JP2004079196A - 燃料電池セパレータおよび固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多孔質部31および緻密質部32を有するとともに、ガス流路33が形成された燃料電池セパレータ3において、ガス流路33の流路面33Aの一部または全部を多孔質部31で形成する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池セパレータおよびこの燃料電池セパレータを備えて構成された固体高分子型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
燃料電池は、水素等の燃料と大気中の酸素とを電池に供給し、これらを電気化学的に反応させて水を作り出すことにより直接発電させるものであり、高エネルギー変換可能で、環境性に優れていることから、小規模地域発電、家庭用発電、キャンプ場等での簡易電源、自動車、小型船舶等の移動用電源、人工衛星、宇宙開発用電源等の各種用途向けに開発が進められている。
【0003】
このような燃料電池、特に固体高分子型燃料電池は、板状体の両側面に複数個の水素、酸素などの通路を形成するための凸凹部を備えた2枚のセパレータと、これらセパレータ間に固体高分子電解質膜と、ガス拡散電極(カーボンペーパー)とを介在させてなる単電池(単位セル)を数十個以上並設して(これをスタックという)なる電池本体(モジュール)から構成されている。
この場合、燃料電池セパレータは、各単位セルに導電性を持たせ、単位セルに供給される燃料および空気(酸素)の通路確保、分離境界膜としての役割を果たすものであり、高電気導電性、高ガス不浸透性、(電気)化学的安定性、親水性などの諸性能が要求されるものである。
【0004】
特に、発電時に発生される水により上記セパレータの通路が封止され、その結果、発電効率が低下するという問題があることから、この問題を解決する手段として、従来から種々の方法が検討されている。
例えば、親水性物質をセパレータ基体に取り込む方法(従来技術1)(特開平10−3932号公報)、セパレータ表面に親水処理を施す方法(従来技術2)(特開平8−130024号公報、特開平8−130025号公報、特開2000−251903号公報、特開2001−93539号公報)、セパレータ全体または流路面に膨張黒鉛を用いる方法(従来技術3)(特開2002−110189号公報)、セパレータ全体に多孔質材料を用いる方法(従来技術4)(オーストリア特許第389020号明細書)など種々の方法が現在までのところ試みられている。
【0005】
しかしながら、上記従来技術1の方法では、使用する親水性物質を効率的に流路面に移行させることが困難であるため、親水処理効果が不充分である上、使用した親水性物質が不純物として溶出するという問題があった。
上記従来技術2の方法では、親水処理後に後処理工程が必要となるため、工程数が増加するとともに、作業が煩雑になるのみならず、親水処理によりセパレータの接触抵抗が上昇するために電池性能が低下するという問題があった。
【0006】
上記従来技術3の方法では、スタックを組む際の締め付けによりセパレータの形状が変形するという問題がある上、膨張黒鉛を使用しているため、セパレータ中に膨張黒鉛製造時の酸処理に由来する酸が含まれることになり、この酸が、不純物の溶出を招くだけでなく、電解質膜へ悪影響を与えるという問題があった。
上記従来技術4の方法において、多孔質材料として多孔質焼成カーボンを用いた場合、溝加工を施すことによるコスト上昇や、加工時の歩留まりが低下し、一方、成形多孔質カーボンを用いた場合、充分な強度が得られないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、発電時に生成する水による流路の閉塞が生じにくいため、効率よく発電でき、しかも、充分な強度を有するとともに、接触抵抗の小さい燃料電池セパレータ、およびこの燃料電池セパレータを備えた固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、多孔質部および緻密質部を有し、ガス流路が形成された燃料電池セパレータのガス流路内面の一部または全部を多孔質部とすることで、発電時に生成する水による流路の閉塞が生じにくく、かつ、充分な強度を有するとともに、接触抵抗の小さい燃料電池セパレータが得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 多孔質部および緻密質部を有するとともに、ガス流路が形成された燃料電池セパレータであって、前記ガス流路の流路面の一部または全部が、前記多孔質部で形成されていることを特徴とする燃料電池セパレータ、
