JP2004082208A - サーボプレスのモータ過負荷保護方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】自動運転中に、検出したモータ負荷電流(In)を含む過去の実測値に基づいて熱量積算値(Qn)を求め、求めた熱量積算値(Qn)が第1熱量積算閾値(Qs1)を越えたときは、スライド(3)を成形領域以外の所定位置に一時停止させる。このとき、スライド(3)を一旦停止させ、この後現在のモータ負荷電流(In)が所定値以上のときにはスライド(3)を所定距離上昇させて一時停止させてもよい。スライド一時停止の後、再度モータ負荷電流を検出し、この検出したモータ負荷電流(In)を含む過去の実測値に基づいて求めた熱量積算値(Qn)が、第2熱量積算閾値(Qs2)よりも下がったら、前記一時停止を解除して再起動状態とする。また、スライド一時停止後、所定時間経過したら再起動してもよい。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーボモータで所定の動力伝達機構を介してスライドを駆動するサーボプレスにおいて、プレス自動運転中のスライド駆動用サーボモータの過負荷異常を防止するモータ過負荷保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
サーボモータでボールスクリュー、トグルリンク機構、クランク機構またはエキセン機構などの所定の動力伝達機構を介してスライドを往復駆動するサーボプレスは、サーボモータの位置及び速度をサーボ制御することにより、ワーク加工条件に適合したスライドモーションとなるようにスライドを制御できるという優れた利点を有している。そして、この利点を生かして、高精密な成形加工ができ、またストローク数増加による生産性向上を図ることができるので、近年、多く使用され始めている。(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)
【0003】
上記のようなサーボプレスにおいては、自動運転モードで連続的にワーク加工を行うときに、サーボモータの連続的に変化する負荷電流によってサーボモータ温度が徐々に上昇する。すなわち、サーボモータの実効出力トルクによる仕事量に相当するエネルギによってサーボモータが発熱する。通常、サーボモータの最大許容出力電流はその周囲温度およびモータ自身の温度によって制限されており、従ってモータ自身の温度が所定の最大許容温度を越えたら、サーボモータの熱的保護のために、そのサーボアンプのサーマル監視機能によって、過負荷異常としてアラーム信号を出力するようにしている。このとき、プレスコントローラは、この過負荷異常の信号を入力したら、サーボアンプへの指令をオフすると共に、サーボアンプへの主回路電源の入力も遮断してサーボモータへの電流出力を遮断するようにしている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−277797号公報
【特許文献2】
特願2002−175831号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のサーボプレスにおいて、プレスの連続運転時に一旦モータ過負荷異常が発生すると、前述のようにサーボアンプはモータ電流出力を遮断されると共に、その主回路電源もオフされるため、サーボアンプのこの過負荷異常停止を解除するためには、サーボアンプの制御電源を一旦オフした後に、モータ温度が所定値以下に下がるまで待って、再度制御電源及び主回路電源をオンする操作が必要となる。このため、一旦過負荷異常アラームの発生すると、プレス運転を再起動するまでに時間がかかり、自動運転での生産性が低下する。
【0006】
また、自動運転中に、突然過負荷異常でサーボモータが停止した場合、ワーク加工中であれば、加工不良品を作るだけでなく、再起動するにはスライド停止状態からスライドを上昇させて待機点に戻し、加工不良品を金型から排出し、この後再起動する、といった面倒な操作が必要であり、しかも時間がかかるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に着目してなされ、プレス自動運転中でも、サーボモータの過負荷異常の発生を防止できるサーボプレスのモータ過負荷保護方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記目的を達成するため、第1発明は、サーボモータで所定の動力伝達機構を介してスライドを駆動するサーボプレスのモータ過負荷保護方法において、サーボモータの作動時の負荷電流を検出し、自動運転中に、検出したモータ負荷電流を含む過去の実測値に基づいて熱量積算値を求め、求めた熱量積算値が第1熱量積算閾値を越えたときは、スライドを成形領域以外の所定位置に一時停止させる方法としている。
