JP2004083990A - 低燐溶銑の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Si:0.15mass%以下の溶銑に対して、上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けて脱燐処理を行うとともに、この脱燐処理では、精錬剤として、下記(1)式で求められる石灰量Wcao_P(kg/T)と下記(2)式で求められる石灰量Wcao_Si(kg/T)を合計した量の石灰を添加する。
Wcao_P=(溶銑[P]−目標[P])×(10/62)×56×3/ηcao … (1)
Wcao_Si=溶銑[Si] ×(10/28)×56×2 … (2)
但し、溶銑[P]:処理前溶銑中P濃度(mass%)、目標[P]:処理後の溶銑中目標P濃度(mass%)、ηcao(石灰効率)=0.5〜1、溶銑[Si]:処理前溶銑中Si濃度(mass%)
【選択図】 図1
Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、溶銑予備処理として行われる脱燐処理により低燐溶銑を効率的に製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の転炉法に代わって溶銑段階で脱燐処理を行なう溶銑予備処理法が広く用いられるようになった。これは、脱燐反応が精錬温度が低いほど熱力学的に進行しやすく、より少ない量の精錬剤で脱燐処理を行うことができるためである。
一般に溶銑予備処理では、まず、酸化鉄等の固体酸素源を溶銑に添加して脱珪処理を行ない、この脱珪処理で発生したスラグを除去した後、精錬剤を添加して脱燐処理を行う。通常、脱燐処理の精錬剤としては石灰などのCaO系精錬剤を用い、酸素源としては固体酸素源(酸化鉄等)や気体酸素を用いる。また、処理容器としては、トーピードカー、取鍋(装入鍋)、転炉型容器などが用いられる。また、CaO系精錬剤の滓化促進のためにCaF2(ホタル石)を添加することが広く行われている。
【0003】
脱燐処理条件については、例えば特開平7−70626号に、スラグの塩基度0.6以上2.5以下、処理終了温度1250℃以上1400℃以下、底吹き攪拌動力1.0kg/溶銑ton以上、送酸速度2.5Nm3/溶銑ton以上という条件が示されている。この技術では、スラグ塩基度を2.5以下とする理由について、それ以上の塩基度ではスラグの流動性が悪化するので、脱燐には不利な高温での処理が必要になるためであるとしている。また、2.5以下であればスラグ塩基度は高いほうが脱燐が進むとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の溶銑の脱燐処理技術は、脱燐平衡式を用いて議論していることからも判るとおり、スラグが均一に溶融していて、スラグ−メタルが平衡に近いことを前提としている。しかしながら、上吹きランスから気体酸素を吹き付けて脱燐を行なう方法では、脱燐精錬容器内は気体酸素のエネルギーによってスラグが押しやられて湯面(溶銑浴面)が露出している部分と、それ以外の、湯面がスラグで覆われている部分とに分かれており、炉内を均一な状態に保つことは難しい。このため従来技術では、▲1▼スラグ塩基度を低位に保つ、▲2▼CaF2(ホタル石)などのような滓化促進材を添加する、などの方策をもってスラグの均一溶融化を図っている。
【0005】
しかしながら、上記▲1▼のようにスラグ塩基度を低くすると、スラグの燐分配Lpが低くなるため、高い脱燐効率を得ようとすると精錬剤などの添加量を増やしてスラグボリュームを大きくしなければならず、精錬コストの上昇とスラグ発生量の増大を招いてしまう。
以下、これについて説明すると、図8に示すように脱燐スラグの燐分配Lpはスラグ塩基度に依存し、また、図9に示すように燐分配Lpから、所定の目標P濃度に到達するために必要なスラグ量、すなわち石灰原単位が決定される。また、図10に処理前の溶銑中Si濃度とスラグを所定の塩基度にするための必要石灰原単位を示す。図9、図10から明らかなように、溶銑中Si濃度が低い場合はスラグ塩基度の調整に必要な石灰量よりも、脱燐に必要なスラグボリュームを得るために必要な石灰量が多くなる。この場合、塩基度調整を行うためにSiO2源(例えば珪砂などの添加)の添加が必要となる。最終的に、脱燐に必要な石灰量は溶銑中Si濃度には関係なく、燐分配Lp(=mass%(P)/mass%[P],mass%(P):スラグ中のP濃度,mass%[P]:メタル中のP濃度)によってのみ決定されてしまう。図11に溶銑中Si濃度と必要石灰量との関係を示す。スラグ塩基度を高くすると、燐分配Lpが上昇するため必要なスラグ量は減少するが、スラグの流動性が著しく悪化するため、却って脱燐効率が悪化してしまうのは前述の通りである。
【0006】
近年、環境保護などの観点から脱燐工程をはじめとする精錬工程において発生するスラグ量を極力低減することが求められており、したがって、低位のスラグ塩基度で高い脱燐率を得ようとする操業は、スラグ発生量の低減化という要請に十分対応することができない。
