JP2004075467A - ホウ素亜酸化物粉末およびその焼結体の製造方法 - Google Patents

ホウ素亜酸化物粉末およびその焼結体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高純度で微粒のホウ素亜酸化物粉末の製造方法および高密度のホウ素亜酸化物焼結体を製造する方法の提供。
【解決手段】ホウ素亜酸化物粉末の製造方法は下記▲1▼から▲5▼までの工程を特徴とする。▲1▼酸化ホウ素粉末とホウ素粉末とをホウ素亜酸化物を構成するホウ素と酸素の原子数比よりも酸素が過剰となるように混合する工程、▲2▼その混合物を加圧成形して固相反応させてホウ素亜酸化物を生成させる工程、▲3▼得られた生成物を酸に溶解する材料製の粉砕機粉砕する工程、▲4▼得られた粉末を蒸留水と酸で洗浄して残存している酸化ホウ素および不純物を除去する工程。▲5▼真空中で乾燥する工程。この方法で得られた粉末を熱処理した後、加圧焼結して高密度の焼結体を製造する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度のホウ素亜酸化物(BO)粉末の製造方法、およびその方法で得た粉末を使用して高密度の焼結体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホウ素亜酸化物(BO)は、電気伝導度が比較的大きく、しかも電気伝導度が温度の上昇と共に増大する半導体的な性質を持つ。また、ゼーベック係数が通常の半導体理論から考えられる値より異常に大きく、温度上昇とともに増大すること、および熱伝導度が小さいことなどから、熱電材料等として有望である。さらに、ホウ素亜酸化物は、ダイアモンドに次ぐ硬度を有するので、耐摩耗材料、研磨用材料としての利用も期待できる。
【0003】
ホウ素亜酸化物の実用化には、その焼結体を製造することが必要である。この焼結体を製造するには、まずホウ素亜酸化物の粉末を製造し、それを用いて焼結体を製造するのであるが、ホウ素亜酸化物は揮発性が高く、難焼結性であるため、従来の方法では、密度の高い焼結体を製造するのは困難である。
【0004】
従来のホウ素亜酸化物粉末の製造方法は、(1)ホウ素(B)と酸化ホウ素(B)の固相反応、(2)酸化ホウ素の還元、および(3)ホウ素の酸化、の3つに分類される。そして、従来はこれらの方法で合成した粉末をホットプレスにより焼結することによって焼結体を得ている。
【0005】
しかしながら、上記の各粉末製造方法にはそれぞれ次のような難点がある。即ち、(1)のホウ素と酸化ホウ素の固相反応では、酸化ホウ素が高温で揮発しやすいために、出発原料と最終製品とで組成が異なることになって、組成の制御が難しく、またBが残留してホウ素亜酸化物の硬度が低下するという問題がある。(2)の酸化ホウ素の還元では還元剤にSiやMgを用い、また、(3)のホウ素の酸化では酸化剤にZnOを用いているため、いずれも不純物の混入が問題になる。更に、得られたホウ素亜酸化物を粉砕する際にも、ホウ素亜酸化物(BO)が高硬度であるため、ボールミルや乳鉢などの一部が削られて不純物として混入する。このような問題によって、高純度で、かつ微粒のホウ素亜酸化物粉末を得ることは困難であった。
【0006】
仮に、高純度で微粒のホウ素亜酸化物粉末を製造することができても、それを高温で加圧焼結する際、焼結体内部で硬度や電気伝導度を低下させる酸化ホウ素の生成や黒鉛ダイスとの反応が起きる。そのために、高純度で高密度のホウ素亜酸化物焼結体の作製は困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、高密度のホウ素亜酸化物焼結体が製造できない理由が、焼結原料となるホウ素亜酸化物粉末の純度の悪さと粒度の不適切にあることを知った。従って、本発明の第1の目的は、高純度でかつ微粒のホウ素亜酸化物粉末の製造方法を提供することにある。本発明の第2の目的は、高密度のホウ素亜酸化物の焼結体を製造する方法の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のホウ素亜酸化物粉末の製造方法は、下記▲1▼から▲5▼までの工程を特徴とする(図1参照)。
【0009】