【0009】
第1発明によれば、モータ温度に略比例するモータ熱量積算値を監視し、このモータ熱量積算値が所定の第1熱量積算閾値に達したらスライドを一時停止させて、過負荷異常となる前にモータ温度を低下させるので、自動運転中の過負荷異常の発生を未然に防止できる。このため、過負荷異常発生に伴う長時間の運転中断や、再起動するための操作が無くなり、生産性および作業性を向上できる。さらに、加工不良品を作ることも無い。
なお、上記成形領域とは、スライドがワークを加圧して成形を行なっているか、またはダイクッションを押し下げているスライドモーションの領域をいう。
【0010】
第2発明は、サーボモータで所定の動力伝達機構を介してスライドを駆動するサーボプレスのモータ過負荷保護方法において、サーボモータの作動時の負荷電流を検出し、自動運転中に、検出したモータ負荷電流を含む過去の実測値に基づいて熱量積算値を求め、求めた熱量積算値が第1熱量積算閾値を越えたときは、スライドを一旦停止させ、この後、検出した現在のモータ負荷電流が所定値以上のときにはスライドを所定距離上昇させて一時停止させる方法としている。
【0011】
第2発明によれば、モータ温度に略比例するモータ熱量積算値を監視し、このが所定の第1熱量積算閾値に達したらスライドを一旦停止させ、この後、現在のモータ負荷電流値が所定値以上のとき、つまりサーボモータが所定値以上の加圧トルクを発生させた状態で停止しているときには、モータ負荷が小さくなるようにスライドを所定距離上昇させて一時停止させるようにしたため、過負荷異常となる前にモータ負荷電流を所定値以下に小さくできる。これにより、モータ温度が低下するので、自動運転中の過負荷異常の発生を未然に防止できる。このため、過負荷異常発生に伴う長時間の運転中断や、再起動するための操作が無くなり、生産性および作業性を向上できる。さらに、加工不良品を作ることも無い。
【0012】
第3発明は、第1又は第2発明において、前記スライドの一時停止の後、再度モータ負荷電流を検出し、このときの検出したモータ負荷電流を含む過去の実測値に基づいて求めた熱量積算値が、第2熱量積算閾値よりも下がったら、前記スライドの一時停止を解除して再起動状態とする方法としている。
【0013】
第3発明によれば、モータ熱量積算値が第2熱量積算閾値以下に下がったら、一時停止を解除して、再起動状態とする、すなわち連続運転モードのときには運転を再開し、また、例えば外部安全一行程モードのときにはトランスファフィーダ装置からのプレス起動要求待ち状態とするので、自動運転を継続できる。これにより、モータ温度を監視してモータ過負荷異常を回避しながら自動運転ができる。また、待機点で一時停止しているときには、トランスファフィーダ等との同期運転再開が容易にできる。
【0014】
第4発明は、第1又は第2発明において、前記スライドの一時停止の後、所定時間経過したら、前記スライドの一時停止を解除して再起動状態とする方法としている。
【0015】
第4発明によれば、一時停止の後、所定時間(モータ温度が所定量低下するのに要する、予め設定された時間)経過したら、再起動状態(前記同様)とするので、自動運転を継続できる。これにより、モータ温度を監視してモータ過負荷異常を回避しながら自動運転ができる。また、待機点で一時停止しているときには、トランスファフィーダ等との同期運転再開が容易にできる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
まず、本発明が適用されるサーボプレスの構成を図1、図2により説明する。図1及び図2は、それぞれサーボプレスの側面一部断面図及び背面一部断面図である。
プレス機械1はサーボプレスであり(以下、サーボプレス1と呼ぶ)、サーボモータ21によりスライド3を駆動している。サーボプレス1の本体フレーム2の略中央部にはスライド3が上下動自在に支承されており、スライド3に対向する下部には、ベッド4上に取付けられたボルスタ5が配設されている。スライド3の上部に形成された穴内には、ダイハイト調整用のねじ軸7の本体部が抜け止めされた状態で回動自在に挿入されている。ねじ軸7のねじ部7aは上方に向けてスライド3から露出し、ねじ軸7の上方に設けたプランジャ11の下部の雌ねじ部に螺合している。
