JP2004075707A - 熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂発泡体及びその製造方法 - Google Patents
熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂発泡体及びその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】優れたクッション性を備えるとともに、非常に曲げに強く容易に割れることがないため、土木、建築、車輌工業等の各種の分野で断熱材、防水剤、保温剤、パッキン材等の基本素材として広く用いることができ、特に、車両工業分野では、天井材、ドア材等の内装材として好適に使用することができる熱可塑性樹脂発泡体を得るに適した熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、熱可塑性樹脂と発泡剤と架橋剤とカーボンナノチューブとを含有する熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも、熱可塑性樹脂と発泡剤と架橋剤とカーボンナノチューブとを含有する熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂発泡体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン樹脂発泡体やポリプロピレン樹脂発泡体等のポリオレフィン系樹脂発泡体は、土木、建築、車輌工業等の各種の分野で断熱材、防水剤、保温剤、パッキン材等の基本素材として広く用いられている。
特に、車両工業分野では、天井材、ドア材等の内装材として使用されており、このような用途に用いられるポリオレフィン系樹脂発泡体は、単独で使用される場合は少なく、特開昭62−149431号公報、特開昭62−18437号公報、特開平1−163225号公報等に開示されているように、PVC(ポリ塩化ビニル)やTPO(熱可塑性ポリオレフィン)やポリオレフィンエラストマー等からなる表皮材をポリオレフィン系樹脂発泡体の表面に貼り合わせて用いられることが多い。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂発泡体は、通常、主原材料となるポリオレフィン系樹脂に分解型発泡剤をその分解温度以下で溶融混練し、得られた組成物をシート状に押出加工して発泡性シートとし、更にその発泡性シートに電子線又は放射線を照射してポリオレフィン系樹脂を架橋させ、次いで発泡性シートを加熱炉内に通して分解型発泡剤を加熱発泡させることにより製造される。
【0004】
このようにして製造されるポリオレフィン系樹脂発泡体には、柔らかく、優れたクッション性が要求される。
従来、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ゲル分率を低くすることにより、柔らかく、クッション性を優れたものとすることができることが知られているが、ゲル分率が低いポリオレフィン系樹脂発泡体は、曲げに弱く容易に割れてしまうという問題があった。
【0005】
一方、ゲル分率の低いポリオレフィン系樹脂発泡体中に無機充填剤(フィラー)等を含有させることで、曲げに強く、割れにくいポリオレフィン系樹脂発泡体とする技術が知られているが、従来の無機充填剤は、その粒径が比較的大きいことから、充分な曲げに対する強さを得るためには、ポリオレフィン系樹脂発泡体中に多量に充填する必要があった。しかし、無機充填剤を多量に充填すると、ポリオレフィン系樹脂発泡体が硬くなってしまい、クッション性を損なってしまうという問題があった。
また、無機充填剤を多量に充填すると、ポリオレフィン系樹脂発泡体の比重が大きくなり重くなってしまうという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、優れたクッション性を備えるとともに、非常に曲げに強く容易に割れることがない機械的強度に優れる熱可塑性樹脂発泡体を得るに適した熱可塑性樹脂組成物、その樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブとを含有する熱可塑性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも、熱可塑性樹脂と発泡剤と架橋剤とカーボンナノチューブとを含有する。
【0009】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。上記熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0010】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレンの単独重合体、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとスチレンとの共重合体、ブテンの単独重合体、イソプレンやブタジエン等の共役ジエン類の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。なかでも、プロピレンの単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンの単独重合体、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が好適に用いられる。上記ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なお、上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0011】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されるものではないが、JIS K7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」のA法に準拠して測定されたメルトフローレート(MFR)が0.2〜10g/10分であるものが好ましい。0.2g/10分未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の表面の外観が悪くなることがあり、10g/10分を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の耐熱性が不充分となることがある。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて優れたクッション性を有する熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、上記熱可塑性樹脂としてエチレンと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体やエチレンと酢酸ビニルとの共重合体等を用いることが好ましい。この際、この共重合体中における(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルや酢酸ビニルの含有量としては、特に限定されるものではないが、下限は0.1重量%、上限は50重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いて得られる熱可塑性樹脂発泡体のクッション性が乏しくなることがあり、50重量%を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の耐熱性が不充分となることがある。より好ましい下限は5重量%、上限は30重量%である。かかる共重合体のなかでも、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体が、コストの面からも好ましい。エチレンと酢酸ビニルとの共重合体を用いる場合の酢酸ビニル含率としては、上記と同様の理由により下限は10重量%、上限は25重量%が好ましく、下限は15重量%、上限は22重量%がより好ましい。酢酸ビニル含率がこの範囲内にあるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体を用いることにより、カーボンナノチューブの分散性が向上し、更に樹脂の汎用性に伴うコスト面からも有利であり工業的利用価値が高くなる。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてクッション性と機械的強度とのバランスに優れる熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、熱可塑性樹脂としてエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体を用いることが好ましい。上記エチレン以外のα−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。これらのエチレン以外のα−オレフィンは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。この際、この共重合体中におけるエチレン以外のα−オレフィンの含有量は特に限定されるものではないが、下限は0.1重量%、上限は50重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体のクッション性が乏しくなることがあり、50重量%を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の耐熱性が不充分となることがある。より好ましい下限は2重量%、上限は40重量%である。なお、エチレン以外のα−オレフィンの共重合比率を高めることにより、共重合体は柔軟性に富むものとなり、逆にエチレン以外のα−オレフィンの共重合比率を低めることにより、共重合体は機械的強度の高いものとなる。
