JP2004082338A - ラミネート部品及びラミネーター - Google Patents

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北澤 祐介
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Abstract

【課題】基板上に一列に形成されたヒータを発熱させるラミネート部品において、保護被覆層表面からの腐食性物質の進入を防止する。
【解決手段】支持基板1上において、少なくともヒータ層2とその周辺の電極層3の一部を保護被覆するように形成される保護被覆層4を積層構造とし、かつ、そのうちの一層をバイアススパッタ法(又はCVD法)で形成する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、被転写体に形成された画像上に画像保護ラミネートを形成するためのラミネート部品及びラミネーターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、印画紙、光沢紙等の被転写体に転写、若しくは形成された画像を保護するため、被転写体の表面に透明なフィルムをラミネートすることが行われている。その効果としては、大気中に含まれるガスを遮断し画質劣化を防止することや、紫外線による画質の変質防止、画像を外力による傷から保護することなどが挙げられる。
【0003】
また、被転写体の表面にラミネート層を形成する方法としては、熱ローラを用いてラミネートフィルムを被転写体に熱圧着する方法や、一列に形成されたヒータを発熱させて、被転写体の表面にフィルムをラミネートする方法(例えば、特開平11−58956号公報)等、熱を介在させて圧着する手法が一般的である。
【0004】
このうち、一列に形成されたヒータを発熱させる方法において、ヒータのヘッドとなる部分は、例えばセラミック基板等の支持基体上にヒータ層、アルミニウム等の電極となる導電層をスパッタ法等の膜形成法によって積層形成した後、フォトエングレービングプロセス等を通すことによって複数の一対となるヒータと電極を一線上に形成し、その後、少なくともそのヒータとその周辺の電極を保護するための保護被覆層をスパッタ法により形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、基板上に積層形成されたヒータ層と導電層の境目付近には段差があるため、スパッタ法によりその表面に保護被覆層を形成すると、段差部分に粒界によるクラックが生じるという不具合があった。そして、一列に形成されたヒータを発熱させる方法では、フィルムにプラテンローラの圧力がかかった状態でヒータを発熱させ、そのヒータ上をフィルムを摺接させながら画像記録面に熱圧着するため、フィルム表面に含まれる腐食性物質が保護被覆層のクラックから内部に侵入し、ヒータの劣化や性能バラツキを生じ、長期に渡って安定した性能を維持することが難しいという課題があった。
【0006】
この発明の目的は、保護被覆層表面からの腐食性物質の進入を防止することにより、ヒータの劣化や性能バラツキを生じることがなく、長期に渡って安定した性能を維持することができるラミネート部品及びラミネーターを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に係わる発明は、基体の主面上に配置されたヒータ層と、前記ヒータ層に電流を供給する一対の電極層とを有し、前記ヒータ層と一対の電極層で形成されるヒータ回路が前記主面上に複数一列に配置され、少なくとも前記ヒータ層と電極層の一部を覆うように保護被覆層が形成された画像ラミネート部品において、前記保護被覆層は積層構造であり、その層の1部がバイアススパッタ法により形成されたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係わる発明は、請求項1において、前記保護被覆層は、前記ヒータ層に接する層が通常スパッタ法で形成され、残りの少なくとも1層がバイアススパッタ法で形成されたものであることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するため、請求項3に係わる発明は、基体の主面上に配置されたヒータ層と、前記ヒータ層に電流を供給する一対の電極層とを有し、前記ヒータ層と一対の電極層で形成されるヒータ回路が前記主面上に複数一列に配置され、少なくとも前記ヒータ層と電極層の一部を覆うように保護被覆層が形成された画像ラミネート部品において、前記保護被覆層は積層構造であり、その層の一部が気相成長薄膜形成法により形成されたものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係わる発明は、請求項3において、前記保護被覆層は、前記ヒータ層に接する層が通常スパッタ法で形成され、残りの少なくとも1層がCVD法により形成されたものであることを特徴とする。
