JP4208474B2 - 化粧料含浸シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チキソトロピー性を有する化粧料基剤が、基材シートに塗布含浸されてなる化粧料含浸シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
特開平11−286081号公報には、ポリプロピレンのスパンボンド不織布と、透湿性・防水性のポリエチレンフィルムと、ビスコースレーヨンの不織布とをこの順で積層させてなり、前記スパンボンド不織布にファンデーションオイル用組成物などの油性基剤を塗布してなる複合シートが記載されている。また、特表2000−503681号公報には、水中油型エマルジョン組成物が多孔性又は吸収性シートに含浸されてなる化粧料塗布用具が記載されている。
【0003】
これらの公報においては、前記油性基剤や前記エマルジョン組成物は、グラビアコータ、フローティングナイフ、ドクターブレードなどの塗布手段によって、不織布等の基材シートに塗布含浸されている。しかし、塗布含浸すべき基剤がチキソトロピー性を有するような粘稠な物質である場合、該基剤は、基材シートの表面にのみ塗布されて、これを内部に含浸させることは非常に困難である。
【0004】
従って、本発明は、チキソトロピー性を有する化粧料を基材シートに容易に塗布含浸可能な化粧料含浸シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2s-1の剪断速度で100秒間の定常ずり変形を与え引き続きステップ的に20s-1の定常ずり変形を与えた際の過渡過程において、剪断速度20s-1での剪断応力の極大値と同剪断速度での剪断応力の平衡値との差が該平衡値の20%以下であって、且つ0.16Hzでのtanδ値が、剪断歪み1%で0.1以上0.3未満であり且つ剪断歪み500%で1以上20以下であるチキソトロピー性を有する、油性液剤、乳化液剤又は水性液剤からなる化粧料基剤を、剪断速度102〜106s-1の条件下に、該化粧料基剤の含浸保持が可能な担持シートを表面に有する基材シートにおける該担持シートに、エクストルージョン型ダイコータで塗布含浸させる化粧料含浸シートの製造方法であって、
前記化粧料基剤は、前記担持シートへの塗布含浸温度において、剪断速度0.03s -1 における粘度が100Pa・s以上10000Pa・s未満で且つ剪断速度1000s -1 における粘度が0.1Pa・s以上1Pa・s以下である化粧料含浸シートの製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明に用いられる化粧料基剤は、チキソトロピー性を有し、油性液剤、乳化液剤又は水性液剤からなるものである。その具体例としては各種スキンケアクリーム、紫外線防御クリーム、制汗剤、ファンデーション、口紅ベース、洗浄剤、メイク落とし剤などが挙げられる。
【0007】
更に本発明に用いられる化粧料基剤は、2s-1の剪断速度で100秒間の定常ずり変形を与え引き続きステップ的に20s-1の定常ずり変形を与えた際の過渡過程において、剪断速度20s-1での剪断応力の極大値と同剪断速度での剪断応力の平衡値との差が該平衡値の20%以下のものである(以下、この値を応力変動値ともいう)。図1には、化粧料基剤に2s-1の剪断速度で100秒間の定常ずり変形を与え引き続きステップ的に20s-1の定常ずり変形を与えた際の過渡過程のチャートが示されている。
【0008】
応力変動値は、化粧料基剤の塗布含浸を支配するレオロジー特性を表現するものである。応力変動値が小さい場合には化粧料基剤の特性が粘性支配となり、塗布含浸工程を高い精度で行うことができる。応力変動値が大きい場合には化粧料基剤の特性が弾性支配となり、弾性項に貯えられたエネルギーの解放が塗布後又は含浸時に起こり、塗布含浸工程を安定して行うことが難しくなる。本発明では、応力変動値が20%以下である化粧料基剤を、剪断速度102〜106s-1の条件で塗布することで、化粧料基剤の塗布含浸性が良好となることを見出したものであり、特に繊維構造体へ化粧料基剤を塗布含浸させる場合に有効である。
【0009】