【0014】
上記エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体は、均一系の重合触媒を用いて重合されたものであっても良い。かかる共重合体は、一般にメタロセン系化合物を均一系の重合触媒として重合されるので、メタロセンポリエチレンとも呼ばれる。上記メタロセンポリエチレンにおいては、エチレン以外のα−オレフィンの共重合比率を容易に高めることができるので、著しく優れた柔軟性を有する共重合体を得ることができる。また、上記メタロセンポリエチレンは、結晶ラメラ厚みが薄いため、結晶同士を結ぶタイ分子が多くなるので、機械的強度にも優れている。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてクッション性と機械的強度とのバランスが高い次元で優れている熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、熱可塑性樹脂として上記メタロセンポリエチレンを用いることがより好ましい。
【0015】
上記均一系の重合触媒となり得るメタロセン系化合物としては特に限定されず、例えば、IV族、X族、XI族の遷移金属の錯体等が挙げられる。上記メタロセン系化合物は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0016】
上記遷移金属の錯体とは、遷移金属原子に配位子が結合したものである。上記配位子としては特に限定されず、例えば、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素−置換メタロイド基等により置換されたシクロペンタジエン環;シクロペンタジエニルオリゴマー環;インデニル環;炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素−置換メタロイド基等により置換されたインデニル環等や、塩素、臭素等の1価のアニオンリガンド;2価のアニオンキレートリガンド;炭化水素基;アルコキシド基;アミド基;アリールアミド基;アリールオキシド基;ホスフィド基;アリールホスフィド基;シリル基;置換シリル基等が挙げられる。上記配位子は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて耐熱性に優れる熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、上記熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、プロピレンの単独重合体やプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記プロピレン以外のα−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。上記プロピレン以外のα−オレフィンは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。また、上記ポリプロピレン系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。更に、上記高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよく、両者が併用されてもよい。
【0018】
上記熱可塑性樹脂には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、樹脂の特性を改質するために、熱可塑性エラストマー類やオリゴマー類等が配合されてもよい。
上記熱可塑性エラストマー類としては特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマー類は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。また、上記オリゴマー類としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性エチレンオリゴマー等が挙げられる。上記オリゴマー類は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。また、上記熱可塑性エラストマー類及びオリゴマー類は、それぞれ単独で用いられてもよく、両者が併用されてもよい。
【0019】
上記発泡剤としては特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱分解型固体状発泡剤が挙げられる。上記加熱分解型固体状発泡剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0020】
上記加熱分解型固体状発泡剤以外の発泡剤としては特に限定されず、例えば、二酸化炭素(炭酸ガス)、窒素、酸素、アルゴン、フロン等の気体状発泡剤や、ペンタン、ネオペンタン、ブタン、ヘキサン、ヘプタン等の低分子量の炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン、トリクロロエチレン、ジクロルエタン等の塩素化炭化水素、CFC−11、CFC−12、CFC−113、CFC−141b等のフッ素化炭化水素、水、アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の易揮発性液状発泡剤を用いることもできる。
【0021】
上記発泡剤の配合量としては、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して2〜30重量部であることが好ましい。2重量部未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の発泡が不充分となり良好な発泡体とすることができなくことがある。一方、30重量部を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の発泡が不均一になり良好な発泡体とすることができなくことある。
【0022】
上記架橋剤としては特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル等のラジカル発生剤;ジビニルベンゼン(DVB)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート(NOD)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル等の多官能性モノマー等が挙げられる。上記架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0023】
上記架橋剤の配合量としては、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。1重量部未満であると、熱可塑性樹脂の架橋が不充分となって、均質な発泡体を得られないことがあり、10重量部を超えると、熱可塑性樹脂の架橋密度が高くなり過ぎて、発泡体への成形性が低下することがある。
【0024】
上記カーボンナノチューブとしては特に限定されず、例えば、炭素六角網面が円筒状に閉じた単層構造又は円筒構造が入れ子状に配置された多層構造をした材料からなるもの等が挙げられる。
また、上記カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていてもよく、単層構造と多層構造とが混在していてもよい。更に、製造方法の違いによって得られるカーボンナノチューブのサイズや形態は変わってくるが、本発明においては、いずれの形態のものも使用することができる。