【0011】
さらに請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4いずれか1項記載のラミネート部品を用いてラミネートフィルムを被転写体に熱圧着させるラミネーターであることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わるラミネート部品の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
実施の形態1
図1は、実施の形態1に係わるラミネート部品の概略断面図、図2は、概略平面図である。図1は図2のA−A′断面図に相当する。
【0014】
本実施の形態では、保護被覆層をバイアススパッタ薄膜形成法により形成したラミネート部品について説明する。
【0015】
支持基板1は、アルミナ基板上の所定部位に保温層としてグレーズ層を形成したグレーズアルミナ基板からなり、その上に、サーメット膜からなるヒータ層2、Alからなる電極層3を順次、スパッタ法等の薄膜形成方法にて形成した。そして、支持基板1において、ホトエングレービングプロセスを行い、図2に示すように、一対のヒータ層2と電極層3とで構成されるヒータ回路10が同一パターンで複数一列に配置されるよう形成した。その後、少なくともヒータ層2とその周辺の電極の一部を保護被覆するように保護被覆層4をSi3   とSiOを混合した焼結体を着膜源として形成した。
【0016】
本実施の形態における保護被覆層4は積層構造であり、かつ、そのうちの一層はバイアススパッタ法により形成されている。後述する評価試験では、本実施の形態の構造で作成したサンプルを実施例1〜3とし、また単層で作成したサンプルを比較例1,2とした。このうち、実施例1,2では、図1に示すように、保護被覆層4を二層構造とし、ヒータ層2に接する層を第1層4−1(最下層)、この上に形成された層を第2層4−2(最上層)としている。また、実施例3では、第1層4−1と第2層4−2との間に第3層(中間層)を有する三層構造とした例を示している(図示省略)。
【0017】
この保護被覆層4の形成方法として用いたバイアススパッタ法は、「プラズマプロセッシングの基礎(B.N.Chapman著)」等に紹介されている。通常のスパッタリング技術はその薄膜の着膜源となるターゲットに高周波等電力の付勢により、励起したプラズマとターゲットの衝突を発生させ、その着膜源から材料粒子が飛散〜体積し、被膜となる。この際、基板表面に段差があると、その段差部を起点として粒界が発生することになる。
【0018】
しかしながらバイアススパッタ法の場合、堆積される基板側にも高周波等の電力を付勢することで、着膜動作と連続して基板側もプラズマによるエッチングをする手法であるため、既に基板に堆積している材料をプラズマによって叩き、再スパッタリングして、段差壁面に前記材料を再度付着させることができる。このようにして、前記粒界は埋められて行き、カバレージ性の良好な被覆膜を得ることが可能となる。
【0019】
次に、本実施の形態の構造で作成した実施例1〜3と、比較例1,2とを用いた評価試験の結果について説明する。
【0020】
各サンプルにおいて保護被覆層4の膜厚はすべて3μmの総厚とした。膜の構成は以下の通りである。なお、図3において、通常スパッタ法は“スパッタ”、バイアススパッタ法は“バイアス”と記している。ここで、スパッタは、不活性ガス(Ar)雰囲気中、圧力0.3〜0.4Pa、ターゲット電圧3〜4kWの条件で行った。バイアススパッタは、前記スパッタ条件にさらに基板に1〜3kWの電圧を印加する条件で行った。
【0021】
実施例1は、保護被覆層4の第1層4−1として1μmを通常スパッタ法で形成し、残りの第2層4−2として、第1層4−1から上層に向かって2μmをバイアススパッタ法で形成した。実施例2は、保護被覆層4の第1層4−1として2μmを通常スパッタ法で形成し、残りの第2層として、第1層4−1から上層に向かって1μmをバイアススパッタ法で形成した。また実施例3は、保護被覆層4の第1層4−1として1μmを通常スパッタ法で形成し、中央層となる第3層として1μmをバイアススパッタ法で形成し、さらに、残りの第2層4−2として上層に向かって1μmを通常スパッタ法で形成した。
【0022】
比較例1は、保護被覆層4として3μmをすべてバイアススパッタ法で形成した。比較例2は、3μmすべて通常スパッタ法で形成した。