2. 前記多孔質部の気孔率が、5〜50%であることを特徴とする1の燃料電池セパレータ、
3. 前記多孔質部に親水処理を施したことを特徴とする1または2の燃料電池セパレータ、
4. 固体高分子膜を挟む一対の電極と、この電極を挟んでガス供給排出用流路を形成する一対のセパレータとから構成される単位セルを多数並設した固体高分子型燃料電池であって、前記セパレータの一部または全部が、1〜3のいずれかの燃料電池セパレータであること特徴とする固体高分子型燃料電池
を提供する。
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る燃料電池セパレータは、上述のように、多孔質部および緻密質部を有するとともに、ガス流路が形成された燃料電池セパレータであって、ガス流路の流路面の一部または全部が、多孔質部で形成されているものである。
ここで、多孔質部および緻密質部を構成する原料としては、一般的に、燃料電池セパレータの製造に用いられるものであれば、特に限定はなく、例えば、導電性粉末および樹脂を混合した組成物をコンパウンド化した原料を用いることができる。
【0011】
上記導電性粉末としては、特に限定はなく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等を用いることができ、その平均粒径は、10〜100μm、特に20〜60μmであることが好ましい。
また、樹脂としても燃料電池セパレータに通常用いられる熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等から適宜選択することができ、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂等を用いることができる。なお、これらの樹脂には、必要に応じて熱処理を施すこともできる。
【0012】
これら各成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、成形用粉末原料全体を100質量部として、導電性粉末50〜99質量部、特に65〜90質量部、樹脂1〜50質量部、特に5〜20質量部で配合すればよい。
一般的には、これら各成分を配合したものを、コンパウンド化して用いるが、その方法には特に限定はなく、公知の方法により、撹拌、造粒、乾燥したものを用いればよいが、二次凝集しないように篩い分けして粒度を揃えたものを、成形用粉末原料として用いることが好ましい。
なお、上記粉末原料には、必要に応じて炭素繊維、炭素質材料、活性アルミナなどの無機フィラー等を、粉末原料全体を100質量部として、0.1〜20質量部、特に1〜10質量部添加することもできる。
【0013】
このような成形用粉末原料から多孔質部および緻密質部を有するセパレータを得るためには、例えば、粉末原料をコンパウンド化する際に、多孔質部用の粉末原料と緻密質部用の粉末原料とを別々にコンパウンド化し、多孔質部用の平均粒径を緻密質用のそれよりも細かくすることが好ましく、多孔質部用の粉末原料の平均粒径を10μm〜1.0mm、特に100μm〜0.8mmとし、緻密質部用の粉末原料の平均粒径を100μm〜2.0mm、特に300μm〜1.0mmとすることが好ましい。また、多孔質部用の粉末原料は、緻密質部用の粉末原料よりも嵩高いものであることが好ましく、例えば、多孔質部用粉末原料の嵩比重を、0.1〜0.5g/cm3、特に0.3〜0.5g/cm3とし、緻密質部用粉末原料の嵩比重を、0.3〜1.0g/cm3、特に0.4〜0.8g/cm3とすることが好ましい。
【0014】
また、プレス金型等で燃料電池セパレータを成形する際に、緻密質部を構成する粉末原料および多孔質部を構成する粉末原料を異種原料とすることにより、成形後の各部位の気孔の形成度合いを制御することができるので、容易に多孔質部および緻密質部を有する燃料電池セパレータを得ることができる。
この場合の具体的な手法としては、緻密質部用の粉末原料中の導電性粉末として、リン片状黒鉛を用い、一方、多孔質部用の粉末原料中の導電性粉末として、人造黒鉛等のその他の黒鉛を用いる方法や、多孔質部用の粉末原料中に比表面積の大きなカーボンを、粉末原料全体を100質量部として、0.1〜30質量部、特に1〜10質量部配合する方法、多孔質部用の粉末原料中に有機または無機繊維成分、ウィスカーを、0.1〜20質量部、特に1〜10質量部配合する方法、緻密質部用の粉末原料中の樹脂量を、多孔質部用の粉末原料中のそれよりも1〜20質量部、特に3〜10質量部多くする方法などを採用し、多孔質部用の粉末原料と、緻密質部用の粉末原料を異種原料とすればよい。
【0015】
以上において、燃料電池セパレータを構成する多孔質部の気孔率は5〜50%、特に10〜30%であることが好ましい。ここで、気孔率が5%未満であると、発電時に生じた水の吸収力が低下する結果、ガス流路を閉塞する場合があり、一方、気孔率が50%を超えると、溝形状を精密に形成することができない場合がある。