図1は、剪断速度をステップ的に変化させたときの過渡過程において、剪断応力に成長現象が認められる場合の例である。図1において、横軸は時間を示し、縦軸はそれぞれ剪断速度及び剪断応力を示す。太線Lが描かれている時間に亘り剪断が加えられている。同図に示すように、先ず化粧料基剤に2s-1の剪断速度で100秒間の定常ずり変形を与える。本実施形態においては定常ずり変形は、後述するように二重円筒型ボブを用いて与える。この状態から引き続き剪断速度を20s-1へとステップ的に変化させる。このステップ的な過渡過程において、図1に示すように化粧料基剤に剪断応力の成長現象が観察される。この成長現象は時間の経過と共に消失し、剪断応力は平衡値A〔Pa〕へと達する。一般に平衡値へはほぼ0.5〜10秒で達する。この成長現象における剪断応力の極大値(図1中Pで示す)をB〔Pa〕とすると、極大値B〔Pa〕と平衡値A〔Pa〕との差B−A〔Pa〕が平衡値A〔Pa〕の20%以下、即ち(B−A)/A×100が20%以下である化粧料基剤が本発明において用られる。
【0010】
化粧料基剤として前述の流動特性を有するものを用いることで、塗布装置を通過後の化粧料基剤に応力が残留しないようになり、基材シートに塗布含浸された化粧料基剤に収縮現象及び厚み分布が発生しなくなる。剪断速度のステップ的な変化において、変化の前後の剪断速度をそれぞれ2s-1及び20s-1とした理由は、剪断応力の成長現象を再現性良く且つ敏感に検出できる条件であることを見出したことによる。剪断速度2s-1において定常ずり変形を与える時間を100秒間とした理由も同様である。
【0011】
前述の流動特性は、例えばレオメーター(Rheometrics社製、Dynamic Spectrometer RDA II)で測定される。詳細には、所定量の化粧料基剤を試料ビンに採取し、二重円筒型ボブ(カップ直径27mm、ボブ直径25mm、ボブ長さ32mm)等を用いて、ステップレート・モードで測定する。具体的には、2s-1の剪断速度で100秒間剪断を加え、引き続き20s-1の剪断速度をステップ的に印加して剪断速度が過渡的に変化したときの剪断応力値を測定する。測定温度は、製造時の塗布含浸温度と同一とする。
【0012】
本発明に用いられる化粧料基剤は、0.16Hzでのtanδ値が、剪断歪み1%で0.1以上0.3未満、好ましくは0.11以上0.28以下であり且つ剪断歪み500%で1以上20以下、好ましくは1以上10以下、更に好ましくは2以上10以下である。これによって化粧料基剤の塗布含浸時に、後述する担持シート内への含浸性が高まり、担持シート内へ含浸させた後に該担持シートから化粧料基剤が染み出しにくくなる。tanδ値は前述のレオメータを用いて測定される。
【0013】
また同様の理由から、本発明に用いられる化粧料基剤は、前記担持シートへの塗布含浸温度において、剪断速度0.03s-1における粘度が100Pa・s以上10000Pa・s未満、好ましくは200Pa・s以上9000Pa・s以下で且つ剪断速度1000s-1における粘度が0.1Pa・s以上1Pa・s以下、好ましくは0.12Pa・s以上0.98Pa・s以下である。粘度は前述のレオメータを用いて測定される。
【0014】
更に同様の理由から、本発明に用いられる化粧料基材は、前記担持シートへの塗布含浸温度において、その降伏値が5〜50Pa、特に10〜45Paであることが好ましい。降伏値は、例えばMCR300(Paar Physica社製)を用いて、1000s-1から0.001s-1へずり速度を低下させて測定したときの流動曲線より求められる。
【0015】
化粧料基剤を構成する成分としては、水;エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;保湿剤としてのグリセリン又はソルビトールなどの多価アルコール類;固体状又は液体状パラフィン、スクワランなどの炭化水素類;オリーブ油、カルナバロウ等のエステル油;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸;天然注出のスフィンゴシン誘導体;テトラデカメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンなどのポリシロキサン類;オキタメチルシクロテトラシロキサン等のメチルポリシクロシロキサン;ポリエーテル・アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン;サルフェート系界面活性剤等の陰イオン性界面活性剤;カルボベタイン系界面活性剤等の両イオン性界面活性剤;直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するモノ又はジアルキル付加型第4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレン付加型等の多価アルコール型等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0016】
化粧料基剤には更に粉体を配合することが出来る。粉体としては、例えばマイカ、タルク等の体質顔料;パール等の無機顔料:赤色202号、赤色226号等の有機顔料;酸化亜鉛、酸化チタンなどの紫外線防御用の無機粉体等を挙げることができる。これらの粉体は、シリコーン処理、フッ素処理、レシチン処理、金属石鹸処理、脂肪酸処理、アルキルリン酸エステル処理が施されていてもよい。
【0017】
化粧料基剤には、通常化粧品、医薬部外品、医薬品等に配合される各種成分を配合することもできる。このような成分としては、例えば硫酸マグネシウム、等の無機塩類;ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の粘度調整剤;パラベン等の防腐剤;p−メチルペンジリデン、D,L−ショウノウ等の紫外線吸収剤;アラントインクロルヒドロキシアルミニウムなどの発汗抑制剤;殺菌剤;pH調整剤;湿潤剤;色素;薬効成分;香料等を挙げることができる。
【0018】
図2には、本発明の製造方法に従って製造される化粧料含浸基材シート1の構造が示されている。化粧料含浸基材シート1は、基材シート2の一方の面にのみ化粧料基剤が含浸されて構成されている。基材シート2は三層構造の積層体からなる。この積層体は、担持シート3、該担持シート3の一方の面に積層された液不透過性シート4、及び該液不透過性シート4における担持シート対向面と反対側の面に積層された柔軟性シート5からなる。その結果、基材シート2は、中間に液不透過性シート4が位置し、その両側に担持シート3及び柔軟性シート5がそれぞれ配され、該担持シート3及び該柔軟性シート5が基材シート2の外面をなす構造となっている。そして、担持シート3にのみ化粧料基剤が含浸されている。
【0019】
基材シート2を構成する担持シート3としては、化粧料基剤を含浸可能な構造を有するものが用いられる。担持シート3としては、多孔性の構造を有するものや、吸水性の構造を有するものが挙げられる。多孔性及び吸液性の構造を有する担持シート3の例としては、不織布、布、編物等の繊維構造体、発泡体、ネット、立体成形フィルムなどが挙げられる。
【0020】
化粧料基剤の含浸性を良好にするためには、担持シート3は、その密度が0.01〜0.2g/cm3、特に0.06〜0.2g/cm3であることが好ましい。また、化粧料基剤は表面エネルギーが低いものが多いので、水系の基剤に比べて毛細管構造の中に保持し難い。このため、担持シート3の表面は疎水性であることが好ましい。具体的にはその接触角が、イオン交換水に対して70度以上、特に85度以上、とわりけ100度以上であることが、化粧料基剤の含浸性と放出性とのバランスが良くなることから好ましい。
【0021】
化粧料基剤の保持性の点から、担持シート3の厚みは、3.7g/cm2の荷重下で0.3〜5mmであることが好ましく、携帯性の点から0.3〜0.8mmであることが更に好ましい。
【0022】
担持シート3として例示した前記シートのうち、特に化粧料基剤の均一展着性や肌感触の点から繊維構造体を用いることが好ましく、経済性の点で不織布を用いることが更に好ましい。中でも、エアースルー法、レジンボンド法、スパンレース法、エアレイド法により製造された不織布は低密度であることから好ましい。とりわけ、肌への化粧料基剤の均一展着性や肌感触の良さから、繊維が動きやすい構造であるスパンレース法により製造された不織布を用いることが好ましい。
【0023】
