JP2004077690A - ゼラチン硬化液、ハードコート液、フォトマスクおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性、湿度寸法安定性を容易に向上させるとともに、光透過性を低下させることのないゼラチン硬化液、提供することを目的とする。また、このゼラチン硬化液が含まれるハードコート液を提供することを目的とする。
【解決手段】ゼラチン硬化液が、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種を含有する。また、ハードコート液が、上述したゼラチン硬化液、エチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】ゼラチン硬化液が、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種を含有する。また、ハードコート液が、上述したゼラチン硬化液、エチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトリソグラフィー工程に使用されるフォトマスクの、ゼラチンを主成分とする感光乳剤層を硬化させるゼラチン硬化液に関する。また、このゼラチン硬化液を含有するハードコート液に関する。さらには、ゼラチン硬化液、ハードコート液が塗布されたフォトマスクおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
IC用リードフレーム、カラーテレビ用シャドウマスク、高密度プリント配線板、薄型ディスプレイなどに設けられる電極や隔壁は微細な加工が要求されるため、露光して現像するフォトリソグラフィー法を施すことがあり、その際、露光しない部分を覆うフォトマスクが使用される。フォトマスクは、ポリエチレンテレフタレートフィルムあるいはガラス基板と、それらの上に形成された感光乳剤層とからなっており、パターンが形成されている。ここで、感光乳剤層は、主成分であるゼラチンと、硝酸銀と、ハロゲン化銀と、添加剤とを含有し、感光性を有している。また、パターンは、CADで入力されたデータに基づいてレーザプロッタにより描画され、現像されて形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フォトマスクの感光乳剤層はゼラチンが主成分であり、軟らかいため、耐擦過性が低く、傷付きやすかった。そのため、フォトリソグラフィー工程においては、被露光物体と接触露光する場合に傷がつき易く、また、フォトマスク表面に薬品が付着した場合には、水や溶剤で汚れを拭き取るなどして除去することはフォトマスク表面を傷付ける原因になるので困難であり、新しいフォトマスクと交換していた。
したがって、従来では、同じフォトマスクを多数用意しなければならず、結果としてフォトリソグラフィー工程のコストを高くしていた。
そこで、感光乳剤層上に厚さ6〜10μmの保護フィルムをラミネートして、感光乳剤層を保護することがあった。しかしながら、この方法によると、保護フィルムとフォトマスクとの間に接着剤による接着層が生じる為、露光時に光が屈折拡散して画像再現性が不完全になることがあった。また、感光乳剤層上に一般的なハードコート層を形成させることが考えられるが、ゼラチンを主成分とする感光乳剤層は軟らかく、厚さ2〜4μmのハードコート層を形成させても充分な硬度は得られなかった。
【0004】
また、感光乳剤層のゼラチンは吸湿し易いという性質を有している。ガラス基板のように湿度により伸縮しないものを基材とした場合には、フォトマスクは湿度によって伸縮しないが、湿度によって伸縮するポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムを基材とした場合には、基材とともに感光乳剤層が伸縮するので、結果的にフォトマスクが伸縮することがあった。フォトマスクに形成されたパターンは非常に微細であるから、寸法の変化は重大な問題であった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性、湿度寸法安定性を容易に向上させるとともに、光透過性を低下させることのないゼラチン硬化液およびハードコート液を提供することを目的とする。また、このゼラチン硬化液が含まれるハードコート液、ゼラチン硬化液、そして、ハードコート液によって感光乳剤層のゼラチンが硬化されてハードコートされたフォトマスクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のゼラチン硬化液は、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴としている。
本発明のゼラチン硬化液においては、前記アルデヒド基含有化合物は、グルタルアルデヒド、グリオキザール、グリオキシルから選ばれた1種以上であることが好ましい。
本発明のハードコート液は、上述したゼラチン硬化液、エチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含有することを特徴としている。
本発明のハードコート液においては、前記エチレン性不飽和化合物が、ウレタンアクリレートであることが好ましい。
【0006】
本願請求項5のフォトマスクは、樹脂フィルムあるいはガラス基板と、該樹脂フィルムあるいは該ガラス基板に接し、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層と、該感光乳剤層に接するハードコート層とを有するフォトマスクにおいて、前記感光乳剤層は、ハードコート層と接する面側に上述したゼラチン硬化液が塗布されて形成したゼラチン硬化膜を有することを特徴としている。
本願請求項6のフォトマスクは、樹脂フィルムあるいはガラス基板と、該樹脂フィルムあるいは該ガラス基板に接し、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層と、該感光乳剤層に接するハードコート層とを有するフォトマスクにおいて、前記ハードコート層は、上述したハードコート液が感光乳剤層の表面に塗布されて形成されたことを特徴としている。
【0007】
本願請求項7のフォトマスクの製造方法は、樹脂フィルムあるいはガラス基板の上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層に、請求項1または2に記載のゼラチン硬化液を塗布してから、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤とが含まれる不飽和化合物混合液を塗布することを特徴としている。
本願請求項8のフォトマスクの製造方法は、樹脂フィルムあるいはガラス基板の上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層に、請求項3または4に記載のハードコート液を塗布することを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
はじめに、本発明のゼラチン硬化液の一例について説明する。本発明のゼラチン硬化液は、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
ここで、アルデヒド基含有化合物としては、アルデヒド基を含有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、ゼラチンを硬化させやすいことから、グルタルアルデヒド、グリオキザール、グリオキシルから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0009】
メチロール基含有化合物としては、メチロール基を含有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、尿素、チオ尿素、メラミン、グアニジン、グアナミン、ベンゾグアナミン、アニリン、スルホアミドなどとアルデヒド類との初期縮合物などが挙げられる。具体的には、アンモニアアルカリ性下で尿素をホルムアルデヒドによってメチロール化したメチロール尿素が挙げられる。
メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物とは、尿素、チオ尿素、メラミン、グアニジン、グアナミン、ベンゾグアナミン、アニリン、スルホアミドなどとアルデヒド類との初期縮合物にアルコールを付加させてアルキルエーテル化したものである。例えば、メチロール尿素をリン酸酸性下でアルコールによってアルキルエーテル化したメチロール尿素アルコキシエーテルが挙げられる。ここで、アルキルエーテル化されるメチロールの数には制限はない。例えば、メチロール尿素アルコキシエーテルの一方の窒素原子に結合するメチロールのみがアルキルエーテル化されてもよいし、両方の窒素原子に結合するメチロールがアルキルエーテル化されてもよい。なお、尿素の代わりにメラミンを使用した場合には、最大6分子のアルコールを付加させてアルキルエーテル化することができる。
【0010】
ゼラチン硬化液には溶媒が含まれる。その溶媒としては、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物を溶解または分散させることができ、かつ、揮発することができるものであれば特に制限されず、例えば、水そしてメタノール、エタノール,イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトンなどのケトン類、グリコールエステル系やグリコールエーテル系の溶剤が単独でまたは混合して使用される。
【0011】
以上説明したゼラチン硬化液は、フォトマスクを構成する感光乳剤層に塗布される。フォトマスクを構成する感光乳剤層はゼラチンを主成分として含有しており、ゼラチン硬化液を感光乳剤層に塗布した場合には、アルデヒド基含有化合物のアルデヒド基あるいはメチロール基含有化合物のメチロール基あるいはメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物のエーテル基と、ゼラチンのカルボキシル基とが反応する。すなわち、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物が架橋剤としての役割を果して、ゼラチンを硬化させることができる。
【0012】
次に、本発明のハードコート液について説明する。本発明のハードコート液は、上述したゼラチン硬化液、エチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含有するものである。
ここで、エチレン性不飽和化合物は、光重合性を有するとともに、その重合体の光透過性が高いものであり、多官能性アクリル系不飽和化合物、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基を有する不飽和化合物などが挙げられる。
具体的には、例えば、ウレタンアクリレート、多価アルコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、ビスフェノールAから誘導されたアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、グリシジルアクリレート(メタクリレート)の開環共重合物、グリシジルアクリレート(メタクリレート)のビニル共重合物のアクリル(メタクリル)酸付加反応物、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルホルマール、トリアリルシアヌレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルフタレートなどが挙げられる。これらエチレン性不飽和化合物は、単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0013】
上述したエチレン性不飽和化合物の中でも、光硬化性、感光乳剤層に対する密着性が良く、また、形成される硬化膜が強靱なことから、ウレタンアクリレートが好ましく使用される。ここで、ウレタンアクリレートとは、ポリイソシアネートと、OH基を有するアクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート)との付加反応物、あるいは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートからポリウレタンポリイソシアネートを合成し、このポリウレタンポリイソシアネートと、OH基を有するアクリレートとの付加反応物のことである。
このようなウレタンアクリレートとしては、例えば、ジイソシアネート化合物1モルとヒドロキシアルキルアクリレート(またはメタクリレート)2モルとを付加反応させたジウレタン化合物のアクリレート(またはメタクリレート)類、2価アルコール1モルとジイソシアネート化合物2モルとヒドロキシアルキルアクリレート(またはメタクリレート)2モルとを付加反応させたポリウレタン化合物のアクリレート(またはメタクリレート)類などが挙げられる。
【0014】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルカリエーテル類、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノンなどのアルキルアントラキノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、芳香族スルホニウムルイス酸塩、芳香族ヨードニウムルイス酸塩などが挙げられる。また、これらの光重合開始剤は単独または2種類以上の混合物として用いられる。
このような光重合開始剤は活性光線によって活性化されて、上述したエチレン性不飽和化合物の光重合を促進させることができる。
【0015】
また、ハードコート液には、保存性、塗布時の抑泡性、硬化後の防汚染性や離型性などの向上を目的として、添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、高分子化合物、熱重合禁止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、無機または有機の微粉末、熱発泡剤、染料または顔料などの着色剤、光発色剤、消泡剤、離型剤などが挙げられる。
【0016】
上述した添加剤の中で、熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ジフェニルニトロソアミンなどが挙げられる。ハードコート液が、熱重合禁止剤を含有していれば、エチレン性不飽和化合物が保存中に熱重合することを防止できるので、保存性が向上する。
【0017】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−1−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェノン)ベンゾトリアゾールを代表とするベンゾトリアゾール系、4−tert−ブチルフェニルサリチラート、p−オクチルフェニルサリチラートなどのサリチラート類などが挙げられる。ハードコート液が、このような紫外線吸収剤を含有していれば、フォトリソグラフィー工程において、露光される感光性樹脂の解像性を向上させることができる。
【0018】
無機の微粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、三酸化アンチモン、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの無機の微粉末は、シラン系、チタニウム系等のカップリング剤で処理することにより分散性を向上させることができる。
有機の微粉末としては、例えば、アクリル系、スチレン系、エチレン系の樹脂からなるものが挙げられる。また、グリシジル基、アクリロイル基またはメタクロイル基などの反応性基を有する樹脂からなるものも有用である。
熱発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーン、ヒドラゾジカルボン酸アミド、それに無機または有機の微小中空球体などの熱膨張粒子なども使用できる。
このような有機または無機の微粉末を含有させれば、最終的に得られるフォトマスクの表面に微小の凹凸を設けることができる。そして、このような凹凸によって、フォトマスクと被露光表面との間に間隙が生じて真空密着露光させる時に空気が逃げやすく結果として密着性を良くすることができる。
【0019】