【0018】
ねじ軸7の本体部外周にはウォームギヤ8のウォームホイール8aが装着されており、このウォームホイール8aに螺合したウォームギヤ8のウォーム8bはスライド3の背面部に取付けたインダクションモータ9の出力軸にギヤ9aを介して連結されている。インダクションモータ9は、軸方向長さを短くしてフラット形状に、コンパクトに構成されている。
【0019】
前記プランジャ11の上部は、第1リンク12aの一端部とピン11aにより回動自在に連結されており、この第1リンク12aの他端部と、本体フレーム2に一端部が回動自在に連結されている第2リンク12bの他端部との間には、三軸リンク13の一側に設けた2つの連結孔がピン14a,14bにより回動自在に連結されている。三軸リンク13の他側の連結孔は、詳細を後述するスライド駆動部20の偏心軸28に回動自在に連結されている。第1リンク12a、第2リンク12bおよび三軸リンク13により、トグルリンク機構を構成している。
【0020】
本体フレーム2の側面部にはスライド駆動用のサーボモータ21が軸心をプレス左右方向に向けて取付けられており、該サーボモータ21の出力軸に取付けた第1プーリ22aと、サーボモータ21の上方に軸心をプレス左右方向に向けて回動自在に設けている中間シャフト24に取付けた第2プーリ22bとの間にはベルト23(通常はタイミングベルトで構成される)が巻装されている。また、中間シャフト24の上方の本体フレーム2には駆動軸27が回動自在に支承されており、駆動軸27の一端側に取付けたギヤ26は中間シャフト24に取付けたギヤ25と噛合している。そして、駆動軸27の軸心方向略中央部には偏心軸28が形成されており、この偏心軸28の外周部の偏心位置に前記三軸リンク13の他側が回動自在に連結されている。
【0021】
また、スライド3内には前記ねじ軸7の下端面部との間に密閉された油室6が形成されており、この油室6はスライド3内に形成されている油路6aを経由して切換弁16に接続されている。切換弁16は、油室6内への操作油の給排を切り換えるものである。切換弁16を通して油室6内に給油された操作油は、プレス加工時には、油室6内に閉塞され、加圧時の押圧力を油室6内の油を介してスライド3に伝達するようにしている。スライド3に過負荷が加わり、油室6内の油圧が所定の値を越えると油が図示しないリリーフ弁からタンクへ戻され、スライド3が所定量クッションし、スライド3および金型が破損しないようになっている。
【0022】
また、スライド3の背面部には、上下2箇所から本体フレーム2の側面部に向けて突出した1対のブラケット31,31が取付けてあり、上下1対のブラケット31,31間に位置検出ロッド32が取付けられている。位置検出用のスケール部が設けられている位置検出ロッド32には、リニアスケール等の位置センサ33の本体部が上下動自在に嵌挿している。位置センサ33は、本体フレーム2の側面部に設けられている補助フレーム34に固定されている。この補助フレーム34は上下方向に縦長に形成されており、下部がボルト35により本体フレーム2の側面部に取付けられ、上部が図示しない上下方向長孔内に挿入されたボルト36により上下方向摺動自在に支持され、側部が前後1対の支持部材37,37により当接、支持されている。
【0023】
補助フレーム34は、上下いずれか一側(本例では下側)のみを本体フレーム2に固定し、他側を上下動自在にして支持する構造としているため、本体フレーム2の温度変化による伸縮の影響を受けないようになっている。これにより、前記位置センサ33は、本体フレーム2の温度変化による伸縮の影響を受けずに、スライド位置及びダイハイトを正確に検出可能としている。
【0024】
次に、図3に示す制御構成ブロック図に基づき、制御装置のハード構成を説明する。
本制御装置は制御器10、メモリ10a、モニタ表示器19、電流センサ29、位置センサ33、サーボアンプ45およびスライド駆動用のサーボモータ21を備えている。
【0025】
電流センサ29は、サーボモータ21の負荷電流を検出し、その検出電流値を制御器10に出力している。
また、前記位置センサ33は、検出したスライド位置を制御器10に出力している。
【0026】
