JP2004084127A - 含浸シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】非収縮性繊維を含む第1繊維層1およびこれに隣接し且つ熱収縮した繊維を含む第2繊維層2を有し、両繊維層が部分的に多数の接合部3によって厚さ方向に一体化されており、接合部3間において第2繊維層2の熱収縮によって第1繊維層1が突出して多数の凸部4を形成している立体不織布10に、チキソトロピー性を有する基剤を含浸させてなる含浸シート。第1繊維層1の側が対象面に当接するように使用される。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チキソトロピー性を有する基剤を、不織布に含浸させてなる含浸シートに関する。基剤としては、好ましくは化粧料基剤が用いられる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
各種クリームなどのチキソトロピー性を有する化粧料は、これを適量手にとって皮膚に直接塗り込んだり、一旦脱脂綿に付着させた後に肌に塗り込んで使用されることが一般的である。しかし、この使用方法では、化粧料の皮膚への塗布量が不均一になったり、少量で大面積を迅速に塗布することが容易でない。
【0003】
化粧水塗布、保湿パック、クレンジング、汗拭き、脂とり等の目的で、化粧料をシートに含浸させた対人用の清拭材も知られている。例えば本出願人は先に特開2000−290899号公報において、エンボス加工により凹凸賦形された2層以上のシートを重ね合わせてなるウエットシートを提案した。このウエットシートは、嵩高く十分な厚み感を有し、拭き心地が良く、使用時によれず、且つ柔軟で風合いに優れたものである。しかし、高繊維密度(高見掛け密度)のシートと低粘度薬剤との組み合わせは、薬剤の保持量が少なくそのため薬剤の転写量が少ないという問題がある。また高繊維密度(高見掛け密度)のシートと高粘度薬剤との組み合わせは、薬剤の保持量が少なくそのため転写量が少ないという問題や、薬剤が高粘度のため塗工が困難であるという問題がある。他の組み合わせとして、低繊維密度のシートと低粘度薬剤との組み合わせも考えられるが、保存時に薬剤の液ダレが発生したり、薬剤の保持量が少なくその転写量が少なくなるという問題がある。また、別の組み合わせとして、低繊維密度のシートと高粘度薬剤との組み合わせも考えられるが、薬剤が高粘度のため塗工が困難であるという問題がある。
【0004】
チキソトロピー性を有する基剤として例えば化粧料基剤を含浸させて、これを肌に展着させる場合、エンボス加工によって形成された凸部が展着動作に十分追従しないことから、化粧料基剤に十分な剪断力が加わらない。そのため化粧料基材の粘度が十分に下がらず、それに起因して十分な量の化粧料基材が肌に転写しなかったり、転写できる面積が狭いことがある。従って、シートにチキソトロピー性を有する基剤を塗工することは容易に類推できるが、低繊維密度のシートにチキソトロピー性を有する基剤を含浸させて、これを対象面に転写させる含浸シートは容易に類推できるものではない。
【0005】
清拭材とは別に、特開平9−111631号公報には、熱収縮性繊維を含む第一繊維層の片面に、前記熱収縮性繊維が収縮する温度において実質的に収縮しない繊維からなる第二繊維層が積層されてなり、該第二繊維層が表面に筋状の規則的な多数の皺を形成している多皺性不織布が記載されている。両繊維層は線状熱融着により厚さ方向に一体化され、線状熱融着部が凹部、線状熱融着部同士の間が凸部になっている。しかし、この多皺性不織布は、平面方向へ伸張させたときの回復性や、厚み方向へ圧縮させたときの変形性が十分でない。従って、この多皺性不織布にチキソトロピー性を有する化粧料基剤を含浸させて、これを肌に展着させる場合、平面方向へ伸張させたときの回復性や、厚み方向へ圧縮させたときの変形性が十分でないことから、やはり化粧料基剤に十分な剪断力が加わらない。そのため化粧料基材の粘度が十分に下がらず、それに起因して十分な量の化粧料基材が肌に転写しない。
【0006】
従って、本発明は、チキソトロピー性を有する基剤、好ましくは化粧料基剤を、均一に対象面に塗布し得る含浸シートを提供することを目的とする。
更に本発明は、保存中に基剤が偏在化することが防止され、また基剤の対象面への転写性が良好な含浸シートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、低繊維密度のシートにチキソトロピー性を有する基剤を含浸させることで、基剤を多量に且つ高効率で対象面に転写でき、しかもシートの感触も良好であることを知見した。更に、シートに凹凸構造を形成することで、対象面の形状や動きに追従してシートの表面が変形し、且つ凹凸形状の凸部が厚み方向に圧縮変形して、基剤の転写量及び転写率が一層向上することを知見した。
【0008】
本発明は前記知見に基づきなされたもので、非収縮性繊維を含む第1繊維層およびこれに隣接し且つ熱収縮した繊維を含む第2繊維層を有し、両繊維層が部分的に多数の接合部によって厚さ方向に一体化されており、前記接合部間において前記第2繊維層の熱収縮によって前記第1繊維層が突出して多数の凸部を形成している立体不織布に、チキソトロピー性を有する基剤を含浸させてなり、前記第1繊維層の側が対象面に当接するように使用される含浸シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の一実施形態としての含浸シートの斜視図が示されており、図2には図1におけるII−II線断面図が示されている。
【0010】
図1に示す含浸シートは、不織布からなる基材シート10に基剤が含浸されてなるものである。基材シート10は、第1繊維層1及びこれに隣接する第2繊維層2を備えている。第1繊維層1と第2繊維層2とは、部分的に多数の接合部3によって厚さ方向に接合一体化されている。本実施形態においては、各接合部3は円形であって断続的に形成されており、全体として菱形格子状のパターンを形成している。接合部3は圧密化されており、基材シート10における他の部分に比して厚みが小さく且つ密度が大きくなっている。
【0011】
接合部3は、例えば熱エンボス、超音波エンボス、接着剤による接着などの各種接合手段によって形成される。本実施形態における接合部3は前述の通り円形のものであるが、接合部3の形状は、楕円形、三角形若しくは矩形又はこれらの組み合わせ等であってもよい。また接合部を連続した形状、例えば直線や曲線などの線状に形成してもよい。
【0012】
第1繊維層1は、非収縮性繊維を含む繊維の集合体から構成されている。一方、第2繊維層2は、熱収縮した繊維を含む繊維の集合体から構成されている。本明細書において、非収縮性繊維とは、熱収縮性を全く示さないか或いは殆ど示さない繊維、及び第2繊維層2に含まれる熱収縮した繊維の熱収縮温度以下では熱収縮しない熱収縮性繊維を包含する。
【0013】