▲1▼酸化ホウ素(B)粉末とホウ素(B)粉末とをホウ素亜酸化物(BO)を構成するホウ素と酸素の原子数比よりも酸素が過剰となるように混合する工程、
▲2▼上記工程で得られた混合物を加圧成形して10Pa以下の低酸素分圧ガス中において1600〜1973Kの温度で固相反応させてホウ素亜酸化物(BO)を生成させる工程、
▲3▼上記▲2▼の工程で得られた生成物を、少なくともホウ素亜酸化物が接する部分が酸に溶解する材料で作られた粉砕機で粉砕する工程、
▲4▼上記▲3▼の工程で得られた粉末を蒸留水と酸で洗浄して残存している酸化ホウ素および不純物を除去する工程。
【0010】
▲5▼ホウ素亜酸化物の粉末を真空中で乾燥する工程。
【0011】
上記▲1▼の工程では、原料粉末混合物のホウ素と酸素の原子数比(B/0)を3.0〜5.9とするのが望ましい。また、上記▲3▼の工程で使用する粉砕器としては、容器の内張りおよびボールがタングステンカーバイド製のボールミルを使用するのが望ましく、▲4▼の工程で使用する酸としては、リン酸と硝酸と水の混合水溶液を用いるのが望ましい。
【0012】
本発明のホウ素亜酸化焼結体の製造方法は、上記の方法で製造されたホウ素亜酸化物の粉末を使用するして焼結体を製造する方法であって、下記▲6▼および▲7▼の工程を特徴とする(図1参照)。
【0013】
▲6▼前記▲5▼までの工程を経た粉末をアルゴンガス中で熱処理する工程、
▲7▼上記▲6▼の熱処理後の粉末を1923K以上の温度、10Pa以下の低酸素分圧ガス中で加圧焼結する工程。
【0014】
上記▲6▼の熱処理は、▲7▼の加圧焼結の温度よりも0〜100K低い温度、10Pa以下の低酸素分圧ガス中で行うのが望ましい。また、▲7▼の工程では、加圧焼結時に窒化ホウ素粉末でホウ素亜酸化物を覆い、これを炭素製ダイス中に入れて焼結するのが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
1.ホウ素亜酸化物粉末の製造方法
図1の工程図に従って粉末を製造する方法を説明する。
【0016】
▲1▼の工程(原料の混合工程)
この工程は原料の混合工程である。原料としては酸化ホウ素(B)の粉末とホウ素(B)の粉末を使用する。これらの原料粉末の配合に際しては、ホウ素亜酸化物(BO)を構成するホウ素と酸素の原子数比よりも酸素が過剰となるようにするのがこの工程の特徴である。BOの定比組成は、B/O=6.0であるが、それよりも酸素が過剰になるように、すなわち、B/O<6.0となるように、原料粉末の配合を行うのである。
【0017】
定比組成(B/O=6.0)の混合原料を出発原料として使用した場合、後に続く▲2▼の固相反応工程で酸化ホウ素が揮発するため、未反応の(酸化されないままの)ボロンが残留する。本発明で提案するようにB/O比が6.0未満、例えば3.0〜5.9の混合粉末を出発原料とした場合には固相反応の後に酸化ホウ素(B)が残留するが、ここで残留したBは蒸留水に溶解するため、▲4▼の工程における蒸留水による洗浄により除去することができる。しかし、B/O比が3.0よりも小さくなると、固相反応後に残留する酸化ホウ素が多くなって歩留りが低下するので、B/O比は3.0〜5.9とするのが望ましい。
【0018】
▲2▼の工程(固相反応工程)
この工程では、▲1▼の工程で得られた混合粉末を加圧成形して固相反応を行わせる。加圧成形を行うのは粒子間の接触点を多くして固相反応を促進するためである。また、加圧成形には成形体内部からの酸化ホウ素が揮発して製造歩留りが低下するのを抑制する効果もある。
【0019】
一般に、融点がTmの材料を固相反応で合成する場合、0.7Tm以上で反応させることが必要であるが、酸化ホウ素の融点は明らかでない。しかし、2273Kの温度でもホウ素亜酸化物は溶融しないことから、その融点は2273Kよりも高いと推定されるので、固相反応温度は1600K以上とする必要がある。一方、1973K以上の温度ではホウ素亜酸化物中の酸化ホウ素の揮発が顕著になる。従って、固相反応の合成温度は、1673〜1973Kが適当である。
【0020】
固相反応を行わせる雰囲気の酸素分圧が高い場合にも酸化ホウ素の揮発が顕著になる。従って、10Pa以下の低酸素分圧のガス中で固相反応を起こさせる必要がある。