メモリ10aは、予め設定されたスライドモーションデータ、およびスライド位置とサーボモータ21の回転角度との関係を表すテーブルデータを記憶している。なお、この関係は、前記偏心軸28の偏心長さ、前記トグルリンク機構の各リンク長さ、偏心軸28の回転中心位置とトグルリンクとの関係等により決定される。
【0027】
またモニタ表示器19は、制御器10からの表示指令に基づき、スライド現在位置(高さ)、このときのモータ負荷電流値、およびモータ負荷状態の演算値などの各種モニタ情報や、アラームメッセージ等を表示している。この表示器は、LED等の数字表示器、液晶等の文字表示器やグラフィック表示器などにより構成できる。
【0028】
そして、制御器10は、コンピュータ装置やPLC(プログラマブルロジックコントローラ、所謂プログラマブルシーケンサである)等の高速演算装置から構成されている。この制御器10は、前記メモリ10aに記憶したスライド位置/モータ回転角度対応テーブルを参照して、予め設定されたモーションデータに基づいて、制御用のスライドモーションを作成し、連続運転モードのとき、スライドがこの作成されたモーションに沿って移動するように演算処理を行い、目標位置と、位置センサ33から入力した位置との偏差値に基づいてサーボモータ21の速度指令を求めてサーボアンプ45に出力する。また、寸動モードまたは安全一行程モードのときには、図示しない運転釦スイッチの操作中のみ(但し、安全一行程モードでは、下死点を過ぎたら運転釦操作に拘わらず上死点まで連続で上昇し、停止させる)所定の速度でスライドが移動するように、目標位置と、位置センサ33から入力した位置との偏差値に基づいてサーボモータ21の速度指令を求めてサーボアンプ45に出力する。
【0029】
さらに、サーボモータ21を上記のように駆動している間、制御器10は、駆動中のサーボモータ21の負荷電流値を電流センサ29から入力し、この負荷電流値に基づいて後述するような所定の演算処理によりモータの負荷状態を監視し、過負荷状態に達する前にサーボモータ21を所定距離上昇させて負荷を軽減することにより、モータ過負荷異常の発生を未然に防止する。さらに、現在のスライド位置、サーボモータ電流値、過負荷状態などの各種情報を監視し、モニタ表示器19に表示指令を出力する。
【0030】
サーボアンプ45には、図示しないサーボモータ回転角度センサからのモータ回転角度がフィードバックされている。サーボアンプ45は、制御器10からの速度指令とこのモータ回転角度から求まる速度フィードバック信号との偏差値を演算し、求めた偏差値に基づき、該偏差値を小さくするようにサーボモータ21を制御する。これにより、スライドの位置および速度が精度良く制御される。
【0031】
次に、図4に示す制御フローチャートに基づき、図5を参照しつつ、本発明に係るモータ過負荷保護方法の第1実施形態の処理手順を説明する。図5は、第1実施形態に係るモータ過負荷保護方法によるスライド位置、モータ発生トルク、熱量積算値のタイムチャートである。
図4において、まずステップS1で、第1熱量積算閾値Qs1および第2熱量積算閾値Qs2を所定値に設定する。この第1熱量積算閾値Qs1は、図5に示すように、本モータ過負荷保護のための一時停止制御を行うタイミングをチェックするための閾値であり、サーボモータ21の有する耐熱容量限界値Qmすなわち過負荷異常に対応する最大許容熱量積算値よりも所定量(余裕度に相当する)小さい値に設定される。また、第2熱量積算閾値Qs2は、一時停止を解除して再起動するタイミングをチェックするための閾値であり、モータ温度が一時停止時の温度よりも所定温度だけ低下したときの温度に対応する。なお、第1熱量積算閾値Qs1≧第2熱量積算閾値Qs2の関係に設定すれば良いが、一時停止と再起動を安定して制御するために、温度監視のヒステリシスを持たせるように第1熱量積算閾値Qs1>第2熱量積算閾値Qs2とする方が望ましい。そして、以下の演算処理のために使用する実測電流値テーブルI1〜Inを初期化(クリア)する。ここで、nは以下の演算で求める熱量積算値Qnが等価的にモータ温度を表すことができる程度の大きさのデータ数である。
【0032】
次に、ステップS2で、サーボモータ21の作動中の電流値Inを検出し、これを実測電流値テーブルI1〜InのInに記憶し、さらにステップS3で、数式「Qn=ΣIn・Kn」によって熱量積算値Qnを演算する。ここに、Kn(n=1〜n)は、測定時点からの経過時間に応じてその寄与度を小さくしてゆくようにした重み付係数であり、0≦Kn−1≦Knとする。この後、ステップS4で、実測電流値テーブルI1〜Inのデータを、「In−1←In」のようにシフトし、この結果最も旧い過去の実測値I1のデータは削除される。そして、次にステップS5で、この求めた熱量積算値Qnが第1熱量積算閾値Qs1以上かをチェックし、第1熱量積算閾値Qs1以上でないときには、ステップS2に戻って以上の処理を繰り返す。