担持シート3が不織布等の繊維構造体から構成される場合、繊維としては親水性繊維及び疎水性繊維の何れをも用いることができる。その例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系繊維、ポリアクリルニトリル等のアクリル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリフルオロエチレン系繊維などの合成繊維;綿、麻、毛、絹などの天然繊維;レーヨン、ポリノジック、キュプラなどの再生繊維;アセテートなどの半合成繊維;及びこれらの変性物や共重合体からなる繊維を用いることができ、また、これらの材料を二種以上組み合わせた複合繊維を用いることもできる。これらの繊維は異形の断面をしていてもよい。また、化粧料基剤の表面張力、繊維の濡れ性及び繊維構造体の毛細管径を考慮して、前記繊維を複数種類組み合わせて用いてもよい。
【0024】
担持シート3が不織布等の繊維構造体から構成される場合、その構成繊維の繊度は、0.01〜15デニール、特に0.1〜12デニールであることが、化粧料基剤の含浸性の点から好ましい。不織布を構成する繊維は、そのすべてが前記範囲の繊度であることが最も好ましいが、不織布全体の30重量%以上、特に50重量%以上の繊維が前記範囲の繊度であれば、化粧料基剤の含浸性が十分に高くなる。また繊維間距離は10〜500μm、特に20〜300μmであることが、化粧料基剤の含浸性、放出性、肌への展着性の点から好ましい。
【0025】
繊維間距離Dp(μm)は以下の方法で測定される。繊維構造体の厚みをy(m)、繊維構造体の坪量をa(g/m2)、構成繊維の繊度をF(デニール)、構成繊維の直径をfd(μm)とすると、繊維間距離Dpは、Dp=0.015×√(Fy/a)−fdで算出される。繊維構造体の厚みyは、100mm×100mmの大きさの担持シートに3.7g/cm2の荷重を加えた条件下にテクロック製のモデルPF-11を用いて測定する。測定は5枚の担持シートについて行い、その平均値を求める。構成繊維の直径fdは走査型電子顕微鏡を用いて撮影された繊維の拡大写真から測定し、サンプル数5の平均値を求める。繊度Fは、示差走査熱量計を用いて繊維の種類を特定し、特定された繊維の密度(g/m3)を調べ、F=π(fd/2)2×9000から算出する。
【0026】
担持シート3として発泡体が用いられる場合、その構成材料としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、不飽和ポリエステル、フェノール系樹脂、ポリブタジエン及び合成ポリイソプレン等のゴム系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。特に、柔らかく、低摩擦であり、加工性の良好なポリウレタン系樹脂やポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。化粧料基剤の含浸量を高めたい場合には、発泡体はクローズドセル型よりもオープンセル型の構造であることが好ましい
【0027】
担持シート3として立体成形フィルムが用いられる場合、該フィルムは立体開孔構造のものであることが好ましく、その場合の見掛け密度は、前述した範囲の値であることが好ましい。フィルムを構成する材料としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール、これらの変性物や共重合体が挙げられる。特に線状低密度ポリエチレンや低密度ポリエチレンを用いることが、柔らかさ及び肌感触の点で好ましい。
【0028】
担持シート3は、その坪量が10〜200g/m2、特に15〜150g/m2であることが、化粧料基剤を十分な量含浸し得る点、肌に対する感触が良好である点、及び製造経費の点から好ましい。
【0029】
液不透過性シート4としては、担持シート3に含浸されている化粧料基剤が、化粧料含浸シート1の使用中に柔軟性シート5へ透過することを阻止し得るものが用いられる。液不透過性シート4の具体例としては、防油性のものが好ましい。例えば、一般的な熱可塑性樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、セロハン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。ヒートシール性、柔軟性の点から、これらの樹脂の一部変性体や共重合体を用いても良い。前記樹脂を二種以上組み合わせて用いてもよく、或いは二層以上の積層構造で組み合わせることもできる。中でも、延伸ポリプロピレンフィルム、高密度ポリエチレンやアイオノマー樹脂からなるフィルムが、加工性が良好なことから好ましく、特にアイオノマー樹脂からなるフィルムが、柔軟性、シール性、耐ピンホール性、化粧料基剤の透過阻止性が高い点で好ましい。