また、上記▲2▼のCaF2の添加については、近年、Fが環境に及ぼす影響を考慮し、鋼の精錬においてもCaF2の使用量を極力削減することが求められている。
したがって本発明の目的は、多量のCaF2を添加することなく且つ少ない精錬剤添加量で効率的な脱燐処理を行うことができ、これによりスラグ発生量も極力低減することができる低燐溶銑の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、脱燐精錬容器内でスラグを均一な溶融状態に保つという従来の考え方に把われることなく、少ない精錬剤添加量で脱燐効率を高位に安定させることができる方法について検討を行った。その結果、スラグを均一溶融させるという従来の考え方とは逆に、スラグの不均一な溶融状態を利用することにより、脱燐効率を高位に安定させつつ、従来に較べて精錬剤添加量を大幅に削減し、これによりスラグ発生量を効果的に低減できることを見い出した。
【0008】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1] 溶銑を保持した容器内に石灰を主体とする精錬剤と酸素源を添加して、溶銑予備処理である脱燐処理を行うことにより低燐溶銑を製造する方法において、Si濃度が0.15mass%以下の溶銑に対して、上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けて脱燐処理を行うとともに、該脱燐処理においては、精錬剤として、下記(1)式で求められる石灰量Wcao_P(kg/溶銑ton)と下記(2)式で求められる石灰量Wcao_Si(kg/溶銑ton)を合計した量の石灰を添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
Wcao_P=(溶銑[P]−目標[P])×(10/62)×56×3/ηcao … (1)
但し 溶銑[P]:脱燐処理前の溶銑中P濃度(mass%)
目標[P]:目標とする脱燐処理後の溶銑中P濃度(mass%)
ηcao(石灰効率)=0.5〜1
Wcao_Si=溶銑[Si] ×(10/28)×56×2 … (2)
但し 溶銑[Si]:脱燐処理前の溶銑中Si濃度(mass%)
【0009】
[2] 上記[1]の製造方法において、石灰量Wcao_P(但し、ηcao=1で求められるWcao_P)の80mass%以上の石灰を上吹きランスを通じて溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
[3] 上記[1]又は[2]の製造方法において、石灰量Wcao_Siに相当する精錬剤として、石灰粉、塊焼石灰、塊石灰石、未反応CaOを含む製鉄スラグの中から選ばれる1種以上を用いることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
【0010】
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、下記(3)式により定義される、気体酸素の吹き付け又は気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さLを200〜500mmに制御することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
L=LO×exp{(−0.78×LH)/LO} … (3)
LO=63×{(FO 2/n)/dt}2 / 3
但し LH:上吹きランスのランス高さ(mm)
FO 2:上吹きランスからの気体酸素供給速度(Nm3/hr)
n:上吹きランスのノズル孔数
dt:上吹きランスのノズル孔径(mm)(但し、複数のノズル孔のノズル径が異なる場合は、全ノズル孔の平均孔径)
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法において、精錬剤がCaF2を実質的に含まないか若しくは精錬剤中に含まれるCaF2量が1kg/溶銑ton以下であることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
【0011】
[6] 上記[1]〜[5]のいずれかの製造方法において、上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面領域に吹き付けられることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
[7] 上記[6]の製造方法において、上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素の吹き付けにより溶銑浴面に生じる火点に吹き付けられることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
[8] 上記[6]又は[7]の製造方法において、精錬剤の少なくとも一部を、気体酸素をキャリアガスとして溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明法では、溶銑を保持した容器内に酸素源と石灰(CaO)を主体とする精錬剤を添加して、溶銑予備処理である脱燐処理を行うことにより低燐溶銑を製造するに際し、上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けて脱燐処理を行う。