【0023】
評価試験としては、上記5種類のサンプルについて、60℃×90%RHの高温高湿雰囲気において、ヒータ層2に入力する信号を待機状態(電界が印加された状態)とし、電界腐食を加速させる高温高湿試験、及び通常動作(試料のヒータ層を擬似的に作動させヒータ層がONの状態)中に3%に希釈したNaOH溶液を滴下し、膜欠陥や膜粒界からの侵入による電極腐食を加速させる強制腐食試験の2試験を実施した。評価試験の結果を図3に示す。なお、図3の高温高湿試験において、X/10はサンプル10個あたりの合格品(OK)と不良品(NG)の個数を示している。
【0024】
高温高湿試験の結果、比較例2では高温高湿試験において、粒界から湿度の侵入により、168h経過でヒータ層2の腐食が発生し、また強制腐食試験においても1×E    pls印加時でヒータ層2の破壊に至った。一方、実施例1〜3及び比較例1のように、バイアスを印加して保護被覆層4を形成したサンプルでは、高温高湿試験において、すべて1000h以上経過してもヒータ層2の腐食が発生せず、また強制腐食試験において、3×E    plsを印加してもヒータ層2の劣化は確認されなかった。
【0025】
ただし、単層構造の比較例1については、成膜時にヒータ層2までエッチングしていることから、完成品のヒータ値がばらついている現象が確認された。これに対し実施例1〜3ではヒータ値のばらつきは確認されなかった。したがって、比較例1は高温高湿試験及び強制腐食試験については合格しているが、ラミネート部品としては不良品と認定される。
【0026】
上記実施の形態1の評価試験より明らかなように、ヒータ層2の上部を覆う保護被覆膜4を積層構造とし、かつ形成の際にその一層をバイアススパッタ法で形成することにより、カバレージ性が良好となり、保護被覆層4表面からの腐食性物質の進入防止に有効であることが実証された。これによれば、フィルム表面に含まれる腐食性物質が保護被覆層4から内部に侵入し、ヒータ層2の劣化や性能バラツキを生じることがなくなるため、長期に渡って安定した性能を維持することが期待できる。
【0027】
実施の形態2
本実施の形態では、保護被覆層を気相成長薄膜形成法により形成したラミネート部品について説明する。
【0028】
ラミネート部品の概略断面図は図1と同じであり、支持基板1、ヒータ層2、電極層3の材質、形成方法についても実施の形態1と同じである。
【0029】
本実施の形態では、電極層3を形成した後、少なくともヒータ層2とその周辺の電極層3の一部を保護被覆するよう保護被覆層4をSiH4 +N2 を混合したガスを用いて形成した。
【0030】
本実施の形態における保護被覆層4は積層構造であり、かつそのうちの一層はCVD(Chemical−Vapor−Deposition)法により形成されている。後述する評価試験では、本実施の形態の構造で作成したサンプルを実施例4〜6とし、また単層で作成したサンプルを比較例3とした。このうち、実施例4,5では、図1に示すように、保護被覆層4を二層構造とし、ヒータ層2に接する層を第1層4−1(最下層)、この上に形成された層を第2層4−2(最上層)としている。また、実施例6では、第1層4−1と第2層4−2との間に第3層(中間層)を有する三層構造とした例を示している(図示省略)。
【0031】
この保護被覆層4の形成方法として用いたCVD法は、低圧力下で上記ガス雰囲気中に密閉したチャンバー内に高周波等電力を印加することで被着膜体表面上からガスの構成分子が励起され、膜として成長させる手法で有り、基板表面段差に対し粒界の発生がない膜を提供する手段として一般的である。
【0032】
次に、本実施の形態の構造で作成した実施例4〜6と、比較例3とを用いた評価試験の結果について説明する。
【0033】
各サンプルにおいて保護被覆層4の膜厚はすべて3μmの総厚とした。膜の構成は以下の通りである。
【0034】
実施例4は、第1層4−1として1μmを通常スパッタ法で形成し、残りの第2層4−2として、第1層4−1から上層に向かって2μmをCVD法で形成した。実施例5は、第1層4−1として2μmを通常スパッタ法で形成し、残りの第2層として、第1層4−1から上層に向かって1μmをCVD法で形成した。また実施例6は、、第1層4−1として1μmを通常スパッタ法で形成し、中央層となる第3層として1μmをCVD法で形成し、さらに、残りの第2層4−2として上層に向かって1μmを通常スパッタ法で形成した。比較例3は、3μmをすべてCVD法で形成した。
【0035】