染料または顔料などの着色剤としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられる。このような着色剤を添加した場合には、ハードコート液の取り扱い時の認識性を高めることができる。なお、着色剤は、紫外線の透過を妨げない範囲で添加される。
消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤などが挙げられる。
【0020】
離型剤としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンポリマーや、フッ素系のモノマー、ポリマーなどが挙げられる。シリコーンポリマーやフッ素系ポリマーには、少なくとも片末端に反応性有機基を有するものを用いることができる。ここで、反応性有機基とは、カルビーノル、アミノアルキル、エポキシ、メタクリルなどが挙げられる。ハードコート液に離型剤を含有させた場合には、最終的に得られるフォトマスク表面が汚れにくくなる。
【0021】
以上説明したハードコート液は、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物が架橋剤となって、感光乳剤層のゼラチンを硬化させることができる。また、それと同時に、エチレン性不飽和化合物を感光乳剤層上に塗布できる。そして、エチレン性不飽和化合物を光重合開始剤によって重合させることで、ハードコート層を形成させることができる。
【0022】
次に、本発明のフォトマスクの第1の実施形態例について説明する。図1は、第1の実施形態例のフォトマスクを示しており、このフォトマスク1は、基材である樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2に接する感光乳剤層3と、感光乳剤層3に接するハードコート層4とからなっている。
ここで、樹脂フィルム2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセテートフィルムなどが用いられる。
感光乳剤層3は、主成分としてゼラチンを含有するとともに、硝酸銀とハロゲン塩とを含有する層である。そして、この感光乳剤層3は、上述したゼラチン硬化液が塗布されて形成されたゼラチン硬化膜5を、ハードコート層4と接する面側に有している。ここで、ゼラチン硬化膜とは、ゼラチンが硬化して形成された膜のことである。
ハードコート層4は感光乳剤層3を保護する層であって、上述したエチレン性不飽和化合物の重合体からなる層である。ここで、エチレン性不飽和化合物の重合体としては、光透過性の高いものが使用される。
【0023】
次に、第1の実施形態例のフォトマスクの製造方法について説明する。この製造方法では、図2に示すような、樹脂フィルム2上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層3に、上述したゼラチン硬化液を塗布し、乾燥する。そして、感光乳剤層3表面のゼラチンを硬化させて、図3に示すように、ゼラチン硬化膜5を形成させる。
次いで、ゼラチン硬化膜5に、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤とを含有する不飽和化合物混合液を塗布する。そして、塗布された不飽和化合物混合液の上から紫外線などの活性光線を照射して、光重合開始剤を活性化させ、活性化した光重合開始剤によってエチレン性不飽和化合物を重合させて、図1に示すように、感光乳剤層3上にハードコート層4を形成させてフォトマスク1を得る。このような製造方法によれば、ゼラチン硬化膜5とハードコート層4とを別々に形成するので、ゼラチン硬化液と不飽和化合物混合液との相溶性に関係なく成分を選択でき、ハードコート層4の厚さを容易に変えることができる。
【0024】
上述した製造方法において、ゼラチン硬化液あるいは不飽和化合物混合液を感光乳剤層に塗布する方法としては、印毛塗り法、ローラーコーター法、スプレー法、ディッピング法、フローコーティング法、バーコーター法、スクリーン印刷法などの公知の方法を採用できる。
【0025】
以上説明した第1の実施形態例のフォトマスク1は、感光乳剤層3のハードコート層4と接する面側に、ゼラチンが硬化したゼラチン硬化膜5を有しており、不飽和化合物混合物を塗布する際にその塗布面の動きが抑えられているので、ハードコート層4の形成が容易になる。また、ハードコート層4によって、耐擦過性が向上するので、表面が汚れた場合には、拭き取るなどして汚れを除去できる。また、表面に薬品が付着しても、感光乳剤層3が侵されにくくなるので、耐薬品性が高い。しかも、ハードコート層4は光透過性が高いので、フォトマスク1を用いたフォトリソグラフィー工程において、感光性樹脂を十分に露光させることができる。
また、樹脂フィルム2上の感光乳剤層3がゼラチン硬化膜5を有する場合には、伸縮しにくくなるので、感光乳剤層3の湿度寸法安定性が高くなり、結果としてフォトマスク1の湿度寸法安定性を高くできる。
【0026】
次に、本発明のフォトマスクの第2の実施形態例について図4を参照しながら説明する。なお、図4の第2の実施形態例において、第1の実施形態例と同じ構成要素については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
図4に示すフォトマスク6は、樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2に接する感光乳剤層3と、感光乳剤層3に接するハードコート層7とからなっており、ハードコート層7は、上述したハードコート液が感光乳剤層3の表面に塗布されて形成されたものである。
【0027】
第2の実施形態例のフォトマスクの製造方法では、図2に示すような、樹脂フィルム2上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層3に、上述したハードコート液を塗布し、乾燥する。この際、ハードコート液に含まれるアルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種が、感光乳剤層3のゼラチンを架橋してゼラチン硬化物が形成する。そして、紫外線などの活性光線を照射して、光重合開始剤を活性化させ、活性化した光重合開始剤によって、ハードコート液に含まれているエチレン性不飽和化合物を重合させて、図4に示すような、フォトマスク6を得る。
この第2の実施形態例のフォトマスクの製造方法によれば、ゼラチンの硬化とハードコート層を形成するエチレン性不飽和化合物の塗布とを同時に行うので、生産性が高い。
【0028】
以上説明した第2の実施形態例のフォトマスク11にあっては、ハードコート液が感光乳剤層の表面に塗布されてハードコート層が形成されているので、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性が高い。また、ゼラチン硬化物によって、伸縮しにくくなるので、感光乳剤層の湿度寸法安定性が高くなり、結果としてフォトマスクの湿度寸法安定性を高くできる。
【0029】
なお、上述した第1の実施形態例および第2の実施形態例においては、樹脂フィルムを基板として用いていたが、本発明では、樹脂フィルムの代わりにガラス基板を基材として用いることもできる。ガラス基板を用いた場合、湿度寸法安定性の問題は生じにくいが、第1の実施形態例あるいは第2の実施形態例と同じ構成をとることにより、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性を向上させることができる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
グリセルアルデヒド50重量部、35%塩酸2重量部に水を加えて全体で1000重量部としてゼラチン硬化液を調製した。このゼラチン硬化液をゼラチン銀塩系フォトマスク(ゼラチンを保持体とする)にスプレイを用いて塗布し、5分間放置後、50℃で20分間乾燥して、ゼラチン硬化膜を形成させた。
次に、ウレタンアクリレート(トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの付加反応物)70重量部、多価アクリレートモノマー(商品名DPCA−60、日本化薬社製)20重量部、離型剤としてシリコーン系グラフトポリマー(商品名サイマックUS−350、東亜合成社製)10重量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテル300重量部を添加し、攪拌混合して調製した不飽和化合物混合液を、ゼラチン硬化膜上にバーコーターを用いて約20μmの厚さに塗布し、50℃で20分間乾燥した。