【0021】
▲3▼の工程(粉砕工程)
上記▲2▼の工程で得られたホウ素亜酸化物は加圧成形された塊状であるから、粉砕して微粉末にする必要がある。しかし、ホウ素亜酸化物は高硬度であるため、固相反応後にメノウ乳鉢で粉砕すると、メノウが削られて不純物として混入する。また、アルミナ乳鉢で粉砕した場合にも同様な不純物混入が起こる。このような不純物の混入は、最終製品としてのホウ素亜酸化物焼結体の強度や電気伝導度に悪影響を及ぼして品質を下げるため、防がなくてはならない。しかし、上記のとおりホウ素亜酸化物は高硬度であるために、粉砕過程での不純物混入は避けられない。そこで、本発明方法では、混入した不純物を後に続く工程(▲4▼の工程)で除去することとした。
【0022】
なお、ホウ素亜酸化物粉末に不純物が含まれていると焼結体が高密度にならないのは、粒子表面に付着した不純物が焼結時の拡散を妨げること、および凝集した不純物とホウ素亜酸化物粉末との焼結が進行しないことが原因であると考えられる。
【0023】
不純物の除去には、ホウ素亜酸化物を溶かさずに不純物だけを溶かす溶媒による洗浄が最も合理的である。従って、本発明方法では酸による洗浄を採用することとした。しかし、粉砕にメノウやアルミナなどの酸化物の乳鉢を用いることは、これらの酸化物が酸で溶解しにくいため不利である。酸による洗浄で除去するためには、少なくともホウ素亜酸化物(被粉砕物)が接する部分が酸で溶解可能な材料によって作られた粉砕機を使用する必要がある。そうすることによって、粉砕機自体から混入する不純物が次の▲4▼の工程で容易に除去される。
【0024】
被粉砕物が高硬度であることを考慮すれば、内張りおよびボールをタングステンカーバイドで作製したボールミルで粉砕するのが望ましい。タングステンカーバイドは酸に可溶であるから、その破片が被粉砕物に混入しても次の工程で除去することができる。なお、後述の▲6▼の熱処理過程で除去できるプラスチック破片等の混入があっても差し支えない。
【0025】
▲4▼の工程(不純物の除去工程)
この工程では、▲3▼の工程で得られた粉末をまず蒸留水で洗浄して、残留する酸化ホウ素を除去する。なお、酸化ホウ素は水溶性である。次いで、酸で処理して粉砕工程で混入した不純物を除去する。前記のように、粉砕装置から混入する不純物は酸に可溶性のものであるから、この処理によってその不純物は酸に溶解する。従って、処理後の粉末を濾過すれば、不純物は完全に除去される。この工程で用いる酸としては、例えば、リン酸と硝酸と水の混合水溶液を用いるのがよい。酸による処理の後は次の工程▲5▼で高温乾燥して、水分および酸を除去する。
【0026】
▲5▼の工程(真空中での乾燥工程)
この工程は、上記▲4▼までの工程で得られたホウ素亜酸化物の粉末を乾燥する工程である。
【0027】
以上の工程で、高純度で微粒のホウ素亜酸化物粉末が製造できる。
2.焼結体の製造方法
本発明方法によって得られたホウ素亜酸化物粉末であっても、これをホットプレスや通電加圧焼結などで焼結した場合、焼結体内部の一部が酸化ホウ素となり、ホウ素亜酸化物単相の焼結体が得られないことがある。これは、高温でホウ素亜酸化物が下記の反応によって不定比組成のホウ素亜酸化物と酸化ホウ素に分解し、生成した酸化ホウ素の一部が焼結体に残存することが原因であると考えられる。
O→(1−(x/3))B1−δ+xB (g)・・・(a)
ただし、x=3δ/(8+δ)
上記のような焼結工程での酸化ホウ素の生成を避けるためには、焼結温度と同程度の温度(望ましいのは焼結温度より0〜100K低い温度)で熱処理を行い、予め上記(a)の反応を起こさせ、生成した酸化ホウ素を揮発させて除去しておく必要がある。なお、生成したB1−δのB蒸気圧は低いので、焼結過程でのBの生成は殆どない。そこで、本発明の焼結体の製造方法では、次に述べる▲6▼および▲7▼の工程を採用する。
【0028】
▲6▼の工程(アルゴンガス中での熱処理)
この工程は、上記(a)式の反応によって不定比組成のホウ素亜酸化物を合成するための熱処理工程である。熱処理の温度は、加圧焼結の温度より0〜100K低い温度であることが望ましい。加圧焼結温度より高い温度で熱処理を行うと焼結体中で酸素が不足しすぎてホウ素亜酸化物中の電荷担体量が減少し、電気伝導度が下がる。一方、「加圧焼結温度−100K」よりも低い温度で熱処理を行うと、上記(a)式の反応が不十分で、次の焼結過程で酸化ホウ素が生成する。