評価試験としては、上記4種類のサンプルについて、60℃×90%RHの高温高湿雰囲気において、ヒータ層2に入力する信号を待機状態としての高温高湿試験、及び通常動作中に3%に希釈したNaOH溶液を滴下する強制腐食試験の2試験を実施した。評価試験の結果を図4に示す。
【0036】
高温高湿試験の結果、すべてのサンプルともに1000h経過してもヒータ層2の腐食が発生せず、また強制腐食試験において、3×E    plsを印加してもヒータ層2の劣化は確認されなかった。
【0037】
ただし、単層構造の比較例3については、気相成長過程で加熱工程を経たため、完成品のヒータ値がばらついている現象が確認された。これに対し実施例4〜6ではヒータ値のばらつきは確認されなかった。したがって、比較例3は高温高湿試験及び強制腐食試験については合格しているが、ラミネート部品としては不良品と認定される。
【0038】
上記実施の形態2の評価試験より明らかなように、ヒータ層2の上部を覆う保護被覆膜4を積層構造とし、かつ形成の際にその一層をCVD法で形成することにより、カバレージ性が良好となり、保護被覆層4表面からの腐食性物質の進入防止に有効であることが実証された。これによれば、フィルム表面に含まれる腐食性物質が保護被覆層4から内部に侵入し、ヒータ層2の劣化や性能バラツキを生じることがなくなるため、長期に渡って安定した性能を維持することが期待できる。
【0039】
上記、各実施例のラミネート部品をラミネーターに組み込み、ラミネートフィルムをインクジェット方式あるいはバブルジェット(登録商標)方式のプリンタにて画像を形成した被転写体に熱圧着したところ、均一に熱圧着することができ、被転写体の画像劣化を良好に防止できるラミネーターを得ることができた。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、基板表面の段差部分に粒界によるクラックを生じることがないため、保護被覆層表面からの腐食性物質の進入を防止することができる。したがって、ヒータの劣化や性能バラツキを生じることがなく、長期に渡って安定した性能を維持することができる高信頼性、高品位性のラミネート部品及びラミネーターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係わるラミネート部品の概略断面図。
【図2】実施の形態1に係わるラミネート部品の概略平面図。
【図3】実施の形態1における評価試験の結果を示す説明図。
【図4】実施の形態2における評価試験の結果を示す説明図。
【符号の説明】
1…支持基板
2…ヒータ層
3…電極層
4…保護被覆層
10…ヒータ回路

Claims (5)

  1. 基体の主面上に配置されたヒータ層と、前記ヒータ層に電流を供給する一対の電極層とを有し、前記ヒータ層と一対の電極層で形成されるヒータ回路が前記主面上に複数一列に配置され、少なくとも前記ヒータ層と電極層の一部を覆うように保護被覆層が形成された画像ラミネート部品において、
    前記保護被覆層は積層構造であり、その層の1部がバイアススパッタ法により形成されたものであることを特徴とする画像ラミネート部品。
  2. 前記保護被覆層は、前記ヒータ層に接する層が通常スパッタ法で形成され、残りの少なくとも1層がバイアススパッタ法で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のラミネート部品。
  3. 基体の主面上に配置されたヒータ層と、前記ヒータ層に電流を供給する一対の電極層とを有し、前記ヒータ層と一対の電極層で形成されるヒータ回路が前記主面上に複数一列に配置され、少なくとも前記ヒータ層と電極層の一部を覆うように保護被覆層が形成された画像ラミネート部品において、
    前記保護被覆層は積層構造であり、その層の一部がCVD法により形成されたものであることを特徴とするラミネート部品。
  4. 前記保護被覆層は、前記ヒータ層に接する層が通常スパッタ法で形成され、残りの少なくとも1層が気相成長薄膜形成法により形成されたものであることを特徴とする請求項3に記載のラミネート部品。
  5. 請求項1乃至請求項4いずれか1項記載のラミネート部品を用いてラミネートフィルムを被転写体に熱圧着させることを特徴とするラミネーター。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006190982A (ja) * 2004-12-06 2006-07-20 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 発光素子、発光装置及び電子機器

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