次いで、2kW水銀灯、距離60cmで5分間紫外線照射してゼラチン銀塩系フォトマスクの表面に約4μmのハードコート層を形成させた。
【0031】
(実施例2)
ウレタンアクリレート(商品名アロニックスM−1200、東亜合成社製)80重量部、多価アクリレートモノマー(商品名KAYARAD−DPHA、日本化薬社製)20重量部、離型剤としてシリコーン系モノマー(商品名X−22−164B、信越化学工業社製)10重量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、グリオキザール3重量部、ジメチロール尿素メトキシエーテル3重量部、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテル300重量部を添加し、攪拌混合して調製したハードコート液を、ゼラチン銀塩系フォトマスクの表面にバーコーターを用いて約20μmの厚さに塗布し、50℃で20分間乾燥した。
次いで、2kW水銀灯、距離60cmで5分間紫外線照射してゼラチン銀塩系フォトマスクの表面に約5μmのハードコート層を形成させた。
【0032】
(実施例3)
ゼラチン銀塩系フォトマスクの代わりにゼラチン銀塩系ガラスフォトマスクを用い、表面に約4μmのハードコート層を形成させたこと以外は実施例2と同様にした。
【0033】
(比較例1)
ゼラチン硬化液およびハードコート液を塗布しなかった実施例1で使用したゼラチン銀塩系フォトマスクである。
【0034】
(比較例2)
実施例1で使用したゼラチン銀塩系フォトマスクに、ゼラチン硬化液およびハードコート液を塗布せず、その代わりに、粘着剤付ポリエステルフィルム(株式会社きもと社製商品名:キモトテクト、総厚8μm品)からなるフィルムを貼り合わせた。
【0035】
実施例1〜3および比較例1,2のフォトマスクを、以下のように評価した。(鉛筆硬度) JIS K 5400に準拠して測定した。
(UV透過率) 日本分光株式会社製V−530の測定装置で波長365nmの透過率を測定した。
(離型性) ユニ工業株式会社製ユニポリエステルテープをハードコート層の表面に接着させてから剥離強度を測定して、剥離強度100g超を×、70〜100gを△、70g以下を○と判定した。なお、ハードコート層無しでは、剥離強度は140gであった。
(耐MEK) ハードコート層を、メチルエチルケトンを含ませた布で100回擦り、表面に変化の無いものを○とした。
(湿度膨張率) 環境試験機にて温度25℃湿度55%に5時間放置したものと、温度25℃湿度80%に5時間放置したものの寸法変化を測定して計算した。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1では、グリセルアルデヒドを含むゼラチン硬化液を用いてゼラチン硬化膜を形成させたとともに、不飽和化合物混合液でハードコート層を形成させたので、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面の硬度が硬く、耐擦過性に優れていた。また、光透過率、耐MEK性(耐薬品性)が高かった。また、湿度膨張率が低く、湿度寸法安定性が良かった。
実施例2では、グリオキザールおよびジメチロール尿素メトキシエーテルを含むハードコート液でハードコート層を形成させたので、ゼラチン銀塩系フォトマスクの表面硬度が硬く、耐擦過性に優れていた。また、光透過率、耐MEK性が高かった。また、湿度膨張率が低く、湿度寸法安定性が良かった。
実施例3では、グリオキザールおよびジメチロール尿素メトキシエーテルを含むハードコート液でハードコート層ハードコート液でハードコート層を形成させたので、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面の硬度が硬く、耐擦過性に優れていた。また、耐MEK性が高かった。
【0038】
比較例1では、ゼラチン硬化膜、ハードコート層が形成されていなかったので、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面の硬度が低く、湿度膨張率が高かった。
比較例2では、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面にフィルムをラミネートしたので、硬度、光透過率が低かった。
【0039】
【発明の効果】
本発明のゼラチン硬化液によれば、フォトマスクを構成する感光乳剤層に塗布することで、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物によってゼラチンを架橋させることができる。その結果、ハードコート層を形成させた後の湿度膨張率を低下させることができる。
本発明のハードコート液によれば、フォトマスクを構成する感光乳剤層に塗布することで、ゼラチンを架橋してゼラチン硬化物を形成させることができ、ハードコート層の形成を容易にする。それと同時に、ハードコート層になるエチレン性不飽和化合物を塗布できるので、ハードコート層を有するフォトマスクを高効率で製造できる。
【0040】
本発明のフォトマスクは、ゼラチン硬化膜またはゼラチン硬化物によって感光乳剤層が硬化されており、さらに感光乳剤層上にハードコート層が形成されており、感光乳剤層を保護するので、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性を向上させることができる。また、ゼラチン硬化膜およびハードコート層は光透過性が高いので、フォトリソグラフィー工程において、感光性樹脂を十分に露光させることができる。また、ゼラチン硬化膜またはゼラチン硬化物によって伸縮が抑制されているので、湿度寸法安定性が高い。
本発明のフォトマスクの製造方法によれば、感光乳剤層にゼラチン硬化液および不飽和化合物混合液、または、ハードコート液を塗布するので、感光乳剤層を硬化させることができ、その結果、ハードコート層を容易に形成させることができる。したがって、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性、湿度寸法安定性を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフォトマスクの第1の実施形態例を示す断面図である。
【図2】感光乳剤層にゼラチン硬化液またはハードコート液が塗布されていないフォトマスクを示す断面図である。
【図3】感光乳剤層にゼラチン硬化液を塗布した後のフォトマスクを示す断面図である。
【図4】本発明に係るフォトマスクの第2の実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
1,6 フォトマスク
2 樹脂フィルム
3 感光乳剤層
4 ハードコート層
5,7 ゼラチン硬化膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトリソグラフィー工程に使用されるフォトマスクの、ゼラチンを主成分とする感光乳剤層を硬化させるゼラチン硬化液に関する。また、このゼラチン硬化液を含有するハードコート液に関する。さらには、ゼラチン硬化液、ハードコート液が塗布されたフォトマスクおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
IC用リードフレーム、カラーテレビ用シャドウマスク、高密度プリント配線板、薄型ディスプレイなどに設けられる電極や隔壁は微細な加工が要求されるため、露光して現像するフォトリソグラフィー法を施すことがあり、その際、露光しない部分を覆うフォトマスクが使用される。フォトマスクは、ポリエチレンテレフタレートフィルムあるいはガラス基板と、それらの上に形成された感光乳剤層とからなっており、パターンが形成されている。ここで、感光乳剤層は、主成分であるゼラチンと、硝酸銀と、ハロゲン化銀と、添加剤とを含有し、感光性を有している。また、パターンは、CADで入力されたデータに基づいてレーザプロッタにより描画され、現像されて形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フォトマスクの感光乳剤層はゼラチンが主成分であり、軟らかいため、耐擦過性が低く、傷付きやすかった。そのため、フォトリソグラフィー工程においては、被露光物体と接触露光する場合に傷がつき易く、また、フォトマスク表面に薬品が付着した場合には、水や溶剤で汚れを拭き取るなどして除去することはフォトマスク表面を傷付ける原因になるので困難であり、新しいフォトマスクと交換していた。