【0029】
また、熱処理の雰囲気は、酸素分圧が10Pa以下の雰囲気であることが望ましい。その理由は、酸素分圧が高くなると下記(b)式の反応によって、ホウ素亜酸化物が酸化ホウ素の形で揮発するからである。
【0030】
O+4O→3B(g)・・・(b)
この▲6▼の工程で(a)式の反応を起こさせることによって、粉末の殆ど全てがB1−δになる。なお、同時に生成したBは揮発除去される。
【0031】
▲7▼の工程(加圧焼結工程)
この工程では、前記▲6▼の工程で生成したB1−δの粉末を焼結する。ここでは、高密度の焼結体を得るために、焼結温度を1923K以上とする必要がある。後述の比較例に示すように、例えば60MPa、1873Kでの加圧焼結では焼結体の相対密度は67%にしかならない。一方、ガスの雰囲気は、酸化ホウ素の生成・揮発を防ぐために低い酸素分圧であることが必要である。焼結に必要な雰囲気は10Pa以下の低酸素分圧ガス(例えばAr99.9%−酸素0.1%に相当)である。
【0032】
この加圧焼結過程では、炭素製ダイスを使うとホウ素亜酸化物が反応し炭化ホウ素(BC)を生成してしまう。この反応を防ぐために、乾燥した窒化ホウ素粉末でホウ素亜酸化物を覆って加圧焼結を行うのが望ましい。この窒化ホウ素粉末による被覆は、炭素との反応を防ぐためだけでなく、ホウ素亜酸化物中の酸化ホウ素の生成・揮発の抑制にも効果がある。なお、窒化ホウ素粉末による被覆は、例えばダイスの中に予め窒化ホウ素粉末を敷き、その上に予備成形したホウ素亜酸化物を置き、さらにその上に窒化ホウ素粉末を被せるという方法で行うことができる。
【0033】
【実施例】
[実施例]
図1に示す手順でホウ素亜酸化物の粉末を製造し、その粉末を用いてホウ素亜酸化物焼結体を製造した。
【0034】
β−Bの粉末(純度99%)および非晶質B粉末(純度90%)を7:1のモル割合でエタノール中で混合した。混合粉末のBとOの原子数比(B:O)は3:1である。
【0035】
上記により得られた混合粉末を円盤状のペレットに加圧成形し、1693KのAr気流中(酸素分圧は1Pa)で14.4ks時間焼成した。この焼成体をタングステンカーバイド(WC)で内張りしたボールミルで、同じくWC製のボールを使用して粉砕した。この粉末には未反応のBおよびボールミルから混入したWCが含まれていた。
【0036】
まず、Bを除去するために粉末を蒸留水で洗浄し、次いでWC等の不純物を除去するために粉末をHPO:HNO:HO=1:1:3の液(温度:323K)で3.6ks間洗浄した後、蒸留水で酸を洗い流した。
【0037】
このようにして製造した粉末を真空(<10−4Torr)中、1073Kで3.6ks間乾燥した後、2173KのAr気流中(酸素分圧は1Pa)で3.6ks間熱処理し、真空(<10−3Torr、酸素分圧は10−1Pa)中、60MPa、2173Kで0.6ksのパルス通電加圧焼結を行った。パルス通電加圧焼結では黒鉛製ダイスとの反応を防ぐためにh−BN粉末によって試料を覆った。
【0038】
粉末試料の同定には粉末X線回折を用い、粒子の形態観察には走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。焼結体の相対密度の測定にはアルキメデス法を用い、焼結体の硬度はビッカース硬さ試験法により測定した。
[比較例]
β−Bの粉末(純度99%)および非晶質B粉末(純度90%)を10:1のモル割合でエタノール中で混合した。混合粉末のBとOの原子数比(B:O)は4:1である。この混合粉末を加圧成形して円盤状のペレットにし、1673KのAr気流中(酸素分圧は1Pa)で焼成した後、粉砕した。この粉末を再び成形して、1693KのAr気流中(酸素分圧は1Pa)で焼成し、メノウの乳鉢と乳棒を使用して粉砕してBO粉末を得た。ここで2回の焼成を行ったのは、1回目でホウ素亜酸化物の合成を行い、2回目で過剰のBを蒸発させて除去するためである。
【0039】