なお、上記緻密質部の気孔率は、多孔質部よりも小さければ、特に限定されるものではないが、燃料電池セパレータの強度を充分に確保するという点から、気孔率は小さい方が好ましく、特に0%であることが好適である。
【0016】
また、多孔質部における気孔径が0.01〜50μm、特に0.1〜10μmであることが好ましい。
ここで、気孔径が0.01μm未満であると、生成水が浸透しにくくなりガス流路を閉塞する虞があり、一方、50μmを超えると、溝形状を精密に形成することができない虞がある。
【0017】
また、上記多孔質部には、親水処理を施すこともでき、これにより、セパレータに形成されたガス流路の親水性を高め、発電時に発生した水によるガス流路の閉塞が生じることを、より効果的に防止できる。
この場合、親水処理の方法としては特に限定されるものではなく、公知の親水処理法を適宜採用できる。例えば、アルミナ,シリカ等の金属酸化物、水溶性エポキシ樹脂等の親水性樹脂、または活性炭等の親水性物質を、多孔質部用の粉末原料全体を100質量部として、0.1〜20質量部、特に1〜10質量部配合する方法、成形後の燃料電池セパレータの多孔質部(ガス流路面)に、上記金属酸化物または親水性樹脂を塗布して親水性塗膜を形成する方法などを採用できる。
【0018】
また、上記金属酸化物を含む親水性樹脂をセパレータに塗布、含浸させた後、該樹脂を加熱硬化させる方法や、このような金属酸化物を多孔質部用の粉末原料全体を100質量部として、1〜20質量部配合した原料を用いてセパレータを成形し、さらに上記親水性樹脂を塗布・含浸後、硬化させる方法も採用でき、この場合、親水性樹脂としては、水溶性エポキシ樹脂を好適に用いることができる。
【0019】
本発明に係る燃料電池セパレータの製造法は、特に限定されるものではなく、圧縮成形、射出成形、2色射出成形、トランスファー成形、インサート成形など公知の種々の成形法を採用できるが、気孔率を適当な範囲に調節し易いという点から、圧縮成形を採用することが好ましい。
なお、各種成形法に用いる材料は、上記成形用粉末原料を粉状、粒状で用いてもよく、これを予備成形してシート状にしたものを用いてもよい。
【0020】
上記圧縮成形を行う場合の圧力は、特に限定はなく、製造するセパレータの気孔率等に応じて適宜設定すればよいが、通常0.098〜19.6MPaであり、好ましくは0.98〜14.7MPa、より好ましくは1.96〜9.8MPaである。ここで、成形圧力が0.098MPa未満であると、燃料電池セパレータの形状を維持できるほどの強度が得られない虞があり、一方、19.6MPaを超えると、成形機および金型の歪みが発生し、燃料電池セパレータの面および寸法精度が低下する虞がある上、気孔が埋まってしまい、多孔質部位が形成されない虞が高くなる。
【0021】
なお、粉末原料を用いて圧縮成形する場合、原料を金型に投入する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示されるような投入装置1を用いて行うことができる。
ここで、粉末原料の投入装置1について説明すると、投入装置1は、投入部11と、この投入部11の下部に設けられたスライドプレート12と、投入部11と一体成形され、スライドプレート12を囲むように枠状に形成されたベース13とを備えて構成されている。
【0022】
投入部11には、略矩形状の投入口11Aが縦横に一定の間隔でマトリックス状に配置されている。
投入口11Aは投入部11を垂直に貫通しているとともに、その底部が開放されている。なお、投入口11Aの口径は製造するセパレータに応じて適宜設定することができる。
【0023】
ベース13は、上述のように、投入部11と一体的に形成されているが、図1(b)に示されるように、上部に投入口11Aが存在する部分はくり抜かれた状態となっている。
このベース13と投入部11との間には所定間隔の隙間が形成されており、この隙間にスライドプレート12が摺動自在に設置されている。
スライドプレート12は、投入口11Aの下部を閉塞した状態から、開放した状態まで自由に移動できるようにされている。
【0024】
このように構成された投入装置1を用いた成形用粉末原料のプレス金型への投入操作および圧縮成形は以下のようにして行うことができる。
まず、図2(a)に示されるように、緻密質部を構成する成形用粉末原料14Aを投入部11の投入口11Aに投入し、擦り切り棒15で擦り切り、所定量の粉末原料14Aを投入口11Aに充填する。
次に、図2(b)に示されるように、粉末原料14Aを充填した投入装置1を上金型21および下金型22を有するプレス機の下金型22にセットする。