【0025】
上記カーボンナノチューブの直径及び長さとしては特に限定されないが、例えば、0.1〜100nm程度であることが好ましい。
【0026】
上記カーボンナノチューブを製造する方法としては特に限定されず、例えば、炭素電極間にアーク放電を発生させ、放電用電極の陰極表面に成長させる方法、シリコンカーバイドにレーザービームを照射して加熱・昇華させる方法、遷移金属系触媒を用いて炭化水素を還元雰囲気下の気相で炭化する方法等が挙げられる。
【0027】
上記カーボンナノチューブの配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に分散しうる限り特に限定されない。
【0028】
上記カーボンナノチューブは、本発明の熱可塑性樹脂組成物中に均一かつ高分散されることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる熱可塑性樹脂発泡体がクッション性及び機械的強度に優れたものとなるからである。
【0029】
上記カーボンナノチューブを本発明の熱可塑性樹脂組成物中に高分散させる方法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブとを押出機、二本ロール、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法;熱可塑性樹脂の溶液とカーボンナノチューブとを溶液系で混合する方法;熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブとを常法により混合した後、発泡させる方法;分散剤を用いる方法等が挙げられる。上記分散方法を用いることにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物中にカーボンナノチューブをより均一かつ微細に分散させることができる。
【0030】
上記カーボンナノチューブは、それ自体が非常に微小な材料であり、かつ、脆くならないため、本発明の熱可塑性樹脂組成物中に高分散させる際に特別な表面処理等をしなくても高分散が可能である。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて抗酸化剤、顔料、軟化剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤の1種類又は2種類以上を含有していてもよい。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、層状珪酸塩や難燃剤が添加されていてもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる熱可塑性樹脂発泡体の難燃性が非常に優れたものとなるからである。
【0033】
上記層状珪酸塩としては特に限定されないが、物性向上、機能発現という観点からは、カーボンナノチューブと同様に樹脂中に高分散させることができる層間有機処理が施された有機化層状珪酸塩が好ましい。上記有機化層状珪酸塩を用いることにより、カーボンナノチューブの樹脂中への高分散で発現する機能との相乗効果が期待できる。
上記有機化層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、合成マイカ、合成スメクタイト、サポナイト等が挙げられる。
上記層間有機処理とは、層間の金属カチオンがアルキル四級アンモニウムイオンでイオン交換されているものが一般的であり、上記層間有機処理を施すことにより、上記有機化層状珪酸塩を樹脂中へ高分散させることができる。
【0034】
上記難燃剤としては特に限定されないが、廃プラスチックの処理や環境ホルモンの問題等に対応した環境適応型材料としては、非ハロゲン系難燃剤が好ましい。上記非ハロゲン系難燃剤としては特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;金属酸化物;赤リンやポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル等のリン系化合物;メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン及びこれらに表面処理が施されたもの等のメラミン誘導体等の窒素系化合物等が挙げられる。なかでも、金属水酸化物、メラミン誘導体又はリン系化合物が好適に用いられる。これらの非ハロゲン系難燃剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0035】
上記金属水酸化物としては特に限定されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム、二水和石膏等が挙げられる。なかでも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。2種類以上の金属水酸化物を併用すると、それぞれの金属水酸化物が異なる温度で分解脱水反応を開始するので、より高い難燃性付与効果を得ることができる。
【0036】
また、上記金属水酸化物は、表面処理剤により表面処理が施されているものであってもよい。上記表面処理剤としては特に限定されず、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ポリビニルアルコール系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤、高級脂肪酸系表面処理剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0037】
上記金属水酸化物は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こすので、吸熱して水分子を放出することにより燃焼場の温度を低下させ、消火する効果を発揮する。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物にさらに層状珪酸塩が添加されている場合、金属水酸化物による難燃性向上効果はより増大される。これは、上記層状珪酸塩の燃焼時における被膜形成に基づく難燃性向上効果と金属水酸化物の吸熱脱水反応に基づく難燃性向上効果とが共奏的に起こり、それぞれの効果が助長されることによる。
【0038】
上記メラミン誘導体としては特に限定されず、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン、これらに表面処理が施されたもの等が挙げられる。これらのメラミン誘導体は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。上記表面処理としては、上記金属水酸化物に施される処理と同様の処理が挙げられる。
【0039】
上記リン系化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、下記一般式(1)で表されるリン化合物等が挙げられる。これらのリン系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
R3(R2)(OR1)P=O・・・(1)
【0041】
式中、R1、R3は、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基又はアリール基を表し、R2は、水素原子、水酸基、炭素数1〜16のアルキル基、アルコキシル基、アリール基又はアリーロキシ基を表す。R1、R2及びR3は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。上記炭素数が16を超えると、リンの相対含有率が低くなるので、難燃性付与効果が不充分となることがある。
【0042】
上記一般式(1)で表されるリン化合物としては、具体的には例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチル−プロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0043】
上記赤リンとしては、耐湿性向上のためや、樹脂に添加して混練する際の自然発火を防止するために、表面が樹脂で被覆されているものが好ましい。