上記のBOの粉末を1873KのAr気流中(酸素分圧は1Pa)で、18ks間熱処理した後、ホットプレスを用いて1873k、60MPaのAr気流中(酸素分圧は1Pa)で18ks間焼結した。ホットプレスでは試料と黒鉛製ダイスとの反応を防ぐためにh−BN粉末によって試料を覆った。
[試験結果]
実施例で作製したホウ素亜酸化物粉末のX線回折図形を図2に示す。この図から、この粉末はBOの単相であることがわかる。また、不純物の存在を示すピークは観察されていない。
【0040】
図3は、実施例で作製したホウ素亜酸化物粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。粒径40μm以下の微細なホウ素亜酸化物が得られていることがわかる。
【0041】
焼結体の相対密度とビッカース硬度の測定結果を表1に示す。
【0042】
比較例では相対密度は67%、硬度は28GPaである。これに対して実施例の焼結体では、98%の相対密度と50GPaの高い硬度が得られている。このような相違が生じたのは、比較例では粉砕したホウ素亜酸化物の洗浄(不純物除去)を行っていないために、酸化ホウ素やWC等の不純物が粉末中に残留していたからである。
【0043】
【表1】
Figure 2004075467
【0044】
【発明の結果】
本発明方法によれば、高純度、微粒のホウ素亜酸化物粉末が得られる。そして、その粉末を原料として高純度、高密度のホウ素亜酸化物焼結体を作製することができる。本方法で作製した焼結体はダイアモンドに次ぐ硬度を有しているため、SiCやAlなどに代わる高硬度材料としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のホウ素亜酸化物粉末および焼結体の製造方法を示す工程図である。
【図2】実施例で作製したホウ素亜酸化物粉末のX線回折図形である。
【図3】実施例で作製したホウ素亜酸化物粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。

Claims (7)

  1. 下記▲1▼から▲5▼までの工程を特徴とするホウ素亜酸化物粉末の製造方法。
    ▲1▼酸化ホウ素(B)粉末とホウ素(B)粉末とを、ホウ素亜酸化物(BO)を構成するホウ素と酸素の原子数比よりも酸素が過剰となるように混合する工程、
    ▲2▼上記工程で得られた混合物を加圧成形して10Pa以下の低酸素分圧ガス中において1600〜1973Kの温度で固相反応させ、ホウ素亜酸化物(BO)を生成させる工程、
    ▲3▼上記▲2▼の工程で得られた生成物を、少なくともホウ素亜酸化物が接する部分が酸に溶解する材料で作られた粉砕機で粉砕する工程、
    ▲4▼上記▲3▼の工程で得られた粉末を蒸留水と酸で洗浄して残存している酸化ホウ素および不純物を除去する工程、
    ▲5▼ホウ素亜酸化物の粉末を真空中で乾燥する工程。
  2. 原料粉末混合物のホウ素と酸素の原子数比(B/O)を3.0〜5.9とする請求項1に記載のホウ素亜酸化物粉末の製造方法。
  3. 上記▲3▼の工程で使用する粉砕機として容器内張りとボールがタングステンカーバイド製のボールミルを使用する請求項1または2に記載のホウ素亜酸化物粉末の製造方法。
  4. 上記▲4▼の工程で使用する酸として、リン酸と硝酸と水の混合水溶液を用いる請求項1、2または3に記載のホウ素亜酸化物粉末の製造方法。
  5. 請求項1から4までに記載のいずれかの方法で製造されたホウ素亜酸化物の粉末を用いて焼結体を製造する方法であって、下記▲6▼および▲7▼の工程を特徴とするホウ素亜酸化物焼結体の製造方法。
    ▲6▼粉末をアルゴンガス中で熱処理する工程、
    ▲7▼上記▲6▼の熱処理後の粉末を1923K以上の温度、10Pa以下の低酸素分圧のガス中で加圧焼結する工程。
  6. 上記▲6▼の工程の熱処理を、▲7▼の加圧焼結の温度よりも0〜100K低い温度、10Pa以下の低酸素分圧ガス中で行う請求項5に記載の焼結体の製造方法。
  7. 上記▲7▼の工程の加圧焼結時に、窒化ホウ素粉末でホウ素亜酸化物を覆い、これを炭素製ダイス中に入れて焼結する請求項5または6に記載のホウ素亜酸化物焼結体の製造方法。
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