上記上金型21には、燃料電池セパレータにガス流路を形成するためのパターン21Aが形成されている。
なお、この場合、予備成形体を下金型に設置しておくこともできる。
【0025】
投入装置1を下金型22にセットした後、図2(c)に示されるように、スライドプレート12をスライドさせて投入口11Aの底部を開放させ、それらの中に充填された緻密質部用の粉末原料14Aを下金型22の上に落下させた後、スライドプレート12を再びもとの位置まで移動させる。
続いて、図3に示されるように、投入口11Aのうち、図中左右両端部の2列に緻密質部を構成する粉末原料14Aを先と同様にして充填し、残りの投入口11Aには、多孔質部用の粉末原料14Bを同様にして充填する。
【0026】
この状態で、図3(c)に示されるように、再びスライドプレート12をスライドさせて投入口11Aの底部を開放させ、それらの中に充填された緻密質部用の粉末原料14Aおよび多孔質部用の粉末原料14Bを先に投入した緻密質部用の粉末原料14Aの上に落下させる。
これら2回の投入操作により、下金型22の内部において、底部および図中左右両端部に緻密質部用の粉末原料14Aが投入され、これに囲まれた中央部分に多孔質用の粉末原料14Bが投入された状態となる。
【0027】
この状態で図3(d)に示されるように、上金型21で型締めし、例えば、金型温度100〜250℃、特に140〜200℃、成形圧力0.098〜19.6MPaで圧縮成形することで、図4に示されるように、ガス流路33における流路面33Aの周囲が多孔質部31であり、その他の部分が緻密質部32である燃料電池セパレータ3を得ることができる。
【0028】
なお、緻密質用の粉末原料および多孔質用の粉末原料の投入位置および投入順序等は、上記実施形態に限定されるものではなく、多孔質部および緻密質部を有する燃料電池セパレータの、ガス流路内面の一部または全部を多孔質部で形成し得るものであれば、任意の投入方法を採用することができる。
また、セパレータの形状も上記実施形態のものに限定されるものではなく、燃料電池セパレータとして使用可能な形状であればよく、例えば、図5に示されるように、セパレータ4の両表面にガス流路43が形成されているとともに、このガス流路43の流路面43Aの周囲が多孔質部41で形成され、その他の部分が緻密質部42で形成されているものでもよい。
【0029】
以上説明したように、本発明に係る多孔質部および緻密質部を有する燃料電池セパレータは、ガス流路面の一部または全部が多孔質部で形成されているから、発電時に発生する水がガス流路を閉塞し、発電効率を低下させることを防止できる上、接触抵抗を低く抑えることができる。また、緻密質部を有しているため、セパレータ全体の強度を維持することができ、締め付け時の応力または衝撃に耐する耐久性が高い。
【0030】
さらに、上述の投入装置を用いた圧縮成形法により本発明の燃料電池セパレータを製造することで、必要な部位のみ多孔質部にすることが容易にできる上、多孔質部と緻密質部とを一体成形できるから、各部位界面の接着強度を高めることができ、界面剥離を防止することができる。
また、類似の性質を有する材料を用い、一度の成形でセパレータを製造できるから、製造工程を簡略化することができ、その結果、燃料電池セパレータの製造コストを低減することができる。
【0031】
本発明に係る固体高分子型燃料電池は、固体高分子膜を挟む一対の電極と、この電極を挟んでガス供給排出用流路を形成する一対のセパレータとから構成される単位セルを多数並設した固体高分子型燃料電池であって、セパレータの一部または全部として上述の燃料電池セパレータを用いるものである。
【0032】
ここで、セパレータの一部または全部とは、具体的には、燃料電池中の全セパレータの50%以上、好ましくは50〜100%、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%が本発明の燃料電池セパレータであることが望ましい。燃料電池中の全セパレータに占める本発明の燃料電池セパレータの割合が少なすぎると、長時間連続運転時に電池出力が低下して、本発明の目的および作用効果を達成できなくなる場合がある。なお、本発明の燃料電池セパレータ以外のセパレータとしては燃料電池に一般的に用いられているセパレータを用いることができる。
【0033】
また、上記固体高分子電解質膜としては、固体高分子型燃料電池に一般的に用いられているものを使用することができる。例えば、フッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であるポリトリフルオロスチレンスルフォン酸、パーフルオロカーボンスルフォン酸(商品名:Nafion)などを用いることができる。この電解質膜の表面には、触媒である白金または白金と他の金属とからなる合金を担持したカーボン粉を調製し、このカーボン粉をパーフルオロカーボンスルフォン酸を含む低級脂肪酸族アルコールと水との混合溶液(Nafion117溶液)等の有機溶剤に分散させたペーストを塗布している。