【0030】
液不透過性シート4は、その坪量が5〜100g/m2、特に10〜80g/m2であることが、化粧料基剤の透過を十分に阻止し得る点、基材シート2の風合い維持の点、及び製造経費の点から好ましい。
【0031】
柔軟性シート5は、化粧料含浸シート1の使用時に手と接するシートであり、化粧料基剤は含浸ない。柔軟性シート5としては、風合いの良好なものが用いられる。そのような柔軟性シートとしては布様の風合いを有するものが好ましく、不織布、織布、編物、発泡体、ネット、開孔フィルムなど、担持シート3を構成するシートと同様のものが用いられる。化粧料基剤の裏周りを防止する点、空隙率が高い点、及び肌感触が良好である点から不織布を用いることが好ましい。
【0032】
柔軟性シート5として不織布を用いる場合、その種類、坪量、構成繊維、繊度などの詳細は担持シート3を構成する不織布と同様である。特に、構成繊維としては、疎水性繊維であるポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維などが好ましい。
【0033】
担持シート3、液不透過性シート4及び柔軟性シート5から構成される基材シート2は、その坪量が15〜500g/m2、特に25〜380g/m2であることが、風合いと製造経費とのバランスの点から好ましい。
【0034】
担持シート3、液不透過性シート4及び柔軟性シート5は積層一体化されて基材シート2を構成している。基材シート2は押し出しラミネート法(サンドイッチラミネート法)によって製造されることが好ましい。この方法には、各シート間の剥離が起こりにくく、また液不透過性シート4にピンホールが発生し難いという利点がある。ピンホールの発生は、化粧料含浸シート1の使用中に化粧料基剤が柔軟性シート5へ透過する原因となる。
【0035】
次に、化粧料基剤を基材シートにおける担持シートに塗布含浸させる方法を、図3を例にとり説明する。図3においては、化粧料基剤の塗布含浸手段としてエクストルージョン型ダイコータ8が用いられている。まず、基材シート2の原反2’から基材シート2を所定速度で繰り出し、その担持シート3側の面に、ダイコータ8のスリットから化粧料基剤を押し出す。チキソトロピー性を有する化粧料基剤はスリットにおける剪断力によって適切な粘度、押し出し圧力に調整され、均一に塗布される。
【0036】
化粧料基剤の塗布含浸にエクストルージョン型ダイコータを用いると、他の塗布方式に比較して広い粘度範囲の化粧料基剤を塗布含浸させることができるので好ましい。また、化粧料基剤の供給から塗布含浸までが密閉系であることから、化粧料基剤が揮発性である場合でも組成の変化に変化が生じないので好ましい。更に、定量塗布が可能である点からも好ましい。
【0037】
化粧料基剤を押し出すときの剪断速度は、102〜106s-1、好ましくは103〜105s-1とする。剪断速度が102未満、及び、106超では共に塗布が不均一となり、安定した塗布含浸が困難となってしまう。
【0038】
化粧料基剤を押し出すときには、ダイコータ8を調温して化粧料基剤を所定温度に加熱し、該化粧料基剤の粘度を調整してもよい。勿論、常温非加熱下に化粧料基剤を押し出してもよい。
【0039】
化粧料基剤の塗布含浸量は、30〜350g/m2、特に80〜270g/m2であることが、身体や顔に必要とされる量の化粧料を転写し得る点から好ましい。同様の理由により、化粧料基剤は、基材シート2の重量に対して100〜800重量%、特に200〜700重量%塗布含浸されることが好ましい。
【0040】