上記ポリリン酸アンモニウムとしては、メラミン変性等の表面処理が施されているものであってもよい。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ニーダーロール、バンバリーミキサー等の混練機を用いて、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブの各所定量と、更に必要に応じて配合される各種添加剤の1種又は2種以上の各所定量とを、常温下又は加熱下で、溶融混練する方法;熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブと、必要に応じて配合される各種添加剤の1種類又は2種類以上を溶解、又は、分散し得る溶媒中で混練した後、溶媒を除去する方法等が挙げられ、いずれの方法が採られてもよい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物を加熱下で製造する場合、上記加熱分解型発泡剤の分解温度未満で行う必要がある。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来用いられていた無機充填剤に代えてカーボンナノチューブを熱可塑性樹脂に含有させている。上記カーボンナノチューブは、非常に微小な粒子であるため、熱可塑性樹脂に対するカーボンナノチューブの配合量を余り多くしなくても、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブとの接触面積を非常に大きくすることができ、更に、熱可塑性樹脂中に高密度で分散させることもできる。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いればクッション性を損なうことなく、非常に曲げに強く容易に割れることがない熱可塑性樹脂発泡体が得られる。
【0046】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂をベース樹脂としてカーボンナノチューブが高分散しており、さらに上述した層状珪酸塩が添加されている場合、難燃性に優れ、特に燃焼時の形状保持効果によって優れた難燃効果を発現する熱可塑性樹脂発泡体が得られる。
【0047】
上記本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体も本発明の1つである。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法により製造することができる。
即ち、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、少なくとも、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブを溶融混練して樹脂組成物を調製する工程1、上記樹脂組成物をシート状に押出して発泡性シートを作製する工程2、上記発泡性シートに放射線を照射して上記熱可塑性樹脂を架橋させる工程3、及び、上記放射線を照射した発泡性シートを加熱発泡させる工程4を有する。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、少なくとも、熱可塑性樹脂と発泡剤と架橋剤とカーボンナノチューブとを溶融混練して樹脂組成物を調製する工程を有する。即ち、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する。
【0050】
上記樹脂組成物をシート状に押出して発泡性シートを作製する方法としては特に限定されず、例えば、単軸押出、2軸押出、ニーダーミキサー等による方法等が挙げられる。
【0051】
上記発泡性シートの厚さとしては特に限定されず、目的とする本発明の熱可塑性樹脂発泡体の厚さに合わせて適宜決定される。具体的には、製造する熱可塑性樹脂発泡体の厚さが0.1〜50mm程度となる厚さであることが好ましい。
【0052】
上記発泡性シートに照射する放射線として特に限定されず、例えば、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられる。
【0053】
上記発泡性シートに上記放射線を照射し、上記熱可塑性樹脂を架橋させた後、熱風、ヒーター、塩浴等で上記発泡性シートに発泡剤の分解温度以上にエネルギーを与えて発泡させることにより、本発明の熱可塑性樹脂発泡体を製造することができる。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体を製造するその他の手法としては、例えば、押出機中で溶融樹脂に気体状や、易揮発性液状発泡剤を含浸させ、押出後の圧力変化を利用して発泡させる押出発泡法や、型内に熱分解型発泡剤を含んだ熱可塑性樹脂組成物を配置して、加熱型内発泡させる方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、発泡体であればその構造は特に限定されず、例えば、気泡が貫通している連続気泡発泡体であってもよく、気泡が個々独立している独立気泡発泡体であってもよい。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体のゲル分率は、35%以下であることが好ましい。35%を超えると、本発明の熱可塑性樹脂発泡体が硬くなり、充分なクッション性を得ることができなくなることがある。
ここでいうゲル分率とは、熱可塑性樹脂発泡体シートを120℃熱キシレン中で24時間で溶解させ、そのうち分離乾燥させた不溶分(ゲル)の重量分率を意味する。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の用途としては特に限定されず、様々な用途に用いることができるが、断熱材、パッキング材、遮音・制振材、衝撃吸収材、装飾材、自動車内装材等に特に好適に用いることができる。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、そのゲル分率が低く、非常に微小なカーボンナノチューブが高密度で分散されているため、優れたクッション性を備えるとともに、非常に曲げに強く容易に割れることがなく機械的強度に優れたものとなる。また、本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、層状珪酸塩を併用した場合、燃焼時の形状保持効果によって優れた難燃効果を発現し難燃性にも優れたものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法によれば、本発明の熱可塑性樹脂発泡体を好適に製造することができる。
【0059】
【実施例】
(実施例1)
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂(商品名「EA9」、密度:0.910g/cm3、MFR:0.5g/10分、日本ポリケム社製)80重量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(商品名「モアテック0238CN」、密度:0.916g/cm3、MFR:2.0g/10分、出光石油化学社製)20重量部、カーボンナノチューブ5重量部、及び、酸変性ポリオレフィン系樹脂として無水マレイン酸変性プロピレンオリゴマー(商品名「ユーメックス1001」、官能基含有量:0.23mmol/g、三洋化成工業社製)5重量部をラボプラストミルに供給して、190℃で3分間溶融混練した。
【0060】
次に、上記ラボプラストミルに、非ハロゲン系難燃剤として水酸化マグネシウム(商品名「キスマ5J」、協和化学社製)30重量部を添加し、更に、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート3重量部、及び、加熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド(商品名「ユニフォームAZ−HM」、大塚化学社製)12重量部を添加し、3分間溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を作製した。
【0061】
得られた熱可塑性樹脂組成物を、ハンドプレスを用いて、180℃で2分間プレスして、厚み1mmの発泡性シートを作製した後、この発泡性シートに加速電圧750kV、電子線量5.3Mradの条件で電子線を照射することによって上記発泡性シートを架橋させた。
最後に、得られた発泡性架橋シートを260℃のギアーオーブン内に導入し、発泡させて、熱可塑性樹脂発泡体を作製した。
【0062】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成よりなるので、優れたクッション性を備えるとともに、非常に曲げに強く容易に割れることがない熱可塑性樹脂発泡体を得るに適した熱可塑性樹脂組成物、その熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体、及び、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供できる。