【0034】
上記固体高分子電解質膜を挟む一対の電極としては、カーボンペーパー、カーボンフェルト、炭素繊維からなる糸で織成したカーボンクロスなどにより形成することができる。
これら電解質膜および電極は、一対の電極の間に電解質膜を介在させ、120〜130℃で熱圧着することにより一体化させる。
なお、接着剤を用いて電解質膜と一対の電極とを接合して一体化することもできる。
このようにして一体化した電解質膜および電極を、一対のセパレータの間に燃料ガスを供給排出可能な流路を形成するように取り付けて、単位セルが得られる。この場合、セパレータの電極と接する部分(リブ)に接着剤を塗布して取り付ける方法などを採用することができる。
【0035】
本発明の固体高分子型燃料電池は、この燃料電池中の全セパレータの一部(好ましくは50%以上)または全部として本発明の燃料電池セパレータを用いることにより、長期に亘って安定した発電効率を維持することができ、運転効率が高く、特に自動車、小型船舶等の移動用電源として好適なものである。
【0036】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の説明において、平均粒径は、粒度測定装置(Microtrak社製)により測定した値である。
【0037】
[実施例1]
〈緻密質用粉末原料〉
平均粒径60μmの人造黒鉛粉末を81質量部、フェノール樹脂を19質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度1.0mm以下の緻密質用粉末原料を得た。
〈多孔質用粉末原料〉
平均粒径60μmの人造黒鉛粉末を90質量部、フェノール樹脂を10質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5mm以下の多孔質用粉末原料を得た。
【0038】
〈燃料電池セパレータの成形〉
上記緻密質部用粉末原料を、図1,2に示されるように、投入装置1の投入口11Aに投入し、擦り切り棒15で擦り切り充填した。続いて、スライドプレート12をスライドさせ、投入口11Aの底部を開放し、下金型22上に緻密質部用粉末原料14Aを投入した後、スライドプレート12を再びもとの位置まで移動させた。
なお、この場合、投入口11Aの口径を15mm角とし、その数は、36個とした。
【0039】
続いて、図3に示されるように、投入口11Aのうち、図3中左右両端部の2列に緻密質を構成する粉末原料14Aを先と同様にして充填し、残りの投入口11Aには、多孔質部用の粉末原料14Bを同様にして充填した。
この状態で、再びスライドプレート12をスライドさせて投入口11Aの底部を開放させ、それらの中に充填された緻密質部用の粉末原料14Aおよび多孔質部用の粉末原料14Bを先に投入した緻密質部用の粉末原料14Aの上に落下させた。
【0040】
これら2回の投入操作により、図3(c)に示されるように、下金型22の内部において、底部および図中左右方向の端部に緻密質部用の粉末原料14Aが投入され、これに囲まれた中央部分に多孔質用の粉末原料14Bが投入された状態となった。
この状態で上金型21で型締めし、金型温度170℃、成形圧力10MPaで圧縮成形することで、図4に示されるように、ガス流路33の流路面33Aの周囲が多孔質部31であり、その他の部分が緻密質部32である燃料電池セパレータを得た。
【0041】
〈親水処理〉
得られた燃料電池セパレータに水溶性エポキシ化合物であるデナコールEX1310(ナガセケムテックス(株)製)水溶液を−0.07MPaの減圧下で含浸させ、セパレータ表面に親水性物質層を形成させた後、これを140℃で硬化させて親水処理を施した。
【0042】
[実施例2]
〈緻密質用粉末原料〉
実施例1と同じ。
〈多孔質用粉末原料〉
平均粒径60μmの人造黒鉛粉末を80質量部、フェノール樹脂を10質量部、および炭素繊維を10質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.8mm以下の多孔質用粉末原料を得た。
これらの各粉末原料を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータを得た後、実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0043】
[実施例3]
〈緻密質用粉末原料〉
実施例1と同じ。
〈多孔質用粉末原料〉