基材シート10は、菱形格子状のパターンからなる多数の接合部3によって取り囲まれて形成された閉じた領域を多数有している。この閉じた領域において、第1繊維層1は、第2繊維層2の熱収縮によって突出した多数の凸部4を形成している。本実施形態の凸部4はドーム状の形状をなしている。凸部4の内部は第1繊維層1を構成する繊維で満たされている。また、基材シート10の製法によっては、凸部4の外面を構成する繊維を該ドーム状の形状に沿うように配向させることができる。一方、第2繊維層2においては、接合部3間はほぼ平坦面を保っている(図2参照)。そして、基材シート10全体として見ると、その第2繊維層2側が平坦であり、且つ第1繊維層1側に多数の凸部4を有している立体構造となっている。つまり、基材シート10は立体不織布となっている。
【0014】
このような凸部4を有する基材シートに基剤が含浸されてなる含浸シートを用いて該基剤を対象面に展着させる場合には、第1繊維層1側の面を対象面に当接させながら展着動作を行う。つまり、第1繊維層1の側が使用面(対象面に当接する面)となる。凸部4は前述の構造を有していることから、展着動作中には、展着動作に追従して凸部4が動き、これによって基剤に十分な剪断力が加わる。その結果基剤の粘度が低下して、十分な量の基剤が対象面に転写すると共に対象面に均一に塗り広げられる。また、展着動作中に凸部4が動くことに起因して、対象面が例えば肌の場合には肌に対するマッサージ効果も発現するという利点がある。更に、第1繊維層1側は、多数の凸部4が存在していることに起因して表面積が高められているので、基剤の転写性が良好となる。
【0015】
展着動作に凸部4の十分に追従させる点から、凸部4を含む基材シート10は厚み方向への圧縮に対する変形性が高いことが好ましい。また、対象面が肌の場合、肌に対するマッサージ効果や、肌触りの点から、凸部4を含む基材シート10は、嵩高く、柔軟性であることが好ましい。このような基材シートとなすためには、前述した通り、第2繊維層2の熱収縮によって、第1繊維層1を突出させて多数の凸部4を形成することが有効である。基材シートにエンボス加工を施して凸部を形成することも考えられるが、そのようにして形成された凸部は剛直なものであり、厚み方向へ圧縮させたときの変形が十分でなく、展着動作に対する追従性が低いものである。
【0016】
展着動作に凸部4を一層良好に追従させる点から、基材シート10は、平面方向への伸縮性を有していることが好ましい。具体的には、基材シート10は、その50%伸張時の伸張回復率が50%以上、特に60%以上、とりわけ60〜90%であることが好ましい。伸張回復率は、基材シート10の流れ方向及び幅方向において値が異なる場合があるが、少なくとも何れかの方向において測定された伸張回復率の値が前記範囲内であれば、十分な伸縮性が発現する。
【0017】
伸張回復率は次の方法で、温度23℃、湿度65%RHの測定環境で測定される。株式会社東洋ボールドウイン製の引張圧縮試験機RTM−100(商品名)を用い引張モードで測定する。先ず、基材シート10を50mm×50mmの大きさに裁断し測定片を採取する。測定片を引張圧縮試験機に装着されたエアーチャック間に初期試料長(チャック間距離)30mmでセットし、引張圧縮試験機のロードセル(定格出力5kg)に取り付けられたチャックを100mm/分の速度で上昇させて、測定片を伸張させる。測定片が初期試料長の50%、つまり15mm伸びた時点で、チャックの移動方向を逆転させ、チャックを100mm/分の速度で下降させ、初期試料長の位置まで戻す。この間の操作でロードセルで検出される荷重と、測定片の伸びとの関係をチャートに記録し、このチャートに基づき以下の式から伸張回復率を求める。
伸張回復率=回復伸び/最大伸び長さ(=15mm)
ここで、回復伸びは、最大伸び長さ(=15mm)からチャックを下降させて、初めて荷重ゼロを記録したときの、最大伸び長さからのチャック移動距離で定義される。
【0018】
基材シート10に伸縮性を付与するためには、例えば第2繊維層2が、熱収縮した潜在捲縮繊維を含むことが好ましい。潜在捲縮性繊維は、加熱される前は、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、且つ所定温度での加熱によって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。潜在捲縮性繊維を用いることで、熱収縮性と伸縮性の両者を同時に発現させることができる。潜在捲縮性繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号に記載のものが挙げられる。第2繊維層2の重量を基準として、第2繊維層2中に、熱収縮した潜在捲縮繊維が30〜100重量%、特に50〜100重量%含まれていることで、基材シート10に十分な伸縮性が付与される。
【0019】
展着動作中に肌触りを良好にする観点から、基材シート10は嵩高いものであることが好ましい。また、十分な量の基剤を含浸させ得る点から、基材シート10は嵩高であることに加えて厚みのあるものであることが好ましい。これらの観点から、基材シート10においては、図3(a)に示すように、第1繊維層1の見掛け厚み(t1)が0.1〜5mm、特に0.1〜3mmであることが好ましく、第2繊維層2の見掛け厚み(t2)が0.2〜3mm、特に0.3〜3mmであることが好ましい。また、第1繊維層1の見掛け厚みと第2繊維層2の見掛け厚みとの比(t1/t2)が0.5〜8、特に1〜5であることが好ましい。基材シート10の全体の厚み(無荷重下の厚み)はt=t1+t2で表され、その値は0.3〜8mm、特に0.4〜6mmであることが好ましい。
【0020】
見掛け厚み(t1)が0.1mm未満であると、基剤を十分に含浸させられない場合があり、5mm超であると、厚くなりすぎて携帯に不便なことがある。見掛け厚み(t2)が0.2mm未満であると、熱収縮したときに凸部が安定に形成されなかったり、繊維ムラが生じてしまうことがある。3mm超であると、第2繊維層の熱収縮が安定して行えない場合があり、また厚くなりすぎて携帯に不便なことがある。全体の厚みtが0.3mm未満であると、基剤を十分に含浸させられない場合があり、8mm超であると、厚くなりすぎて携帯に不便なことがある。見掛け厚みの比(t1/t2)が0.5未満であると、展着動作に対する追従性が低くなることがあり、8超であると、厚み方向へ圧縮させたときの変形が良好でない場合があり、また感触が悪くなる場合がある。
【0021】
第1層繊維及び第2繊維層の見掛け厚みは、以下のようにして測定される。温度23℃、湿度65%RHの測定環境で、基材シートから、縦横の長さが30mm×30mmの測定片を切り出す。そして、縦方向〔第1繊維層を構成する不織布(繊維集合体)の繊維配向方向(不織布製造時の流れ方向)〕に略平行で且つ接合部3〔図3(a)参照〕を通る線で切断面を作る。ハイスコープ(オリンパス製、SZH10)にて、この断面の拡大写真を得る。拡大写真のスケールを合わせて、第1繊維層部の最大厚みを求め、これを第1繊維層の見掛け厚み(t1)とし、その第1繊維層の最大厚み測定部位において、第2繊維層部の厚みを測定し、これを第2繊維層の見掛け厚み(t2)とする。即ち、第1繊維層及び第2繊維層の見掛け厚みは、シートの厚み方向に延びる同一直線に沿って測定する〔図3(a)参照〕。全体の厚みtは、t1とt2との和から算出される。