【産業上の利用分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂発泡体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレン樹脂発泡体やポリプロピレン樹脂発泡体等のポリオレフィン系樹脂発泡体は、土木、建築、車輌工業等の各種の分野で断熱材、防水剤、保温剤、パッキン材等の基本素材として広く用いられている。
特に、車両工業分野では、天井材、ドア材等の内装材として使用されており、このような用途に用いられるポリオレフィン系樹脂発泡体は、単独で使用される場合は少なく、特開昭62−149431号公報、特開昭62−18437号公報、特開平1−163225号公報等に開示されているように、PVC(ポリ塩化ビニル)やTPO(熱可塑性ポリオレフィン)やポリオレフィンエラストマー等からなる表皮材をポリオレフィン系樹脂発泡体の表面に貼り合わせて用いられることが多い。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂発泡体は、通常、主原材料となるポリオレフィン系樹脂に分解型発泡剤をその分解温度以下で溶融混練し、得られた組成物をシート状に押出加工して発泡性シートとし、更にその発泡性シートに電子線又は放射線を照射してポリオレフィン系樹脂を架橋させ、次いで発泡性シートを加熱炉内に通して分解型発泡剤を加熱発泡させることにより製造される。
【0004】
このようにして製造されるポリオレフィン系樹脂発泡体には、柔らかく、優れたクッション性が要求される。
従来、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ゲル分率を低くすることにより、柔らかく、クッション性を優れたものとすることができることが知られているが、ゲル分率が低いポリオレフィン系樹脂発泡体は、曲げに弱く容易に割れてしまうという問題があった。
【0005】
一方、ゲル分率の低いポリオレフィン系樹脂発泡体中に無機充填剤(フィラー)等を含有させることで、曲げに強く、割れにくいポリオレフィン系樹脂発泡体とする技術が知られているが、従来の無機充填剤は、その粒径が比較的大きいことから、充分な曲げに対する強さを得るためには、ポリオレフィン系樹脂発泡体中に多量に充填する必要があった。しかし、無機充填剤を多量に充填すると、ポリオレフィン系樹脂発泡体が硬くなってしまい、クッション性を損なってしまうという問題があった。
また、無機充填剤を多量に充填すると、ポリオレフィン系樹脂発泡体の比重が大きくなり重くなってしまうという問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、優れたクッション性を備えるとともに、非常に曲げに強く容易に割れることがない機械的強度に優れる熱可塑性樹脂発泡体を得るに適した熱可塑性樹脂組成物、その樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブとを含有する熱可塑性樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも、熱可塑性樹脂と発泡剤と架橋剤とカーボンナノチューブとを含有する。
【0009】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。上記熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0010】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体又はブロック共重合体、エチレンの単独重合体、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとスチレンとの共重合体、ブテンの単独重合体、イソプレンやブタジエン等の共役ジエン類の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。なかでも、プロピレンの単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンの単独重合体、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとアクリル酸エチルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が好適に用いられる。上記ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なお、上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0011】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されるものではないが、JIS K7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験方法」のA法に準拠して測定されたメルトフローレート(MFR)が0.2〜10g/10分であるものが好ましい。0.2g/10分未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の表面の外観が悪くなることがあり、10g/10分を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の耐熱性が不充分となることがある。
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて優れたクッション性を有する熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、上記熱可塑性樹脂としてエチレンと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体やエチレンと酢酸ビニルとの共重合体等を用いることが好ましい。この際、この共重合体中における(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルや酢酸ビニルの含有量としては、特に限定されるものではないが、下限は0.1重量%、上限は50重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いて得られる熱可塑性樹脂発泡体のクッション性が乏しくなることがあり、50重量%を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の耐熱性が不充分となることがある。より好ましい下限は5重量%、上限は30重量%である。かかる共重合体のなかでも、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体が、コストの面からも好ましい。エチレンと酢酸ビニルとの共重合体を用いる場合の酢酸ビニル含率としては、上記と同様の理由により下限は10重量%、上限は25重量%が好ましく、下限は15重量%、上限は22重量%がより好ましい。酢酸ビニル含率がこの範囲内にあるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体を用いることにより、カーボンナノチューブの分散性が向上し、更に樹脂の汎用性に伴うコスト面からも有利であり工業的利用価値が高くなる。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてクッション性と機械的強度とのバランスに優れる熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、熱可塑性樹脂としてエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体を用いることが好ましい。上記エチレン以外のα−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。これらのエチレン以外のα−オレフィンは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。この際、この共重合体中におけるエチレン以外のα−オレフィンの含有量は特に限定されるものではないが、下限は0.1重量%、上限は50重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体のクッション性が乏しくなることがあり、50重量%を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物やこれを用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の耐熱性が不充分となることがある。より好ましい下限は2重量%、上限は40重量%である。なお、エチレン以外のα−オレフィンの共重合比率を高めることにより、共重合体は柔軟性に富むものとなり、逆にエチレン以外のα−オレフィンの共重合比率を低めることにより、共重合体は機械的強度の高いものとなる。
