使用されるジヒドロキシ化合物は、その1〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールであるが、残りの99〜0モル%には上記構造式(1)および/または(2)のジヒドロキシ化合物が用いられる。構造式(3)から誘導される構成単位のみでも使用可能であるが、構造式(1)および/または(2)から誘導される構成単位を加えることにより、硬度の調整が可能となる。すなわち、構造式(3)から誘導される構成単位で得られる樹脂よりも更に硬度が必要な場合、構造式(1)および/または(2)から誘導される構成単位を加えることにより、硬度を上げることが可能となる。しかしながら、必要以上に構造式(1)および/または(2)から誘導される構成単位を加えると、Tgの上昇を招き、重合後反応器から樹脂を取り出すことが困難になるため、添加量には上限がある。
【0019】
上記トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールと併用する他のジヒドロキシ化合物としては構造式(1)および/または構造式(2)に示されるが、構造式(1)としては、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好適に使用される。
【0020】
また、構造式(2)としては、例えば9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン等が用いられる。特に9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好適に使用される。
【0021】
芳香族ジカルボン酸又はその誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4′−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,3′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、トリメチル−3−フェニルインダン−4,5−ジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が特に好ましい。またこれらの誘導体としては、酸クロライドやエステル類が挙げられる。
【0022】
芳香族ジカルボン酸成分の使用量は、得られるポリエステルカーボネート樹脂中のエステル基の含量がエステル基とカーボネート基の合計モル数に対して3〜75モル%になる量である。即ち、ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数に対する芳香族ジカルボン酸成分の使用モル数が3〜75モル%になる量である。芳香族ジカルボン酸成分の使用量が上記量より少ないと得られる樹脂成形品の耐磨耗性が劣るようになり、上記量より多いと成形性が低下し、いずれも本発明の目的が達成されない。
【0023】
本発明のポリエステルカーボネートは、ビスフェノールAとカーボネート前駆体物質からポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とジアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。
【0024】
カーボネート前駆体物質としては、例えばホスゲンや、ジフェニールカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリールカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
【0025】
ホスゲン法とエステル交換法では、原料の1 つであるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールの反応性を考慮した場合、エステル交換法の方が好ましい。
【0026】
エステル交換法によりポリエステルカーボネート樹脂を製造する場合には、触媒として、塩基性化合物として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の有機酸塩、無機塩類、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシドなどの化合物、4級アンモニウムヒドロキサイドおよびそれらの塩、アミン類等の含窒素化合物が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0027】
このようなアルカリ金属化合物として具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0028】
また、アルカリ土類金属化合物として具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0029】
また、含窒素化合物として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、アルアリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基性塩等が用いられる。
【0030】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、通常10−9〜10−3モルの比率で、好ましくは10−7〜10−5モルの比率で用いられる。
【0031】
エステル交換法においては、前記触媒の存在下に、前記トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールと芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとジアリールカーボネートとを混合するか、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール及びビスフェノール類と芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとジアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。また芳香族ジカルボン酸またはそのエステルと任意のジヒドロキシ化合物とを反応させ、次いでその他のジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させても良い。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また圧力は最終で好ましくは0.2kPa以下にして、エステル交換反応により生成した該ジアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜10時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく。また、所望に応じ、分子量調節剤、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。これらの方法は公知であり、具体的には、特開2000−30286に記載されている方法などを用いることができる。
【0032】
ホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下において、前記ジヒドロキ化合物と芳香族ジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとホスゲンを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられが、酸結合剤は溶液として用いられる。また、溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレンなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を、また重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加えることが好ましい。また、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノールなど分岐化剤を小量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0033】
これらの反応で合成されたポリエステルカーボネート樹脂は、電子写真感光体製造で使用される溶液流延法、キャスト法、スプレー法、浸漬塗布法(ディップ法)等の公知湿式成形で容易に成形可能である。湿式成形で成形された電子写真感光体が十分な膜強度を得るためには極限粘度が0.3〜2.0dl/gであることが好ましく、さらに成膜性と膜強度を重視した場合、0.4〜1.5dl/gであることが好ましい。
【0034】
電荷発生層及び電荷輸送層は、上記の電荷発生物質、又は、電荷輸送物質を、それぞれバインダー樹脂と、適当な溶媒に溶解させ、その溶液を浸漬塗布法やスプレー法等により塗布し、乾燥させる事により形成できる。この溶媒としては、ハロゲン系有機溶媒と非ハロゲン系溶媒の2種類に大別できるが、一般的に可燃性が少ないハロゲン系溶媒が多用される。近年は、安全性や環境保全の観点から、非ハロゲン系溶媒が使用される比率が大きくなっており、本発明で用いられるポリエステルカーボネート樹脂も非ハロゲン系溶媒の多くに良溶である。
【0035】
非ハロゲン系溶媒ではベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、エチルセロソルブ等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等が挙げられる。またハロゲン系溶媒としては塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、これらの溶媒は非ハロゲン、ハロゲンを問わず単独で使用しても良く、又は、2種以上を併用し混合用溶媒として使用しても良い。