【0022】
基材シート10は、第1繊維層1の繊維密度(d1)よりも第2繊維層2の繊維密度(d2)の方が高いことが好ましい。具体的には、第1繊維層1の繊維密度(d1)が1〜50kg/m3、特に10〜30kg/m3 であることが好ましく、第2繊維層2の繊維密度(d2)が30〜200kg/m3 、特に40〜100kg/m3 であることが好ましい。
【0023】
両繊維密度(d1),(d2)が前記の関係を満たしていると、基材シートに含浸された基剤が、第1繊維層内に素早く吸収され、しかも第1繊維層内に含浸された基剤が粗密勾配によりスムーズに第2繊維層に移行するため、基剤が基材シートの表面に残ることによる、保存時の液ダレや不均一な基剤の展着等を防止することができる。尚、本実施形態において、第1繊維層と第2繊維層とは積層されて部分的に接合されており、両者の接合部以外の部分(凸部を形成する部分)においても、第1繊維層と第2繊維層とが接触している。接合部以外の部分(凸部を形成する部分)における第1繊維層と第2繊維層とは、その全域にわたって隙間無く接触していることが好ましい。
【0024】
第1繊維層の繊維密度(d1)が1kg/m3 未満であると、疎な繊維空間になり過ぎ、基剤を十分に含浸できず、また外観が良好でなくなる場合がある。50kg/m3 超であると、第2繊維層との疎密勾配のバランスが難しくなり、充分な毛細管力を発現できない場合がある。第2繊維層の繊維密度(d2)が30kg/m3 未満であると、充分な毛細管力を発現できる程に密な構造には成り得ず、保存時の液ダレや基剤の不均一な展着が生じる場合がある。200kg/m3 超であると、第2繊維層が密になり過ぎて、基剤を保持し得る量が低下したり、第2繊維層が硬くなる場合がある。
【0025】
第1繊維層と第2繊維層とからなる疎密構造を形成させ、充分な毛細管力を発現させる観点から、繊維密度(d1)と繊維密度(d2)との比(d2/d1)は1.2以上、特に3〜10であることが好ましい。
【0026】
第1繊維層及び第2繊維層の繊維密度は、以下のように測定される。温度23℃、湿度65%RHの測定環境で、基材シートから、縦横の長さが30mm×30mmの測定片を切り出す。第1繊維層の繊維密度については、前記測定片の縦方向〔第1繊維層を構成する不織布(繊維集合体)の繊維配向方向(不織布製造時の流れ方向)〕に略平行で且つ接合部を通る線上で厚み方向に垂直に切断面を作る。この断面より、上述した見掛け厚みの測定におけるのと同様にして、第1繊維層の見掛け厚みt1を測定する。次に、収縮前(第1繊維層と第2繊維層の接合前)に予め測定した第1繊維層の面積(a1 ×b1 )と第1繊維層を第2繊維層に接合させ収縮させた後に測定した第1繊維層の面積(a2 ×b2 )とから、式〔収縮面積率A=(a1 ×b1 −a2 ×b2 )÷(a1 ×b1 )〕により測定片の収縮面積率(A)を求め〔図3(b)参照〕、更に、求めた収縮面積率(A)と、収縮前(第1繊維層と第2繊維層の接合前)に予め測定した第1繊維層の坪量(P1)とから、式〔第1繊維層の坪量P2=P1×100/(100−A)(g/m2)〕により第1繊維層の坪量(P2)を求める。そして、第1繊維層の繊維密度d1を、式〔d1=P2/t1(kg/m3 )〕から求める。第2繊維層12の繊維密度については、第1繊維層の繊維密度の測定と同様にして求めることができる。この際、第2繊維層の見掛け厚みt2は、上述した見掛け厚みの測定におけるのと同様にして測定し、この値を用いて繊維密度d2を算出する。
【0027】
基材シート10は、前述した無荷重下の厚みt及び3.7g/cm2 圧力下の厚みTに関し、以下の式で定義される圧縮率が30〜85%、特に40〜70%であることが、展着動作に対する凸部4の追従性が一層良好となり、また展着動作中の感触が向上する点から好ましい。ここで、3.7g/cm2の荷重は、人が含浸シートを使用する時にシートに加わる圧力にほぼ等しい。
圧縮率(%)=(t−T)/t×100
【0028】
3.7g/cm2 圧力下での厚みは次の方法で測定される。基材シート10を100mm×100mmの大きさに裁断し、これを測定片とする。温度23℃、湿度65%RHの測定環境で、荷重3.7g/cm2のダイヤルゲージ式の厚み計を用いて基材シート10の厚みを測定する。
【0029】
凸部4を含む基材シート10に十分な圧縮変形性および嵩高感を発現させる観点から、基材シート10はその坪量が10〜200g/m2 、特に40〜150g/m2 であることが好ましい。坪量は、基材シート10を50mm×50mm以上の大きさに裁断して測定片を採取し、この測定片の重量を最小表示1mgの電子天秤を用いて測定し坪量に換算することで求める。
【0030】
次に、第1繊維層1及び第2繊維層2を構成する繊維について説明する。第1繊維層1を構成する非収縮性繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなる繊維が好適に用いられる。熱可塑性ポリマー材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。またこれらの熱可塑性ポリマー材料の組み合わせからなる芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維も用いることができる。前記繊維の繊度は、0.5〜20dtex、特に1.0〜10dtexであることが、繊維の製造の容易さの点、及び良好な感触が発現する点から好ましい。
【0031】
第2繊維層2を構成する繊維としては、熱可塑性ポリマー材料からなり且つ熱収縮性を有するものが用いられる。特に、前述した通り潜在捲縮性繊維を用いることが好ましい。また熱収縮性繊維と非収縮性繊維とを混合して用いてもよい。
【0032】
第1繊維層1及び第2繊維層2には、前記以外の繊維、例えばレーヨン、コットン、親水化アクリル系繊維などの吸水性繊維を混綿することもできる。
【0033】
第1繊維層1を構成する繊維の集合体の形態としては、例えばカード法によって形成されたウェブ、熱融着法によって形成された不織布、水流交絡法によって形成された不織布、ニードルパンチ法によって形成された不織布、溶剤接着法によって形成された不織布、スパンボンド法によって形成された不織布、メルトブローン法によって形成された不織布、又は編地などが挙げられる。第1繊維層1が、カード法によって形成されたウェブの形態である場合には、基材シート10に、嵩高で且つ該ウェブを構成する繊維で満たされた凸部4が形成され、また該繊維が凸部4に沿うように配向する。一方、第1繊維層1が不織布又は編地の形態である場合には、中空のドーム状の凸部が形成される。特に、第1繊維層1が、カード法によって形成されたウェブを用いて構成されていると、第1繊維層1が極めて疎な構造となり、一般に含浸させにくい流体であるチキソトロピー性を有する化粧料基剤の含浸・保持が良好になる。また基材シート10を厚み方向へ圧縮させたときの圧縮変形性も高くなる。