前述の条件下に化粧料基剤を担持シート3に塗布することで、該化粧料基剤は担持シート3内に円滑に含浸される。このように、本発明の製造方法によれば、そのチキソトロピー性の故に含浸させることが困難である化粧料基剤を容易に含浸させることが可能である。しかも、ひとたび基材シート2に含浸された化粧料基剤は、これを均一に皮膚へ塗布することが可能となり、また少量であっても大面積に迅速に塗布することが可能となる。また、基材シート2に含浸された化粧料基剤は、通常の保存状態においては、そのチキソトロピー性の故に基材シート2内で安定に存在し、偏在化したり基材シート2から漏出するおそれがない。従って、化粧料基剤の肌への転写が良好に行われ、また保存中に化粧料基剤が化粧料含浸シート1における非含浸面である柔軟性シート5側に回り込むことがない。また、例えば化粧料含浸シート1を毎葉の状態としてピロー包装体などの包装体中に複数枚包装しても、包装体内が化粧料基剤で過度に濡れることがない。更に、化粧料基剤は基材シート2を構成する担持シート3にのみ含浸されているので、化粧料含浸シート1を用いて化粧料基剤を皮膚に塗布する場合、液不透過性シート4が柔軟性シート5側への化粧料基剤の移行を阻止し、手に化粧料基剤が付着することが防止される。
【0041】
得られた化粧料含浸シート1は、所定の大きさに裁断され、所定の形状に折り畳まれて、所定枚数重ねられた状態で、ピロー包装体などの包装体に包装される。
【0042】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、基材シートが三層構造であったが、化粧料含浸シートの用途によっては、基材シートが、担持シート及び該担持シートの一方の面に積層された液不透過性シートからなる二層構造であって、担持シートにのみ化粧料基剤が含浸されているか、又は担持シートのみからなる単層構造であって、該担持シートの一方の面にのみ実質的に化粧料基剤が含浸されていてもよい。この場合、担持シート及び液不透過性シートの詳細は、前記実施形態と同様とすることができる。
【0043】
【実施例】
以下の例中、特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「重量%」及び「重量部」を意味する。
【0044】
〔実施例1〕
(1)化粧料基剤の調製
以下の表1に示す処方を用いてW/O紫外線防止クリームを調製した。先ず、70℃に加熱した油相にエタノールを除く水相を加え、撹拌しながら20分かけて室温まで冷却した。次いでエタノールを加え、更に10分間撹拌してW/O紫外線防止クリームを得た。このクリームはチキソトロピー性を有するものであった。その他の詳細は以下の表2に示す通りであった。
【0045】
(2)基材シートの製造
1.4デニールのPET繊維を30%及び0.8デニールのPET繊維を70%含む坪量38g/m2のスパンレース不織布を製造した。このスパンレース不織布の密度は0.06g/m3、水に対する接触角は125度、繊維間距離は28μmであった。次に、アイオノマー樹脂を押し出しフィルム成形し、該フィルムの固化前に該フィルムの両面に前記スパンレース不織布を貼り合わせる押し出しラミネート法によって、図2に示す基材シートを得た。アイオノマー樹脂のフィルムの坪量は33g/m2であった。
【0046】
(3)化粧料含浸シートの製造
図3に示す装置を用いて、前述の方法で得られたW/O紫外線防止クリームを、表1に示す条件で押し出し、前述の方法で得られた基材シートにおける担持シートに塗布含浸させ、化粧料含浸シートを得た。塗布量は表1に示す通りであった。
【0048】
〔実施例2及び3〕
化粧料基剤として表1に示す処方のものを用いた。これらの化粧料基剤はチキソトロピー性を示すものであった。これらの化粧料基剤を表2に示す条件で押し出す以外は実施例1と同様にして化粧料含浸シートを得た。
【0049】
〔比較例1〕
化粧料基剤を表2に示す条件で押し出す以外は実施例1と同様にして化粧料含浸シートを得た。
【0050】
〔比較例2〜6〕
化粧料基剤として表1に示す処方のものを用いた。これらの化粧料基剤を表2
に示す条件で押し出す以外は実施例1と同様にして化粧料含浸シートを得た。
【0051】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた含浸シートについて、以下の方法で化粧料基剤の塗布性、含浸性及び耐たれ性、並びに得られた含浸シートの外観を評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
〔化粧料基剤の塗布性〕