上吹きランスを通じて気体酸素を溶銑浴面に吹き付けると、浴面に衝突した気体酸素により大量のFeOが生成するため、精錬剤の滓化促進に非常に有利な条件となり、このFeOが大量に生成した領域に、上吹きランスを通じて精錬剤を直接供給することにより、精錬剤(CaO)の滓化を効果的に促進することができる。
【0013】
また、上吹きランスによる気体酸素と精錬剤の溶銑浴面への吹き付けでは、精錬剤を気体酸素以外のキャリアガス(例えば、N2、Arなどの不活性ガス)を用いて溶銑浴面に吹き付けてもよいが、その場合でも、精錬剤の一部又は全部を気体酸素が供給(吹き付け)されている溶銑浴面領域に吹き付けることが好ましい。これは、気体酸素が供給される溶銑浴面領域は酸素供給によってFeOが生成する場所であり、このような浴面領域に直接CaOを添加することにより、CaOの滓化が効果的に促進されるとともにCaOとFeOの接触効率が高まり、これによって脱燐反応効率を顕著に促進できるからである。また、精錬剤は気体酸素が供給された溶銑浴面領域の中でも、特に気体酸素の上吹きにより生じる“火点”と呼ばれる領域に供給することが最も好ましい。この火点は気体酸素ガスジェットが衝突することにより最も高温となる溶銑浴面領域であり、気体酸素による酸素反応が集中し且つ気体酸素ガスジェットにより強攪拌されている領域であるため、CaOの供給による効果が最も顕著に得られる領域であると言える。また、この意味で精錬剤を溶銑浴面に吹き付けるためのキャリアガスとしては気体酸素を用いることが好ましく、この場合には、気体酸素が精錬剤とともに溶銑浴面に吹き付けられることにより、精錬剤が火点に直接供給されることになり、この結果、溶銑浴面でのCaOとFeOの接触効率が最も高まり、脱燐反応を特に顕著に促進することができる。
【0014】
本発明法は、このような気体酸素と精錬剤の添加形態において、以下のような基本的な機構により必要最低限の精錬剤添加量で効率的な脱燐反応を生じさせるものである。
すなわち、気体酸素が最適状態で供給されている溶銑浴面領域(好ましくは火点)に対して、上吹きランスを通じて精錬剤(CaO)を吹き付けると、このCaOは火点で発生するFeOと迅速に反応し、溶融(滓化)して、CaO−FeO系の融体を形成する。発生したCaO−FeO系融体は、気体酸素の運動エネルギーによって、火点を中心とする気体酸素が供給されている溶銑浴面領域から、その周囲の酸素ポテンシャルの低い領域に押し出されながら、まず溶銑中のSiと反応し、FeOは還元されて、処理前Si濃度に応じて2CaO・SiO 2 等の安定な固相を形成する。また、上記反応によって溶銑中のSi濃度がある程度低くなると、CaO−FeO系融体は、次に燐と反応し始めて3CaO・P2O5という同じく安定な固相を形成する。この結果、脱燐処理の進行にしたがって生成され、火点を中心とする気体酸素が供給されている溶銑浴面領域からその外側の領域に順次押し出されたスラグの相当量(若しくは大部分)が、2CaO・SiO2、3CaO・P2O5といった安定な固相として存在することになる。そして、このようにして固相となったスラグは非常に安定であるため、スラグ塩基度が低くても再び溶融することはない。そして、このように火点を中心した領域において直接的な脱燐反応が生じることと、その外側に押し出されたスラグが固相主体の状態で存在することにより、少ない精錬剤添加量とスラグ量で効率的な脱燐を行うことができる。
【0015】
従来の脱燐処理技術では、スラグを均一な液相状態に維持することを前提として、燐分配Lpに応じてスラグボリュームが決定されており、このため実際にP、Siを固定するのに必要な精錬量以上の量の精錬剤が必要であった。これに対して本発明では、火点を中心とする溶銑浴面領域における直接的な脱燐反応と、その外側領域での固相主体のスラグによるPの固定という機構を利用することより、以下のような必要最低限の精錬剤量で脱燐反応を効率的に生じさせることができる。
実際に溶銑中のPとSiを固定するために消費される石灰量は、下記の式で計算できる。下式において、Wcao_Poは、溶銑中のPを固定するために消費される石灰量(kg/溶銑ton)、Wcao_Sioは、溶銑中のSiを固定するために消費される石灰量(kg/溶銑ton)である。
Wcao_Po=(溶銑[P]−目標[P])×(10/62)×56×3
但し 溶銑[P]:脱燐処理前の溶銑中P濃度(mass%)
目標[P]:目標とする脱燐処理後の溶銑中P濃度(mass%)
Wcao_Sio=溶銑[Si] ×(10/28)×56×2
但し 溶銑[Si]:脱燐処理前の溶銑中Si濃度(mass%)
【0016】
ここで、石灰の全添加量をTotal CaO(kg/溶銑ton)とすると、脱燐に寄与した石灰の効率ηcaoは、下式のように計算できる。
ηcao=Wcao_Po/(Total CaO−Wcao_Sio)