【0036】
電荷発生物質とバインダー樹脂の混合比は、10:1〜1:20の範囲内が好ましい。この電荷発生層の厚さは、0.01〜20μm、好ましくは0.1〜2μmが好適である。
【0037】
電荷輸送物質とバインダー樹脂との混合比は、10:1〜1:10の範囲内が好ましい。この電荷輸送層の厚さは、2〜100μm、好ましくは5〜30μmが好適である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって具体的に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール35.33g(0.18モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン22.83g(0.10モル)、テレフタル酸ジメチル15.53g(0.08モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、および炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ミリリットル四ッ口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下180℃に加熱し30分間攪拌した。その後、減圧度を150mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行ない、40分間その温度に保持しエステル交換反応を行なった。さらに、75℃/hrの速度で225℃まで昇温し、昇温終了の40分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を0.15kPa以下とした。その後、105℃/hrの速度で235℃まで昇温し合計6時間攪拌下で反応を行い、反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み常圧に戻し、生成したポリエステルカーボネートを取り出した。
この重合体の塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における極限粘度は0.70dl/gであった。
【0040】
次に、アルミニウムを厚さ約50nm蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、τ型銅フタロシアニン10部とフェノキシ樹脂5部、ポリビニルブチラール樹脂5部、ジメトキシエタン100部とを混合し、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行なった塗布液を用いて塗布し、乾燥し、厚さ約0.5μmの電荷発生層を設けた。次に、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾンを50部、上記合成重合により得られたポリエステルカーボネート樹脂を50部、テトラヒドロフランを350部、使用した塗布液を作製し、上記電荷発生層上に塗布し、風乾後100℃、8時間乾燥し、厚さ約20μmの電荷輸送層を設けて、積層型電子写真感光体を作製した。
この電子写真感光体の評価を、(株)川口電気製作所製EPA−8100静電気帯電試験装置にて、帯電特性を調べた。また、耐摩耗性については、東洋精機製作所株式会社製テーバ摩耗試験機を用いて削れ量を測定し、結果を表1に示した。
【0041】
実施例2
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール25.5g(0.13モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン18.3g(0.08モル)、テレフタル酸ジメチル1.9g(0.01モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0042】
実施例3
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール29.4g(0.15モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン34.2g(0.15モル)、テレフタル酸ジメチル19.4g(0.10モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0043】
実施例4
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール35.3g(0.18モル)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン37.8g(0.10モル)、テレフタル酸ジメチル15.5g(0.08モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0044】
実施例5
実施例1において、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール25.5g(0.13モル)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン30.3g(0.08モル)、テレフタル酸ジメチル1.9g(0.01モル)、ジフェニルカーボネート43.3g(0.202モル)、炭酸水素ナトリウム5×10−4g(6×10−6モル)を使用する以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られたポリエステルカーボネート樹脂の粘度測定結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製し、帯電特性および耐摩耗性(削れ量)を測定し、結果を表1に示した。
【0045】
比較例1
実施例1のポリカーボネート樹脂の代わりに、市販のBPZ型ホモポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学(株)製、商品名:ユーピロンPCZ、極限粘度0.78dl/g)を用いて、実施例1と同様の評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0046】
比較例2
実施例1のポリカーボネート樹脂の代わりに、市販のBPA型ホモポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学(株)製、商品名:ユーピロンE−2000、極限粘度0.61dl/g)を用いて、実施例1と同様の評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0047】
【表1】
【0048】
〔表1の記号説明〕
TCDDM:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール
BPA :2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BCFL :9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン
DMT :テレフタル酸ジメチル
極限粘度:20℃、0.5%ジクロロメタン溶液、ハギンス定数0.45で測定。
初期電位:DC帯電器にて50μA電流が流入するよう調整した時の初期帯電量(−V)
残留電位:露光(除電10Lux)後、4秒後の残留電位(−V)。
摩耗量 :荷重300g、CS−17 輪、1000回転後のテーバ摩耗試験を行なった際の摩耗量(mg)
【0049】
【発明の効果】
本発明の電子写真感光体は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール及び芳香族ジカルボン酸又はその誘導体より誘導されたポリエステルカーボネート樹脂をバインダー樹脂に使用することにより、電子写真感光体の帯電特性を維持したまま耐摩耗性が向上する。そのため電子写真画像の安定化や感光体寿命の延長効果が期待できる。
Claims (5)
- 導電性基体上に、感光層を有する電子写真感光体において、該感光層のバインダー樹脂として、ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体とカーボネート前駆体物質とを反応させてなるポリエステルカーボネート樹脂であって、ジヒドロキシ化合物の1〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノールであり、エステル基のモル量がエステル基とカーボネート基の合計モル量の3〜75モル%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dl/gであるポリエステルカーボネート樹脂を使用することを特徴とする電子写真感光体。
- ジヒドロキシ化合物の5〜100モル%がトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノールである請求項1記載の電子写真感光体。
- トリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカンジメタノール以外のジヒドロキシ化合物が下記構造式(1)および/または(2)である請求項1又は2記載の電子写真感光体。
- 前記構造式(1)中のXが−C(R3 )(R4 )−であり、かつ、R3 、R4 がメチル基である請求項3記載の電子写真感光体。
- 前記構造式(2)中、R5 およびR6 がメチル基であり、rおよびsが1である請求項3記載の電子写真感光体。
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