したがって、従来では、同じフォトマスクを多数用意しなければならず、結果としてフォトリソグラフィー工程のコストを高くしていた。
そこで、感光乳剤層上に厚さ6〜10μmの保護フィルムをラミネートして、感光乳剤層を保護することがあった。しかしながら、この方法によると、保護フィルムとフォトマスクとの間に接着剤による接着層が生じる為、露光時に光が屈折拡散して画像再現性が不完全になることがあった。また、感光乳剤層上に一般的なハードコート層を形成させることが考えられるが、ゼラチンを主成分とする感光乳剤層は軟らかく、厚さ2〜4μmのハードコート層を形成させても充分な硬度は得られなかった。
【0004】
また、感光乳剤層のゼラチンは吸湿し易いという性質を有している。ガラス基板のように湿度により伸縮しないものを基材とした場合には、フォトマスクは湿度によって伸縮しないが、湿度によって伸縮するポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムを基材とした場合には、基材とともに感光乳剤層が伸縮するので、結果的にフォトマスクが伸縮することがあった。フォトマスクに形成されたパターンは非常に微細であるから、寸法の変化は重大な問題であった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性、湿度寸法安定性を容易に向上させるとともに、光透過性を低下させることのないゼラチン硬化液およびハードコート液を提供することを目的とする。また、このゼラチン硬化液が含まれるハードコート液、ゼラチン硬化液、そして、ハードコート液によって感光乳剤層のゼラチンが硬化されてハードコートされたフォトマスクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のゼラチン硬化液は、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴としている。
本発明のゼラチン硬化液においては、前記アルデヒド基含有化合物は、グルタルアルデヒド、グリオキザール、グリオキシルから選ばれた1種以上であることが好ましい。
本発明のハードコート液は、上述したゼラチン硬化液、エチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含有することを特徴としている。
本発明のハードコート液においては、前記エチレン性不飽和化合物が、ウレタンアクリレートであることが好ましい。
【0006】
本願請求項5のフォトマスクは、樹脂フィルムあるいはガラス基板と、該樹脂フィルムあるいは該ガラス基板に接し、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層と、該感光乳剤層に接するハードコート層とを有するフォトマスクにおいて、前記感光乳剤層は、ハードコート層と接する面側に上述したゼラチン硬化液が塗布されて形成したゼラチン硬化膜を有することを特徴としている。
本願請求項6のフォトマスクは、樹脂フィルムあるいはガラス基板と、該樹脂フィルムあるいは該ガラス基板に接し、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層と、該感光乳剤層に接するハードコート層とを有するフォトマスクにおいて、前記ハードコート層は、上述したハードコート液が感光乳剤層の表面に塗布されて形成されたことを特徴としている。
【0007】
本願請求項7のフォトマスクの製造方法は、樹脂フィルムあるいはガラス基板の上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層に、請求項1または2に記載のゼラチン硬化液を塗布してから、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤とが含まれる不飽和化合物混合液を塗布することを特徴としている。
本願請求項8のフォトマスクの製造方法は、樹脂フィルムあるいはガラス基板の上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層に、請求項3または4に記載のハードコート液を塗布することを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
はじめに、本発明のゼラチン硬化液の一例について説明する。本発明のゼラチン硬化液は、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
ここで、アルデヒド基含有化合物としては、アルデヒド基を含有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、ゼラチンを硬化させやすいことから、グルタルアルデヒド、グリオキザール、グリオキシルから選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0009】
メチロール基含有化合物としては、メチロール基を含有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、尿素、チオ尿素、メラミン、グアニジン、グアナミン、ベンゾグアナミン、アニリン、スルホアミドなどとアルデヒド類との初期縮合物などが挙げられる。具体的には、アンモニアアルカリ性下で尿素をホルムアルデヒドによってメチロール化したメチロール尿素が挙げられる。
メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物とは、尿素、チオ尿素、メラミン、グアニジン、グアナミン、ベンゾグアナミン、アニリン、スルホアミドなどとアルデヒド類との初期縮合物にアルコールを付加させてアルキルエーテル化したものである。例えば、メチロール尿素をリン酸酸性下でアルコールによってアルキルエーテル化したメチロール尿素アルコキシエーテルが挙げられる。ここで、アルキルエーテル化されるメチロールの数には制限はない。例えば、メチロール尿素アルコキシエーテルの一方の窒素原子に結合するメチロールのみがアルキルエーテル化されてもよいし、両方の窒素原子に結合するメチロールがアルキルエーテル化されてもよい。なお、尿素の代わりにメラミンを使用した場合には、最大6分子のアルコールを付加させてアルキルエーテル化することができる。
【0010】
ゼラチン硬化液には溶媒が含まれる。その溶媒としては、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物を溶解または分散させることができ、かつ、揮発することができるものであれば特に制限されず、例えば、水そしてメタノール、エタノール,イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトンなどのケトン類、グリコールエステル系やグリコールエーテル系の溶剤が単独でまたは混合して使用される。
【0011】
以上説明したゼラチン硬化液は、フォトマスクを構成する感光乳剤層に塗布される。フォトマスクを構成する感光乳剤層はゼラチンを主成分として含有しており、ゼラチン硬化液を感光乳剤層に塗布した場合には、アルデヒド基含有化合物のアルデヒド基あるいはメチロール基含有化合物のメチロール基あるいはメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物のエーテル基と、ゼラチンのカルボキシル基とが反応する。すなわち、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物が架橋剤としての役割を果して、ゼラチンを硬化させることができる。
【0012】
次に、本発明のハードコート液について説明する。本発明のハードコート液は、上述したゼラチン硬化液、エチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含有するものである。