本発明では、まず、この石灰効率ηcaoを0.5〜1と規定した。このηcaoの下限は、無用な石灰添加を行わず且つ本発明が狙いとする脱燐反応を適切に生じさせるという観点から規定されたものである。すなわち、ηcaoが0.5未満になると、実質的に無用な石灰添加を行うことになり、少ない精錬剤添加量で効率的な脱燐処理を行うという本発明の効果が失われるだけでなく、所定の酸素原単位の下で生成するFeOに対して石灰添加量が過剰になるため、滓化できないCaOが多量に存在することになり、このような滓化できないCaOが上述した脱燐反応の進行を阻害してしまう。
【0017】
したがって本発明では、下記(1)式で求められる石灰量Wcao_P(kg/溶銑ton)と下記(2)式で求められる石灰量Wcao_Si(kg/溶銑ton)を合計した量の石灰を添加して脱燐処理を行う。
Wcao_P=(溶銑[P]−目標[P])×(10/62)×56×3/ηcao … (1)
但し 溶銑[P]:脱燐処理前の溶銑中P濃度(mass%)
目標[P]:目標とする脱燐処理後の溶銑中P濃度(mass%)
ηcao(石灰効率)=0.5〜1
Wcao_Si=溶銑[Si] ×(10/28)×56×2 … (2)
但し 溶銑[Si]:脱燐処理前の溶銑中Si濃度(mass%)
上記Wcao_Pは、ηcao=0.5〜1とした場合において溶銑中のPを3CaO・P2O5として固定するのに必要な石灰量であり、また、上記Wcao_Siは、溶銑中のSiを2CaO・SiO2として固定するのに必要な石灰量である。
【0018】
図1は、一例として、P濃度が0.11mass%の溶銑をP濃度:0.015mass%まで脱燐処理する場合について、本発明法において処理前の溶銑中Si濃度に応じて添加される石灰量を、従来法の脱燐処理においてスラグ塩基度(mass%CaO/mass%SiO2)=2とする場合に添加される石灰量と比較して示したもので、Wcao_SiはSiの固定用として必要な石灰量、Wcao_P1はηcao=1の場合にPの固定用(脱P用)として必要な石灰量、Wcao_P0.5はηcao=0.5の場合にPの固定用として必要な石灰量であり、Wは従来法において添加される石灰量である。同図に示されるように、従来法において必要とされる石灰量は、燐分配Lpとこれに応じた必要スラグ量によって決定されてしまうため、溶銑中Si濃度に関係なくWの石灰量が必要であったのに対し、本発明法において添加する石灰量は[Wcao_Si+Wcao_P1]〜[Wcao_Si+Wcao_P0.5]で足りることになり、従来法に較べて石灰添加量を大幅に削減することができる。
また、図2は、本発明法と従来法における脱P用の必要石灰量と石灰効率ηcaoを、脱燐処理後の溶銑中P濃度との関係で示したもので、従来法における脱P用の必要石灰量とは図1の[W−Wcao_Si]を指している。図2によれば、本発明法は、従来法に較べて非常に少ない脱P用石灰を用いて高い石灰効率で脱燐処理がなされることが判る。
【0019】
また、本発明法では、石灰量Wcao_P(ηcao=1で求められるWcao_P,以下同様)の80mass%以上の石灰を上吹きランスを通じて溶銑浴面に吹き付けることが好ましい。図3は、本発明者らが行った試験結果に基づく、上吹きランスから溶銑浴面に吹き付けられる石灰量Xと石灰量Wcao_Pとの比X/Wcao_Pと脱燐処理後の溶銑中P濃度との関係を示したもので、この試験では、転炉型容器(340ton)に保持されたP濃度:0.095〜0.135mass%、Si濃度:0.03〜0.20mass%の溶銑(溶銑温度:1250〜1360℃)に対して、気体酸素(10〜15Nm3/溶銑ton)をキャリアガスとして石灰粉(4〜10kg/溶銑ton)を上吹きランスから溶銑浴面に吹き付けることにより脱燐処理(処理時間:10〜14分間)を行った後、溶銑を脱炭用転炉に装入して脱炭吹錬を行ったものである。なお、脱燐処理では、CaF2添加量は1kg/溶銑ton以下とし、気体酸素をキャリアガスとする石灰粉の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さLを200〜500mmの範囲に制御した。
図3によれば、石灰量Wcao_P中に占める上記石灰量Xの割合が80mass%未満になると、脱燐率が若干低下する傾向にある。これは、反応サイトである火点若しくはその近傍の気体酸素供給領域に精錬剤を直接投入することによる、上述したような高い反応効率が相対的に得られにくくなるためであると考えられる。
【0020】
SiはCやFeよりも燃焼しやすいため、吹錬中は溶銑中でSiO2として安定に存在でき、このため必ずしも火点において石灰と反応させる必要がない。したがって、発生したSiO2を固定する石灰量Wcao_Siに相当する石灰源は、焼石灰に限られることはなく、未反応の石灰(Free Lime)を含む物質であればよい。このため石灰量Wcao_Siに相当する精錬剤としては、石灰粉、塊焼石灰、塊石灰石、未反応CaOを含む製鉄スラグの中から選ばれる1種以上を用いることができる。製鉄スラグとしては、例えば、脱炭工程で発生する転炉スラグ(塩基度3〜4程度)や取鍋スラグなども使用可能である。
【0021】