平均粒径60μmの人造黒鉛粉末を75質量部、フェノール樹脂を15質量部、および活性炭を10質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5mm以下の多孔質用粉末原料を得た。
これらの各粉末原料を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータを得た後、実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0044】
[実施例4]
〈緻密質用粉末原料〉
実施例1と同じ。
〈多孔質用粉末原料〉
平均粒径60μmの人造黒鉛粉末を78質量部、フェノール樹脂を12質量部、および活性アルミナを10質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5mm以下の多孔質用粉末原料を得た。
これらの各粉末原料を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータを得た後、実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0045】
[実施例5]
〈緻密質用粉末原料〉
平均粒径30μmの天然黒鉛粉末を83質量部、およびフェノール樹脂を17質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度1.0mm以下の緻密質用粉末原料を得た。
〈多孔質用粉末原料〉
平均粒径20μmの人造黒鉛粉末を86質量部、およびフェノール樹脂を14質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5〜1.0mmの多孔質用粉末原料を得た。
これらの各粉末原料を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータを得た後、実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0046】
[実施例6]
〈緻密質用粉末原料〉
実施例5と同じ。
〈多孔質用粉末原料〉
平均粒径20μmの人造黒鉛粉末を79質量部、フェノール樹脂を14質量部、および炭素繊維を5質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5〜1.0mmの多孔質用粉末原料を得た。
これらの各粉末原料を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータを得た後、実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0047】
[実施例7]
〈緻密質用粉末原料〉
実施例5と同じ。
〈多孔質用粉末原料〉
平均粒径20μmの人造黒鉛粉末を76質量部、フェノール樹脂を14質量部、および活性アルミナを10質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5〜1.0mmの多孔質用粉末原料を得た。
これらの各粉末原料を用い、実施例1と同様にして燃料電池セパレータを得た後、実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0048】
[比較例1]
実施例1と同様にして緻密質用の粉末原料を調製した。
この緻密質原料を図1,2に示されるように、投入装置1の投入口11Aに投入し、擦り切り棒15で擦り切り充填した。続いて、スライドプレート12をスライドさせ、投入口11Aの底部を開放し、下金型22上に緻密質原料を投入した。
続いて上金型21を型締めし、170℃、30MPaで圧縮成形して燃料電池セパレータを作製し、このセパレータに実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0049】
[比較例2]
実施例5と同様にして緻密質用の粉末原料を調製し、この粉末原料を用い、比較例1と同様にして燃料電池セパレータを作製し、このセパレータに実施例1と同様にして親水処理を施した。
【0050】
[比較例3]
平均粒径60μmの人造黒鉛粉末を71質量部、フェノール樹脂を19質量部、および活性炭を10質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5mm以下の緻密質用粉末原料を得た。
この緻密質用粉末原料を図1,2に示されるように、投入装置1の投入口11Aに投入し、擦り切り棒15で擦り切り充填した。続いて、スライドプレート12をスライドさせ、投入口11Aの底部を開放し、下金型22上に成形用粉末原料を投入した。
続いて上金型21を型締めし、170℃、10MPaで圧縮成形して燃料電池セパレータを作製した。
【0051】
[比較例4]