【0014】
上記エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体は、均一系の重合触媒を用いて重合されたものであっても良い。かかる共重合体は、一般にメタロセン系化合物を均一系の重合触媒として重合されるので、メタロセンポリエチレンとも呼ばれる。上記メタロセンポリエチレンにおいては、エチレン以外のα−オレフィンの共重合比率を容易に高めることができるので、著しく優れた柔軟性を有する共重合体を得ることができる。また、上記メタロセンポリエチレンは、結晶ラメラ厚みが薄いため、結晶同士を結ぶタイ分子が多くなるので、機械的強度にも優れている。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてクッション性と機械的強度とのバランスが高い次元で優れている熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、熱可塑性樹脂として上記メタロセンポリエチレンを用いることがより好ましい。
【0015】
上記均一系の重合触媒となり得るメタロセン系化合物としては特に限定されず、例えば、IV族、X族、XI族の遷移金属の錯体等が挙げられる。上記メタロセン系化合物は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0016】
上記遷移金属の錯体とは、遷移金属原子に配位子が結合したものである。上記配位子としては特に限定されず、例えば、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素−置換メタロイド基等により置換されたシクロペンタジエン環;シクロペンタジエニルオリゴマー環;インデニル環;炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素−置換メタロイド基等により置換されたインデニル環等や、塩素、臭素等の1価のアニオンリガンド;2価のアニオンキレートリガンド;炭化水素基;アルコキシド基;アミド基;アリールアミド基;アリールオキシド基;ホスフィド基;アリールホスフィド基;シリル基;置換シリル基等が挙げられる。上記配位子は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて耐熱性に優れる熱可塑性樹脂発泡体を作製する場合には、上記熱可塑性樹脂として高密度ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、プロピレンの単独重合体やプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。上記プロピレン以外のα−オレフィンとしては特に限定されず、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。上記プロピレン以外のα−オレフィンは、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。また、上記ポリプロピレン系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。更に、上記高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン系樹脂は、それぞれ単独で用いられてもよく、両者が併用されてもよい。
【0018】
上記熱可塑性樹脂には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、樹脂の特性を改質するために、熱可塑性エラストマー類やオリゴマー類等が配合されてもよい。
上記熱可塑性エラストマー類としては特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマー類は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。また、上記オリゴマー類としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性エチレンオリゴマー等が挙げられる。上記オリゴマー類は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。また、上記熱可塑性エラストマー類及びオリゴマー類は、それぞれ単独で用いられてもよく、両者が併用されてもよい。
【0019】
上記発泡剤としては特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱分解型固体状発泡剤が挙げられる。上記加熱分解型固体状発泡剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0020】
上記加熱分解型固体状発泡剤以外の発泡剤としては特に限定されず、例えば、二酸化炭素(炭酸ガス)、窒素、酸素、アルゴン、フロン等の気体状発泡剤や、ペンタン、ネオペンタン、ブタン、ヘキサン、ヘプタン等の低分子量の炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン、トリクロロエチレン、ジクロルエタン等の塩素化炭化水素、CFC−11、CFC−12、CFC−113、CFC−141b等のフッ素化炭化水素、水、アルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の易揮発性液状発泡剤を用いることもできる。
【0021】
上記発泡剤の配合量としては、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して2〜30重量部であることが好ましい。2重量部未満であると、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の発泡が不充分となり良好な発泡体とすることができなくことがある。一方、30重量部を超えると、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体の発泡が不均一になり良好な発泡体とすることができなくことある。
【0022】
上記架橋剤としては特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル等のラジカル発生剤;ジビニルベンゼン(DVB)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート(NOD)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル等の多官能性モノマー等が挙げられる。上記架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0023】
上記架橋剤の配合量としては、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。1重量部未満であると、熱可塑性樹脂の架橋が不充分となって、均質な発泡体を得られないことがあり、10重量部を超えると、熱可塑性樹脂の架橋密度が高くなり過ぎて、発泡体への成形性が低下することがある。
【0024】
上記カーボンナノチューブとしては特に限定されず、例えば、炭素六角網面が円筒状に閉じた単層構造又は円筒構造が入れ子状に配置された多層構造をした材料からなるもの等が挙げられる。
また、上記カーボンナノチューブは、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていてもよく、単層構造と多層構造とが混在していてもよい。更に、製造方法の違いによって得られるカーボンナノチューブのサイズや形態は変わってくるが、本発明においては、いずれの形態のものも使用することができる。
【0025】
上記カーボンナノチューブの直径及び長さとしては特に限定されないが、例えば、0.1〜100nm程度であることが好ましい。
【0026】
上記カーボンナノチューブを製造する方法としては特に限定されず、例えば、炭素電極間にアーク放電を発生させ、放電用電極の陰極表面に成長させる方法、シリコンカーバイドにレーザービームを照射して加熱・昇華させる方法、遷移金属系触媒を用いて炭化水素を還元雰囲気下の気相で炭化する方法等が挙げられる。
【0027】
上記カーボンナノチューブの配合量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物に分散しうる限り特に限定されない。