本発明法では、少ない精錬剤添加量で高い脱燐効率が得られるようにし且つ発生するスラグ量も少なくするために、脱燐処理される溶銑のSi濃度を0.15mass%以下、好ましくは0.10mass%以下とする。溶銑のSi濃度が0.15mass%を超えると、本発明による精錬剤添加量及びスラグ発生量の低減化効果が薄れる。また、脱燐効率を高めるためにも、溶銑中のSi濃度は低い方が好ましい。一般に、脱燐処理前の溶銑中Si濃度が低いとスラグ中のSiO2濃度が低下するためCaOの溶融性がさらに悪化し、脱燐効率が低下してしまう。しかし、それにも拘らず本発明法の場合には、脱燐処理前の溶銑中Si濃度が低い方(0.15mass%以下、より好ましくは0.10mass%以下)が脱燐効率が向上する。これは、本発明法では気体酸素とCaO源である精錬剤の粉体を浴面に吹き付けるため、SiO2が多く存在しなくてもFeOによってCaOの溶融化が促進され、この結果、CaOの脱燐に寄与する効率が向上するためであると考えられる。
【0022】
溶銑は高炉などの溶銑製造設備から供給されるが、製造される溶銑のSi濃度を低める方法としては、溶銑製造用の原料の予備処理などで珪酸分の全装入量を低減したり、高炉などの炉内での珪酸還元反応を抑制するための低温操業やコークスの偏在装入などの方法が有効である。したがって、高炉などで製造された溶銑のSi濃度が0.15mass%以下、好ましくは0.10mass%以下の場合には、これら溶銑に対して下記のような脱珪処理を施すことなく、脱燐処理してもよい。
一方、高炉などで製造された溶銑のSi濃度が上記Si濃度のレベルよりも高い場合には、脱燐処理に先立ち高炉鋳床や溶銑鍋などで脱珪処理を実施し、脱燐処理前の溶銑中Si濃度を0.15mass%以下、好ましくは0.10mass%以下とした上で脱燐処理を行う。
通常、溶銑の脱珪処理は固体酸素源や気体酸素を溶銑に添加することにより行われ、例えば、焼結粉やミルスケールなどの固体酸素源を溶銑浴面への上置き装入や浴中への吹き込みにより添加し、或いは気体酸素を溶銑浴面への吹き付けや浴中への吹き込みにより添加する方法が採られる。
【0023】
また、溶銑の脱珪処理は高炉鋳床や溶銑鍋以外に、例えば高炉鋳床から溶銑鍋などの搬送容器への溶銑流に対して酸素源を添加することにより行うこともできる。また、脱珪効率を高めるために容器内の溶銑中に撹拌ガスを吹き込んだり、焼石灰などのCaO源を添加してスラグの塩基度を調整することにより脱珪スラグ中の酸化鉄を極力低減させ、還元効率を高めるようにすることもできる。
溶銑の脱珪処理を経て脱燐処理を行う場合には、事前に脱硅スラグなどのスラグを排滓し、珪酸分の混入を極力抑制することが、効率的な脱燐処理を行う上で好ましい。このため脱燐処理前に機械式排滓装置や手作業により、溶銑からスラグを分離した後、脱燐処理を行う。
【0024】
上述したような機構により、少ない精錬剤添加量とスラグ量で高い脱燐効率を得るには、特に反応サイトである火点への気体酸素の供給方法を適正化すること、具体的には、気体酸素又は気体酸素と精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さ(気体酸素供給速度と上吹ランスの構成及び使用条件から計算される理論上の凹み深さ)を最適範囲に制御することが好ましいことが判った。
ここで、気体酸素又は気体酸素と精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さが小さすぎる、すなわち気体酸素又は気体酸素と精錬剤の吹き付けが弱すぎると、火点外でスラグのフォーミングが発生し、このフォーミングしたスラグが気体酸素ジェットの流れを妨げるため、気体酸素の火点への供給が低下し、脱燐効率の向上には不利な条件となる。また、火点への酸素の供給が不安定になるため、脱燐に必要な酸素が安定的に供給されなくなり、脱燐効率のばらつきが大きくなるとともに、3CaO・P2O5が分解し、復燐が生じてしまう。
【0025】
一方、気体酸素又は気体酸素と精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さが大きすぎる、すなわち気体酸素又は気体酸素と精錬剤の吹き付けが強すぎると、火点内での酸素密度が高くなりすぎ、発生するFeOに対応するPがメタルから十分に供給されなくなる。この結果、余剰分のFeOにより脱炭が進行してしまい、この場合も脱燐効率の向上には不利な条件となる。
気体酸素の吹き付け又は気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さL(気体酸素供給速度と上吹ランスの構成及び使用条件から計算される理論上の凹み深さ)は、下記(1)式により定義することができる。
L=LO×exp{(−0.78×LH)/LO} … (1)
LO=63×{(FO 2/n)/dt}2 / 3
但し LH:上吹きランスのランス高さ(mm)
FO 2:上吹きランスからの気体酸素供給速度(Nm3/hr)
n:上吹きランスのノズル孔数
dt:上吹きランスのノズル孔径(mm)(但し、複数のノズル孔のノズル径が異なる場合は、全ノズル孔の平均孔径)
【0026】