基材シートの走行方向及び幅方向についての塗布性を評価した。走行方向及び幅走行共に塗布性の良好なものを◎〜○、実用に耐えられるものを△、悪いものを×とした。
【0053】
〔化粧料基剤の含浸性〕
前記塗布性とは別に、化粧料基剤の基材シートへの含浸性を評価した。基材シート上に塗布はされていても含浸が不十分な場合もあり、含浸評価は塗布評価とは異なるものである。含浸が十分に認められるものを◎〜○、実用に耐えられるものを△、悪いものを×とした。
【0054】
〔化粧料基剤の耐たれ性〕
約5mlの化粧料基剤をガラス板上にのせ、ガラス板を水平面に対し60度傾けた時の化粧料基剤のたれ具合を評価した。たれがほとんど認められない場合を◎〜○、若干たれるものを△、ひどくたれるものを×とした。
【0055】
〔含浸シートの外観〕
塗布含浸後の含浸シート外観を評価した。塗布性及び含浸性とは別に、製造後にシート表面上に細かいまだらや化粧料基剤のぬけなどが存在する場合がある。外観検査上、十分評価できるものを◎〜○、実用に耐えられるものを△、悪いものを×とした。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、本発明の方法に従い製造された含浸シートは、化粧料の塗布性及び含浸性の何れにも優れ、また含浸シートの外観も良好であることが判る。
【0059】
【発明の効果】
本発明の化粧料含浸シートの製造方法によれば、チキソトロピー性を有する化粧料を基材シートに容易に塗布含浸することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】化粧料基剤に2s-1の剪断速度で100秒間の定常ずり変形を与え引き続きステップ的に20s-1の定常ずり変形を与えた際の過渡過程の一例を示すチャートである。
【図2】本発明の製造方法に従って製造される化粧料含浸基材シートの構造を示す模式図である。
【図3】本発明の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
1 化粧料含浸シート
2 基材シート
2’基材シートの原反
3 担持シート
4 液不透過性シート
5 柔軟性シート
8 ダイコータ
Claims (6)
- 2s-1の剪断速度で100秒間の定常ずり変形を与え引き続きステップ的に20s-1の定常ずり変形を与えた際の過渡過程において、剪断速度20s-1での剪断応力の極大値と同剪断速度での剪断応力の平衡値との差が該平衡値の20%以下であって、且つ0.16Hzでのtanδ値が、剪断歪み1%で0.1以上0.3未満であり且つ剪断歪み500%で1以上20以下であるチキソトロピー性を有する、油性液剤、乳化液剤又は水性液剤からなる化粧料基剤を、剪断速度102〜106s-1の条件下に、該化粧料基剤の含浸保持が可能な担持シートを表面に有する基材シートにおける該担持シートに、エクストルージョン型ダイコータで塗布含浸させる化粧料含浸シートの製造方法であって、
前記化粧料基剤は、前記担持シートへの塗布含浸温度において、剪断速度0.03s -1 における粘度が100Pa・s以上10000Pa・s未満で且つ剪断速度1000s -1 における粘度が0.1Pa・s以上1Pa・s以下である化粧料含浸シートの製造方法。 - 前記担持シートが繊維構造体からなり、該繊維構造体の坪量が10〜200g/m 2 であり、繊維間距離が10〜500μmである請求項1記載の化粧料含浸シートの製造方法。
- 前記基材シートが、前記担持シート及び該担持シートの一方の面に積層された液不透過性シートを備えている請求項1又は2記載の化粧料含浸シートの製造方法。
- 前記基材シートは、中間に前記液不透過性シートが位置し、その両側に前記担持シート及び柔軟性シートがそれぞれ配され、該担持シート及び該柔軟性シートが該基材シートの外面をなす構造となっており、該担持シートにのみ前記化粧料基剤が含浸されている請求項3記載の化粧料含浸シートの製造方法。
- 前記担持シートの表面が疎水性である請求項1ないし4の何れかに記載の化粧料含浸シートの製造方法。
- 前記化粧料基剤の降伏値が5〜50Paである請求項1ないし5の何れかに記載の化粧料含浸シートの製造方法。
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