【0034】
カード法によって形成されたウェブとは、不織布化される前の状態の繊維集合体のことである。つまり、不織布を製造する際に用いられるカードウエブに加えられる後処理、例えばエアスルー法やカレンダー法による加熱融着処理が施されていない状態にある、繊維同士が極めて緩く絡んでいる状態の繊維集合体のことである。カード法によって形成されたウェブを第1繊維層1に用いる場合に、第1繊維層1と第2繊維層2を接合させると同時に、または接合させた後、第1繊維層1中の繊維同士を、熱融着若しくは接着剤による接着又は機械的に交絡させる。
【0035】
一方、第2繊維層2を構成する繊維の集合体の形態としては、(1)潜在捲縮性繊維を含み且つカード法によって形成されたウェブ、または(2)熱収縮性を有する不織布として、熱融着法によって形成された不織布、水流交絡法によって形成された不織布、ニードルパンチ法によって形成された不織布、溶剤接着法によって形成された不織布、スパンボンド法によって形成された不織布、メルトブローン法によって形成された不織布が挙げられる。ここで、熱収縮性を有する不織布とは、所定温度での加熱によって収縮する性質の不織布のことである。更に、(3)熱収縮性を有するネットが挙げられる。
【0036】
第1繊維層1の坪量は、5〜50g/m2 、特に15〜30g/m2 であることが、基材シート10に十分な嵩高感を付与し、また圧縮変形性、ひいては柔軟性を高くする点から好ましい。同様の理由により、第2繊維層2の坪量は、5〜50g/m2 、特に15〜30g/m2 であることが好ましい。第1繊維層1及び第2繊維層2の坪量とは、第1繊維層1と第2繊維層2とを接合し基材シート10を形成する前のそれぞれの層の坪量のことである。
【0037】
チキソトロピー性を有する基剤を効率よく対象面に転写させるためには、基材シートにおける凸部は横方向の変形が大きいことが好ましい。凸部の横方向への変形の程度を表す一つの指標として、凸部の横方向へ荷重を加えたときの抵抗を表す値である摩擦係数がある。摩擦係数の値は見掛け密度によって異なるので、見掛け密度(kg/m3)当たりのKES摩擦係数MIU(−)である〔MIU/見掛け密度〕の値が、凸部の横方向への変形の程度を表す指標となる。この値が0.0025〜0.0120であると、基剤を対象面に効率よく転写でき、生産性よく基材シートを製造できる。また対象面が肌である場合には、皮膚に過度の刺激を与えない。
【0038】
KES摩擦係数は次の方法で測定される。温度23℃、湿度65%RHの測定環境で、基材シートを200×200mmの大きさに裁断し、これを測定片とする。カトーテック株式会社製のKES FB−4測定機を用いて測定片の摩擦係数を測定する。具体的には、測定片をFB−4測定機にセットし、ピアノ線を一定荷重(50gf)の接触力の下で標準測定距離(2cm)基材シートを滑らせる(実際には基材シートが移動する)。このようにして、表面特性であるMIU(摩擦係数の平均値)を測定する。
【0039】
基材シート10を製造する好ましい方法としては、例えば以下の方法(1)が挙げられる。
〔方法(1)〕
先ず、熱可塑性ポリマー材料からなり且つ熱収縮性を有し、更に潜在捲縮性繊維繊維を含む繊維の集合体からなる第2繊維層と、熱可塑性ポリマー材料からなる非収縮繊維の集合体からなる第1繊維層とを重ね合わせ、両者を接合部において部分的に接合させる。特に、第1繊維層として、繊維開繊用のカード機を用い繊維を開繊して形成されたカードウエブを用いることが前述した理由から好ましい。次いで第2繊維層を構成する繊維が熱収縮を開始する温度以上で熱処理して、第2繊維層を収縮させると共に複数の接合部によって取り囲まれた閉じた領域に位置する第1繊維層を突出させて多数の凸部を形成する。このとき、第2繊維層の熱収縮率は、熱収縮のコントロール、不織布の伸張回復性、圧縮変形性、凸部の形成に伴う嵩高性の点から、20〜90%、特に40〜80%とすることが好ましい。熱収縮率は面積収縮率であり、収縮前の基準面積S0 、基準面積の収縮後の面積S1 から下記の式にて求められる。
収縮率=(S0 −S1 )/S0 ×100
【0040】
第2繊維層を収縮させるには、例えば卓上型の恒温乾燥機や、熱接着不織布を製造する際に用いられるエアスルー熱処理機などが用いられる。
【0041】
基材シート10に含浸されるチキソトロピー性を有する基剤としては、例えば化粧料基剤、洗浄剤、床用ワックスなどがある。ここでは基剤の一例である化粧料基剤について説明する。化粧料基剤は、油性液剤、乳化液剤又は水性液剤からなり且つチキソトロピー性を有するものである。チキソトロピー性を有する化粧料基剤は、そのチキソトロピー性の故に含浸させることが困難であるが、後述する方法によれば容易に含浸させることが可能である。しかし、ひとたび化粧料基剤を基材シート10に含浸できれば、該基剤を均一に肌へ塗布することができ、また少量であっても大面積に迅速に塗布することが可能である。また、基材シート10に含浸された化粧料基剤は、通常の保存状態においては、そのチキソトロピー性の故に基材シート10内で安定に存在し、偏在化したり基材シート10から漏出するおそれがない。従って、化粧料基剤の肌への転写が良好に行われる。また、例えば化粧料含浸シートを毎葉の状態としてピロー包装体などの包装体中に複数枚包装しても、包装体内が化粧料基剤で過度に濡れることがない。
【0042】
化粧料基剤としては、各種スキンケアクリーム、紫外線防御クリーム、制汗剤、ファンデーション、口紅ベース、洗浄剤、メイク落とし剤など、油性液剤、乳化液剤又は水性液剤からなり且つチキソトロピー性を有するものであればその種類に特に制限はない。特に化粧料基剤は、25℃においてレオメータによって測定された流動物性が後述する通りであることが、化粧料含浸シートを保存した場合、シート内で化粧料基剤が偏在化したり、シートから漏出することがなく、また化粧料基剤を肌に塗布するときに該化粧料基剤の転写が良好に行われ、肌への展着も良く均一な塗布が出来る点から好ましい。
【0043】
化粧料基剤を構成する成分としては、水;エタノール、イソプロパノール、セタノールなどのアルコール類;保湿剤としてのグリセリン又はソルビトールなどの多価アルコール類;固体状又は液体状パラフィン、スクワランなどの炭化水素類;オリーブ油、カルナバロウ等のエステル油;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸;天然注出のスフィンゴシン誘導体;テトラデカメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのポリシロキサン類;オキタメチルシクロテトラシロキサン等のメチルポリシクロシロキサン;ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン等の変性シリコーン;サルフェート系界面活性剤、カルボキシレート系界面活性剤、エーテルカルボン酸系界面活性剤、アシル化アミノ酸系界面活性剤、リン酸系界面活性剤等の陰イオン性界面活性剤;カルボベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等の両イオン性界面活性剤;直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するモノ又はジアルキル付加型第4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレン付加型、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン付加型、アミンオキサイド系、モノあるいはジエタノールアミド系、その他ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルサッカライト系、N−ポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミド系等の多価アルコール型等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0044】