ここで、エチレン性不飽和化合物は、光重合性を有するとともに、その重合体の光透過性が高いものであり、多官能性アクリル系不飽和化合物、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基を有する不飽和化合物などが挙げられる。
具体的には、例えば、ウレタンアクリレート、多価アルコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、ビスフェノールAから誘導されたアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、グリシジルアクリレート(メタクリレート)の開環共重合物、グリシジルアクリレート(メタクリレート)のビニル共重合物のアクリル(メタクリル)酸付加反応物、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルホルマール、トリアリルシアヌレート、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアリルフタレートなどが挙げられる。これらエチレン性不飽和化合物は、単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0013】
上述したエチレン性不飽和化合物の中でも、光硬化性、感光乳剤層に対する密着性が良く、また、形成される硬化膜が強靱なことから、ウレタンアクリレートが好ましく使用される。ここで、ウレタンアクリレートとは、ポリイソシアネートと、OH基を有するアクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート)との付加反応物、あるいは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートからポリウレタンポリイソシアネートを合成し、このポリウレタンポリイソシアネートと、OH基を有するアクリレートとの付加反応物のことである。
このようなウレタンアクリレートとしては、例えば、ジイソシアネート化合物1モルとヒドロキシアルキルアクリレート(またはメタクリレート)2モルとを付加反応させたジウレタン化合物のアクリレート(またはメタクリレート)類、2価アルコール1モルとジイソシアネート化合物2モルとヒドロキシアルキルアクリレート(またはメタクリレート)2モルとを付加反応させたポリウレタン化合物のアクリレート(またはメタクリレート)類などが挙げられる。
【0014】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインアルカリエーテル類、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノンなどのアルキルアントラキノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、芳香族スルホニウムルイス酸塩、芳香族ヨードニウムルイス酸塩などが挙げられる。また、これらの光重合開始剤は単独または2種類以上の混合物として用いられる。
このような光重合開始剤は活性光線によって活性化されて、上述したエチレン性不飽和化合物の光重合を促進させることができる。
【0015】
また、ハードコート液には、保存性、塗布時の抑泡性、硬化後の防汚染性や離型性などの向上を目的として、添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、高分子化合物、熱重合禁止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、無機または有機の微粉末、熱発泡剤、染料または顔料などの着色剤、光発色剤、消泡剤、離型剤などが挙げられる。
【0016】
上述した添加剤の中で、熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテル、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ジフェニルニトロソアミンなどが挙げられる。ハードコート液が、熱重合禁止剤を含有していれば、エチレン性不飽和化合物が保存中に熱重合することを防止できるので、保存性が向上する。
【0017】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−1−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェノン)ベンゾトリアゾールを代表とするベンゾトリアゾール系、4−tert−ブチルフェニルサリチラート、p−オクチルフェニルサリチラートなどのサリチラート類などが挙げられる。ハードコート液が、このような紫外線吸収剤を含有していれば、フォトリソグラフィー工程において、露光される感光性樹脂の解像性を向上させることができる。
【0018】
無機の微粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、三酸化アンチモン、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらの無機の微粉末は、シラン系、チタニウム系等のカップリング剤で処理することにより分散性を向上させることができる。
有機の微粉末としては、例えば、アクリル系、スチレン系、エチレン系の樹脂からなるものが挙げられる。また、グリシジル基、アクリロイル基またはメタクロイル基などの反応性基を有する樹脂からなるものも有用である。
熱発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾーン、ヒドラゾジカルボン酸アミド、それに無機または有機の微小中空球体などの熱膨張粒子なども使用できる。
このような有機または無機の微粉末を含有させれば、最終的に得られるフォトマスクの表面に微小の凹凸を設けることができる。そして、このような凹凸によって、フォトマスクと被露光表面との間に間隙が生じて真空密着露光させる時に空気が逃げやすく結果として密着性を良くすることができる。
【0019】
染料または顔料などの着色剤としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられる。このような着色剤を添加した場合には、ハードコート液の取り扱い時の認識性を高めることができる。なお、着色剤は、紫外線の透過を妨げない範囲で添加される。
消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤、フッ素系消泡剤などが挙げられる。
【0020】
離型剤としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンポリマーや、フッ素系のモノマー、ポリマーなどが挙げられる。シリコーンポリマーやフッ素系ポリマーには、少なくとも片末端に反応性有機基を有するものを用いることができる。ここで、反応性有機基とは、カルビーノル、アミノアルキル、エポキシ、メタクリルなどが挙げられる。ハードコート液に離型剤を含有させた場合には、最終的に得られるフォトマスク表面が汚れにくくなる。
【0021】
以上説明したハードコート液は、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物が架橋剤となって、感光乳剤層のゼラチンを硬化させることができる。また、それと同時に、エチレン性不飽和化合物を感光乳剤層上に塗布できる。そして、エチレン性不飽和化合物を光重合開始剤によって重合させることで、ハードコート層を形成させることができる。
【0022】
次に、本発明のフォトマスクの第1の実施形態例について説明する。図1は、第1の実施形態例のフォトマスクを示しており、このフォトマスク1は、基材である樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2に接する感光乳剤層3と、感光乳剤層3に接するハードコート層4とからなっている。
ここで、樹脂フィルム2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリアセテートフィルムなどが用いられる。
感光乳剤層3は、主成分としてゼラチンを含有するとともに、硝酸銀とハロゲン塩とを含有する層である。そして、この感光乳剤層3は、上述したゼラチン硬化液が塗布されて形成されたゼラチン硬化膜5を、ハードコート層4と接する面側に有している。ここで、ゼラチン硬化膜とは、ゼラチンが硬化して形成された膜のことである。