【0028】
上記カーボンナノチューブは、本発明の熱可塑性樹脂組成物中に均一かつ高分散されることが好ましい。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる熱可塑性樹脂発泡体がクッション性及び機械的強度に優れたものとなるからである。
【0029】
上記カーボンナノチューブを本発明の熱可塑性樹脂組成物中に高分散させる方法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブとを押出機、二本ロール、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法;熱可塑性樹脂の溶液とカーボンナノチューブとを溶液系で混合する方法;熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブとを常法により混合した後、発泡させる方法;分散剤を用いる方法等が挙げられる。上記分散方法を用いることにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物中にカーボンナノチューブをより均一かつ微細に分散させることができる。
【0030】
上記カーボンナノチューブは、それ自体が非常に微小な材料であり、かつ、脆くならないため、本発明の熱可塑性樹脂組成物中に高分散させる際に特別な表面処理等をしなくても高分散が可能である。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて抗酸化剤、顔料、軟化剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤の1種類又は2種類以上を含有していてもよい。
【0032】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、層状珪酸塩や難燃剤が添加されていてもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる熱可塑性樹脂発泡体の難燃性が非常に優れたものとなるからである。
【0033】
上記層状珪酸塩としては特に限定されないが、物性向上、機能発現という観点からは、カーボンナノチューブと同様に樹脂中に高分散させることができる層間有機処理が施された有機化層状珪酸塩が好ましい。上記有機化層状珪酸塩を用いることにより、カーボンナノチューブの樹脂中への高分散で発現する機能との相乗効果が期待できる。
上記有機化層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、合成マイカ、合成スメクタイト、サポナイト等が挙げられる。
上記層間有機処理とは、層間の金属カチオンがアルキル四級アンモニウムイオンでイオン交換されているものが一般的であり、上記層間有機処理を施すことにより、上記有機化層状珪酸塩を樹脂中へ高分散させることができる。
【0034】
上記難燃剤としては特に限定されないが、廃プラスチックの処理や環境ホルモンの問題等に対応した環境適応型材料としては、非ハロゲン系難燃剤が好ましい。上記非ハロゲン系難燃剤としては特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;金属酸化物;赤リンやポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル等のリン系化合物;メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン及びこれらに表面処理が施されたもの等のメラミン誘導体等の窒素系化合物等が挙げられる。なかでも、金属水酸化物、メラミン誘導体又はリン系化合物が好適に用いられる。これらの非ハロゲン系難燃剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0035】
上記金属水酸化物としては特に限定されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム、二水和石膏等が挙げられる。なかでも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。2種類以上の金属水酸化物を併用すると、それぞれの金属水酸化物が異なる温度で分解脱水反応を開始するので、より高い難燃性付与効果を得ることができる。
【0036】
また、上記金属水酸化物は、表面処理剤により表面処理が施されているものであってもよい。上記表面処理剤としては特に限定されず、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ポリビニルアルコール系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤、高級脂肪酸系表面処理剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0037】
上記金属水酸化物は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こすので、吸熱して水分子を放出することにより燃焼場の温度を低下させ、消火する効果を発揮する。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物にさらに層状珪酸塩が添加されている場合、金属水酸化物による難燃性向上効果はより増大される。これは、上記層状珪酸塩の燃焼時における被膜形成に基づく難燃性向上効果と金属水酸化物の吸熱脱水反応に基づく難燃性向上効果とが共奏的に起こり、それぞれの効果が助長されることによる。
【0038】
上記メラミン誘導体としては特に限定されず、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン、これらに表面処理が施されたもの等が挙げられる。これらのメラミン誘導体は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。上記表面処理としては、上記金属水酸化物に施される処理と同様の処理が挙げられる。
【0039】
上記リン系化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、下記一般式(1)で表されるリン化合物等が挙げられる。これらのリン系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
R3(R2)(OR1)P=O・・・(1)
【0041】
式中、R1、R3は、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基又はアリール基を表し、R2は、水素原子、水酸基、炭素数1〜16のアルキル基、アルコキシル基、アリール基又はアリーロキシ基を表す。R1、R2及びR3は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。上記炭素数が16を超えると、リンの相対含有率が低くなるので、難燃性付与効果が不充分となることがある。
【0042】
上記一般式(1)で表されるリン化合物としては、具体的には例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチル−プロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0043】
上記赤リンとしては、耐湿性向上のためや、樹脂に添加して混練する際の自然発火を防止するために、表面が樹脂で被覆されているものが好ましい。
上記ポリリン酸アンモニウムとしては、メラミン変性等の表面処理が施されているものであってもよい。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ニーダーロール、バンバリーミキサー等の混練機を用いて、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブの各所定量と、更に必要に応じて配合される各種添加剤の1種又は2種以上の各所定量とを、常温下又は加熱下で、溶融混練する方法;熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブと、必要に応じて配合される各種添加剤の1種類又は2種類以上を溶解、又は、分散し得る溶媒中で混練した後、溶媒を除去する方法等が挙げられ、いずれの方法が採られてもよい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物を加熱下で製造する場合、上記加熱分解型発泡剤の分解温度未満で行う必要がある。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、従来用いられていた無機充填剤に代えてカーボンナノチューブを熱可塑性樹脂に含有させている。上記カーボンナノチューブは、非常に微小な粒子であるため、熱可塑性樹脂に対するカーボンナノチューブの配合量を余り多くしなくても、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブとの接触面積を非常に大きくすることができ、更に、熱可塑性樹脂中に高密度で分散させることもできる。従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いればクッション性を損なうことなく、非常に曲げに強く容易に割れることがない熱可塑性樹脂発泡体が得られる。