化粧料基剤には更に粉体を配合することが出来る。粉体としては、例えばマイカ、タルク、セリサイト、カオリン、ナイロンパウダー、ポリメチルシルセスキオキサン等の体質顔料;パール等の無機顔料:赤色202号、赤色226号、黄色4号、アルミニウムレーキ等の有機顔料;酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの紫外線防御用の無機粉体等を挙げることができる。これらの粉体は、メチルハイドロジェンメチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、メチルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理、レシチン処理、金属石鹸処理、脂肪酸処理、アルキルリン酸エステル処理がされていてもよい。
【0045】
化粧料基剤には、通常化粧品、医薬部外品、医薬品等に配合される各種成分を配合することもできる。このような成分としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩類;ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸等の粘度調整剤;パラベン等の防腐剤;p−メチルペンジリデン、D,L−ショウノウ又はそのスルホン酸ナトリウム塩、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム塩、3,4−ジメチルフェニルグルオキシル酸ナトリウム塩、4−フェニルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン−2’−カルボン酸イソオクチルエステル、p−メトキシ桂皮酸エステル、2−フェニル−5−メチルベンズオキサゾール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、4−t−ブチル−4’−メトキシベンゾイルメタン、ベンゾイルビナコロン誘導体、ベンゾイルケトン誘導体等の紫外線吸収剤;アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、水酸化アルミニウム、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドロキシグリシン、アルミニウムジルコニウムペンタクロロヒドレート、p−フェノールスルホン酸亜鉛、サリチル酸、タンニン酸などの発汗抑制剤;殺菌剤;pH調整剤;湿潤剤;色素;薬効成分;香料等を挙げることができる。
【0046】
前述した化粧料基剤などの各種基剤は、剪断速度0.05s−1における粘性係数η1が100Pas以上30000Pas未満、特に100Pas以上10000Pas未満であることが、含浸シートからの基剤の転写のさせ易さ、シート内での基剤の偏在化の防止、シートからの基剤の漏出防止の点から好ましい。
【0047】
また、基剤は、剪断速度50.0s−1における粘性係数η2が0.1Pas以上100Pas未満、特に0.5Pas以上50Pas未満であることが、基剤が化粧料基剤である場合、これを肌に塗布するときに、肌への展着が良く均一な塗布が出来る点から好ましい。
【0048】
前記のη1及びη2に関し、両者はη1>η2の関係を満たすことが、剪断応力が加わる塗布操作のときにのみ化粧料基剤が流動し易くなり、保存安定性と塗布のし易さとが両立する点から好ましい。この効果を一層高めるために、η1はη2の10〜10000倍、特に50〜5000倍であることが好ましい。
【0049】
基剤の含浸量は、30〜500g/m2、特に80〜400g/m2であることが、例えば基剤として化粧料基剤を用いる場合に、身体や顔に必要とされる量の化粧料を転写し得る点から好ましい。同様の理由により、基剤は、基材シート10の重量に対して100〜1500重量%、特に200〜1200重量%含浸されていることが好ましい。基材シート10は前述の通り嵩高で立体形状のものであることから、基剤の含浸量を大きくすることが容易である。
【0050】
基剤の基材シート10への含浸は例えば次の方法で行うことができる。即ち、基剤の塗布含浸手段としてエクストルージョン型ダイコータを用い、基材シート10における第1繊維層1の面に、ダイコータのスリットから基剤を押し出す。チキソトロピー性を有する基剤はスリットにおける剪断力によって適切な粘度、押し出し圧力に調整され、均一に塗布される。基剤の塗布含浸にエクストルージョン型ダイコータを用いると、他の塗布方式に比較して広い粘度範囲の基剤を塗布含浸させることができるので好ましい。また、基剤の供給から塗布含浸までが密閉系であることから、基剤が揮発性である場合でも組成の変化に変化が生じないので好ましい。更に、定量塗布が可能である点からも好ましい。しかしながら、ダイコータに限られず他のコータ、例えばリバースコータ、グラビアコータなどを用いてもよい。基剤を押し出すときの剪断速度は、均一且つ安定した塗布含浸を行い得る観点から、102〜106s−1、特に103〜105s−1とすることが好ましい。
【0051】
基剤の含浸の別法として、次の方法も挙げられる。即ち、ドクターブレードを用い、ガラス板などの平坦な板上に、基剤の塗膜を形成する。塗膜の上に、含浸させるべき基材シート10における第1繊維層1の面が密着するように基材シート10を載せる。基材シート10の上面に一定速度でローラーをかけて、基材シート10と塗膜とが均一に接するようにした後、基材シート10を剥がし含浸シートを得る。ローラーとしては、一定荷重のローラーを使用する。不足であれば手で更に荷重を加える。荷重が不足すると基剤を基材シート10に十分に含浸させることができない場合があり、荷重が過剰であると基剤が基材シート10から押し出されるので目的量の基剤を含浸させることができない場合がある。ローラーは複数回かけて含浸時間を長くとることが、基剤を十分に含浸させ得る点、及びむら無く含浸できて基剤の肌への転写を効率的に行い得る点から好ましい。