本発明法では、溶銑浴面での上記凹みの深さLを200〜500mmに制御して脱燐処理を行うことが好ましい。図4は、本発明者らが行った試験結果に基づく、溶銑浴面の凹み深さLと脱燐効率及び脱燐処理後の溶銑中P濃度との関係を示したもので、この試験では、転炉型容器(340ton)に保持されたP濃度:0.095〜0.135mass%、Si濃度:0.03〜0.20mass%の溶銑(溶銑温度:1250〜1360℃)に対して、気体酸素(10〜15Nm3/溶銑ton)をキャリアガスとして精錬剤である石灰粉(4〜10kg/溶銑ton)を上吹きランスから溶銑浴面に吹き付けることにより脱燐処理(処理時間:10〜14分間)を行った後、溶銑を脱炭用転炉に装入して脱炭吹錬を行ったものである。なお、脱燐処理では、CaF2添加量は1kg/溶銑ton以下とした。
図4(a),(b)によると、凹み深さLが200〜500mmの範囲に較べ、200mm未満、500mm超の範囲では、上述した理由により脱燐効率が低くなり、処理後の溶銑中P濃度が高くなる傾向がある。
【0027】
本発明では、CaF2を実質的に添加しない若しくは少量のCaF2を添加するだけで高い脱燐効率が得られる。このため本発明では、CaF2の添加量を1kg/溶銑ton以下とし、若しくはCaF2を実質的に添加しない(すなわち、精錬剤中に不可避的不純物として含まれる以外のCaF2を添加しない)条件で脱燐処理を行うことが好ましい。
従来の脱燐処理では、精錬剤(CaO)の滓化を促進させるためにCaF2を添加することが事実上必須であったが、近年Fが環境に及ぼす影響を考慮し、鋼の精錬においてもCaF2の添加量を抑えることが要請されつつある。したがって、本発明法はこのような要請に合致した製造方法であると言える。また、後述するように、本発明では従来法に較べて処理後のスラグ流失量を大幅に減少させることができる効果が得られるが、CaF2を添加しない若しくはその添加量を極く少量とすることによりスラグの流動性をより低くすることができるので、上記効果をより高めることができる。
【0028】
本発明法において、上吹きランスを用いて気体酸素と精錬剤を溶銑浴面に吹き付ける方法に特別な制限はなく、例えば、上吹きランスの複数のランス孔のうち、一部のランス孔から気体酸素のみを、また、他のランス孔から気体酸素又は気体酸素以外のガス(例えば、窒素やArなどの不活性ガス)をキャリアガスとして精錬剤を、それぞれ溶銑浴面に供給することもできる。また、この場合には、ランス先端の中央に主ランス孔を、その周囲に複数の副ランス孔を有する上吹きランスを用い、副ランス孔から気体酸素を、主ランス孔から気体酸素又は上述した気体酸素以外のガスをキャリアガスとして精錬剤を、それぞれ溶銑浴面に供給することが特に好ましい。また、気体酸素の吹き付けと、気体酸素又は上述した気体酸素以外のガスをキャリアガスとする精錬剤の吹き付けを、異なる上吹きランスを用いて行ってもよい。但し、いずれの場合にも、上述したように精錬剤を最も効率的に滓化させるには、精錬剤のキャリアガスは気体酸素であることが特に望ましい。
【0029】
本発明において使用する気体酸素は、純酸素ガス、酸素含有ガスのいずれでもよい。また、溶銑保持容器内に添加される酸素源としては、気体酸素以外に酸化鉄(例えば、焼結粉、ミルスケール)等の固体酸素源を用いることができ、これらを上置き装入や浴中へのインジェクション等の任意の方法で添加することができる。但し、上述したような溶銑浴面への気体酸素の供給(吹き付け)による効率的な溶銑脱燐を行うためには、溶銑保持容器内に添加される酸素源の50%以上、好ましくは70%以上(気体酸素換算量)が上吹きランスを通じて溶銑浴面に供給される気体酸素であることが望ましい。
なお、気体酸素の一部は溶銑浴面への吹き付け以外の方法、例えば溶銑浴中へのインジェクションや底吹き等の方法で浴中に供給してもよい。
【0030】
本発明法では、石灰を主体とした精錬剤を用いる。また、上吹きランスを通じて溶銑浴面に吹き付ける精錬剤は粉体を用いる。
また、精錬剤は、上吹きランスによる溶銑浴面への吹き付け以外に、一部を上置き装入や浴中へのインジョクションなどにより添加してもよい。
【0031】
また、脱燐効率を向上させるためには溶銑をガス撹拌することが好ましい。このガス撹拌は、例えばインジェクションランスや底吹きノズルなどを通じて窒素やArなどの不活性ガスを溶銑中に吹き込むことにより行われる。このような撹拌ガスの供給量としては、十分な浴撹拌性を得るために0.02Nm3/min/溶銑ton以上とし、また、浴の撹拌が強すぎると生成したFeOを溶銑中のCが還元する速度が大きくなり過ぎるためのため0.3Nm3/min/溶銑ton以下とすることが好ましい。
脱燐処理を行うための溶銑保持容器としては、フリーボードが十分に確保できるという点から転炉型容器が最も好ましいが、例えば、溶銑鍋やトーピードカーなどの任意の容器を用いることができる。
【0032】