【0046】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂をベース樹脂としてカーボンナノチューブが高分散しており、さらに上述した層状珪酸塩が添加されている場合、難燃性に優れ、特に燃焼時の形状保持効果によって優れた難燃効果を発現する熱可塑性樹脂発泡体が得られる。
【0047】
上記本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体も本発明の1つである。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法により製造することができる。
即ち、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、少なくとも、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブを溶融混練して樹脂組成物を調製する工程1、上記樹脂組成物をシート状に押出して発泡性シートを作製する工程2、上記発泡性シートに放射線を照射して上記熱可塑性樹脂を架橋させる工程3、及び、上記放射線を照射した発泡性シートを加熱発泡させる工程4を有する。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、少なくとも、熱可塑性樹脂と発泡剤と架橋剤とカーボンナノチューブとを溶融混練して樹脂組成物を調製する工程を有する。即ち、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する。
【0050】
上記樹脂組成物をシート状に押出して発泡性シートを作製する方法としては特に限定されず、例えば、単軸押出、2軸押出、ニーダーミキサー等による方法等が挙げられる。
【0051】
上記発泡性シートの厚さとしては特に限定されず、目的とする本発明の熱可塑性樹脂発泡体の厚さに合わせて適宜決定される。具体的には、製造する熱可塑性樹脂発泡体の厚さが0.1〜50mm程度となる厚さであることが好ましい。
【0052】
上記発泡性シートに照射する放射線として特に限定されず、例えば、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられる。
【0053】
上記発泡性シートに上記放射線を照射し、上記熱可塑性樹脂を架橋させた後、熱風、ヒーター、塩浴等で上記発泡性シートに発泡剤の分解温度以上にエネルギーを与えて発泡させることにより、本発明の熱可塑性樹脂発泡体を製造することができる。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体を製造するその他の手法としては、例えば、押出機中で溶融樹脂に気体状や、易揮発性液状発泡剤を含浸させ、押出後の圧力変化を利用して発泡させる押出発泡法や、型内に熱分解型発泡剤を含んだ熱可塑性樹脂組成物を配置して、加熱型内発泡させる方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、発泡体であればその構造は特に限定されず、例えば、気泡が貫通している連続気泡発泡体であってもよく、気泡が個々独立している独立気泡発泡体であってもよい。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体のゲル分率は、35%以下であることが好ましい。35%を超えると、本発明の熱可塑性樹脂発泡体が硬くなり、充分なクッション性を得ることができなくなることがある。
ここでいうゲル分率とは、熱可塑性樹脂発泡体シートを120℃熱キシレン中で24時間で溶解させ、そのうち分離乾燥させた不溶分(ゲル)の重量分率を意味する。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の用途としては特に限定されず、様々な用途に用いることができるが、断熱材、パッキング材、遮音・制振材、衝撃吸収材、装飾材、自動車内装材等に特に好適に用いることができる。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、そのゲル分率が低く、非常に微小なカーボンナノチューブが高密度で分散されているため、優れたクッション性を備えるとともに、非常に曲げに強く容易に割れることがなく機械的強度に優れたものとなる。また、本発明の熱可塑性樹脂発泡体は、層状珪酸塩を併用した場合、燃焼時の形状保持効果によって優れた難燃効果を発現し難燃性にも優れたものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法によれば、本発明の熱可塑性樹脂発泡体を好適に製造することができる。
【0059】
【実施例】
(実施例1)
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂(商品名「EA9」、密度:0.910g/cm3、MFR:0.5g/10分、日本ポリケム社製)80重量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(商品名「モアテック0238CN」、密度:0.916g/cm3、MFR:2.0g/10分、出光石油化学社製)20重量部、カーボンナノチューブ5重量部、及び、酸変性ポリオレフィン系樹脂として無水マレイン酸変性プロピレンオリゴマー(商品名「ユーメックス1001」、官能基含有量:0.23mmol/g、三洋化成工業社製)5重量部をラボプラストミルに供給して、190℃で3分間溶融混練した。
【0060】
次に、上記ラボプラストミルに、非ハロゲン系難燃剤として水酸化マグネシウム(商品名「キスマ5J」、協和化学社製)30重量部を添加し、更に、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート3重量部、及び、加熱分解型発泡剤としてアゾジカルボンアミド(商品名「ユニフォームAZ−HM」、大塚化学社製)12重量部を添加し、3分間溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物を作製した。
【0061】
得られた熱可塑性樹脂組成物を、ハンドプレスを用いて、180℃で2分間プレスして、厚み1mmの発泡性シートを作製した後、この発泡性シートに加速電圧750kV、電子線量5.3Mradの条件で電子線を照射することによって上記発泡性シートを架橋させた。
最後に、得られた発泡性架橋シートを260℃のギアーオーブン内に導入し、発泡させて、熱可塑性樹脂発泡体を作製した。
【0062】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成よりなるので、優れたクッション性を備えるとともに、非常に曲げに強く容易に割れることがない熱可塑性樹脂発泡体を得るに適した熱可塑性樹脂組成物、その熱可塑性樹脂組成物を用いてなる熱可塑性樹脂発泡体、及び、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供できる。
Claims (4)
- 少なくとも、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体。
- 断熱材、パッキング材、シール材、遮音・制振材、衝撃吸収材、装飾材、又は、自動車内装材に用いられることを特徴とする請求項2記載の熱可塑性樹脂発泡体。
- 少なくとも、熱可塑性樹脂、発泡剤、架橋剤及びカーボンナノチューブとを溶融混練して樹脂組成物を調製する工程1、
前記樹脂組成物をシート状に押出して発泡性シートを作製する工程2、
前記発泡性シートに放射線を照射して前記熱可塑性樹脂を架橋させる工程3、及び、
前記放射線を照射した発泡性シートを加熱発泡させる工程4を有する
ことを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
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