【0052】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。本実施形態においては、前記実施形態における基材シート10の第2繊維層2側の表面に液体不透過性シートを積層して、シートの使用時に化粧料基剤が手に付着しないようにする。更に別の実施形態として、液体不透過性シートの外面(液体不透過性シートにおける基材シート対向面と反対側の面)に、布様の感触を有する柔軟性シート、例えば柔軟な不織布を更に積層して、使用時における感触を高めたり、滑りを防止するようにする。
【0053】
図4は本発明の含浸シートの別の実施形態を示す断面図である。図4に示す含浸シート21は、三層構造の積層体22からなる。この積層体22は、基材シート23、該基材シート23の一方の面に積層された液不透過性シート24、及び該液不透過性シート24における基材シート対向面と反対側の面に積層された柔軟性シート25からなる。その結果、積層体22は、中間に液不透過性シート24が位置し、その両側に基材シート23及び柔軟性シート25がそれぞれ配され、該基材シート23及び該柔軟性シート25が積層体22の外面をなす構造となっている。尚、簡便のため、図4には基材シート23における凸部が描かれていないが、実際には前述の通り基材シート23には多数の凸部が形成されている。
【0054】
図5には、積層体22を製造する工程図が示されている。図5に示すように、積層体22は押し出しラミネート法(サンドイッチラミネート法)によって製造されることが好ましい。この方法には、各シート間の剥離が起こりにくく、また液不透過性シート24にピンホールが発生し難いという利点がある。ピンホールの発生は、含浸シートの使用中に基剤が柔軟性シート25へ透過する原因となる。
【0055】
図5に示す積層体22の製造方法においては、特に制限されないが例えば、予め基材シート23及び柔軟性シート25を別工程で製造しておく。これを原反23’,25’として装置に取り付けておき、該原反23’,25’から基材シート23及び柔軟性シート25をそれぞれ繰り出す。これと共にTダイ26から溶融状態の合成樹脂をシート状に押し出し、液不透過性シート24を成形する。固化する前の状態の液不透過性シート24の両側に基材シート23及び柔軟性シート25をそれぞれ重ね合わせ、ニップロール27,27間で挟圧することで、これら三者が積層一体化された積層体22が得られる。
【0056】
別法として、基材シート23の原反23’又は柔軟性シート25の原反25’を装置に取り付けておき、該基材シート23又は柔軟性シート25を繰り出す。これと共にTダイ26から溶融状態の合成樹脂をシート状に押し出し、液不透過性シート24を成形する。固化する前の状態の液不透過性シート24の片面に基材シート23又は柔軟性シート25を重ね合わせ、ニップロール27,27間で挟圧することで、これら二者が積層一体化された積層シートを得る。次いで、該積層シートにおける液不透過性シート24の面に、柔軟性シート25又は基材シート23を重ね合わせ、エンボスによって積層シートと柔軟性シート25又は基材シート23とを積層一体化させ、基材シート23、不透過性シート24及び柔軟性シート25が積層一体化された積層体22が得られる。
【0057】
基材シート23及び柔軟性シート25として同種のものを用いる場合には次の方法を用いることもできる。先ず、固化する前の状態の液不透過性シート24の片面に、基材シート23(柔軟性シート25)を重ね合わせ、これら二者が積層一体化された積層シートを得る。次に、この積層シートにおける液不透過性シート24の面同士が対向するように2枚の積層シートを重ね合わせ、エンボスによって2枚の積層シートを一体化させる。これによって積層体22が得られる。これらの方法において用いられるエンボスの方法に特に制限はなく、圧力下に熱を伴うか又は伴わずに行うことができる。
【0058】
前述の各方法においては、Tダイ26から溶融状態の合成樹脂をシート状に押し出し液不透過性シートを成形する場合に、剥離防止性を向上させる目的で、2機以上のTダイを用い、多層同時押し出しを行って2層以上の樹脂層が積層されてなる液不透過性シートを製造してもよい。この場合、各層を構成する樹脂は同種でも異種でも良い。
【0059】
液不透過性シートとしては、基材シートに含浸されている基剤が、含浸シートの使用中に柔軟性シートへ透過することを阻止し得るものが用いられる。液不透過性シートの具体例としては、一般的な熱可塑性樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、セロハン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。ヒートシール性、柔軟性の点から、これらの樹脂の一部変性体や共重合体を用いても良い。前記樹脂を二種以上組み合わせて用いてもよく、或いは二層以上の積層構造で組み合わせることもできる。中でも、アイオノマー樹脂からなるフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどが、加工性が良好なことから好ましく、特にアイオノマー樹脂からなるフィルム、直鎖低密度ポリエチレンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムが、柔軟性、シール性、耐ピンホール性、化粧料基剤の透過阻止性が高い点で好ましい。
【0060】
液不透過性シートは、その坪量が5〜100g/m2、特に10〜80g/m2であることが、基剤の透過を十分に阻止し得る点、基材シートの風合い維持の点、及び製造経費の点から好ましい。
【0061】
柔軟性シートは、含浸シートの使用時に手と接するシートであり、基剤は含浸しない。柔軟性シートとしては、風合いの良好なものが用いられる。そのような柔軟性シートとしては布様の風合いを有するものが好ましく、不織布、織布、編物、発泡体、ネット、開孔フィルムなどが用いられる。基剤の裏周りを防止する点、空隙率が高い点、及び肌感触が良好である点から不織布を用いることが好ましい。
【0062】
柔軟性シートとして不織布を用いる場合、エアースルー法、レジンボンド法、スパンレース法、エアレイド法により製造された不織布を用いることが、低密度であり、また感触が良好であることから好ましい。坪量は、10〜200g/m2、特に15〜150g/m2であることが、肌に対する感触が良好である点、及び基剤の裏まわり防止の点から好ましい。構成繊維としては、親水性繊維及び疎水性繊維の何れをも用いることができる。その例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系繊維、ポリアクリルニトリル等のアクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリフルオロエチレン系繊維などの合成繊維;綿、麻、毛、絹などの天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラなどの再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;及びこれらの変性物や共重合体からなる繊維を用いることができ、また、これらの材料を二種以上組み合わせた複合繊維を用いることもできる。これらの繊維は異形の断面をしていてもよい。また、化粧料基剤の表面張力、繊維の濡れ性及び繊維構造体の毛細管径を考慮して、前記繊維を複数種類組み合わせて用いてもよい。但し、基剤と非常に馴染み易いポリオレフィン系繊維の含有量は50重量%以下であることが好ましい。構成繊維の繊度は、0.011〜16.5dtex、特に0.11〜13.2dtexであることが、感触が良好である点、及び滑りを防止する点から好ましい。不織布を構成する繊維は、そのすべてが前記範囲の繊度であることが最も好ましいが、不織布全体の30重量%以上、特に50重量%以上の繊維が前記範囲の繊度であればよい。不織布の厚みは、3.7g/cm2の荷重下で0.3〜5mmであることが好ましく、携帯性の点から0.3〜2.0mmであることが更に好ましい。