図5に、溶銑の脱珪工程及び本発明法による脱燐工程の実施状況の一例を示す。この例では、まず、溶銑2(高炉溶銑)をトーピードカー1に入れ、脱珪用ランス3から酸化鉄、気体酸素などを吹き込んで脱珪処理を行なう。排滓後、転炉型脱燐炉4に溶銑2を移し、上吹きランス5から気体酸素をキャリアガスとして石灰などの精錬剤を、溶銑浴面に生じる凹みの深さLが200〜500mmとなるよう溶銑浴面に吹き付ける。このとき添加する石灰の量は、溶銑中Si濃度、P濃度に応じて、それらを固相主体のスラグとして固定する量だけで十分である。また、CaF2は添加しないか、添加するとしても、その添加量は1kg/溶銑ton以下とすることが好ましい。
【0033】
溶銑浴面に気体酸素とともに吹き付けられた精錬剤は、CaO−FeO系融体を形成して速やかに滓化するとともに、気体酸素の運動エネルギーで火点の外側に押し出されながら、Si及びPを吸収して安定な固相を形成する。そして、このような固相主体のスラグは非常に安定であるため、周辺の塩基度が低くても再び溶融することはない。このため少ない精錬剤添加量とスラグ量で効率的な脱燐処理を行うことができる。脱燐処理終了後は、出湯口7から溶銑2を取鍋などに出湯し、残ったスラグ6は炉口から排滓する。
【0034】
以上述べたように、本発明法によれば最小限の精錬剤添加量とスラグ発生量で効率的な脱燐処理を行うことができるが、さらなる効果として、生成するスラグの性状が固相主体のものとなるため、処理後の出湯時におけるスラグ流失を適切に防止できるという大きな利点がある。
脱燐処理において脱燐反応効率が向上すると、スラグ中の燐濃度が上昇するため、脱燐処理後の出湯時(特に、転炉型容器のような出湯口を有する精錬容器からの出湯時)にメタルとともにスラグが流出しないようにすることが重要である。すなわち、燐分配Lp=200程度の脱燐処理を実施し、処理後の溶銑中燐濃度が0.015mass%(規格値:0.020mass%)の場合、5kg/溶銑ton程度のスラグが流出すると、燐が0.015mass%分も脱炭吹錬用転炉に持ち込まれてしまうため、脱炭吹錬用転炉内でも脱燐のための石灰が必要となる。しかし、これでは溶銑予備処理本来の目的が達成できない。したがって、脱燐スラグの次工程へのスラグ流出防止が重要となる。
【0035】
従来、転炉型容器を用いた脱燐処理後、次工程へのスラグ流出を極少化するための方法としては、(1)転炉型容器からの出湯中におけるスラグカット技術、(2)処理後にスラグ組成を制御することによりスラグの流動性を低下させる方法、(3)出湯後の取鍋からスラグを除去(除滓)する方法、などがある。
しかし、これら従来の方法は、スラグ流失を安定的に防止することができない、消耗品を使用するためコストが高い、作業に時間がかかるため溶銑温度が低下する、スラグ除去に伴い鉄歩留りが低下する、などの問題がある。
【0036】
これに対して本発明法によれば、先に述べたように、火点を中心とする溶銑浴面領域で生成し、その外側に順次押し出されるスラグは安定な固相主体のものとなり、このため脱燐処理終了時におけるスラグは、従来の脱燐処理法で生成したスラグに較べて流動性が非常に小さく、この結果、脱燐処理終了後の出湯時(特に、転炉型容器のような出湯口を有する精錬容器からの出湯時)におけるスラグ流出を効果的に防止できる。また、先に述べたように、この効果はCaF2を添加しないか若しくはCaF2の添加量を1kg/溶銑ton以下とし、スラグの流動性の増加を抑えることで、より高めることができる。
【0037】
以下、本発明法によって生成されるスラグについて、出湯時にスラグ流出が防止されるメカニズムを、従来法によって生成されるスラグと比較して説明する。図6に、転炉型脱燐精錬炉における出湯開始時のスラグ/メタルの状態を示す。図6(a)に示す従来法の場合には、スラグ塩基度を低くしたり或いはCaF2を多量に添加することによりスラグを積極的に溶融させるため、スラグはフォーミングしており、スラグ厚みが増している。このため出湯時に炉を傾動していくと、初めにスラグが出湯口を通過するため、スラグ流出が不可避的に発生する。これに対して図6(b)に示す本発明法の場合には、スラグは固相主体の状態で存在しているためスラグ厚みは極めて薄く、出湯開始時に起こるスラグ流出は無視できるレベルである。
【0038】
図7に、出湯末期の出湯口近傍でのスラグ/メタルの状態を示す。出湯終了直前では、メタル深さが浅くなってメタルの渦流が発生するが、図7(a)に示す従来法では、この渦流にメタル上の溶融スラグが巻き込まれて流出する。これに対して図7(b)に示す本発明法の場合には、スラグは固相主体のものであるため、メタルの渦流上でスラグどうしが干渉・合体し、このためスラグがメタルの渦流に巻き込まれることはほとんどない。
【0039】
【実施例】
高炉から出銑された溶銑を鋳床で脱珪処理した後、これを溶銑鍋に受銑してこの溶銑鍋内で脱珪処理し、排滓した後、脱燐処理用の300トン転炉に溶銑を装入した。
脱燐処理では、上吹きランスを用いて気体酸素をキャリアガスとして石灰粉(精錬剤)を溶銑浴面に吹き付けるとともに、一部の実施例では塊状石灰の上置き装入を併せて行った。また、比較例の一部では、上吹きランスを通じた石灰粉の吹き付けを行わず、塊状石灰を上置き装入で添加した。各実施例とも転炉の炉底から窒素ガスを0.07〜0.12Nm3/min/溶銑tonの供給量で吹き込み、8〜14分間の脱燐処理を行った。