平均粒径60μmの人造黒鉛粉末を71質量部、フェノール樹脂を19質量部、および酸化チタンを10質量部用い、これらを混合した組成物を造粒、乾燥後、篩い分けして粒度0.5mm以下の緻密質用粉末原料を得た。
この粉末原料を用い、比較例1と同様にして燃料電池セパレータを作製した。
【0052】
上記各実施例および比較例で得られた燃料電池セパレータについて、ガス流路部の吸水時間、気孔率、固有抵抗、接触抵抗、耐衝撃性、および発電時の水の排出性を測定、評価し、結果を表1にまとめて示した。
【0053】
【表1】
【0054】
ここで、上記各特性は以下の方法により測定した。
[1]吸水時間
湿度80%に設定した恒温槽中で、ガス流路部表面に0.0025gのイオン交換水を垂らし、セパレータ表面に水が吸い込まれるまでの時間を測定した。
[2]気孔率
水銀圧入法により測定した。
[3]固有抵抗
JIS H−0602に記載された4探針法により測定した。
[4]接触抵抗
金めっきを施した平滑な銅板2枚の間にセパレータを挟み込み、一定の電流を流した際の電圧の降下から測定した。
[5]耐衝撃性
スタックを組んだ後、JIS D−1601に従って1000回振動を加えた後のセパレータを観察した(○:セパレータ割れなし、×:セパレータ割れ有り)。
[6]水の排出
発電時に発生する水の様子を観察した。
【0055】
表1に示されるように、各実施例で得られた燃料電池セパレータは、ガス流路が多孔質部で形成されているため、吸水性が高く、水の排出性に優れている上、固有抵抗、接触抵抗が低いことがわかる。また、緻密質部を有しているため、耐衝撃性に優れていることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、多孔質部および緻密質部を有する燃料電池セパレータのガス流路の流路面の一部または全部が多孔質部で形成されているから、発電時に発生する水がガス流路を閉塞し、発電効率を低下させることを防止できる上、接触抵抗を低く抑えることができる。また、緻密質部を有しているため、セパレータ全体の強度を維持することができ、締め付け時の応力または衝撃に対するする耐久性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉末原料投入装置を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるb−b線に沿う断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る緻密質用の粉末原料投入の各工程を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る多孔質用および緻密質用の粉末原料投入から圧縮までの各工程を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る燃料電池セパレータを示す概略断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る燃料電池セパレータを示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 投入装置
11 投入部
11A 投入口
12 スライドプレート
13 ベース
14A 緻密質部用粉末原料
14B 多孔質部用粉末原料
21 上金型
22 下金型
3,4 燃料電池セパレータ
31,41 多孔質部
32,42 緻密質部
33,43 ガス流路
33A,43A 流路面
Claims (4)
- 多孔質部および緻密質部を有するとともに、ガス流路が形成された燃料電池セパレータであって、
前記ガス流路の流路面の一部または全部が、前記多孔質部で形成されていることを特徴とする燃料電池セパレータ。 - 前記多孔質部の気孔率が、5〜50%であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池セパレータ。
- 前記多孔質部に親水処理を施したことを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池セパレータ。
- 固体高分子膜を挟む一対の電極と、この電極を挟んでガス供給排出用流路を形成する一対のセパレータとから構成される単位セルを多数並設した固体高分子型燃料電池であって、
前記セパレータの一部または全部が、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池セパレータであることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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