【0033】
上記ステップS5で、第1熱量積算閾値Qs1以上になったときには、ステップS6に移行し、スライドを成形領域以外の所定位置(例えば予め設定された待機点、または上死点等)で一時停止させると共に、モニタ表示器19に「一時停止中」などのアラームメッセージを表示する。なお、「一時停止中」を音声で報知するようにしてもよい。この後、ステップS7でサーボモータ21の電流値Inを検出して、これを前記実測電流値テーブルI1〜InのInに記憶し、次にステップS8で、前式と同様の数式「Qn=ΣIn・Kn」によって熱量積算値Qnを演算し、さらにステップS9で、実測電流値テーブルI1〜Inのデータを「In−1←In」のようにシフトした後、ステップS10に移行して、この新たに求めた熱量積算値Qnが第2熱量積算閾値Qs2以下に下がったかをチェックする。第2熱量積算閾値Qs2以下に下がっていないときには、ステップS7に戻って以上の処理を繰り返し、第2熱量積算閾値Qs2以下に下がったときには、ステップS11で一時停止を解除してスライドを再起動状態とし、次にステップS2に戻って処理を繰り返す。
【0034】
なお、ステップS11でのスライドの再起動状態とは、例えば、自動運転で連続運転モードの場合には、連続運転を再開する状態であり、またトランスファプレス等のトランスファフィーダと同期運転する外部安全一行程モードの場合には、トランスファフィーダ装置からのプレス起動要求信号があれば起動可能な起動要求待ち状態等である。
【0035】
次に、上記の方法による作動を図5により説明する。
図5において、時刻t0で、連続運転モードで運転釦が操作されて、プレスが連続で起動されたものとする。制御器10は、スライドが、予め設定されたスライドモーションに沿って移動するように、サーボモータ21の位置および速度を制御するので、サーボモータ21には上記スライドモーションに応じたパターンで負荷電流が流れる。スライドの1サイクル運転(サイクル時間Tc)に対応する負荷電流がサイクル毎に継続して流れるのに伴って、サーボモータ21の温度が次第に上昇する。制御器10は、この間のモータ電流値Inを測定し、これまでのモータ電流値Inの実績データに基づき数式「Qn=ΣIn・Kn」によって熱量積算値Qn(これは、モータ温度上昇に略比例するものとする)を演算する(ステップS2,3)。そして、連続運転中に、今回求めた熱量積算値Qnが所定の第1熱量積算閾値Qs1以上になったかをチェックし(ステップS5)、第1熱量積算閾値Qs1以上でないときには第1熱量積算閾値Qs1に達するまで上記の処理を継続する。なお、熱量積算値Qnの演算のときに、過去の電流実測値は、重み付係数Knによって経過時間に応じて温度上昇への寄与度を小さくしている(ステップS4)。
【0036】
そして、時刻t2で、今回求めた熱量積算値Qnが第1熱量積算閾値Qs1以上になったときには、現在運転中のサイクルを完了させた後、時刻t3でスライドを成形領域以外の所定位置に一時停止させる(ステップS6)。これにより、サーボモータ21の負荷電流を位置保持に必要な小さい電流に減少させて、熱量積算値Qnの減少、すなわちサーボモータ21とサーボアンプ内のパワー回路の大電力半導体素子との温度を急激に下げるようにする。この後、モータ電流値Inを継続して監視し、所定の演算処理周期時間毎に検出したモータ電流値Inおよび過去のモータ電流の実績値データに基づいて熱量積算値Qnを求め(ステップS7,8,9)、この求めた最新の熱量積算値Qnが第2熱量積算閾値Qs2以下に下がるまで、一時停止を継続する(ステップS10)。そして、この熱量積算値Qnが第2熱量積算閾値Qs2以下に下がったら(図5での時刻t4)、スライドを再起動状態とする(ステップS11)。
【0037】
なお、上記実施形態では、サーボモータ21で偏心軸28を回転し、この回転動力によりトグルリンク機構を介してスライド3を駆動する構成のサーボプレスに適用した例で説明したが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、サーボモータでボールスクリューを直動し、この直動力によりスライドを直動する直動型サーボプレスでもよいし、またはサーボモータでクランク機構やエキセン機構などの偏心回転駆動部およびコンロッドを介してスライドを昇降駆動するサーボプレス、またはボールスクリューでトグルリンク機構を押し引きして駆動するサーボプレスにも適用可能である。