各実施例の結果を、脱燐処理条件とともに表1〜表6に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の低燐溶銑の製造方法によれば、少ない精錬剤添加量とスラグ発生量で効率的な脱燐処理を行うことができる。また、CaF2の添加量を従来に較べて大幅に削減し或いはCaF2を添加することなく脱燐処理を行うことができるとともに、処理後の出湯時におけるスラグ流出も効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法及び従来法について、溶銑中Si濃度と必要石灰量との関係を示すグラフ
【図2】本発明法と従来法について、脱燐用の必要石灰量及び石灰効率ηcaoと脱燐処理後の溶銑中P濃度との関係を示すグラフ
【図3】上吹きランスから溶銑浴面に吹き付けられる石灰量Xと脱P用の石灰量Wcao_Pとの比X/Wcao_Pと脱燐処理後の溶銑中P濃度との関係を示すグラフ
【図4】気体酸素又は気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さLと脱燐効率及び脱燐処理後の溶銑中P濃度との関係を示すグラフ
【図5】脱珪工程及び本発明法による脱燐工程の一例を示す説明図
【図6】転炉型脱燐精錬炉を用いた従来法と本発明法において、出湯開始時のスラグ/メタルの状態を模式的に示す説明図
【図7】転炉型脱燐精錬炉を用いた従来法と本発明法において、出湯末期の出湯口近傍でのスラグ/メタルの状態を模式的に示す説明図
【図8】スラグ塩基度とスラグの燐分配Lpとの関係を示すグラフ
【図9】従来法における、燐分配Lp毎の必要石灰量と処理後の到達P濃度との関係を示すグラフ
【図10】従来法における、溶銑中Si濃度と塩基度調整のために必要な石灰量との関係を示すグラフ
【図11】従来法における、溶銑中Si濃度と必要石灰量との関係を示すグラフ
【符号の説明】
1…トーピードカー、2…溶銑、3…脱珪用ランス、4…転炉型脱燐炉、5…上吹きランス、6…スラグ、7…出湯口
Claims (8)
- 溶銑を保持した容器内に石灰を主体とする精錬剤と酸素源を添加して、溶銑予備処理である脱燐処理を行うことにより低燐溶銑を製造する方法において、
Si濃度が0.15mass%以下の溶銑に対して、上吹きランスを通じて気体酸素と少なくとも一部の精錬剤を溶銑浴面に吹き付けて脱燐処理を行うとともに、該脱燐処理においては、精錬剤として、下記(1)式で求められる石灰量Wcao_P(kg/溶銑ton)と下記(2)式で求められる石灰量Wcao_Si(kg/溶銑ton)を合計した量の石灰を添加することを特徴とする低燐溶銑の製造方法。
Wcao_P=(溶銑[P]−目標[P])×(10/62)×56×3/ηcao … (1)
但し 溶銑[P]:脱燐処理前の溶銑中P濃度(mass%)
目標[P]:目標とする脱燐処理後の溶銑中P濃度(mass%)
ηcao(石灰効率)=0.5〜1
Wcao_Si=溶銑[Si] ×(10/28)×56×2 … (2)
但し 溶銑[Si]:脱燐処理前の溶銑中Si濃度(mass%) - 石灰量Wcao_P(但し、ηcao=1で求められるWcao_P)の80mass%以上の石灰を上吹きランスを通じて溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 石灰量Wcao_Siに相当する精錬剤として、石灰粉、塊焼石灰、塊石灰石、未反応CaOを含む製鉄スラグの中から選ばれる1種以上を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 下記(3)式により定義される、気体酸素の吹き付け又は気体酸素をキャリアガスとする精錬剤の吹き付けにより溶銑浴面に生じる凹みの深さLを200〜500mmに制御することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の低燐溶銑の製造方法。
L=LO×exp{(−0.78×LH)/LO} … (3)
LO=63×{(FO 2/n)/dt}2 / 3
但し LH:上吹きランスのランス高さ(mm)
FO 2:上吹きランスからの気体酸素供給速度(Nm3/hr)
n:上吹きランスのノズル孔数
dt:上吹きランスのノズル孔径(mm)(但し、複数のノズル孔のノズル径が異なる場合は、全ノズル孔の平均孔径) - 精錬剤がCaF2を実質的に含まないか若しくは精錬剤中に含まれるCaF2量が1kg/溶銑ton以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素が吹き付けられる溶銑浴面領域に吹き付けられることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 上吹きランスから供給される精錬剤のうちの少なくとも一部が、気体酸素の吹き付けにより溶銑浴面に生じる火点に吹き付けられることを特徴とする請求項6に記載の低燐溶銑の製造方法。
- 精錬剤の少なくとも一部を、気体酸素をキャリアガスとして溶銑浴面に吹き付けることを特徴とする請求項6又は7に記載の低燐溶銑の製造方法。
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