【0063】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態においては、基材シート10における凸部4はその全体が繊維で満たされていたが、これに代えて図6に示すように、凸部4の内部が空洞となっていてもよい。つまりドーム状の立体形状は中空状であってもよい。この場合には、第1繊維層1を構成する繊維集合体は不織布または編地からなる。
【0064】
本発明の含浸シートは、対人用のワイパーに限られず、対物用のワイパーや対動物用のワイパーとしても好適である。
【0065】
【実施例】
以下の例中、特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「重量%」及び「重量部」を意味する。
【0066】
〔実施例1〕
(1)化粧料基剤の調製
以下の処方を用いてO/Wクリーム(乳化基剤)を調製した。先ず、70℃に加熱した油相にエタノールを除く水相を加え、撹拌しながら20分かけて室温まで冷却した。次いでエタノールを加え、更に10分間撹拌してO/Wクリームを得た。得られたO/Wクリーム(化粧料基剤)はチキソトロピー性を示した。その25℃における粘性係数η1及びη2をレオメーター(Rheometrics社製、FluidsSpectromter RFS−11)で測定したところ、η1=330Pas、η2=0.98Pasであった。
【0067】
流動パラフィン 8.0部
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 2.0部
1,3ブチレングリコール 6.0部
ポリエチレングリコール 4.0部
カルボキシビニルポリマー 0.5部
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.2部
水酸化ナトリウム水溶液(50%) 0.3部
パラオキシ安息香酸メチル 0.5部
エタノール 15.0部
精製水 63.5部
合計 100.0部
【0068】
(2)基材シートの製造
(2−a)第1繊維層の製造
大和紡績株式会社製のポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの芯/鞘構造を有する熱融着性の芯鞘型複合繊維(2.2dtex×51mm)をカードにて解繊してウエブとし、120℃にて繊維交絡点(繊維同士の交点等)を熱融着して坪量15g/m2 の不織布を得た。得られた不織布に対して70℃にて熱風処理を行い、厚み1mm、見掛け密度25kg/m3 の嵩高不織布(第1繊維層)を得た。
【0069】
(2−b)第2繊維層の製造
大和紡績株式会社製の潜在螺旋状捲縮性繊維〔CPP繊維(商品名)、2.2dtex×51mm〕を原料として、カード法によって坪量35g/m2 のウエブ(第2繊維層)を得た。
【0070】
(2−c)基材シートの製造
第1繊維層と第2繊維層とを積層し、所定のパターンにて超音波シールし、両者を部分的に接合して一体化させた。この際のシールパターンとしては、規則的に配列されたドット状のパターンを用いた。具体的には、一個のピンを中央ピンCと定めたときに、該中央ピンの周囲に、長手方向(シート製造時のMD方向)に隣接する2本の前後ピンと、幅方向(シート製造時のCD方向)に隣接する2本の左右ピンと、該中央ピンに対して斜め45゜に位置する4本の斜めピンとが位置し、且つ、中央ピンの中心点と前後ピン及び左右ピンの中心点との距離P1が約7mm、中央ピンの中心点と各斜めピンの中心点との距離P2が約5mmであるパターンが、各ピン(エンボス板の周縁部近傍に位置するピンを除く)に対して成立するような配列で、エンボスピンが配列されたエンボス面で、積層された第1繊維層及び第2繊維層を加圧した。得られた複合シートを130℃にて1〜10分程度、熱乾燥させることにより、第2繊維層としての不織布を水平方向に面積収縮率56%にて収縮させ、これにより、凸部が多数形成された基材シートを得た。
【0071】
得られた基材シートについて、第1繊維層の見掛け厚み(t1)、第2繊維層の見掛け厚み(t2)、第1繊維層の繊維密度(d1)、第2繊維層の繊維密度(d2)を測定し、それらの結果及び/又はそれらの結果に基づく比を表1に示した。また前述の方法で〔MIU/見掛け密度〕の値も測定した。
【0072】
(3)含浸シートの製造
前述の方法で得られたO/Wクリームを平坦なガラス板の上に載せ、ドクターブレードを用いてこのO/Wクリームの塗膜を形成した。150mm×100mmに裁断された基材シートにおける第1繊維層の面が塗膜に密着するように、この基材シートを塗膜の上に載せた。自重180gのローラーを用い、手で更に約50gの荷重を加えた状態下、基材シートの上面に該ローラーを8回(速度300mm/s)かけて基材シートと塗膜とが均一に接するようにした後、基材シートを剥がした。この操作を2回繰り返して含浸シートを作製した。3.3gの化粧料基剤(基剤含浸量220g/m2)が基材シートに含浸された。
【0073】
〔実施例2〕
第1繊維層として、坪量12g/m2の不織布を製造し、該不織布と第2繊維層としてのウエブとを接合した後の収縮の際の面積収縮率を30%とした以外は実施例1と同様にして基材シートを得た。基材シートの第2繊維層側の面にアイオノマー樹脂を33g/m2押出ラミネート法によってラミネートして液不透過性シートを積層した。これ以外は実施例1と同様にして含浸シートを得た。
【0074】
〔実施例3〕
第1繊維層として、坪量12g/m2の不織布を製造し、該不織布と第2繊維層としてのウエブとを接合した後の収縮の際の面積収縮率を15%とした以外は実施例1と同様にして基材シートを得た。基材シートの第2繊維層側の面にアイオノマー樹脂を30g/m2押出ラミネート法によってラミネートして液不透過性シートを積層した。更に、液不透過性シートの外面に坪量20g/m2のスパンボンド不織布(柔軟性シート)をサンドイッチさせる形で押出ラミネートして該不織布を積層した。これ以外は実施例1と同様にして含浸シートを得た。
【0075】
〔実施例4〕