【0038】
また、実施形態では、モータ負荷電流値の実績データに基づき演算により求めた熱量積算値の大きさを監視するようにしているが、熱量積算値の代わりにモータ温度を監視してもよい。
また、一時停止を解除して再起動する条件としては、上記のようにモータ温度(熱量積算値)が所定の第2熱量積算閾値Qs2以下になったかを判断する方法に限定されず、例えばモータ温度(熱量積算値)を所定量だけ低下させることができるだけの時間経過した後に再起動するようにしても構わない。
【0039】
次に、図6,7により第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態における制御構成は図3に示したものと同じである。
先ず、図6により第2実施形態の処理手順を説明する。図6は、第2実施形態に係る制御フローチャートであり、同図において図4と同一の処理内容のステップには同一ステップ番号を付して説明を省く。
【0040】
ステップS1〜ステップS5までは第1実施形態と同様の手順で処理を行う。
ステップS5で、前記求めた熱量積算値Qnが第1熱量積算閾値Qs1以上かをチェックし、第1熱量積算閾値Qs1以上になったときには、ステップS21でその場で(加圧加工中であっても)一旦停止する。次に、ステップS22で、サーボモータ21の停止中の電流値Isを検出し、そしてステップS23で、その電流値Isが所定の許容値Ir以上かをチェックし、許容値Irより小さいときには前記ステップS6に移行して現在のスライド3の一時停止位置を継続させる。上記ステップS23で、電流値Isが所定の許容値Ir以上のときには、ステップS24でモータ負荷が小さくなる方向にサーボモータ21を所定量駆動する、すなわち、この時の停止位置からスライド3を所定距離上昇させる。この後、前記ステップS6でスライド3を一時停止させ、以降、前記ステップS7〜ステップS11までの処理を行う。
【0041】
つぎに、図7を参照して、第2実施形態による作動を説明する。
第1実施形態と同様にして、時刻t0から連続運転モードでプレスが運転されると、サーボモータ21にはスライドモーションに応じたパターンで負荷電流が流れ、これに伴ってサーボモータ21の温度が次第に上昇する。この間、制御器10は、モータ電流値Inを測定し、これまでのモータ電流値Inの実績データに基づき数式「Qn=ΣIn・Kn」によって熱量積算値Qnを演算する(ステップS2,3)。そして、連続運転中に、今回求めた熱量積算値Qnが所定の第1熱量積算閾値Qs1以上になったかをチェックし(ステップS5)、第1熱量積算閾値Qs1以上でないときには第1熱量積算閾値Qs1に達するまで上記の処理を継続する。
【0042】
この後、時刻t2で、今回求めた熱量積算値Qnが第1熱量積算閾値Qs1以上になったときには、スライド3で加圧加工中であっても、サーボモータ21をその場で一旦停止させる(ステップS21)。次に、停止中のモータ電流値Isが所定の許容値Ir以上かをチェックし(ステップS22,23)、許容値Ir以上のときにはサーボモータ21に加圧トルクがかかっているので、図示の時刻t5でスライド3を所定距離上昇させ(ステップS24)、この加圧トルクがかからない状態にした後に、一時停止させる(ステップS6)。これにより、サーボモータ21の負荷電流をスライド位置保持に必要な程の小さい電流に減少させて、熱量積算値Qnの減少を図る、すなわちサーボモータ21とサーボアンプ内のパワー回路の大電力半導体素子との温度を急激に下げるようにする。なお、これ以降の一時停止状態からの再起動の手順は前記ステップS7〜ステップS11と同様であり説明を省く。
【0043】
第2実施形態によると、第1実施形態と同様の効果が得られると共に、さらに、熱量積算値が第1熱量積算閾値Qs1を越えたら直ちにスライドを停止させ、この後モータ負荷電流の小さい位置でスライドを一時停止させるため、前記第1熱量積算閾値Qs1は過負荷異常に到るような許容熱量に対して小さい余裕度を持たせるだけでよいので、サーボモータ21をその最大負荷能力近くまで最大限に使用することができる。
【0044】
本発明によると、次の効果が得られる。