ハードコート層4は感光乳剤層3を保護する層であって、上述したエチレン性不飽和化合物の重合体からなる層である。ここで、エチレン性不飽和化合物の重合体としては、光透過性の高いものが使用される。
【0023】
次に、第1の実施形態例のフォトマスクの製造方法について説明する。この製造方法では、図2に示すような、樹脂フィルム2上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層3に、上述したゼラチン硬化液を塗布し、乾燥する。そして、感光乳剤層3表面のゼラチンを硬化させて、図3に示すように、ゼラチン硬化膜5を形成させる。
次いで、ゼラチン硬化膜5に、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤とを含有する不飽和化合物混合液を塗布する。そして、塗布された不飽和化合物混合液の上から紫外線などの活性光線を照射して、光重合開始剤を活性化させ、活性化した光重合開始剤によってエチレン性不飽和化合物を重合させて、図1に示すように、感光乳剤層3上にハードコート層4を形成させてフォトマスク1を得る。このような製造方法によれば、ゼラチン硬化膜5とハードコート層4とを別々に形成するので、ゼラチン硬化液と不飽和化合物混合液との相溶性に関係なく成分を選択でき、ハードコート層4の厚さを容易に変えることができる。
【0024】
上述した製造方法において、ゼラチン硬化液あるいは不飽和化合物混合液を感光乳剤層に塗布する方法としては、印毛塗り法、ローラーコーター法、スプレー法、ディッピング法、フローコーティング法、バーコーター法、スクリーン印刷法などの公知の方法を採用できる。
【0025】
以上説明した第1の実施形態例のフォトマスク1は、感光乳剤層3のハードコート層4と接する面側に、ゼラチンが硬化したゼラチン硬化膜5を有しており、不飽和化合物混合物を塗布する際にその塗布面の動きが抑えられているので、ハードコート層4の形成が容易になる。また、ハードコート層4によって、耐擦過性が向上するので、表面が汚れた場合には、拭き取るなどして汚れを除去できる。また、表面に薬品が付着しても、感光乳剤層3が侵されにくくなるので、耐薬品性が高い。しかも、ハードコート層4は光透過性が高いので、フォトマスク1を用いたフォトリソグラフィー工程において、感光性樹脂を十分に露光させることができる。
また、樹脂フィルム2上の感光乳剤層3がゼラチン硬化膜5を有する場合には、伸縮しにくくなるので、感光乳剤層3の湿度寸法安定性が高くなり、結果としてフォトマスク1の湿度寸法安定性を高くできる。
【0026】
次に、本発明のフォトマスクの第2の実施形態例について図4を参照しながら説明する。なお、図4の第2の実施形態例において、第1の実施形態例と同じ構成要素については図1と同じ符号を付して説明を省略する。
図4に示すフォトマスク6は、樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2に接する感光乳剤層3と、感光乳剤層3に接するハードコート層7とからなっており、ハードコート層7は、上述したハードコート液が感光乳剤層3の表面に塗布されて形成されたものである。
【0027】
第2の実施形態例のフォトマスクの製造方法では、図2に示すような、樹脂フィルム2上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層3に、上述したハードコート液を塗布し、乾燥する。この際、ハードコート液に含まれるアルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種が、感光乳剤層3のゼラチンを架橋してゼラチン硬化物が形成する。そして、紫外線などの活性光線を照射して、光重合開始剤を活性化させ、活性化した光重合開始剤によって、ハードコート液に含まれているエチレン性不飽和化合物を重合させて、図4に示すような、フォトマスク6を得る。
この第2の実施形態例のフォトマスクの製造方法によれば、ゼラチンの硬化とハードコート層を形成するエチレン性不飽和化合物の塗布とを同時に行うので、生産性が高い。
【0028】
以上説明した第2の実施形態例のフォトマスク11にあっては、ハードコート液が感光乳剤層の表面に塗布されてハードコート層が形成されているので、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性が高い。また、ゼラチン硬化物によって、伸縮しにくくなるので、感光乳剤層の湿度寸法安定性が高くなり、結果としてフォトマスクの湿度寸法安定性を高くできる。
【0029】
なお、上述した第1の実施形態例および第2の実施形態例においては、樹脂フィルムを基板として用いていたが、本発明では、樹脂フィルムの代わりにガラス基板を基材として用いることもできる。ガラス基板を用いた場合、湿度寸法安定性の問題は生じにくいが、第1の実施形態例あるいは第2の実施形態例と同じ構成をとることにより、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性を向上させることができる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)
グリセルアルデヒド50重量部、35%塩酸2重量部に水を加えて全体で1000重量部としてゼラチン硬化液を調製した。このゼラチン硬化液をゼラチン銀塩系フォトマスク(ゼラチンを保持体とする)にスプレイを用いて塗布し、5分間放置後、50℃で20分間乾燥して、ゼラチン硬化膜を形成させた。
次に、ウレタンアクリレート(トルエンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの付加反応物)70重量部、多価アクリレートモノマー(商品名DPCA−60、日本化薬社製)20重量部、離型剤としてシリコーン系グラフトポリマー(商品名サイマックUS−350、東亜合成社製)10重量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテル300重量部を添加し、攪拌混合して調製した不飽和化合物混合液を、ゼラチン硬化膜上にバーコーターを用いて約20μmの厚さに塗布し、50℃で20分間乾燥した。
次いで、2kW水銀灯、距離60cmで5分間紫外線照射してゼラチン銀塩系フォトマスクの表面に約4μmのハードコート層を形成させた。
【0031】
(実施例2)
ウレタンアクリレート(商品名アロニックスM−1200、東亜合成社製)80重量部、多価アクリレートモノマー(商品名KAYARAD−DPHA、日本化薬社製)20重量部、離型剤としてシリコーン系モノマー(商品名X−22−164B、信越化学工業社製)10重量部、光重合開始剤(商品名イルガキュア651、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3重量部、グリオキザール3重量部、ジメチロール尿素メトキシエーテル3重量部、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテル300重量部を添加し、攪拌混合して調製したハードコート液を、ゼラチン銀塩系フォトマスクの表面にバーコーターを用いて約20μmの厚さに塗布し、50℃で20分間乾燥した。
次いで、2kW水銀灯、距離60cmで5分間紫外線照射してゼラチン銀塩系フォトマスクの表面に約5μmのハードコート層を形成させた。
【0032】
(実施例3)
ゼラチン銀塩系フォトマスクの代わりにゼラチン銀塩系ガラスフォトマスクを用い、表面に約4μmのハードコート層を形成させたこと以外は実施例2と同様にした。
【0033】
(比較例1)
ゼラチン硬化液およびハードコート液を塗布しなかった実施例1で使用したゼラチン銀塩系フォトマスクである。
【0034】
(比較例2)
実施例1で使用したゼラチン銀塩系フォトマスクに、ゼラチン硬化液およびハードコート液を塗布せず、その代わりに、粘着剤付ポリエステルフィルム(株式会社きもと社製商品名:キモトテクト、総厚8μm品)からなるフィルムを貼り合わせた。
【0035】
実施例1〜3および比較例1,2のフォトマスクを、以下のように評価した。(鉛筆硬度) JIS K 5400に準拠して測定した。
(UV透過率) 日本分光株式会社製V−530の測定装置で波長365nmの透過率を測定した。