第1繊維層の坪量を100g/m2、見掛け厚みを7mm(繊維密度100kg/m3)とし、第2繊維層の坪量を120g/m2、見掛け厚みを1mm(繊維密度240kg/m3)とする以外は実施例1と同様にして含浸シートを得た。
【0076】
〔比較例1〕
第1繊維層として、坪量12g/m2の不織布を製造し、該不織布と第2繊維層としてのウエブとを接合し、且つ得られた複合シートを熱収縮させない以外は実施例1と同様にして含浸シートを得た。この含浸シートにおける基材シートには凸部が形成されていない。
【0077】
〔比較例2〕
基材シートとして、坪量が120g/m2(坪量30g/m2の4プライ品)であるパルプとPET/PE繊維製の湿式抄紙の紙に凹凸加工を行ったものを用いる以外は実施例1と同様にして含浸シートを得た。
【0078】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた含浸シートについて、以下の方法で使用感、保存安定性及び転写性を評価し、転写面積を測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
〔使用感〕
10人の専門パネラーの両腕及び首を含浸シートで拭き、化粧料基剤を皮膚に塗布して、含浸シートの使用感をのびやすさ及びべたつきのなさの観点から評価した。のびやすさ又はべたつきのなさが悪いと判断した人数が3人以下を○、4人又は5人を△、6人以上を×と評価した。
【0080】
〔保存安定性〕
含浸シートをその短辺(100mm)同士が突き合わさるように三つ折り(C字折り)にし、10枚一組にして重ねた。この状態で、アルミニウムを主成分とするピロー容器に入れ、40℃及び50℃の各温度にそれぞれ保存した。保存に際しては、三つ折りされたシートの短辺(75mm)が上下方向となるように、ピロー容器を縦置きにした。1ヶ月経過後、ピロー容器から含浸シートを取り出し、基剤ダレ及び基剤の裏回りの観点から保存安定性を評価した。
基剤ダレは、三つ折りされ縦置きにされた含浸シートを上下半分に切断し、切断されたそれぞれの重量を測定することで評価した。上部の重量が下部の重量の8割以上になった場合を○、7割以上8割未満になった場合を△、7割未満になった場合を×とした。
基剤の裏回りは、含浸シート裏面の縁から上方へ向かって滲む基剤の高さで評価した。シートの縁から滲んだ基剤の高さが10mm未満の場合を○、10mm以上の場合を×とした。
【0081】
〔転写性〕
10人の専門パネラーの両腕及び首を含浸シートで拭き、化粧料基剤を皮膚に塗布した。基剤を肌によくのせるために、塗布を数回繰り返して基剤を丁寧にのばし、基剤の転写が感じられなくなった時点を終了点とした。塗布の前後の含浸シートの重量を測定し、塗布後の含浸シートの重量が塗布前の含浸シートの重量の65%以下の場合を○、65%超で75%以下の場合を△、75%超の場合を×とした。
【0082】
〔転写面積〕
温度23℃、湿度65%RHの測定環境で、基材シートを100mm×150mmの大きさに裁断し、これを測定片とする。後述のドクターブレードによる方法で基剤を3.3g含浸させる。ガラス板などの平坦な板上に、塗工された基材シートを、その塗工面を下にして載置する。その上に600gの重りをのせ(清拭時の荷重にほぼ相当)、25cm/sの速度(清拭時の速度にほぼ相当)で、30cmの距離を移動させる。次いで、基剤の転写されている面積を縦及び横の長さから算出し、その値を転写面積とする。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の含浸シートは、化粧料基剤を肌にのばし易く、その際にべたつき感がないものであることが判る。また実施例の含浸シートは、保存しても化粧料基剤が偏在化したり、不織布から漏出しないことが判る。更に、化粧料基剤の肌への転写性も良好であることが判る。
【0085】
【発明の効果】
本発明の含浸シートによれば、チキソトロピー性を有する基剤を、均一に対象面に塗布することができる。
また本発明の含浸シートによれば、チキソトロピー性を有する基剤を、少量であっても大面積に迅速に塗布することができる。
更に本発明の含浸シートによれば、その保存中に基剤が偏在化したり、基材シートから漏出して裏面(非含浸面)側に回り込むおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の含浸シートの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】第1及び第2繊維層の見掛け厚み等を測定する方法を示す模式図である。
【図4】本発明の含浸シートの別の実施形態を示す断面図である。
【図5】基材シートを含む積層体の製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明の化粧料含浸シートの別の実施形態を示す断面図(図2相当図)である。
【符号の説明】
1 第1繊維層
2 第2繊維層
3 接合部
4 凸部
10 不織布(基材シート)
22 積層体
23 基材シート
24 液不透過性シート
25 柔軟性シート
26 Tダイ
Claims (7)
- 非収縮性繊維を含む第1繊維層およびこれに隣接し且つ熱収縮した繊維を含む第2繊維層を有し、両繊維層が部分的に多数の接合部によって厚さ方向に一体化されており、前記接合部間において前記第2繊維層の熱収縮によって前記第1繊維層が突出して多数の凸部を形成している立体不織布に、チキソトロピー性を有する基剤を含浸させてなり、前記第1繊維層の側が対象面に当接するように使用される含浸シート。
- 前記第1繊維層の見掛け厚み(t1)が0.1〜5mmであり、前記第2繊維層の見掛け厚み(t2)が0.2〜3mmであり、そして該第1繊維層の見掛け厚みと該第2繊維層の見掛け厚みとの比(t1/t2)が0.5〜8である請求項1記載の含浸シート。
- 前記第1繊維層の繊維密度(d1)よりも前記第2繊維層の繊維密度(d2)の方が高く、該第1繊維層の繊維密度(d1)が1〜50kg/m3であり、該第2繊維層の繊維密度(d2)が30〜200kg/m3である請求項1又は2記載の含浸シート。
- 25℃において、前記基剤は、剪断速度0.05s−1における粘性係数η1が100Pas以上30000Pas未満で且つ剪断速度50.0s−1における粘性係数η2が0.1Pas以上100Pas未満であり、更にη1>η2である関係を満たすものである請求項1〜3の何れかに記載の含浸シート。
- 前記第2繊維層に熱収縮した潜在捲縮性繊維が含まれており、これによって前記不織布が伸縮性を示す請求項1〜4の何れかに記載の含浸シート。
- 前記不織布における前記第2繊維層側の面に液不透過性シートが積層されており、該不織布にのみ前記基材が含浸されている請求項1〜5の何れかに記載の含浸シート。
- 前記不織布における前記第2繊維層側の面に液不透過性シートが積層されており、更に該液不透過性シートにおける該不織布対向面と反対側の面に柔軟性シートが積層されており、該不織布にのみ前記基材が含浸されている請求項1〜5の何れかに記載の含浸シート。
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