モータ過負荷異常となるモータ最大許容温度よりも所定量低い温度に対応する第1熱量積算閾値Qs1を予め設定しておき、モータ作動中(スライド停止位置保持のために負荷電流が流れているときも含む)に所定の計測周期時間毎に測定したモータ負荷電流値をその経過時間に応じて重み付けして積算することにより、等価的にモータ温度上昇を略表している熱量積算値Qnを求め、この逐次求めた熱量積算値Qnが前記設定した第1熱量積算閾値Qs1を超えたときに、スライドを一時停止させてモータ温度が低下するようにした。このため、プレス連続運転モードや外部安全一行程モード運転等の自動運転中に、モータ過負荷異常に至る前に、スライドを一時停止させてモータ温度を低下させるので、モータ過負荷異常の発生を未然に防止でき、これにより従来技術に示したようなモータ過負荷異常の発生後の再起動操作が不要となり、操作性および作業性を向上できる。
【0045】
また、従来のように、ワーク加工中の過負荷異常の発生によるスライド停止で加工不良品が生産される、ということがなくなる。さらに、スライドの一時停止位置がスライド待機点や上死点である場合には、トランスファフィーダとの連動運転が容易であり、自動運転が可能である。
さらにまた、上記の温度上昇による一時停止中に、モニタ表示器19に「一時停止中」などのアラームメッセージを表示するので、オペレータが停止要因を容易に把握でき、安心感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるサーボプレスの側面一部断面図である。
【図2】本発明が適用されるサーボプレスの背面一部断面図である。
【図3】本発明に係る制御構成ブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る制御フローチャートである。
【図5】第1実施形態に係るモータ過負荷保護方法によるタイムチャートである。
【図6】第2実施形態に係る制御フローチャートである。
【図7】第2実施形態に係るモータ過負荷保護方法によるタイムチャートである。
【符号の説明】
1…サーボプレス、3…スライド、4…ベッド、5…ボルスタ、6…油室、7…ねじ軸、9…インダクションモータ、10…制御器、10a…メモリ、11…プランジャ、12a…第1リンク、12b…第2リンク、13…三軸リンク、16…切換弁、19…モニタ表示器、20…スライド駆動部、21…サーボモータ、22a…第1プーリ、22b…第2プーリ、23…ベルト、27…駆動軸、28…偏心軸、29…電流センサ、33…位置センサ、34…補助フレーム、45…サーボアンプ。
Claims (4)
- サーボモータ(21)で所定の動力伝達機構を介してスライド(3)を駆動するサーボプレスのモータ過負荷保護方法において、
サーボモータ(21)の作動時の負荷電流を検出し、
自動運転中に、検出したモータ負荷電流(In)を含む過去の実測値に基づいて熱量積算値(Qn)を求め、求めた熱量積算値(Qn)が第1熱量積算閾値(Qs1)を越えたときは、スライド(3)を成形領域以外の所定位置に一時停止させる
ことを特徴とするサーボプレスのモータ過負荷保護方法。 - サーボモータ(21)で所定の動力伝達機構を介してスライド(3)を駆動するサーボプレスのモータ過負荷保護方法において、
サーボモータ(21)の作動時の負荷電流を検出し、
自動運転中に、検出したモータ負荷電流(In)を含む過去の実測値に基づいて熱量積算値(Qn)を求め、求めた熱量積算値(Qn)が第1熱量積算閾値(Qs1)を越えたときは、スライド(3)を一旦停止させ、この後、検出した現在のモータ負荷電流(In)が所定値以上のときにはスライド(3)を所定距離上昇させて一時停止させる
ことを特徴とするサーボプレスのモータ過負荷保護方法。 - 請求項1又は2記載のサーボプレスのモータ過負荷保護方法において、
前記スライド(3)の一時停止の後、再度モータ負荷電流を検出し、このときの検出したモータ負荷電流(In)を含む過去の実測値に基づいて求めた熱量積算値(Qn)が、第2熱量積算閾値(Qs2)よりも下がったら、前記スライド(3)の一時停止を解除して再起動状態とする
ことを特徴とするサーボプレスのモータ過負荷保護方法。 - 請求項1又は2記載のサーボプレスのモータ過負荷保護方法において、
前記スライド(3)の一時停止の後、所定時間経過したら、前記スライド(3)の一時停止を解除して再起動状態とする
ことを特徴とするサーボプレスのモータ過負荷保護方法。
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