(離型性) ユニ工業株式会社製ユニポリエステルテープをハードコート層の表面に接着させてから剥離強度を測定して、剥離強度100g超を×、70〜100gを△、70g以下を○と判定した。なお、ハードコート層無しでは、剥離強度は140gであった。
(耐MEK) ハードコート層を、メチルエチルケトンを含ませた布で100回擦り、表面に変化の無いものを○とした。
(湿度膨張率) 環境試験機にて温度25℃湿度55%に5時間放置したものと、温度25℃湿度80%に5時間放置したものの寸法変化を測定して計算した。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1では、グリセルアルデヒドを含むゼラチン硬化液を用いてゼラチン硬化膜を形成させたとともに、不飽和化合物混合液でハードコート層を形成させたので、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面の硬度が硬く、耐擦過性に優れていた。また、光透過率、耐MEK性(耐薬品性)が高かった。また、湿度膨張率が低く、湿度寸法安定性が良かった。
実施例2では、グリオキザールおよびジメチロール尿素メトキシエーテルを含むハードコート液でハードコート層を形成させたので、ゼラチン銀塩系フォトマスクの表面硬度が硬く、耐擦過性に優れていた。また、光透過率、耐MEK性が高かった。また、湿度膨張率が低く、湿度寸法安定性が良かった。
実施例3では、グリオキザールおよびジメチロール尿素メトキシエーテルを含むハードコート液でハードコート層ハードコート液でハードコート層を形成させたので、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面の硬度が硬く、耐擦過性に優れていた。また、耐MEK性が高かった。
【0038】
比較例1では、ゼラチン硬化膜、ハードコート層が形成されていなかったので、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面の硬度が低く、湿度膨張率が高かった。
比較例2では、ゼラチン銀塩系フォトマスク表面にフィルムをラミネートしたので、硬度、光透過率が低かった。
【0039】
【発明の効果】
本発明のゼラチン硬化液によれば、フォトマスクを構成する感光乳剤層に塗布することで、アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物、メチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物によってゼラチンを架橋させることができる。その結果、ハードコート層を形成させた後の湿度膨張率を低下させることができる。
本発明のハードコート液によれば、フォトマスクを構成する感光乳剤層に塗布することで、ゼラチンを架橋してゼラチン硬化物を形成させることができ、ハードコート層の形成を容易にする。それと同時に、ハードコート層になるエチレン性不飽和化合物を塗布できるので、ハードコート層を有するフォトマスクを高効率で製造できる。
【0040】
本発明のフォトマスクは、ゼラチン硬化膜またはゼラチン硬化物によって感光乳剤層が硬化されており、さらに感光乳剤層上にハードコート層が形成されており、感光乳剤層を保護するので、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性を向上させることができる。また、ゼラチン硬化膜およびハードコート層は光透過性が高いので、フォトリソグラフィー工程において、感光性樹脂を十分に露光させることができる。また、ゼラチン硬化膜またはゼラチン硬化物によって伸縮が抑制されているので、湿度寸法安定性が高い。
本発明のフォトマスクの製造方法によれば、感光乳剤層にゼラチン硬化液および不飽和化合物混合液、または、ハードコート液を塗布するので、感光乳剤層を硬化させることができ、その結果、ハードコート層を容易に形成させることができる。したがって、フォトマスクの耐擦過性、耐薬品性、湿度寸法安定性を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフォトマスクの第1の実施形態例を示す断面図である。
【図2】感光乳剤層にゼラチン硬化液またはハードコート液が塗布されていないフォトマスクを示す断面図である。
【図3】感光乳剤層にゼラチン硬化液を塗布した後のフォトマスクを示す断面図である。
【図4】本発明に係るフォトマスクの第2の実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
1,6 フォトマスク
2 樹脂フィルム
3 感光乳剤層
4 ハードコート層
5,7 ゼラチン硬化膜
Claims (8)
- アルデヒド基含有化合物、メチロール基含有化合物およびメチロール基含有化合物のアルキルエーテル化物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とするゼラチン硬化液。
- 前記アルデヒド基含有化合物は、グルタルアルデヒド、グリオキザール、グリオキシルから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のゼラチン硬化液。
- 請求項1または2に記載のゼラチン硬化液、エチレン性不飽和化合物および光重合開始剤を含有することを特徴とするハードコート液。
- 前記エチレン性不飽和化合物が、ウレタンアクリレートであることを特徴とする請求項3に記載のハードコート液。
- 樹脂フィルムあるいはガラス基板と、該樹脂フィルムあるいは該ガラス基板に接し、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層と、該感光乳剤層に接するハードコート層とを有するフォトマスクにおいて、
前記感光乳剤層は、ハードコート層と接する面側に請求項1または2に記載のゼラチン硬化液が塗布されて形成したゼラチン硬化膜を有することを特徴とするフォトマスク。 - 樹脂フィルムあるいはガラス基板と、該樹脂フィルムあるいは該ガラス基板に接し、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層と、該感光乳剤層に接するハードコート層とを有するフォトマスクにおいて、
前記ハードコート層は、請求項3または4に記載のハードコート液が感光乳剤層の表面に塗布されて形成されたことを特徴とするフォトマスク。 - 樹脂フィルムあるいはガラス基板の上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層に、請求項1または2に記載のゼラチン硬化液を塗布してから、エチレン性不飽和化合物と光重合開始剤とが含まれる不飽和化合物混合液を塗布することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
- 樹脂フィルムあるいはガラス基板の上に形成され、ゼラチンが主成分として含まれる感光乳剤層に、請求項3または4に記載のハードコート液を塗布することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
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JP2010085597A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Kimoto & Co Ltd | エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液およびそれを用いたエマルジョンマスク |
WO2011096081A1 (ja) * | 2010-02-08 | 2011-08-11 | 株式会社 きもと | エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液およびそれを用いたエマルジョンマスク |
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2002
- 2002-08-14 JP JP2002236449A patent/JP2004077690A/ja not_active Withdrawn
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